止水作業空間の構築方法および止水作業函
【課題】止水材が当接する対象物が複雑な表面形状であっても、漏水がなく、止水作業函を強固に安定して固定できる止水作業空間の構築方法および止水作業函を提供する。
【解決手段】前面および上面を開口した函体2の前面の前端部に、保水性を有する弾性の止水材3を設けるとともに止水材3の内部に冷媒配管5a、5b、5cを配設した構造にし、函体2を所定位置に設置する際に、函体2に設けた函体2の内部と外部とを連通可能な連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしながら、壁状体12に対して函体2を上部固定手段7および下部固定手段8で固定するとともに、冷媒配管5a、5b、5cに冷媒Cを流通させて、壁状体12に当接することにより壁状体12の表面形状に沿って変形した止水材3を凍結させて函体2を所定位置に固定した後、連通口6を閉じた状態にして函体2内部の水W1を外部に排出する。
【解決手段】前面および上面を開口した函体2の前面の前端部に、保水性を有する弾性の止水材3を設けるとともに止水材3の内部に冷媒配管5a、5b、5cを配設した構造にし、函体2を所定位置に設置する際に、函体2に設けた函体2の内部と外部とを連通可能な連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしながら、壁状体12に対して函体2を上部固定手段7および下部固定手段8で固定するとともに、冷媒配管5a、5b、5cに冷媒Cを流通させて、壁状体12に当接することにより壁状体12の表面形状に沿って変形した止水材3を凍結させて函体2を所定位置に固定した後、連通口6を閉じた状態にして函体2内部の水W1を外部に排出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水作業空間の構築方法および止水作業函に関し、さらに詳しくは、水際の壁状体や水中に立設する杭状体や構造物が複雑な表面形状であっても、漏水を生じさせることなく、止水作業函を強固に安定して固定することができる止水作業空間の構築方法およびその止水作業函に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海や河川等の護岸を構成している矢板等の水際の壁状体や水中に立設する杭状体や構造物については、腐食程度の調査や、腐食が進行していれば補修工事を行なう必要がある。従来、このような調査や補修工事を行なう際には、例えば、水際の壁状体の場合では、前面および上面を開口した函体を、函体の前面の前端部に設けたゴム等弾性の止水材を水際の壁状体に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を形成するようにしていた。
【0003】
この際に、様々な表面形状の壁状体に対して止水材を圧着させ、壁状体と函体との間のすき間をなくして、形成した作業空間に漏水を生じさせないことが重要である。そこで、止水材として管状弾性体を採用し、この管状弾性体の内部に圧縮空気を供給することにより、様々な表面形状の壁状体に対して、すき間を生じさせることなく、函体2を設置できるようにした止水作業函が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この提案の止水作業函では、圧縮空気を充填した管状弾性体を、その弾性変形によって壁状体の表面形状に密着させるので、大きく変形させることができず、形状変形が大きい複雑な表面形状の壁状体に密着させることが困難であった。
【0005】
また、管状弾性体を壁状体に密着させた後は、函体内部が水を閉じ込めて閉じた状態になり、止水作業函を壁状体に固定するまでの間に、潮の干満等により水面が上昇すると止水作業函には追加的な浮力が生じ、また、水面が下降すると浮力が減じて函体内部に閉じ込めた水によって下方に追加的な力が生じる。このように、止水作業函の外部の水面位置の変動によって、止水作業函には上下方向に追加的な力が生じる。さらに、函体の内部と外部の水面位置の違い(水圧差)によっても函体には外力が作用するため、止水作業函を強固に安定して固定することが難しいという問題があった。上記した問題は、水際の壁状体だけでなく、水中に立設する杭状体や構造物にも当てはまるものである。
【特許文献1】実開平2−93330公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水際の壁状体や水中に立設する杭状体や構造物が複雑な表面形状であっても、漏水を生じさせることなく、止水作業函を強固に安定して固定することができる止水作業空間の構築方法およびその止水作業函を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の止水作業空間の構築方法は、前面および上面を開口した函体を、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材を水際の壁状体に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、この函体を所定位置に設置する際に、函体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記壁状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記壁状体に当接することにより壁状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にし
て、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の別の止水作業空間の構築方法は、上面を開口した有底の函体の底面の貫通孔に、水中に立設する杭状体を貫通させて、この杭状体の外周を囲むようにして、この函体を所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記函体の底面を分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記函体を形成して、前記貫通孔に貫通させた杭状体に前記止水材を当接させた状態で杭状体の外周を囲むように函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記杭状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記杭状体に当接することにより杭状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の別の止水作業空間の構築方法は、上面および下面を開口した筒状の函体に、水中に立設する構造物を貫通させた状態にして、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材を対向する面に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記筒状の函体を形成して、この函体に構造物を貫通させて前記止水材を対向する面に当接させた状態で、この函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記構造物に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記対向する面に当接することにより、この対向する面の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の止水作業函は、前面および上面を開口した函体と、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、前記函体に函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を設け、前記止水材が当接する水際の壁状体に対して、函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の別の止水作業函は、底面に貫通孔を有し上面を開口した有底の函体と、この貫通孔に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記函体をその底面を分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記貫通孔を貫通して前記止水材が当接する水中に立設する杭状体に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の別の止水作業函は、上面および下面を開口した筒状の函体と、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記函体を貫通して水中に立設する構造物に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、止水作業函を構成する函体に設けた弾性の止水材を水際の壁状体などの対向する対象物に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築するにあたり、止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にして、この函体を所定位置に設置する際に、函体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にすることにより、函体内部と外部とが同じ水面位置になるので、函体の外部の水面位置の変動に起因して、函体に不要な力が生じることがない。
【0014】
また、冷媒配管に冷媒を流通させて、対向する対象物に当接することにより対象物の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させることにより、この対象物が複雑な表面形状であっても、対象物に対して漏水を生じさせるすき間がないように、函体を設置することができる。
【0015】
そのため、対象物に対する固定手段に加えて、凍結している止水材によって、函体を対象物に対して強固に安定して固定することができる。
【0016】
そして、函体を所定位置に固定した後、連通口を閉じた状態にして、函体内部の水を外部に排出することで、函体内部に作業空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の止水作業空間の構築方法および止水作業函を、実施形態に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図4に例示するように、本発明の止水作業函1の第1実施形態は、前面および上面を開口した函体2と、函体2の前面の前端部に保水性を有する弾性の止水材3とを備えている。この実施形態では、函体2の前面の前端部はH鋼で構成され、函体2の左右側面、後面および底面は、鋼板等の剛性材により構成されている。函体2の材質、部材等はこれに限定されるものではない。
