説明

止血サンドウィッチ包帯

【課題】創傷治癒のために使用され得る止血サンドウィッチ包帯を提供すること。
【解決手段】本発明は、好ましくはトロンビン層を2つのフィブリノゲン層の間に含む止血多層包帯に関する。この包帯は、グリコール酸または乳酸ベースのポリマーまたはコポリマーのような他の吸収性物質を含み得る。本発明の止血サンドウィッチ包帯は、創傷組織の処置に有用である。本発明の第一の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)第一フィブリノゲン層;(ii)この第一フィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iii)このトロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(I.発明の分野)
本発明は、吸収性物質および/または凝固タンパク質を含有する複数の層を備える止血サンドウィッチ包帯に関する。本発明の止血サンドウィッチ包帯は、創傷組織の処置に有用である。
【背景技術】
【0002】
(II.発明の背景)
出血(失血)の制御は、救急措置および野外での外傷の看護において重要な工程である。不幸なことに、入院前(prehospital)の看護において出血をとめるに利用可能な物質および方法(ガーゼ、包帯、直接圧迫および止血帯)は過去2000年において大幅には変化していない。L.Zimmermanら、Great Ideas in the History of Surgery(San Francisco、Calif:Norman Publishing;1993)、31。良い腕でさえ、均一には有効ではなく、そして接近可能な部位からの過剰な出血の発生または致命的な出血はまれではない。J.M.Rockoら、J.Trauma 22:635(1982)。
ヴェトナムからの死亡率データは、10%の戦死者が放置された極度の出血に起因していたことを示す。SAS/STAT Users Guide、第4版(Cary、NC:SAS Institute Inc.;1990)。ベトナム戦争中の失血由来の死の3分の1までが有効な野外での出血制御法の使用によって予防し得た。SAS/STAT Users Guide、第4版(Cary、NC:SAS Institute Inc.;1990)。
【0003】
文民の外傷死亡率の統計は、極度の出血による入院前の死についての正確な数を提供しないが、症例報告および逸話報告は、類似の発生を示す。J.M.Rockoら、J.Trauma 22:635(1982)。これらのデータは、生存における実質的な増加が、出血の制御の単純かつ有効な方法の入院前の使用によってもたらされ得ることを示唆する。
【0004】
液体フィブリン封着剤が出血制御のための手術室補助剤として何年か使用されている。J.L.Garzaら、J.Trauma 30:512−513(1990);H.B.Kramら、J.Trauma 30:97−101(1990);M.G.Ochsnerら、J.Trauma 30:884−887(1990);T.L.Matthewら、Ann.Thorac.Surg.50:40−44(1990);H.Jakobら、J.Vasc.Surg.、1:171−180(1984)。止血のために使用された組織接着剤の最初の言及は、1909年にまでさかのぼる。Current Trends in Surgical Tissue Adhesives:Proceedings of the First International Symposium on Surgical Adhesives、M.J.MacPheeら編(Lancaster、Pa:Technomic Publishing Co;1995)。フィブリノゲンおよびトロンビンの広範な使用は、第二次世界大戦の最後の年には一般的であったが、肝炎の伝染のために放棄された。D.B.Kendrick、Blood Program in WWII(Washington、DC:Office of the Surgeon General、Department of Army;1989)、363−368。
【0005】
近年、単一のドナーのフィブリン密封剤が、出血制御のみならず種々の手術の状況において広範に臨床的に使用されている。W.D.Spotnitz、Thromb.Haemost.74:482−485(1995);R.Lernerら、J.Surg.Res.48:165−181(1990)。さらにより広範な使用は、温度制御、融解血液成分の利用可能性、および成分の混合の必要性についての厳密な要件のために制限されている。標準的なフィブリン密封剤に伴うさらなる問題は、ヒトの寒冷沈降物の輸血のリスク(E.M.Solandら、JAMA 274:1368−1373(1995))、この寒冷沈降物におけるフィブリノゲンの低くかつ変動する量(10〜30mg)(P.M.Nessら、JAMA 241:1690−1691(1979))、ウシトロンビンに対する低血圧応答(R.Berguerら、J.Trauma 31:408−411(1991))およびウシトロンビンに対する抗体応答(S.J.Rapaportら、Am.J.Clin.Pathol.97:84−91(1992))に由来する。
【0006】
The American Red Crossらは、肝炎リスクを除去するようである、血漿タンパク質精製法を開発した。R.F.Reissら、Trans.Med.Rev.10:85−92(1996)。これらの生成物は現在、Food and Drug Administrationによる承認について考慮されている。
【0007】
乾燥フィブリノゲン−トロンビン包帯(TACHOCOMB、Hafslund Nycomed Pharma、Linz,Austria)もまた、多くの欧州諸国において手術室での使用に利用可能である。U.Schieleら、Clin.Materials 9:169−177(1992)。この包帯の現在の処方は、ウシトロンビンを使用する。このフィブリノゲン−トロンビン包帯は予備混合を必要とせず、そして使用するのが容易であるが、野外での適用のためのその有用性は、4℃での保存の要件および創傷に適用する前に生理食塩水で予備的に湿らせる必要性によって制限されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(III.発明の要旨)
従って、本発明の目的は、創傷治癒のために使用され得る止血サンドウィッチ包帯を提供することである。本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の好ましい実施態様の詳細な説明において示され、そして部分的には、その記載から明白であるか、または本発明の実施によって学習され得る。本発明のこれらの目的および利点は、記載された発明の詳細な説明および本明細書の請求の範囲において特に指摘された組成物および方法によって理解されそして達成される。
【0009】
これらおよび他の目的に従って、本発明の第一の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)第一フィブリノゲン層;(ii)この第一フィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iii)このトロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。
【0010】
本発明の第二の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)吸収性物質層;(ii)この吸収性物質層に隣接する第一フィブリノゲン層;(iii)この第一フィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iv)このトロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。
【0011】
本発明の第三の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)第一フィブリノゲン層;(ii)この第一フィブリノゲン層に隣接する吸収性物質層;(iii)この吸収性物質層に隣接するトロンビン層;および(iv)このトロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。
【0012】
本発明の第四の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)吸収性物質層;および(ii)この吸収性物質層に隣接するトロンビン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。この吸収性物質層はまた、必要に応じてフィブリノゲンを含み得る。
【0013】
本発明の第五の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)第一吸収性物質層;(ii)この第一吸収性物質層に隣接する第二吸収性物質層;および(iii)この第二吸収性物質層に隣接するトロンビン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。この吸収性物質層はまた、必要に応じてフィブリノゲンを含み得る。
【0014】
本発明の止血包帯の各層はまた、必要に応じて、1以上の適切な充填剤、結合剤および/または可溶化剤を含み得る。さらに、本発明の止血包帯の各々はまた、必要に応じて、放出剤および/または裏打ち物質を含む放出層をさらに含み得る。
【0015】
本発明の第六の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための方法であって、この創傷組織に本発明の止血サンドウィッチ包帯のいずれかを適用する工程を包含する、方法に関する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、以下:
(i)第一フィブリノゲン層;
(ii)該第一フィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および
(iii)該トロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層、
を備える、止血サンドウィッチ包帯。
(項目2) 患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、以下:
