説明

止水装置

【課題】高い止水効果を得るとともに、先導体を支持可能な止水装置を提供すること。
【解決手段】推進方向に沿って土中を推進する先導体110により坑口エントランス210から推進し、推進管130を設置させる推進工法に用いられ、先導体110の発進及び到達時の少なくとも一方において、坑口エントランス210に設けられる止水装置1として、円筒状の第1部材24及び第1部材24の両端側にそれぞれ固定される円環状の第2部材25を具備し、一方の第2部材25を介して坑口エントランス210に固定される固定部材21と、弾性変形する樹脂材料で形成され、固定部材21の内周側であって第1部材24及び第2部材25間に固定して設けられ、その内面及び第1部材24間に空気が封入されることにより固定部材21の内周側で環状に膨張するとともに、膨張により先導体110の外周面及び溝130に密着する膨張部材22と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進装置の先導体が通過する坑口に設けられる止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、土中を掘削する工法として、推進工法が知られている。この推進工法は、発進立坑から元押装置で先導体に推進力を加えて土中を推進させる推進装置の先導体を用いて土中を掘削する。また、順次先導体の後方に配管用パイプとなる推進管を順次接続させて、到達立坑まで掘削させる。
【0003】
到達立坑まで掘削したら、到達立坑より先導体を撤去することで、推進管により当該土中に配管用パイプが配設される。なお、推進工法においては、先導体のカッタ回転により土中を掘削すると同時に、切羽面に添加剤を注入することで、掘削土を、流動性を持った泥土に変換させる。
【0004】
このような推進工法を用いて掘削される土中には、土砂や岩石だけでなく、雨水や地下水等が含有することがある。このような水が含有された土中は、土質が軟らかく、このため、当該土中を掘削する場合には、先導体の発進又は到達時に先導体の周囲の土及び水が立坑に流入する虞がある。
【0005】
そこで、坑口付近に薬液を注入し、土質を改善し、止水を行う補助工法を用いた技術が知られている。しかし、補助工法により土質の改良を行う範囲は、広い範囲となるため、施行期間が長期となる。また、推進工法においては、土圧を高めることが望まれるが、薬液により土質を改善する技術では、土圧を高めることが難しい。
【0006】
さらに、先導体は、その外周に、土及び水を排出する排出溝を備えるものもあり、当該先導体を用いた場合に当該排出溝から立坑へと土や水が流入することを防止するとともに、排出溝を備えない先導体に比べ、土圧を保持することが難しい。
【0007】
そこで、このような先導体の排出溝に対向して設けられ、当該排出溝の凹壁面に沿接して排出溝を封止するガスバックを有する坑口の止水構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、坑口と当該排出溝との間にモルタルを塗布して止水する構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−129885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した構成では、以下の問題があった。即ち、上述したガスバック及びモルタルにより止水を行う技術においては、先導体は、回転を行いながら推進するとともに、その自重により、先導体には、推進方向を中心に回転する方向、及び、下方へ倒れる方向に回転モーメントが加わる。この回転モーメントにより先導体が回動すると、止水を行う構成であるガスバック又はモルタルに対して排水溝がずれる虞があり、止水の効果が低減することがある。
【0010】
また、坑口に対して先導体の位置合わせに高い精度が必要となるため、当該位置合わせに時間がかかり、作業性が悪い、という問題があった。例えば、作業時間を短縮させると、坑口に対して先導体の位置のずれが発生し、ガスバック及びモルタルによる止水効果が低減する虞がある。このため、坑口に対して先導体の位置合わせに高い精度を有することなく、高い密閉性を得ることが望まれる。これらのことから、より高い止水効果を得ることが可能な構成が要求されている。
【0011】
そこで本発明は、高い止水効果を得ることが可能な止水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の止水装置は、次のように構成されている。
【0013】
本発明の一態様として、その推進方向に沿って土中を推進する先導体を有する推進装置により、前記先導体を坑口エントランスから推進させて推進管を設置する推進工法に用いられ、前記先導体の発進及び到達時の少なくとも一方において、前記坑口エントランスに設けられる止水装置であって、円筒状の第1部材、及び、この第1部材の両端側にそれぞれ固定される円環状の第2部材を具備し、前記第2部材の一方を介して前記坑口エントランスに固定されるとともに、その内部を前記推進装置が通過する固定部材と、弾性変形する樹脂材料で形成され、前記固定部材の内周側であって前記第1部材及び前記第2部材間に固定して設けられ、その内面及び前記第1部材間に流体が封入されることにより前記固定部材の内周側で環状に膨張するとともに、前記膨張により前記推進装置の外周面及び前記溝に密着する膨張部材と、を備える構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い止水効果を得ることが可能な止水装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る止水装置の構成を模式的に示す側面図。
