説明

正帯電単層型電子写真感光体、画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制できる正帯電単層型電子写真感光体、そのような正帯電単層型電子写真感光体を含む画像形成装置、及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】基体上に、感光層を有する正帯電単層型電子写真感光体、それを含む画像形成装置及び画像形成方法であって、感光層が電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を含むとともに、添加剤として、酸化防止剤を含み、かつ、感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とし、さらに、JIS C 2110に準拠して測定される正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧を7.5kV以上の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正帯電単層型電子写真感光体、画像形成装置、及び画像形成方法に関し、特に、リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制することができる正帯電単層型電子写真感光体、そのような正帯電単層型電子写真感光体を含む画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高画質のカラー画像を、高スピードで形成すべく、電荷発生剤として、電荷発生効率に優れるチタニルフタロシアニン結晶を使用する方法が試みられている。
かかるチタニルフタロシアニン結晶は、その結晶型によって、感光層中における分散性や結晶安定性が変化することが知られているが、いずれにしても従来の電荷発生剤と比較した場合、電荷発生効率が著しく優れていることが知られている(例えば、特許文献1)。
したがって、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用いることによって、露光による静電潜像の形成効率を著しく向上させることができ、画像形成装置におけるさらなる高スピード化も実現可能であると期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−181531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を用いた場合、その電気抵抗が比較的低いことに起因して、帯電手段と、電子写真感光体と、の間で電流リーク現象(以下、単にリーク現象と称する場合がある。)が発生しやすいという更なる問題が見られた。
特に、単層型電子写真感光体の場合には、電荷発生剤が、感光層の表面付近にも存在するため、リーク現象がより発生しやすいという問題が見られた。
【0005】
さらに、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を用いた電子写真感光体は、帯電工程において発生するオゾン等の活性ガスによって、感光層が酸化劣化しやすくなり、十分な帯電電位を得ることが困難となるという問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意検討したところ、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用いた場合であっても、添加剤として酸化防止剤を用い、かつ、電子写真感光体の正耐電圧を所定の範囲とすることにより、リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制できることを見出した。
すなわち、本発明の目的は、リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制できる正帯電単層型電子写真感光体、そのような正帯電単層型電子写真感光体を含む画像形成装置、及び画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、基体上に、感光層を有する正帯電単層型電子写真感光体であって、感光層が電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を含むとともに、添加剤として、酸化防止剤を含み、かつ、感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とし、さらに、JIS C 2110に準拠して測定される正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧を7.5kV以上の値とすることを特徴とする正帯電単層型電子写真感光体が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用いていることから、露光による静電潜像の形成効率を著しく向上させることができ、画像形成装置におけるさらなる高スピード化を実現することができる。
一方で、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用い、かつ、耐久印字を行った場合には、リーク現象の発生及び帯電電位の低下が生じやすくなる。
この点、本発明であれば、添加剤として酸化防止剤を用い、かつ、電子写真感光体の正耐電圧を所定の範囲とすることにより、過酷条件下であっても、リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制できる。
【0008】
また、本発明の正帯電単層型電子写真感光体を構成するにあたり、酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤、あるいはいずれか一方であることが好ましい。
このように構成することにより、帯電工程において、感光層表面がオゾン等の活性ガスに暴露された場合であっても、感光層表面の酸化劣化を、より効果的に抑制して、帯電電位の低下を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の正帯電単層型電子写真感光体を構成するにあたり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、下記式(1)で表わされる構造を含むことが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
このように構成することにより、感光層表面の酸化劣化を、さらに効果的に抑制して、帯電電位の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の正帯電単層型電子写真感光体を構成するにあたり、アミン系酸化防止剤が、下記一般式(2)で表わされる構造を有することが好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
(一般式(2)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキル基部分の炭素数が1〜8であるアルキルアミノ基、またはアリール基部分の炭素数が6〜20であるアリールアミノ基であり、それぞれ隣り合う置換基同士が結合して、ナフタレン環を形成してもよい。)
【0015】
このように構成することにより、感光層表面の酸化劣化を、より一段と効果的に抑制して、帯電電位の低下を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の正帯電単層型電子写真感光体を構成するにあたり、酸化防止剤の含有量を、感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、酸化防止剤による酸化劣化防止効果を十分に発揮させつつも、感光層において酸化防止剤を効果的に分散させることができる。
【0017】
また、本発明の正帯電単層型電子写真感光体を構成するにあたり、チタニルフタロシアニン結晶の含有量を、感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.5〜8重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、正帯電単層型電子写真感光体の基準正耐電圧を所定以上の値に調節することが容易となる一方で、電荷発生量を安定的に確保することができる。
【0018】
また、本発明の正帯電単層型電子写真感光体を構成するにあたり、基体上に、中間層を設けるとともに、当該中間層が、結着樹脂と、酸化チタン微粒子と、を含むとともに、当該酸化チタン微粒子の含有量を、結着樹脂100重量部に対して、50〜500重量部の範囲内の値とし、かつ、中間層の膜厚を0.3〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、正帯電単層型電子写真感光体の基準正耐電圧を所定以上の値に調節することがさらに容易になる。
【0019】
また、本発明の別の態様は、基体上に、感光層を有する正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置であって、感光層が、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を含むとともに、添加剤として、酸化防止剤を含み、かつ、感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とし、さらに、JIS C 2110に準拠して測定される正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧を7.5kV以上の値とすることを特徴とする画像形成装置である。
すなわち、本発明の画像形成装置であれば、所定の電子写真感光体を備えていることから、耐久印字を行った場合であっても、リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制して、高品質画像を安定的に形成することができる。
【0020】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、正帯電単層型電子写真感光体を露光させる際の単位面積あたりの露光量を0.2〜0.8μJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、リーク現象の発生を抑制しつつ、十分に電荷を発生させることができることから、画像形成におけるさらなる高スピード化を実現することができる。
【0021】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、正帯電単層型電子写真感光体を帯電させる際の帯電電位を600〜1000Vの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成した場合であっても、リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制しつつ、画像形成におけるさらなる高スピード化を実現することができる。
【0022】
また、本発明のさらに別の態様は、上述した画像形成装置を用いた画像形成方法である。
