説明

正確な塗装ラインを生成するためのマスキング物品及びマスキング物品の塗装ライン性能を改善する方法

保護された加工面に隣接する表面に塗布されたコーティングから、保護された加工面を遮蔽するための粘着性マスキング物品は、第1及び第2の対向する主表面と、少なくとも1つの縁部とを有する裏材層と;第1及び第2の裏材層の対向する主表面の少なくとも1つの少なくとも一部分の上の接着剤と;コーティングが裏材層の縁部と接触するとコーティングと接触し、それによって、コーティングがマスキング物品の縁部を越えてマスキング物品の下に移動するのを妨げる障壁をマスキング物品の縁部に沿って形成させる、マスキング物品の少なくともの縁部表面上の障壁誘発処理剤と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、マスキングテープなどのマスキング物品に関し、より詳細には、正確な塗装ラインを生成するマスキング物品に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に塗料又は染色などの表面コーティングを塗布する場合、塗装される表面に隣接した表面上に塗料がつかないように注意を払われなければならない。これは、表面を注意深く塗装することにより、あるいは塗装されるべき表面の周囲の領域を遮蔽することにより達成できる。マスキングテープ及び粘着マスキングシートなどのマスキング物品は、塗装される表面に隣接する領域を保護するために頻繁に使用される。そのようなマスキング物品を使用する場合、マスキング物品の縁部によって画定された境界線を越えて塗装が滲み出さないのが、一般的に望ましい。このようにして、マスキング物品は、滑らかで一貫しており、かつユーザーが意図する線と正確に一致する塗装ラインを、塗面と裸面との間に生成する。例えば、このようなマスキング物品が表面にいかにうまく適用されるか、表面のエネルギー、及びこのようなマスキング物品が適用される表面の材質といった多くの要因によっては、塗料は、マスキング物品の縁部を越えて、及びマスキング物品の特定領域の下に流れ、それによって、不正確な塗装ラインを生成する可能性がある。
【0003】
材料のマスキング性能を改善するための端部コーティング(edge coating)を有する粘着テープ及びマスキング材料は、従来技術において既知である。米国特許第6,828,008号(Gruber)は、例えば、マスキングテープ及びその他のマスキング材料のための吸収性の端部コーティングを開示している。このマスキングテープは、上面と、底面と、少なくとも1つのマスキング端部とを有する基材を含む。基材の底面は、この底面に適用される粘着層を有する。吸収性の端部コーティングは、基材の少なくとも1つのマスキング端部に適用されて、少なくとも1つの被覆されたマスキング端部に塗布される液体が、テープの基材に吸収されることや、テープの底面とテープが貼付される面との間を通過することを少なくとも実質的に防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスキング物品の縁部を越えて塗料が移動するのを妨げるマスキング物品を開発しようという以前の試みは、多くの不利益及び欠点に悩まされている。例えば、既知の粘着性マスキング物品は、製造プロセスの間にマスキング物品に適用するのが困難である成分、その有効性を維持するために過剰な包装を必要とする場合がある成分、摂取すると有害である可能性がある成分、及び/又は皮膚、目、及び鼻のかぶれを引き起こす場合がある成分(これは注意書き及び/又は特別な取扱上の注意事項を必要とし得る)、あるいはマスキング物品と塗装との境界面、若しくは塗装される表面上のいずれかにおいて意図せぬ効果及び望ましくない効果を出現させる場合がある成分、の使用を含む場合がある。
【0005】
より具体的には、既知のマスキング物品は、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸水性ポリマー(SAP)を含み得る。しかしながら、高吸水性ポリマーは、1つにはその不溶性の粒子特性に起因して、既存のテープ製造プロセスに組み入れるのが難しい。例えば、かかる高吸水性ポリマーは乾燥粉末として提供されてもよいが、この乾燥粉末は、製造中にマスキング物品に塗布されるには特別な装置を必要とし、あるいは、かかる高吸水性ポリマーは液体として提供されてもよいが、この液体は、超吸収層を形成するために、マスキング物品に塗布された後、追加加工工程において引き続き乾燥されなければならない。高吸水性ポリマーを含むマスキング物品はまた、高吸水性樹脂の吸収力を妨げ、ひいてはかかる材料の有効性を妨げる水分への暴露から高吸水性樹脂を保護するために、特殊で高価な包装を必要とする。即ち、もしマスキング物品がその保護包装の中に一貫して保たれないのであれば、マスキング物品は、周囲湿度への暴露が原因で使い物にならない可能性がある。SAPは刺激物でもあり得る。その結果、SAPを含むマスキング物品のユーザーは、SAPに暴露された皮膚を洗浄しなければならず、また、この物質が目又は鼻に入らないように注意しなければならない。
【0006】
更に、高吸水性ポリマーの吸収力が原因で、高吸水性ポリマーを含むマスキング物品を塗装マスキング用途で使用する場合、塗装の望ましくない隆起した領域、つまり隆起部が、マスキング物品の縁部に沿って形成されることがよくある。隆起領域は、一般に、乾燥させるのに時間がかかり、したがって、完全に乾燥する前に損傷をより受けやすい。更に、遊離した又は余分なSAPは、塗装されるべき表面に落ちる可能性がある。その結果、塗装される表面上のSAPは、この表面への塗料の塗布を妨げる可能性がある(即ち、見苦しいしみのような外観を塗装に形成する可能性がある)。
【0007】
当該分野の限界に対処する粘着性マスキング物品の必要性が存在する。より詳細には、製造が容易であり、特殊な包装を必要とせず、安全で使用しやすく、かつ、はっきりしており、鮮明で、正確で、滑らかで、均一なラインを生成する粘着性マスキング物品の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
塗装ラインを説明するのに使用される場合、用語「はっきり」、「鮮明」、「正確」、「滑らか」及び「均一」とは、一般に、マスキング物品の縁部に一致する塗装ラインを指す。即ち、はっきりした、鮮明、正確、滑らか、又は均一な塗装ラインは、塗料がマスキング物品の縁部を著しく越えて広がってマスキング物品の下に浸透しないラインである。したがって、マスキング物品が真っすぐに置かれると、「はっきりした」、「鮮明」、「滑らか」、又は「均一」な塗装ラインは、物品の下への塗料の染み出しが最小限又は皆無な状態で真っすぐとなる(即ち、マスキング物品とマスク面との間に塗料の流出がほとんどない)。
【0009】
ロールが置かれることがある表面に付着しない、ないしは別の方法で損傷を与えない改善された塗装ライン性能を有する、ロール形態のマスキング物品の必要性もまた存在する。即ち、テープ裏材、及びテープ縁部によって画定されるロールの側面の両方を含むテープロールの露出した外表面は、テープのロールが置かれる場合があるあらゆる面に損傷を与えるべきではない。
【0010】
一実施形態では、本開示は、保護された加工面に隣接する表面に塗布されたコーティングから、保護された加工面を遮蔽するための粘着性マスキング物品を提供し、この粘着性マスキング物品は、第1及び第2の対向する主表面と、少なくとも1つの縁部とを有する裏材層と;第1及び第2の裏材層の対向する主表面の少なくとも1つの少なくとも一部分の上の接着剤と;マスキング物品の少なくとも縁部に存在して、コーティングが裏材層の縁部と接触するとコーティングと接触する水溶性カチオン性化合物を含む障壁誘発処理剤と、を含む。
【0011】
別の実施形態では、本開示は、保護された加工面に隣接する表面に塗布されたコーティングから、保護された加工面を遮蔽するための粘着性マスキング物品を提供し、該粘着性マスキング物品は、第1及び第2の対向する主表面と、少なくとも1つの縁部とを有する裏材層と;第1及び第2の裏材層の対向する主表面の少なくとも1つの少なくとも一部分の上の接着剤と;マスキング物品の少なくとも縁部に存在して、コーティングが裏材層の縁部と接触するとコーティングと接触するポリカチオン性障壁誘発処理剤と、を含む。
【0012】
他の態様では、障壁誘発化合物は、23℃で少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、又は20グラム/100グラム脱イオン水の水に対する溶解度を有してもよく、障壁誘発処理剤は、2個のアミン基、少なくとも原子価2を有する金属カチオン、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを有するカチオン性化合物を含んでもよく、カチオン性物質は、少なくとも約40g/当量、及び約1000g/当量以下のアミン当量を有してもよく、カチオン性化合物は多価金属カチオンを含んでもよく、障壁誘発化合物は、カチオン性ポリマー及びカチオン性オリゴマーの少なくとも1つを含んでもよく、並びに/又はカチオン性ポリマーは有機ポリマーを含んでもよい。
【0013】
