説明

止血材

本発明は、キャリア層と、少なくとも1つの止血剤を微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備えている創傷接触用材料とを備える止血材に関するものである。このような止血材は、例えば、ヒト又は動物における生理学的標的部位の出血を低減又は止めるのに有用であり、医療処置中の出血を止めるのに使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血材に関するものである。止血材は、例えばヒト又は動物の生理学的標的部位の出血を低減又は止めるのに有用である。この止血材は、医療処置中の出血を止めるのに使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
動物や、ヒトでも非ヒト動物は、出血を引き起こす怪我や創傷を負う多くの状況がある。軽傷の場合には、その出血は、血液を凝固させて、出血を抑えて損傷した血管の治療を助ける固体の凝血塊を形成する、体の自然の止血機構により止めることができる。場合によっては、最小限の応急処置を施して、創傷に持続的な圧迫を与えることにより患者の出血を止めるように、その出血を止めて創傷治癒を助けることができる。これは、凝固因子を創傷の部位に集めて、凝固血の塊を形成して血流を止めることを可能にする。しかし、この技術は、重傷及び多数の出血箇所がある創傷には適していない。従って、大量出血が主な死亡原因となっている。
【0003】
大量出血による死は、戦場のような環境では特に問題である。典型的には、このような状況で生じる創傷はかなりの出血を伴い、多くは死に至る。大量出血は、外傷性障害を受けた一般市民の間でもかなりの死亡原因となっている。
【0004】
創傷からの出血を容易に止める製品を提供しようとして、止血製品が開発されてきた。
【0005】
止血剤には、典型的には固体粉末又は顆粒あるいは液体状のものがある。これらの形は全て流動性であり、創傷部特有の不規則な表面にくっついて、良好に止血することができる。しかし、液状止血剤の微粒子の流動性質はまた、それらの使用扱いを比較的困難にしている。流動性を有する止血剤を、出血を止めなければならない創傷の部位に留めることが問題になる。
【0006】
これらの止血剤には、QuikClot(登録商標)のブランド名で販売されている製品が含まれる。QuikClot(登録商標)は、血液に存在する凝固因子が集まって血液がより早く凝固するように、創傷部から流れている血液から水分を吸収するゼオライト化合物を含むため、ゼオライトと凝固した血液とが一緒になって凝塊を形成して血流を止める。
【0007】
この製品の開発において、止血剤が含まれているガーゼバッグが提供されている。これは、止血剤の取り扱いの容易さ及び適用を改善しているものの、ガーゼバッグは、止血剤を体の組織及び創傷部位での血液から物理的に引き離している。これは、止血剤の効能を下げている。更に、ガーゼバッグは、柔軟ではあるが、ガーゼバッグにおける穴は、ガーゼバッグ内に保有されている止血剤の典型的な粒子サイズよりも小さいため、止血剤の粒子は、バッグの外に出て創傷部の裂け目や不規則な表面に入り込むことができない。ガーゼバッグは、除去されるまで元の位置のままである。
【0008】
別の製品が特許文献1に記載されている。その製品は、キトサン層を備える平坦な一体成形のシート状包帯である。それは、創傷接触層としての顆粒やフレークを含まない。その包帯は、創傷部位に貼り付けられてシールを形成する。キトサンは、シートにより形成されたシールとともに血液を凝固させて血流を止める。しかし、これらの製品は出血源、つまり動脈に直接貼り付ける必要がある。このような適用には技能と精度が要求される。衛生兵及び最初の対応者達は、出血源を同定し、そこに包帯を貼り付けるのに必要な技能を有していない。いずれにしても、戦場において創傷部位にこのような繊細な処置を施すのは著しく困難である。また、特許文献1によるシートを剥がすと、シール層が除去されるため、出血が再開する。
【0009】
特許文献2及び特許文献3は、止血剤としての純粋なキトサン酢酸塩の使用を開示している。しかしながら、純粋な塩から形成するそのゲルは、材料の最外側表面のみが短期間だけ役目を果たすのに利用できるだけであるので、非常に薄い。この止血材は、止血に失敗することがよくあり、止血したとしても、凝血塊は非常に薄いため、患者が動くと、凝血塊が傷つき、出血が再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第02/102276号パンフレット
【特許文献2】英国特許第2095995号明細書
【特許文献3】英国特許第2129300号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、生理学的標的部位からの血流を比較的早く止め、使用に容易で安全な止血材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、キャリア層と、少なくとも1つの止血剤を、微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備えている創傷接触用の材料とを備える止血剤が提供される。
【0013】
“止血剤”とは、血液に接触させた時に、出血を止める又は低減させる凝血塊又は栓を作ることができる任意の薬剤を意味する。
【0014】
生理学的標的部位は、動物の体内又は表面上の任意の部位でもよい。動物は、ヒト又は非ヒト動物であってもよい。生理学的標的部位は、創傷であってもよいし、医療用処置、例えば手術中に生じた体内の体における開口部とすることもできる。これ以降、生理学的標的部位のことを、便宜上及び例示目的のために、創傷と称する。
【0015】
本発明の止血材は、ごく基本的な医学訓練を受けた人が使用できる。単に止血材を生理学的標的部位に貼り付けて押さえるだけである。
【0016】
本発明による止血材は、取り扱い及び使用が容易であることが有利である。この止血材は通常、使用前は乾燥状態で保管する。
【0017】
生体内作用を活用する製品は、温度に依存する傾向がある。失血している患者は、戦場での激しい活動のために非常に熱くなっているか、低温状態に晒されて非常に冷たくなっていることがよくある。現在利用可能な製品は、こうした極端な温度では効果が弱い。本発明の止血材は、温度変動に影響されず、従って、通常の体温(37℃)より上の温度でも下の温度でも、同等に首尾良く効き目があるので有利である。