(i)吸収性物質層;
(ii)該吸収性物質層に隣接する第一フィブリノゲン層;
(iii)該第一フィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および
(iv)該トロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層、
を備える、止血サンドウィッチ包帯。
(項目3) 患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、以下:
(i)第一フィブリノゲン層;
(ii)該第一フィブリノゲン層に隣接する吸収性物質層;
(iii)該吸収性物質層に隣接するトロンビン層;および
(iv)該トロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層、
を備える、止血サンドウィッチ包帯。
(項目4) 患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、以下:
(i)吸収性物質層;および
(ii)該吸収性物質層に隣接するトロンビン層、
を備える、止血サンドウィッチ包帯。
(項目5) 患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、以下:
(i)第一吸収性物質層;
(ii)該第一吸収性物質層に隣接する第二吸収性物質層;および
(iii)該第二吸収性物質層に隣接するトロンビン層、
を備える、止血サンドウィッチ包帯。
(項目6) さらに裏打ち物質を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の止血包帯。
(項目7) 前記吸収性物質層がさらにフィブリノゲンを含有する、項目4または5に記載の止血サンドウィッチ包帯。
(項目8) 前記吸収性物質が、グリコール酸ポリマー、乳酸ポリマーおよびグリコール酸/乳酸コポリマーからなる群より選択される、項目2〜5のいずれか1項に記載の止血サンドウィッチ包帯。
(項目9) 前記層の1以上が可溶化剤を含有する、項目1〜5のいずれか1項に記載の止血サンドウィッチ包帯。
(項目10) 前記層の1以上が充填剤を含有する、項目1〜5のいずれか1項に記載の止血サンドウィッチ包帯。
(項目11) 前記層の1以上が結合剤を含有する、項目1〜5のいずれか1項に記載の止血サンドウィッチ包帯。
(項目12) 創傷組織を処置する方法であって、該創傷組織に、項目1〜5のいずれか1項に記載の止血サンドウィッチ包帯を適用する工程を包含する、方法。
【0016】
上記の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は、例示であって、そして単に説明的であって、そして請求されるような本発明のさらなる説明を提供することが意図されることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(IV.好ましい実施態様の詳細な説明)
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術における当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は、参考として援用される。
【0018】
「患者」とは、本明細書において使用される場合、医療的看護および/または処置が必要とされるヒトまたは動物の個体をいう。
【0019】
「創傷」とは、本明細書において使用される場合、循環系からの血液の損失を生じる患者の任意の組織に対する任意の損傷をいう。この組織は、内部組織(例えば、器官または血管)、あるいは外部組織(例えば、皮膚)であり得る。血液の損失は、内部(例えば、破損した器官から)、または外部(例えば、裂傷から)であり得る。創傷は、軟組織(例えば、器官)、または硬組織(例えば、骨)に存在し得る。損傷は、外傷性傷害、感染または手術の介在を含む任意の因子または供給源によって生じ得る。
【0020】
「吸収性物質」とは、本明細書において使用される場合、創傷治癒および/または組織再生に有意に干渉せず、そして有意な代謝障害を何ら生じないような様式で消費または除去される成分へと、自発的におよび/または哺乳動物にの身体によって分解される物質をいう。
【0021】
「安定性」とは、本明細書において使用される場合、活性および/または機能を決定する物質のそれらの特性の保持をいう。
【0022】
「結合剤」とは、本明細書において使用される場合、本発明の止血サンドウィッチ包帯の1つの層の1以上の異なる層への接着、および/または所定の層の成分の、その層の他の成分との接着を改善する化合物または化合物の混合物をいう。
【0023】
「可溶化剤」とは、本明細書において使用される場合、水性溶媒においてタンパク質の溶解を改善する、化合物または化合物の混合物をいう。
【0024】
「充填剤」とは、本明細書において使用される場合、本発明の止血サンドウィッチ包帯の1以上の層に対して嵩および/または多孔性を提供する化合物または化合物の混合物をいう。
【0025】
「放出剤」とは、本明細書において使用される場合、製造型からの本発明の止血サンドウィッチ包帯の取り出しを容易にする化合物または化合物の混合物をいう。
【0026】
「発泡剤」とは、本明細書において使用される場合、適切な条件下で水和される場合、気体を発生する化合物または化合物の混合物をいう。
【0027】
(B.好ましい実施態様)
本発明の第一の好ましい実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)第一フィブリノゲン層;(ii)この第一フィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iii)このトロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。
【0028】
本発明の第二の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)吸収性物質層;(ii)この吸収性物質層に隣接する第一フィブリノゲン層;(iii)この第一フィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iv)このトロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。
【0029】
本発明の第三の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)第一フィブリノゲン層;(ii)この第一フィブリノゲン層に隣接する吸収性物質層;(iii)この吸収性物質層に隣接するトロンビン層;および(iv)このトロンビン層に隣接する第二フィブリノゲン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。
【0030】
本発明の第四の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)吸収性物質層;および(ii)この吸収性物質層に隣接するトロンビン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。この吸収性物質層はまた、必要に応じてフィブリノゲンを含み得る。
【0031】
本発明の第五の実施態様は、患者における創傷組織を処置するための止血サンドウィッチ包帯であって、(i)第一吸収性物質層;(ii)この第一吸収性物質層に隣接する第二吸収性物質層;および(iii)この第二吸収性物質層に隣接するトロンビン層を備える、止血サンドウィッチ包帯に関する。この吸収性物質層はまた、必要に応じてフィブリノゲンを含み得る。
【0032】
本発明の止血サンドウィッチ包帯の各層はまた、必要に応じて、1以上の適切な充填剤(例えば、スクロース)を含み得る。
【0033】
本発明の止血サンドウィッチ包帯の各層はまた、必要に応じて、1以上の適切な結合剤(例えば、スクロース)を含み得る。
【0034】
本発明の止血サンドウィッチ包帯の各層はまた、必要に応じて、1以上の適切な可溶化剤(例えば、スクロース)を含み得る。
【0035】
本発明の止血サンドウィッチ包帯の各層はまた、必要に応じて、1以上の適切な発泡剤(例えば、クエン酸および重炭酸ナトリウムの混合物)を含み得る。
【0036】
本発明の止血サンドウィッチ包帯の各々はまた、必要に応じて、放出剤を含む放出層をさらに含み得る。好ましい放出剤はスクロースである。
【0037】
本発明の止血サンドウィッチ包帯の各々はまた、創傷に面する側の反対側の包帯の側に裏打ち物質をさらに含み得る。この裏打ち物質は、生理的に受容可能な接着剤を用いて固定され得るか、または自己接着性であり得る(例えば、充分な表面静電気を有することによる)。この裏打ち物質は、吸収性物質または非吸収性物質(例えば、シリコンパッチまたはプラスチック)であり得る。好ましくは、この裏打ち物質は、吸収性物質である。
【0038】
本発明の止血サンドウィッチ包帯において使用されるフィブリノゲンは、好ましくは、局所フィブリノゲン複合体(Topical Fibrinogen Complex)(TFC)であるが、任意の適切なフィブリノゲンまたはその誘導体もしくは代謝産物(例えば、フィブリノペプチドAおよびフィブリノペプチドB)も、所望に応じて使用され得る。特定の適用に特異的なフィブリノゲン(またはフィブリノゲン含有組成物)は、当業者によって経験的に選択され得る。このフィブリノゲンはまた、第XIII因子を含み得る。
【0039】
TFCは、適切なレベルにまで精製され、そしてウイルス不活化されたヒト血漿タンパク質の混合物である。TFCの好ましい水溶液は、100〜130mg/mLの総タンパク質を含み、そのうち少なくとも80%がフィブリノゲンである。TFCの他の成分は、アルブミン(一般的に約5〜25mg/mL);プラスミノゲン(一般的に約5mg/mL);第XIII因子(一般的に約10〜40単位/mL);およびポリソルベート80(3%以下)を含む。TFCのpHは、一般的に、7.1から7.5の範囲内である。適切なTFCはまた、フィブロネクチンを含有し得る。
【0040】
本発明の止血包帯において使用されるトロンビンは、好ましくは、適切なレベルにまで精製されそしてウイルス不活化されたヒト血漿タンパク質の凍結乾燥された混合物である。トロンビンの好ましい水溶液は、約300±50の国際単位/mLの効力でトロンビンを含有する。他の成分には、アルブミン(一般的に約5mg/mL)およびグリシン(一般的に、約0.3M±0.05M)が挙げられる。この好ましいトロンビンのpHは、一般的に6.5〜7.1の範囲内である。