【図2】同止水装置の構成を模式的に示す正面図。
【図3】同止水装置の構成を模式的に示す断面図。
【図4】同止水装置の要部構成を拡大して示す断面図。
【図5】同止水装置の使用の一例を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る止水装置1を、図1乃至図5を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る止水装置1の構成を側面から模式的に示す説明図、図2は止水装置1の止水環10の構成であって、特に膨張部材22の収縮時の構成を模式的に示す正面図、図3は止水装置1の図2におけるIII−III断面による構成であって、一部外面を示す断面図、図4は止水装置1の要部、特に、固定部材21、膨張部材22及び保護部材23の構成を示す断面図、図5は止水装置1の使用の一例であって、特に膨張部材22の膨張時の構成を模式的に示す正面図、である。なお、図1中の右側の推進装置100の先導体110は、発進立坑200からの発進時を、左側の先導体110は、到達立坑201への到着時をそれぞれ示している。
【0017】
図1に示すように、止水装置1は、例えば、所謂エースモール工法又はエースモールDL工法等のような推進工法において、坑口止水技術に用いられる装置である。なお、止水装置1が用いられる推進工法は、エールモール工法やエースモールDL工法以外の工法であってもよい。このような止水装置1は、発進立坑200に設けられた推進装置100の発進及び到達立坑201への到達時に通過する坑口エントランス210に設けられる。
【0018】
なお、推進装置100は、先導体110、元押装置120、複数の推進管130と運転操作盤140を備えている。先導体110は、外郭部材111と、外郭部材111の先端に設けられたカッタヘッド112と、を備えている。外郭部材111は、その外面に、推進方向に沿って形成された泥土を排出する通路を形成する排出溝113を単数又は複数備えている。なお、図2及び図5中においては、外郭部材111は、排出溝113を4つ備えた構成を用いて説明する。但し、外郭部材111は、排出溝113を備えない構成であってもよい。
【0019】
先導体110は、カッタヘッド112の回転により土中を掘削すると同時に、切羽面に添加剤を注入する添加剤噴出口と、外郭部材111の内部に設けられた添加剤通入管と、添加剤注入装置と、を備えているが、本実施の形態においては、その詳細な説明は省略する。
【0020】
元押装置120は、先導体110を押圧可能に形成されている。推進管130は、先導体110の後方に配置される。推進管130は、先導体110の後方に繰り返し配置されることで、先導体110が到達立坑201に到達時に、掘削した掘削孔内に連続して配置され、配管用パイプを形成する。運転操作盤140は、先導体110の方向、カッタヘッド112の回転、元押装置120の押圧等を操作可能に形成されている。
【0021】
また、坑口エントランス210は、発進立坑200及び到達立坑201の壁面にそれぞれ設けられる。坑口エントランス210は、その側面に坑口211が形成されている。なお、坑口エントランス210は、例えば、その側面が開口し、坑口211が形成された壁面212がその側面にボルト等の締結部材Bにより締結されることで、当該開口を閉塞するとともに坑口211が形成される。
【0022】
止水装置1は、止水環10と、密閉部材11と、弁装置12と、流体圧縮機13と、を備えている。
【0023】
図2乃至図5に示すように止水環10は、円筒状に設けられ、その内部を先導体110が挿通(通過)可能に形成されている。具体的には、止水環10は、固定部材21と、膨張部材22と、保護部材23と、を備えている。
【0024】
固定部材21は、止水環10の外枠を構成するとともに、坑口エントランス210に締結部材B等により固定可能に形成されている。具体的には、固定部材21は、円筒状であって、その両端部がフランジ状に形成された第1部材24と、この第1部材24の両端側にそれぞれ締結部材Bで固定される円環状の第2部材25と、を備えている。
【0025】
第1部材24は、その外周面の一部に、流体圧縮機13と配管Dを介して接続される接続部26を備えている。接続部26は、第1部材24に設けられた第1部材24の外周面及び内周面を連続する孔部(不図示)に設けられる。
【0026】
接続部26は、流体、例えば空気の流路を開閉可能な開閉弁27と、外部へと空気を逃がす逃がし弁28を備えている。第2部材25は、その一方が坑口エントランス210に固定される。第2部材25は、その内周面と第1部材24と対向する側面の陵部が面取りされている。
【0027】