【0019】
函体2の底面には、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が設けられている。連通口6は底面に限らず、他の場所に設けることもできるが、できるだけ函体2の下方位置に設けることが好ましい。連通口6は1つに限らず、複数設けることもできる。
【0020】
止水材3は、函体2の前面の前端部を覆うように取付けられている。止水材3としては、樹脂材料、ゴム材料、金属繊維をスポンジ状に形成したもの、或いは、これらを組み合わせたもの等を例示することができる。スポンジ形状は、連続気泡構造、独立気泡構造、連続気泡と独立気泡との混合構造のいずれも採用することができる。大きな変形を確保するには連続気泡構造が好ましい。
【0021】
止水材3の内部には、冷媒配管5(5a、5b、5c)が配設されている。この実施形態では、3本の冷媒配管5が配設されているが、その数は特に限定されず、1本或いは複数本にすることもできる。冷媒配管5は、例えば、止水材3を冷媒配管5の外形形状に切取り、切取った箇所に埋設するようにして所定位置に配設する。
【0022】
冷媒配管5は壁状体12の上に設置された冷媒供給手段10に接続されている。冷媒配管5は、冷熱に対して耐久性があり、熱伝熱効率に優れた材質で形成されたものが好ましい。冷媒配管5の材質は、冷媒Cとして液体窒素を用いる場合は、例えば、ステンレス鋼や銅など、冷媒Cとしてブライン(高濃度塩化カルシウム水溶液)を用いる場合は、例えば、鉄などにする。
【0023】
函体2には、函体2上部を固定する上部固定手段7と、函体2下部を固定する下部固定手段8とが設けられている。この実施形態では、上部固定手段7として、L字状の剛性アングル部材が用いられ、函体2上部が壁状体12の上面に固定されている。また、下部固定手段8は、水中の壁状体12の表面に突設されたアンカーボルト8aとアンカーボルト8aと函体2の下部との間に張設されるワイヤ8bとで構成されている。上部固定手段7および下部固定手段8は、これに限定されず、他の構造(部材)を用いることもできる。
【0024】
また、函体2を壁状体12に対して安定に固定できれば、上部固定手段7、下部固定手段8の2種類の固定手段に限らず、1種類の固定手段のみを用いることもできる。例えば、上部固定手段7のみを用いることもできる。
【0025】
この実施形態では、さらに、止水材3上部に水Wを供給する水分供給手段11が設けられている。
【0026】
以下、この止水作業函1を用いた本発明の止水作業空間の構築方法の手順を説明する。
まず、図6に例示するように、止水作業函1の前面を、鋼矢板等の水際の壁状体12の表面に対向させる。この際に、連通口6は開いたままにしておき、冷媒配管5には冷媒Cを流通させていない状態にしておく。
【0027】
そして、函体2の前面を壁状体12の表面に向かって移動させ、止水材3を壁状体12の表面に当接させて、図2に例示するように、壁状体12の表面形状に沿うように変形させる。本発明の保水性を有する弾性の止水材3は、変形性能に優れているので、壁状体12の表面形状に沿うように予め形成していなくても、その表面形状にすき間なく沿うように変形することができる。このようにして、図1に例示するように、連通口6を通じて、函体2内部に外部の水W1が自由に出入りする状態になる。
【0028】
尚、壁状体12の表面との密着性をより高めるために、止水材3を、概略、壁状体12の表面形状に沿う形状に予め形成しておくこともできる。
【0029】
次いで、函体2上部を上部固定手段7により壁状体12に固定し、函体2下部を下部固定手段8により壁状体12に固定するとともに、冷媒配管5に冷媒Cとして液体窒素或いは、マイナス25℃程度のブラインを流通させる。冷媒配管5を流通する冷媒Cの冷熱により、止水材3に保水された水分が凍って、止水材3が壁状体12の表面形状に沿って変形した状態で凍結する。
【0030】
このように、上部固定手段7および下部固定手段8による固定に加えて、止水材3が変形した形状を維持して固化するとともに、凍結による凍着力により、函体2が壁状体12に対して所定位置に強固に固定される。大きな凍着力が確保できれば、上部固定手段7および下部固定手段8を小型化することもできる。
【0031】
さらに、函体2を所定位置に設置する際に、連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしているので、函体2内部と外部とが常に同じ水面位置になる。そのため、函体2(止水作業函1)を壁状体12の所定位置に固定するまでの間に、潮の干満等により水面が上昇しても函体2(止水作業函1)には追加的な浮力が生じることがない。また、水面が下降することにより浮力が減じても、函体2内部に存在する水W1によって下方に追加的な力が生じることもない。また、函体2の内部と外部の水面位置の違い(水圧差)による外力が函体2に作用することもない。
【0032】
このように、函体2(止水作業函1)の外部の水面位置の変動に起因して、函体2(止水作業函1)に上下方向に不要な追加的な力や水圧差に起因する外力が生じることがない。これにより、函体2(止水作業函1)を壁状体12に対して強固に安定して固定することができる。
【0033】
また、凍結する前の柔軟な止水材3を、当接させた壁状体12の表面形状に沿って変形させた後、冷媒配管5に冷媒Cを流通させて止水材3を凍結させるので、壁状体12が複雑な表面形状であっても、漏水を生じさせるすき間がないように、函体2を設置することができる。
【0034】
さらに、止水材3を連続気泡構造などの水透過性に優れた仕様にした場合には、函体2の内部と外部との間で水面位置に差があると、水W1が止水材3を通過して函体2の内部に出入りする。このように水W1が止水材3を通過する状態では、冷媒配管5に冷媒Cを流通させても止水材3が凍結し難くなるが、この実施形態では、このような問題が回避でき、止水材3を迅速に凍結させて函体2を所定位置に固定できるようになっている。
【0035】
次いで、連通口6を閉じた状態にして、函体2内部の水W1をポンプ等により函体2外部に排出することにより、函体2の内部に止水作業空間を構築することができる。
【0036】
止水材3は、図4に例示するように、単独で函体2の前面の前端部に設けるだけでなく、図5に例示するように、少なくとも一部を断熱材4によって覆うこともできる。断熱材4で止水材3を覆うことによって、冷媒Cによる冷熱の損失を抑えることができ、また、止水材3の凍結を促進できる。断熱材4で覆う領域は、主に、止水材3の前面以外の面(側面、背面)となる。
【0037】
また、函体2と冷媒配管5とを連結部材を介して連結固定する場合には、連結部材を通じて冷媒配管5の冷熱が逃げないように、断熱構造または断熱性に優れた材質で形成された連結部材を用いることが好ましい。
【0038】
冷媒Cは、冷媒配管5を流通すると次第に温度が高くなり、これに起因して止水材3の位置によって凍結具合にばらつきが生じる。そこで、これを防ぐために、図8に例示するように、複数設けた冷媒配管5a、5b、5cに流通方向を反対方向にして冷媒Cを流通させることもできる。
【0039】
図8の例では、それぞれの冷媒配管5a、5b、5cの先端部に、開放管10dを接続した開閉弁10a、10b、10cを配置し、冷媒供給手段10により供給された冷媒C(液体窒素)を、それぞれの開閉弁10a、10b、10cを介して開放管10dを通じて大気に開放する。冷媒Cとしてブラインを用いる場合は、例えば、開放管10dを冷媒供給手段10に接続して、ブラインを循環できるようにする。
【0040】
冷媒Cの流通方向によって生じる凍結具合にばらつきを防ぐために、図9に例示するように、冷媒配管5での冷媒Cの流通方向を所定時間で反対方向に変える方法を用いることもできる。
【0041】
図9の例では、冷媒供給手段10から延びる冷媒配管5に、三方弁等の切り換え弁9を配置し、切り換え弁9から左右に分岐した冷媒配管5に、冷媒配管5a、5b、5cを接続する。冷媒配管5aには、切り換え弁9を挟んだ左右位置に、開放管10dを接続した切り換え弁9a、9dを配置する。冷媒配管5bには、切り換え弁9を挟んだ左右位置に、開放管10dを接続した切り換え弁9b、9eを配置する。冷媒配管5cは、切り換え弁9を挟んだ左右位置に、開放管10dを接続した切り換え弁9c、9fを配置する。
【0042】
ここで、例えば、切り換え弁9を操作して冷媒供給装置10から供給される冷媒C(液体窒素)を左側のみに流通させるようにして、冷媒Cを左回りに流通させて、それぞれの冷媒配管5a、5b、5cの切り換え弁9d、9e、9fを介して開放管10dを通じて大気に開放する。この状態で冷媒Cを所定時間流通させた後は、切り換え弁9を操作して、冷媒供給装置10から供給される冷媒C(液体窒素)を右側のみに流通させるようにして、冷媒Cを右回りに流通させて、それぞれの冷媒配管5a、5b、5cの切り換え弁9a、9b、9cを介して開放管10dを通じて大気に開放する。
【0043】
このように、切り換え弁9を操作して、冷媒配管5での冷媒Cの流通方向を所定時間で順次、反対方向に変えることもできる。
【0044】
冷媒Cとしてブラインを用いる場合は、例えば、開放管10dを冷媒供給手段10に接続して、ブラインを循環できるようにする。
【0045】
また、水中にある止水材3と水上にある止水材3とでは保水量が異なる。これに起因して止水材3の位置によって凍結具合にばらつきが生じる。そこで、これを防ぐために、実施形態で例示したように、止水材3の上部に水を供給する水分供給手段11を設けることもできる。この構成にした場合には、函体2を壁状体12の所定位置に設置する際に、止水材3の上部に水分供給手段11から水Wを供給しながら設置作業を行なう。
【0046】
保水量の違いによって生じる凍結具合にばらつきを防ぐために、止水材3の保水性を上下方向で異ならせ、上方に配置された止水材3は、下方に配置された止水材3に比べて保水性が高い仕様にすることができる。
【0047】
具体的には、水上に配置される止水材3は、水中に配置される止水材3よりも優れた保水性を有するようにする。保水性を異ならせるには、例えば、止水材3の材質やスポンジ構造を異ならせる。
【0048】
また、止水材3の上下位置での保水量の違いによる凍結具合のばらつきを解消するために、上方に配置された止水材3については、壁状体12の表面形状に対する変形性能に悪影響が生じない程度に、陸上等で予め凍結させた状態にしておいて設置作業を行なうこともできる。
