説明

止水性充填材、該止水性充填材による人工多重バリア用充填材

【課題】カルシウムイオンを含む水に接触しても膨潤性が低下し難い止水性充填材と該止水性充填材を人工多重バリアの充填材とした人工多重バリア用充填材を提供する。
【解決手段】Na型ベントナイトを主体とした止水性充填材であって、前記ベントナイトにフライアッシュやシリカフューム等のポゾラン物質を内割りで30重量%以下混和してなる止水性充填材、及び、該止水性充填材を用いた充填材であって、放射性廃棄物処分施設の人工多重バリアに用いられる人工多重バリア用充填材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイトを主体とした非セメント系の止水性充填材、及び放射性廃棄物処分施設の人工多重バリアに用いる該止水性充填材による人工多重バリア用充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
ベントナイトは吸水性能に優れた材料であるとともに膨潤して通水可能な間隙を減少させ透水性を低減させる作用効果を有する。また、天然の粘土鉱物であり長期的に性能を維持することができる安定的な材料である。したがって、従来から掘削工事での安定液、地盤注入材、セメントスラリー添加剤など様々な分野で用いられてきている。
【0003】
近年では、産業廃棄物や放射性廃棄物の処分が問題となる中で、これらの最終処分施設で遮水材や充填材の材料として用いることが検討されてきている。例えば、特許文献1には、石炭灰とベントナイトを含有する遮水材が記載されている。また、特許文献2には、ベントナイト、火山ガラス、フライアッシュからなる放射性廃棄物埋設用充填材が記載されている。
【0004】
また、放射性廃棄物を超長期的に埋設処分する放射性廃棄物処分施設における人工多重バリアへの適用も検討されている。この人工多重バリアでは、膨潤性の高いNa型ベントナイトを主材とした低透水層あるいは緩衝材が放射性核種の低拡散層や支保工などとして用いられるセメント系材料に隣設されるが、施設周辺地下水との超長期間に渡る接触によるセメント系材料からのカルシウムイオンの溶脱、溶脱したカルシウムイオンを含む地下水の作用によるNa型ベントナイトのCa型化や溶解等の変質とそれに伴う膨潤性の低下が問題となる可能性があるため、この問題について精力的に検討が進められている。
【0005】
例えば、特許文献3には、ベントナイト系材料層を用いて構成させる遮水層と、水硬性セメントを結合材としたモルタル層またはコンクリート層のセメント系材料層で構成される構造材とが接する境界部にシリカ系材料からなる緩衝層を介在させ、該セメント系材料層からベントナイト材料層へのCaイオンの浸入を、この緩衝層でカルシウムシリケートを生成させることによって阻止する処分場構造物が記載されている。また、特許文献4には、Na型ベントナイトに炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを添加した低透水層の構成材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−2956号公報
【特許文献2】特許第4096328号公報
【特許文献3】特許第3984088号公報
【特許文献4】国際公開2009/153957号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、ベントナイトを使用した遮水材や充填材は幾つか知られているが、Na型ベントナイトを主体としたものではなく該ベントナイトのカルシウムイオンによる変質を考慮したものではないため、人工多重バリアへの適用は難しい。特許文献3の方法では、処分場構造物の寸法を少し大きくしなければならず、また、シリカ系材料を大量に用いてシリカ系材料層を新たに設けることになるので施工の手間やコストが問題となる。特許文献4の方法では、Na型ベントナイトのCa型化や品質低下の抑制には十分期待できるものの、Caイオンによるベントナイトの膨潤性の低下が抑制できるわけではなく、またベントナイトの力学的安定性の向上の面では必ずしも十分期待できるとは言えない。
【0008】
本願発明は、上述のような課題の解決を図ったものであり、カルシウムイオンを含む水に接触しても膨潤性が低下し難く力学的安定性の向上も図れる止水性充填材と該止水性充填材を人工多重バリアの低透水層の充填材とした人工多重バリア用充填材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る止水性充填材は、「Na型ベントナイトを主体とした止水性充填材であって、前記ベントナイトにポゾラン物質を内割りで30重量%以下混和してなることを特徴とする止水性充填材」である。
