説明

止水板付きコンクリートスラブの構築方法、及び止水板付きコンクリートスラブ

【課題】コンクリートスラブ表面の適正な位置に止水板を配置できるようにすると共に、該コンクリートスラブ中の鉄筋の機械的性質の劣化を防止する。
【解決手段】位置決め用治具5を型枠3に固定し、該位置決め用治具5により規定される位置に止水板(アングル材)1を配置する(図1(b) 参照)。その状態で、該止水板1を鉄筋4に機械的に接続し(同図(c) 参照)、前記位置決め用治具5を撤去する(同図(d) 参照)。その後、前記鉄筋4や前記止水板1の下部を埋設するようにコンクリートを打設し(不図示)、コンクリートスラブを構築する。該止水板1は適正な位置に配置され、その上部はコンクリートスラブから突出して止水機能を発揮することとなる。また、該止水板1の前記鉄筋4への固定は溶接ではなく機械的な接続により行われるため、該鉄筋4に熱履歴が加えられることがなく、その機械的性質の劣化を防止することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板の一部が埋設されると共に残りの部分が突出されてなるコンクリートスラブを構築する止水板付きコンクリートスラブの構築方法、及び止水板付きコンクリートスラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造の集合住宅などにおいては、掃き出し窓やドアの下枠と床との間には止水部材が配置されていて、室外側(ベランダ側や廊下側)から室内側への雨水の浸入を防止するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、コンクリートスラブにおける止水部材の取り付け構造の従来例を示す断面図であり、符号100は、室外側(ベランダ側や廊下側)を示し、符号100aは室外側の手摺を示し、符号101は、室内側となる部屋を示し、符号102は、コンクリートスラブを示す。また、符号103は、該室外側100と該部屋101との境界部に設けられて掃き出し窓(不図示)やドア(不図示)を載置する立ち上げ部を示す。さらに、符号104は、前記コンクリートスラブ102中に埋設された鉄骨を示し、符号105は、該鉄骨104に溶接された接合材を示し、符号106は、前記コンクリートスラブ102から一部が突出されるように該接合材105に取り付けられてなる止水板を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−291164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような構造のものでは、前記接合材105の溶接により前記鉄骨104には温度履歴が加えられるので、その温度履歴によって鉄骨104の機械的性質が劣化してしまうおそれがあった。また、前記止水板106は位置決めをしない状態で前記鉄骨104に固定されるので、該止水板を適切な位置に配置できない場合もあった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる止水板付きコンクリートスラブの構築方法、及び止水板付きコンクリートスラブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、止水板(図3(a) (b) の符号1参照)の一部(1a)が埋設されると共に残りの部分(1b)が突出されてなるコンクリートスラブ(2)を構築する、止水板付きコンクリートスラブ(2)の構築方法において、
コンクリートスラブ形成用の型枠(図1(a) の符号3参照)を設置すると共に、該型枠(3)内に鉄筋(4)を配置する工程と、
前記止水板(1)の位置決めのための位置決め用治具(図1(b) の符号5参照)を前記型枠(3)に固定する工程と、
該位置決め用治具(5)により規定される位置に前記止水板(1)を配置する工程(図1(b) 参照)と、
該止水板(1)を支持するための支持用治具(図3(b) の符号6参照)を前記鉄筋(4)に機械的に接続する工程と、
前記止水板(1)の位置が前記位置決め用治具(5)により規定された状態で該止水板(1)と前記支持用治具(6)とを溶接により接続する工程(図1(c) 参照)と、
該止水板(1)と該支持用治具(6)とが接続された後に、前記位置決め用治具(5)を前記止水板(1)及び前記型枠(3)から取り外す工程(図1(d) 参照)と、