【0049】
止水作業函1を設置した後は、止水材3の凍結を維持するために冷媒配管5に冷媒Cを流通させるが、最初の段階(止水材3を凍結させる際)には、冷媒Cとして液体窒素またはブラインを流通させ、止水材3が凍結した後は、冷媒Cとしてブラインを流通させることもできる。温度コントロールが実質的にできない液体窒素に比べて、ブラインは温度コントロールが容易であるため、止水材3が凍結して止水作業函1を所定位置に設置した後の冷媒Cとして、ブラインを用いることにより、止水材3の凍結を維持管理し易くなる。
【0050】
尚、冷媒配管5のレイアウト、本数、冷媒Cの流通方向等は、例えば、現場を想定した温度解析等に基づいて決定する。また、止水材3の凍結を維持管理するために、例えば、止水材3の主要な箇所に熱電対等を配置して温度計測しながら冷媒Cの温度制御を行なう。
【0051】
このように、止水材3の凍結状態を適切に維持していれば、水面位置の上下変動があっても、函体2(止水作業函1)は強固に安定して固定されているので、ずれる等の不具合を生じることはない。
【0052】
海に面する壁状体12の所定位置に、函体2を設置する場合には、その海域の大潮の日または大潮の日の前後数日程度の日に作業を行ない、上げ潮の時に作業を開始して、潮が満ちた時に作業が完了するようにするとよい。これによれば、止水材3の上下位置での保水量の違いを生じにくくすることができ、凍結具合のばらつきを抑えることができる。
【0053】
図10〜図13に例示する止水作業函1の第2実施形態は、桟橋などの水中に立設する杭状体13を補修工事する場合等に用いられるものである。この止水作業函1は、上面を開口した有底の函体2を備えている。この函体2は底面に貫通孔2aを有し、貫通孔2aの内周面には保水性を有する弾性の止水材3が取り付けられている。この止水材3は、第1実施形態と同仕様のものである。
【0054】
函体2は、貫通孔2aを分割して底面を分割するように形成した2つの函体分割体2A、2Bで構成されているが、3つ以上の函体分割体によって函体2を構成することもできる。函体分割体2A、2Bは鋼板等で構成されている。それぞれの函体分割体2A、2Bは、互いの合わせ面にゴム等からなる一般的なシール材3aを介在させて組み付けることにより、函体2に形成される。
【0055】
一方の函体分割体2Bの底面には、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が設けられている。連通口6は、少なくとも1つの函体分割体2Bに1つ設ければよいが、複数設けることもできる。連通口6は底面に限らず、他の場所に設けることもできるが、できるだけ函体分割体2B(函体2)の下方位置に設けることが好ましい。
【0056】
函体2は、上記のような分割構造であるため、それぞれの函体分割体2A、2Bの貫通孔2aに相当する位置に止水材3が取り付けられている。それぞれの函体分割体2A、2Bに取り付けられた止水材3の内部には、冷媒配管5(5a、5b、5c)が配設されている。この冷媒配管5は杭状体13の上部工に設置された冷媒供給手段10に接続されている。
【0057】
この冷媒配管5および冷媒供給手段10も第1実施形態と同仕様のものである。また、冷媒配管5を流通する冷媒Cも第1実施形態と同仕様のものである。
【0058】
それぞれの函体分割体2A、2Bには、函体分割体2A、2B(函体2)の上部を杭状体13に対して固定する上部固定手段7が設けられている。この実施形態では、上部固定手段7として函体分割体2A、2B(函体2)の上部と杭状体13の上部工に固定された剛性アングル部材が用いられている。
【0059】
上部固定手段7に代えて、或いは上部固定手段7に加えて、函体分割体2A、2B(函体2)の下部を杭状体13に固定する下部固定手段を設けることもできる。上部固定手段7および下部固定手段は、第1実施形態と同仕様のものを用いることができる。
【0060】
この止水作業函1を用いて止水作業空間を構築する手順を以下に例示する。
【0061】
まず、それぞれの函体分割体2A、2Bに浮体を取付け、図11に例示するように水上移動させて、止水材3を杭状体13の表面に当接させる。この際に、連通口6は開いたままにしておき、冷媒配管5に冷媒Cを流通させない状態にしておく。函体分割体2A、2Bの合わせ面にはシール材3aを介在させて、それぞれの函体分割体2A、2Bのフランジ部にボルトを通して互いを組み付けて函体2を形成する。
【0062】
これにより函体2は、図10に例示するように、貫通孔2aを貫通する杭状体13の外周を囲んだ状態になる。尚、止水材3から突出する冷媒配管5の部分は、予め、止水材3の内部に埋設した冷媒配管5に接続しておくこともできるが、函体分割体2A、2Bを組み付けた後に、止水材3の内部の冷媒配管5に接続することもできる。
【0063】
止水材3は、杭状体13の表面形状に沿うように変形して、杭状体13の外周面にすき間なく密着する。函体2内部には、外部の水W1が自由に出入りする状態になる。
【0064】
次いで、函体2上部を上部固定手段7により杭状体13に固定するとともに、冷媒配管5に冷媒Cを流通させる。これによって、止水材3が杭状体13の表面形状に沿って変形した状態で凍結する。
【0065】
このようにして、函体2は、上部固定手段7および止水材3の凍着力によって、杭状体13に対して所定位置に強固に固定される。また、連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしているので、第1実施形態と同様に函体2の外部の水面位置の変動に起因して、函体2に上下方向に不要な追加的な力や水圧差に起因する外力が生じることがない。そのため、函体2を杭状体13に対して強固に安定して固定することができる。
【0066】
また、第1実施形態と同様に杭状体13の表面が複雑な形状であっても、止水材3によって、漏水を生じさせるすき間がないように函体2を所定位置に設置することができる。止水材3を連続気泡構造などの水透過性に優れた仕様にした場合にも、第1実施形態と同様に止水材3が凍結し難くなることもない。
【0067】
次いで、連通口6を閉じた状態にして、函体2内部の水W1を函体2外部に排出することにより、函体2の内部に止水作業空間を構築することができる。
【0068】
第2実施形態の止水作業函1では、1本の杭状体13の外周を1つの函体2で囲むようにしたが、図14に例示する第3実施形態のように、複数本の杭状体13a、13b、13cの外周を1つの函体2で囲む構造にした止水作業函1にすることもできる。
【0069】
この函体2は、上面を開口した有底の函体2の底面に、杭状体13a、13b、13cを貫通させる複数の貫通孔2a(この実施形態では3つの貫通孔2a)を有し、それぞれの貫通孔2aを分割して函体2の底面を分割するように形成した2つの函体分割体2A、2Bで構成されている。
【0070】
それぞれの函体分割体2A、2Bの貫通孔2aに相当する位置には、冷媒配管5を配置した止水材3が取り付けられ、冷媒配管5は冷媒供給手段10に接続されている。また、少なくとも1つの函体分割体2Bに、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が少なくとも1つ設けられており、貫通孔2aを貫通して止水材3が当接する杭状体13a、13b、13cに対して函体2を固定する固定手段7が設けられている。それぞれの函体分割体2A、2Bを、互いの合わせ面にシール材3aを介在させて組み付けることによって、函体2が形成される。
【0071】
その他の仕様は、第2実施形態と同様であり、止水作業空間を構築する手順も第2実施形態と同様である。
【0072】
この実施形態によっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができるが、複数の杭状体13a〜13cが、近接した位置で立設している場合や、複雑に交錯するように立設している場合であっても、1つの函体2で止水作業空間を構築することができるという利点がある。
【0073】
図15〜図17に例示する止水作業函1の第4実施形態は、橋梁下部工14などの水中に立設する構造物を補修工事する場合等に用いられるものである。この橋梁下部工14は、地盤に設置される平面状のフーチング14bから柱部14aを上方に突出させた形状になっている。
【0074】
この止水作業函1は、上面および下面を開口した筒状の函体2を備えている。この函体2の下端面部(下端面および下端面の内周側)には保水性を有する弾性の止水材3が取り付けられている。詳しくは、平面視で長方形の函体2において、長方形の長辺の下端面および短辺の下端面の内周側に止水材3が取り付けられている。この止水材3は、第1実施形態と同仕様のものである。
【0075】
函体2は、筒状を周方向に分割するようにして形成された2つの函体分割体2A、2Bで構成されているが、3つ以上の函体分割体によって函体2を構成することもできる。函体分割体2A、2Bは、それぞれのフランジ部にボルトを通して、互いの合わせ面にシール材3aを介在させて組み付けることにより、筒状の函体2に形成される。函体分割体2A、2B(函体2)の下端面部は、設置する橋梁下部工14の形状に合わせて形成される。止水材3は、その下端面部に取り付けられる。
【0076】
一方の函体分割体2Bの側面には、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が設けられている。連通口6は、少なくとも1つの函体分割体2Bに1つ設ければよいが、複数設けることもできる。連通口6は、できるだけ函体分割体2B(函体2)の下方位置に設けることが好ましい。
【0077】
それぞれの函体分割体2A、2Bの下端面部に相当する位置に止水材3が取り付けられ、それぞれの止水材3の内部には、冷媒配管5(5a、5b、5c)が配設されている。この冷媒配管5は橋梁下部工14の上部工に設置された冷媒供給手段10に接続されている。
【0078】
この冷媒配管5および冷媒供給手段10も第1実施形態と同仕様のものである。また、冷媒配管5を流通する冷媒Cも第1実施形態と同仕様のものである。
【0079】
それぞれの函体分割体2A、2Bには、函体分割体2A、2B(函体2)を橋梁下部工14に対して固定する固定手段が設けられている。この実施形態では、固定手段(上部固定手段7や下部固定手段8)として函体分割体2A、2B(函体2)と橋梁下部工14のフーチング14bにアンカーボルト等によって固定された剛性アングル部材が用いられている。
【0080】
この止水作業函1を用いて止水作業空間を構築する手順を以下に例示する。
【0081】