【0010】
Na型ベントナイトは高い膨潤力を有するので止水するのに好適である。ポゾラン物質はポゾラン活性を有し、カルシウムイオンと反応してカルシウムシリケートを生成するので、Na型ベントナイトのCa型による変質を抑制する。
【0011】
ポゾラン物質の添加量は、上記ベントナイトに対し内割りで30重量%以下が好ましい。ポゾラン物質が未混和では、Na型ベントナイトのCa型による変質を十分抑制できず、カルシウムイオンの存在によって止水性充填材の膨潤性が低下する。
【0012】
また、30重量%を超えると止水性充填材中のNa型ベントナイトの量が不足するので十分な止水性能は得られなくなる。下限値は特に限定されず、1重量%でも抑制効果があることを確認している。
膨張の絶対量を確保する観点から、より好ましくは、20重量%以下である。
【0013】
本願発明の止水性充填材は非セメント系であるので高い固化強度は有しないが、カルシウムイオンが存在するとそれとのポゾラン反応により少し固化し、充填後の力学的安定性は少し向上する。
【0014】
本願発明の止水性充填材は、地盤注入材、重金属等の有害物を含む廃棄物の処理材、放射性廃棄物処分施設での充填材等に使用できる。
【0015】
本願の請求項2に係る止水性充填材は、「前記ポゾラン物質がフライアッシュ又はシリカフュームのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の止水性充填材」である。
【0016】
ポゾラン物質にはフライアッシュ、シリカフューム、珪藻土、籾殻灰、活性白土、高炉スラグ、高炉フュームなど様々なものがあるが、ポゾラン反応性が高いものが好ましい。但し、高炉スラグのように高い潜在水硬性を有するものは固化が強くなりすぎてNa型ベントナイトの膨潤を抑えてしまうので好ましくない。中でも産業副産物であるフライアッシュとシリカフュームは、その高いポゾラン活性と僅かな固化力、安定した品質と供給、産業副産物の再利用による環境負荷低減等の観点から好ましい。
【0017】
本願の請求項3に係る人工多重バリア用充填材は、「請求項1又は2に記載の止水性充填材を用いた充填材であって、放射性廃棄物処分施設の人工多重バリアに用いられることを特徴とする人工多重バリア用充填材」である。
【0018】
上記の通り、本願発明の止水性充填材は様々な分野に利用できるが、中でも放射性廃棄物処分施設における人工多重バリアの低透水層には好適である。ここでは、本願発明の止水性充填材を人工多重バリアの専用充填材として限定するものである。本願発明の人工多重バリア用充填材を用いることにより隣設するセメント系材料からのカルシウムイオンの作用により膨潤力が低下することの無い低透水層が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の止水性充填材は、カルシウムイオンを含む水に接触しても膨潤性が低下し難いので、コンクリート等のセメント系材料からなる層や構造材に隣設される低透水層(遮水層)の充填材、カルシウムイオンを含む地下水の作用を受け易い箇所での止水性地盤注入材等として好適に用いることができる。
【0020】
また、本願発明の人工多重バリア用充填材を用いれば、人工多重バリアの構築におけるベントナイトの性能低下問題を簡便に解決でき、優れた低透水層が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】膨潤変形試験機の概要図である。
【図2】飽和水酸化カルシウム溶液下でのFA、SF混和率と膨潤率との関係を示す図である。
【図3】飽和水酸化カルシウム溶液下でのFA混和率と膨潤率との関係を示す図である。
【図4】低レベル放射性廃棄物用の人工多重バリアの一般的構造の概略図である。
【図5】高レベル放射性廃棄物用の人工多重バリアの一般的構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明について、より詳細に説明する。
【0023】
A.止水性充填材
本願発明の止水性充填材は、Na型ベントナイトを主体とした非セメント系の充填材であってポゾラン物質を含み、カルシウムイオンの作用によるCa型化、変質による膨潤力の低下を起し難いものである。そして、Na型ベントナイトが膨潤して通水可能な間隙を減少させることによって止水性を発揮する。また、カルシウムイオンが存在するとそれとポゾラン物質とのポゾラン反応やポゾラン物質中に存在するアルミニウム分との反応により僅かに固化する。