他の態様では、ポリカチオン性障壁誘発処理剤は、ビニルモノマーから誘導される架橋有機ポリカチオン性ポリマーを含んでもよく、ポリカチオン性ポリマーは、ポリクアテルニウム−6及びポリクアテルニウム−37の少なくとも1つを含んでもよく、ポリカチオン性ポリマーは、ポリ第四級アミンポリマー、多官能性プロトン化一級、二級、若しくは三級アミン、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよく、ポリカチオン性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩)、アミン官能性アクリルモノマーのプロトン化又は四級化されたホモポリマー又はコポリマー、及びプロトン化ポリエチレンイミンのうちの少なくとも1つを含んでもよく、並びに/あるいはアミン官能性アクリルモノは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドのうちの少なくとも1つを含んでもよく、アクリルモノマーは、ジアリルジメチルアンモニウム塩、メタクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、四級化ジアルキルアミノアルキルアクリルアミジンアンモニウム塩、トリアルキルアミノアルキルアクリレート及びメタクリレート塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩(例えば、ジメチルジアリルアンモニウム塩)、アクリルアミドアルキルトリアルキル塩、メタクリルアミドアルキルトリアルキル塩、並びにアルキルイミダゾリウム塩から選択されてもよい。
【0014】
更なる態様では、障壁誘発処理剤は無機化合物を含んでもよく、無機化合物は多価金属化合物を含んでもよく、多価金属化合物は金属塩を含んでもよく、並びに/又は金属塩は、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、クロム、コバルト、チタン、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、マンガン、ストロンチウム、イットリウム、ランタン、ポリアルミニウムハロゲン化物、塩基性硝酸アルミニウム、加水分解アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジルコニル塩、チタニル塩、及びこれらの組み合わせの可溶性塩を含んでもよい。
【0015】
更に他の態様では、障壁誘発処理剤は、実質的に裏材層の縁部のみにコーティングとして提供されてもよく、コーティングは、少なくとも約0.15mg/cmの乾燥重量を有してもよく、第1の主表面は接着剤を含まなくてもよく、障壁誘発処理剤は第1の主表面にコーティングとして提供されてもよく、障壁誘発処理剤は接着剤の中に提供されてもよく、障壁誘発処理剤は接着剤の上にコーティングとして提供されてもよく、障壁誘発処理剤は保湿剤を更に含んでもよく、及び/又は、障壁誘発処理剤は界面活性剤を更に含んでもよい。
【0016】
保湿剤は、ポリヒドロキシ化合物又は塩の少なくとも1つを含んでもよく、ポリヒドロキシ化合物は、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、パントテノール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、スクロース、グルコース、グルコン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、カチオン性ポリヒドロキシ化合物、有機塩、無機塩、及びこれらの組み合わせの群から選択されてもよく、並びに/又は保湿剤は、約2000未満の分子量を有する有機化合物塩、及び無機塩の少なくとも1つから選択されてもよい。
【0017】
他の態様では、コーティングは水性懸濁液であってもよく、障壁誘発処理剤は、懸濁液を分離させかつ均一性を低くするのに十分な量で存在してもよく、懸濁液はコロイド分散体であってもよく、障壁誘発処理剤は、コロイド分散体を凝固させるのに十分な量で存在してもよく、コロイド分散体はアニオンで安定化されてもよく、障壁誘発処理剤は、平均で1分子当たり少なくとも2個のアミン基を有してもよく、及び/又はコーティングは電荷で安定化させたコロイド粒子を有してもよく、並びに障壁誘発処理剤はコロイド粒子の電荷と反対の電荷を有してもよい。
【0018】
別の態様によると、本開示は、コーティングから遮蔽される表面のマスク領域と、コーティングが塗布される表面のマスクされていない領域との間に滑らかで正確な境界を形成する方法を提供し、該方法は、上記マスキング物品を表面のマスク領域に付着する工程と、表面のマスクされていない領域及びマスキング物品の少なくとも縁部にコーティングを塗布する工程と、コーティングを少なくとも部分的に乾燥させる工程と、表面からマスキング物品を除去する工程とを含む。
【0019】
別の実施形態では、本開示は、水性塗料と共に使用するためのマスキングテープのロールを提供し、ロールは、テープの対応する側縁部によって画定される対向する側面を有し、これら側縁部の少なくとも1つは障壁誘発処理剤を含み、障壁誘発処理剤は、塗料が障壁誘発処理剤と接触すると水性塗料の分離を誘発し、それによって、テープが表面に適用されたときに塗料がマスキングテープの縁部を越えて移動するのを軽減する。
【0020】
他の態様では、障壁誘発処理剤は水溶性の障壁誘発化合物を含んでもよく、障壁誘発処理剤はカチオン性であってもよく、障壁誘発処理剤はポリカチオン性であってもよく、障壁誘発処理剤は、電荷で安定化させた均一に分散された混合物を、均一性の低い分散混合物となるようにしてもよく、及び/又は電荷で安定化させた均一に分散された混合物は、アニオン電荷で安定化させたラテックスエマルションであってもよい。
【0021】
特定の実施形態では、本開示は、保護された加工面を、アニオン性の電荷で安定化させたコロイド分散体から遮蔽するためのマスキングテープを提供し、テープは、第1及び第2の対向する主表面と少なくとも1つの縁部とを有するクレープ紙の裏材層と、裏材層の第2の主表面上の感圧性接着剤と、裏材層の縁部のカチオン性物質とを含み、カチオン性物質は、少なくとも約40g/当量及び約1000g/当量以下のアミン当量を有する有機化合物、及び多価金属カチオンの少なくとも1つを含み、更に、カチオン性物質は、23℃で少なくとも約0.1g/100g水の水溶解度を有し、それによって、アニオン性の電荷で安定化させたコロイド分散体が水溶性カチオン性物質と接触すると、アニオン電荷で安定化させたコロイド分散体は均一性が低くなり、それによって、塗料がマスキングテープと保護された加工表面との間の領域に移動するのを妨げる障壁を形成する。
【0022】
別の実施形態では、本開示は、マスキング物品に関して使用する、カチオン性障壁誘発化合物を含む障壁誘発処理剤配合物を提供する。種々の態様では、障壁誘発処理剤配合物は保湿剤を更に含んでもよく、及び/又は界面活性剤を更に含んでもよい。一態様では、障壁誘発化合物は、障壁誘発処理剤の総乾燥重量の約25%〜約75%を構成してもよく、保湿剤は、障壁誘発処理剤の総乾燥重量の約25%〜約75%を構成してもよく、界面活性剤は、障壁誘発処理剤の総乾燥重量の約0%〜約10%を構成してもよい。別の態様では、障壁誘発化合物は、障壁誘発処理剤の総湿重量の約1%〜約10%を構成してもよく、保湿剤は、障壁誘発処理剤の総湿重量の約1%〜約10%を構成してもよく、界面活性剤は、障壁誘発処理剤の総湿重量の約1%以下を構成してもよい。他のより具体的な態様では、障壁誘発化合物は水溶性のカチオン性ホモポリマーを含んでもよく、保湿剤はグリセリンを含んでもよく、及び/又は界面活性剤はエトキシ化アセチレンジオールを含んでもよい。
【0023】
別の態様では、本開示は、マスキングテープの縁部に水溶性のカチオン性物質を提供する工程を含む、マスキングテープの塗装ライン性能を改善する方法と、マスキングテープの縁部にポリカチオン性物質を提供する工程を含む、マスキングテープの塗装ライン性能を改善する方法と、縁部を有する粘着性マスキング物品の塗装ライン性能を改善する方法と、マスキング物品の縁部に水溶性の障壁誘発化合物を提供する工程を含む方法と、を提供し、水溶性の障壁誘発処理剤を含む処理されたマスキング物品の縁部は、マスキング物品が障壁誘発処理剤で処理される前に生成するものよりも中心線を中心とした変動性が低い塗装ラインを生成する。
【0024】
他の態様では、水溶性の障壁誘発処理剤はカチオン性であってもよく、及び/又はマスキング物品の縁部に水溶性の障壁誘発処理剤を提供する工程は、マスキング材料の縁部に水溶性のカチオン性物質を適用することを含んでもよい。
【0025】
別の実施形態では、本開示は、縁部を有する粘着性マスキング物品の塗装ライン性能を改善する方法を提供し、該方法は、マスキング物品の縁部にポリカチオン性障壁誘発処理剤を提供する工程を含み、ポリカチオン性障壁誘発処理剤を含むマスキング物品の縁部は、マスキング物品が障壁誘発処理剤で処理される前に生成するものよりも中心線を中心とした変動性が低い塗装ラインを生成する。他のより具体的な態様では、ポリカチオン性障壁誘発処理剤は水溶性の障壁誘発化合物を含んでもよく、及び/又はマスキング物品の縁部にポリカチオン性障壁誘発処理剤を提供する工程は、マスキング材料の縁部にポリカチオン性物質を適用することを含んでもよい。
【0026】
更に別の態様では、本開示は、保護された加工面に隣接する表面に塗布されたコーティングから、保護された加工面を遮蔽する方法を提供し、該方法は、保護されるべき加工面にマスキング物品を適用する工程と、ここで、マスキング物品は、第1及び第2の対向する主表面と少なくとも1つの縁部とを有する裏材層と、第1及び第2の裏材層の対向する主表面の少なくとも1つの少なくとも一部分の上の接着剤と、を含む;マスキング物品によって保護される加工面にコーティングを塗布する工程と;を含み、コーティングは電荷で安定化させた粒子を含み、マスキング物品は、マスキング物品の少なくとも縁部に存在して、コーティングが裏材層の縁部と接触するとコーティングと接触する水溶性の障壁誘発処理剤を含み、障壁誘発処理剤は電荷で安定化させた粒子と反対の電荷を有する。一実施形態では、コーティング中の電荷で安定化させた粒子の電荷はアニオン性であってもよく、障壁誘発処理剤の電荷はカチオン性であってもよい。