【0018】
本発明による止血材は、様々な形態にすることができる。本発明の一態様によれば、止血剤は、熱及び/又は圧力を用いてキャリア層に接着することができる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、止血剤は、接着剤を含み、止血剤とキャリア層との間に止血剤とは別々の層をなす接着剤を用いて、キャリア層に接着することができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、接着剤と止血剤とを混ぜて、キャリア層の上に位置させることができる。
【0021】
本発明の別の態様によれば、キャリア層の両側は、止血剤で少なくとも部分的に被覆されている。止血剤は、典型的には、キャリア層の両側で同じ様式で接着されている。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、混合された接着/止血剤層の上、又は別々の接着剤層及び止血剤層の上、又はキャリア層に熱及び/又は圧力により接着された止血剤層の上に、可溶性、分散性、又は取り外し可能な保持材を備える更なる層があってもよい。この保持材は、止血剤が創傷に塗布された時に、体液により溶解又は分解、又は体液に分散される。
【0023】
この更なる層は、止血剤を保持するのに使用することもできる。それは、ゼラチン又はセルロース誘導体のような多糖から作られる可溶性フィルムとすることができ、又は、ポリビニルアセテート(PVA)又はポリビニルアルコール(PVOH)のような可溶性のフィルム形成物から作ることができる。
【0024】
分散性フィルムは、典型的には、上記のような水溶性材料や、セルロース繊維のような別の不溶性材料を含んでおり、湿潤すると分散する。取り外し可能な層は、使用前に剥離可能なシート又はネットとすることができる。
【0025】
可溶性又は分散性は、動物の体における創傷部位に接触した時の、約32〜約45℃の間の温度にて、接触する体液の性質及びpHの条件下で、層が溶解できる又は分散できることを意味している。その層は、典型的にはこうした条件下で、十分かつ完全に溶解できる、又は分散できる。特に、この層は、水又は水性液体に溶解できる、及び/又は水又は水性溶液に分解及び分散する。可溶性及び分散性という用語は、相互排他的である。可溶性、分散性又は取り外し可能な保持層は、最も典型的には、ヒト又は動物の体内の代謝しやすい材料から形成される。
【0026】
本発明の更なる態様によれば、典型的にはシート状であるため止血材の2つの大きな表面であるキャリア層の上下両表面上に、混合された接着/止血剤層を有することができる。これにより、本発明の止血材で取り囲むことができる創傷における出血のより効果的な低減及び止血が可能になる。代わりに、別々の接着及び止血剤層は、キャリア層の上下両表面上に位置することができ、又は止血剤は、キャリア層の上下両表面に熱及び/又は圧力により接着することができる。
【0027】
可溶性、分散性又は取り外し可能な保持材を備える更なる層は、全ての例における片面又は両表面上に存在することができ、接着剤及び止血剤は、片面又は両面上に別々の層として、又は片面又は両面上に混合された接着/止血剤の層として、又は接着剤が無く、止血剤が熱及び/又は圧力を用いてキャリア層に接着されている場合にも片面又は両面上に存在することができる。
【0028】
止血剤は、可溶性、分散性又は取り外し可能な保持材からなる更なる層に組み込まれることもできる。
【0029】
本発明の一実施例によれば、止血材は、2つの等価な面を有する。これは、各面をそれぞれ同一のプロセスを用いて処理ことにより、又は両面を同時に処理することにより達成できる。
【0030】
本発明の別の実施例によれば、接着剤は、血液で湿潤した時にも、キャリア層が除去されても、止血剤の少なくとも一部が出血した領域に残るように選択される。従来開発された止血材は、一度除去されると創傷に止血剤が残らず、そのため出血が再開する。
【0031】
これは、湿潤した時に、接着層から解放されるように接着された止血剤を有することにより達成される。これは、接着層又は止血剤が、その組み合わせが濡れた時に結合を弱めるのに水分に十分に敏感な場合に有効である。接着剤は、これを可能にするために分解する必要はなく、単に弱められ、又は形を変えればよい。
【0032】
接着剤は、典型的には、血液のような体液に少なくとも一部が可溶であり、処置を受けるヒト又は動物の体に著しく有害な効果を引き起こすこともない。
【0033】
本発明の一実施例によれば、止血剤は多糖又はキトサン塩である。キトサンは、甲殻類からの固形廃棄物からの誘導体であり、菌の培養から抽出することができる。キトサンは、非水溶性のカチオン性ポリマー材料である。従って、本発明に使用するキトサンは、まず水溶性塩に変換される。従って、キトサン塩は、血液に可溶であり、出血を止めるゲルを形成する。
【0034】
キトサンは、体内で容易に分解されるため、キトサン塩は、理想的にはここに記載された用途に適している。キトサンは、リゾチーム酵素によりグルコサミンに変換され、自然に体外に排出される。キトサンを体外から除去する手段を講じる必要はない。
【0035】
更に、キトサン塩は、弱い抗菌性を示し、キトサン塩の使用自体、感染症の危険性を低減する。
【0036】
本発明の使用に適した代表的なキトサン塩は、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸エステル、リンゴ酸塩、硫酸塩、又はアクリル酸塩を単独で、又はこれらの組み合わせとして含むが、これらに限定されない。それらは、典型的には粉末状である。前述の例は、単に例として提供されたものであり、いかなる限定を意図したものではない。
【0037】
典型的には、本発明において使用されるキトサン塩は、キトサンコハク酸塩である。
【0038】
キトサン塩は、キトサンと適切な酸とを組み合わせることにより用意される。その酸は、ヒト又は動物の体に関連する条件下、特に血液中で可溶であるキトサン塩を生じるどのような無機又は有機酸でも良いことは評価されるだろう。適切な酸は、当業者には既知である。例えば、キトサンフォスフェートは、こうした条件において不溶であり、リン酸は不適である。
【0039】
