説明

正極材料、これを用いたリチウムイオン二次電池、及び正極材料の製造方法

【課題】 リチウムイオン二次電池のレート特性及びサイクル特性を向上させることが可能な正極材料、これを含むリチウムイオン二次電池、及び正極材料の製造方法を得る。
【解決手段】 平均一次粒子径が0.3μm以上2.6μm以下であり且つ結晶子サイズが24nm以上33nm以下のリン酸バナジウムリチウム粒子が、リン酸バナジウムリチウム粒子全体に対して0.5質量%〜2.4質量%の範囲の導電性カーボンで被覆されていることを特徴とする正極材料、及びこの正極材料を含む正極を用いたリチウムイオン二次電池、及び正極材料の製造方法が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極材料、特にリン酸バナジウムリチウムを含む正極材料、これを用いたリチウムイオン二次電池、及び正極材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスは、近年、電気機器等の電源として使用されており、さらに、電気自動車(EV、HEV等)の電源としても使用されつつある。そして、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスは、その更なる特性向上、例えばエネルギー密度の向上(高容量化)、出力密度の向上(高出力化)やサイクル特性の向上(サイクル寿命の向上)、高い安全性等が望まれている。
【0003】
小型電気機器等に使用されているリチウムイオン二次電池の多くはLiCoO2や同様の結晶構造をもつLiCo1-x-y1x2y2等(M1、M2=金属元素)を正極活物質として用いたものであり、高容量、高寿命の蓄電デバイスを実現している。しかしながら、これらの正極活物質は、異常発生時の高温高電位状態等において、激しく電解液と反応し、酸素放出を伴って発熱し、最悪の場合、発火に至る場合がある等の問題がある。
【0004】
近年、高温高電位状態でも熱安定性に優れた正極活物質としてポリアニオン系正極材料、例えばオリビン型Fe(LiFePO4)や類似結晶構造を有するオリビン型Mn(LiMnPO4)等が検討され、一部、電動工具用途等で実用化に至っている。これらのポリアニオン系材料は強固な結晶構造を持ち、高温高電圧時にも酸素を放出しにくいという特徴がある。
【0005】
しかしながら、LiFePO4は、作動電圧がLi/Li+基準に対して3.3〜3.4Vであり、汎用電池に使用されている正極活物質の作動電圧に比べて低いため、エネルギー密度や出力密度の点で不十分である。また、LiMnPO4は、作動電圧がLi/Li+基準に対して4.1Vであり、160mAh/gの理論容量を有することから高エネルギー密度の電池が期待できるが、材料自身の抵抗が高く、エネルギー密度が上がりにくい。
【0006】
このため強固な結晶構造を持ち、更に作動電圧が高い正極材料の開発が望まれていた。
【0007】
最近では、強固な結晶構造を持つことにより熱安定性に優れ、かつ作動電圧の高い正極材料としてナシコン型リン酸バナジウムリチウム、すなわちLi32(PO43が注目されている(例えば、特許文献1)。本材料は3.8V(対Li+/Li電位)という高い電位を持ち、4.2V充電時に120〜130mAh/g、4.6V充電時に150〜180mAh/gという高いエネルギー密度を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2001−500665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示のLi32(PO43は、LiCoO2等と比較して電気伝導率が低いため、リチウムイオン二次電池のレート特性が不十分とされる傾向がある。
【0010】
従って、Li32(PO43を電極活物質として使用する場合には材料表面に導電助剤を多量に被覆する必要がある。
【0011】
導電助剤が多量に存在すると、電極中の活物質の存在割合が減少し、エネルギー密度が低下する。またLi32(PO43を繰り返し用いた場合にはサイクル特性が低下する問題がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、上述の従来の不具合を有さず、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度及び作動電圧の双方を高く維持しつつ、レート特性及びサイクル特性を向上させることが可能な正極材料を得ること、これを含むリチウムイオン二次電池、及び正極材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明者等は、平均一次粒子径が0.3μm以上2.6μm以下であり且つ結晶子サイズが24nm以上33nm以下のリン酸バナジウムリチウム粒子が、リン酸バナジウムリチウム粒子全体に対して0.5質量%〜2.4質量%の範囲の導電性カーボンで被覆されていることを特徴とする正極材料を見出した。
【0014】
本発明の正極材料をリチウムイオン二次電池の正極に適用すると、本来絶縁体としての性質を有するLVPに対して、導電性が付与されるため充放電効率に係るレート特性が向上するとともに、このリチウムイオン二次電池を繰り返し用いた場合にも容量維持率の低下が抑制される。