【0027】
更に他の態様では、本開示は、切断刃を障壁誘発処理剤でコーティングする工程と、マスキングテープの未処理のロールをこの切断刃で切断する工程と、それによって、テープの切断されたロールの縁部に障壁誘発処理剤を適用する工程と、を含む、テープの塗装ライン性能を改善するためにテープの縁部に適用された障壁誘発処理剤を有するマスキングテープのロールの形成方法;マスキングテープの完成したロールの少なくとも1つの側面に、障壁誘発処理剤を含有する液体組成物を適用する工程を含む、テープの塗装ライン性能を改善するためにテープの縁部に適用された障壁誘発処理剤を有するマスキングテープのロールの形成方法;及び/又はマスキングテープのロールの少なくとも1つの側面に、障壁誘発処理剤を含む組成物を蒸着させる工程を含む、テープの塗装ライン性能を改善するためにテープの縁部に適用された障壁誘発処理剤を有するマスキングテープのロールの形成方法、を提供する。他のより具体的な態様では、蒸着工程は、低分子量のカチオン性物質の気相堆積を含んでもよく、蒸着工程は、カチオン性モノマーの気相堆積及び重合を含んでもよく、及び/又は蒸着工程は、それによってテープロールの側面にアミンを直接配置する窒素コロナ放電処理を含む。
【0028】
本開示の特定の実施形態の利点は、製造が容易であり、使用しやすく、特殊な包装を必要とせず、有害な、危険な、又は毒性の物質の使用を伴わず、除去するときに裂ける、又は切れる傾向が低減し、また、はっきりした、鮮明で、正確で、滑らかな均一な塗装ラインを生成する粘着性マスキング物品を提供することを含む。
【0029】
添付の図面を参照して、本開示を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態による改善された塗装ライン性能を有するテープのロールの斜視図。
【図2】図1の線2−2に沿った断面図。
【図3】図2に示されるテープの縁部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで図を参照すると(いくつかの図にわたって類似の参照番号は類似又は対応する特徴部を表している)、図1〜図3は、本発明の一実施形態による、加工面20の保護部分に隣接する加工面20に塗布される塗料などのコーティング30から、加工面20の一部を保護するための、テープ4のロールの形態の粘着性マスキング物品2を示している。特定の最終使用用途では、マスキング物品2は、加工面20に塗布されているラテックス塗料から加工面20を保護するために使用される。本明細書で使用するとき、「ラテックス塗料」とは、ポリマー結合剤と1種以上の顔料のような着色剤とを、極性水性連続相の中の分散体として含む水性塗料を指す。
【0032】
例示された実施形態では、マスキング物品2は、マスキングテープのロールなどのテープ4のロールの形態である。マスキング物品2は、例えば、マスキングテープのロール、マスキング材料の比較的大きなシート、任意の望ましい長さを有するマスキング材料のストリップ、及び特定の最終使用用途用に設計された様々な寸法及び形状を有するダイカットマスキング物品などを含む、あらゆる従来型マスキング物品の形態をとることができ、これらの形態のいずれも、接着剤を含んでもよく又は非接着性であってもよいということが認識されるであろう。
【0033】
例示のマスキングテープ2は、第1及び第2の対向する主表面6a、6bと、第1及び第2の対向する縁部6c、6dとを有する裏材層6を含む。マスキングテープ4は、裏材層6の第2の主表面6b上の接着剤の層8を更に含む。
【0034】
テープ裏材層6及び接着剤8に使用される特定材料は重要でなく、従来のテープ構造物で使用される材料のいずれかから選択され得る。裏材層6に好適な材料としては、例えば、平坦又は滑らかな紙並びにクレープ紙などの織地状の表面にした紙の両方を含む紙、天然又は合成ポリマーフィルム、天然及び/又は合成繊維、並びにこれらの組み合わせで製造される不織布、織布強化ポリマーフィルム、繊維又は糸強化ポリマーフィルム又は不織布、並びに複数層積層構造が挙げられる。
【0035】
接着剤8は、当該技術分野において既知である任意の好適な接着剤であってもよい。好適な接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のブロックから形成されるKraton型ポリマーをベースにしたものなどのブロックコポリマー接着剤、及びこれらの組み合わせなどの感圧性接着剤が挙げられる。
【0036】
感圧性接着剤は、標準的な種類の材料であると認識される。感圧性接着剤は、乾燥(即ち、残留溶媒以外は実質的に溶媒を含まない)形態において室温(例えば、15℃〜25℃)で粘着性であり、また、指圧以上を必要とせずに単に接触すると種々の異種表面にしっかりと付着する接着剤である。感圧性接着剤は、紙、セロファン、ガラス、プラスチック、木材、及び金属などの材料に対して強力な接着保持力を及ぼすために、水、溶媒、又は熱による活性化の必要がない。感圧性接着剤は十分に粘着力のある保持及び弾性性質を有し、それらの強力な粘着度にもかかわらず指で扱うことができ、かつ滑らかな表面から多くの残留物を残さずに除去することができる(例えば、Test Methods for Pressure−Sensitive Tapes,6th Ed.,Pressure Sensitive Tape Council,1953を参照のこと)。感圧性接着剤及びテープは周知であり、そのような接着剤において望ましい様々な特性及び特性のバランスは、十分に分析されている(例えば、米国特許第4,374,883号、及び「Pressure−Sensitive Adhesives」in Treatise on Adhesion and Adhesives Vol.2,「Materials」、R.I.Patrick編、Marcel Dekker,Inc.,N.Y.,1969を参照のこと)。感圧性接着剤として有用な種々の材料及び組成物は市販されており、上記文献において十分に論じられている(例えば、Houwink及びSalomon、Adhesion and Adhesives,Elsevier Publ.Co.,Amsterdam,Netherlands,1967;Handbook of Pressure−Sensitive Adhesive Technology,Donates Satas編、VanNostrand Reinhold Co.,N.Y.,1982を参照のこと)。
【0037】
接着剤8は、連続コーティングであってもよく、又は参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる米国特許第4,798,201号及び同第5,290,615号に記載されているように、パターンコーティングされてもよい。
【0038】
本発明の一実施形態の特徴的態様によると、マスキングテープ4は、マスキングテープの縁部6c、6dに障壁誘発処理剤10を含む。この様式で提供されると(即ち、マスキングテープ4の縁部6c、6dの少なくとも1つに沿って提供されると)、塗料のようなコーティング30が加工面20に塗布されて、加工面20に貼り合わされたテープ4の縁部6c、6dと接触する際に、コーティング30は障壁誘発処理剤10とも接触することになる。障壁誘発処理剤10は、液状、固形、又はこれらの組み合わせで提供されてもよい。
【0039】
一態様では、障壁誘発処理剤10は、マスキング物品2の縁部6c、6dからの液体コーティング30に溶解すると、液体コーティング30がマスキング物品2の縁部6c、6dを越えて移動するのを妨げる化合物、成分、物質又は薬剤を含む。即ち、障壁誘発化合物は、マスキング物品2の下への、及びマスキング物品2によってコーティング30から保護されている加工面20への、液体コーティング30の流れを阻止するように機能する。障壁誘発化合物は、例えば、マスキング物品2の縁部6c、6dに沿って液体コーティング30内の粒子の凝集を誘発することによって、又は液体コーティング30の粘度を増加させることによって、液体コーティング30の移動を妨げることができ、これらの機序は共に、コーティング30がマスキング物品2の縁部を越えて移動するのを妨げる、ないしは別の方法で阻止する障壁を形成する傾向がある。
【0040】
より詳細には、一態様では、障壁誘発処理剤10は、混合物の第1の構成成分を他のそのような構成成分と結合させ、それによってより大きな会合体を形成することが可能な化合物、成分、物質又は薬剤を含むことができる。用語「混合物」は、本明細書で使用されるとき、一般に、均一に分散された構成成分を有する混合物、安定混合物、懸濁液、エマルション、分散体、及び/又は溶液を指す。具体的な例では、混合物は、ラテックス塗料などの均一に分散された構成成分を有する安定混合物であってもよい。ラテックス塗料の場合、結合してより大きな会合体を形成する第1の構成成分は、ポリマー分散粒子であってもよい。ポリマー分散粒子を結合させることによって、障壁誘発化合物は、ラテックス塗料の粘度を増加させ始め、及び/又は塗料混合物中のコロイド塗料粒子が、マスキング物品の処理された縁部を越えて通過するのを妨げる物理的障壁を、ラテックス塗料に形成させると考えられている。
【0041】