本発明の一実施例によれば、上記止血剤は、止血剤全体の少なくとも約5重量%、より典型的には、少なくとも約20重量%を構成する。
【0040】
止血剤は、典型的には顆粒、又は約7.5mm以下、より典型的には5mm以下の長さの短繊維をからなることができる。
【0041】
接着剤層は、存在する場合には、止血剤をキャリア層に接着する接着剤を備える。典型的には、接着剤は可溶性材料である。
【0042】
不織布は、典型的には粉末接着、熱結合、物理的及びラテックス接着を使用して作られる。これらの処理の全ては、止血剤をキャリア層に接着するように適応できる。
【0043】
粉末接着は、しばしばポリエステル、ポリプロピレン、アクリル又はポリエチレンベースのものである可溶性粉末を使用する。熱接着は、ポリプロピレン、ポリエステル又はポリエチレンベースである可溶性繊維を使用する。ラテックス接着は、例えばアクリルベースとすることができる液体ラテックス接着剤を使用する。物理的結合は、圧力のような力により物理的に絡まされる、又は押圧される時に発生する。
【0044】
典型的な止血材は、低融点コポリエステル樹脂及び、DelStar Technologies Inc.により提供されている溶融可能なネットであるDelnetを含んでいるが、限定されない。
【0045】
本発明の一実施例によれば、キャリア層は、ビスコースの不織布材料、または代わりに、編まれたガーゼ、被膜、発泡体、又はシートゲルからなることができる。キャリア素材の材料は、ヒト又は動物の体内又は体上で創傷に関連する条件において分解されてもされなくても良い。しかし、本発明の一実施例によれば、キャリア素材の材料は、体内において安全に分解可能であり、止血材片全体が外科的使用又は処置の後にそのままにしておくことができる。安全で分解可能な材料の例は、酸化セルロース、コラーゲン、ポリカプロラクトーン、ポリラクタイド酸、ポリラクタイドコグリコライド、ポリグリコライド、キチン質等を含むが、これらに限定されない。
【0046】
止血材は、適切ないかなる形態をとることができ、創傷に対処するように異なるサイズ、形、厚さの中で、例えば方形、矩形、円、又は楕円として提供されることができる。例えば、止血材は、概して、幅/深さに対して小さな厚さを有する平坦形状とすることができる。どのような規則的又は不規則な形状も採用することができる。必要なサイズにカットできる大きなシートとして提供することができる。
【0047】
止血材の厚さは、上限と下限との間で必要に応じて変更することができる。厚さの上限は、典型的には約2cmであり、下限は、5−10ミクロンのように数ミクロンである。しかし、止血材は、柔軟性を有、曲がって体の輪郭に適合でき、典型的には約1cm径前後のチューブの周りを覆る程度に容易に曲がることができるのが重要である。
【0048】
本発明の一実施例によれば、止血材は、医療用界面活性剤を更に含むことができる。“医療用界面活性剤”とは、ヒト又は動物の体との接触又は投与として薬剤的に利用可能であることを意味している。本発明において使用する代表的な医療用界面活性剤は、酸化エチレン、酸化プロピレン(例えば、BASF Pluronics(登録商標))ベースのブロック共重合体、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ラウリン酸、オレイン酸、他の脂肪酸等の脂肪酸及び脂肪酸塩、シリコーンベースの界面活性剤及び乳化剤の1つ又はこれらの組み合わせを含む。典型的にはラウリン酸及びオレイン酸が使用される。
【0049】
医療用界面活性剤は、典型的には止血剤の約0.001〜約10重量%を構成する。
【0050】
医療用界面活性剤は、本発明において使用される止血剤の約0.5〜約1重量%を構成することがより有利である。医療用界面活性剤の存在が優れた浸潤特性を生じることが有利である。止血剤が浸潤する様式は、その性質に重要である。つまり、止血剤は、ゲル化して出血を止めることができるゲル凝血塊を形成することなく、血液と非常に素早く吸収し、単に血液と混ざることができる。一方、止血剤が血液を非常にゆっくり吸収する場合、一般には創傷部位に近い止血剤の数ミリの深さの少量の止血剤のみにおいてゲル化が発生する。この場合、患者が医療センターに移動されるのに十分な時間に対して、形成するゲル凝血塊出血を止めるのに十分な密度ではない。典型的には、このようなゲル凝血塊は、患者が移動されると破壊され、出血が再開する。
【0051】
発見された性質に重要な別の要因は、使用される止血剤の粒子サイズである。粒子サイズは通過又は保持されるふるいのサイズにより測定される。
【0052】
本発明の一実施例によれば、微粒子又は顆粒の形で存在する時、約200メッシュよりも大きな平均粒子サイズを有しており、200メッシュスクリーンを通過しない。平均粒子サイズは、典型的には約100メッシュより大きく、更により典型的には約50メッシュより大きくできるが、粒子又は顆粒が40メッシュスクリーンを通過できるのは好ましくない。
【0053】
界面活性剤の粒子サイズは、止血剤とほぼ同等であることがより有利である。“ほぼ同等”とは、粒子の相対サイズは、約10%以上、より典型的には約5%以上相違しないことを意味している。最適な粒子サイズは、止血剤を研削し、ふるいのような適切な任意の手段により分級することによって達成される。このようなサイジングは当業者には既知であり、これ以上説明しない。
【0054】
本発明の更なる実施例によれば、少量の少なくとも1つの不活性物質が止血剤に加えることができる。
【0055】
少量の不活性物質及び/又は医療用界面活性剤止血剤を加えることにより、つまり、事実上止血剤の品質を弱めることにより、止血剤の性能は、実際には更に高められることが分かった。不活性物質と医療用界面活性剤一緒の組み合わせは、不活性物質の存在が医療用界面活性剤の特性を更に高め、逆もまた同様であるため特に有利である。典型的には、不活性物質は顆粒である。
【0056】
不活性物質は、非高速ゲル化止血剤、即ち、出血する創傷への塗布の約30秒から約1分の間にゲル化する止血剤を備えることができる。
【0057】
