説明

正立型イメージング装置

【課題】 本発明は、試料の外形や内部構造に応じた連続的または長期間の観察を可能にした正立型イメージング装置を提供することである。
【解決手段】 試料Spを保持する試料保持部2の上方に試料Spを観察する観察部3が配置され、前記観察部3によって前記試料保持部2の試料Spを観察する正立型イメージング装置において、
前記試料保持部2は、前記試料Spの姿勢を変更する姿勢変更手段18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を保持する試料保持部の上方に試料を観察する観察部が配置され、観察部によって試料保持部の試料を観察する正立型イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、正立型イメージング装置は、試料を保持する試料保持部の上方に試料を観察する観察部が配置され、観察部によって試料保持部の試料を観察する構成になっている。また、発光タンパクを利用した発光イメージング装置は、細胞内の遺伝子発現等の活性を連続的または長期間解析する手段として有用であり、各種培養細胞については、既に倒立型の装置で観察等を行う発光イメージングシステムが開発されている。
【0003】
さらに、発光タンパクによって微弱な発光を発する試料の発光画像を取得するための装置であって、特に資料の上方から観察した正立型のイメージングデータを用いて画像解析して、遺伝子発現等の活性を連続的または長期間に亘り測定することも可能な正立型発光イメージング装置についても、特許文献1に示されている。
【0004】
特許文献1の正立型発光イメージング装置は、植物の萌芽状態等を生物発光により観察する装置である。この正立型発光イメージング装置を使用することにより、正立型の観察が必要な試料、例えば胚、萌芽植物、昆虫、培養組織等の立体的且つ生きた生物材料の遺伝子発現等の活性を生体に優しい生物発光を用いて観察することが可能となる。また、特許文献1の装置では試料を収納する容器を2次元的に駆動するステージ駆動部が設けられている。このステージ駆動部によって容器を2次元的に移動させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−69076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、正立型の観察が必要な試料の殆どは、倒立型の観察の対象であった培養細胞とは異なり、立体的で且つ継続的に動くことがあるために所望の姿勢でイメージングを開始することが困難である。また、試料ステージ等の保持手段に所望の姿勢で保持したとしても、イメージングの途中で姿勢が変化する場合があり、着目点の長期間の観察が困難になる可能性もある。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、試料の外形や内部構造に応じた連続的または長期間の観察を可能にした正立型イメージング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面の態様は、試料を保持する試料保持部の上方に前記試料を観察する観察部が配置され、前記観察部によって前記試料保持部の試料を観察する正立型イメージング装置において、前記試料保持部は、前記試料の姿勢を変更する姿勢変更手段を備えていることを特徴とする正立型イメージング装置である。
そして、上記構成では、試料を保持する試料保持部の上方の観察部によって前記試料保持部の試料を観察する際に、試料保持部の姿勢変更手段によって試料の姿勢を変更するようにしたものである。
【0009】
好ましくは、前記試料保持部は、前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線を中心に前記試料を回転可能に支持する試料支持機構を有し、前記姿勢変更手段は、前記回転中心線を通り、かつ前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する基準平面に対して前記試料の回転角度を変更する状態で前記試料支持機構を駆動する回転角度変更手段である。
そして、上記構成では、前記試料保持部の試料支持機構によって前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線を中心に前記試料を回転可能に支持するとともに、前記姿勢変更手段の回転角度変更手段によって、前記回転中心線を通り、かつ前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する基準平面に対して前記試料の回転角度を変更する状態で前記試料支持機構を駆動するようにしたものである。
【0010】