別の態様では、障壁誘発処理剤は、混合物の第1の構成成分を共に引き出させ、それによって混合物から第1の構成成分を分離させることが可能であってもよい(即ち、障壁誘発処理剤は混合物を層化させる又は均一性を低くする)。混合物の分離又は層化は、典型的には肉眼で観察される。混合物の第1の構成成分は、例えば、水性懸濁液などの懸濁液に分散される固体粒子、半固体粒子、又は液体粒子であってもよい(即ち、懸濁液は、分散体又はエマルションであってもよい)。
【0042】
混合物は、分散した無機顔料粒子を含む、アニオン荷電された可溶性ポリマー塗料混合物であってもよい。この場合、塗料混合物の第1の構成成分は、例えば、アニオン電荷を有するポリマーであってもよい。
【0043】
より具体的な態様では、障壁誘発化合物は、懸濁液と接触する及び懸濁液に溶解すると、懸濁液に分散された固体、半固体、又は液体粒子を結合させて、より大きな粒子会合体、又は粒子の群を形成することが可能な物質であってもよい。更により具体的な態様では、障壁誘発化合物は、より大きな粒子会合体を不可逆的に結合させる。即ち、結合した粒子は、結合されていない(即ち、分離した又は分散した)状態に時間経過に伴って自然に戻ることはなく、むしろ、より大きな粒子会合体をその分散された、分離した、又は解離した状態に戻すために、いくらかの外的刺激を必要とする。したがって、特定の実施形態では、分散エネルギーを有意に入力したとしても、結合した粒子を均一に再分散させることはできない。障壁誘発化合物が粒子を結合させるプロセスは、一般に、凝集、合体、アグロメレーション、軟凝集、凝固及び/又は沈殿のうちの1つ以上であると説明され得る。
【0044】
マスキング物品2の縁部6c、6dを越えてコーティング30が移動するのを阻止する障壁誘発処理剤10の能力は、1つには、特定のコーティング30の性質に依存する。コーティングは、例えば、水性懸濁液であってもよく、その場合、障壁誘発処理剤10は、懸濁液が障壁誘発処理剤10と接触したときに凝集を誘発し、かつ水性懸濁液の粘度を増加させるのに十分な量で存在する。コーティング30は、電荷で安定化させたコロイド粒子を含んでもよい。この場合、障壁誘発処理剤10は、コロイド粒子の電荷と反対の電荷を有し、それによって、コーティングが障壁誘発処理剤10と接触したときに、粒子を安定化させる。
【0045】
より詳細には、コーティング30はコロイド分散体を含んでもよく、その場合、このコロイド分散体は、ラテックス塗料の場合のようにアニオンで安定化される。この場合、障壁誘発処理剤10を有効とするために、障壁誘発処理剤10は正味の正電荷を有する。より詳細には、コロイド分散体がアニオンで安定化される場合、障壁誘発処理剤10は一般に、平均で、1分子当たり少なくとも2個のアミン基、及び/又は少なくとも原子価2を有する金属カチオンを含む。アミン基は、一級、二級、三級又は四級アミンであってもよい。一級、二級、及び三級アミンは、プロトン化されて正電荷を有してもよい。特定のコーティングを問わず、障壁誘発処理剤10は、コーティング30が裏材層6の縁部6c、6dを越えて移動するのを阻止するのに十分な量で存在するのが望ましい。
【0046】
本発明の別の態様によると、コーティング30が裏材層6の縁部6c、6dを越えて移動するのを妨げることによって、障壁誘発処理剤10は、マスキング物品2が障壁誘発処理剤10を含んでいない場合に生成する縁部6c、6dよりも、中心線を中心とした変動性が低い塗装ラインを生成する働きをする。即ち、他の全ての変数が一定のままである場合、障壁誘発処理剤10を備えるマスキング物品の縁部は、障壁誘発処理剤を備えていない縁部よりも中心線を中心とした変動性が低い塗装ラインを生成する。中心線及び変動度は、最小二乗法、直線回帰法、及び分散分析法などの既知の統計的手法を使用して決定され得る。
【0047】
例示された実施形態では、障壁誘発処理剤10は、テープ4のロールの全側面4aに層として設けられてもよい。使用する特定の障壁誘発処理剤10の有効性に応じて、テープ4のロールの側面4aのこのような層は、1平方センチメートル当たり少なくとも約0.15ミリグラム(mg/cm)、少なくとも約0.3mg/cm、又は少なくとも約0.5mg/cm、及び約25mg/cm以下、約15mg/cm以下、及び約8mg/cm以下の乾燥コーティング重量、並びに少なくとも約3mg/cm、少なくとも約6mg/cm、少なくとも約9mg/cm、及び約450mg/cm以下、約225mg/cm以下、及び約125mg/cm以下の湿潤コーティング重量を有し得ることが見出された。
【0048】
いかようにも限定されることを望まないが、障壁誘発処理剤10は、塗料と接触すると及び塗料分散体に溶解すると、塗料分散体の安定性を妨害し、それによって、テープ4の縁部に沿って障壁誘発処理剤10付近にある塗料中の粒子を結合(例えば凝集化又は粒塊化)させると考えられている。塗料分散体中の粒子の結合は、次に、テープ4の縁部と、テープ4が付着される表面20との間に障壁を形成すると考えられている。この障壁はテープ縁部を遮断及び密封し、それによって、塗料又は塗料混合物の構成成分がテープ縁部6d/表面20の境界面に浸透するのを妨げる。即ち、障壁誘発処理剤10は、塗料の粘度を高め及び/又はテープ4の縁部6c、6dに沿って物理的障壁を形成し、高い粘度及び/又は物理的障壁は、塗料(又は少なくとも塗料中の着色剤)がテープ4の縁部6c、6dを越えて、テープ4と表面20との間の領域に移動するのを阻止する遮断領域を形成するように機能する(即ち、遮断領域は、塗料が表面20に沿ってテープの下に流れるのを妨げる)と考えられている。
【0049】
滑らかで均一な塗装ラインの生成に加え、障壁誘発処理剤10は、テープ4を加工面20から除去する際にテープが切れる可能性を軽減する役割も果たし得る。同様にいかようにも限定されることを望まないが、テープ切れは、一般に、塗料が接着剤/基材境界面でテープの下に浸透した所で始まる、及びそこから広がると考えられている。このようにして塗料の浸透を妨げることによって、テープ切れの可能性が低減される。
【0050】
一実施形態では、障壁誘発処理剤10は水溶性である。より詳細には、障壁誘発処理剤10は、後述の試験方法に従って測定した場合、例えば、pH 6において、23℃で0.1グラム/100グラム脱イオン水、23℃で少なくとも約0.2グラム/100グラム脱イオン水、23℃で少なくとも約0.5グラム/100グラム脱イオン水、23℃で少なくとも約1グラム/100グラム脱イオン水、23℃で少なくとも約2グラム/100グラム脱イオン水、23℃で少なくとも約5グラム/100グラム脱イオン水、23℃で少なくとも約10グラム/100グラム脱イオン水、及び23℃で少なくとも約20グラム/100グラム脱イオン水である水に対する溶解度を有する、ポリマー又は金属イオンなどの障壁誘発化合物を含む。少なくとも約10重量%、15重量%、及び20重量%の水に対する溶解度を有する障壁誘発化合物を含む障壁誘発処理剤が望ましいことが見出された。他の実施形態では、障壁誘発処理剤化合物は、アルコール可溶性、グリコール可溶性、又は端部コーティング組成物中に存在し得るその他の保湿剤に可溶性であってもよい。
【0051】
乾燥障壁誘発化合物の溶解度は、次の技術を使用して決定され得る。まず、所望濃度の乾燥障壁誘発化合物を、密封容器又は還流冷却器を備えた丸底フラスコのいずれかの中で、少なくとも60℃の温度で少なくとも4時間、純脱イオン水と完全に混合する。次に、この混合物を23〜25℃で少なくとも24時間混合しながら冷却する。一部のポリマーでは、真の意味で溶解度が達成されたことを確実にするために、時間及び温度は、それぞれ4時間超過及び/又は60℃超過に調整される必要があり得ることに気付くであろう。例えば、より高い分子量のポリマーの溶解を確実にするためには、4時間より有意に長くかかる場合がある。更に、より高い分子量のポリマーの場合、23〜25℃で少なくとも24時間混合する工程は、48時間もの間行われる必要があり得る。一方、化合物が曇点を示す場合は、室温での溶解度を決定することができるように、より低い溶解温度を選択する必要がある。更に、過飽和溶液を形成しないように注意しなければならない。障壁誘発化合物の溶解限度を知ることが重要である場合は、過剰な化合物を加える必要がある、即ち、混合の後に可視濁度又は可視固相が存在する必要がある。他方では、障壁誘発化合物が特定の値、例えば10重量%で可溶性であるかどうかを知ることが単に要求される場合は、10重量%又はそれをわずかに上回る試料を調製する。対象となる初期障壁誘発化合物はまた、化合物の初期重量が正確であることを確実にするために、脱イオン水と混合する前は乾燥していなければならない。次に、あらゆる不溶解画分を沈殿させるために、可溶化混合物の10ミリリットル(mL)の画分を、15mLの遠心分離管の中で10,000×gで30分間遠心分離する。次に、約5グラム(g)の試料を取り出し、秤量したガラスのビーカーの中に正確に量り入れる。これは、少なくとも0.0002gを正確に測定することが可能な化学てんびんの上で行われる必要がある。次に、水を完全に排除し、かつ化合物を分解させずに純粋化合物を得るのに十分な温度で、試料を一定重量まで乾燥させる。化合物が分解しやすい場合、乾燥窒素でゆっくりと掃引しながら化合物を乾燥させることができる。水が蒸発し、試料が一定重量に達したときに、試料は乾燥したと考えられる。乾燥は、沸騰/突沸等により消失する試料がないこと確認しながら、90℃の熱対流炉の中で行われてもよい。次に、試料が一定重量に達したことを確実にするために、数回の計量を測定して記録する。障壁誘発化合物の溶解度は、純粋化合物の重量を試料の初期重量で割り、100を掛けることによって計算される。結果が一貫しておりかつ正確であることを確実にするために、必要に応じて複数の試料に対して行われてもよい。同じ方法を使用して、乾燥障壁誘発処理剤の溶解度を決定してもよい。