代表的な不活性物質は、ヒュームド・シリカ、砂、粘土、アルギン酸塩、微結晶セルロース、酸化再生セルロース、ポリエチレングリコール、グアーガム、キサンタンガム、キトサン、キトサン誘導体、キチン、サッカロース、ラクトース、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、粉末コーンミール、コラーゲン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル酸、Carbopol(登録商標)のようなアクリレート(共)重合体、架橋アクリル酸ベースポリマー、硫化バリウム、粘土、ラクトース、サッカロース、スターチのいずれか2つ又はそれ以上の組み合わせを含むが、それらに限定されない。典型的には、キトサン、キチン及びカルボキシメチルセルロースから選択された1つ以上の材料が使用される。
【0058】
不活性物質は、構成全体の約95重量%まで、典型的には約90重量%まで、より典型的には約80重量%までの量を止血剤に加えることができる。
【0059】
止血剤は、典型的には約3.5〜約8.0までのpHを有している。pHは、各々の止血剤が異なるpHを有するため、使用される個々の止血剤に大きく依存する。
【0060】
溶解性、分散性又は取り外し可能な保持材が分解又は分散する速度は、本発明の条件内で変更できる。この材料が存在する場合、材料の分解又は分散速度が大きいほど、止血剤が露出され、又は水分又は体液に接触して解放されて所望の治療効果を呈する割合が大きくなる。
【0061】
材料の標的部位への位置決め、必要ならば再位置決めのための操作時間を許容するために、状況に応じて材料の水分又は液体との接触に続く止血剤の露出及び解放の前に、短い遅延時間を有することが望ましいかも知れない。
【0062】
溶解性、分散性又は取り外し可能な保持材の特性は、異なる可溶性又は分散性材料及び/又はそれらの異なる組み合わせを選択することにより変更できる。従って、材料又はそれらの組み合わせは、所望の分解又は分散速度、温度感度、pH感度等に従って選択できる。リセプタクルの厚さもまた変更して、含有される止血剤の解放又は露出速度を調整できる。このような選択は、当業者の通常の理解及び能力の範囲内であろう。
【0063】
分解又は分散速度は、標的部位での温度により変更できることは評価されるだろう。水溶性又は非水溶性材は、約45℃前後、より好ましくは約41℃前後、最も好ましくは約37℃前後の、約0〜約100℃までの温度での分解又は分散しやすくできる。
【0064】
説明のみのために、体温にて、水分又は液体への露出の約5〜約120、好ましくは約60秒、最も好ましくは約30秒のように、約1秒〜約120秒の間で可溶性、分散性又は取り外し可能な保持材は、分解又は分散し始めることが好ましい。
材料の十分に完全な分解又は分散は、約5秒以内、好ましくは約3秒以内、最も好ましくは約2秒以内のように、約1秒〜約30秒以内に発生することができる。
【0065】
可溶性、分散性又は取り外し可能な保持材の分解又は分散は、pHに依存させることにより、pH感知の分解又は分散速度を有する材料を提供することができる。これは、体内に導入されるまで材料が分解又は分散しないようにするのに使用できる。
【0066】
リセプタクルを形成する材料は、(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの)可塑剤、不溶剤、可溶剤、界面活性剤、分散性不溶材料、分散補助材料、配置補助剤、結合補助剤、接着剤、又はリセプタクルを光化学的、紫外の、生物学的又は化学的ソースにおけるばらつきに敏感にする材料の組み合わせの1つ以上も含むことができる。
【0067】
非水溶性材は、分散性保持材層にも存在できる。このような非水溶性材が存在するとき、これらは例えば、セルロース、キチン、シリカ、非水溶性セルロース誘導体、アルギン酸カルシウム、ゼオライト、砂、チョーク、水膨潤性化合物、及びポリウレタン又はポリイソブチレンなどのポリマー材料の1つ以上とすることができる。このリストは全てではない。
【0068】
適切な市販のキトサンベースの止血剤の例は、Celox(登録商標)(MedTrade Products Limited)である。
【0069】
本発明の材料における止血剤としてキトサンが使用されるとき、活性ベースは、微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維形のキトサンの混合物、及び溶媒として適切なキトサンが不溶な酸(典型的にはエタノール:水=80:20のもの)を用意することにより準備される。溶媒は、十分に活性ベース材を提供するために蒸発される。活性ベース材は、次いで、所望の不溶性材料及び/又は医療用界面活性剤と組み合わせて止血剤を提供することができる。
【0070】
止血材は、消毒又は無消毒状態で提供できる。止血材が消毒状態で提供されるとき、ガンマ線照射、電子線処理、熱処理等の既知の方法のいずれかを用いて消毒処理を実行できる。無消毒状態の止血材は、1つ以上の防腐剤と組み合わせて提供できる。
【0071】
本発明の別の実施例によれば、止血シート材が吸収パッドの表面として使用される圧縮包帯又は救急包帯システムが更に提供される。止血シート材は、過剰な血液を通過させて、裏の吸収パッドにより吸収することができる。
【0072】
本発明の別の実施例によれば、圧縮包帯又は救急包帯システムが更に提供され、圧縮包帯の使用前に止血シート材が深い創傷に容易に詰め込められるように、止血シート材が包帯とともにロール状又は折りたたみ状に当てられる。ロール状の止血材は、実際には、包帯システムに接着されるようにも、されないようにもできる。
【0073】
本発明の別の実施例によれば、比較的軽傷又は鼻の怪我などの状況のために使用できる薄い約1cm幅のロール状の止血材を更に提供する。
【0074】
本発明の別の実施例によれば、処置又は手術後に創傷に残された場合に検出を許容するX線に対して不透明な少量の材料を更に含む、ここに記載された止血材を更に提供する。
【0075】
本発明の別の実施例によれば、例えば、血管アクセス手術の後に動脈をシールするために使用される、例えば約1インチ×1インチ(2.52cm×2.52cm)の小片が使用される、ここに記載された止血材を更に提供する。
【0076】
本発明の別の実施例によれば、救急絆創膏上の吸収パッドとして使用される、ここに記載された止血材を更に提供する。
【0077】
本発明の別の実施例によれば、ほぼ中心に孔を有するシート材料が設けられた、ここに記載された止血材が更に提供される。一実施例における止血材の形状は略円形とすることができるが、所望のどのような形状にすることもできる。シート材料中の孔は、この材料を、ヒト又は動物の体内に入るアクセスポート又はチューブ、リード等の周囲で使用するのを可能にする。