膨張部材22は、弾性変形する樹脂材料、例えば、ゴム材料で形成され、固定部材21に固定されるとともに、固定部材21の内周側に環状に膨張可能に形成されている。具体的には、膨張部材22は、第1部材24の内周部を覆うとともに、第1部材24及び第2部材25間に狭持されることで固定される。なお、膨張部材22は、本実施の形態においては、複数枚、例えば2枚積層された2重構造により構成される。
【0028】
膨張部材22は、その内面及び第1部材24間に、接続部26を介して流体、例えば空気が封入されることで、固定部材21の内周側で環状に膨張する。また、膨張部材22は、図5に示すように、膨張時に、先導体110の外面及び排出溝113に密着可能に形成されている。
【0029】
なお、膨張部材22は、膨張により、先導体110の外面及び排出溝113と固定部材21の内周面との間隙を密閉することで、坑口211からの泥土又は水を遮断可能に形成されている。
【0030】
保護部材23は、樹脂材料で形成され、円環板状に形成されている。保護部材23は、膨張部材22と第2部材25との間に介在される。図4に示すように、保護部材23は、その内径が、第2部材24の内径よりも小さく形成されている。換言すると、保護部材23は、その内周面が第2部材24の内周面よりも、中心側に突出して形成される。保護部材23は、膨張部材22の一部を覆うことで、膨張部材22の膨張時に第2部材25の陵部に接触することを防止することで、膨張部材22を保護可能に形成されている。
【0031】
密閉部材11は、第2部材24及び坑口エントランス210間を密閉可能に形成されている。密閉部材11は、円環板状の支持部材31と、支持部材31の両方の主面に設けられ、弾性変形可能な樹脂材料で形成されたシール部材32と、を備えている。支持部材31は、金属材料により形成されている。なお、支持部材31は、例えば、固定部材21を坑口エントランス210に固定させる際に固定部材21に引きかける引掛部を有していてもよい。
【0032】
これらシール部材32は、支持部材31と第2部材25、及び、支持部材31と坑口エントランス210の外面との間を密閉可能に形成されている。シール部材32には、固定部材21及び坑口エントランス210にそれぞれ設けられる締結部材B等が当接可能に形成されている。
【0033】
弁装置12は、エアコンプレッサ13及び接続部26を接続する配管Dの中途部に設けられ、膨張部材22及び第1部材24間に封入される空気を制御可能に形成されている。弁装置12は、例えば、電磁開閉弁、逃し弁、リリーフ弁及び圧力計等を備え、膨張部材22の膨張時及び収縮時に、開閉弁及び逃し弁を開閉することで、膨張部材22の膨張及び収縮を制御する。即ち、弁装置12は、少なくとも、膨張部材22及び第1部材24間に封入する空気の流路の開閉、及び、封入する空気の量を調整可能に形成されるとともに、膨張部材22及び第1部材24間の空気圧が所定の圧力以上に増圧することを防止可能に形成されている。
【0034】
流体圧縮機13は、例えば空気を圧縮するとともに、配管D及び弁装置12を介して膨張部材22に空気を圧送可能に形成されたエアコンプレッサ(以下「エアコンプレッサ13」)である。
【0035】
このように構成された止水装置1は、まず、図1の右側に示す止水装置1のように、発進立坑200内に配置される。具体的には、止水装置1は、坑口エントランス210に止水環10が固定部材21及び締結部材Bを介して固定される。
【0036】
次に、発進立坑200内に配置された先導体110の一部、例えば、外郭部材111の排出溝113を固定部材21と対向するように固定部材21に挿通させるとともに、図1中二点差線で示す推進方向に向かうよう推進装置100を配置させる。
【0037】
この状態で、止水装置1は、エアコンプレッサ13を駆動させるとともに、弁装置12により、膨張部材22に空気を圧送し、膨張部材22を膨張させる。図5に示すように、圧送された空気により膨張した膨張部材22は、先導体110(外郭部材111)の外面及び排出溝113に密着するとともに、膨張部材22及び第1部材24間に封入された空気により、先導体110を支持する。
【0038】
この状態で、先導体110は、カッタヘッド112を駆動させるとともに、元押装置120により先導体110を押圧し、土中を掘削する。なお、先導体110の推進中又は任意の距離推進した後、弁装置12により、膨張部材22の圧力を調整し、又は、弁装置12の逃し弁により膨張部材22及び第1部材24間に封入された空気を逃し、先導体110に対する膨張部材22の密着及び支持の調整又は解除を行う。
【0039】
なお、その後、推進装置100を、土中を推進させながら、先導体110の後方に推進管130を配置させる。このように、到達立坑201付近になるまで推進装置100を推進させる。
【0040】
次に、止水装置1を到達立坑201に配置する。具体的には、止水装置1は、坑口エントランス210に止水環10が固定される。
【0041】
次に、先導体110の一部、例えば、カッタヘッド112を、外郭部材111の排出溝113が固定部材21と対向するように固定部材21を通過させるとともに、図1中左側に示すように、カッタヘッド112を固定部材21から到達立坑201内に位置するように推進装置100を推進させる。
【0042】