【0052】
障壁誘発処理剤10は、マスキング物品2でいつでも使用できるカチオン形態であるのが望ましい。そのため、一級、二級、及び三級アミンは、適切なpHに調整する酸で少なくとも部分的にプロトン化されるのが望ましい。望ましいpHは、典型的には、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、及び少なくとも約6.5、並びに約9以下、約8以下、及び約7.5以下である。理想的には、pHは、ポリカチオン性ポリマーアミンの少なくとも10%がプロトン化されるのを確実にするように調製される。これは、存在するアミンの塩基性に依存し、滴定によって容易に決定することができる。
【0053】
1つの特定の実施形態では、マスキング物品2は、コーティング30が裏材層6の縁部6c、6dと接触するときにコーティング30と接触する、マスキング物品2に組み込まれるポリカチオン性物質を含む。別の実施形態では、マスキング物品2は、コーティング30が裏材層6の縁部6c、6dと接触するときにコーティング30と接触する、マスキング物品2に組み込まれた、少なくとも約40g/当量、及び約1000g/当量以下のアミン当量を有する物質を含む。好適なポリカチオン性物質は、約1000g/当量以下、約500g/当量以下、及び約350g/当量以下のアミン当量を有する。
【0054】
本開示の目的上、アミン当量は、通常は滴定によって決定されるポリマーの平均アミン当量としてみなされる。四級アミンでは、これはイオンの形態の当量である。一級、二級、及び三級アミンでは、これは、例えば、滴定によって決定されることになる遊離アミンの形態の当量である。一例として、ポリエチレンイミンは、約43gポリマー/アミン当量のアミン当量を有し、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドは、160.5gポリマー/アミン当量のアミン当量を有する。
【0055】
本明細書に記載の実施形態のそれぞれでは、障壁誘発処理剤10は、裏材層6の対向する縁部6c、6dの少なくとも1つの少なくとも一部分に存在する。例示された実施形態では、障壁誘発処理剤10は、裏材層6の縁部6c、6dに沿った離散層として存在するコーティングである。はっきりした、鮮明な、正確な、滑らかな、及び/又は均一な連続した塗装ラインを生成するために、障壁誘発処理剤10は、裏材層6の対向する縁部6c、6dの両方に沿って連続して存在するのが望ましい。
【0056】
障壁誘発処理剤10をロール4に組み込む特定の方法は、障壁誘発処理剤10が縁部6c、6dの1つ又は両方の少なくとも一部分に沿って提供され、かつ、本明細書に記載の所望の機能を実現するのに十分な量で存在する限りにおいて、重要ではない。例えば、障壁誘発処理剤10は、粘着層8に組み込まれるか若しくは適用されてもよく、又は裏材層6に組み込まれるか若しくは適用されてもよい。例えば、裏材層6に障壁誘発処理剤10を染み込ませてもよく、又は障壁誘発処理剤10は、障壁誘発処理剤10が裏材層6の縁部6c、6dの1つ又は両方に沿って存在するように、裏材層6の第1の主表面6aの幅を横切る層として提供されてもよく、あるいは障壁誘発処理剤10は、図のように、裏材層6の縁部6c、6dのみに実質的に沿った離散層として提供されてもよい。
【0057】
障壁誘発処理剤は、カチオン性物質及び/又はポリカチオン性物質を含んでもよい。好適なカチオン性物質としては、平均で1分子当たり少なくとも2、少なくとも4、及び少なくとも6個のカチオン基を有するポリカチオン性小分子、ポリカチオン性ポリマー又はオリゴマーが挙げられる。ポリカチオン性ポリマー又はオリゴマーは、有機カチオン性ポリマー、並びにポリシロキサン及びオルガノポリシロキサン含有ポリカチオン性ポリマーであってもよい。カチオン性ポリマーは、直鎖状、分枝状であっても、又は架橋されていてもよい。特に好適なポリカチオン性ポリマーとしては、ポリクアテルニウム−6及びポリクアテルニウム−37シリーズのポリマーが挙げられる。好適なポリカチオン性ポリマーは、Nalco Company(Naperville,IL)から商標名Merquatで入手可能なポリクアテルニウム6シリーズのポリマーである。Merquatポリクアテルニウム−6シリーズのポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドの高電荷水溶性カチオン性ホモポリマーである。
【0058】
ポリカチオン性ポリマー及びオリゴマーは、多糖類及びビニルモノマーから誘導されるポリマーなどの合成系又は天然系ポリマーに基づくものであってもよい。例えば、カチオン性修飾セルロース、グアーガム、デンプン、タンパク質等が好適であり得る。ある種のポリカチオン性物質は界面活性であってもよく、水性組成物の表面張力を有意に低下させる、例えば、濃度0.5重量%未満において45ダイン/cm未満まで低下させることが可能であってもよい。
【0059】
より詳細には、好適なカチオン性ポリマーは、ポリ第四級アミンポリマー、多官能性プロトン化一級、二級、三級アミン、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。その他の好適なカチオン性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩)、アミン官能性アクリルモノマーのプロトン化又は四級化されたホモポリマー又はコポリマー、及びプロトン化ポリエチレンイミンの少なくとも1つを含む。好適なアミン官能性アクリルモノマーは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミドを含む。より具体的なビニルモノマーとしては、例えば、ジアリルジメチルアンモニウム塩、メタクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、四級化ジアルキルアミノアルキルアクリルアミジンアンモニウム塩、トリアルキルアミノアルキルアクリレート及びメタクリレート塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩(例えば、ジメチルジアリルアンモニウム塩)、アクリルアミドアルキルトリアルキル塩、メタクリルアミドアルキルトリアルキル塩、並びにアルキルイミダゾリウム塩が挙げられる。
【0060】
別の実施形態では、障壁誘発処理剤は、カチオン性の生理食塩水を含んでもよい。有効な障壁誘発処理剤を提供するために、例えば、プロトン化一級、二級、三級シラン、並びに四級シランを、単独で又は非イオン性シランと組み合わせてマスキング物品の縁部に適用してもよい。二級アミノ基を含有する好適なアミノアルキルアルコキシシラン及びアミノアルキルアシロキシシランの例としては、OSI Specialties(Sistersville,WV)からA−9669として入手可能なN−フェニルアミノプロピル−トリメトキシシラン、OSI SpecialtiesからA−1170として入手可能なビス(γ−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−シクロヘキシルアミノプロピル−トリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピル−トリメトキシシラン、N−ブチルアミノプロピル−トリメトキシシラン、N−ブチルアミノプロピル−トリアシルオキシシラン、3−(N−エチル)アミノ−2−メチルプロピル−トリメトキシシラン、4−(N−エチル)アミノ−3,3−ジメチルブチル−トリメトキシシラン及び対応のアルキルジエトキシ、アルキルジメトキシ及びアルキルジアシルオキシシラン、例えば3−(N−エチル)アミノ−2−メチルプロピル−メチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0061】
一次アミノ基を含有する好適なアミノアルキルアルコキシシラン及びアミノアルキルアシロキシシランの例としては、3−アミノプロピル−トリアシルオキシシラン;3−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン;6−アミノヘキシル−トリブトキシシラン;3−アミノプロピル−トリメトキシシラン;3−アミノプロピル−トリエトキシシラン;3−アミノプロピル−メチルジエトキシシラン;5−アミノペンチル−トリメトキシシラン;5−アミノペンチル−トリエトキシシラン;4−アミノ−3,3−ジメチル−ブチル−トリメトキシシラン;及び3−アミノプロピル−トリイソプロポキシシランが挙げられる。3−アミノ−プロピル−トリメトキシシラン及び3−アミノプロピル−トリエトキシシランは特に好ましい。
【0062】
好適な四級アンモニウムシランの例としては、トリメチルアミノプロピルトリメトキシシラン塩、トリメトキシシリル)−プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0063】
このようなシランは、加水分解し、凝縮してカチオン性ポリシロキサンオリゴマー、ポリマー、及び架橋ネットワークを形成する。それらは、シラン、加水分解生成物、オリゴマー、又はポリマーとして適用されてもよい。そのようなシランは、カチオン性ポリマー及び/又は多価金属と組み合わせて使用されてもよい。
【0064】
カチオン性障壁誘発処理剤の対イオンは、例えば、ハロゲン化物、カルポキシレート等などの好適なものであればなんでもよい。特に好適なのは、塗料と接触したときに、溶解度を高める、特に、急速な水和を促進する塩である。したがって、好適な対イオンは、水和を促進するために、アニオン部分に加えてヒドロキシル基又はその他の極性基を含んでもよい。