【0078】
本発明の別の態様によれば、キャリア層と、少なくとも1つの止血材を微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備える創傷接触用の材料とを備える止血材を製造する方法であって、
i)キャリア層を準備する工程と、
ii)前記キャリア層に、微粒子、顆粒、粉末、フレーク、又は短繊維形の多量の止血剤が接触する工程と、
を含む方法を提供する。
【0079】
止血剤は、接着剤を用いて、又は熱及び/又は圧力を用いてキャリア層に接触して保持することができる。
【0080】
本発明は、創傷からの出血を低減又は止める方法も提供する。即ち、出血を低減又は止める方法であって、可能であれば創傷部位を洗浄する工程と、前記止血材は、キャリア層と、少なくとも1つの止血剤を微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備えている創傷接触用の材料とを備える止血材を前記創傷部位に貼り付ける工程と、ゲル凝血塊が形成されるまで創傷部位を持続的に圧迫する工程とを含む方法が提供される。
【0081】
典型的には、持続的な圧迫は、少なくとも約3分間、創傷部位に与える。
【0082】
本発明は、止血用創傷包帯の製造に使用し、キャリア層と、少なくとも1つの止血剤を微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備える創傷接触用の材料とを備える止血材も提供する。
【0083】
本発明の更なる態様によれば、キャリア層と、少なくとも1つの止血剤を微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備えている材料とを備える止血材を備える止血創傷包帯を提供する。
【0084】
本発明の更なる態様によれば、キャリア層と、少なくとも1つの止血剤を微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備えている創傷接触用の材料とを備える止血材の使用方法が提供される。本発明の止血材は、特に創傷からの血流の低減又は止めるのに有効である。出血する動脈をシールするのに、わずかのグラムの止血剤のみで十分である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】接着剤層及び止血剤を別々の層として有する本発明による止血材を示す図である。
【図2】接着剤層と止血剤とを1つの層をなすように混ぜ合わされた、本発明による止血材を示す図である。
【図3】1つの層を形成するために一緒に混合された接着剤層と止血剤とを混ぜ合わせて、1つの層にし、その上に可溶性、分散性又は取り外し可能な保持層とを有する本発明による止血材を示す図である。
【図4】キャリア層の両側に混ぜ合わされた接着剤/止血剤層を有する本発明による止血材を示す図である。
【図5】本発明の止血材の写真を示す図である。
【図6】本発明の止血材のクローズアップ写真を示す図である。
【図7】16ゲージ針を使用して豚の動脈に血管穿刺により作った創傷の写真を示す図である。
【図8】血流を止めるために創傷に貼った本発明の1cm×1cmシートの特定の出血時間後の止血材の写真を示す図である。
【図9】豚の血流を止めるのに使用され、必要に応じて5分までしっかり押さえる、本発明の止血材の写真を示す図である。
【図10】豚の血流を止めるのに使用する、本発明の4cm×4cmシートの止血材の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
ここで、以下の例及び図面を参照して本発明を更に説明するが、説明を目的とするのみであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0087】
図1は、キャリア層6の上に次々に位置づけられる、接着剤層4の上に位置している止血剤2を示している。この実施形態では、接着剤層及び止血剤は、別々の個別層を構成している。
【0088】
本発明の別の実施形態によれば、止血剤2は、接着剤層4とを混ぜて結合層8を形成することができる。これは図2に示されている。結合層8は、キャリア層6の上に位置している。
【0089】
図2に示した実施形態に加えて、可溶性、分散性又は取り外し可能な保持層10を結合層8の上に加えることができる。これは図3に示されている。図3の止血剤を創傷部からの血流を低減又は止めるのに使用すると、可溶性、分散性又は取り外し可能な保持層10は、体液中に溶けるか、又は分散されて、その下の結合層8を露出する。
【0090】
図4にて、本発明の止血材は、1つはキャリア層6の上方に、もう1つは下方にある2つの結合層8を用いることができることが分かる。これにより、本発明の止血材で取り囲むことができる創傷部における血流のより効果的な低減及び停止が可能になる。
【0091】
図5は、単に、創傷部からの血流を低減又は止めるのに使用しようとする、本発明の止血材12を示す図である。
【0092】
図6は、本発明の止血材12のサンプルのクローズアップ写真である。キャリア層6の一様でないテクスチャをはっきり見ることができる。
【0093】
図7は、豚に16ゲージ針を用いて行った動脈への血管穿刺によって作った創傷を示している。この創傷は、止血材12をその創傷部に貼る前に、通常約60秒のような、ある期間出血させた。止血材12の分量は、この例では1cm×1cmのシートを、血流を止めるために創傷部に貼った(図8参照)。止血剤と創傷部との接触を最大にするために、創傷部にしっかり押し当てた(図9参照)。圧迫は、必要に応じて5分までとすることができる。
【0094】
圧迫した後、出血が止まったら、止血材12は、出血が再開しないように、その場所に残した。このような役割をする4cm×4cmシートの止血材12が図10に示されている。止血材12がどこの血液を吸収したかが分かる。
【0095】
実施例1
粒状の止血剤(Celox)を、融点範囲が58−61℃の低融点コポリエステル樹脂を用いて120gsmの不織布生地(75%ビスコース(Danufil−2)繊維/25%ポリオレフィン繊維)に接着した。40gsmの樹脂を、60gsmのCeloxと一緒に用いた。
【0096】