【0041】
さらに、本発明の実施態様の各々において、トロンビンは、当業者によってフィブリン形成の活性化因子であることが公知の因子のいずれかによって置換され得る。このような因子の例示的な例は、ヘビ毒である。特定の適用に特異的なフィブリン形成の活性化因子は、当業者によって経験的に選択され得る。
【0042】
当業者に公知の任意の適切な吸収性物質が本発明において使用され得る。例えば、この吸収性物質は、タンパク質性物質(例えば、絹糸、フィブリン、ケラチン、コラーゲンおよび/またはゼラチン)、または炭水化物性物質(例えば、アルギネート、キチン、セルロース、プロテオグリカン(例えば、ポリ−N−アセチルグルコサミン)、グリコール酸ポリマー、乳酸ポリマー、またはグリコール酸/乳酸コポリマー)であり得る。特定の適用に特異的な吸収性物質は、当業者によって経験的に選択され得る。
【0043】
好ましくは、この吸収性物質は、炭水化物性物質である。特に好ましい吸収性物質の例示的な例は、VICRYLおよびDEXXONの商標のもとで販売されている。
【0044】
本発明の止血サンドウィッチ包帯の種々の層は、当業者に公知でかつ利用可能な任意の適切な手段によって互いに固定され得る。好ましくは、フィブリノゲン層(単数または複数)および/またはトロンビン層(単数または複数)は、一連の急速冷凍水溶液層および続く凍結乾燥または凍結して乾燥された層として適用される。
【0045】
本発明の特に好ましい実施態様において、本発明の包帯は、型を使用して調製される場合、放出剤(例えば、スクロース)が、その包帯の第一の層が調製される前に、型に適用される。このような実施態様において、本発明の止血サンドウィッチ包帯は、放出層(上記の放出剤を含む)を、(i)その層に隣接して、および(ii)その層とは反対側にさらに含む。
【0046】
あるいは、生理的に受容可能な接着剤が吸収性物質および/または裏打ち物質(存在する場合)に適用され得、そして続いてフィブリノゲン層(単数または複数)および/またはトロンビン層(単数または複数)がそれに対して固定され得る。
【0047】
本発明のサンドウィッチ包帯の1つの実施態様において、生理的に受容可能な接着剤は、上記の吸収性物質および/または裏打ち物質が上記のフィブリノゲン層および/またはトロンビン層から、創傷組織へのこの包帯の適用後に分離され得るような剪断強度および/または構造を有する。別の実施態様において、生理的に受容可能な接着剤は、上記の吸収性物質および/または裏打ち物質が上記のフィブリノゲン層および/またはトロンビン層から、創傷組織へのこの包帯の適用後に分離され得ないような剪断強度を有する。
【0048】
適切なフィブリノゲンおよびトロンビンは、当業者にとって公知でかつ利用可能な任意の精製法によってヒトまたは哺乳動物の血漿から;標準的な組換えDNA技術に従って導入されたヒトまたは哺乳動物の血漿タンパク質を発現する遺伝子を含む組換え組織培養物、ウイルス、酵母、細菌などの上清またはペーストから;あるいは標準的なトランスジェニック技術に従って導入されたヒトフィブリノゲンおよび/またはヒトトロンビンを発現する遺伝子を含むトランスジェニック動物の液体(例えば、血液、乳汁、リンパ液、尿など)から入手され得る。
【0049】
一般的な提案として、本発明の止血サンドウィッチ包帯における使用のためのフィブリノゲンおよび/またはトロンビンの純度は、好ましくは、この関連分野の当業者にとってそのタンパク質の最適な効力および安定性を導くことが公知の適切な純度である。好ましくは、このフィブリノゲンおよび/またはトロンビンは、複数のクロマトグラフィー精製工程(例えば、アフィニティークロマトグラフィーおよび好ましくは免疫アフィニティークロマトグラフィー)に供されて、製造、保存および/または使用の間に、このフィブリノゲンおよび/またはトロンビンのフラグメント化、活性化および/または分解を生じる物質を除去する。好ましくは、精製によって除去されるこのような物質の例示的な例は、タンパク質夾雑物(例えば、インターαトリプシンインヒビターおよびプレαトリプシンインヒビター);非タンパク質性夾雑物(例えば、脂質);およびタンパク質性夾雑物と非タンパク質性夾雑物との混合物(例えば、リポタンパク質)を含む。
【0050】
本発明の止血サンドウィッチ包帯において使用されるフィブリノゲンおよび/またはトロンビンの濃度はまた、好ましくは、この関連分野における当業者によって経験的に決定され得るように、それらの効力および安定性の両方を最適化するように選択される。本発明の止血サンドウィッチ包帯の使用の間に、このフィブリノゲンおよびトロンビンは、好ましくは、この包帯がその創傷組織に適用される時点で、出血する創傷から流れ出るその患者の内因性液体によって活性化される。あるいは、その創傷組織からの液体損失がタンパク質層の適切な水和を提供するに不十分である状況では、このフィブリノゲンおよび/またはトロンビンは、適切な、生理的に受容可能な液体(必要に応じて、任意の必要な補因子および/または酵素を含む)によって、この止血サンドウィッチ包帯の創傷組織への適用の前またはその間に活性化され得る。
【0051】
さらに、1以上の補充物(例えば、成長因子、薬物、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびに他の化合物)もまた、本発明の止血サンドウィッチ包帯の1以上の層において含まれ得る。そのような薬物の例示的な例は、以下を含むがそれらに限定されない:抗生物質(例えば、テトラサイクリンおよびシプロフロキサシン、アモキシシリン、およびメトロニダゾール);抗凝固剤(例えば、活性化プロテインC、ヘパリン、プロスタサイクリン(PGI2)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、アンチトロンビンIII、ADPaseおよびプラスミノゲン活性化因子);ステロイド(例えば、デキサメタゾン、炎症を阻害するためのプロスタサイクリン、プロスタグランジン、ロイコトリエンおよび/またはキニンのインヒビター);心臓血管薬剤(例えば、カルシウムチャネルブロッカー、血管拡張剤および血管収縮剤);化学誘引剤;局所麻酔剤(例えば、ブピバカイン);ならびに抗増殖/抗腫瘍薬物(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、タキソールおよび/またはタキソテール(taxotere));抗ウイルス剤(例えば、ガンシクロビル(gangcyclovir)、ジドブジン、アマンタジン(amantidine)、ビダラビン、リバビリン(ribaravin)、トリフルリジン、アシクロビル、ジデオキシウリジンおよびウイルス成分または遺伝子産物に対する抗体);サイトカイン(例えば、αインターフェロンまたはβインターフェロン、またはγインターフェロン、α腫瘍壊死因子またはβ腫瘍壊死因子、およびインターロイキン);コロニー刺激因子;エリスロポエチン;抗真菌剤(例えば、ジフルカン(diflucan)、ケトコナゾール(ketoconizole)およびナイスタチン);抗寄生生物剤(例えば、ペンタミジン);抗炎症剤(例えば、α−1−抗トリプシンおよびα−1抗キモトリプシン);麻酔剤(例えば、ブピバカイン);鎮痛剤;防腐剤;ならびにホルモン。他の例示的な補充物は、以下を含むがそれらに限定されない:ビタミンおよび他の栄養補充物;糖タンパク質;フィブロネクチン;ペプチドおよびタンパク質;炭水化物(単純および/または複合性の両方);プロテオグリカン;アンチアンギオゲニン(antianiogenin);抗原;脂質またはリポソーム;オリゴヌクレオチド(センスおよび/またはアンチセンスDNAおよび/またはRNA);ならびに遺伝子治療試薬。
【0052】
以下の実施例は、例示のみであり、そして添付の請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲を制限することは意図しない。種々の改変および変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明の方法においてなされ得ることが当業者には明白である。従って、本発明は、添付の請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある限り本発明の改変および変更を包含することが意図される。
【0053】
本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は、明確に参考として援用される。
【実施例】
【0054】
(V.実施例)
(A.実施例1)
フィブリノゲンおよびトロンビンバイアルを冷蔵庫から取り出し、そして2時間室温で暖めた。各バイアルのトロンビンに対して、2mLの40mM CaCl2を添加した。これは、500U/mLの最終濃度のトロンビンを産生した。Dispo型(mold)(Baxter)サイズ3.0×2.4cmをドライアイス上の凍結トレイ上に置いた。
【0055】
12型の各々に対して、1.75mLのH2Oを加え、そして−80℃で1時間凍結させた。一旦凍結させた140μLのトロンビン(70ユニット)をH2O上でピペッティングし、そして−80℃でさらに1時間凍結した。水(8mL)で溶解しフィブリノゲンを50mg/mLの濃度にした。この型に対して、1.1mLのフィブリノゲン(55mg)を添加し、そして−80℃でさらに1時間凍結し、続いて1mLのH2Oを添加した。この包帯を−80℃で1時間凍結した。次いで、0.25mLのトロンビン(125ユニット)を添加し、そして1時間凍結した。さらなる1.1mLのフィブリノゲン(55mg)を先端でピペッティングし、そして1時間凍結した。
【0056】
一旦すべての材料を添加し、そして凍結させると、VICRYLを先端に置きそして、穏やかな指圧によって、置いた場所を圧入した。VICRYLを覆うために、500μLの30%スクロースを添加し、そして凍結した。この包帯を2時間−80℃に置き、次いで凍結乾燥機に入れた。完了次第、減圧を解除し、そしてこの包帯を取り出し、そして試験した。
結果:凍結乾燥機から取り出した場合、包帯は均一かつ一貫しており、VICRYLは付着され、そして全ての層はインタクトであった。
【0057】
(B.実施例II)
フィブリノゲンおよびトロンビンバイアルを冷蔵庫から取り出し、そして2時間室温に供して暖めた。VicrylTMを適用し、そしてDispoプラスチック型(2.4cm×2.4cm)へ圧入した。この型を、1時間−80℃でインキュベートした。