【0065】
その他の有用なカチオン性ポリマーは、米国特許第5,908,619号(Scholz)及び同第6,582,711号(Asmusら)に記載されており、当該特許の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
別の実施形態では、障壁誘発処理剤10は無機化合物を含んでもよい。好適な無機化合物としては、例えば、ポリカチオン性(即ち多価)金属化合物が挙げられる。好適な多価金属化合物は、水を含む溶媒に溶解して、少なくとも2つのカチオン電荷を有するカチオンを生成する金属塩又は化合物を含んでもよい。金属塩は、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、クロム、コバルト、チタン、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、マンガン、ストロンチウム、イットリウム、ランタン、ポリアルミニウムハロゲン化物、塩基性硝酸アルミニウム、加水分解アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジルコニル塩、チタニル塩、及びこれらの組み合わせの可溶性塩を含んでもよい。好適な金属塩は、典型的には、23℃で少なくとも約0.1グラム/100グラム脱イオン水、23℃で少なくとも約1グラム/100グラム脱イオン水、及び23℃で少なくとも約5グラム/100グラム脱イオン水といった水に対する溶解度を有する。
【0067】
障壁誘発処理剤10はまた、カチオン性オリゴマー又はポリカチオン性ポリマーなどの有機物質と、多価金属カチオンなどの無機物質との組み合わせを含んでもよい。
【0068】
障壁誘発化合物は、乾燥重量で、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、又は少なくとも約15%から、乾燥重量で、約95%以下、約85重量%以下、約75%以下、又は約65%以下までの、乾燥障壁誘発処理剤配合物を含んでもよい。
【0069】
障壁誘発処理剤10は、任意に保湿剤を有してもよい。好適な保湿剤は、ポリヒドロキシ及び/又はイオン基含有化合物、あるいは障壁誘発処理剤10のポリカチオン性化合物の一部として存在し得るあらゆる塩と別個で異なる有機又は無機塩を含んでもよい。好適なポリヒドロキシ化合物としては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、パントテノール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、スクロース、グルコース、グルコン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、アセトアミドMEA、ラクタミドMEA、有機塩、無機塩、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特に好適な有機塩は、典型的には、約2000未満の分子量を有する。好適な有機塩の例としては、Colonial Chemical,Inc.(South Pittsburg)から入手可能なColaMoist200(ヒドロキシプロピルビス−ヒドロキシエチルジモニウムクロリド)及びColaMoist 300P(ポリクアテルニウム−71)、並びにCroda,Inc.(Edison,NJ)から入手可能なIncromectant AQ−アセトアミドプロピルトリモニウムクロリド及びIncromectant LQ−ラクトアミドプロピルトリモニウムクロライドが挙げられる。保湿剤は、乾燥障壁誘発処理剤組成物中に、乾燥重量で少なくとも約0%、少なくとも5%、又は少なくとも約15%から、乾燥重量で約95%以下、約85重量%以下、又は約75%以下までで存在してもよい。
【0070】
障壁誘発処理剤10はまた、任意に界面活性剤を有してもよい。本明細書で使用するとき、用語「界面活性剤」は、水の表面張力及び/又は水と不混和性液体との間の界面張力を減少させることが可能な両親媒性物質(即ち、共有結合している極性及び非極性領域の両方を有する分子)を意味する。好適な界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、又は両性であってもよい。必要に応じて、界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0071】
好適な界面活性剤は、ポロキサマー(ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドのブロックコポリマー)、カチオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。カチオン性、両性、及び非イオン性界面活性剤、特に、ポロキサマーなどのエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド界面活性剤が特に好適である。
【0072】
1種以上の界面活性剤が、本明細書に記載の種々の障壁誘発処理剤組成物中に、所望の結果を引き起こすのに好適な濃度で含まれてもよい。一実施形態では、界面活性剤は、調製済み障壁誘発処理剤コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、又は少なくとも約0.075重量%の総量で存在してもよい。乾燥組成物中では、界面活性剤は、障壁誘発処理剤の乾燥コーティングの約0重量〜30重量%、又は約1重量〜25重量%で存在する。
【0073】
代表的なカチオン性界面活性剤としては、所望によりポリオキシアルキレン化された一級、二級、又は三級脂肪族アミンの塩;ハロゲン化物(好ましくは塩化物若しくは臭化物)又はメトサルフェート若しくはエトサルフェートなどのアルキルサルフェートといった適合性のあるアニオン性対イオン並びに他のアニオン性対イオンを有するテトラアルキルアンモニウム、アルキルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウム、又はアルキルピリジニウムのような四級アンモニウム塩;イミダゾリン誘導体;カチオン性のアミンオキシド(例えば、酸性pHで)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
特定の実施形態では、有用なカチオン性界面活性剤は、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム、アルキルアミンオキシド、及びアルキルピリジニウムハロゲン化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0075】
好適な両性界面活性剤としては、三級アミン基を有する界面活性剤が挙げられ、これはプロトン化並びに四級アミン含有双極性界面活性剤であってよい。そのような両性界面活性剤の特定の例としては、アルキルベタインなどのアンモニウムカルボキシレートアンフォテリクス、並びに「スルタイン」又は「スルホベタイン」と呼ばれる場合が多いアンモニウムスルホネート両性界面活性剤が挙げられる。
【0076】
代表的な非イオン性界面活性剤としては、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、シリコーンコポリオール、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、スクロースエステル、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、脂肪酸アルカノールアミド、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪族の酸、エトキシ化脂肪族アルコール(例えば、両方ともSigma Aldrich Corp(St.Louis,MO)から、商標名TRITON X−100で入手可能なオクチルフェノキシポリエトキシエタノール及び商標名NONIDET P−40で入手可能なノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、エトキシ化及び/又はプロポキシル化脂肪族アルコール(例えば、ICI Americas(Chicago,IL)から商標名Brijで入手可能)、エトキシ化グリセリド、エトキシ化/プロポキシル化ブロックコポリマー、例えば、BASF(Chicago,IL)から入手可能なPluronic及びTetronic界面活性剤、エトキシ化環状エーテル付加物、エトキシ化アミド及びイミダゾリン付加物、エトキシ化アミン付加物、エトキシ化メルカプタン付加物、アルキルフェノールによるエトキシ化濃縮物、エトキシ化窒素系疎水性物質、エトキシ化ポリオキシプロピレン、ポリマー性シリコーン、フッ素化界面活性剤(例えば、3M Company(St.Paul,MN)から商標名FLUORAD−FS 300で、及びDupont de Nemours Co.(Wilmington,DE)から商標名ZONYLで入手可能なもの)、及び重合性(反応性)界面活性剤(例えば、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)から商標名MAZONで入手可能であるSAM 211(アルキレンポリアルコキシサルフェート)界面活性剤)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の組成物で有用な非イオン性界面活性剤は、BASFからのPLURONICなどのポロキサマー、ソルビタン脂肪酸エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好適な界面活性剤は、Air Products and Chemicals,Inc.(Allentown,PA)から入手可能なDynol 604界面活性剤である。