すなわち、本発明の画像形成方法であれば、所定の画像形成装置を用いていることから、耐久印字を行った場合であっても、リーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制して、高品質画像を安定的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、基準正耐電圧と、斑点発生数と、の関係を説明するために供する図である。
【図2】図2は、酸化防止剤の含有量と、帯電電位の低下と、の関係を説明するために供する図である。
【図3】図3は、本発明の画像形成装置を説明するために供する図である。
【図4】図4(a)〜(b)は、本発明における単層型電子写真感光体を説明するために供する図である。
【図5】図5、基準正耐電圧の測定装置の概略を説明するために供する図である。
【図6】図6は、電荷発生剤の含有量と、基準正耐電圧と、の関係を説明するために供する図である。
【図7】図7は、実施例1で用いたチタニルフタロシアニン結晶(テトラヒドロフラン中で、24時間貯蔵後)のCuKα特性X線回折スペクトルである。
【図8】図8は、実施例1で用いたチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、基体上に、感光層を有する正帯電単層型電子写真感光体であって、感光層が電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を含むとともに、添加剤として、酸化防止剤を含み、かつ、感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とし、さらに、JIS C 2110に準拠して測定される正耐電単層型電子写真感光体の正耐電圧を7.5kV以上の値とすることを特徴とする正帯電単層型電子写真感光体である。
すなわち、図1に示すように、基準正耐電圧を7.5kV以上の値とすることにより、高速画像形成にともない帯電電位を所定以上の値とした場合(特性曲線A)であっても、臨界的にリーク現象の発生を抑制して、ひいては形成画像における斑点の発生を抑制できる正帯電単層型電子写真感光体である。
それと同時に、図2に示すように、感光層に対して酸化防止剤を含有させることにより、例えば、2000枚の耐久印字を行った場合であっても、帯電電位の低下を効果的に抑制できる正帯電単層型電子写真感光体である。
【0025】
1.基本的構成
図3に示す電子写真感光体71は、図4(a)に示すような、基体112上に、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、からなる単層型感光層114を設けた単層型電子写真感光体71であることを特徴とする。
また、図4(b)に例示するように、この感光層114と、基体112と、の間に、中間層116を形成した単層型電子写真感光体71´とすることもできる。
【0026】
2.基体
また、基体の構成材料としては、種々の材料を使用することができる。
例えば、鉄、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、アルマイト、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよく、また、使用に際して、充分な機械的強度を有していればよい。
【0027】
また、これらの中でも、特にアルミニウムを含む材料物質を使用することが好ましく、さらに、基体の外周面において膜厚1〜10μmのアルマイト層が設けてあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、電子写真感光体の基準正耐電圧を、所定以上の値に調節することが容易となるためである。
すなわち、アルマイト層の膜厚が1μm未満の値となると、電子写真感光体に対して十分な基準正耐電圧を付与することが困難となる場合があるためである。一方、アルマイト層の膜厚が10μmを超えた値となると、電子写真感光体の基準正耐電圧が過度に増加して、露光メモリが発生しやすくなる場合があるためである。
したがって、アルマイト層の膜厚を2〜8μmの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜7μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0028】
3.中間層
また、図4(b)に例示するように、基体112上に、結着樹脂と、無機微粒子等と、を含有する中間層116を設けることも好ましい。
この理由は、かかる中間層を設けることによっても、所定条件下にて測定される電子写真感光体の基準正耐電圧を所定以上の値に調節することが容易となるためである。
したがって、中間層が、例えば、結着樹脂と、酸化チタン微粒子と、を含むとともに、酸化チタン微粒子の含有量を、結着樹脂100重量部に対して、50〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、正帯電単層型電子写真感光体の基準正耐電圧を所定以上の値に調節することがさらに容易となるためである。
すなわち、酸化チタン微粒子の含有量をかかる範囲とすることによって、中間層の抵抗を所定の範囲に調節することが容易となるとともに、酸化チタン微粒子の分散性をより向上させることができるためである。
したがって、酸化チタン微粒子の含有量を、結着樹脂100重量部に対して100〜400重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、150〜300重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
また、酸化チタン微粒子に対して、アルミナ、シリカ及び有機ケイ素化合物による表面処理が施されていることが好ましい。
この理由は、かかる表面処理を施すことによって、中間層における酸化チタン微粒子の分散性をさらに向上させつつ、中間層の抵抗を好適な範囲に調節することができるためである。
すなわち、酸化チタン微粒子に対してアルミナ(Al23)及びシリカ(SiO2)による表面処理を施すことによって、中間層における酸化チタン微粒子の基本的な分散性を向上させることができるためである。
また、酸化チタン微粒子に対して、アルミナ及びシリカによる表面処理を施すことによって、後述する有機ケイ素化合物による表面処理量を、容易に調節することができるようになるためである。
また、アルミナ及びシリカによる表面処理を施した後に、さらに有機ケイ素化合物によって表面処理を施すことによって、酸化チタン微粒子の分散性をより向上させることができるばかりか、その表面処理量を変化させることによって、酸化チタン微粒子の導電性を容易に調節することができるためである。
【0030】
なお、好適に使用される有機ケイ素化合物としては、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、ビニル基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、アミノ基含有シラン化合物、あるいはこれらの縮合重合物であるポリシロキサン化合物が挙げられる。より具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサンやジメチルポリシロキサン等のシロキサン化合物が好ましく、特に、メチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
そして、アルミナ及びシリカの含有量としては、酸化チタン微粒子100重量部に対して1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。また、有機ケイ素化合物の含有量としては、酸化チタン微粒子100重量部に対して1〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0031】
また、酸化チタン微粒子が、第一の酸化チタン微粒子としてのアルミナ及びシリカにて表面処理を施された酸化チタン微粒子と、第二の酸化チタン微粒子としてのアルミナ及びシリカにて表面処理を施された後、さらにメチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理を施された酸化チタン微粒子とを、併用することが好ましい。
この理由は、第一の酸化チタン微粒子及び第二の酸化チタン微粒子を、所定割合にて併用することにより、正帯電単層型電子写真感光体の基準正帯電圧を所定以上の値に調節することがより一段と容易になるためである。
【0032】
また、酸化チタン微粒子における平均一次粒子径(数平均一次粒子径、以下同様である。)を5〜30nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、酸化チタン微粒子の平均一次粒子径を5〜30nmの範囲内の値とすることによって、中間層内における分散性が良好となって、中間層の抵抗を均一にすることができるためである。
すなわち、酸化チタン微粒子の平均一次粒子径が5nm未満の値となると、そのような酸化チタン微粒子を精度良く製造することが困難となるばかりか、粒子同士が凝集しやすくなる場合があるためである。一方、酸化チタン微粒子の平均一次粒子径が30nmを超えた値となると、中間層内における分散性が低下して、中間層における抵抗が不均一となる場合があるためである。
したがって、酸化チタン微粒子の平均一次粒子径を10〜20nmの範囲内の値とすることがより好ましく、12〜18nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、酸化チタン微粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真及び画像処理装置を組み合わせて測定することができる。
【0033】
また、中間層の膜厚を0.3〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、中間層の膜厚が0.3μm未満の値となると、中間層の抵抗が過度に小さくなるばかりか、均一な膜厚を形成することが困難となる場合があるためである。一方、中間層の膜厚が10μmを超えた値となると、中間層の抵抗が過度に大きくなったり、露光メモリが発生しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、中間層の膜厚を0.5〜8μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
なお、中間層における結着樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いることができる。
【0035】
4.感光層
(1)電荷発生剤
本発明においては、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする。
この理由は、チタニルフタロシアニン結晶であれば、電荷発生効率に優れることから、露光による静電潜像の形成効率を著しく向上させて、画像形成装置等において、さらなる高スピード化を実現することができるためである。
【0036】