【0024】
ベントナイトは海底・湖底に堆積した火山灰や溶岩が変質することによって出来上がった粘土鉱物の一種で、モンモリロナイトを主成分とし石英、雲母、長石、ゼオライト等を含む。Na型とCa型の2種類があり、それぞれ有する特性が異なる。Na型はCa型に比べ膨潤性に優れているので、本願発明ではNa型を用いる。但し、陽イオン交換性があるため、カルシウムイオンの作用により容易にCa型に変化し膨潤性が低下するので、膨潤性を維持するためにはカルシウムイオンの作用を封じ込める必要がある。
【0025】
本願発明では、このカルシウムイオンの作用を封じ込めるためにポゾラン物質を用いる。ポゾラン物質がカルシウムイオンに優先して作用してポゾラン反応を起こすのでNa型ベントナイトのCa型化を抑制できる。ポゾラン反応とは、可溶性シリカが水酸化カルシウム(カルシウムイオン)と反応して不溶性かつ硬化性のカルシウムシリケートを生成する反応をいい、この反応を起こし易い物質がポゾラン物質である。
【0026】
ポゾラン物質には、前述の通り様々なものがあるが、本願発明では、膨潤性の低下抑制と力学的安定性の観点から、高いポゾラン活性とベントナイトの膨潤性を阻害しない程度の僅かな固化力を有するものが好ましい。例えば、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、アロフェン、活性白土、珪藻土、籾殻灰、ゼオライト等である。中でも、フライアッシュとシリカフュームは産業副産物の再利用による環境負荷低減といった観点から好ましい。
【0027】
フライアッシュは石炭火力発電所から発生する石炭灰の一種であり、微粉炭ボイラの燃焼排ガス中に浮遊する微細な石炭灰を電気集塵機で捕集したものである。ポゾラン活性を有し、コンクリート中に混和することによりワーカビリティの改善、水密性の向上等に寄与するので従来からコンクリートの混和材として用いられている。フライアッシュの品質はJIS A6201に規定されており、品質の順にI>II>III>IVとあり、本発明では特に限定されないが、II以上の規格を満足するものが好ましい。また、粉末度も限定されないが、ブレーン値で3500cm/g以上が好ましい。
【0028】
シリカフュームはアーク式電気炉などにより金属シリコンやフェロシリコンを精錬する際の排ガス中に含まれる産業副産物で、その成分は80%以上が非晶質のSiOであり、少量成分としてAl、Fe、CaO、TiOなどを含むものである。平均粒径が約0.1μmの球状粒子で、高いポゾラン活性を有している。本願発明では、その種類は特に限定されない。
【0029】
本願発明の止水性充填材において、Na型ベントナイトとポゾラン物質との割合は、ポゾラン物質を内割りで30重量%以内の範囲で混和するのが好ましい。膨張の絶対量を確保する観点から、より好ましくは20重量%以下でありポゾラン物質の種類によって範囲は異なる。
【0030】
例えば、ポゾラン物質がフライアッシュの場合は10〜20重量%が好ましく、シリカフュームのように高いポゾラン活性を持つものの場合は、より少量の混合で効果が得られる。例えば、シリカフュームの場合では3重量%以下でも効果が得られる。
【0031】
ポゾラン物質が未混和では、Na型ベントナイトのCa型による変質を十分抑制できず、カルシウムイオンの存在によって止水性充填材の膨潤性が低下する虞がある。また、30重量%を超えると止水性充填材中のNa型ベントナイトの量が不足するので十分な止水性能は得られなくなる。
【0032】
本願発明の止水性充填材の製造は、Na型ベントナイトとポゾラン物質の所定割合量を従来の混合機で混合することにより簡便に得られる。得られたものは、地盤注入材、重金属等の有害物を含む廃棄物の処理材、放射性廃棄物処分施設での充填材等に使用できるが、中でも、セメント系材料の溶脱により発生するカルシウムイオンの影響が懸念されている放射性廃棄物処分施設における人工多重バリア用の充填材として用いることは好ましい。
【0033】
次に、本願発明の止水性充填材について、カルシウムイオン存在下での膨張性能について行った確認実験について示す。
【0034】
[止水性充填材の膨張性能確認実験]
<使用材料>
・Na型ベントナイト(記号Be);クニゲルV1
・フライアッシュ(記号FA);能代産JISII種相当品(ブレーン値3840cm/g、密度2.20g/cm
・シリカフューム(記号SF);エジプト産
・粉末状Ca(OH)(記号CH);特級試薬
・水(記号W);蒸留水
【0035】
<膨潤性能確認実験>
1)供試体