【0077】
障壁誘発処理剤配合物中のある種の化合物は、1つ以上の機能を果たしてもよいことが理解されよう。例えば、ある種の化合物は、ポリカチオン性障壁誘発化合物及び保湿剤の両方として、又は障壁誘発化合物及び界面活性剤の両方としての機能を果たし得る。本開示の目的上、特定の化合物がポリカチオン性である場合、これは障壁誘発化合物の一部であるとみなされる。
【0078】
障壁誘発処理剤10は、その他の任意の添加剤、例えば、腐食防止剤、緩衝剤、染料、顔料、乳化剤、酸化防止剤、増粘剤(即ち濃厚化剤)、追加溶媒、可塑剤、及び/又は保存剤などを含んでもよい。
【0079】
コーティングから遮蔽される表面20のマスク領域と、コーティング30が塗布される表面のマスクされていない領域との間を分離する、はっきりしており、鮮明で、滑らかなラインを生成するためにマスキング物品2を使用するために、マスキング物品2は、まず、コーティング30から遮蔽される表面20の領域に貼り合わされる。次に、コーティング30は、表面20のマスクされていない領域に塗布され、マスキング物品2の少なくとも縁部に塗布される。続いて、コーティング30を少なくとも部分的に乾燥させる。最後に、マスキング物品2を表面20から除去する。障壁誘発処理剤10は、コーティング30がマスキング物品2の縁部6c、6dを越えて移行するのを阻止するので、明瞭で均一な境界線が、表面のコーティングされた領域と、マスキング物品2によってコーティング30から遮蔽された領域との間に生成される。
【0080】
本発明の一実施形態による障壁誘発処理剤10を含む粘着性マスキング物品2は、様々な技術を使用して製造され得る。例えば、障壁誘発処理剤10は、障壁誘発処理剤10を接着剤8中に混合する、又は既知のコーティング技術を使用して接着剤8の選択された表面に障壁誘発処理剤10のコーティングを適用するのいずれかによって、接着剤8を介してマスキング物品に組み込まれてもよい。障壁誘発処理剤10はまた、裏材6を介してマスキング物品2に組み込まれてもよい。これは、例えば、裏材層6全体に障壁誘発処理剤10を染み込ませる、又は既知のコーティング技術を使用して裏材層6の選択された部分に障壁誘発処理剤10をコーティングすることを含むことができる。裏材層6の選択された部分は、対向する主表面6a、6bの1つ若しくは両方、及び/又は縁部6c、6dの1つ若しくは両方を含み得る。
【0081】
マスキング物品2がテープのロールである場合の特定の方法によると、障壁誘発処理剤10がテープの縁部6c、6dに適用され、それによってテープの塗装ライン性能を改善するテープ4のロールの形成方法は、1)切断刃を障壁誘発処理剤10でコーティングする工程と、2)マスキングテープの未処理のロールを切断刃で切断し、それによって、テープロールの切断中に、障壁誘発処理剤10をテープ4のロールのカットエッジに移す工程と、を含む。
【0082】
別の方法によると、障壁誘発処理剤を含有する液体組成物は、マスキングテープの完成したロールの少なくとも1つの側面に適用される。これは、障壁誘発処理剤を含む組成物を、マスキングテープのロールの少なくとも1つの側面にロールコーティングする、パッドコーティングする、吹付け塗りする、及び蒸着するなどといった多くの技術を使用して達成され得る。蒸着は、低分子量のカチオン性物質の気相堆積、カチオン性モノマーの気相堆積及び重合、又はテープロールの側面にアミンを直接配置するアンモニアプラズマ処理を含むことができる。障壁誘発処理剤はまた、例えば、スポンジ又は他の好適な塗布器を使用して、テープの完成したロールの両側面に手作業で適用されてもよい。
【0083】
別の方法によると、液体障壁誘発処理剤組成物は、マスキングテープの完成したロールの側面といったマスキング物品の縁部に、使用する直前に適用されてもよい。例えば、液体障壁誘発処理剤組成物は、液体含浸塗布パッドを介して適用されてもよい。この実施形態では、少なくともマスキングテープのロールと障壁誘発処理剤組成物とを含むキットが提供されてもよい。あるいは、液体障壁誘発処理剤組成物は単独で(即ち、マスキング物品とは別に)販売されてもよく、それによって、エンドユーザは、使用する前にマスキング物品の少なくとも1つの縁部に組成物を適用することができる。
【0084】
本明細書に記載の本発明をより完全に理解できるよう、以下に実施例を説明する。これらの実施例は単に例示目的であり、本発明をいかなる方法でも制限するものではないと理解されたい。
【実施例】
【0085】
別途注記のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、割合、及び比率等は、重量による。
【0086】
材料
LUPASOL Pは、BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能な、一級、二級、及び三級アミン基を有し、いったんプロトン化されると非常に高いカチオン電荷を有する、低粘度、高分子量(平均750,000MW)のエチレンイミンポリマーである(50%水溶液として供給される)。
【0087】
LUPASOL WFは、BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能な、一級、二級、及び三級アミン基を有し、いったんプロトン化されるとカチオン電荷を有する、中間分子量(平均25,000MW)のエチレンイミンポリマーである。
【0088】
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドは、Sigma Aldrich(Milwaukee,WI)から入手可能なポリクアテルニウムポリマーである。100,000〜200,000の報告されたMWを有する「低MW」、200,000〜350,000の報告されたMWを有する「中間MW」、及び400,000〜500,000の報告されたMWを有する「高MW」の、3種類の分子量を使用した。
【0089】
Diaformer Z−731は、Clariant Corporation(Mt.Holly,NC)から入手可能なポリ(アミンオキシドアクリレートコポリマー)である(50%エタノール/10%水溶媒系中40%活性物質として供給される)。低いpHでは、このポリマーは、ポリカチオン性ポリマーとして挙動する。
【0090】
COSMOCIL CQは、Arch Chemicals,Inc.(Norwalk,CT)から入手可能なポリ(ヘキサメチレンビグアニジン)塩酸塩である(20%水溶液として供給される)。
【0091】
N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンは、Sigma Aldrich(製品番号104884)(Milwaukee,WI)から入手可能である。
【0092】
Dynol 604は、Air Products(Allentown,PA)から入手可能な非イオン性界面活性剤である。
【0093】
ソルビトールは、Sigma Aldrich(Milwaukee,WI)から入手可能である。
【0094】
グリセリン/グリセロールは、Sigma Aldrich(Milwaukee,WI)から入手可能である。
【0095】
アルミニウムクロロハイドレートは、Sigma Aldrich(Milwaukee,WI)から入手可能である。
【0096】
塩化アルミニウムは、Sigma Aldrich(Milwaukee,WI)から入手可能である。
【0097】
炭酸カルシウムは、Sigma Aldrich(Milwaukee,WI)から入手可能である。
【0098】
塗装ライン性能の試験方法
ガラスパネルの調製:
新しい8インチ(20.3cm)×12インチ(30.5cm)ガラスパネルの非Sn(非スズ)側を不可視光線を使用して特定した。次に、ガラスパネルの非Sn側を、ジアセトンアルコール、ヘプタン、及びエタノールのそれぞれで(この順番で)1回ずつ拭いて清浄した。
【0099】
テープの適用及び塗装ライン試験:
処理されたテープの長さ8インチ(20.3cm)のストリップを、手でガラスパネルに静かに適用した。4.5ポンド(2.0kg)の目盛り付きのゴムローラーを、テープの幅に対して水平方向に中心合わせし、手でローラーを縦方向に2回前後に通過させて、全部で4回テープの上を通過させ、全部で4回の通過は毎分約12インチ(30.5cm)の速度で行われた。テープ試料をパネルに適用してから15分以内に、塗装用ブラシを使用して、ガラスパネル及び処理されたテープの上に塗料を塗布した。次に、塗装された試験パネルを室温で乾燥させた。試験に使用した塗料は、Sun Proof Exterior House & Trim Semi−Gloss Latex 100%アクリル系黒色塗料(#78−851、Pittsburgh Paints,PPG Industries(Pittsburgh,PA)から入手可能)であった。各テープ試料の3つの複製物を試験した。各試験試料の間の約15フィート(4.6メートル)のテープを、テープロールから除去した。比較のため、縁部処理されていない対照テープを有するガラスパネルも用意した。塗料が完全に乾いた後、縁部処理されていない対照テープと比較してガラスの上の塗装ラインを目視検査して、テープの塗装ライン性能を評価した。結果は、表に示されるように、「改善なし」、「改善」又は「有意な改善」として評価された。