Celox粉末と接着剤の顆粒とを一緒に混ぜてから、その混合粉末を不織布生地の上に“分散”被覆して連続移動するウェブにした。このウェブを、加熱された移動ベルトに載せて第2の加熱された移動ベルトの下に通り、止血剤を被覆してあるウェブに、2つのベルトによって熱及び圧力を与えて、接着剤とCelox粉末をウェブに溶融させた。
【0097】
熱接着処理は、接着の程度を変えるために変更できる。熱、圧力及び時間(つまり、移動ベルトの速度)は、いずれも所望通りに変更できる。
【0098】
止血材の得られた表面はでこぼこで、フワフワしていた(図5及び6参照)。
【0099】
次に、被覆された熱接着ウェブを、ロール状に巻いた。得られた材料を、5cm×5cm角にカットし、パッケージして消毒した。
【0100】
16ゲージ針を用いて100ポンドの豚の大腿動脈に孔をあけた。その創傷は激しく出血した。止血材を創傷部位に貼って、3分間指圧をかけた。出血は確実に止まった。3分後、止血材を出血部位から剥がした。出血は再開しなかった。
【0101】
16ゲージ針を用いて100ポンドの豚の大腿動脈に別の孔をあけた。その創傷は激しく出血した。止血材を、30秒間最小の圧力をかけて創傷部位に押し当てた。この最小限の処置だけでも、出血は確実に止まった。3分後、止血材を出血部位から剥がした。この場合にも、出血は再開しなかった。
【0102】
実施例2
粒状の止血剤(Celox)を、融点範囲が58−61℃の低融点コポリエステル樹脂を用いて120gsmの不織布生地(75%ビスコース(Danufil−2)繊維/25%ポリオレフィン繊維)に接着した。40gsmの樹脂を、60gsmのCeloxと一緒に用いた。
【0103】
Celox粉末と接着剤の顆粒とを一緒に混ぜてから、その混合粉末を不織布生地の上に“分散”被覆して連続移動するウェブにした。このウェブを、加熱された移動ベルトに載せて、第2の加熱された移動ベルトの下に通し、止血剤を被覆してあるウェブに、2つのベルトによって熱及び圧力を与えて、接着剤とCelox粉末をウェブに溶融させた。
【0104】
更に、顆粒の表面を滑らかにして、キャリア素材への接着を高めるために、圧力ローラーを適用した。得られた材料は滑らかだった。
【0105】
次に、被覆した熱接着ウェブをロール状に巻いてから、得られた材料を、5cm×5cm角にカットし、パッケージして消毒した。
【0106】
16ゲージ針を用いて100ポンドの豚の大腿動脈に孔をあけた。その創傷は激しく出血した。止血材を創傷部位に貼って、3分間指圧をかけた。出血は確実に止まった。3分後、止血材を出血部位から剥がした。出血は再開しなかった。
【0107】
実施例3
粒状の止血剤(Celox)を、融点範囲が58−61℃の低融点コポリエステル樹脂を用いて、1mm厚のポリウレタン発泡体に接着した。40gsmの樹脂を、40gsmのCeloxと一緒に用いた。
【0108】
Celox粉末と接着剤の顆粒とを一緒に混ぜてから、その混合粉末を不織布生地の上に“分散”被覆して連続移動するウェブにした。このウェブを、加熱された移動ベルトに載せて、第2の加熱された移動ベルトの下に通し、止血剤を被覆してあるウェブに、2つのベルトによって熱及び圧力を与えて、接着剤とCelox粉末をウェブに溶融させた。
【0109】
次に、被覆された熱接着ウェブをロール状に巻いてから、得られた材料を、5cm×5cm角にカットし、パッケージして消毒した。
【0110】
16ゲージ針を用いて100ポンドの豚の大腿動脈に孔をあけた。その創傷は激しく出血した。止血材を創傷部位に貼って、3分間指圧をかけた。出血は確実に止まった。3分後、止血材を出血部位から剥がした。出血は再開しなかった。
【0111】
実施例4
粒状の止血剤(Celox)を、融点範囲が58−61℃の低融点コポリエステル樹脂を用いて120gsmの不織布生地(75%ビスコース(Danufil−2)繊維/25%ポリオレフィン繊維)に接着した。40gsmの樹脂が、40gsmのCeloxと一緒に用いた。
【0112】
Celox粉末と接着剤の顆粒とを一緒に混ぜてから、その混合粉末を不織布生地の上に“分散”被覆して連続移動するウェブにした。このウェブは、加熱された移動ベルトに載せて、第2の加熱された移動ベルトの下に通し、止血剤を被覆してあるウェブに、2つのベルトによって熱及び圧力を与えて、接着剤とCelox粉末をウェブに溶融させた。次に被覆された熱接着ウェブをロール状に巻いた。
【0113】
次いで、ロール状に巻いたウェブの上側を接着装置に通して、ウェブの反対側にも40gsmの樹脂及び40gsmのCeloxを付着させた。
【0114】
ここで、ウェブは、2つの止血面を有し、このようにして得られた材料を、5cm×5cm角にカットし、パッケージして消毒した。
【0115】
実施例5
コラーゲンの止血剤(Celox)を、融点範囲が58−61℃の低融点コポリエステル樹脂を用いて120gsmの不織布生地(75%ビスコース(Danufil−2)繊維/25%ポリオレフィン繊維)に接着した。40gsmの樹脂が、40gsmのCeloxと一緒に用いた。
【0116】
コラーゲンと接着剤の顆粒とを一緒に混ぜてから、その混合粉末を不織布生地の上に“分散”被覆して連続移動するウェブにした。このウェブを、加熱された移動ベルトに載せて、第2の加熱された移動ベルトの下に通し、止血剤を被覆してあるウェブに、2つのベルトによって熱及び圧力を与えて、接着剤/コラーゲン粉末をウェブに溶融させた。
【0117】
次に、被覆された熱接着ウェブを、ロール状に巻いてから、得られた材料を、5cm×5cm角にカットし、パッケージして消毒した。
【0118】
16ゲージ針を用いて100ポンドの豚の大腿動脈に孔をあけた。創傷は激しく出血した。止血材を創傷部位に貼って、3分間指圧をかけた。出血は最初ゆっくりになったが、完全には止まらなかった。追加の止血剤を、更に2分間当てたら、出血は止まった。10分後、止血材を出血部位から剥がした。出血は再開しなかった。
【0119】
実施例6
酸化再生セルロース(ORC)止血剤(粉砕されたサージセル)が、融点範囲が58−61℃の低融点コポリエステル樹脂を用いて120gsmの不織布材料に接着された。40gsmの樹脂が、40gsmの乾燥ORC顆粒と一緒に用いた。
【0120】