【0015】
更に、本発明の正極材料を用いると、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度及び作動電圧の双方を高く維持することができる。
【0016】
発明のリン酸バナジウムリチウムは、
Lix2-yy(PO4z
で表され、
Mが原子番号11以上の金属元素、例えばFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、Zrからなる群より選ばれる一種以上であり、かつ
1≦x≦3、
0≦y<2、
2≦z≦3
を満足する材料であることが好ましい。特に、Li32(PO43が好適に用いられる。
【0017】
上記Lix2-yy(PO4z、特にLi32(PO43は、強固な結晶構造を有するために、高温高電圧時にも酸素を放出しにくい。従って、酸素と電解質との副反応が生じにくく、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の劣化が生じにくい。
【0018】
また、リン酸バナジウムリチウム粒子の結晶化度が98%以上であると好ましい。これにより、LVPの結晶構造が強固なものとなり、酸素やバナジウムの溶出が回避されるため、サイクル特性が維持されて、容量低下が生じない。また、酸素やバナジウムの電解液への溶出が回避されれば電池の安全性も増大する。
【0019】
また、本発明では、上記正極材料を含む正極と、負極と、非水電解液と、を含むことを特徴とし、優れたレート特性及びサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池が得られる。
【0020】
更に、本発明の正極材料は、
水に水酸化リチウム、五酸化バナジウム、リン酸および導電性炭素又は導電性炭素前駆体を混合して60〜100℃で0.2時間以上撹拌し、沈殿反応性生物を含む反応液を得る工程と、
沈殿反応生成物を含む反応液をメディアミルで湿式粉砕する工程と、
前記湿式粉砕工程にて得られた粉砕処理品を含むスラリーを噴霧乾燥して反応前駆体を得る工程と、
導電性カーボンで被覆されたリン酸バナジウムリチウム粒子を600℃〜1300℃にて、2時間以上焼成する工程と、を含むことにより、製造される。
【0021】
これにより、平均一次粒子径が0.3μm以上2.6μm以下であり且つ結晶子サイズが24nm以上33nm以下のリン酸バナジウムリチウム粒子が、リン酸バナジウムリチウム粒子全体に対して0.5質量%〜2.4質量%の範囲の導電性カーボンで被覆され、好ましくはリン酸バナジウムリチウム粒子の結晶化度が98%以上の正極材料が容易かつ効率的に製造される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の正極材料は、平均一次粒子径が0.3μm以上2.6μm以下であり且つ結晶子サイズが24nm以上33nm以下のリン酸バナジウムリチウム粒子を、リン酸バナジウムリチウム粒子全体に対して0.5質量%〜2.4質量%の範囲の導電性カーボンで被覆したものである。この正極材料、乃至これを含むリチウムイオン二次電池は、レート特性及び複数サイクル使用後の容量維持率の向上に寄与する。
【0023】
この他、本発明の正極材料及びこれを含むリチウムイオン二次電池は、安全性に優れているとともに、本来大きなエネルギー密度を有し、出力密度が大きいという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の蓄電デバイス(リチウムイオン二次電池)の実施形態の一例を示す 概略断面図である。
【図2】本発明の蓄電デバイス(リチウムイオン二次電池)の実施形態の別の一例を 示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明では、リチウムイオン蓄電デバイス、特にリチウムイオン二次電池に使用可能な正極材料が得られる。
【0027】
[正極材料]
本発明では、リン酸バナジウムリチウム(LVP)の粒子を導電性カーボンで被覆して正極材料とする。正極活物質は導電性カーボンで被覆したリン酸バナジウムリチウムのみから構成されてもよいが、他の材料との混合物とすることも可能である。
【0028】
ただし、活物質(混合物)全体の質量に対して、LVPは10質量%以上含まれていると好ましく、20質量%以上含まれていると更に好ましい。
LVPは比較的エネルギー密度が大きいが、電気伝導性は低い。従って、迅速な充放電を可能とするために、LVPに対して導電性を付与することが必要であり、この目的で導電性カーボンがLVP表面に付与される。
【0029】
1.リン酸バナジウムリチウム(LVP)
本発明において、リン酸バナジウムリチウムとは、
Lix2-yy(PO4z
で表され、
Mが原子番号11以上の金属元素であり、例えば、Fe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、Zrからなる群より選ばれる一種以上であり、かつ
1≦x≦3、
0≦y<2、
2≦z≦3
を満足する材料を意味する。
【0030】
本発明では、LVPとして、ナシコン型(NASICON(ナトリウム・スーパーイオンコンダクター)型)のリン酸バナジウムリチウム、すなわちLi32(PO43が好ましく使用される。
【0031】