【0058】
フィブリノゲンを、21mLの2%のスクロースまたは水で溶解し、19.2mg/mLの濃度にした。さらに、フィブリノゲンを、2%のスクロースまたは水のいずれかで、1mg/mLの濃度に溶解した。この型は、1.23mLのフィブリノゲンを受容し、次いで1時間−80℃で凍結した。
【0059】
トロンビンを、0.5mLの40mM CaCl2で溶解し、2000U/mLの濃度にした。包帯を冷蔵庫から取り出し、そしてドライアイス上に置いた。トロンビンを37.5U/cm2で噴霧した。包帯をさらに1時間−80℃に戻した。
【0060】
包帯をドライアイス上に置き、そしてフィブリノゲンの第2層(第1層と同じ)を受容させた。半分の包帯を2時間−80℃に戻し、そして他の半分の包帯を2時間−20℃に置いた。次いで、包帯を凍結乾燥機に置いた。
【0061】
包帯を再吸収可能な材料接着性および包帯外観について主観的に評価した。表3は実験的な設計を要約する。
【0062】
(表3.種々の包帯配置および処方)
【0063】
【表3】

【0064】
結果:表3からの結果は、最も良好である包帯を示した。これは−20℃または−80℃の両方で凍結した包帯について真実であった。
【0065】
(C.実施例III)
この包帯配置は、フィブリノゲンの2つの層の間に「層状の」VicrylTMおよびトロンビンを有した。フィブリノゲンの第一層を、2%のスクロースまたは水のいずれかで溶解した。この包帯を凍結乾燥機への配置前に−20℃または−80℃のいずれかで凍結した。実験的な設計を表4に概要する。この包帯を凍結乾燥後の外見および水和後の操作特徴について主観的に観察した。
【0066】
(表4.「層状の」包帯配置)
【0067】
【表4】

【0068】
結果:層状の包帯産生のための2つの構造;表3の−20℃および−80℃での7群および表4の−20℃および−80℃での1群は、層の未分離および再吸収可能材料の付着に関して最も良好な特徴を示した。
【0069】
(D.実施例IV)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から取り出し、そして2時間25℃で暖めた。1群および2群について、各バイアルのフィブリノゲンは、15.3mLの2%のスクロース(26.2mg/mLの最終濃度)を受容した;3群についての包帯は、19.2mLの最終濃度にするために、21mLの2%スクロースを有した。フィブリノゲンの最終的な量は3つの群の全てについて8mg/cm2であった。
【0070】
Dispo型(3.0×2.4cm)を、ドライアイス上の凍結トレイに置いた。1mLの2%スクロースを添加し、そして1時間−80℃で凍結させた。一旦凍結したVICRYLを一番上に置き、そしてその場所に圧入した。1群および2群は2.2mLのフィブリノゲンを受容したが、3群は1.5mLのフィブリノゲンを受容した。
【0071】
すべての包帯を2時間−80℃で凍結させた。1群を、凍結乾燥機に入れるまで−80℃で保存した。トロンビンを、0.5mLの40mMCaCl2で溶解し、2000U/mLの濃度にした。2群および3群をトロンビンに噴霧した。その結果、ドライアイス上に置く間、各包帯が、144U/包帯を受容した。一旦トロンビンを適用させて、この包帯を1時間−80℃に置いた。3群を冷凍庫から取り出し、そしてドライアイス上に置き、そしてさらなる1.5mLのトロンビンを19.2mg/mLでを添加した。
【0072】
終了すると、すべての包帯をもう2時間−80℃に戻した。次いで、包帯を凍結乾燥機に入れ、96時間後に、各群の包帯のサンプルを取り出し、そして含水量を決定した。二次乾燥を24時間始めた。包帯を取り出したときに、含水量を再び測定した。
結果:表5に見られ得るように、包帯の含水量は、二次乾燥と共に減少する。全ての包帯が同じに見え、そして同じ構成を有した。
【0073】
【表5】

【0074】
(E.実施例V)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から取り出し、そして2時間25℃の室温で暖めた。大きさ3.0×2.4cmのDispo型に、ドライアイス上で、300μLの2%スクロースを噴霧した。VICRYLを適用し、そしてこの場所に圧入し、そしてこの型を、1時間−80℃に置いた。フィブリノゲンを11mLの2%スクロースで溶解し、36.4mg/mLの濃度にした。各包帯は15mg/cm2の最終フィブリノゲン量を有した。
【0075】
この型は1.5mLのフィブリノゲンを受容し、次いで1時間−80℃で凍結させた。トロンビンを、0.5mLの40mMCaCl2で溶解し、2000U/mLの濃度にした。全ての包帯に、ドライアイス上でトロンビンを噴霧し、37.5U/cm2を受けさせた。
【0076】
包帯をさらに1時間−80℃に戻した。この包帯をドライアイス上に置き、そして第一層と同じ、第二層のフィブリノゲンを受容させた。凍結乾燥機に入れるまで、包帯を、2時間−80℃に再び戻した。
結果:包帯を凍結乾燥機から取り出し、そして3.0×2.4cm包帯のサンプルを、含水量について分析した。これらの包帯は、2.49%の含水量を有した。包帯は完了し、そして層の分離を有さず、そしてこのVICRYLは、十分に付着した。
【0077】
(F.実施例VI)
10.1×10.1cmの大きさで、103cm2の表面積を有する、44の四角のペトリ皿をシェルフトレイに置き、そして20mLの2%スクロース(これは、194μL/cm2と同じである)を受容させた。一旦この型に満たすと、これらを凍結させるまで2時間−80℃に置き、次いでVICRYLを適用した。
【0078】
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から取り出し、そして2時間25℃に暖めた。各バイアルのフィブリノゲンを10mLの2%スクロースで溶解した。再形成した場合のフィブリノゲンの濃度は、16mg/mLであった。この型は25mLのトロンビンを受容し、そしてここで、凍結までの2時間−80℃に戻した。トロンビンを、0.5mLの40mM CaCl2で溶解して2000U/mLの濃度に、そしてフィブリノゲンの上に噴霧し、そして1時間−80℃へ戻した。さらなる25mLのフィブリノゲンを添加し、そして2時間−80℃で凍結させた。
【0079】
次いでこの包帯を凍結乾燥させ、完了時にこの包帯を包装し、そして前に記載したインビボ試験のために送った。
【0080】
(G.実施例VII)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から取り出し、そして2時間25℃に暖めた。Dispoプラスチック型(3.0cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μLの2%スクロースを噴霧した。VicrylTMまたはアルギン酸カルシウムを適用し、そしてその場所に圧入した。この型を1時間−80℃でインキュベートした。
【0081】
アルギン酸カルシウムを2つの方法で使用した。第一の方法では、アルギン酸カルシウムを、VicrylTM切片と同じ大きさの切片に切断した。第二の方法では、アルギン酸カルシウムをまた、VicrylTM切片と同じ大きさの切片に切断したが、次いでこれを材料の微細な切片まで刻んだ(表6)。
【0082】
フィブリノゲンを11mLの2%スクロースで溶解して、36.4mg/mLの濃度にした。各包帯は、15mg/cm2の最終フィブリノゲン量を有した。この型は1.55mLのフィブリノゲンを受容し、次いで1時間−80℃で凍結させた。トロンビンを0.5mLの40mMCaCl2で溶解して、2000U/mLの濃度にした。この包帯をドライアイス上に置き、そして37.5U/cm2となるようにトロンビンを噴霧した。
【0083】
この包帯を、凍結乾燥機に入れるまで、2時間−80℃へ戻した。包帯を凍結乾燥させた後、これらをブタ動脈切開包帯性能試験で試験した。
【0084】
(表6.VicrylTMおよびアルギン酸カルシウムを使用する包帯再吸収可能材料組合わせ)
【0085】
【表6】

【0086】
(ブタ動脈切開包帯性能試験)
凍結ブタ大動脈を得、そして解凍する。大動脈は4℃で一晩解凍され得るか、あるいは37℃で水浴中に別々に浸され得る。大動脈の最初の約11cmから過剰な結合組織を解剖する。通常、最初の5〜5.5cmは、側枝血管を含まない。次の5〜5.5cmは、1〜2を超える側枝を有するべきではない。これらは、容易に封じられ得るかまたは、シアノアクリレート接着剤で継ぎ合わされ得る。
【0087】
大動脈を2つの5.5cm小片へ切断する。止血鉗子または鈍いピンセットを使用して、内部を露出させるために、大動脈を裏返す。37℃にて1〜5mLのPBSで血管の内部と外部との両方を洗浄する。片側に開けた約0.6cm(0.25インチ)の孔を有する20cc注射器上Oリングを伸ばす。指または止血鉗子を使用して、血管を注射器へ引く。同じ大きさの別のOリングを下方にはめ込む。
【0088】
湾曲した止血鉗子を使用して、血管の先端を覆う両方のOリングを注意深く確保する。両方のOリング間の距離は3.5cmであるべきである。この動脈は、ぴったりとフィットし、そしてこの位置でしっかりと留まるべきである。注射器の孔がOリング間の距離の中央にくるように、確保した血管の位置決めをする。
【0089】
37℃でPBSを注射器に満たし、そして注射器の外側を通して、そしてプランジャへねじを置く。その結果、プランジャは定常位置に保たれる。37℃で1〜2mLのPBSでシリンジ上の動脈を洗浄する。16ゲージの注射針を使用して、注射器孔の中央(いずれのリングからも約1.75cm)に孔を空ける。16ゲージの注射針は、12回の使用後ごとに、付け替えるべきである。
【0090】
包帯を含むシールされたバッグを開け、そして切開部分にわたって包帯を直接置く(いずれのOリングにも触れないように、各Oリングから約0.5cm)。すべての包帯を、使用前に個々に包装するべきである。
【0091】
P−1000ピペットマンを使用して、この包帯を37℃にてPBSで濡らす。15mg/cm2包帯については800μLを使用し、8mg/cm2包帯については500μLを使用する。いずれのOリングにも触れないように、包帯の最上部にシールドした注射器を直接置く。確実にするために軽く圧する。
【0092】
注射器およびその全ての成分を定常に保持するために、ホールディングボックス(holding box)を使用して37℃のインキュベータ中にシリンジを置く。プラスチックカバーで覆い、頂部を覆ってしっかりと200gの重みをかける。重量の平均分散を確実にする。これを、37℃で5分間インキュベートする。