まず、それぞれの函体分割体2A、2Bに浮体を取付けて、図17に例示するように、橋梁下部工14の柱部14aの外周を囲む所定位置まで水上移動させて、止水材3を対向するフーチング14bに当接させて載置する。
【0082】
この際に、連通口6は開いたままにしておき、冷媒配管5には冷媒Cを流通させない状態にしておく。函体分割体2A、2Bの合わせ面にシール材3aを介在させて、それぞれの函体分割体2A、2Bのフランジ部にボルトを通して互いを組み付けることによって、筒状の函体2が形成される。これにより函体2は、図15、図16に例示するように、橋梁下部工14を貫通させた状態になる。
【0083】
尚、止水材3から突出する冷媒配管5の部分は、予め、止水材3の内部に埋設した冷媒配管5に接続しておくこともできるが、函体分割体2A、2Bを組み付けた後に、止水材3の内部の冷媒配管5に接続することもできる。
【0084】
止水材3は、フーチング14bの表面形状に沿うように変形して、止水材3がフーチング14bの表面にすき間なく密着する。函体2内部には、外部の水W1が自由に出入りする状態になる。
【0085】
次いで、函体2を固定手段7(8)により橋梁下部工14に固定するとともに、冷媒配管5に冷媒Cを流通させる。これによって、止水材3がフーチング14bの表面形状に沿って変形した状態で凍結する。このようにして、函体2は、固定手段7(8)および止水材3の凍着力によって、橋梁下部工14に対して所定位置に強固に固定される。また、第1実施形態と同様にフーチング14bの表面が複雑な形状であっても、止水材3によって、漏水を生じさせるすき間がないように函体2を所定位置に設置することができる。
【0086】
また、連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしているので、函体2の内部と外部との水面位置は常に同じレベルになる。そのため、第1実施形態と同様に水圧差に起因する外力が函体2に作用することがない。また、止水材3を連続気泡構造などの水透過性に優れた仕様にした場合にも、止水材3が凍結し難くなることもない。
【0087】
函体2を所定位置に固定した後は、連通口6を閉じた状態にして、函体2内部の水W1を函体2外部に排出することにより、函体2の内部に止水作業空間を構築することができる。
【0088】
この実施形態では、止水材3をフーチング14bの上面および側面に止水材3を当接させるので、これに対応して、函体分割体2A、2B(函体2)の下端面および下端面の内周側に止水材3を設けている。したがって、函体2を完全にフーチング14aの上に載置するように設置する場合には、函体分割体2A、2B(函体2)の下端面のみに止水材3を設ければよい。
【0089】
尚、第1実施形態において説明した種々の仕様は、第2〜4実施形態でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】連通口を開いて函体内部に水を流入させている本発明の止水作業函を例示する側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の正面図である。
【図4】図2の止水材を例示する一部拡大断面図である。
【図5】図4の止水材の変形例を示す断面図である。
【図6】函体を壁状体の表面に向かって移動させている状態を例示する断面図(図1のA−A断面相当図)である。
【図7】連通口を閉じて函体内部の水を外部に排出した止水作業函を例示する側面図である。
【図8】冷媒配管を例示する説明図である。
【図9】別の冷媒配管を例示する説明図である。
【図10】止水作業函の別の実施形態を例示する平面図である。
【図11】図10の函体分割体どうしを組み付ける工程を例示する説明図である。
【図12】図10のB−B断面図である。
【図13】図10の一部拡大図である。
【図14】止水作業函の別の実施形態を例示する斜視図である。
【図15】止水作業函の別の実施形態を例示する平面図である。
【図16】図15のC−C断面図である。
【図17】図15の函体分割体を所定位置に設置する工程を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 止水作業函
2 函体
2a 貫通孔
2A、2B 函体分割体
3 止水材
3a シール材
4 断熱材
5、5a、5b、5c 冷媒配管
6 連通口
7 上部固定手段
8 下部固定手段
8a アンカーボルト
8b ワイヤ
9、9a、9b、9c、9d、9e、9f 切り換え弁(切り換え手段)
10 冷媒供給手段
10a、10b、10c 開閉弁
10d 開放管
11 水分供給手段
12 壁状体
13、13a、13b、13c 杭状体
14 橋梁下部工
14a 柱部
14b フーチング
C 冷媒
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水作業空間の構築方法および止水作業函に関し、さらに詳しくは、水際の壁状体や水中に立設する杭状体や構造物が複雑な表面形状であっても、漏水を生じさせることなく、止水作業函を強固に安定して固定することができる止水作業空間の構築方法およびその止水作業函に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海や河川等の護岸を構成している矢板等の水際の壁状体や水中に立設する杭状体や構造物については、腐食程度の調査や、腐食が進行していれば補修工事を行なう必要がある。従来、このような調査や補修工事を行なう際には、例えば、水際の壁状体の場合では、前面および上面を開口した函体を、函体の前面の前端部に設けたゴム等弾性の止水材を水際の壁状体に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を形成するようにしていた。
【0003】
この際に、様々な表面形状の壁状体に対して止水材を圧着させ、壁状体と函体との間のすき間をなくして、形成した作業空間に漏水を生じさせないことが重要である。そこで、止水材として管状弾性体を採用し、この管状弾性体の内部に圧縮空気を供給することにより、様々な表面形状の壁状体に対して、すき間を生じさせることなく、函体2を設置できるようにした止水作業函が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この提案の止水作業函では、圧縮空気を充填した管状弾性体を、その弾性変形によって壁状体の表面形状に密着させるので、大きく変形させることができず、形状変形が大きい複雑な表面形状の壁状体に密着させることが困難であった。
【0005】
また、管状弾性体を壁状体に密着させた後は、函体内部が水を閉じ込めて閉じた状態になり、止水作業函を壁状体に固定するまでの間に、潮の干満等により水面が上昇すると止水作業函には追加的な浮力が生じ、また、水面が下降すると浮力が減じて函体内部に閉じ込めた水によって下方に追加的な力が生じる。このように、止水作業函の外部の水面位置の変動によって、止水作業函には上下方向に追加的な力が生じる。さらに、函体の内部と外部の水面位置の違い(水圧差)によっても函体には外力が作用するため、止水作業函を強固に安定して固定することが難しいという問題があった。上記した問題は、水際の壁状体だけでなく、水中に立設する杭状体や構造物にも当てはまるものである。
【特許文献1】実開平2−93330公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水際の壁状体や水中に立設する杭状体や構造物が複雑な表面形状であっても、漏水を生じさせることなく、止水作業函を強固に安定して固定することができる止水作業空間の構築方法およびその止水作業函を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の止水作業空間の構築方法は、前面および上面を開口した函体を、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材を水際の壁状体に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、この函体を所定位置に設置する際に、函体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記壁状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記壁状体に当接することにより壁状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にし
て、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の別の止水作業空間の構築方法は、上面を開口した有底の函体の底面の貫通孔に、水中に立設する杭状体を貫通させて、この杭状体の外周を囲むようにして、この函体を所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記函体の底面を分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記函体を形成して、前記貫通孔に貫通させた杭状体に前記止水材を当接させた状態で杭状体の外周を囲むように函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記杭状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記杭状体に当接することにより杭状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の別の止水作業空間の構築方法は、上面および下面を開口した筒状の函体に、水中に立設する構造物を貫通させた状態にして、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材を対向する面に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記筒状の函体を形成して、この函体に構造物を貫通させて前記止水材を対向する面に当接させた状態で、この函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記構造物に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記対向する面に当接することにより、この対向する面の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の止水作業函は、前面および上面を開口した函体と、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、前記函体に函