また、チタニルフタロシアニン結晶を構成するチタニルフタロシアニン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のチタニルフタロシアニン化合物であれば、チタニルフタロシアニン結晶の安定性をさらに向上させることができるばかりでなく、かかるチタニルフタロシアニン結晶を安定して製造することができるためである。
また、特に、チタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(2)で表されることが好ましい。その中でも特に、下記式(3)で表される無置換のチタニルフタロシアニン化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、より安定した性質を備えたチタニルフタロシアニン結晶をさらに容易に製造することができるためである。
【0037】
【化3】

【0038】
(一般式(1)中、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ同一または異なっても良い置換基であり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、またはニトロ基を示し、繰り返し数a、b、c及びdはそれぞれ1〜4の整数を示し、それぞれ同一または異なっても良い。)
【0039】
【化4】

【0040】
(一般式(2)中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、またはニトロ基を示しており、繰り返し数eは1〜4の整数を示す。)
【0041】
【化5】

【0042】
(1)−1 光学特性
また、本発明におけるチタニルフタロシアニン結晶は、光学特性として、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有することが好ましい(第1の光学特性)。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましい(第2の光学特性)。
さらに、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.2°にピークを有さないことが好ましい(第3の光学特性)。
この理由は、かかる第1の光学特性を備えない場合には、このような光学特性を有するチタニルフタロシアニン結晶と比較して、結晶安定性、電荷発生能及び分散性が著しく低下する傾向にあるためである。逆に言えば、第1の光学特性、より好ましくは、第2の光学特性及び第3の光学特性を備えることにより、結晶安定性、電荷発生能及び分散性を向上させることができるためである。
なお、チタニルフタロシアニン結晶の分散性を向上させることにより、電子写真感光体の基準正耐電圧を所定以上の値に調節することが容易となり、ひいては、電子写真感光体と、帯電手段と、の間におけるリーク現象の発生を抑制することができる。
【0043】
また、チタニルフタロシアニン結晶が、有機溶媒中に24時間浸漬した後に測定されるCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないことが好ましい。
この理由は、チタニルフタロシアニン結晶がかかる特性を有することによって、感光層用塗布液中におけるその経時安定性や分散性を、さらに向上させることができるためである。
すなわち、チタニルフタロシアニン結晶を、実際にテトラヒドロフラン等の有機溶媒中に24時間浸漬させた場合であっても、結晶型がαまたはβ型へ転移せず、所定の結晶型を保持していることを確認できるため、有機溶媒中における結晶転移を確実に制御することができるためである。
なお、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する基準となる有機溶媒への浸漬実験評価は、例えば、電子写真用感光体を作成するための感光層用塗布液(以下、感光層用塗布液)を実際に保管する条件と、同一条件で実施することが好ましい。したがって、例えば、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下で、密閉系中において、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価することが好ましい。
【0044】
また、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する際の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる有機溶媒を感光層用塗布液における有機溶剤として用いた場合におけるチタニルフタロシアニン結晶の安定性を、より確実に判断することができるためである。
【0045】
(1)−2 熱特性
また、本発明におけるチタニルフタロシアニン結晶は、熱特性として、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有することが好ましい。
この理由は、かかる光学特性及び熱特性を有するチタニルフタロシアニン結晶であれば、結晶安定性、電荷発生能及び分散性を、さらに向上させることができるためである。
なお、吸着水の気化に伴うピーク以外のピークであって、270〜400℃の範囲内に現れる1つのピークは、280〜390℃の範囲内に現れることがより好ましく、290〜380℃の範囲内に現れることがさらに好ましい。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるブラッグ角の具体的な測定方法、及び、示差走査熱量分析の具体的な方法については、実施例において詳述する。
【0046】
(1)−3 製造方法
また、本発明におけるチタニルフタロシアニン結晶は、例えば、以下に示す方法によって製造することができる。
すなわち、かかるチタニルフタロシアニン結晶の製造材料としてのo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体と、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、を尿素化合物の存在下において反応させて、チタニルフタロシアニン化合物を製造することが好ましい。
したがって、下記反応式(1)または下記反応式(2)に準じて実施することが好ましい。なお、反応式(1)及び反応式(2)においては、チタンアルコキシドとして、一例ではあるが、式(5)で表されるチタンテトラブトキシドを用いている。
【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
また、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.40〜0.53モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体に対して、1/4モル当量を超えた過剰量を添加することにより、後述する尿素化合物との相互作用が効果的に発揮されるためである。
したがって、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリン等1モルに対して、0.42〜0.50モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.45〜0.47モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
また、上述した反応式(1)及び(2)で表される反応を、尿素化合物の存在下において行うことが好ましい。
この理由は、尿素化合物の存在下において製造されたチタニルフタロシアニン化合物を用いることにより、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンにおける相互作用が発揮されるため、特定のチタニルフタロシアニン結晶を効率的に得ることができるためである。
すなわち、かかる相互作用とは、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンとの反応によって生成するアンモニアが、さらにチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をより促進させる作用である。そして、このような促進作用のもとに、原料物質を反応させることにより、有機溶媒中であっても、特定のチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することができる。
【0051】
また、尿素化合物が、尿素、チオ尿素、O−メチルイソ尿素硫酸塩、O−メチルイソ尿素炭酸塩、及びO−メチルイソ尿素塩酸塩からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる尿素化合物を、反応式(1)及び(2)中の尿素化合物として用いることにより、反応の過程で生成するアンモニアが、より効率的にチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
すなわち、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成するためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
なお、かかる錯体化合物は、180℃以上の高温条件で反応させた場合に、特異的に生成しやすいことが判明している。そのため、沸点が180℃以上の含窒素化合物中、例えば、キノリン(沸点:237.1℃)やイソキノリン(沸点:242.5℃)、あるいはこれらの混合物(重量比10:90〜90:10)中で実施することがより有効である。
また、反応促進剤としてのアンモニアや、それに起因した錯体化合物がさらに生成しやすいことから、上述した尿素化合物の中でも、尿素を用いることがより好ましい。
【0052】
また、反応式(1)及び(2)で使用する尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.1〜0.95モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、尿素化合物の添加量をかかる範囲内の値とすることにより、上述した尿素化合物の作用をより効率的に発揮させることができるためである。
したがって、かかる尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.2〜0.8モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜0.7モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0053】
また、反応式(1)及び(2)で使用する溶媒としては、例えば、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラリン、及びニトロベンゼン等の炭化水素系溶剤、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、及びクロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、及びジエチレングリコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、アセトフェノン、1−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のケトン系溶剤、ホルムアミド、及びアセトアミド等のアミド系溶剤、ピコリン、キノリン、及びイソキノリン等の窒素含有溶剤からなる群の1種または2種以上の任意の組み合わせが挙げられる。
