説明

止水板

【課題】止水板の施工現場では、コンクリート躯体の表面と止水板の翼部との間に空気が挟み込まれ、打設後にこれがそのまま空気溜まり(S)となってしまうことは避けられない。本発明はかかる施工現場での課題を解決することを目的とする。
【解決手段】本発明で提供する止水板は、コンクリ−ト躯体の変位を吸収するバルブと、前記バルブの左右に形成された翼部と、前記左右の翼部に形成されコンクリート躯体中に埋設される突起と、よりなる止水板であって、前記翼部にその表裏に貫通する複数の空気抜き穴と、当該空気穴を埋める塞ぎ栓とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート躯体の打継目に沿って付設され、この打継部目地からの水の侵入を防ぐ帯状のエラストマー製止水板(以下、問題がなければ単に止水板と称する)に関するものであり、特に言えば、コンクリ−ト躯体の打継部目地の際の先付け止水板に係るものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリ−ト躯体の耐震性能の要求として、止水及び変位吸収を目的とし、先付け施工ができる機能が求められ、変位吸収に対しては、例えば、伸びが60mm、圧縮15mm、沈下15mm以上の変位性能を有するもので、作用水圧0.3MPa以上のものが要求され、しかも、変位吸収時の変形部分から土砂の侵入がないことが必要とされている。
【0003】
勿論、隣接するコンクリート躯体間の境界である打継部目地へ水が侵入すると、例えばトンネル、建築物等の内部に漏水が生じることになる。この漏水を防ぐ方法としてコンクリート躯体の打継部目地に沿って帯状の止水板を埋設する防水工法が採用されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載された止水板20の例を図1(1)に示すが、コンクリート躯体30a、30bの打継部目地に沿って配置され、コンクリ−ト躯体30a、30bの変位を吸収するバルブ21と、当該対向するコンクリ−ト躯体30a、30bの外面に当接され、前記バルブ21の左右に形成された翼部22、23と、この対向するコンクリート躯体30a、30b中に埋設され、前記翼部22、23に形成された先端部に膨出部26を備えた突起24,25と、よりなる止水板であって、 施工工期が短く、施工コストが安いこと、止水が打設されたコンクリ−ト躯体30a、30bに対して外防水であること、地震時の変位吸収が大きいこと、この変位吸収部より土砂が流入しないこと、等の特徴を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-266062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上記したように、特許文献1に記載された発明は、従前の止水板と比較して優れた面が多いが、実際の施工現場では更に改良が要請されていることも事実である。
【0007】
即ち、実際の施工現場では、図1(2)に示すようにコンクリート躯体30aが先行打設され、この際、止水板20の一方側の突起24が一体に打ち込まれる。次いで、コンクリート躯体30bの後行打設の際に、他方側の突起25が一体に打ち込まれて施工が終了するが、実際の現場では、コンクリート躯体30bの表面と止水板20の突起25を備える翼部23との間に空気が挟み込まれ、打設後にこれがそのまま空気溜まり(S)となってしまうことは避けられない。
【0008】
このため、施工現場では、両者間の空気を排出させるべく、図1(3)に示すように止水板20の翼部23の一部を強制的にめくり挙げて(矢印A)、空気逃がしを行う必要があった。しかるに、この翼部23のめくり挙げ作業は、翼部が長尺で、かつ、かなりの重量もあり、また、作業中に止水板20の変形や位置のズレなどが生じる可能性もあり、慎重に行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明で提供する止水板は、対向するコンクリート躯体の打継部目地に沿って配置され、コンクリ−ト躯体の変位を吸収するバルブと、当該対向するコンクリ−ト躯体の外面に当接され、前記バルブの左右に形成された翼部と、前記左右の翼部の同一側に形成され、先端部に膨出部を備えて対向するコンクリート躯体中に埋設される突起と、よりなる止水板であって、前記翼部にその表裏に貫通する複数の空気抜き穴と、当該空気穴を埋める塞ぎ栓とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成を備えた止水板は、実際の施工現場にて翼部のめくり挙げ作業を必要とせずに空気溜まりの弊害を排除できたものであり、施工作業後に、空気抜き穴に対して塞ぎ栓を接着固定するだけでよく、現場での施工作業性が著しく向上したものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は特許文献1に記載された止水板の適用例を示す図である。