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を設け、前記止水材が当接する水際の壁状体に対して、函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の別の止水作業函は、底面に貫通孔を有し上面を開口した有底の函体と、この貫通孔に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記函体をその底面を分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記貫通孔を貫通して前記止水材が当接する水中に立設する杭状体に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の別の止水作業函は、上面および下面を開口した筒状の函体と、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記函体を貫通して水中に立設する構造物に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、止水作業函を構成する函体に設けた弾性の止水材を水際の壁状体などの対向する対象物に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築するにあたり、止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にして、この函体を所定位置に設置する際に、函体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にすることにより、函体内部と外部とが同じ水面位置になるので、函体の外部の水面位置の変動に起因して、函体に不要な力が生じることがない。
【0014】
また、冷媒配管に冷媒を流通させて、対向する対象物に当接することにより対象物の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させることにより、この対象物が複雑な表面形状であっても、対象物に対して漏水を生じさせるすき間がないように、函体を設置することができる。
【0015】
そのため、対象物に対する固定手段に加えて、凍結している止水材によって、函体を対象物に対して強固に安定して固定することができる。
【0016】
そして、函体を所定位置に固定した後、連通口を閉じた状態にして、函体内部の水を外部に排出することで、函体内部に作業空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の止水作業空間の構築方法および止水作業函を、実施形態に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図4に例示するように、本発明の止水作業函1の第1実施形態は、前面および上面を開口した函体2と、函体2の前面の前端部に保水性を有する弾性の止水材3とを備えている。この実施形態では、函体2の前面の前端部はH鋼で構成され、函体2の左右側面、後面および底面は、鋼板等の剛性材により構成されている。函体2の材質、部材等はこれに限定されるものではない。
【0019】
函体2の底面には、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が設けられている。連通口6は底面に限らず、他の場所に設けることもできるが、できるだけ函体2の下方位置に設けることが好ましい。連通口6は1つに限らず、複数設けることもできる。
【0020】
止水材3は、函体2の前面の前端部を覆うように取付けられている。止水材3としては、樹脂材料、ゴム材料、金属繊維をスポンジ状に形成したもの、或いは、これらを組み合わせたもの等を例示することができる。スポンジ形状は、連続気泡構造、独立気泡構造、連続気泡と独立気泡との混合構造のいずれも採用することができる。大きな変形を確保するには連続気泡構造が好ましい。
【0021】
止水材3の内部には、冷媒配管5(5a、5b、5c)が配設されている。この実施形態では、3本の冷媒配管5が配設されているが、その数は特に限定されず、1本或いは複数本にすることもできる。冷媒配管5は、例えば、止水材3を冷媒配管5の外形形状に切取り、切取った箇所に埋設するようにして所定位置に配設する。
【0022】
冷媒配管5は壁状体12の上に設置された冷媒供給手段10に接続されている。冷媒配管5は、冷熱に対して耐久性があり、熱伝熱効率に優れた材質で形成されたものが好ましい。冷媒配管5の材質は、冷媒Cとして液体窒素を用いる場合は、例えば、ステンレス鋼や銅など、冷媒Cとしてブライン(高濃度塩化カルシウム水溶液)を用いる場合は、例えば、鉄などにする。
【0023】
函体2には、函体2上部を固定する上部固定手段7と、函体2下部を固定する下部固定手段8とが設けられている。この実施形態では、上部固定手段7として、L字状の剛性アングル部材が用いられ、函体2上部が壁状体12の上面に固定されている。また、下部固定手段8は、水中の壁状体12の表面に突設されたアンカーボルト8aとアンカーボルト8aと函体2の下部との間に張設されるワイヤ8bとで構成されている。上部固定手段7および下部固定手段8は、これに限定されず、他の構造(部材)を用いることもできる。
【0024】
また、函体2を壁状体12に対して安定に固定できれば、上部固定手段7、下部固定手段8の2種類の固定手段に限らず、1種類の固定手段のみを用いることもできる。例えば、上部固定手段7のみを用いることもできる。
【0025】
この実施形態では、さらに、止水材3上部に水Wを供給する水分供給手段11が設けられている。
【0026】
以下、この止水作業函1を用いた本発明の止水作業空間の構築方法の手順を説明する。
まず、図6に例示するように、止水作業函1の前面を、鋼矢板等の水際の壁状体12の表面に対向させる。この際に、連通口6は開いたままにしておき、冷媒配管5には冷媒Cを流通させていない状態にしておく。
【0027】
そして、函体2の前面を壁状体12の表面に向かって移動させ、止水材3を壁状体12の表面に当接させて、図2に例示するように、壁状体12の表面形状に沿うように変形させる。本発明の保水性を有する弾性の止水材3は、変形性能に優れているので、壁状体12の表面形状に沿うように予め形成していなくても、その表面形状にすき間なく沿うように変形することができる。このようにして、図1に例示するように、連通口6を通じて、函体2内部に外部の水W1が自由に出入りする状態になる。
【0028】
尚、壁状体12の表面との密着性をより高めるために、止水材3を、概略、壁状体12の表面形状に沿う形状に予め形成しておくこともできる。
【0029】
次いで、函体2上部を上部固定手段7により壁状体12に固定し、函体2下部を下部固定手段8により壁状体12に固定するとともに、冷媒配管5に冷媒Cとして液体窒素或いは、マイナス25℃程度のブラインを流通させる。冷媒配管5を流通する冷媒Cの冷熱により、止水材3に保水された水分が凍って、止水材3が壁状体12の表面形状に沿って変形した状態で凍結する。
【0030】
このように、上部固定手段7および下部固定手段8による固定に加えて、止水材3が変形した形状を維持して固化するとともに、凍結による凍着力により、函体2が壁状体12に対して所定位置に強固に固定される。大きな凍着力が確保できれば、上部固定手段7および下部固定手段8を小型化することもできる。
【0031】
さらに、函体2を所定位置に設置する際に、連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしているので、函体2内部と外部とが常に同じ水面位置になる。そのため、函体2(止水作業函1)を壁状体12の所定位置に固定するまでの間に、潮の干満等により水面が上昇しても函体2(止水作業函1)には追加的な浮力が生じることがない。また、水面が下降することにより浮力が減じても、函体2内部に存在する水W1によって下方に追加的な力が生じることもない。また、函体2の内部と外部の水面位置の違い(水圧差)による外力が函体2に作用することもない。
【0032】
このように、函体2(止水作業函1)の外部の水面位置の変動に起因して、函体2(止水作業函1)に上下方向に不要な追加的な力や水圧差に起因する外力が生じることがない。これにより、函体2(止水作業函1)を壁状体12に対して強固に安定して固定することができる。
【0033】
また、凍結する前の柔軟な止水材3を、当接させた壁状体12の表面形状に沿って変形させた後、冷媒配管5に冷媒Cを流通させて止水材3を凍結させるので、壁状体12が複雑な表面形状であっても、漏水を生じさせるすき間がないように、函体2を設置することができる。
【0034】
さらに、止水材3を連続気泡構造などの水透過性に優れた仕様にした場合には、函体2の内部と外部との間で水面位置に差があると、水W1が止水材3を通過して函体2の内部に出入りする。このように水W1が止水材3を通過する状態では、冷媒配管5に冷媒Cを流通させても止水材3が凍結し難くなるが、この実施形態では、このような問題が回避でき、止水材3を迅速に凍結させて函体2を所定位置に固定できるようになっている。
【0035】
次いで、連通口6を閉じた状態にして、函体2内部の水W1をポンプ等により函体2外部に排出することにより、函体2の内部に止水作業空間を構築することができる。
【0036】
止水材3は、図4に例示するように、単独で函体2の前面の前端部に設けるだけでなく、図5に例示するように、少なくとも一部を断熱材4によって覆うこともできる。断熱材4で止水材3を覆うことによって、冷媒Cによる冷熱の損失を抑えることができ、また、止水材3の凍結を促進できる。断熱材4で覆う領域は、主に、止水材3の前面以外の面(側面、背面)となる。
【0037】
また、函体2と冷媒配管5とを連結部材を介して連結固定する場合には、連結部材を通じて冷媒配管5の冷熱が逃げないように、断熱構造または断熱性に優れた材質で形成された連結部材を用いることが好ましい。
【0038】
冷媒Cは、冷媒配管5を流通すると次第に温度が高くなり、これに起因して止水材3の位置によって凍結具合にばらつきが生じる。そこで、これを防ぐために、図8に例示するように、複数設けた冷媒配管5a、5b、5cに流通方向を反対方向にして冷媒Cを流通させることもできる。
【0039】
図8の例では、それぞれの冷媒配管5a、5b、5cの先端部に、開放管10dを接続した開閉弁10a、10b、10cを配置し、冷媒供給手段10により供給された冷媒C(液体窒素)を、それぞれの開閉弁10a、10b、10cを介して開放管10dを通じて大気に開放する。冷媒Cとしてブラインを用いる場合は、例えば、開放管10dを冷媒供給手段10に接続して、ブラインを循環できるようにする。