本発明において、LVPは、どのような方法で製造されても良く、製造法は特に制限されない。LVPは、通常、焼成物を粉砕等した粒子状の形態で得られる。
【0032】
本発明では、LVP粒子が球形又は略球形であると好ましく、平均一次粒子径は0.3μm以上2.6μm以下とされ、0.35μm〜2.0μmの範囲であると好ましく、0.5μm〜0.8μmの範囲であるとさらに好ましい。平均一次粒子径が0.3μm未満であると各粒子の電解液との接触面積が増大し過ぎることからLVPの安定性が低下する場合があり、平均一次粒子径が2.6μmを超過する場合には、反応性が不十分となる場合が生ずる。LVPの平均一次粒子径を上記の値とすることにより、活物質粒子の表面積が増大するため、電解液との接触面積が増え、電極反応が生じやすくなる。これによりリチウムイオン二次電池のレート特性が向上する。なお、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察し、任意に抽出した粒子200個の一次粒子径を測定し、得られる測定値を平均した値である。
【0033】
更に、LVPが上記値の平均一次粒子径としていることにより、LVP粒子の加熱状態が均一となり、結晶化度が上がり、異相の少ない結晶構造が得られる。
【0034】
また、LVPの結晶子サイズは24nm以上33nm以下とされ、26.5nm〜30nmの範囲であると好ましく26.5nm〜28.5nmの範囲であるとさらに好ましい。結晶子サイズが24nm未満または33nmを超えると出力および容量維持率が低下する。
【0035】
結晶化度は、LVPの製造原料や焼成条件によっても変化するが、98%以上であると、これを用いたリチウムイオン二次電池の容量特性及びサイクル特性が向上する。
【0036】
また、粒度はLVPの密度や塗料化等のプロセス性に影響するため、LVPの二次粒子の粒度分布におけるD50が0.5〜25μmであることが好ましい。
【0037】
上記D50が0.5μm未満の場合は、電解液との接触面積が増大し過ぎることからLVPの安定性が低下する場合があり、25μmを超える場合は反応効率低下のため出力が低下する場合がある。
【0038】
上記の範囲であれば、より安定性が高く高出力の蓄電デバイスとすることができる。LVPの二次粒子の粒度分布におけるD50は1〜10μmであることが更に好ましく、3〜5μmであることが特に好ましい。なお、この二次粒子の粒度分布におけるD50は、レーザー回折(光散乱法)方式による粒度分布測定装置を用いて測定した値とする。
【0039】
2.導電性カーボン
本発明において、LVPへの導電性カーボンの被覆は種々の方法で行うことができる。
LVPの合成後に導電性カーボン(例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック等のカーボンブラック、及びカーボンナノチューブ等)を被覆させる工程や、LVPの合成段階に導電性カーボン自体、或いは導電性カーボンの前駆体を混合する工程を採用することができる。
【0040】
正極被覆層の形成に用いる導電性カーボンの前駆体としては、例えばグルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロース等の糖類などの天然高分子が挙げられる。
【0041】
LVP粒子を、LVPの総質量に対して0.5質量%〜2.4質量%、好ましくは0.6質量%〜1.8質量%の範囲の導電性カーボンで被覆することにより、正極活物質として所望の電気伝導性を得ることができる。0.5質量%を下回る量では電気伝導性が不十分となり、2.4質量%を超過すると導電性カーボンによる副反応が大きくなり、信頼性が低下する。
【0042】
本発明では、LVPの平均一次粒子径を2.6μm以下とした上で、更に導電性カーボンの使用量を上述の通りに規定しているため、特に優れた電気化学特性および信頼性を有するLVPが得られる。
【0043】
[正極材料の製造方法]
本発明の正極材料は、従来のLVPが導電性カーボンに被覆された状態、好ましくは焼成等によりLVPが導電性カーボンの表面に吸着ないし一体化した状態の正極材料粒子であればよく、その製造方法には特に制限はない。
【0044】
しかしながら本発明では、以下の方法を用いることができる。
【0045】
まず、第一段階では、水に、水酸化リチウム、五酸化バナジウム、リン酸、および導電性炭素又は導電性炭素前駆体を混合して、60〜100℃で0.2時間以上撹拌し、沈殿反応生成物を含む反応液を得る。
【0046】
沈殿反応生成物を含む反応液をメディアミルで湿式粉砕する。粉砕処理は、粉砕処理品の平均粒子径がレーザー散乱・回折法で2μm以下、特に0.1μm〜2μm程度とすることで優れた反応性を有するLVP前駆体を得ることができ、電池特性のロット内バラつきを抑える観点から望ましい。
【0047】
次に、得られた粉砕処理品を含むスラリーを噴霧乾燥して反応前駆体を得る。
【0048】
次に、反応前駆体を焼結炉に導入し、600℃〜1300℃、好ましくは800〜1000℃にて、2時間以上焼成し、必要により粉砕処理する。これにより、平均一次粒子径2.6μm以下のLVP粒子が、LVP全体の質量に対して0.5質量%〜2.4質量%の範囲の導電性カーボンで被覆された正極材料が得られる。
【0049】