特に、沸点が180℃以上の含窒素化合物、例えば、キノリンやイソキノリンであれば、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成しやすくなることから好適な溶媒である。
【0054】
また、反応式(1)及び(2)における反応温度を150℃以上の高温とすることが好ましい。この理由は、かかる反応温度が150℃未満、特に135℃以下となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、特定のチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。
したがって、反応式(1)及び(2)における反応温度を180〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましく、200〜240℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0055】
また、反応式(1)及び(2)における反応時間は、反応温度にもよるが、0.5〜10時間の範囲とすることが好ましい。この理由は、かかる反応時間が0.5時間未満となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、特定のチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。一方、かかる反応時間が10時間を越えると、経済的に不利となったり、あるいは生成した錯体化合物が減少したりする場合があるためである。
したがって、反応式(1)及び(2)における反応時間を0.6〜3.5時間の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜3時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0056】
また、得られたチタニルフタロシアニン化合物(粗チタニルフタロシアニン結晶)に対し、下記工程(a)〜(d)を含む工程を実施して、最終的なチタニルフタロシアニン結晶を得ることが好ましい。
(a)粗チタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、チタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)チタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、チタニルフタロシアニン結晶を得る工程
【0057】
(1)−4 含有量
また、電荷発生剤としてのチタニルフタロシアニン結晶の含有量を、感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.5〜8重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、正帯電単層型電子写真感光体の基準正耐電圧を所定以上の値に調節することが容易となる一方で、電荷発生量を安定的に確保することができるためである。
すなわち、チタニルフタロシアニン結晶の含有量が、0.5重量部未満の値となると、電荷発生量が過度に減少して、電子写真感光体表面において静電潜像を形成することが困難となる場合があるためである。
一方、チタニルフタロシアニン結晶の含有量が、8重量部を超えた値となると、感光層中に均一に分散させることが困難となって、電子写真感光体の基準正耐電圧を所定以上の値に調節することが困難となるためである。
したがって、チタニルフタロシアニン結晶の含有量を、感光層の結着樹脂100重量部に対して、1〜6重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、2〜5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
(2)分散剤
また、感光層中における電荷発生剤の分散具合を調節するために、分散剤を併用することも好ましい。
すなわち、分散剤を用いて感光層中における電荷発生剤の分散具合を調節することにより、基準耐電圧を容易に調節することができるためである。
また、かかる分散剤としては、例えば、顔料としての下記式(7)で表されるPY128が挙げられる。
【0059】
【化8】

【0060】
その他の分散剤としては、顔料としてのPR254、PY110、PY242等が挙げられる。
なお、かかる分散剤の含有量は、感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0061】
(3)酸化防止剤
本発明においては、添加剤として酸化防止剤を用いることを特徴とする。
この理由は、耐久印字を行った場合であっても、帯電電位の低下を効果的に抑制することができるためである。
すなわち、本発明においては、上述したように、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用いていることから、露光による静電潜像の形成効率を著しく向上させることができ、画像形成装置におけるさらなる高スピード化を実現することができる。
一方で、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用い、かつ、耐久印字を行った場合には、リーク現象の発生及び帯電電位の低下が生じやすくなる。
この点、感光層に対し、添加剤として酸化防止剤を含有させることによって、主に帯電工程において発生するオゾン等の活性ガスによる感光層の酸化劣化を、効果的に抑制することができる。
その結果、上述したリーク現象の発生と、帯電電位の低下と、のうち、後者を効果的に抑制することができる。
【0062】
(3)−1 種類
また、酸化防止剤の種類としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の化合物を用いることができる。
例えば、ヒンダードフェノール、アミン、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン、あるいはこれらの誘導体、または、有機硫黄化合物及び有機リン化合物等が挙げられる。
【0063】
また、酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤、あるいはいずれか一方であることが好ましい。
この理由は、酸化防止剤としてこれらの化合物を用いることにより、帯電工程において、感光層表面がオゾン等の活性ガスに暴露された場合であっても、感光層表面の酸化劣化を、より効果的に抑制して、帯電電位の低下を抑制することができるためである。
【0064】
また、上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤が、下記式(1)で表わされる構造を含むことが好ましい。
【0065】
【化9】

【0066】
この理由は、かかる構造を含むヒンダードフェノール系酸化防止剤であれば、感光層表面の酸化劣化を、さらに効果的に抑制して、帯電電位の低下を抑制することができるためである。
【0067】
また、上述したアミン系酸化防止剤が、下記一般式(2)で表わされる構造を有することが好ましい。
【0068】
【化10】

【0069】
(一般式(2)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキル基部分の炭素数が1〜8であるアルキルアミノ基、またはアリール基部分の炭素数が6〜20であるアリールアミノ基であり、それぞれ隣り合う置換基同士が結合して、ナフタレン環を形成してもよい。)
【0070】
この理由は、かかる構造を有するアミン系酸化防止剤であれば、感光層表面の酸化劣化を、より一段と効果的に抑制して、帯電電位の低下を抑制することができるためである。
【0071】
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、下記式(8)で表わされる化合物(P−1〜16)が挙げられる。
なお、これらのうち、一般式(1)で表わされる構造を含むものは、P−1、2、3、7、14及び15である。
【0072】
【化11】

【0073】
また、アミン系酸化防止剤の具体例としては、下記式(9)で表わされる化合物(P−17〜27)が挙げられる。
なお、これらのうち、一般式(2)で表わされる構造を有するものは、(P−17、18、21、22、24、25、26及び27)である。
【0074】
【化12】

【0075】
(3)−2 含有量
また、酸化防止剤の含有量を、感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、酸化防止剤の含有量をかかる範囲とすることにより、酸化防止剤による酸化劣化防止効果を十分に発揮させつつも、感光層において酸化防止剤を効果的に分散させることができるためである。
すなわち、酸化防止剤の含有量が0.1重量部未満の値となると、耐久印字を行った場合には、感光層表面の酸化劣化を十分に抑制することが困難となって、帯電電位が過度に低下しやすくなる場合があるためである。一方、酸化防止剤の含有量が10重量部を超えた値となると、感光層における酸化防止剤の分散性が過度に低下し、ひいては電荷発生剤の分散性も過度に低下しやすくなり、リーク現象の発生を抑制することが困難となったり、感度特性が低下したりする場合があるためである。
したがって、酸化防止剤の含有量を、感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.5〜7重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜7重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましく、2〜5重量部の範囲内の値とすることがより一段と好ましい。
【0076】
次いで、図2を用いて、電子写真感光体の感光層における酸化防止剤の含有量と、帯電電位の低下と、の関係を説明する。
すなわち、図2には、横軸に、感光層の結着樹脂100重量部に対する酸化防止剤としての式(8)中の3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)(P−1)の含有量(重量部)を採り、縦軸に、初期及び2000枚耐久印字後における帯電電位の低下(V)を採った特性曲線が示してある。
なお、このときの帯電電位は、850Vとし、画像形成速度は、160mm/sとした。その他の画像形成条件や、電子写真感光体の構成等については、実施例に記載する。
【0077】
まず、特性曲線からは、BHTの含有量が増加するのにともなって、電位低下の値(絶対値)が減少する、すなわち電位低下が抑制されることを読み取ることができる。