【0040】
冷媒Cの流通方向によって生じる凍結具合にばらつきを防ぐために、図9に例示するように、冷媒配管5での冷媒Cの流通方向を所定時間で反対方向に変える方法を用いることもできる。
【0041】
図9の例では、冷媒供給手段10から延びる冷媒配管5に、三方弁等の切り換え弁9を配置し、切り換え弁9から左右に分岐した冷媒配管5に、冷媒配管5a、5b、5cを接続する。冷媒配管5aには、切り換え弁9を挟んだ左右位置に、開放管10dを接続した切り換え弁9a、9dを配置する。冷媒配管5bには、切り換え弁9を挟んだ左右位置に、開放管10dを接続した切り換え弁9b、9eを配置する。冷媒配管5cは、切り換え弁9を挟んだ左右位置に、開放管10dを接続した切り換え弁9c、9fを配置する。
【0042】
ここで、例えば、切り換え弁9を操作して冷媒供給装置10から供給される冷媒C(液体窒素)を左側のみに流通させるようにして、冷媒Cを左回りに流通させて、それぞれの冷媒配管5a、5b、5cの切り換え弁9d、9e、9fを介して開放管10dを通じて大気に開放する。この状態で冷媒Cを所定時間流通させた後は、切り換え弁9を操作して、冷媒供給装置10から供給される冷媒C(液体窒素)を右側のみに流通させるようにして、冷媒Cを右回りに流通させて、それぞれの冷媒配管5a、5b、5cの切り換え弁9a、9b、9cを介して開放管10dを通じて大気に開放する。
【0043】
このように、切り換え弁9を操作して、冷媒配管5での冷媒Cの流通方向を所定時間で順次、反対方向に変えることもできる。
【0044】
冷媒Cとしてブラインを用いる場合は、例えば、開放管10dを冷媒供給手段10に接続して、ブラインを循環できるようにする。
【0045】
また、水中にある止水材3と水上にある止水材3とでは保水量が異なる。これに起因して止水材3の位置によって凍結具合にばらつきが生じる。そこで、これを防ぐために、実施形態で例示したように、止水材3の上部に水を供給する水分供給手段11を設けることもできる。この構成にした場合には、函体2を壁状体12の所定位置に設置する際に、止水材3の上部に水分供給手段11から水Wを供給しながら設置作業を行なう。
【0046】
保水量の違いによって生じる凍結具合にばらつきを防ぐために、止水材3の保水性を上下方向で異ならせ、上方に配置された止水材3は、下方に配置された止水材3に比べて保水性が高い仕様にすることができる。
【0047】
具体的には、水上に配置される止水材3は、水中に配置される止水材3よりも優れた保水性を有するようにする。保水性を異ならせるには、例えば、止水材3の材質やスポンジ構造を異ならせる。
【0048】
また、止水材3の上下位置での保水量の違いによる凍結具合のばらつきを解消するために、上方に配置された止水材3については、壁状体12の表面形状に対する変形性能に悪影響が生じない程度に、陸上等で予め凍結させた状態にしておいて設置作業を行なうこともできる。
【0049】
止水作業函1を設置した後は、止水材3の凍結を維持するために冷媒配管5に冷媒Cを流通させるが、最初の段階(止水材3を凍結させる際)には、冷媒Cとして液体窒素またはブラインを流通させ、止水材3が凍結した後は、冷媒Cとしてブラインを流通させることもできる。温度コントロールが実質的にできない液体窒素に比べて、ブラインは温度コントロールが容易であるため、止水材3が凍結して止水作業函1を所定位置に設置した後の冷媒Cとして、ブラインを用いることにより、止水材3の凍結を維持管理し易くなる。
【0050】
尚、冷媒配管5のレイアウト、本数、冷媒Cの流通方向等は、例えば、現場を想定した温度解析等に基づいて決定する。また、止水材3の凍結を維持管理するために、例えば、止水材3の主要な箇所に熱電対等を配置して温度計測しながら冷媒Cの温度制御を行なう。
【0051】
このように、止水材3の凍結状態を適切に維持していれば、水面位置の上下変動があっても、函体2(止水作業函1)は強固に安定して固定されているので、ずれる等の不具合を生じることはない。
【0052】
海に面する壁状体12の所定位置に、函体2を設置する場合には、その海域の大潮の日または大潮の日の前後数日程度の日に作業を行ない、上げ潮の時に作業を開始して、潮が満ちた時に作業が完了するようにするとよい。これによれば、止水材3の上下位置での保水量の違いを生じにくくすることができ、凍結具合のばらつきを抑えることができる。
【0053】
図10〜図13に例示する止水作業函1の第2実施形態は、桟橋などの水中に立設する杭状体13を補修工事する場合等に用いられるものである。この止水作業函1は、上面を開口した有底の函体2を備えている。この函体2は底面に貫通孔2aを有し、貫通孔2aの内周面には保水性を有する弾性の止水材3が取り付けられている。この止水材3は、第1実施形態と同仕様のものである。
【0054】
函体2は、貫通孔2aを分割して底面を分割するように形成した2つの函体分割体2A、2Bで構成されているが、3つ以上の函体分割体によって函体2を構成することもできる。函体分割体2A、2Bは鋼板等で構成されている。それぞれの函体分割体2A、2Bは、互いの合わせ面にゴム等からなる一般的なシール材3aを介在させて組み付けることにより、函体2に形成される。
【0055】
一方の函体分割体2Bの底面には、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が設けられている。連通口6は、少なくとも1つの函体分割体2Bに1つ設ければよいが、複数設けることもできる。連通口6は底面に限らず、他の場所に設けることもできるが、できるだけ函体分割体2B(函体2)の下方位置に設けることが好ましい。
【0056】
函体2は、上記のような分割構造であるため、それぞれの函体分割体2A、2Bの貫通孔2aに相当する位置に止水材3が取り付けられている。それぞれの函体分割体2A、2Bに取り付けられた止水材3の内部には、冷媒配管5(5a、5b、5c)が配設されている。この冷媒配管5は杭状体13の上部工に設置された冷媒供給手段10に接続されている。
【0057】
この冷媒配管5および冷媒供給手段10も第1実施形態と同仕様のものである。また、冷媒配管5を流通する冷媒Cも第1実施形態と同仕様のものである。
【0058】
それぞれの函体分割体2A、2Bには、函体分割体2A、2B(函体2)の上部を杭状体13に対して固定する上部固定手段7が設けられている。この実施形態では、上部固定手段7として函体分割体2A、2B(函体2)の上部と杭状体13の上部工に固定された剛性アングル部材が用いられている。
【0059】
上部固定手段7に代えて、或いは上部固定手段7に加えて、函体分割体2A、2B(函体2)の下部を杭状体13に固定する下部固定手段を設けることもできる。上部固定手段7および下部固定手段は、第1実施形態と同仕様のものを用いることができる。
【0060】
この止水作業函1を用いて止水作業空間を構築する手順を以下に例示する。
【0061】
まず、それぞれの函体分割体2A、2Bに浮体を取付け、図11に例示するように水上移動させて、止水材3を杭状体13の表面に当接させる。この際に、連通口6は開いたままにしておき、冷媒配管5に冷媒Cを流通させない状態にしておく。函体分割体2A、2Bの合わせ面にはシール材3aを介在させて、それぞれの函体分割体2A、2Bのフランジ部にボルトを通して互いを組み付けて函体2を形成する。
【0062】
これにより函体2は、図10に例示するように、貫通孔2aを貫通する杭状体13の外周を囲んだ状態になる。尚、止水材3から突出する冷媒配管5の部分は、予め、止水材3の内部に埋設した冷媒配管5に接続しておくこともできるが、函体分割体2A、2Bを組み付けた後に、止水材3の内部の冷媒配管5に接続することもできる。
【0063】
止水材3は、杭状体13の表面形状に沿うように変形して、杭状体13の外周面にすき間なく密着する。函体2内部には、外部の水W1が自由に出入りする状態になる。
【0064】
次いで、函体2上部を上部固定手段7により杭状体13に固定するとともに、冷媒配管5に冷媒Cを流通させる。これによって、止水材3が杭状体13の表面形状に沿って変形した状態で凍結する。
【0065】
このようにして、函体2は、上部固定手段7および止水材3の凍着力によって、杭状体13に対して所定位置に強固に固定される。また、連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしているので、第1実施形態と同様に函体2の外部の水面位置の変動に起因して、函体2に上下方向に不要な追加的な力や水圧差に起因する外力が生じることがない。そのため、函体2を杭状体13に対して強固に安定して固定することができる。
【0066】
また、第1実施形態と同様に杭状体13の表面が複雑な形状であっても、止水材3によって、漏水を生じさせるすき間がないように函体2を所定位置に設置することができる。止水材3を連続気泡構造などの水透過性に優れた仕様にした場合にも、第1実施形態と同様に止水材3が凍結し難くなることもない。
【0067】
次いで、連通口6を閉じた状態にして、函体2内部の水W1を函体2外部に排出することにより、函体2の内部に止水作業空間を構築することができる。
【0068】
第2実施形態の止水作業函1では、1本の杭状体13の外周を1つの函体2で囲むようにしたが、図14に例示する第3実施形態のように、複数本の杭状体13a、13b、13cの外周を1つの函体2で囲む構造にした止水作業函1にすることもできる。
【0069】
この函体2は、上面を開口した有底の函体2の底面に、杭状体13a、13b、13cを貫通させる複数の貫通孔2a(この実施形態では3つの貫通孔2a)を有し、それぞれの貫通孔2aを分割して函体2の底面を分割するように形成した2つの函体分割体2A、2Bで構成されている。
【0070】
それぞれの函体分割体2A、2Bの貫通孔2aに相当する位置には、冷媒配管5を配置した止水材3が取り付けられ、冷媒配管5は冷媒供給手段10に接続されている。また、少なくとも1つの函体分割体2Bに、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が少なくとも1つ設けられており、貫通孔2aを貫通して止水材3が当接する杭状体13a、13b、13cに対して函体2を固定する固定手段7が設けられている。それぞれの函体分割体2A、2Bを、互いの合わせ面にシール材3aを介在させて組み付けることによって、函体2が形成される。
【0071】
その他の仕様は、第2実施形態と同様であり、止水作業空間を構築する手順も第2実施形態と同様である。
【0072】