導電性カーボンの添加割合、反応前駆体の一次粒子径、並びに焼結の温度及び時間はLVP結晶の成長状態に影響を与えるので、注意が必要である。これらを適宜選択することにより、高結晶化度、特に好ましくは98%以上のLVPを得ることができる。
【0050】
なお、本発明において、LVPの粒径は、レーザー回折(光散乱法)方式による粒度分布測定装置(日機装製社製 形式9320−X100型)により、結晶化度および結晶子サイズはX線回折(XRD:X-ray Diffraction)装置(リガク社製RINT2000)により測定した値である。
【0051】
[正極]
本発明における正極は、上述の正極材料を含んでいれば良く、それ以外は公知の材料を用いて作製することができる。具体的には、以下のように作製することができる。
【0052】
上記正極材料、結合剤、及び必要に応じて導電助剤を含む混合物を溶媒に分散させた正極スラリーを、正極集電体上に塗布、乾燥を含む工程により正極合材層を形成する。乾燥工程後にプレス加圧等を行っても良い。これにより正極合材層が均一且つ強固に集電体に圧着される。正極合材層の厚みは10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0053】
正極合材層の形成に用いる結合剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、アクリル系バインダ、SBR等のゴム系バインダ、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、カルボキシメチルセルロース等が使用できる。結合剤は、本発明の蓄電デバイスに用いられる非水電解液に対して化学的、電気化学的に安定な含フッ素系樹脂、熱可塑性樹脂が好ましく、特に含フッ素系樹脂が好ましい。含フッ素系樹脂としてはポリフッ化ビニリデンの他、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体、エチレン−4フッ化エチレン共重合体及びプロピレン−4フッ化エチレン共重合体等が挙げられる。結合剤の配合量は、上記正極活物質に対して0.5〜20質量%が好ましい。
【0054】
本発明では正極活物質のLVP粒子を導電性カーボンで被覆しているため、正極材料と別に添加される導電助剤は少量とすることができ、場合によっては添加しないことも可能である。一般には、正極合剤中に、上述の導電性カーボン、及び銅、鉄、銀、ニッケル、パラジウム、金、白金、インジウム及びタングステン等の金属、酸化インジウム及び酸化スズ等の導電性金属酸化物等を、LVP粒子(これを被覆している導電性カーボンを含まない)に対して、0.1質量%〜10質量%の範囲で更に添加することにより、優れた導電性を得ることができる。
【0055】
正極合材層の形成に用いる溶媒としては、水、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が使用できる。
【0056】
正極集電体は正極合材層と接する面が導電性を示す導電性基体であれば良く、例えば、金属、導電性金属酸化物、導電性カーボン等の導電性材料で形成された導電性基体や、非導電性の基体本体を上記の導電性材料で被覆したものが使用できる。導電性材料としては、銅、金、アルミニウムもしくはそれらの合金又は導電性カーボンが好ましい。正極集電体は、上記材料のエキスパンドメタル、パンチングメタル、箔、網、発泡体等を用いることができる。多孔質体の場合の貫通孔の形状や個数等は特に制限はなく、リチウムイオンの移動を阻害しない範囲で適宜設定できる。
【0057】
また、本発明おいては、正極合材層の目付けを4mg/cm2以上、20mg/cm2以下とすることで、優れたサイクル特性を得ることができる。目付けが4mg/cm2未満または20mg/cm2を超えると、サイクル劣化が生じる。なお、目付けが大きいほど高容量が得られる。正極合材層の目付けは10mg/cm2以上、20mg/cm2以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう目付けとは正極集電体の一方の面側の正極合材層の目付けを意味する。正極合材層を正極集電体の両面に形成する場合には、一方の面および他方の面の正極合材層がそれぞれ上記範囲に含まれるよう形成される。
【0058】
また、本発明においては、正極合材層の空孔率を35%以上、65%以下とすることで、優れたサイクル特性を得ることができる。正極合材層の空孔率が35%未満ではサイクル劣化が生じる。正極合材層の空孔率が65%を超えても、優れたサイクル特性は維持できるが、容量や出力が低下するため好ましくない。正極合材層の空孔率は40%以上、60%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
また、本発明では種々のリチウムニッケル複合酸化物を用いることができる。リチウムニッケル複合酸化物のNi元素の構成比率はリチウムニッケル複合酸化物のプロトン吸着性に影響する。本発明においてNi元素は、リチウム原子1モルに対して0.3モル以上、0.8モル以下含まれていることが好ましく、0.5モル以上、0.8モル以下であるとさらに好ましい。Ni元素の構成比率が低すぎると、Li3V2(PO4)3からのバナジウムの溶出の抑制効果が十分に発揮されない場合がある。上記範囲内であれば、Ni元素の構成比率が高いほど、Li3V2(PO4)3からのバナジウム溶出の抑制効果が向上し、結果としてサイクル特性が向上する。