【0093】
インキュベーターから注射器を取り出す。包帯を覆っているシールドを注意深く取り除く。注射器をペリスターポンプに連結されたチューブへつなぐ。このチューブは、ポンプを通って回りそして反対側のY接合部へ連結されるように準備するべきである。Y接合部に2つの排水口を作製し、バック・プレッシャーが他の排水部に入りこむために、PBSが1つの排水部で注射器に注ぎ込まれるようになる。このバック・プレッシャーを、インラインプレッシャートランスデューサーアナライザー(in−line pressure transducer−analyzer)を使用して、直接測定し、そしてDMSI−200/1ソフトウェアを使用して記録する。
【0094】
注射器内へPBSを37℃で注ぎ込み、そして産生された圧力のモニタリングをすぐに開始する。初期流速が約0.3mL/分となるように、30秒のスローランプ(slow ramp)(E229においてポンプについて1×速度で4にセットする、E132においてポンプについて1×速度で7.5にセットする)で開始する。
【0095】
最初の30秒後、流速を約3mL/分(10×速度、両方のセッティング)まで上昇させる。これを、200mmHgの圧力が得られるまで実施すべきである。一旦200mmHgに達すると、2分間タイマーが開始する。
【0096】
一旦200mmHgが得られたら、ポンプを停止する。得られた圧力をモニターする。圧力が落ち込む場合、適切な圧力が得られるまでポンプを再度動かす。これは、2分間隔(正常の条件下で、この圧力は、200mmHgと215mmHgとの間に維持するべきである)の間中、必要とされるたびに実施され得る。さらに、いかなる漏出およびその位置にも注意する。漏出が生じた場合、最大時間および漏出の瞬間でのバースト圧に注意する。以下の流路/失敗基準に基づいて、包帯効率を判断する。
【0097】
全く漏出を伴わない2分間の200mmHgの完全に一貫した圧力を維持する場合、包帯は通過すると考えられる。最小漏出のみを伴う2分間の200mmHgの完全に一貫した圧力を維持する場合、包帯はまた、通過すると考えられる。(例えば、ゆっくりとした浸透、またはその再封入した漏出)。
【0098】
激しい漏出のために適切な圧力を維持し得ない場合、包帯は失敗であると考えられる。これは、不十分な接着によって生じた漏出、および製造上の欠陥に起因する漏出を含む。
【0099】
結果:この実験の結果は、包帯が、再吸収可能材料としてアルギン酸カルシウムを使用して調製され得るかまたは、フィブリノゲンのためのさらなる成分として使用され得ることを示した。凍結乾燥機から取り出した場合、この包帯の外観に差異はなかった。さらに、ブタ動脈切開アッセイで試験した場合、全ての群の包帯は、3分間200mmHgを保持した。
【0100】
(H.実施例VIII)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から取り出し、そして2時間25℃に暖めた。Dispoプラスチック型(2.4cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μlの2%スクロースを噴霧した。いくつかの型は、その場所に適用され、そして圧入されたVicrylTMを有し、そして他の型は、再吸収可能材料としてその場所に適用し、そして圧入されたGelfoam(登録商標)を有した。
【0101】
フィブリノゲンを、11mLの2%スクロースで溶解し、15mg/cm2
包帯のために36.4mg/mLの濃度にした。コラーゲンI型を95%のエタノールで溶解し、36.4mg/mLの濃度にした。
【0102】
15mg/cm2包帯に加えて、8mg/cm2包帯もまた調製した。この型は1.23mLのフィブリノゲンまたはコラーゲンを受容し、次いで、1時間−80℃で凍結させた。トロンビンを0.5mLの40mM CaCl2で溶解して、2000U/mLの濃度にした。この包帯を、ドライアイス上に置き、そしてトロンビンを噴霧した。
【0103】
この包帯をさらなる時間の間−80℃に戻した。次いで、この包帯をドライアイス上に置き、そして第二層のフィブリノゲン(第一層と同じ)を受容させた。この包帯を、凍結乾燥機に入れるまで、2時間−80℃に戻した。
【0104】
表7は実験的な設計を要約する。凍結乾燥後、この包帯をこれらの外見について主観的にアッセイした。
【0105】
(表7.種々の再吸収可能材料および種々のタンパク質成分を使用する、包帯の処方および配置)
【0106】
【表7】

【0107】
結果:凍結乾燥後、包帯を、これらの外観について評価した。製造された全ての組合わせは、良好な包帯を生成した。そのため、これらは全てインタクトであり、そして層の分離を有さなかった。
【0108】
(I. 実施例IX)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から移し変え、そして2時間で25℃まで昇温させた。Dispoのプラスチック製型(3.0cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μLの2%スクロースを噴霧した。VicrylTMを適用し、そして所定の場所にプレスした。型を−80℃で1時間インキュベートした。
【0109】
フィブリノゲンを、11mLの2% スクロースで36.4mg/mLの濃度にして可溶化させた。包帯はそれぞれ最終的には15mg/cm2のフィブリノゲンの量を有した。それぞれの包帯の群に、(表8に列挙したように)予め決定されたフィブリノゲンの指定された量を受けさせた。次いで、この包帯を−80℃で1時間で凍結させた。
【0110】
(表8.様々な割合のフィブリノゲンを有する包帯の構成)
【0111】
【表8】

【0112】
トロンビンを0.5mLの40mM CaCl2で2000U/mLの濃度にして可溶化させた。包帯をドライアイス上に置き、そしてトロンビンを37.5U/cm2で噴霧した。
【0113】
包帯を−80℃に戻して、さらに1時間保持した。包帯をドライアイス上に置き、そして(表8に列挙したように)フィブリノゲンの第2層を受けさせた。この包帯を−80℃に戻して、2時間保持してから凍結乾燥機に入れた。
【0114】
凍結乾燥後、包帯をブタの動脈切開試験で試験した。包帯を第0日目および製造後箔袋に2ヶ月室温で保管した後に試験した。
【0115】
(表9.様々な割合のフィブリノゲンの包帯のブタの動脈切開試験の結果)
【0116】
【表9】

【0117】
結果:これらの結果は、第1層について50%、第2層について50%のフィブリノゲンで作製された包帯(フィブリノゲン50/50包帯)が、ブタの動脈切開モデルにおいて他の全ての試験された包帯の組み合わせよりも遥かに優れて機能することを明らかに示す。0時および2ヶ月時の両方で、100%のフィブリノゲン50/50包帯が、ブタの動脈切開試験に合格した。
【0118】
(J. 実施例X)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から移し変え、そして2時間で25℃まで昇温させた。Dispoのプラスチック製型(2.4cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μLの2%スクロースを噴霧した。VicrylTMを適用し、そして所定の場所にプレスし、そして型を−80℃で1時間置いた。
【0119】
フィブリノゲンを、11mLの2% スクロースで36.4mg/mLの濃度にして可溶化させた。包帯はそれぞれ最終的には15mg/cm2のフィブリノゲンの量を有した。型に1.23mLのフィブリノゲンを受けさせ、次いで−80℃で1時間凍結させた。
【0120】
トロンビンを、40mM CaCl2、13mM CaCl2、または4mM CaCl2で可溶化させた。この包帯をドライアイス上に置き、そして37.5U/cm2、12.5U/cm2、4.2U/cm2、または1.4U/cm2のいずれかでトロンビンを噴霧した。包帯を−80℃に戻して、さらに1時間保持した。
【0121】
包帯をドライアイス上に置き、第2層のフィブリノゲン(第1層と同一)を受けさせた。包帯を−80℃に戻して2時間保持してから、凍結乾燥機に入れた。包帯を凍結乾燥させた後、これらを物理的外観について評価し、そしてブタの動脈切開試験で試験した。
【0122】
結果:この実験において、包帯を、トロンビンを可溶化するために40mM 、13mM 、または4mM CaCl2を使用して作製し、そして包帯は、37.5U/cm2、12.5U/cm2、4.2U/cm2、または1.4U/cm2でトロンビンを受けさせた。表10は、実験の設定および結果を示す。
【0123】
(表10. ブタの動脈切開試験における包帯の性能(トロンビンの量およびCaCl2濃度の変動を伴う))
【0124】
【表10】

【0125】
表10の結果は、包帯について最も良好な組み合わせは、13mMまたは40mM CaCl2のいずれかで可溶化された37.5U/cm2のトロンビンであることを示す。この組み合わせは、物理的外観とブタの動脈切開試験に合格する能力との両方において、試験した他の全ての組み合わせによりも優れている。これら2つの包帯の組み合わせは、凍結乾燥後に成分相の分離を示さず、そして100%の包帯が、ブタの動脈切開試験に合格した。
【0126】
これらの包帯の製造にあたって、凍結乾燥サイクルにおいて調節がなされていないので、凍結乾燥サイクルは、包帯をより少量のトロンビンおよび/またはCaCl2の量で一貫して調整するように改変され得ることに注目すべきである。しかし、トロンビンの量の減少は、フィブリン形成について必要とされる時間の量を延ばし、そして特に体温が通常よりも低いために生体自身の凝固能力が減少している外傷の場合に、包帯の品質を危うくし得る。
【0127】
(K. 実施例XI)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から移し変え、そして2時間で25℃まで昇温させた。Dispoのプラスチック製型(2.4cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μlの2%スクロースを噴霧した。VicrylTMを適用し、そして所定の場所にプレスした.型を−80℃で1時間置いた。
【0128】