所定配合の材料をオムニミキサで練り混ぜ試料を作製した。含水比の調整は霧吹きを用いて調整した。供試体は、圧密試験機を用いて試料の上端から400kPa程度の圧力を作用させ、数時間静置させることで静的に締め固めた。供試体寸法は、直径60mm、高さ5mmの円柱形のものとし、乾燥密度は劣化が評価しやすいように1.30g/cm、含水比21.0%とした。供試体の種類、材料の配合を表1に示す。
【0036】
2)膨潤変形試験
一定鉛直圧下における供試体の一次元変形量を測定することで、供試体の膨潤特性の評価を行った。試験はポゾラン反応を促進させるため40℃環境下で行った。容器を40℃環境下に設置した後、室温状態(40±5℃)の蒸留水又は飽和水酸化カルシウム溶液を注入した。溶液を注入する直前から、一定鉛直圧(10kPa)下における供試体の一次元変形量ΔSを変位計により経時的に測定し、最大の一次元変形量を推定した。鉛直圧は容器のキャップに鉄板を固定することで荷重を加えた。
【0037】
図1に使用した試験機の概要を示す。結果は次式に示す膨潤率εで整理した。
ε=ΔS/H×100
ここに、ε;膨潤率、ΔS;供試体の一次元変形量、H;初期供試体高さ
【0038】
3)試験結果
試験結果を表1と図2、図3に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
No.1〜No.3とNo.9〜No.11は蒸留水を注入したもの、No.4とNo.5〜No.8、No.12〜No.14は飽和水酸化カルシウム溶液を注入したものである。No.2〜No.3とNo.5〜No.8はポゾラン物質としてフライアッシュを用いたものであり、No.9〜No.14はシリカフュームを用いたものである。No.1とNo.4はポゾラン物質を含まないものである。
【0041】
上表の供試体の記号において、Beはベントナイトを、FAはフライアッシュを、SFはシリカフュームを、Wは蒸留水を、CHは飽和水酸化カルシウム溶液を示す。また、数値は各ポゾラン物質の混合率(内割り%)を示す。上表の結果を最大膨張率とポゾラン物質の混合率との関係でグラフ化したものが図2(フライアッシュを用いた場合)と図3(シリカフュームを用いた場合)である。
【0042】
例えば、No.1とNo.4からわかるように、ポゾラン物質を含まない場合は、カルシウムイオンの存在によって最大膨張率は92.7%減少してしまう。これに対し、No.2とNo.7からわかるように、フライアッシュを15重量%含むことによってカルシウムイオンが来ても最大膨張率の減少は22.5%まで抑制できる。
【0043】
また、No.9とNo.12、No.10とNo.13などからわかるように、シリカフュームを1〜3重量%含むだけでカルシウムイオンが来ても最大膨張率はほとんど減少しない。ポゾラン物質の混合率を高くすると最大膨張率の絶対値は低くなるが、これはポゾラン物質を内割りで混合しているのでベントナイトの絶対量が少なくなるからである。この点、シリカフュームは少量の混和で効果が得られ最大膨張率の絶対値を大きく低下させないので好ましい。
【0044】
また、図2、図3からわかるように、カルシウムイオンの存在下ではポゾラン物質が無混和の場合(No.4)に比べ、フライアッシュの場合は混合率が20重量%程度以下の範囲で、シリカフュームの場合は5重量%以下の範囲で最大膨張率は増加する。したがって、ベントナイトへの混和率を、フライアッシュの場合は0を超え20重量%以下、シリカフュームの場合は0を超え5重量%以下とするのは好ましい。
【0045】
最大膨張率の絶対値とカルシウムイオンの影響による低減量とから、最も好ましい混和率は、フライアッシュの場合は10〜15重量%、シリカフュームの場合は0を超え3重量%であることがわかる。
【0046】
B.人工多重バリア用充填材
上記本願発明の止水性充填材は、セメント系材料から溶脱したカルシウムイオンによるNa型ベントナイトの変質が想定される放射性廃棄物処分施設の人工多重バリアに好適なので、人工多重バリア専用の充填材とすることができる。
【0047】
余裕深度処分における人工多重バリアは、図4に示すように、地下トンネル10の中に構築され、コンクリート製ピット30、低拡散層40、低透水層50、バックフィル層60からなる構造のものが一般的である。
【0048】
コンクリート製ピット30は放射性廃棄物20を収納する収納スペースであり、普通コンクリートからなる密閉可能な部屋である。
【0049】
セメント系材料からなる低拡散層40は、コンクリート製ピット30に接する形でその外周域に設けられる。セメント系材料(コンクリート、モルタル、その他のセメント硬化体を形成し得る材料)を用いるのは、土圧に対して構造的な安定が確保できるからである。低拡散とは、放射性核種の拡散が1.0×10−12/s以下になるものを言う。