【0060】
[負極]
本発明において負極は、特に制限はなく、公知の材料を用いて作製することができる。
【0061】
例えば、一般に使用される負極活物質及び結合剤を含む混合物を溶媒に分散させた負極スラリーを、負極集電体上に塗布、乾燥等することにより負極合材層を形成する。なお、結合剤、溶媒及び集電体は上述の正極の場合と同様なものが使用できる。
【0062】
負極活物質としては、例えば、リチウム系金属材料、金属とリチウム金属との金属間化合物材料、リチウム化合物、又はリチウムインターカレーション炭素材料が挙げられる。
【0063】
リチウム系金属材料は、例えば金属リチウムやリチウム合金(例えば、Li−Al合金)である。金属とリチウム金属との金属間化合物材料は、例えば、スズ、ケイ素等を含む金属間化合物である。リチウム化合物は、例えば窒化リチウムである。
【0064】
また、リチウムインターカレーション炭素材料としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素材料等の炭素系材料、ポリアセン物質等が挙げられる。ポリアセン系物質は、例えばポリアセン系骨格を有する不溶且つ不融性のPAS等である。なお、これらのリチウムインターカレーション炭素材料は、いずれもリチウムイオンを可逆的にドープ可能な物質である。負極合材層の厚みは一般に10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0065】
また、本発明おいては、負極合材層の目付けは、正極合材層の目付けに合わせて適宜設計される。通常、リチウムイオン二次電池では、正負極の容量バランスやエネルギー密度の観点から正極と負極の容量(mAh)がおおよそ同じになるように設計される。よって、負極合材層の目付けは、負極活物質の種類や正極の容量等に基づいて設定される。
【0066】
[非水電解液]
本発明における非水電解液は、特に制限はなく、公知の材料を使用できる。例えば、高電圧でも電気分解を起こさないという点、リチウムイオンが安定に存在できるという点から、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用できる。
【0067】
電解質としては、例えば、CF3SO3Li、C49SO8Li、(CF3SO22NLi、(CF3SO23CLi、LiBF4、LiPF6、LiClO4等又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0068】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート、トリフルオロメチルプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4-メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオトリル等又はこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0069】
非水電解液中の電解質濃度は0.1〜5.0mol/Lが好ましく、0.5〜3.0mol/Lが更に好ましい。
【0070】
非水電解液は液状でも良く、可塑剤やポリマー等を混合し、固体電解質又はポリマーゲル電解質としたものでも良い。
【0071】
[セパレータ]
本発明で使用するセパレータは、特に制限はなく、公知のセパレータを使用できる。例えば、電解液、正極活物質、負極活物質に対して耐久性があり、連通気孔を有する電子伝導性の無い多孔質体等を好ましく使用できる。このような多孔質体として例えば、織布、不織布、合成樹脂性微多孔膜、ガラス繊維などが挙げられる。合成樹脂性の微多孔膜が好ましく用いられ、特にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好ましい。
【0072】
[蓄電デバイス]
本発明の蓄電デバイスとしては、上述の正極材料を含む正極と、負極と、非水電解液とを備えている。
【0073】
以下に本発明の蓄電デバイスの実施形態の一例として、リチウムイオン二次電池の例を、図面を参照しながら説明する。
【0074】
図1は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の実施形態の一例を示す概略断面図である。図示のように、リチウムイオン二次電池20は、正極21と、負極22とがセパレータ23を介して対向配置されている。
【0075】
正極21は、本発明の正極材料を含む正極合材層21aと、正極集電体21bとから構成されている。正極合材層21aは、正極集電体21bのセパレータ23側の面に形成されている。負極22は、負極合材層22aと、負極集電体22bとから構成されている。
【0076】
負極合材層22aは、負極集電体22bのセパレータ23側の面に形成されている。これら正極21、負極22、セパレータ23は、図示しない外装容器に封入されており、外装容器内には非水電解液が充填されている。外装材としては例えば電池缶やラミネートフィルム等が挙げられる。また、正極集電体21bと負極集電体22bとには、必要に応じて、それぞれ外部端子接続用の図示しないリードが接続されている。