【図2】図2は本発明の止水板の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は図2の止水板の主要部の断面図である。
【図4】図4は本発明の止水板の翼部の例を示す平面図である。
【図5】図5は本発明の止水板の塞ぎ栓の他の例を示す図である。
【図6】図6は本発明の止水板の変形例を示す斜視図である。
【図7】図7は本発明の止水板に補強材を埋設した図である。
【図8】図8は本発明の止水板の施工例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、コンクリート躯体の打継部目地の例として、開削トンネルの函体の打継部目地を例にとって説明するが、コンクリート躯体の打継部目地の外周に配置する止水板は、前記したようにコンクリート充填を密にするため翼部における空気溜りを解消する必要がある。即ち、コンクリート函体頂部の打継部目地に配した止水板の翼部にあっては、コンクリート充填作業により空気溜りが必然に発生するもので、コンクリート充填不足による構造強度低下、及び地下水の浸入による構造物劣化を助長せしめる原因となり得るため、空気溜りを解消し、コンクリート充填を密にする構造を持った止水板が要求されている。
【0013】
本発明は、打設コンクリートによる函体躯体の打継部目地の外周に埋設、一体化されて打継部目地を塞いで水密性を確保する帯板状止水板に関するものであり、コンクリートに接する翼部に空気抜きを可能とする構造としたものである。具体的には、コンクリート函体の頂部(又は天端部、天井部)外周に設置された止水板の翼部にこの表裏に貫通する空気抜き穴を備え、コンクリート打設時に止水板の翼部に生じる空気の溜りをこの空気抜き穴より逃がし、コンクリート充填を密に、確実にすることが出来るようになったものである。
【0014】
本発明の止水板は、各構成全体がエラストマー(ゴム或いはゴム様の樹脂材料)で一体に成形されたものである。通常は押出機にて押出成形されるものが特に好ましいが、場合によっては長尺材として加硫(架橋)成形したものであってもよい。勿論、用いられるエラストマーに対して、これを補強する各種繊維材、プレート材、等を所望によりエラストマー中に埋設し、添設できることはいうまでもない。これら補強材は翼部のみならず、突起に対しても埋設可能である。
【0015】
そして、変位吸収のためのバルブを中央部に設けたものであり、止水のための突起をバルブ両端に形成した翼部に配置して一体構造としたものである。中央のバルブは、オメガ型、台型、折り返し型形状とするものであり、変位吸収量により大きさ・形状を変えることができる。前記バルブは閉じていることにより変形時及び変形後も土砂の侵入を防止するものである。
【0016】
そして、止水のための突起は左右翼部の同一側に形成され、先端に膨出部を備えており、埋設されたコンクリ−ト躯体からの抜けを防止し、止水性を確保するための膨出部を有するものである。この膨出部は、作用水圧、或いは伸びの作用によりコンクリ−ト躯体中に食い込むセルフシ−ル機構とするのが望ましい。
【0017】
翼部に形成される空気抜き穴は翼部の長手方向に点設されるのがよく、又、空気抜き穴に対する塞ぎ栓はコンクリート打設作業後にこの穴内に押し込まれるものが一般的である。塞ぎ栓はエラストマー、プラスチック、場合によっては金属等で構成されるが、好ましくは、止水板と同質の材料若しくは圧縮変形の小さい材料にて構成されるのが好ましい。
【0018】
尚、塞ぎ栓は、空気は透過するが、コンクリートは透過しない材質でできているのもよく、例えば、連通気泡性のプラスチックフォーム材や、透気性のある繊維材料でも良い。この場合には、コンクリート打設作業前に塞ぎ栓を空気抜き穴内にセットしておくものである。
【0019】
塞ぎ栓は、止水板とは別体のものでなくともよく、空気抜き穴に対して止水板と一体とされたフラップ状のものでもよい。
【実施例】
【0020】
図2は、本発明のゴム製の止水板10の斜視図であり、図3はその主要部の断面図である。かかる止水板10は、中央にバルブ11が位置し、この左右に翼部12、13が形成され,この翼部に12、13に先端部に膨出部16を備えた突起14、15が形成されている。止水板10の大きさは特に限定されるものではなく、例えば、幅が170〜450mm、高さが20〜130mm、翼部12、13のゴムの厚さが5〜30mm程度であり、任意に選択される。又、バルブ11の形状、突起14、15の形状もいずれも任意に選択されるものである。
【0021】
翼部12、13に形成する空気抜け穴17は、翼部12、13の長手方向に点在しており、この例では直径10mmの円形をなしている。尚、空気抜け穴17の形状及びその大きさも任意に選択可能であり、図4に示すように、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形、スリット状等選択は可能である。