より具体的には、BHTの含有量が0.5重量部の場合には、電位低下の値(絶対値)が約50Vであるが、その後、BHTの含有量の増加にともなって、電位低下が安定的に抑制された状態に変化している。
そして、BHTの含有量が2.5重量部以上の値となると、電位低下の値(絶対値)を安定的に20V以下の値に抑制できている。
したがって、特性曲線からは、特に、帯電電位を所定以上の値として画像形成を行った場合において、BHTに代表される酸化防止剤の含有量を、所定以上の値とする必要が生じることがわかる。
【0078】
(4)正孔輸送剤
本発明の電子写真感光体において使用される正孔輸送剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知の種々の正孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。
特に、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物(例えば2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾールなど)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど)、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、及びジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
なお、正孔輸送剤の種類を変えることによっても、基準正耐電圧を調節することができる。
【0079】
また、正孔輸送剤の含有量を、感光層における結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、正孔輸送剤の含有量を、かかる範囲とすることによって、かかる正孔輸送剤が感光層中で結晶化することを効果的に抑制しつつ、優れた電気特性を得ることができるためである。
すなわち、正孔輸送剤の含有量が10重量部未満の値となると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、正孔輸送剤の含有量が100重量部を超えた値となると、かかる正孔輸送剤が過度に結晶化しやすくなって、感光層としての適正な膜を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、正孔輸送剤の含有量を20〜90重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜80重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0080】
(5)電子輸送剤
また、本発明の電子写真感光体において使用される電子輸送剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知の種々の電子輸送性化合物がいずれも使用可能である。特にジフェノキノン誘導体、アゾキノン、ピレン誘導体、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、電子輸送剤の種類を変えることによっても、基準正耐電圧を調節することができる。
【0081】
また、電子輸送剤の含有量を、結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光層として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0082】
(6)結着樹脂
本発明の電子写真感光体に使用する結着樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂をはじめ、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
【0083】
(7)膜厚
また、感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、感光層の膜厚をかかる範囲とすることにより、電子写真感光体の正耐電圧を向上させることができる一方で、残留電荷の発生を抑制して、露光メモリをより効果的に抑制することができるためである。
すなわち、感光層の膜厚が22μm未満の値となると、電子写真感光体の正耐電圧が過度に低下しやすくなったり、感光層の機械的強度が不十分となって、基体から剥離しやすくなったりする場合があるためである。
一方、感光層の膜厚が40μmを超えた値となると、残留電荷の発生が過度に増加しやすくなる場合があるためである。
したがって、感光層の膜厚を23〜38μmの範囲内の値とすることがより好ましく、25〜35μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0084】
5.基準正耐電圧
また、感光層の膜厚を22〜40μmとした場合において、JIS C 2110に準拠して測定される正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧(基準正耐電圧)を7.5kV以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる基準正耐電圧を所定値とすることにより、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を用い、かつ、後述するように、帯電電位を所定の高い値に設定した場合であっても、帯電手段と、電子写真感光体と、の間でのリーク現象の発生を効果的に抑制することができるためである。
すなわち、かかる基準正耐電圧が7.5kV未満の値となると、帯電工程を実施した際に、帯電手段と、電子写真感光体と、の間にてリーク電流が流れ、感光層が絶縁破壊しやすくなり、最終的には、かかるリーク箇所に対応した斑点が、常に画像形成されてしまうこととなるためである。
一方、かかる基準正耐電圧が過度に大きな値となると、感光層内に電荷が過度に蓄積されやすくなって、露光メモリの発生を十分に抑制することが困難となる場合がある。
したがって、電子写真感光体の基準正耐電圧を7.5〜15kVの範囲内の値とすることがより好ましく、7.5〜10kVの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、本発明における基準正耐電圧とは、例えば、感光層の膜厚が22μmの正帯電単層型電子写真感光体であれば、感光層の膜厚が22μmの場合における電子写真感光体そのものの基準正耐電圧を意味する。
また、例えば、感光層の膜厚が40μmの正帯電単層型電子写真感光体であれば、感光層の膜厚が40μmの場合における電子写真感光体そのものの基準正耐電圧を意味する。
【0085】
また、JIS C 2110に準拠して測定される基準正耐電圧の測定条件の一例は、以下の通りである。
そして、図5に、かかる基準正耐電圧を測定するための測定装置200の概略図を示す。
すなわち、測定装置200には、基本的に、電子写真感光体71を載置するためのVレール台203と、電子写真感光体71の軸線方向に移動可能なリニアスライダー201と、リニアスライダー201に固定された木綿針202が備えられている。
また、木綿針202と、Vレール台203に載置された電子写真感光体71の基体には、導線が繋がれており、高圧電源203によって電圧が印加可能となっている。
感光層の膜厚 :25μm
電極 :木綿針3号(クロバー(株)製、長さ:51.5mm、直径:0.84mm)
電極と、感光層との間の距離 :1mm
電圧の上昇パターン :0.1kV/sec.
印加電圧の種類 :プラス直流電位
リーク現象判断時の電流値 :0.5mA
リーク現象測定環境 :温度20℃、相対湿度50%、暗所
高圧電源兼リーク現象測定装置 :高圧電源TREK 610E(TREK(株)製)
【0086】
次いで、図1を用いて、電子写真感光体の基準正耐電圧と、帯電手段及び電子写真感光体の間でのリーク現象の発生と、の関係を説明する。
すなわち、図1には、横軸に電子写真感光体の基準正耐電圧(kV)を採り、縦軸に帯電手段と、電子写真感光体と、の間でのリークの発生に起因した形成画像における斑点発生数(個/(9.4×21)cm2)を採った特性曲線A及びBが示してある。
ここで、特性曲線Aは、帯電手段による帯電電位を850Vとした場合の特性曲線であり、特性曲線Bは、帯電手段による帯電電位を450Vとした場合の特性曲線である。
なお、画像形成速度は、特性曲線A及びBいずれの場合においても、160mm/sとした。その他の画像形成条件や、電子写真感光体の構成等については、実施例に記載する。
【0087】
まず、特性曲線A及びBからは、基準正耐電圧の値が増加するのにともなって、単位面積当たりの斑点発生数が減少することを読み取ることができる。
一方、特性曲線A及びBでは、基準正耐電圧の値の増加にともなう斑点発生数の減少割合が大きく異なっている。
すなわち、特性曲線Aでは、基準正耐電圧の値が7kVの場合には、単位面積当たりの斑点発生数が70個前後となっているが、その後、基準正耐電圧の値の増加にともなって、斑点発生数が急激に減少している。
そして、基準正耐電圧の値が7.5kV以上の値となると、単位面積当たりの斑点発生数を安定的に20個前後に抑制できている。
それに対し、特性曲線Bでは、基準正耐電圧の値が低い場合であっても、単位面積当たりの斑点発生数が十分に抑制されており、例えば、基準正帯電圧の値が7kVの場合であっても、30個前後である。
したがって、特性曲線A及びBからは、帯電電位を所定以上の値として画像形成を行った場合において特異的に、基準正帯電圧の値を7.5kV以上の値とする必要が生じることがわかる。
【0088】
また、電子写真感光体の基準正耐電圧の調節は、既に上述したように、基体表面にアルマイト層を形成したり、基体上に中間層を設けたり、電荷発生剤としてのチタニルフタロシアニン結晶の種類、含有量を変えたり、あるいは感光層の膜厚を変えたりすることによって行うことができる。
以下、かかる調節の実例を、図6を用いて説明する。
【0089】
すなわち、図6を用いて、感光層におけるチタニルフタロシアニン結晶の含有量を変えた場合について説明する。
かかる図6中、横軸に感光層の結着樹脂100重量部に対するチタニルフタロシアニン結晶の含有量(重量部)を採り、縦軸に基準正耐電圧(kV)を採った特性曲線が示してある。
なお、電子写真感光体の構成や、基準正耐電圧の測定方法等の詳細については、後述する。
【0090】
すなわち、かかる特性曲線からは、チタニルフタロシアニン結晶の含有量を増加させることによって、基準正耐電圧の値を減少させることができる旨が理解される。
逆に言えば、チタニルフタロシアニン結晶の含有量を減少させることによって、基準正耐電圧の値を増加させることができる旨が理解される。
したがって、チタニルフタロシアニン結晶の含有量を変化させることによって、基準正耐電圧の値を微調節できることがわかる。