【0077】
次に、図2は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の実施形態の別の一例を示す概略断面図である。図示のように、リチウムイオン二次電池30は、正極31と負極32とが、セパレータ33を介して交互に複数積層された電極ユニット34を備えている。正極31は、正極合材層31aが、正極集電体31bの両面に設けられて構成されている。負極32は、負極合材層32aが負極集電体32bの両面に設けられて構成されている(ただし、最上部および最下部の負極32については、負極合材層32aは片面のみ)。
【0078】
また、正極集電体31bは図示しないが突出部分を有しており、複数の正極集電体31bの各突出部分はそれぞれ重ね合わされ、その重ね合わされた部分にリード36が溶接されている。負極集電体32bも同様に突出部分を有しており、複数の負極集電体32bの各突出部分が重ね合わされた部分にリード37が溶接されている。リチウムイオン二次電池30は、図示しないラミネートフィルム等の外装容器内に電極ユニット34と非水電解液が封入されて構成されている。リード36,37は外部機器との接続のため、外装容器の外部に露出される。
【0079】
なお、リチウムイオン二次電池30は、外装容器内に、正極、負極、又は正負極双方にリチウムイオンをプレドープする為のリチウム極を備えていてもよい。その場合には、リチウムイオンが移動し易くするため、正極集電体31bや負極集電体32bに電極ユニット34の積層方向に貫通する貫通孔が設けられる。
【0080】
また、リチウムイオン二次電池30は、最上部および最下部に負極を配置させたが、これに限定されず、最上部および最下部に正極を配置させる構成でもよい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
正極の作製
(1−1)正極材料の調製
水2lに、85%リン酸605gと水酸化リチウム220gと五酸化バナジウム320gとスクロース170gを加え、95℃で1時間撹拌した。反応液中の沈殿生成物を湿式粉砕装置により平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕処理を行った。
【0083】
反応溶液を噴霧乾燥装置によって乾燥し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体を窒素雰囲気下で900℃で12時間焼成した。焼成炉から取り出し、室温まで放冷し、粉砕処理した。粉砕処理後の、導電性カーボンにより被覆されたLi32(PO43(以下、C−LVPともいう)におけるLVPの一次粒子径を測定した。LVPの一次粒子径の測定には、SEM(日立ハイテクノロジーズ社製S−4800型走査電子顕微鏡)を用い、任意に抽出した粒子200個の一次粒子径から平均一次粒子径を求めた。LVPの平均一次粒子径は0.35μmであった。
【0084】
なお、沈殿生成物の平均粒子径(D50)はレーザー回折(光散乱法)方式による粒度分布測定装置(日機装製社製形式9320−X100型)を用いて測定した。
【0085】
次に、X線回折装置(リガク社製RINT2000)によりLVPの結晶を解析し、結晶化度を算出したところ、99.8%であった。
【0086】
なお、結晶化度の算出は、2θ=22°〜27°における結晶相(LVP)のピークと非晶質相からのハローの分離を行い、下記の式より算出した。
結晶化度=C/(C+A)
[C:結晶相からの散乱強度、A:非晶質相からの散乱強度]
【0087】
更に、C-LVPにおけるLVPの質量及びカーボン被覆量をTOC全有機炭素計(島津製作所製TOC−5000A)により測定したところ、LVPの総質量を基準としたカーボン質量は1.7%(平均値)であった。
【0088】
さらに、LVPの結晶子サイズを測定した。LVPの結晶子サイズの測定には、X線回折装置(リガク社製RINT2000)を用い、20<2θ<21に存在する回折ピークを用いて結晶子サイズを算出した。LVPの結晶子サイズは24nmであった。
【0089】
なお、結晶子サイズは、上記回折ピークの半値幅を測定し、下記のScherrerの式により算出した。
D=K×λ/(β×cosθ)・・・Scherrerの式
[D:結晶子径(nm)、λ:測定X線波長(nm)、β:結晶の大きさによる回折線の広がり(ラジアン)、θ:回折線のブラッグ角(ラジアン)、K:定数(βとDの定数で異なる)]
【0090】
(1−2)正極合剤
以下の材料を混合して正極合剤スラリーを得た。
C-LVP ; 90質量部
結合剤(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)) ; 5質量部
導電助剤(カーボンブラック) ; 5質量部
溶媒(N−メチル2−ピロリドン(NMP)) ;100質量部
【0091】
正極スラリーをアルミニウム箔(厚み30μm)の正極集電体に塗布、乾燥し、正極合材層を正極集電体上に形成した。正極合材層の目付けは(片面当たり)15mg/cm2であった。
【0092】
(2)負極の作製
以下の負極合材層用材料を混合して、負極合剤スラリーを得た。
活物質(グラファイト) ; 95質量部
結合剤(PVdF) ; 5質量部