この状態で、止水装置1は、エアコンプレッサ13を駆動させるとともに、弁装置12により、膨張部材22及び第1部材24間に空気を圧送及び封入し、膨張部材22を膨張させる。図5に示すように、膨張した膨張部材22が先導体110の外面及び排出溝113に密着するとともに、膨張部材22を膨張させた空気により、先導体110を支持する。
【0043】
この状態で、元押装置120により先導体110を押圧するとともに、推進管130が発進立坑200から到達立坑201間での土中を連続するように、推進管130を押圧する。なお、先導体110が所定の位置まで移動後、弁装置12の逃し弁から、膨張部材22及び第1部材24間に封入された空気を逃し、先導体110に対する膨張部材22の密着及び支持を解除させる。このようにして、止水装置1は、推進工法において坑口止水技術に用いられる。
【0044】
このように構成された止水装置1によれば、先導体110と固定部材21との間を膨張部材22で密閉することで、結果、先導体110と坑口エントランス210との隙間を密閉することとなり、坑口エントランス210内の土圧を保持し、坑口211から立坑200,201への泥土や水を遮断し、立坑200,201への泥土及び水の流入を防止することが可能となる。
【0045】
止水装置1は、先導体110の全周方向において膨張した膨張部材22により一体に密閉させることから、確実に密閉することが可能となり、高い止水効果を得ることが可能となる。
【0046】
止水装置1は、空気により膨張させた膨張部材22を先導体110の外面及び排出溝113に密着させるとともに、膨張部材22の内部の空気により先導体110を支持可能となる。また、膨張部材22は、内部の空気の圧力により膨張するため、膨張部材22は、排出溝113において、径方向だけでなく周方向にも支持する。
【0047】
先導体110は、カッタヘッド112が回転しながら元押装置120により押圧されることで、土中を推進するため、先導体110には、回転モーメントが発生する。しかし、止水装置1は、膨張部材22により、先導体110を支持することで、膨張部材22が接触する先導体110の外面に均一に圧力を印可させるため、回転モーメントに対して抗う方向にも先導体110を支持する。このため、膨張部材22は、回転モーメントによる先導体110の回動を防止することが可能となる。
【0048】
止水装置1は、坑口エントランス210に固定された止水環10の膨張部材22により先導体110を支持することで、先導体110の自重による下方への倒れ等を防止することが可能となる。このため、発進時の先導体110の推進方向を維持可能となり、線形不良を防止し、施工性を向上させることが可能となる。
【0049】
止水装置1は、膨張部材22により、先導体110の外面及び排出溝113の一部を支持するため、先導体110の推進方向に対して干渉することがなく、結果、先導体110の推進を阻害することがない。
【0050】
また、膨張部材22と第2部材25との間には、その内径が第2部材25よりも小径の保護部材23を設けることで、保護部材23の第2部材25内周面よりも突出する内周部により膨張部材22を保護することができる。
【0051】
具体的に説明すると、膨張部材22は、エアーの圧送、又は、先導体110や土圧による押圧により、径方向だけでなく幅方向へも膨張することとなる。この幅方向への膨張が大きくなり、膨張部材22と第2部材25とが干渉すると、当該干渉により膨張部材22の損傷の虞がある。当該損傷部を有する状態で膨張部材22が膨張することで、膨張部材22の強度が部分的に低下する。
【0052】
しかし、この保護部材23を設けることで、膨張部材22が第2部材25へと直接接触することを防止可能となり、膨張部材22の損傷を極力防止することが可能となる。このため、膨張部材22の寿命を向上させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の膨張部材22は、二重又は複数積層された構成とすることで、外側の膨張部材22が万が一破損しても、少なくとも内部の膨張部材22の破損を防止することができる。これらのことにより、より高い信頼性を有する止水装置1とすることが可能となる。
【0054】
さらに、密閉部材11は、シール部材32間に支持部材31が介在されることで、固定部材21及び坑口エントランス210の締結部材Bを支持部材31で支持することが可能となる。換言すると、固定部材21及び坑口エントランス210の締結部材Bが、互いに干渉することがないため、互いの締結部材Bが干渉しないように、位相をずらして配置する等、互いの締結部材Bの位置を考慮することない。このため、止水装置1を坑口エントランス210に固定する作業の作業性が向上する。
【0055】
上述したように、本実施形態の止水装置1によれば、膨張する膨張部材22により、先導体110の全周に渡り密閉及び支持することで、高い止水効果及び信頼性を得るとともに、先導体110の支持及び回動の防止とするが可能となる。
【0056】
なお、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではない。上述した例では、膨張部材22及び第1部材24間にエアコンプレッサ13で圧送された空気を封入することで、膨張部材22を膨張させる構成を説明したがこれに限定されない。例えば、膨張部材22は、水や作動油等の液体により膨張させる構成であってもよい。このような構成とする場合には、流体圧縮機13を、水や作動油等の液体を圧送可能な流体ポンプとすればよい。また、膨張部材22は、空気ではなく、他のガスで膨張させる構成であってもよい。