【0091】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、基体上に、感光層を有する正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置であって、感光層が、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を含むとともに、添加剤として、酸化防止剤を含み、かつ、感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とし、さらに、JIS C 2110に準拠して測定される正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧を7.5kV以上の値とすることを特徴とする画像形成装置である。
以下、第2の実施形態としての画像形成装置について、基本的構成、それを構成する電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び除電手段に分けて、具体的に説明する。
【0092】
1.基本的構成
図3は、本発明としてのタンデム方式の画像形成装置の一例を示す図である。
この画像形成装置1は、中間転写ベルト11を備えている。また、中間転写ベルト11の上側には、マゼンタ用現像手段7M、シアン用現像手段7C、イエロー用現像手段7Y、及びブラック用現像手段7BKが、それぞれ無端状ベルト11の移動方向に沿って配置されている。
また、現像ローラ72に対面して、それぞれ電子写真感光体71が配置されている。また、これら電子写真感光体71の周囲には、それぞれ電子写真感光体71の表面を帯電させるための帯電手段75及び電子写真感光体71表面に静電潜像を形成するための露光手段76等が配置されている。
したがって、各色に対応した電子写真感光体71上に形成された静電潜像は、各色に対応した現像手段72によってそれぞれ現像されることとなる。
また、中間転写ベルト11上に、順次、各色現像剤像を転写するための一次転写手段16が、中間転写ベルト11を介してそれぞれの電子写真感光体71の反対側に配置されている。
また、中間転写ベルト11の移動方向における最下流部には、中間転写ベルト11上に形成された現像剤像を、記録媒体上に転写するための二次転写手段12が配置されている。
さらに、図中左下には、記録媒体上に転写された現像剤像を、記録媒体に対して定着させるための定着手段4が配置されている。
以下、特に、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び除電手段について、それぞれ具体的に説明する。
【0093】
2.電子写真感光体
第1の実施形態で説明したのと同様の内容とすることができるので、ここでの説明を省略する。
【0094】
3.帯電手段
また、図3に示す帯電手段75は、電子写真感光体71の上方に設置されており、電子写真感光体71を一様に帯電させるための手段である。
かかる帯電手段の種類として、スコロトロン等の非接触型の帯電手段を用いることも好ましいが、帯電ローラ等の接触型の帯電手段であってもよい。
【0095】
また、電子写真感光体における帯電電位を600〜1000Vの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、帯電電位の値が600V未満の値となると、鮮明な静電潜像を形成することが困難となる場合があるためである。
一方、帯電電位の値が1000Vを超えた値となると、過度にリーク現象が発生しやすくなったり、過度に感光層表面が酸化劣化しやすくなる場合があるためである。
したがって、電子写真感光体における帯電電位を650〜900Vの範囲内の値とすることがより好ましく、700〜900Vの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0096】
4.露光手段
また、図3に示す露光手段76は、図示しない画像データ入力部から読み取った原稿画像に基づいて、電子写真感光体71上に静電潜像を形成させるための手段である。
ここで、本発明における電子写真感光体は、電荷発生剤として、電荷発生効率に優れるチタニルフタロシアニン結晶を用い、かつ、帯電電位を所定の高い値に設定していることから、露光による静電潜像の形成効率が著しく向上している。
よって、電子写真感光体を露光させる際の単位面積当たりの露光量を減少させた場合であっても、実用上問題なく画像形成を行うことができ、省エネ効果を向上させることができる。
したがって、単位面積当たりの露光量を電子写真感光体上にて0.2〜0.8μJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましく、0.3〜0.6μJ/cm2の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0097】
5.現像手段
また、図3に示す現像手段72は、静電潜像が形成された電子写真感光体71表面にトナーを供給してトナー像を形成させる手段である。
また、かかる現像手段を、電子写真感光体表面に残存しているトナーを、現像手段が回収することによって、電子写真感光体表面のクリーニングが行われる現像同時クリーニング方式とすることが好ましい。
この理由は、本発明の画像形成装置であれば、このように構成した場合であっても、リーク現象の発生を抑制しつつ、各画像形成ユニットの構成を小型化することができるためである。
すなわち、現像同時クリーニング方式を採用した場合、通常、帯電手段の上流側に設けられるブレードクリーナーが省略される。
したがって、帯電及び露光時の電子写真感光体表面には、転写残トナーが残留していることとなる。
この点、本発明における電子写真感光体は、電荷発生剤として、電荷発生効率に優れるチタニルフタロシアニン結晶を用い、かつ、帯電電位を所定の高い値に設定していることから、露光による静電潜像の形成効率が著しく向上しており、このような場合であっても、実用上問題なく画像形成を行うことができるためである。
【0098】
6.除電手段
また、帯電手段の上流側において、電子写真感光体の感光層中に残留している残留電荷を除去するための除電手段を設けてもよい。
一方、本発明の場合、除電手段を省略し、残留電荷を完全に除去せずに次工程の帯電を行ってもリーク現象の発生を抑制できるので、除電手段を省略した除電レス方式とすることが好ましい。
【0099】
7.現像剤
本発明においては、非磁性一成分現像剤を使用することが好ましい。
この理由は、非磁性一成分現像剤であれば、現像剤に対して磁性粉を含有させる必要がないことから、鮮やかなカラー画像を形成することができるためである。
また、磁性現像剤や、二成分現像剤を用いた場合と異なり、マグネットロールを使用する必要もないことから、現像装置の簡易化及びコンパクト化に資することができ、さらには、現像装置の項においても記載したように、ブレードクリーナーを省略したクリーナーレス方式のカラー画像形成装置として構成することが可能となるためである。
【0100】
また、トナー粒子に用いられる結着樹脂は、特に制限されるものではなく、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂及びスチレン−アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
また、トナー粒子に含有させる着色剤についても、特に制限されるものではなく、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック、アゾ系顔料、黄色酸化鉄、黄土、ニトロ系染料、油溶性染料、ベンジジン系顔料、キナクリドン系顔料、銅フタロシアニン系顔料等を使用することが好ましい。
【0101】
また、トナー粒子に対して、例えば、ニグロシン、第四級アンモニウム塩化合物、樹脂にアミン系化合物を結合させた樹脂タイプの電荷制御剤等の正帯電特性を示す電荷制御剤を使用することも好ましい。
さらに、トナー粒子に対して、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等のワックスを使用することも好ましい。
なお、現像剤の流動性や帯電特性を調節するために、トナー粒子に対して、シリカ微粒子や酸化チタン微粒子といった無機微粒子を外添させて、その流動性や帯電特性を調節することも好ましい。
【0102】
また、トナー粒子の体積平均粒子径は、6〜10μmの範囲内の値とすることが好ましく、その製造方法としては、粉砕法や重合法等、従来公知の製造方法を用いることができる。
【0103】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第2の実施形態において説明した画像形成装置を用いた画像形成方法である。
以下、第2の実施形態と重複する内容は省略し、第3の実施形態としての画像形成方法の特徴的内容について、ブレードクリーナーを省略した現像同時クリーニング方式を採用した場合を例に採って、具体的に説明する。
【0104】
まず、画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にトナー像が1次転写される中間転写ベルト11と、この中間転写ベルト11上の現像剤像を給紙カセット21から送り込まれた記録媒体Pに2次転写させるための2次転写手段12とを備えている。
また、画像形成ユニット7は、上流側(図3では左側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。
そして、各ユニット7K、7Y、7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての電子写真感光体71が矢符(反時計回り)方向に回転可能に配置されている。
また、各電子写真感光体71の周囲には、帯電手段75、露光手段76、現像手段72等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。
【0105】
帯電手段75は、矢符方向に回転されている電子写真感光体71の周面を均一に帯電させる。
かかる帯電手段75としては、例えば、スコロトロン帯電器等が挙げられる。
また、露光手段76は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、帯電手段75によって均一に帯電された電子写真感光体71の周面に、画像読取装置等から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、電子写真感光体71上に画像データに基づく静電潜像を形成する。
また、現像手段72は、静電潜像が形成された電子写真感光体71の周面に現像剤を供給することで、画像データに基づく現像剤像を形成させる。
そして、この形成された現像剤像が中間転写ベルト11に1次転写される。
【0106】
また、中間転写ベルト11は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各電子写真感光体71の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ13、ベルト支持ローラ14、バックアップローラ15、一次転写手段16及びテンションローラ17等の複数のローラに架け渡されている。
また、かかる中間転写ベルト11は、各電子写真感光体71と対向配置された一次転写手段16によって電子写真感光体71に押圧された状態で、前記複数のローラによって無端回転するように構成されている。
【0107】
また、1次転写手段16は、1次転写バイアス(現像剤の帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト11に印加する。