フィブリノゲンを、15mg/cm2について、11mLの2%のスクロースで36.4mg/mLの濃度にし、8mg/cm2について、21mLの2%のスクロースで18.7mg/mLの濃度にし、4mg/cm2について、42.8mLの2%のスクロースで9.35mg/mLの濃度にし、そして2mg/cm2について、85.6mLの2%のスクロースで4.68mg/mLの濃度に可溶化させた。型を1.23mLのフィブリノゲンを受けさせ、次いで−80℃で1時間凍結させた。
【0129】
トロンビンを0.5mLの40mM CaCl2で2000U/mLの濃度にして可溶化させた。包帯をドライアイス上に置き、そしてトロンビンを噴霧した。
【0130】
包帯を−80℃に戻してさらに1時間保持した。包帯をドライアイス上に置き、そして第2層(第1層と同一)のフィブリノゲンを受けさせた。
【0131】
包帯を、−80℃に戻して2時間保持してから凍結乾燥機に入れた。包帯を凍結乾燥した後、これらを物理的外観について観察し、そしてブタの動脈切開試験で試験した。
【0132】
(表11. ブタの動脈切開アッセイにおいて200mmHgで3分間維持された包帯の割合)
【0133】
【表11】

【0134】
(L. 実施例XII)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から移し変え、そして2時間で25℃まで昇温させた。Dispoのプラスチック製型(2.4cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μLの2%スクロースを噴霧した。
【0135】
フィブリノゲンを11mLの2% スクロースで36.4mg/mLの濃度にして可溶化させた。それぞれの包帯は、最終的に15mg/cm2の量のフィブリノゲンを有した。枠型に1.23mLのフィブリノゲンを受けさせ、次いで−80℃で1時間で凍結させた。
【0136】
トロンビンを40mM CaCl2で可溶化し、包帯をドライアイス上に置き、そしてトロンビンを37.5U/cm2で噴霧した。包帯を−80℃に戻して、さらに1時間保持した。
【0137】
包帯をドライアイス上に置き、そして第2層のフィブリノゲン(第1層と同一)を受けさせた。VICRYLTMを適用し、そして所定の場所にプレスして、そして枠型を300μlの2%スクロースを噴霧した。包帯を−80℃に戻して、2時間保持してから凍結乾燥機に入れた。
【0138】
結果:包帯を、凍結乾燥機から取り出したときの物理的外観について評価した。包帯の層はインタクトであったがVICRYLは包帯に付着しなかった。
【0139】
(M. 実施例XIII)
フィブリノゲンを冷蔵庫から移し変え、そして2時間で25℃まで昇温させた。Dispoのプラスチック製型(2.4cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μlの2%スクロースを噴霧した。アルギン酸カルシウムを適用し、そして所定の場所にプレスした。
【0140】
フィブリノゲンを、11mLの2% スクロースで36.4mg/mLの濃度にして可溶化させた。それぞれの包帯は、最終的に15mg/cm2の量のフィブリノゲンを有した。枠型に2.4mgのフィブリノゲンを受けさせ、次いで−80℃で2時間で凍結し、次いで凍結乾燥機に入れた。
【0141】
結果:包帯は、凍結乾燥機から取り出したときにインタクトであった。
【0142】
(N. 実施例XIV)
フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から移し変え、そして2時間で25℃まで昇温させた。 Dispoのプラスチック製型(2.4cm×2.4cm)をドライアイス上に置き、そして300μlの2%スクロースを噴霧した。VicrylTMを適用し、そして所定の場所にプレスした。フィブリノゲンを11mLの2% スクロースで36.4mg/mLの濃度にして可溶化させ;さらに各バイアルに0.2グラムのCHAPSを受けさせた。それぞれの包帯は、最終的に15mg/cm2の量のフィブリノゲンを有した。枠型に1.23mLのフィブリノゲン/CHAPSを受けさせ、次いで−80℃、1時間で凍結させた。
【0143】
トロンビンを40mM CaCl2で可溶化させ;包帯をドライアイス上に置き、そしてトロンビンを37.5U/cm2で噴霧した。包帯を−80℃に戻して、さらに1時間保持した。
【0144】
包帯をドライアイス上に置き、そしてフィブリノゲン/CHAPSの第2層(第1層と同一)を受けさせた。包帯を、−80℃に戻して2時間保持してから、凍結乾燥機に入れた。
【0145】
結果:包帯は、凍結乾燥から取り出したときにインタクトであり、そして形状が一様であった。
【0146】
(O. 実施例XV)
異なる裏打ち物質を組み込み、そしてフィブリノゲンの濃度が15mg/cm2の包帯の、平均の破裂圧(burst pressure)を決定した。
【0147】
【表1】

【0148】
*全ての包帯が、最長3分間の試験時間で平均の破裂圧を維持した。
【0149】
結果:平均破裂圧および時間の最大値は、8mg/cm2の濃度の包帯で達成された。VICRYLおよびDexonのメッシュ単独での平均破裂圧はゼロである。
【0150】
(P.実施例XVI:インビボでのデータの要約)
(層状(フィブリノゲン50/50)包帯の適用方法)
15mg/cm2のフィブリノゲンの、層状化フィブリノゲン/トロンビン/フィブリノゲンの包帯を、包帯について2つの異なる以下の適用方法を使用してラットの動脈出血モデルにおいて試験した:1)枠状プラットフォーム(molded platform)上の500gの重量を、15分間の圧力を適用するために使用し、そして出血が見られる場合には、さらに1分間の圧力を適用するというバリエーションを伴う方法、または2)指圧を7分間にわたって適用し、そして研究の後半部分において、出血が最初の包帯後に見られた場合には、さらに3分間の指圧を伴って第2の包帯を適用するという選択を有する方法。いずれかの方法による全ての場合において、包帯を乾燥箇所に適用し、そして動脈からの血流を包帯を浸漬するために使用した。
【0151】
(ラット出血モデル)
動物:モデル:ラット;販売元:Harlan Sprague Dawley;系統: Sprague Dawley;色:白;齢:120日齢〜180日齢;性別:雄;体重:400g〜500g。
【0152】
(麻酔:)
1)1.1g/kgの55% w/v ウレタン(メチルカルバメート)をIP(腹腔内)投与
a)ウレタンは、Sigma(ロット番号55H0368)により供給される
b)ウレタンは、滅菌したガラス製で頭部がゴム製の試験管(Becton Dickson、 Vacutainer、 5ml Draw Lot#6A715exp.Dec 97)中で2.0gのウレタンを計量することにより毎日新鮮に調製される。等重量/容量(2.0cc)の注射用滅菌水(Abbot Laboratories、 10mlの注射用滅菌水、U.S.P.、Lot11-221-DK、 Exp Dec 1、 97)を添加して3.6mlの最終溶液容積を生成する(55.56% ウレタンの溶液を生成する)。この調製手順は、生物学的保全キャビネット(Formula Scientific、 model 1168、serial no.14088−43)で実行する
c)ウレタン注射物を、23ゲージ、3/4インチの針(Becton Dickson、PrecisionGlide needle、 sterile
Lot no. 4B047)を有する1ccのシリンジ(Becton Dickson、 tuberculin 1cc syringe、 sterile Lot no.3E345)に吸い上げ、そして投与する。ラットを秤量し、手で押さえつけ、そしてウレタンを、腹側の腹部の左側尾部の四分円に腹腔内(IP)に注射する。注射される容量は、1.1g/Kgの容量を送達するために、ラットの体重の400〜500gについて0.80〜1.00mLの範囲である
d)ウレタン注射後にT=0と記録して、時計をすぐにスタートさせた。
【0153】
2)0.06mg/Kgのアトロピンおよび0.15mg/Kgのブプレノルフィンを一緒にIM(筋肉内)投与
a)硫酸アトロピンは、Phoenix Pharmaceutical、 Inc.(Lot#5110547、 Exp.11/96)により供給される
b)ブプレノルフィンHCl(Buprenex)は、Reckitt&Colman Pharmaceuticals(CN#3555、Exp.1、Feb.’99)により供給される
c)アトロピンを、26ゲージ、1/2インチの注射針(Becton Dickson、 PrecisionGlide needle、 sterile Lot no.4B046)を有する1ccのシリンジ(同上 )に最初に吸い上げ、次いで、ブプレノルフィンを同じシリンジに吸い上げる。ラットに、正向反射を喪失したときに(ウレタン注射後2〜3分後)、同じシリンジと注射針で尾部大腿に筋肉内注射を供する。注射される量は、アトロピンは0.04〜0.05mL、そしてブプレノルフィンは0.20〜0.25mLであり、400〜500gのラットについて総容積が0.24〜0.30mLとなる
d)注射した時間を、最も近似する分(minute)で記録する。
【0154】
(手術:)
1)動物の剃毛:
a)熱プローブの配置のための右腋窩領域
b)右頚動脈カニューレ挿入のための腹側頚部
c)開腹のための腹側腹部正中線。
【0155】
2)熱プローブの配置:
a)#15または#17の小刀の刃を用いる右腋窩の穿刺切開
b)ハートマン(Hartman)モスキート鉗子を用いて切開の尾側の皮下組織を破壊した
c)熱プローブ(TraceableTM、デジタル温度計について検定の証明書、モデル番号15−078−39、シリアル番号566680)を、皮下に配置し、そして温度を記録した
d)熱プローブの配置時間を最も近い分に対して記録した
e)電熱の補助の使用により、体温を、33と39℃の間に保つ。
【0156】
3)頚動脈カニューレ挿入/圧力トランスデューサーの配置(手術用顕微鏡下):
a)腹側頚部を、胸骨柄から下顎結合まで切開した−−時間を記録した
b)頚部筋系を、顔面平面にそって鈍角に解剖して、右頚動脈を曝露した
c)周囲組織から頚動脈を鈍角に解剖し、腹側に分散させた
d)頚動脈曝露の遠位末端を4−0シルクと結紮して、近位の末端を4−0シルクの長さで上昇させ、そして4−0シルクの3分の1の長さを、間の中途の動脈下に配置した