好ましくは、前記試料支持機構は、前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線を中心に回転する回転軸と、前記回転軸の両端をそれぞれ回転自在に軸支する軸支部と、前記回転軸における前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線上で前記試料を保持する試料受部と、を有し、前記回転角度変更手段は、前記回転中心線を中心に前記回転軸を回転させる回転操作部と、前記回転軸の回転のトルク調整を行うトルク調整部と、前記基準平面に対する前記試料の回転角度を任意の角度に調整した状態で前記回転軸の回転位置を停止するストッパと、を有する。
そして、上記構成では、軸支部によって前記試料支持機構の回転軸の両端をそれぞれ回転自在に軸支し、前記試料保持部を前記回転軸によって前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線を中心に回転させ、前記回転軸における前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線上に前記試料を保持する試料受部を配置し、前記回転角度変更手段の回転操作部によって前記回転中心線を中心に前記回転軸を回転させるとともに、トルク調整部によって前記回転軸の回転のトルク調整を行い、さらに、ストッパによって前記基準平面に対する前記試料の回転角度を任意の角度に調整した状態で前記回転軸の回転位置を停止するようにしたものである。
【0011】
好ましくは、前記試料保持部は、前記試料を収容する収容体を有し、前記試料支持機構の回転中心線上に前記収容体内の前記試料が配置される。
そして、上記構成では、前記試料保持部の収容体に前記試料を収容し、前記試料支持機構の回転中心線上に前記収容体内の前記試料が配置されるようにしたものである。
【0012】
好ましくは、前記試料保持部は、前記収容体の下面に前記収容体を前記基準平面に対して上下左右方向に駆動するXYZテーブルを有する。
そして、上記構成では、前記試料保持部の前記収容体の下面のXYZテーブルによって前記収容体を前記基準平面に対して上下左右方向に駆動するようにしたものである。
【0013】
好ましくは、前記姿勢変更手段は、前記試料保持部を前記観察部の観察方向の中心線に対して軸回り方向に回転する回転位置調整手段をさらに含む。
そして、上記構成では、姿勢変更手段の回転位置調整手段によって前記試料保持部を前記観察部の観察方向の中心線に対して軸回り方向の回転方向に回転させるようにしたものである。
【0014】
好ましくは、前記正立型イメージング装置の本体は、前記試料保持部を遮光する遮光手段と、前記遮光手段を開閉する開閉窓と、を有し、前記遮光手段で前記試料保持部を遮光した状態で前記観察部によって前記試料保持部の試料を観察する発光イメージングを行う正立型発光イメージング装置である。
そして、上記構成では、前記正立型イメージング装置の本体は、正立型発光イメージング装置であり、遮光手段によって前記試料保持部を遮光し、開閉窓によって前記遮光手段を開閉する。前記遮光手段で前記試料保持部を遮光した状態で前記観察部によって前記試料保持部の試料を観察する発光イメージングを行うようにしたものである。これにより、立体的且つ動きのある試料でも所望の姿勢で発光イメージングすることが可能で、発光観察の期間中にも試料の姿勢を変更できる。
【0015】
好ましくは、前記正立型イメージング装置の本体は、前記遮光手段で遮光した状態で前記試料保持部の前記試料の姿勢を観察するための試料姿勢観察用光学手段をさらに備える。
そして、上記構成では、前記正立型イメージング装置の本体の試料姿勢観察用光学手段によって前記遮光手段で遮光した状態で前記試料保持部の前記試料の姿勢を観察するようにしたものである。これにより、正立型での発光イメージングを常に正確に実行できる。また、遮光状態でも試料の姿勢を変更できるようにした場合には、使い勝手が向上する。
【0016】
好ましくは、前記正立型イメージング装置の本体を構成する前記観察部は前記試料からの発光部の結像を行う結像光学系を有し、前記回転中心線を通り、かつ前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する基準平面上の基点と一致するように前記結像光学系の焦点を設定した。
そして、上記構成では、前記正立型イメージング装置の本体の結像光学系によって前記試料からの発光部の結像を行い、前記回転中心線を通り、かつ前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する基準平面上の基点と一致するように前記結像光学系による焦点を設定するようにしたものである。
【0017】
好ましくは、前記姿勢変更手段は、前記基点を中心にした回転軌跡に基づき前記試料の姿勢を変更する手段である。
そして、上記構成では、前記姿勢変更手段は、前記基点を中心にした回転軌跡に基づき前記試料の姿勢を変更するようにしたものである。これにより、長期間の発光イメージングによる画像同士の位置合わせが容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、試料の外形や内部構造に応じた連続的または長期間の観察を可能にした正立型イメージング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態の正立型発光イメージング装置のシステム全体の概略構成を示す斜視図。