ORCと接着剤の顆粒とを一緒に混ぜてから、その混合粉末を不織布生地の上に“分散”被覆して連続移動するウェブにした。このウェブを、加熱された移動ベルトに載せて、第2の加熱された移動ベルトの下に通し、止血剤を被覆してあるウェブに、2つのベルトによってウェブに与えて、接着剤/ORC粉末をウェブに溶融させた。
【0121】
次に、被覆された熱接着ウェブを、ロール状に巻いた。得られた材料を、10cm×2cm角にカットし、パッケージして消毒した。
【0122】
実施例7
酸化再生セルロース止血剤(粉砕されたサージセル)を、可溶性ネット(デルネット)を用いて120gsmの不織布生地に接着した。80gsmのネットを、40gsmのCelox顆粒と一緒に用いた。
【0123】
接着ネットは、キャリア素材の表面上に置き、次に、顆粒を不織布生地の上に“分散”被覆して連続移動するウェブにした。このウェブを、加熱された移動ベルトに載せて、第2の加熱された移動ベルトの下に通し、被覆したウェブに、2つのベルトによって熱及び圧力を与えて、接着剤/Celox粉末をウェブに溶融させた。
【0124】
次に被覆された熱接着ウェブをロール状に巻いた。得られた材料を、5cm×5cm角にカットし、パッケージして消毒した。
【0125】
実施例8
Celox顆粒を上に備えている本発明による止血材の有効性を、その止血剤を健康なヨークシャー豚に16ゲージ針でつけた血管穿刺部位に貼り付けることにより評価した。
【0126】
使用した止血剤は1cm×1cm及び4cm×4cmサイズのシートとし、各血管切開部には1つのシートのみを貼り付けた。図7〜10は、創傷部及び、本発明の止血材を用いてのその後の処置を示している。各被検対象の適正は、有効性の評価者が承諾する前に確認した。
【0127】
以下の表は、被検対象に施した処置と、損傷の前後の状態を詳細に説明している。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
止血剤の評価は、データ収集者により視覚的評価により行われ、外科医により確認された。5分間押さえ、更に2分間押さえた後に止血できない(出血している)創傷は、“失敗”としてカウントした。評価中に、不利な臨床兆候は発生しなかった。
【0135】
被検対象は、創傷を乗り越えて生き残った。本発明の止血材の1つのシートを創傷部に使用しただけである。創傷における動脈の再出血は見られなかった。
【0136】
止血と生存
止血は以下の時点で評価された。
− 最初の5分の圧迫後
−その後の15分の圧迫
【0137】
どの時点においても創傷からの出血は見られなかった。豚でのあらゆる創傷で、100%の止血が達成された。
【0138】
上記同じ時点で生存が記録された。
− 最初の5分の圧迫後
−その後の15分の圧迫
【0139】
その結果、本発明の止血材は血管穿刺部位に適用した場合に有効であることが明確に立証された。
【0140】
本発明は、例証として説明したに過ぎない上述の例に限定されないことを当然理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア層と、少なくとも1つの止血剤を微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態で備えている創傷接触用の材料とを備えている止血材。
【請求項2】
接着剤層を更に備えている、請求項1に記載の止血材。
【請求項3】
前記キャリア層の両面は、少なくとも部分的に止血剤で被覆されている、請求項1又は2に記載の止血材。
【請求項4】
体内で分解可能な材料を更に備えている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項5】
前記止血剤は、多糖を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項6】
前記止血剤は、キトサン塩を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項7】
前記止血材は、2つ以上の止血剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項8】
前記止血剤は、熱及び/又は圧力を用いて前記キャリア層に接着されている、請求項1又は3〜7のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項9】
前記止血剤は、該止血剤と前記キャリア層との間にある接着剤層を用いて前記キャリア層に接着されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項10】
前記接着剤層及び前記止血剤は別々の層である、請求項9に記載の止血材。
【請求項11】
前記接着剤層及び前記止血剤は混合されている、請求項10に記載の止血材。
【請求項12】
前記キャリア層の上下両表面上に混合された接着/止血剤層、又は前記キャリア層の上下両表面上に別々の接着剤層と止血剤層の別々の層、又は前記キャリア層の上下表面上に熱及び/又は圧力により接着されている止血剤を備えている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項13】
前記接着剤層及び/又は前記止血剤層の上面に可溶性、分散性又は取り外し可能な保持層を更に備えるている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項14】
前記可溶性、分散性又は取り外し可能な保持層は、ヒト又は動物の体内で代謝しやすい材料で形成される、請求項13に記載の止血材。
【請求項15】
前記キトサン塩は、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサンリンゴ酸塩、キトサン硫酸塩、又はキトサンアクリル酸塩から選択された1つ以上の塩を含む、請求項6に記載の止血材。
【請求項16】
前記キトサン塩は、キトサンコハク酸塩を含む、請求項15に記載の止血材。
【請求項17】
前記キトサン塩は、前記止血剤の少なくとも約5重量%を構成する、請求項6,15又は16のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項18】
前記止血剤は顆粒である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項19】
前記止血剤は、約7.5mm以下の長さの短繊維からなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項20】