この実施形態によっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができるが、複数の杭状体13a〜13cが、近接した位置で立設している場合や、複雑に交錯するように立設している場合であっても、1つの函体2で止水作業空間を構築することができるという利点がある。
【0073】
図15〜図17に例示する止水作業函1の第4実施形態は、橋梁下部工14などの水中に立設する構造物を補修工事する場合等に用いられるものである。この橋梁下部工14は、地盤に設置される平面状のフーチング14bから柱部14aを上方に突出させた形状になっている。
【0074】
この止水作業函1は、上面および下面を開口した筒状の函体2を備えている。この函体2の下端面部(下端面および下端面の内周側)には保水性を有する弾性の止水材3が取り付けられている。詳しくは、平面視で長方形の函体2において、長方形の長辺の下端面および短辺の下端面の内周側に止水材3が取り付けられている。この止水材3は、第1実施形態と同仕様のものである。
【0075】
函体2は、筒状を周方向に分割するようにして形成された2つの函体分割体2A、2Bで構成されているが、3つ以上の函体分割体によって函体2を構成することもできる。函体分割体2A、2Bは、それぞれのフランジ部にボルトを通して、互いの合わせ面にシール材3aを介在させて組み付けることにより、筒状の函体2に形成される。函体分割体2A、2B(函体2)の下端面部は、設置する橋梁下部工14の形状に合わせて形成される。止水材3は、その下端面部に取り付けられる。
【0076】
一方の函体分割体2Bの側面には、函体2の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口6が設けられている。連通口6は、少なくとも1つの函体分割体2Bに1つ設ければよいが、複数設けることもできる。連通口6は、できるだけ函体分割体2B(函体2)の下方位置に設けることが好ましい。
【0077】
それぞれの函体分割体2A、2Bの下端面部に相当する位置に止水材3が取り付けられ、それぞれの止水材3の内部には、冷媒配管5(5a、5b、5c)が配設されている。この冷媒配管5は橋梁下部工14の上部工に設置された冷媒供給手段10に接続されている。
【0078】
この冷媒配管5および冷媒供給手段10も第1実施形態と同仕様のものである。また、冷媒配管5を流通する冷媒Cも第1実施形態と同仕様のものである。
【0079】
それぞれの函体分割体2A、2Bには、函体分割体2A、2B(函体2)を橋梁下部工14に対して固定する固定手段が設けられている。この実施形態では、固定手段(上部固定手段7や下部固定手段8)として函体分割体2A、2B(函体2)と橋梁下部工14のフーチング14bにアンカーボルト等によって固定された剛性アングル部材が用いられている。
【0080】
この止水作業函1を用いて止水作業空間を構築する手順を以下に例示する。
【0081】
まず、それぞれの函体分割体2A、2Bに浮体を取付けて、図17に例示するように、橋梁下部工14の柱部14aの外周を囲む所定位置まで水上移動させて、止水材3を対向するフーチング14bに当接させて載置する。
【0082】
この際に、連通口6は開いたままにしておき、冷媒配管5には冷媒Cを流通させない状態にしておく。函体分割体2A、2Bの合わせ面にシール材3aを介在させて、それぞれの函体分割体2A、2Bのフランジ部にボルトを通して互いを組み付けることによって、筒状の函体2が形成される。これにより函体2は、図15、図16に例示するように、橋梁下部工14を貫通させた状態になる。
【0083】
尚、止水材3から突出する冷媒配管5の部分は、予め、止水材3の内部に埋設した冷媒配管5に接続しておくこともできるが、函体分割体2A、2Bを組み付けた後に、止水材3の内部の冷媒配管5に接続することもできる。
【0084】
止水材3は、フーチング14bの表面形状に沿うように変形して、止水材3がフーチング14bの表面にすき間なく密着する。函体2内部には、外部の水W1が自由に出入りする状態になる。
【0085】
次いで、函体2を固定手段7(8)により橋梁下部工14に固定するとともに、冷媒配管5に冷媒Cを流通させる。これによって、止水材3がフーチング14bの表面形状に沿って変形した状態で凍結する。このようにして、函体2は、固定手段7(8)および止水材3の凍着力によって、橋梁下部工14に対して所定位置に強固に固定される。また、第1実施形態と同様にフーチング14bの表面が複雑な形状であっても、止水材3によって、漏水を生じさせるすき間がないように函体2を所定位置に設置することができる。
【0086】
また、連通口6を開いて函体2内部に水W1を流入させた状態にしているので、函体2の内部と外部との水面位置は常に同じレベルになる。そのため、第1実施形態と同様に水圧差に起因する外力が函体2に作用することがない。また、止水材3を連続気泡構造などの水透過性に優れた仕様にした場合にも、止水材3が凍結し難くなることもない。
【0087】
函体2を所定位置に固定した後は、連通口6を閉じた状態にして、函体2内部の水W1を函体2外部に排出することにより、函体2の内部に止水作業空間を構築することができる。
【0088】
この実施形態では、止水材3をフーチング14bの上面および側面に止水材3を当接させるので、これに対応して、函体分割体2A、2B(函体2)の下端面および下端面の内周側に止水材3を設けている。したがって、函体2を完全にフーチング14aの上に載置するように設置する場合には、函体分割体2A、2B(函体2)の下端面のみに止水材3を設ければよい。
【0089】
尚、第1実施形態において説明した種々の仕様は、第2〜4実施形態でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】連通口を開いて函体内部に水を流入させている本発明の止水作業函を例示する側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の正面図である。
【図4】図2の止水材を例示する一部拡大断面図である。
【図5】図4の止水材の変形例を示す断面図である。
【図6】函体を壁状体の表面に向かって移動させている状態を例示する断面図(図1のA−A断面相当図)である。
【図7】連通口を閉じて函体内部の水を外部に排出した止水作業函を例示する側面図である。
【図8】冷媒配管を例示する説明図である。
【図9】別の冷媒配管を例示する説明図である。
【図10】止水作業函の別の実施形態を例示する平面図である。
【図11】図10の函体分割体どうしを組み付ける工程を例示する説明図である。
【図12】図10のB−B断面図である。
【図13】図10の一部拡大図である。
【図14】止水作業函の別の実施形態を例示する斜視図である。
【図15】止水作業函の別の実施形態を例示する平面図である。
【図16】図15のC−C断面図である。
【図17】図15の函体分割体を所定位置に設置する工程を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 止水作業函
2 函体
2a 貫通孔
2A、2B 函体分割体
3 止水材
3a シール材
4 断熱材
5、5a、5b、5c 冷媒配管
6 連通口
7 上部固定手段
8 下部固定手段
8a アンカーボルト
8b ワイヤ
9、9a、9b、9c、9d、9e、9f 切り換え弁(切り換え手段)
10 冷媒供給手段
10a、10b、10c 開閉弁
10d 開放管
11 水分供給手段
12 壁状体
13、13a、13b、13c 杭状体
14 橋梁下部工
14a 柱部
14b フーチング
C 冷媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面および上面を開口した函体を、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材を水際の壁状体に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、この函体を所定位置に設置する際に、函体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記壁状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記壁状体に当接することにより壁状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とする止水作業空間の構築方法。
【請求項2】
前記止水材の保水性を上下方向で異ならせ、上方では下方に比べて保水性を高い仕様にする、または、函体を所定位置に設置する際に、止水材の上部に水を供給しながら設置作業を行なう請求項1に記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項3】
上面を開口した有底の函体の底面の貫通孔に、水中に立設する杭状体を貫通させて、この杭状体の外周を囲むようにして、この函体を所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記函体の底面を分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記函体を形成して、前記貫通孔に貫通させた杭状体に前記止水材を当接させた状態で杭状体の外周を囲むように函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記杭状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記杭状体に当接することにより杭状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とする止水作業空間の構築方法。
【請求項4】
上面および下面を開口した筒状の函体に、水中に立設する構造物を貫通させた状態にして、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材を対向する面に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記筒状の函体を形成して、この函体に構造物を貫通させて前記止水材を対向する面に当接させた状態で、この函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記構造物に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記対向する面に当接することにより、この対向する面の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とする止水作業空間の構築方法。