そうすることによって、各電子写真感光体71上に形成された現像剤像は、各電子写真感光体71と1次転写手段16との間で、駆動ローラ13の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する中間転写ベルト11に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0108】
また、2次転写手段12は、現像剤像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。
そうすることによって、中間転写ベルト11上に1次転写された現像剤像は、2次転写手段12とバックアップローラ15との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像が形成される。
【0109】
また、定着手段4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
そして、画像形成部3で2次転写ローラ12により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。
さらに、定着処理の施された用紙Pは、排紙部に排紙されるようになっている。
【0110】
上述した本発明の画像形成方法であれば、所定の画像形成装置を用いることにより、帯電電位を比較的高い値として高速画像形成を行った場合であっても、リークの発生及びそれに起因した形成画像における斑点の発生を効果的に抑制できる。
なお、本発明における高速画像形成とは、ドラム回転速度100〜200mm/sの範囲内の値で画像形成を行うことを意味し、かかる画像形成速度は、150〜200mm/sの範囲内の値とすることがより好ましい。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例によって、より詳細に説明するが、言うまでもなく、特に理由なく、本発明はこれらの記載内容に限定されるものではない。
【0112】
[実施例1]
1.電子写真感光体の製造
(1)基体の準備
直径30mm、長さ254mmのアルミニウム基体を用意した。
【0113】
(2)中間層の形成
ビーズミルを用いて、第一の酸化チタン微粒子(テイカ(株)製、MT05)160重量部、第二の酸化チタン微粒子(テイカ(株)製、SMT02)40重量部、四元共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製、CM8000)100重量部、溶媒としてメタノール1000重量部と、n-ブタノール250重量部とを、5時間混合、分散させ、さらに5ミクロンのフィルタにてろ過処理して、中間層用塗布液を作成した。
次いで、予め用意しておいた基体(支持基体)の一端を上にして、得られた中間層用塗布液中に5mm/secの速度で浸漬させて中間層用塗布液を塗布した。その後、130℃、30分の条件で硬化処理を行って、膜厚2μmの中間層を形成した。
【0114】
なお、上述した第一の酸化チタン微粒子及び第二の酸化チタン微粒子の構成は、それぞれ以下の通りである。
第一の酸化チタン微粒子(MT05)
アルミナ及びシリカで表面処理した酸化チタン微粒子(テイカ(株)製、数平均一次粒子径10nm)
第二の酸化チタン微粒子(SMT02)
アルミナ及びシリカで表面処理した後、メチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン微粒子(テイカ(株)製、数平均一次粒子径:10nm)
【0115】
(3)感光層の形成
次いで、容器内に、後述する製造方法にて製造した電荷発生剤としての式(3)で表されるチタニルフタロシアニン(CGM−1)の結晶(TiOPc)3重量部と、下記式(10)で表される正孔輸送剤(HTM−1)50重量部と、下記式(11)で表される電子輸送剤(ETM−1)30重量部と、酸化防止剤としての式(9)中のN−フェニル−ナフタレン−1−アミン(P−24)2.5重量部と、結着樹脂としての平均分子量30,000のポリカーボネート樹脂100重量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン800重量部と、を収容し、これらの混合物を得た。次いで、かかる混合物につき、ボールミルを用いて50時間混合分散し、感光層用塗布液を得た。
次いで、得られた感光層用塗布液を、上述した中間層上に、ディップコート法にて塗布した後、100℃、40分間の条件下で熱風乾燥し、膜厚が25μmの感光層を形成し、単層型電子写真感光体を得た。
【0116】
【化13】

【0117】
【化14】

【0118】
(4)チタニルフタロシアニンの製造
なお、電荷発生剤としての式(3)で表されるチタニルフタロシアニン(CGM−1)の結晶(TiOPc)は、以下のようにして製造した。
【0119】
(4)−1 粗チタニルフタロシアニン結晶の合成
まず、アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17mol)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073mol)と、キノリン300gと、尿素2.28g(0.038mol)を加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
次いで、反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、粗チタニルフタロシアニン結晶としての青紫色の固体24gを合成した。
【0120】
(4)−2 酸処理前工程
上述したチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、さらに、23±1℃まで冷却した時点で撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
【0121】
(4)−3 酸処理工程
上述した酸処理前工程で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。
次に、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間攪拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させた。
次に、上述した液をガラスフィルターによって濾別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗した後、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間攪拌した。
次いで、液をガラスフィルターによって濾別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(3)で表される無置換のチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。
【0122】
(4)−4 チタニルフタロシアニン結晶の評価
(X線回折測定)
得られたチタニルフタロシアニン結晶0.3gを、テトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%の条件下、密閉系中で24時間、保管したのちテトラヒドロフランを除去して、X線回折装置(理学電機(株)製のRINT1100)のサンプルホルダーに充填して測定を行った。得られたスペクトルチャートを、図7に示す。また、かかるスペクトルチャートは、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さない特徴を有していることから、得られたチタニルフタロシアニン結晶が、安定した所定の結晶型を有していることが確認できた。この理由は、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°におけるピークは、上述した所定の結晶型に特有のピークであり、26.2°におけるピークは、β型結晶に特有のピークであるためである。
なお、テトラヒドロフラン中に分散させる前の段階においても、図7に示すのと同様のスペクトルチャートが測定された。
かかるX線回折の測定の条件は、下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
【0123】
(示差走査熱量計測定)
また、示差走査熱量計(理学電機(株)製のTAS−200型、DSC8230D)を用いて、得られたチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析を行った。得られた示差走査分析チャートを、図8に示す。また、かかるチャートにおいては、吸着水の気化にともなうピーク以外に、296℃において1つのピークが確認された。
なお、測定条件は下記の通りとした。
サンプルパン:アルミニウム製
昇温速度:20℃/分
【0124】
2.電子写真感光体の評価
(1)基準正耐電圧の測定
JIS C 2110に準拠して、正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧を測定した。
すなわち、図5に示すように、高圧電源(TREK(株)製、610E)に木綿針3号(クロバー(株)製、長さ:51.5mm、直径:0.84mm)を接続し、その針先が電子写真感光体の表面から1mmとなるように対向させた。
次いで、常温常湿条件下(温度:20℃、相対湿度:50%、暗所)にて、0.1kV/sec.にて印加電圧(プラス直流電位)を高め、0.5mAの電流が計測された時点での電圧を読み取り、基準正耐電圧(kV)とした。得られた結果を表1に示す。
【0125】
(2)斑点発生数の評価
また、得られた電子写真感光体を用いて、斑点発生数を評価した。
すなわち、得られた電子写真感光体を、タンデム方式及びクリーナーレス方式を採用したカラー画像形成装置(京セラミタ(株)製、KM−C3232改造機)に対し、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー現像剤に対応した電子写真感光体として搭載した。
次いで、常温常湿条件下(温度:20℃、相対湿度:50%)にて、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー現像剤を全色均等に用いたカラーソリッド画像と、ブラック現像剤のみを用いたモノクロソリッド画像と、を交互に5000枚ずつ印刷した後、白紙画像を印刷し、像担持体(感光体)1周分(9.4cm×21cm)に相当する面積における斑点発生数を目視にて計数した。得られた結果を表1に示す。
なお、その他の画像形成条件は、以下に示す通りである。
帯電方式 :スコロトロン帯電方式(帯電電位:850V)
露光方式 :レーザ光源露光方式(露光量:0.5μJ/cm2
現像剤 :非磁性一成分現像剤(重合法)
転写方式 :中間転写ベルト方式
画像形成速度:160mm/s
【0126】
(3)帯電電位の評価
また、得られた電子写真感光体における帯電電位の評価を行った。