【0057】
また、上述した例では、膨張部材22は、ゴム材料により形成された二重又は複数積層した構成を説明したが、例えば、各膨張部材22のゴム材料を、異なる性質の材料としてもよい。例えば、内側の膨張部材22は、外側の膨張部材22よりも伸張率(膨張率)の大きな材料としてもよく、また、摩擦に対する強度を異ならせてもよい。さらに、内側及び外側の膨張部材22において、膨張部材22の厚さを変えてもよい。
【0058】
また、上述した膨張部材22は、二重又は複数積層された構成を説明したがこれに限定されない。膨張部材22は、一枚であってもよい。例えば、膨張部材22の損傷が極力抑えられるような土質等においては、複数積層する必要がなく、また、膨張部材22の厚みや材料によっても、適宜その枚数を設定することは可能となる。
【0059】
また、上述した例では、密閉部材11は、支持部材31及び支持部材31の両主面に設けられたシール部材32を有する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、一枚のシール部材32により構成されていてもよい。このような構成とした場合には、上述した止水装置1を坑口エントランス210に固定する作業性の向上の効果を得ることはできない。しかし、シール部材32により、坑口エントランス210及び固定部材21間を密閉する機能は有しているため、止水装置1による止水効果を得ることができる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…止水装置、10…止水環、11…密閉部材、12…弁装置、13…流体圧縮機(エアコンプレッサ)、21…固定部材、22…膨張部材、23…保護部材、24…第1部材、25…第2部材、26…接続部、27…開閉弁、28…逃し弁、31…支持部材、32…シール部材、100…推進装置、110…先導体、111…外郭部材、112…カッタヘッド、113…排出溝、120…元押装置、130…推進管、140…運転操作盤、200…発進立坑、201…到達立坑、210…坑口エントランス、211…坑口、212…壁面、B…締結部材、D…配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その推進方向に沿って土中を推進する先導体を有する推進装置により、前記先導体を坑口エントランスから推進させて推進管を設置する推進工法に用いられ、前記先導体の発進及び到達時の少なくとも一方において、前記坑口エントランスに設けられる止水装置であって、
円筒状の第1部材、及び、この第1部材の両端側にそれぞれ固定される円環状の第2部材を具備し、前記第2部材の一方を介して前記坑口エントランスに固定されるとともに、その内部を前記推進装置が通過する固定部材と、
弾性変形する樹脂材料で形成され、前記固定部材の内周側であって前記第1部材及び前記第2部材間に固定して設けられ、その内面及び前記第1部材間に流体が封入されることにより前記固定部材の内周側で環状に膨張するとともに、前記膨張により前記推進装置の外周面及び前記溝に密着する膨張部材と、
を備えることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記膨張部材は、ゴム部材により少なくとも2重に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記膨張部材と、前記第2部材との間に設けられ、少なくとも前記第2部材の内径よりもその内径が小径に形成され、前記膨張部材の一部を覆う円環板状保護部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の止水装置。
【請求項4】
前記坑口エントランスと前記固定部材との間に介在され、前記坑口エントランス及び前記固定部材間を密閉するシール部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の止水装置。
【請求項5】
前記シール部材は、
金属材料で形成された円環板状の支持部材と、
前記支持部材の両方の主面にそれぞれ設けられ、弾性変形することで、前記坑口エントランスと前記固定部材及び前記膨張部材との間を密閉する密閉部材と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の止水装置。
【請求項6】
前記流体を前記固定部材及び前記膨張部材間に圧送する流体圧縮機と、
前記流体圧縮機及び前記固定部材との間に設けられ、前記固定部材及び前記膨張部材間に封入される流体を制御可能に形成された弁装置と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の止水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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