該止水板(1)の一部(1a)、前記鉄筋(4)及び前記支持用治具(6)が埋設されるように前記型枠(3)内にコンクリート(図2(a) の符号C参照)を打設する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、図3(b) に例示するものであって、請求項1に係る発明において、前記支持用治具(6)は、前記鉄筋(4)の一部を囲繞するような形状であって、ボルト(7)及びナット(8)により該鉄筋(4)に機械的に接続され、
該支持用治具(6)と前記止水板(1)とは介装部材(9)を介して接続されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、図1(b) に例示するものであって、請求項1又は2に係る発明において、前記位置決め用治具(5)の前記型枠(3)への固定は、該位置決め用治具(5)を前記型枠(3)の水平面(3a)に載置することにより行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、図3(a) (b) に例示するものであって、止水板(1)の一部(1a)が埋設されると共に残りの部分(1b)が突出されてなる止水板付きコンクリートスラブ(2)において、
該コンクリートスラブ(2)に埋設されてなる鉄筋(4)と、
該鉄筋(4)に機械的に接続された状態で前記コンクリートスラブ(2)に埋設されてなる支持用治具(6)と、
を備え、
前記止水板(1)は前記支持用治具(6)に溶接により接続されてなることを特徴とする。
【0011】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至4に係る発明によれば、前記支持用治具の前記鉄筋への接続は溶接ではなく機械的な接続により行われるので、該鉄筋に温度履歴が加えられることが無く、鉄筋の機械的性質の劣化を防止することができる。また、本発明によれば、前記止水板の前記鉄筋への固定は、前記位置決め用治具によって該止水板の位置決めをした状態で行うので、該止水板を適切な位置に配置することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a) は型枠及び鉄筋を配置する工程の一例を示す断面図であり、同図(b) は位置決め用治具及び止水板を配置する工程の一例を示す断面図であり、同図(c)は止水板を鉄筋に固定する工程の一例を示す断面図であり、同図(d) は位置決め用治具を撤去する工程の一例を示す断面図である。
【図2】図2(a) は型枠内にコンクリートを打設する工程の一例を示す断面図であり、同図(b) は型枠を撤去する工程の一例を示す断面図であり、同図(c)は立ち上げ部を形成する工程の一例を示す断面図である。
【図3】図3(a) は止水板付きコンクリートスラブの構造の一例を示す断面図であり、同図(b) は止水板の取り付け構造の一例を示す拡大断面図である。
【図4】図4は、コンクリートスラブにおける止水部材の取り付け構造の従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に係る止水板付きコンクリートスラブの構築方法は、止水板(図3(a) (b) の符号1参照)の一部1aが埋設されると共に残りの部分1bが表面から突出されてなるコンクリートスラブ2を構築する方法であって、
・ 図1(a) に示すように、コンクリートスラブ形成用の型枠3を設置すると共に、該型枠3内に鉄筋(例えば、梁主筋)4又は鉄骨(以下、単に「鉄筋」と称する)を配置する工程と、
・ 図1(b) に示すように、前記止水板1の位置決め(高さ決めや紙面左右方向の位置決め)のための位置決め用治具5を前記型枠3に固定する工程と、
・ 同図に示すように、該位置決め用治具5により規定される位置に前記止水板1を配置する工程と、
・ 該止水板1を支持するための支持用治具(図3(b) の符号6参照)を前記鉄筋4に機械的に接続する工程と、
・ 図1(c) に示すように、前記止水板1の位置が前記位置決め用治具5により規定された状態で該止水板1と前記支持用治具6とを溶接により接続する工程と、
・ 該止水板1と該支持用治具6とが接続された後に、前記位置決め用治具5を前記止水板1及び前記型枠3から取り外す工程(図1(d) 参照)と、
・ 該止水板1の一部1a、前記鉄筋4及び前記支持用治具6が埋設されるように前記型枠3内にコンクリートCを打設する工程(図2(a) 参照)と、
を備えている。なお、この止水板1は、図3(a) に示すように室外側(ベランダ側や廊下側)Aと室内側Bとの境界に位置するように配置すると良い。また、機械的な接続とは、ボルト・ナットやリベット等の締結力を利用した接続をいう。本発明によれば、前記支持用治具6の前記鉄筋4への接続は溶接ではなく機械的な接続により行われるので、該鉄筋4に温度履歴が加えられることが無く、鉄筋4の機械的性質の劣化を防止することができる。また、本発明によれば、前記止水板1の前記鉄筋4への固定は、前記位置決め用治具5によって該止水板1の位置決めをした状態で行うので、該止水板1を適切な位置に配置することが出来る。