e)微小血管はさみおよび動脈に2〜3cm近位に挿入したトランスデューサー/カテーテル(Millar Mikro−Tip Catheter Pressure Transducer System、サイズ2F、モデルSPR−407)を用いて傾いた動脈切開を行い、次に迅速に解ける結びと、そのシルクの3分の1の長さを使用して結紮した
f)器具および上昇させる縫合を視野から取り除き、頚部切開をステープルで部分的に閉鎖し、そしてこのラットを開腹のための調製に置いた
g)コンピュータ化データ収集を開始する−−時間を記録した*
h)1分の間隔で、少なくとも5セットのデータを記録した(平均動脈圧、心収縮期および拡張期圧、および心拍数の読み取り)、各分ごとに平均した。
【0157】
4)開腹術(手術用顕微鏡下)
a)剣状突起から恥骨までを皮膚および白線を通して、腹側正中線切開
b)Weitlaner Retractor(3×4 8”#)を用いて腹部切開を後ろに引き、小腸を動物の右側で体外に出し、小腸を温かい生理食塩水で湿らせたガーゼで覆い、結腸の腸間膜を鈍角に解剖し、そして結腸を右に置きかえた
c)腹膜後腔を鈍角で解剖して、腎動脈の遠位に大動脈/大静脈の腰部領域を曝露した。脂肪組織を、血管複合体および周囲筋肉床から除去して、約2〜3cmの直径のウインドウを作製した
d)大動脈の直径を測微カリパスで測定して、文書に記載した
e)ヤコブソン(Jacobson)マイクロモスキート止血鉗子を用いて、腎臓動脈に直ぐ遠位のウインドウの頭蓋の縁でクランプし、そして、ディーフェンバッハマイクロクランプ(Dieffenbach Micro Clamp)を用いて、ウインドウの尾部の縁で、大動脈を、クランプした
f)大腰部静脈のレベルで、または直ぐ遠位の大動脈の腹側面上で、長さ4mmの切開を微小血管メスおよび動脈切開はさみを使用して作製する。測微カリパス、および顕微鏡の対眼レンズに取り付けた接眼定規を用いて測定した切開を切開作製プロセスを導くために利用した
g)遠位の大動脈クランプを除去し、近位の大動脈クランプを、短時間解放して、約0.5〜1.0mlの血液でウインドウを満たさせて、そして動脈から可能性のある血栓を取り除いた
h)包帯(実験的フィブリン封着剤粉末またはIgG粉末プラシーボコントロールのいずれか)を動脈切開部位に配置して、薄いプラスチックのラップで覆われた特別注文の円筒状に成形されたプラットホーム(円筒に成形されたBondoTMエポキシ化合物で作製し、一方の端を400gのラットの背の内部側に接触して、そして緩やかにヤスリをかけ一般的な形態にする、重量=15.2g)を包帯の上に配置し、次に500gの円筒形の真ちゅう重り(OHAUS)をプラットホームの上に配置して、そして環状のスタンドを用いて傾かないように安定化させた。この工程を、なるべく迅速に行い(1分未満)、そして穏やかな手動の圧力をこれらの操作の全体にわたって適用する
i)近位の大動脈クランプを除去する。出血に気づく場合、数秒間の手動の圧力を適用し、そして重りの位置/角度の小さな調整を行って、止血を達成する。しばしば、その重りは、5度未満でわずかに前方に傾く。止血が達成され得ないか、または過剰の出血が生じる場合(その重りを持ち上げる直前にMAPによって示されるように−−以下の除外判定基準を参照のこと)、次にその動物は除外されなくてはならない
j)加圧の10分後、その重りを持ち上げ、そして可視的な出血が認められる。その重りを持ち上げる前の1分間の間にMAPが60mmHg未満である場合(この時点以前に、過剰の出血が生じていることを示すか、またはその動物が麻酔に対して異常に応答していることを示す)、その動物は除外されなくてはならない。さらに1分後、成形されたプラットホームを注意深く除去して、乱されていない包帯を暴露する
k)その動物を失血により死亡するまでか、または止血が維持される場合最大30分までモニターする。ポジティブな結果は、その動物がその全30分生存する止血である。ネガティブな結果は、試験時間である30分以内の失血による死を伴う出血である。中間の結果は、30分間の試験時間を通した生存であるが、MAPは50mmHgを超えては維持されない
l)そのラットが30分の試験期間生存する場合、頚動脈トランスデューサーを除去し、そして失血を生じさせる。死亡後、その血液を腹膜腔から再度重量を量られるガーゼパッドでふき取り、そしてそのガーゼを再度重量を量って、血液の損失を推定する。その包帯および動脈切開部位を、検査して、そして動脈切開を、再度計測して、長さが4mm+/−0.5mmであることを確認する。
【0158】
(包含/除外判定基準および実験の目標の概要:)
1)ラットの選択についての包含判定基準:
a)HSBアルビノ雄性
b)体重400と500gの間
c)齢120と180日の間
2)手順パラメーターについての包含判定基準
a)開腹の前の5分間、MAPは少なくとも平均80mmHg
b)開腹の前の5分間、HRは300と500bpmの間
c)その重りを持ち上げる前の1分間、MAPは少なくとも平均60mmHg
d)手順の終了時、大動脈切開の長さが3.5と4.5mmの間であることを確認
3)手順パラメーターについての除外判定基準
a)大動脈の動脈切開以外の部位からの、制御されない出血
b)明らかな出血以外の何らかの理由のための死亡
c)取り返しのつかない手術または手順の誤り
d)上記の包含判定基準を満たさない任意の動物
4)実験の目標
a)第1の目標
−止血
−包帯での加圧の解放後、30分間の生存
b)第2の目標
−生存の30分全体の間の50mmHgを超えるMAPの維持
c)強力なポジティブな結果
−第1および第2の目標を満たす
d)中間のポジティブな結果
−第1の目標を満たすが、第2の目標を満たさない
e)ネガティブな結果
−30分以内に死亡をもたらす出血。
【0159】
(結果:)この研究は、2つの異なる技術によって適用された層状の包帯を用いて、1群あたりに含まれる10匹の動物のうちN匹を用いて、いずれの方法によっても、正確に50%の成功率を生じることを示した。
【0160】
その重りおよびプラットホーム方法を用いて、19匹の動物のうち10匹が、この研究に包含され(5匹は処置前に除外、そして4匹は処置後に除外)、処置後除外した2匹は、見かけ上の止血にもかかわらず生存しなかった。10匹のうち5匹は、30分の試験時間生存した動物を含んだ一方で、これらの生存動物のうち3匹は完全な止血を示した。
【0161】
指での圧力を用いる単一の包帯の適用を用いて、12匹の動物のうち10匹の動物が包含され(処置前除外の1匹、そして処置後除外の1匹は、見かけ上の止血にもかかわらず死亡した)、10匹の被検体のうち5匹は30分生存した。第2の包帯を、さらなる6匹の動物において適用し、このうち4匹が包含され(両方は処置前の除外)、そしてこの4匹のうち2匹は30分生存動物を包含した。あまりに大量の血液が損失する前に、第2の包帯を適用するのに十分な時間は、しばしば存在しなかった。失敗したほとんど全ての場合において、動脈からの血流が包帯と組織との間の平面を解体し、−−1つの場合においてのみ、血流が、包帯マトリクスを通って流れるのが見られた。その包帯の組織への付着は、自然な血腫がその包帯の下に形成される箇所で、より弱いフィブリンのポケットを形成する以外は、良好であった。多くの場合、その包帯は血液によって完全に満たされることはなかった。
【0162】
(ウサギにおける動脈出血モデル)
ウサギ大動脈モデルは、ラットモデルよりもいくつかの利点を有する:動脈を下層にある組織から単離して、損傷部位への直接的接近を提供し得る、プレートは圧力の適用についてのバックグラウンドを提供するために大動脈の下に配置され得る、動脈は種々の切開サイズおよび配置を試験するために十分に大きい、ならびにそのウサギは包帯を浸漬するためか、または複数の包帯を適用するために必要な適切な血液損失に耐えるためにはるかに多量な血液容量を有する。ウサギの不利な点は、高血圧を維持し得る良好な麻酔レジメを欠くことである(昇圧剤を使用することにより取り組まれた問題)。
【0163】
ニュージーランド白色雄性ウサギ(体重2.9〜3.3kg)をこの研究において使用した。ウサギに、ブプレノルフィンおよびグリコピロレート(glycopyrrholate)を前投薬し、そしてケタミンおよびキシラジン(IM投与)を用いて麻酔を誘導する。気管内チューブを、気管切開を介して配置し、そして機械的換気補助を提供する。麻酔を、酸素中のイソフルランによって維持する。その動物の状態を心電図検査および肉眼検査によってモニターする。A22ゲージの血管カテーテル(angiocath)を左内側耳静脈に挿入し、そして乳酸加リンゲル溶液のIV点滴を、20ml/Kg/時間の外科的速度で投与する。両側の迷走神経切除を、迷走神経媒介性の心血管効果を避けるために行う。半導体圧力トランスデューサーを、左総頚動脈に挿入して、血圧をモニターして、そしてコンピュータ記録を開始する。
【0164】
腹部大動脈を、腹側正中線開腹を介して曝露して、そしてその大動脈を大静脈および周囲組織より注意深く解剖する。小分岐動脈を結紮または焼灼して、6〜8cm長の動脈を単離する。プラスチックの長方形のプレートを、その大動脈の曝露された部位の下に挿入する。血流を、ヤコブセン(Jacobsen)止血鉗子を用いて、遠位および近位で閉鎖する。5mmの縦の切開をマイクロブレード(microblade)および微細はさみを用いて作製する。
【0165】
15mg/cm2(2.4×2.4cm.)のフィブリノゲン/トロンビン/フィブリノゲン包帯を、初期の研究において試験された種々の技術によって損傷部位に適用する。柔らかいゲルで充填したプラスチックのパッドを、その包帯の上に適用して、500グラムの重りをそのパッドの上に配置する。クランプを除去して、そしてその重りを10分間(この時間は、後の研究において変化する)圧力を適用するために使用する。特定の時間の後、その重りとゲルパッドを除去する。その後すぐに、そのプラスチックプレートを、その包帯の下から注意深く除去する。観察時間は、その重りの除去後30分である。観察時間中の5分、フェニレフリンIV点滴を開始して、その動物の平均動脈圧を100mmHgを超えるよう引き上げ、そして、観察時間の最後まで、または失血によるその動物の死亡まで、漸増する速度で続ける。
【0166】
予備的モデル開発研究は、少なくとも以下の5つの群を包含する:1)大動脈の下に乾燥包帯を配置して、2〜3mLの生理食塩水に浸漬して、そして重りが適用される前に、損傷部位の周りに巻く;2)群1のとおりであるが、その包帯はその動物から新たに採取した血液に浸漬する;3)その切開の上に平坦に乾燥包帯を配置して、そして圧力を適用する直前に生理食塩水に浸漬させる;4)その切開の上に平坦に乾燥包帯を配置して、そして動脈からの流れる血液に浸漬させる;ならびに、5)上記の最も効果的な技術によって、プラシーボ包帯を適用する。第4の群において、その包帯が血流をもたらす位置に存在する直後に、クランプを解放し、その重りを、血流がその包帯を視覚的に浸漬するとすぐに適用する。