すなわち、環境条件を温度10℃、相対湿度20%としたほかは、上述した斑点発生数の評価における場合と同様の条件にて、印字率4%原稿画像を2000枚印字する前後における帯電電位(V)を、それぞれ測定するとともに、2000枚印字後の帯電電位から、初期帯電電位を引いて、帯電電位の低下(V)を算出した。得られた結果を表1に示す。
なお、温度10℃、相対湿度20%の環境条件は、よりオゾンやNOxが発生しやすい環境条件である。
【0127】
(4)感度評価
また、得られた電子写真感光体における感度を測定した。
すなわち、常温常湿条件下(温度:20℃、相対湿度:50%)にて、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、帯電電位が850Vになるように帯電させ、次いで、白色光からバンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、露光量:0.3μJ/cm2)を電子写真感光体表面に対して露光した(照射時間50msec)。次いで、露光後350msec経過後の電位を測定し、感度(V)とした。
【0128】
[実施例2]
実施例2では、感光層を形成する際に、酸化防止剤として式(9)中のジフェニルアミン(P−17)2.5重量部を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0129】
[実施例3]
実施例3では、感光層を形成する際に、酸化防止剤として式(8)中の3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)(P−1)2.5重量部を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0130】
[実施例4]
実施例4では、感光層を形成する際に、酸化防止剤として式(8)中のオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(P−3)2.5重量部を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0131】
[実施例5]
実施例5では、感光層を形成する際に、酸化防止剤として式(8)中のペンタエリスリトールテトラキス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(P−14)2.5重量部を用いたほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0132】
[実施例6〜10]
実施例6〜10では、感光層を形成する際に、酸化防止剤としての式(8)中の3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)(P−1)の含有量を、それぞれ0.5、1.0、1.5、3.5及び5.0重量部に変えたほかは、実施例3と同様に単層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0133】
[比較例1]
比較例1では、感光層を形成する際に、酸化防止剤を含有させなかったほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0134】
[実施例11〜15及び比較例2]
実施例11〜15及び比較例2では、中間層を形成する際に、第二の酸化チタン微粒子(SMT02)の含有量を200重量部とし、第一の酸化チタン微粒子(MT05)を含有させなかったほかは、それぞれ実施例1〜5及び比較例1と同様に単層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0135】
[実施例16〜20及び比較例3]
実施例16〜20及び比較例3では、電子写真感光体を製造する際に、表面に厚さ6μmのアルマイト層を形成した基体を用い、かつ、中間層を形成しなかったほかは、それぞれ実施例1〜5及び比較例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0136】
[実施例21〜25及び比較例4]
実施例21〜25及び比較例4では、中間層を形成する際に、結着樹脂として共重合ポリアミド樹脂(ダイセルデグサ(株)製、X1010)を用いるとともに、第二の酸化チタン微粒子(SMT02)の含有量を160重量部とし、第一の酸化チタン微粒子の含有量を40重量部とし、さらに、感光層の膜厚を28μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜5及び比較例1と同様に電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0137】
[実施例26〜30及び比較例5]
実施例26〜30及び比較例5では、感光層を形成する際に、感光層の膜厚を35μmとしたほかは、それぞれ実施例21〜25及び比較例4と同様に電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0138】
[実施例31〜35及び比較例6]
実施例31〜35及び比較例6では、感光層を形成する際に、感光層の膜厚を33μmとしたほかは、それぞれ実施例21〜25及び比較例4と同様に電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0139】
[実施例36〜40及び比較例7]
実施例36〜40及び比較例7では、感光層を形成する際に、感光層の膜厚を23μmとしたほかは、それぞれ実施例21〜25及び比較例4と同様に電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0140】
[比較例8]
比較例8では、中間層を設けず、かつ、感光層の膜厚を25μmとしたほかは、比較例7と同様に電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によれば、正帯電単層型電子写真感光体において、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン結晶を用いた場合であっても、添加剤として酸化防止剤を用い、かつ、電子写真感光体の正耐電圧を所定の範囲とすることにより、帯電電位を高く設定して耐久印字を行った際のリーク現象の発生及び帯電電位の低下を効果的に抑制できるようになった。
したがって、本発明にかかる正帯電単層型電子写真感光体、画像形成装置及び画像形成方法は、複写機やプリンター等の各種画像形成装置における高スピード化や、品質の安定化に著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0143】
1:カラー画像形成装置、72:現像手段、71:電子写真感光体、75:帯電手段、76:露光手段、16:転写手段、21:給紙カセット、4:定着手段、71:単層型潜像担持体、112:基体、114:単層型感光層、116:中間層、200:測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、感光層を有する正帯電単層型電子写真感光体であって、
前記感光層が、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を含むとともに、添加剤として、酸化防止剤を含み、かつ、
前記感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とし、さらに、
JIS C 2110に準拠して測定される正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧を7.5kV以上の値とすることを特徴とする正帯電単層型電子写真感光体。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤、あるいはいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【請求項3】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、下記式(1)で表わされる構造を含むことを特徴とする請求項2に記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【化1】

【請求項4】
前記アミン系酸化防止剤が、下記一般式(2)で表わされる構造を有することを特徴とする請求項2に記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【化2】


(一般式(2)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキル基部分の炭素数が1〜8であるアルキルアミノ基、またはアリール基部分の炭素数が6〜20であるアリールアミノ基であり、それぞれ隣り合う置換基同士が結合して、ナフタレン環を形成してもよい。)
【請求項5】
前記酸化防止剤の含有量を、前記感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【請求項6】
前記チタニルフタロシアニン結晶の含有量を、前記感光層の結着樹脂100重量部に対して、0.5〜8重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【請求項7】
前記基体上に、中間層を設けるとともに、当該中間層が、結着樹脂と、酸化チタン微粒子と、を含むとともに、当該酸化チタン微粒子の含有量を、前記結着樹脂100重量部に対して、50〜500重量部の範囲内の値とし、かつ、前記中間層の膜厚を0.3〜10μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【請求項8】
基体上に、感光層を有する正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置であって、
前記感光層が、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン結晶を含むとともに、添加剤として、酸化防止剤を含み、かつ、
前記感光層の膜厚を22〜40μmの範囲内の値とし、さらに、
JIS C 2110に準拠して測定される正帯電単層型電子写真感光体の正耐電圧を7.5kV以上の値とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記正帯電単層型電子写真感光体を露光させる際の単位面積当たりの露光量を0.2〜0.8μJ/cm2の範囲内の値とすることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記正帯電単層型電子写真感光体を帯電させる際の帯電電位を600〜1000Vの範囲内の値とすることを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の画像形成装置を用いた画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−134412(P2010−134412A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169168(P2009−169168)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】