【0016】
この場合、前記支持用治具6を、前記鉄筋4の一部を囲繞するような形状とし、ボルト7及びナット8により該鉄筋4に機械的に接続すると良い。また、該支持用治具6と前記止水板1とは、直接接続するのではなく、何らかの介装部材(長尺状のアーム部材や、板状部材など)9を介して間接的に接続するようにしても良い。なお、複数個の支持用治具6を複数本の鉄筋4に接続すると共に、該複数個の支持用治具6にそれぞれ介装部材9を接続して、該介装部材9により前記止水板1を支持するようにすると良い。
【0017】
一方、前記位置決め用治具5の前記型枠3への固定は、該位置決め用治具5を前記型枠3の水平面3aに載置することにより行うと良い。
【0018】
また一方、本発明に係る止水板付きコンクリートスラブ2は、止水板1の一部1aが埋設されると共に残りの部分1bが突出されてなるスラブであって、該コンクリートスラブ2に埋設されてなる鉄筋4と、該鉄筋4に機械的に接続された状態で前記コンクリートスラブ2に埋設されてなる支持用治具6と、を備え、前記止水板1は前記支持用治具6に溶接により接続されてなることを特徴とする。
【0019】
なお、図1(b) 〜(d) に示す位置決め用治具5は門型の形状をしているが、もちろんこれに限られるものではなく、門型以外の形状であっても良い。また、前記止水板1には板状の部材やアングル材(L型鋼)を用いると良い。さらに、前記支持用治具6としては日本仮設株式会社製の“Rクリップ”などを用いると良い。またさらに、前記止水板1を囲繞するように立ち上げ部(図2(c) の符号10参照)を配置し、該立ち上げ部10の上方には掃き出し窓やドアを配置すると良い。
【符号の説明】
【0020】
1 止水板
1a 止水板の一部
1b 止水板の残りの部分
2 止水板付きコンクリートスラブ
3 型枠
3a 型枠の水平面
4 鉄筋
5 位置決め用治具
6 支持用治具
7 ボルト
8 ナット
9 介装部材
C コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水板の一部が埋設されると共に残りの部分が突出されてなるコンクリートスラブを構築する、止水板付きコンクリートスラブの構築方法において、
コンクリートスラブ形成用の型枠を設置すると共に、該型枠内に鉄筋を配置する工程と、
前記止水板の位置決めのための位置決め用治具を前記型枠に固定する工程と、
該位置決め用治具により規定される位置に前記止水板を配置する工程と、
該止水板を支持するための支持用治具を前記鉄筋に機械的に接続する工程と、
前記止水板の位置が前記位置決め用治具により規定された状態で該止水板と前記支持用治具とを溶接により接続する工程と、
該止水板と該支持用治具とが接続された後に、前記位置決め用治具を前記止水板及び前記型枠から取り外す工程と、
該止水板の一部、前記鉄筋及び前記支持用治具が埋設されるように前記型枠内にコンクリートを打設する工程と、
を備えたことを特徴とする、止水板付きコンクリートスラブの構築方法。
【請求項2】
前記支持用治具は、前記鉄筋の一部を囲繞するような形状であって、ボルト及びナットにより該鉄筋に機械的に接続され、
該支持用治具と前記止水板とは介装部材を介して接続されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の、止水板付きコンクリートスラブの構築方法。
【請求項3】
前記位置決め用治具の前記型枠への固定は、該位置決め用治具を前記型枠の水平面に載置することにより行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の、止水板付きコンクリートスラブの構築方法。
【請求項4】
止水板の一部が埋設されると共に残りの部分が突出されてなる止水板付きコンクリートスラブにおいて、
該コンクリートスラブに埋設されてなる鉄筋と、
該鉄筋に機械的に接続された状態で前記コンクリートスラブに埋設されてなる支持用治具と、
を備え、
前記止水板は前記支持用治具に溶接により接続されてなる、
ことを特徴とする止水板付きコンクリートスラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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