医療用界面活性剤を更に含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項21】
前記医療用界面活性剤は、前記止血剤の約0.001〜約10重量%を構成する、請求項20に記載の止血材。
【請求項22】
前記医療用界面活性剤は、酸化エチレン及び酸化プロピレンベースのブロック共重合体、脂肪酸、脂肪酸塩、シリコーンベースの界面活性剤及び乳化剤から選択された1つ以上を備える、請求項20又は21のいずれかに記載の止血材。
【請求項23】
前記医療用界面活性剤は、ラウリン酸及びオレイン酸から選択された脂肪酸である、請求項22に記載の止血材。
【請求項24】
少なくとも1つの不活性物質を更に含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項25】
前記少なくとも1つの不活性物質は、セルロース、フュームド・シリカ、砂、粘土、アルギン酸塩、微結晶性セルロース、酸化再生セルロース、ポリエチルグリコール、グアーガム、キタンサンゴム、キトサン、キトサン誘導体、キチン、サッカロース、ラクトース、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、粉末コーンミール、コラーゲン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル酸、アクリレート(共)重合体、架橋アクリル酸ベースポリマー、硫化バリウム、粘土、ラクトース、サッカロース、スターチの1つ又はそれ以上、又はこれらの2又はそれ以上の組み合わせである、請求項24に記載の止血材。
【請求項26】
前記不活性物質は、前記止血剤の約95重量%までを構成する、請求項24又は25のいずれかに記載の止血材。
【請求項27】
前記止血剤は、200メッシュのふるいを通過できない粒子からなる、請求項1〜26のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項28】
前記接着剤層は、可溶性材料である接着剤からなる、請求項2〜7又は9〜27のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項29】
前記キャリア層は、ヒト又は動物の体内で分解可能である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項30】
前記キャリア層は、ビスコースの不織布生地からなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項31】
前記キャリア層は、編まれたガーゼ、被膜、発泡体、又はシートゲルからなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項32】
前記接着剤層が血液で湿らされると、前記キャリア層が剥離した場合に、前記止血剤の一部が出血している部位に残る、請求項2〜7又は9〜31のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項33】
前記止血剤の粒径及び前記医療用界面活性剤の粒径はほぼ同等である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項34】
前記止血剤は、約3.5から約8.0までのpHを有する、請求項1〜33のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項35】
吸収層を更に備える、請求項1〜34のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項36】
前記止血材は、救急絆創膏の一部を構成する、請求項1〜35のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項37】
前記止血剤は、X線に対して不透明な少量の物質を更に備える、請求項1〜36のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項38】
止血用創傷包帯の製造に使用する、請求項1〜37のいずれか一項に記載の止血材。
【請求項39】
請求項1〜37のいずれか一項に記載の止血材を備えている、止血創傷包帯。
【請求項40】
キャリア層を準備する工程と、
前記キャリア層に、微粒子、顆粒、粉末、フレーク又は短繊維の形態の止血剤の多くを接触させる工程と、
を含む、請求項1〜37のいずれか一項に記載の止血材を製造する方法。
【請求項41】
前記止血剤は、接着剤、又は熱及び/又は圧力を用いて前記キャリア層に接触して保持される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
生理学的標的部位に請求項1〜37のいずれか一項に記載の止血材を貼る工程と、
ゲル凝血塊が形成するまで前記生理学的標的部位に一定の圧迫を与える工程と、
を含む、血流を低減又は止める方法。
【請求項43】
少なくとも約3分の間、前記生理学的標的部位に一定の圧迫を与える工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
生理学的標的部位からの血流を低減又は止めるのに請求項1〜37のいずれか一項に記載の止血材を用いる方法。
【請求項45】
明細書及び図面にて十分に説明した止血剤、創傷包帯又は方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−518592(P2011−518592A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505592(P2011−505592)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001065
【国際公開番号】WO2009/130485
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510282952)メッドトレイド プロダクツ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MEDTRADE PRODUCTS LIMITED
【Fターム(参考)】