【図2】第1の実施の形態の正立型発光イメージング装置のイメージング装置本体の側面図。
【図3】第1の実施の形態のイメージング装置の試料保持部に設けられた姿勢変更手段を示す要部の縦断面図。
【図4】第1の実施の形態のイメージング装置の姿勢変更手段を示す平面図。
【図5】第1の実施の形態のイメージング装置の姿勢変更手段の操作ノブを示す側面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態のイメージング装置の試料保持部に設けられた姿勢変更手段を示す要部の縦断面図。
【図7】第2の実施の形態のイメージング装置の試料保持部を示す要部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施の形態]
(構成)
図1乃至図5は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は、正立型イメージング装置としての正立型発光イメージング装置1のシステム全体の概略構成を示す斜視図である。正立型発光イメージング装置1は、試料Sp(図3参照)を保持する試料保持部2の上方に前記試料Spを観察する観察部3が配置され、前記観察部3によって前記試料保持部2の試料Spを観察する正立型イメージング装置本体4を有する。
【0021】
図2は、正立型イメージング装置本体4の側面図を示す。正立型イメージング装置本体4には、足部5付の基台6の上に鉛直方向に向けて脚部7が立設されている。この脚部7の上端部には、水平方向に向けて延設された支持アーム8の基端部が固定されている。支持アーム8の先端部側には前記観察部3が配設されている。
【0022】
前記観察部3は、支持アーム8の下側に配置された複数(本実施の形態では2つ)の対物レンズ9a、9bと、支持アーム8の上側に配置された結像レンズ10と、この結像レンズ10の上に取り付けられた撮像カメラ11とを有する。対物レンズ9a、9bは、レンズ切替え装置12によって図2中で左右方向に移動可能に支持されている。そして、観察時には2つの対物レンズ9a、9bのうちのいずれか一方が観察部3の観察方向の中心線(光軸)O1上に選択的に配置された状態に切替えられるようになっている。
【0023】
また、脚部7には、前記試料保持部2の支持台13が図2中で上下方向(Z方向)に移動可能な位置調整機構14を介して図2中で上下方向に移動可能に支持されている。位置調整機構14は、上下方向操作ノブ15の回転操作によって試料保持部2の支持台13を上下方向に移動させる構成になっている。
【0024】
さらに、試料保持部2の支持台13には、平板状の台座プレート16と、この台座プレート16を観察部3の観察方向の中心線O1と直交する平面に沿って互いに直交するX方向とY方向に移動可能なXYテーブル17とが設けられている。支持台13の下方には、2重管構造のX方向操作ノブ17aとY方向操作ノブ17bとが突設されている。そして、XYテーブル17は、X方向操作ノブ17aの回転操作によって台座プレート16をX方向に、Y方向操作ノブ16bの回転操作によって台座プレート16をY方向にそれぞれ移動させる構成になっている。
【0025】
また、台座プレート16には、試料Spの姿勢を変更する図3〜5に示す姿勢変更手段18が設けられている。この姿勢変更手段18は、円板状の試料台19の上に、観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する方向の回転中心線O2を中心に試料Spを回転可能に支持する試料支持機構20を有する。
【0026】
試料支持機構20は、観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する方向の回転中心線O2を中心に回転する回転軸21と、前記回転軸21の両端をそれぞれ回転自在に軸支する2つの軸支部(第1の軸支部22aと第2の軸支部22b)とを有する。回転軸21のほぼ中央部分には、前記試料Spを保持する凹陥状の試料受部23が形成されている。試料受部23の底面23aは、観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する方向の回転中心線O2上に配置されている。
【0027】
第1の軸支部22aと第2の軸支部22bには、軸受24が組み込まれ、回転軸21の両端が滑らかに回転できるように支持されている。第1の軸支部22aの外側に延出された回転軸21の一端部には、回転角度変更手段としての回転角度調整操作ノブ(回転操作部)25が固定されている。この回転角度調整操作ノブ25の回転操作にともない回転軸21が回転駆動される。これにより、回転軸21の回転中心線O2を通り、かつ観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する基準平面P1に対して前記試料Spの回転角度θを変更する状態で前記試料支持機構20を駆動する構成になっている。