【請求項5】
前記止水材の少なくとも一部を断熱材により覆うようにした請求項1〜4のいずれかに記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項6】
冷媒配管での冷媒の流通方向を所定時間で反対方向に変える、または、複数設けた冷媒配管に流通方向を反対方向にして冷媒を流通させる請求項1〜5のいずれかに記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項7】
冷媒として最初に液体窒素またはブラインを流通させ、止水材が凍結した後は、冷媒としてブラインを流通させる請求項1〜6のいずれかに記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項8】
前面および上面を開口した函体と、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、前記函体に函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を設け、前記止水材が当接する水際の壁状体に対して、函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とする止水作業函。
【請求項9】
前記止水材の保水性を上下方向で異ならせ、上方では下方に比べて保水性を高い仕様にする、または、止水材の上部に水を供給する水分供給手段を設ける請求項8に記載の止水作業函。
【請求項10】
底面に貫通孔を有し上面を開口した有底の函体と、この貫通孔に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記函体をその底面を分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記貫通孔を貫通して前記止水材が当接する水中に立設する杭状体に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とする止水作業函。
【請求項11】
上面および下面を開口した筒状の函体と、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記函体を貫通して水中に立設する構造物に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とする止水作業函。
【請求項12】
前記止水材の少なくとも一部を覆う断熱材を設ける請求項8〜11のいずれかに記載の止水作業函。
【請求項13】
冷媒配管での冷媒の流通方向を所定時間で反対方向に変える切り換え手段を設ける、または、冷媒配管を複数設けるとともに、これら冷媒配管に流通方向を反対方向にして冷媒を流通させる構成にする請求項8〜12のいずれかに記載の止水作業函。
【請求項1】
前面および上面を開口した函体を、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材を水際の壁状体に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、この函体を所定位置に設置する際に、函体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記壁状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記壁状体に当接することにより壁状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とする止水作業空間の構築方法。
【請求項2】
前記止水材の保水性を上下方向で異ならせ、上方では下方に比べて保水性を高い仕様にする、または、函体を所定位置に設置する際に、止水材の上部に水を供給しながら設置作業を行なう請求項1に記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項3】
上面を開口した有底の函体の底面の貫通孔に、水中に立設する杭状体を貫通させて、この杭状体の外周を囲むようにして、この函体を所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記函体の底面を分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記函体を形成して、前記貫通孔に貫通させた杭状体に前記止水材を当接させた状態で杭状体の外周を囲むように函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記杭状体に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記杭状体に当接することにより杭状体の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とする止水作業空間の構築方法。
【請求項4】
上面および下面を開口した筒状の函体に、水中に立設する構造物を貫通させた状態にして、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材を対向する面に当接させることにより所定位置に設置し、その後、この函体内部の水を外部に排出して函体内部に作業空間を構築する止水作業空間の構築方法であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように複数の函体分割体を形成し、それぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に止水材を取付け、この止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設した構造にし、それぞれの函体分割体を組み付けて前記筒状の函体を形成して、この函体に構造物を貫通させて前記止水材を対向する面に当接させた状態で、この函体を所定位置に設置する際に、前記函体分割体に設けた函体の内部と外部とを連通可能な連通口を開いて函体内部に水を流入させた状態にしながら、前記構造物に対して函体を固定手段で固定するとともに、前記冷媒配管に冷媒を流通させて、前記対向する面に当接することにより、この対向する面の表面形状に沿って変形した止水材を凍結させて函体を所定位置に固定した後、前記連通口を閉じた状態にして、この函体内部の水を外部に排出することを特徴とする止水作業空間の構築方法。
【請求項5】
前記止水材の少なくとも一部を断熱材により覆うようにした請求項1〜4のいずれかに記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項6】
冷媒配管での冷媒の流通方向を所定時間で反対方向に変える、または、複数設けた冷媒配管に流通方向を反対方向にして冷媒を流通させる請求項1〜5のいずれかに記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項7】
冷媒として最初に液体窒素またはブラインを流通させ、止水材が凍結した後は、冷媒としてブラインを流通させる請求項1〜6のいずれかに記載の止水作業空間の構築方法。
【請求項8】
前面および上面を開口した函体と、この函体の前面の前端部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記止水材が保水性を有するとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、前記函体に函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を設け、前記止水材が当接する水際の壁状体に対して、函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とする止水作業函。
【請求項9】
前記止水材の保水性を上下方向で異ならせ、上方では下方に比べて保水性を高い仕様にする、または、止水材の上部に水を供給する水分供給手段を設ける請求項8に記載の止水作業函。
【請求項10】
底面に貫通孔を有し上面を開口した有底の函体と、この貫通孔に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記函体をその底面を分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記貫通孔に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記貫通孔を貫通して前記止水材が当接する水中に立設する杭状体に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とする止水作業函。
【請求項11】
上面および下面を開口した筒状の函体と、この函体の下端面部に設けた弾性の止水材とを備えた止水作業函であって、前記筒状の函体を周方向に分割するように形成した複数の函体分割体で構成し、前記止水材が保水性を有し、この止水材をそれぞれの函体分割体の前記下端面部に相当する位置に取付けるとともに、この止水材の内部に冷媒配管を配設し、少なくとも1つの函体分割体に、函体の内部と外部とを連通可能な開閉する連通口を少なくとも1つ設け、前記函体を貫通して水中に立設する構造物に対して函体を固定する固定手段を設けたことを特徴とする止水作業函。
【請求項12】
前記止水材の少なくとも一部を覆う断熱材を設ける請求項8〜11のいずれかに記載の止水作業函。
【請求項13】
冷媒配管での冷媒の流通方向を所定時間で反対方向に変える切り換え手段を設ける、または、冷媒配管を複数設けるとともに、これら冷媒配管に流通方向を反対方向にして冷媒を流通させる構成にする請求項8〜12のいずれかに記載の止水作業函。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−65399(P2010−65399A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230311(P2008−230311)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(500038891)信幸建設株式会社 (16)
【出願人】(591045965)株式会社精研 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(500038891)信幸建設株式会社 (16)
【出願人】(591045965)株式会社精研 (5)
【Fターム(参考)】
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