【0100】
障壁誘発処理剤及び適用手順
評価された障壁誘発処理剤組成物を表に記載する。障壁誘発処理剤を、水性溶液として、水性不均一混合物(即ち、溶解しておらず、テープ表面に適用するためには振盪する必要がある)として、又は100%固形物としてのいずれかで、以下の実施例に記載の手順を使用して、テープ(SCOTCH−BLUE PAINTER’S TAPE #2090、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)の完成したロールの縁部又は側面に適用した。実施例のいずれかでpH調整を行った場合には、その旨が表に示される。
【0101】
(実施例1〜4及び8〜26)
障壁誘発処理剤溶液を、障壁誘発処理剤がテープロールの全側面に適用されるのを確認しながら、スポンジ塗布器を使用してテープロールの縁部(即ち側面)に適用した。次に、処理されたテープロールを炉の中で150°F(66℃)で15分間乾燥させ(コーティングされた側を上に向けて)、室温で冷却した。次に、障壁誘発処理剤溶液を、この物質がテープロールの側面全体に適用されるのを確認しながら、スポンジ塗布器を使用してテープロールの反対側の縁部(即ち側面)に適用した。次に、処理されたテープロールを(第2のコーティングされた側を上に向けて)炉の中で150°F(66℃)で15分間乾燥させた。次に、上述の塗装ライン性能試験の前に、処理されたテープロールを室温で冷却した。結果を表に示す。
【0102】
(実施例5〜7)
障壁誘発処理剤溶液を、テープロールの縁部の片側又は側面に、1mL(1グラム)の装填量で注射器で適用し、ゴムの塗布器で平らにした。次に、処理されたテープロールを、上述の塗装ライン性能試験の前に室温で4時間(実施例5)又は24時間(実施例6)乾燥させた。
【0103】
(実施例27)
テープロールを炉の中で150°F(66℃)で5分間温めた。テープロールの縁部又は側面を、粉末がテープロールの側面全体に適用されるのを確認しながら障壁誘発処理剤粉末の中に押し付けた。次に、乾燥したブラシを使用して余剰粉末をテープロールの縁部/側面から払い落した。この手順を繰り返してテープロールの反対側の縁部/側面をコーティングした。次に、試料を上述の塗装ライン性能試験に供した。結果を表に示す。
【0104】
比較例C1及びC2
処理剤が不均一混合物(即ち、炭酸カルシウムは溶解しておらず、テープロールの縁部又は側面に適用するために混合物を振盪する必要があった)として適用されたことを除き、上述のように溶液コーティングされたテープロールと同様の方法で比較例C1及びC2を調製した。
【0105】
【表1】

pHは塩酸(HCl)で調整
pHは乳酸で調整
pHは硫酸で調整
pHは酢酸で調整
【0106】
注:表に示される重量パーセントは、製造供給元によって供給された材料の重量パーセントである。例えば、実施例8では、DIAFORMER Z−731は40%固形分溶液として供給されるので、40%固形分における12.5%は5%のポリマーのアミンオキシドということになる。
【0107】
上述の発明には、発明の概念から逸脱することなく様々な変更や修正ができることは、当業者には理解されよう。したがって本発明の範囲は、本願に記載の構造に限定されるべきものではなく、「特許請求の範囲」の文言により述べられる構造及びそうした構造の均等物によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護された加工面に隣接する表面に塗布されたコーティングから、該保護された加工面を遮蔽するための粘着性マスキング物品であって、
(a)第1及び第2の対向する主表面と、少なくとも1つの縁部とを有する裏材層と、
(b)前記第1及び第2の裏材層の対向する主表面の少なくとも1つの少なくとも一部分の上の接着剤と、
(c)前記マスキング物品の少なくとも前記縁部に存在して、前記コーティングが前記裏材層の前記縁部と接触すると前記コーティングと接触する水溶性カチオン性障壁誘発化合物と、を含む、粘着性マスキング物品。
【請求項2】
前記障壁誘発化合物が、23℃において少なくとも約0.1グラム/100グラム脱イオン水の水に対する溶解度を有する、請求項1に記載のマスキング物品。
【請求項3】
前記障壁誘発化合物が、2個のアミン基、少なくとも原子価2を有する金属カチオン、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを有する化合物を含むカチオン性物質を含む、請求項1に記載のマスキング物品。
【請求項4】
前記カチオン性物質が、少なくとも約40g/当量、及び約1000g/当量以下のアミン当量を有する、請求項3に記載のマスキング物品。
【請求項5】
前記カチオン性物質が多価金属カチオンを含む、請求項3に記載のマスキング物品。
【請求項6】
前記障壁誘発化合物が有機化合物を含む、請求項1に記載のマスキング物品。
【請求項7】
前記障壁誘発化合物が、カチオン性ポリマー及びカチオン性オリゴマーの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のマスキング物品。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマーが有機ポリマーを含む、請求項7に記載のマスキング物品。
【請求項9】
前記障壁誘発処理剤が無機化合物を含む、請求項1に記載のマスキング物品。
【請求項10】
前記無機化合物が多価金属化合物を含む、請求項9に記載のマスキング物品。
【請求項11】
前記多価金属化合物が金属塩を含む、請求項10に記載のマスキング物品。
【請求項12】
前記金属塩が、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、クロム、コバルト、チタン、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、マンガン、ストロンチウム、イットリウム、ランタン、ポリアルミニウムハロゲン化物、塩基性硝酸アルミニウム、加水分解アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジルコニル塩、チタニル塩、及びこれらの組み合わせの可溶性塩を含む、請求項11に記載のマスキング物品。
【請求項13】
保護された加工面に隣接する表面に塗布されたコーティングから、該保護された加工面を遮蔽するための粘着性マスキング物品であって、
(a)第1及び第2の対向する主表面と、少なくとも1つの縁部とを有する裏材層と、
(b)前記第1及び第2の裏材層の対向する主表面の少なくとも1つの少なくとも一部分の上の接着剤と、
(c)前記マスキング物品の少なくとも前記縁部に存在して、前記コーティングが前記裏材層の前記縁部と接触すると前記コーティングと接触するポリカチオン性障壁誘発処理剤と、を含む、粘着性マスキング物品。
【請求項14】
前記ポリカチオン性障壁誘発処理剤が、ビニルモノマーから誘導される架橋有機ポリカチオン性ポリマーを含む、請求項13に記載のマスキング物品。
【請求項15】
前記ポリカチオン性ポリマーが、ポリクアテルニウム−6及びポリクアテルニウム−37の少なくとも1つを含む、請求項13に記載のマスキング物品。
【請求項16】
前記ポリカチオン性ポリマーが、ポリ第四級アミンポリマー、多官能性プロトン化一級、二級、又は三級アミン、あるいはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のマスキング物品。
【請求項17】
前記ポリカチオン性ポリマーが、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩)、アミン官能性アクリルモノマーのプロトン化又は四級化されたホモポリマー又はコポリマー、及びプロトン化ポリエチレンイミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のマスキング物品。
【請求項18】
前記アミン官能性アクリルモノマーが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のマスキング物品。
【請求項19】
前記アクリルモノマーが、ジアリルジメチルアンモニウム塩、メタクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、四級化ジアルキルアミノアルキルアクリルアミジンアンモニウム塩、トリアルキルアミノアルキルアクリレート及びメタクリレート塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩(例えば、ジメチルジアリルアンモニウム塩)、アクリルアミドアルキルトリアルキル塩、メタクリルアミドアルキルトリアルキル塩、並びにアルキルイミダゾリウム塩から選択される、請求項17に記載のマスキング物品。
【請求項20】
有機カチオン性障壁誘発化合物を含むマスキング物品に関して使用する障壁誘発処理剤配合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−526903(P2012−526903A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510900(P2012−510900)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/034218
【国際公開番号】WO2010/132351
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】