【0022】
この空気抜け穴17に差し込まれる塞ぎ栓18は、翼部12、13に形成された空気抜け穴17の形状に合わせた翼部12、13と同質のものが好ましく、この空気抜け穴17よりやや大きめ(0〜10mm程度)のものがよい。図3の例では、コンクリートが打設され、空気が抜かれた後に空気抜け穴17をあとから塞ぐ手段がとられるものである。
【0023】
図5にて示す塞ぎ栓18は、コンクリート打設前に空気抜け穴17にセットするものである。即ち、透気性の連通気泡体からなる塞ぎ栓18aであって、例えば、セル膜を除去したウレタンフォームからなるものであり、空気は通過するが、コンクリートは通過しないためにそのまま空気抜け穴17を塞ぐ栓18となる。
【0024】
尚、止水板10の翼部12、13と塞ぎ栓18とを一体として形成することも可能であり、図6はその例を示す図である。即ち、翼部12,13に空気抜け穴17を形成する際、一部をつなげてフラップ状18bとしておき、空気抜けに必要なときだけ、これを持ち上げておくものである。
【0025】
尚、本発明の止水板10にあって、バルブ部、翼部、突起部等に各種の補強材を埋入することが出来ることは言うまでもなく、図7に示すように各種のプレート材19aや繊維材19或いはこれらの組み合わせからなるもので補強することが可能である。
【0026】
図8は、本発明の止水板10を用いたコンクリートの打設順を示したものであり、コンクリート躯体30aが先行打設され、この際、止水板10の一方側の突起14が一体に打ち込まれる。次いで、コンクリート躯体30bの後行打設の際に、他方側の突起15が一体に打ち込まれて施工が終了するが、コンクリート躯体30bの表面と止水板10の突起15を備える翼部13との間の空気は、従来の止水板20では、既に説明したようにこのまま空気溜まりを形成してしまう。
しかしながら、本発明の止水板10によれば、翼部13の表裏に貫通して形成された空気抜け穴17を通って空気は外部に逃げてしまい、その後、かかる空気抜け穴17内に塞ぎ栓18を埋め込んで作業が終了することとなる。このように、コンクリートの打設後に翼部13の内側に空気溜まりを形成してしまうことは避けられる。勿論、翼部12側も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、道路、トンネル、共同溝等の地下構造物の耐水性と耐震性を兼備した止水板を提供するものであり、コンクリート構造物間に大きな相対的ずれが生じた場合にも、高い止水性を維持することができる。そして、作業性が著しく向上したものであり、コストの低減(材料費、施工費のダウン、工期短縮)が顕著である。
【符号の説明】
【0028】
10 止水板
11 バルブ
12、13 翼部
14、15 突起
16 膨出部
17 空気抜け穴
18、18a、18b 塞ぎ栓
30a、30b コンクリート躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向するコンクリート躯体の打継部目地に沿って配置され、コンクリ−ト躯体の変位を吸収するバルブと、当該対向するコンクリ−ト躯体の外面に当接され、前記バルブの左右に形成された翼部と、前記左右の翼部の同一側に形成され、先端部に膨出部を備えて対向するコンクリート躯体中に埋設される突起と、よりなる止水板であって、前記翼部にその表裏に貫通する複数の空気抜き穴と、当該空気穴を埋める塞ぎ栓とを備えたことを特徴とするコンクリ−ト躯体用止水板。
【請求項2】
前記止水板がエラストマー製である請求項1記載のコンクリ−ト躯体用止水板。
【請求項3】
前記塞ぎ栓がエラストマー製である請求項1記載のコンクリ−ト躯体用止水板。
【請求項4】
前記翼部に補強部材を埋設した請求項1又は2記載のコンクリ−ト躯体用止水板。
【請求項5】
前記翼部に埋設した補強部材がエラストマー、繊維材料、金属材料から選ばれたものである請求項4記載のコンクリ−ト躯体用止水板。
【請求項6】
前記突起に補強部材を埋設した請求項1又は2記載のコンクリ−ト躯体用止水板。
【請求項7】
前記バルブに補強部材を埋設した請求項1又は2記載のコンクリ−ト躯体用止水板。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−270481(P2010−270481A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122104(P2009−122104)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(595122187)ブリヂストンケービージー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】