溶媒(NMP) ;150質量部
【0093】
負極スラリーを銅箔(厚み10μm)の負極集電体に塗布、乾燥し、負極合材層を負極集電体上に形成した。負極合材層の目付けは(片面当たり)7mg/cm2であった。
【0094】
(3)電解液の作成
エチレンカーボネート(EC)を28.2質量%と、エチルメチルカーボネート(EMC)を27.9質量%と、とジメチルカーボネート(DMC)を30.5質量%と、6フッ化リン酸リチウム(Li-PF6)を12.4質量%の割合で混合し、非水電解液を製造した。
【0095】
(4)リチウムイオン二次電池の作製
上述のように作製した正極9枚と、負極10枚とを用いて、図2の実施形態で示したようなリチウムイオン二次電池を作製した。具体的には、正極及び負極を、ポリエチレンセパレータを介して積層し、得られた積層形スタックの周囲をテープで固定した。積層形スタックの正極側にアルミニウム金属タブを、負極側に銅タブを溶接し、各正極集電体のタブを重ねてアルミニウム金属リードを溶接した。同様に各負極集電体のタブを重ねてニッケル金属リードを溶接した。これを104mm×140mm×10mmのアルミラミネート外装材に封入し、正極リードと負極リードを外装材外側に出して、電解液封入口を残して密閉融着した。電解液封入口より上記非水電解液を注液し、真空含浸にて電極内部に電解液を浸透させた後、ラミネートを真空封止した。
【0096】
(実施例2〜4、比較例1、2)
実施例1の正極材料の調製において、沈殿生成物を湿式粉砕装置により平均粒子径が1.5μm(実施例2)、2μm(実施例3)、3μm(実施例4)、5μm(比較例1)、10μm(比較例2)になるまで粉砕処理を行った以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0097】
(実施例5〜8、比較例3〜5)
実施例1の正極材料の調整において、スクロースの添加量を、30g(比較例3)、50g(実施例5)、70g(実施例6)、100g(実施例7)、240g(実施例8)、260g(比較例4)、300g(比較例5)に変更した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0098】
(実施例9)
実施例1の(1−2)正極合剤と、(4)リチウムイオン二次電池の作製を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
(1−2)正極合剤
以下の材料を混合して正極合剤スラリーを得た。
C-LVP ; 30質量部
NCA(JFEミネラル製NCA503H) ; 60質量部
結合剤(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)) ; 5質量部
導電助剤(カーボンブラック) ; 5質量部
溶媒(N−メチル2−ピロリドン(NMP)) ;100質量部
【0099】
正極スラリーをアルミニウム箔(厚み30μm)の正極集電体に塗布、乾燥し、正極合材層を正極集電体上に形成した。正極合材層の目付けは(片面当たり)15mg/cm2であった。
【0100】
(4)リチウムイオン二次電池の作製
上述のように作製した正極2枚と、負極2枚とを用いて、図2の実施形態で示したようなリチウムイオン二次電池を作製した。具体的には、正極及び負極を、ポリエチレンセパレータを介して積層し、得られた積層形スタックの周囲をテープで固定した。積層形スタックの正極側にアルミニウム金属タブを、負極側に銅タブを溶接し、各正極集電体のタブを重ねてアルミニウム金属リードを溶接した。同様に各負極集電体のタブを重ねてニッケル金属リードを溶接した。これを60mm×80mm×1mmのアルミラミネート外装材に封入し、正極リードと負極リードを外装材外側に出して、電解液封入口を残して密閉融着した。電解液封入口より上記非水電解液を注液し、真空含浸にて電極内部に電解液を浸透させた後、ラミネートを真空封止した。
【0101】
(実施例10〜14、比較例6,7)
実施例9の正極材料の調製において、沈殿生成物を湿式粉砕装置により平均粒子径が0.7μm(比較例6)、1.5μm(実施例10)、2μm(実施例11)、2.3μm(実施例12)、2.7μm(実施例13)、3μm(実施例14)、5μm(比較例7)になるまで粉砕処理を行った以外は実施例9と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0102】
測定した平均一次粒子径、カーボン被覆量、結晶化度、結晶子サイズについて表1,2に示す。
【0103】
各電池の性能を評価するために以下の試験を行った。
【0104】
(5)充放電試験
(5−1)容量維持率の測定
【0105】
上述のように作製した電池の正極リードと負極リードとを、充放電試験装置(富士通アクセス社製)の対応する端子に接続した。この電池を、充電電流レートを1C、充電電圧を4.2Vとして2.0時間定電流定電圧充電し、放電電流レートを0.5C、放電終止電圧を2.5Vとして放電する、サイクル試験を1000サイクル行った。
【0106】
1000サイクル後の容量維持率を下式により求めた。
容量維持率(%)=1000サイクル目の放電容量(Ah)/1サイクル目の放電容量(Ah)×100
【0107】
結果を表1及び表2に示す
【0108】
(5−2)高負荷放電比率の測定