【0050】
低透水層50は、上記低拡散層40に接する形でその外周域に設けられる。材料は地下水と放射性物質の移動を主としてベントナイトの膨潤力により抑制するためNa型ベントナイトを主体とした非セメント系の充填材である。低透水とは、透水率が1.0×10−12m/s以下になるものを言う。
【0051】
バックフィル層60は、低透水層50に接する形でその外周域に設けられる。構成材料は掘削土砂を主体とした埋め戻し材である。該埋め戻し材にセメント等の固化材を含ませておくことは、耐久性向上の上で好ましい。
【0052】
人工多重バリアは、概して、上記のようにセメント系材料からなる低拡散層40とNa型ベントナイトを主体とした低透水層50とが隣接する形で設けられるので、超長期間の間に地下水等の作用により低拡散層40のセメント系材料からカルシウムイオンが溶脱し拡散して低透水層50のNa型ベントナイトのCa化による変質(膨潤力の低下等)を起す虞があるが、本願発明の人工多重バリア用充填材を用いて低透水層50を構築すれば、力学的安定性を確保しつつ膨潤力の低下を防げるので、ベントナイトによる膨潤力とポゾラン反応による組織の緻密化との相乗効果で止水性の高い低透水層50が得られる。
【0053】
高レベル放射性廃棄物の場合は、図5に示すように、岩盤400の中にガラス固化体100、オーバーパック200、緩衝材300からなる構造となり、地下の300m以上の深さに埋設される。
【0054】
ガラス固化体100は、直径約40cm、高さ約1.3mであり、放射性物質をガラスと一体化した状態で閉じ込めることにより放射性物質が地下水に溶けにくくなるようにする。
【0055】
オーバーパック200は、厚さ20cmの炭素鋼の容器であり、ガラス固化体100の放射能がある程度減衰するまでの期間ガラス固化体100と地下水の接触を防ぐ。
【0056】
緩衝材300は、厚さ70cm程度の粘土で締め固めたものであり、地下水および放射性物質の移動を抑制する。粘土は膨潤性能があり水の浸透が少ないベントナイト系材料が好適に用いられる。
【0057】
岩盤400の保持のためには、吹付けコンクリートなどのセメント系材料が用いられる。したがって、セメント系材料から溶脱したカルシウムイオンにより前記ベントナイト系材料の膨潤性能の低下が問題となる。この場合、本発明の人工多重バリア用充填材を用いて緩衝材300を構築すればベントナイト系材料の膨潤性能の低下を抑制できるので、緩衝材300によるバリア効果の著しい低下を防げる。
【符号の説明】
【0058】
1…膨潤変形試験機、2…供試体、3…溶液(蒸留水又は飽和水酸化カルシウム溶液)、4…変位計、5…鉄板(鉛直荷重)、6…固定用ネジ、
10…トンネル、20…放射性廃棄物、30…コンクリート製ピット、40…低拡散層、50…低透水層、60…バックフィル層、
100…ガラス固化体、200…オーバーパック、300…緩衝材、400…岩盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na型ベントナイトを主体とした止水性充填材であって、前記ベントナイトにポゾラン物質を内割りで30重量%以下混和してなることを特徴とする止水性充填材。
【請求項2】
前記ポゾラン物質がフライアッシュ又はシリカフュームのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の止水性充填材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の止水性充填材を用いた充填材であって、放射性廃棄物処分施設の人工多重バリアに用いられることを特徴とする人工多重バリア用充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−224694(P2012−224694A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91713(P2011−91713)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り Geo−Kanto 2010 第7回 地盤工学会関東支部発表会 発表講演集 発行日:平成22年11月 4日
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(592037907)株式会社デイ・シイ (36)
【Fターム(参考)】