【0167】
(結果)止血は、その包帯が損傷自体からの血流で水分補給される場合に動物の50%で生じるが、生理食塩水がその包帯を湿らせるために使用された制御条件下では、100%の動物において止血が達成される。動脈からの血流がその包帯を浸漬するために使用された場合に見られるこの差異の理由は、明らかではない。
【0168】
(イヌにおける前立腺切除出血モデル)
フィブリノゲン/トロンビン/フィブリノゲン包帯をイヌ前立腺切除研究のために調製した。フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から取り出し、そして2時間、25℃まで暖めさせた。使い捨てのプラスチック型(3.0cm×2.4cmおよび3.7cm×2.4cm)をドライアイス上に配置して、300μlの2%スクロースをスプレイした。VicrylTMを型に適用し、そしてプレスして配置した。この型を−80℃で1時間インキュベートした。
【0169】
フィブリノゲンを、11mLの2%スクロースを用いて、36.4mg/mLの濃度にまで可溶化した。各包帯は、最終量15mg/cm2のフィブリノゲンを有した。その3.0×2.4cm型に、1.5mLのフィブリノゲン溶液を与え;一方、その3.7cm×2.4cm型に、1.75mLのフィブリノゲンを与えた。それらの包帯を、−80℃で1時間冷凍した。
【0170】
トロンビンを、0.5mLの40mM CaCl2を用いて、2000U/mLの濃度にまで可溶化した。それらの包帯の全てを、ドライアイス上に配置し、トロンビンをスプレイした。各包帯に、37.5U/cm2のトロンビンを与えた。それらの包帯を、さらに1時間−80℃に戻した。
【0171】
それらの包帯を、ドライアイス上に配置し、そしてフィブリノゲンの第2の層を与えた(第1の層と同一)。それらの包帯を、2時間−80℃に戻して、次に凍結乾燥機中に配置された。
【0172】
この前立腺切除モデルにおいて、正中線腹部切開を作製し、脾臓摘出を行う。前立腺を、鈍角に解剖し取り除き、そしてこの前立腺の直ぐ遠位で尿道を単離する。その尿道を、前部で切開し、フォーリーカテーテルを創傷の中へ上部に引き上げて、そして後部尿道を横切開する。その前立腺への血管性茎を、鋭角に横切開する。出血を、重ねたスポンジと手動の圧力で制御するが、膀胱頚部を、その前立腺から解剖して取り除く。その前立腺は、手術野から送達される。
【0173】
この時点で、出血がある場合、血管を単離して結紮する。止血を達成する時間を、その前立腺が送達される時間から、さらなる出血が存在しない時間まで、測定する。急性の血液損失を、手術後の重ねたスポンジの重量から手術前の重量を引くことにより計算する。
【0174】
この研究は、4つの実験的処置群を含んだ:コントロール、フィブリン封着剤包帯、プラシーボ包帯、および液体フィブリン封着剤。そのコントロールは、重ねたスポンジおよび手の圧力の適用である。その実験群は、重ねたスポンジおよび手の圧力の配置の前に、出血領域を覆うそのフィブリン封着剤包帯の適用である。さらに、吻合を2つの包帯(1×3cm)で包む。そのプラシーボ包帯は、凍結乾燥IgGタンパク質調製物の視覚的に同一の層であり、これはその実験フィブリン封着剤包帯群と同一に処置される。その液体フィブリン封着剤は、混合されたフィブリノゲン、第XIII因子、およびトロンビン溶液であり、圧力の適用前に出血表面に適用される。さらに、6mlのこの封着剤が、その吻合に適用される。
【0175】
(結果:)このイヌ前立腺切除研究からの予備的結果は、そのフィブリン封着剤包帯が、首尾良くこのモデルにおいて出血を制御することを示す(表12)。
【0176】
(表12:フィブリン封着剤包帯のイヌ前立腺切除研究における効力)
【0177】
【表12】

【0178】
表において、「結紮した血管」とは、前立腺が除去された後に出血を止めるために血管を結紮することが必要な動物の数をいう。そのフィブリン封着剤包帯を用いて処置されたイヌのみが、血管の結紮を必要としなかった。
【0179】
(ブタにおける肝臓損傷出血モデル)
層状の包帯を、ブタの肝臓損傷モデルのために調製した。フィブリノゲンおよびトロンビンを冷蔵庫から取り出して、2時間、25℃まで暖めさせた。44の正方形ペトリ皿成形(10.1cm×10.1cm)(表面積103cm2)を凍結乾燥機から棚のトレーの上に配置した。各ペトリ皿に、20mLの2%スクロースを与えて、194μL/cm2を生じた。
【0180】
2%スクロースの添加後、型を、凍結するまで、−80℃で2時間配置した。VicrylTMを適用して、プレスして配置した。型を−80℃に1時間戻した。
【0181】
各バイアルのフィブリノゲンを10mLの2%スクロースを用い、最終濃度16mg/mLにまで可溶化した。その型に、25mLのフィブリノゲンを与え、そして凍結するまで、−80℃に2時間戻した。
【0182】
トロンビンを、0.5mLの40mM CaCl2を用いて、2000U/mLの濃度にまで可溶化した。その包帯を、ドライアイス上に配置し、トロンビンをスプレイし、そして−80℃で1時間インキュベートした。
【0183】
さらなる25mLのフィブリノゲンをトロンビンの最上部に添加した。その包帯を、凍結乾燥機中に配置するまで、−80℃で2時間インキュベートした。
【0184】
凍結乾燥の後に、その包帯を包装して、そしてブタ肝臓損傷研究における試験に送った。
【0185】
そのフィブリン封着剤包帯の効力を試験し、そして血液損失におけるフィブリノゲン用量の効果を決定する研究を行った。全身麻酔のもと、各ブタを開腹し、そして脾臓摘出した。15分後、IV等級の肝臓損傷を、特別に設計された装置を用いて誘発した。30秒後、その包帯を損傷に適用した。乳酸加リンゲル溶液を用いる蘇生法を、同時に開始して、その動物を損傷前の平均動脈圧まで蘇生した。次に、腹部切開を閉鎖して、そのブタを60分間モニターした。その動物を、60分に、安楽死させた。損傷前、および損傷後30分および60分に、血液サンプルを収集した。CBC、フィブリノゲン、PTおよびPTTを、各時点で測定した。60分に、総液体使用および腹腔に存在する血液の容量(総損失血液)を測定した。さらに、肝臓を切除して、そしてその損傷をスコア付けして、IV等級損傷を確認した。
【0186】
(結果:)出血を防ぐためのフィブリン封着剤(FS)包帯の効力を試験するブタ肝臓損傷モデルの研究は、FS包帯が液体蘇生法およびガーゼ適用を用いる標準的な処置よりも、はるかに優れることを示している。この研究は、4つの群からなり:(1)未処置、(2)IgG包帯(プラシーボ)、(3)ガーゼ充填、および(4)フィブリン封着剤包帯。各群の全ての動物に、流出した血液について補うために液体蘇生法を施した。それらの動物を、60分間モニターした。
【0187】
群1(未処置群)は、動物1匹あたり、6,025±1,020ccの血液を損失し、そしてそれらの動物は死亡した。群2(プラシーボ包帯)は、動物1匹あたり、4,222±1,554ccの血液を損失し、そしてそれらの動物は死亡した。群3(ガーゼ適用群)は、動物1匹あたり、1,104±263ccの血液を損失した。群4(フィブリン封着剤包帯群)は、動物1匹あたり、544±104ccの血液を損失した。
【0188】
ブタが希釈および体温異常降下の両方によって凝固障害となった場合に、これらのより厳しい条件下では、そのガーゼ充填で処置された動物は失血したが、フィブリノゲン/トロンビン/フィブリノゲン包帯で処置された動物は生存したことを除いて、同様の結果が、観察された。
【0189】
(初期包帯フィブリノゲン投薬量研究)
コントロール群における血液損失は、2819±629mL(平均±SEM)であり、これはいずれの処置群よりも有意に大きかった(p<0.05)。
【0190】
フィブリン封着剤包帯処置群における血液損失は、お互いに有意に変わらなかった。容量は、15、8、4mgフィブリノゲン/cm2群において、それぞれ、588±629mL、632±703mLおよび758±629mLであった。
【0191】
液体蘇生法の総容量は、コントロール、15mg、8mg、および4mgフィブリノゲン/cm2群について、それぞれ、2757±565mL、1448±505mL、1775±505mLおよび2208±565mLであった。そのフィブリノゲンおよび全てのCBC成分は、示された血液損失にともなって減少した。PTおよびPTTは、増加した。
【0192】
ブタにおいて使用されたフィブリン封着剤包帯由来の血餅のいくつかを、試験した:3/3コントロール包帯は付着しなかった、15mg/cm2包帯群における3/3は良好に付着した、8mg/cm2包帯群における3/3は付着した、そして4mg/cm2包帯群における3/3はわずかに付着した。コントロール、4mg、および8mg処置群の各々において、1匹のブタが、60分より前に死亡した。15mg群において、その動物の全ては、60分間生存した。この研究は、ブタにおけるV等級肝臓損傷の後に、フィブリン封着剤包帯が血液損失を減少させるという以前の知見を確認する。
【0193】
このデータは、4mg〜15mg/cm2のレベルのフィブリノゲンが止血制御のために有効であることを示唆する。血餅の質の評価に基づく場合、フィブリノゲン用量は、質に関連するようである。より高用量は、より堅固でしっかりと付着する血餅と関連する。フィブリノゲンのより低用量は、最初の60分間の間の止血制御にとって有効であるが、より長期の生存は、血餅の質に依存するようである。将来における生存の研究は、短期(60分)およびより長期の両方の止血および生存をもたらすフィブリノゲンの量を決定することに焦点が当てられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2010−115504(P2010−115504A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−835(P2010−835)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【分割の表示】特願2000−549310(P2000−549310)の分割
【原出願日】平成11年5月19日(1999.5.19)
【出願人】(501475734)ジ・アメリカン・ナショナル・レッド・クロス (2)
【Fターム(参考)】