上記と同様に、電池を充放電試験装置に接続し、充電電流レートを1C、充電電圧を4.2Vとして2.0時間定電流定電圧充電し、放電電流レートを0.2C、放電終止電圧を2.5Vとして放電する試験を行い、放電容量(Ah)を求めた。
【0109】
次いで、充電電流レートを1C、充電電圧を4.2Vとして2.0時間定電流定電圧充電し、放電電流レートを5.0C、放電終止電圧を2.5Vとして放電する試験を行い、放電容量(Ah)を求めた。
【0110】
下式により、各放電容量から高負荷放電比率(%)を求めた。
高負荷放電比率(%)=放電電流レート5.0Cにおける放電容量(Ah)/放電電流レート0.2Cにおける放電容量(Ah)
結果を表1に示す。
【0111】
なお、上記の充電及び放電電流レート(C)は以下の式で示される。
電流レート(C)=電流値(A)/電池電流容量(Ah)
すなわち、例えば1Cとは公称容量値の電流容量を有する電池を定電流放電して、ちょうど1時間で放電終了となる電流値、0.25Cは公称容量値の容量を有する電池が4時間で放電終了となる電流値を意味する。
【0112】
(5−3)出力の測定
上記と同様に、電池を充放電試験装置に接続し、充電電流レートを1Cとして電池容量の半分まで充電した。充電後、電流レートを0.5C、1C、2C、3Cとしてそれぞれ10秒間の放電を行い、各電流レートでの放電における10秒目の電圧を測定した。
測定した電圧を各電流レートに相当する電流値に対してプロットし、近似直線式を求める。下限電位である2.5Vを近似式に代入して10秒間で下限電位に至る最大の電流値を求める。求めた電流値と下限電位の積を出力特性とした。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
リチウムイオン二次電池は、従来からの安全性や高容量化の要求の他に、更にレート特性及びサイクル特性を兼ね備える必要がある。
【0116】
上記実験結果より、本発明の正極材料を用いたリチウムイオン二次電池は、LVP独自の安全性、高エネルギー密度に加えて、サイクル特性、及びレート特性(負荷放電比率)の双方が優れていることがわかる。
【0117】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0118】
20、30 リチウムイオン二次電池
21、31 正極
21a、31a 正極合材層
21b、31b 正極集電体
22、32 負極
22a、32a 負極合材層
22b、32b 負極集電体
23、33 セパレータ
34 電極ユニット
36、37 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が0.3μm以上2.6μm以下であり且つ結晶子サイズが24nm以上33nm以下のリン酸バナジウムリチウム粒子が、当該リン酸バナジウムリチウム粒子全体に対して0.5質量%〜2.4質量%の範囲の導電性カーボンで被覆されていることを特徴とする正極材料。
【請求項2】
リン酸バナジウムリチウムが、
Lix2-yy(PO4z
で表され、
MがFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、Zrからなる群より選ばれる一種以上であり、かつ
1≦x≦3、
0≦y<2、
2≦z≦3
を満足する材料であることを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記リン酸バナジウムリチウムが、Li32(PO43であることを特徴とする請求項1又は2に記載の正極材料。
【請求項4】
リン酸バナジウムリチウム粒子の結晶化度が98%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の正極材料を含む正極と、負極と、非水電解液と、を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
水に水酸化リチウム、五酸化バナジウム、リン酸、および、導電性炭素又は導電性炭素の前駆体を混合して60〜100℃で0.2時間以上撹拌し、沈殿反応生成物を含む反応液を得る工程と、
沈殿反応生成物を含む反応液をメディアミルで湿式粉砕する工程と、
前記湿式粉砕工程にて得られた粉砕処理品を含むスラリーを噴霧乾燥して反応前駆体を得る工程と、
導電性カーボンで被覆されたリン酸バナジウムリチウム粒子を600℃〜1300℃にて、2時間以上焼成する工程と、を含むことにより、
平均一次粒子径が0.3μm以上2.6μm以下であり且つ結晶子サイズが24nm以上33nm以下のリン酸バナジウムリチウム粒子が、リン酸バナジウムリチウム粒子全体に対して0.5質量%〜2.4質量%の範囲の導電性カーボンで被覆された正極材料を製造する方法。
【請求項7】
リン酸バナジウムリチウム粒子の結晶化度が98%以上であることを特徴とする請求項6に記載の正極材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84565(P2013−84565A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153214(P2012−153214)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】