【0028】
また、第2の軸支部22bの外側に延出された回転軸21の他端部には、この回転軸21の回転のトルク調整を行うトルク調整部26が設けられている。このトルク調整部26は、回転軸21の回転時の摩擦抵抗を高めて回転軸21の回転のトルク調整を行う構成になっている。
【0029】
さらに、試料台19の上には、回転角度調整操作ノブ25と対応する部分にほぼU字状のストッパ受け部材27が固定されている。このストッパ受け部材27のU字溝27a内には、回転角度調整操作ノブ25の一部が挿入されている。ストッパ受け部材27の外面には、ストッパ部材28が回転軸21の回転中心線O2と同方向に移動可能に装着されている。そして、ストッパ部材28をストッパ受け部材27のU字溝27aの内側に向けて押し込み操作、或いはねじ込み操作してストッパ部材28の先端を回転角度調整操作ノブ25に圧接させることにより、回転軸21の回転位置を停止するストッパ29が形成されている。
【0030】
また、台座プレート16には、円板状の試料台19を着脱可能に取り付ける取り付け用の円形穴30が形成されている。ここで、試料台19の上縁部には、大径なフランジ部19aが形成されている。台座プレート16の円形穴30には、試料台19のフランジ部19aと対応する形状の円形溝30aが形成されている。そして、台座プレート16の円形穴30に試料台19が着脱可能に取り付けられる際に、試料台19のフランジ部19aが台座プレート16の円形溝30aに嵌合されるようになっている。
【0031】
さらに、試料台19には、図4および図5に示す回転操作ピン(回転位置調整手段)31が突設されている。この回転操作ピン31を図4中に矢印で示す方向に押圧することにより、試料台19を台座プレート16の円形穴30に沿って観察部3の観察方向の中心線O1を中心とする軸回り方向に回転させることができる。
【0032】
また、本実施の形態の正立型発光イメージング装置1は、前記試料保持部2を遮光する暗箱(遮光手段)32と、暗箱32を開閉する開閉窓33と、を有する。開閉窓33は、暗箱32の本体に対して適宜の窓開閉機構34を介して暗箱32を閉じる閉位置と暗箱32を開く開位置とに移動可能に支持されている。そして、開閉窓33を閉位置にセットすることにより、暗箱32で試料保持部2を遮光した状態で観察部3によって試料保持部2の試料Spを観察する発光イメージングを行うようになっている。
【0033】
さらに、暗箱32の外部には、コンピュータなどの制御部35と、入出力手段37と、暗箱32内を照明する明視野観察用の白色光と蛍光観察用の励起光を得るための図示しない波長選択手段を有する光源装置(試料姿勢観察用光学手段)36が設けられている。制御部35は、撮像カメラ11および入出力手段37と送受信可能に接続されるとともに、光源装置36に対し照明のタイミングや光量を制御するための制御信号を送信できるように接続されている。光源装置36は、光ファイバ38の基端部に接続され、光ファイバ38の先端部は、暗箱32の内部の試料保持部2の近傍位置に配置されている。
【0034】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の正立型発光イメージング装置1の使用時には、例えば暗箱32の開閉窓33を開位置に移動した状態で、正立型イメージング装置の本体4の試料受部23上の回転中心線О2上に発光イメージング用の試料Spが載置される。この状態で、観察に使用される観察部3の2つの対物レンズ9a、9bのいずれか一方が選択され、レンズ切替え装置12によって2つの対物レンズ9a、9bのうちのいずれか一方が観察部3の観察方向の中心線(光軸)O1上に選択的に配置された状態に切替えられる。
【0035】
続いて、試料保持部2の支持台13がXYZ方向に移動調整される。すなわち、支持台13は、位置調整機構14によって図2中で上下方向(Z方向)に移動される。さらに、支持台13は、XYテーブル17のX方向操作ノブ17aの回転操作によって台座プレート16がX方向に、Y方向操作ノブ16bの回転操作によって台座プレート16がY方向にそれぞれ移動される。これにより、試料受部23の上に試料Spが観察部3の観察方向の中心線(光軸)O1上にセットされる。
【0036】
その後、姿勢変更手段18が駆動される。このとき、試料支持機構20の回転角度調整操作ノブ25の回転操作にともない回転軸21が回転駆動される。これにより、回転軸21の回転中心線O2を通り、かつ観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する基準平面P1に対して前記試料Spの回転角度θが変更される。このとき、トルク調整部26によって回転軸21の回転時の摩擦抵抗を高めて適正な回転軸21の回転のトルク調整を行うことができる。そのため、回転角度調整操作ノブ25の回転操作時に、回転軸21を所望の回転位置に移動させることができる。また、回転角度調整操作ノブ25の回転操作時に、回転軸21を所望の回転位置に移動させた状態で、さらに、ストッパ29を駆動し、ストッパ部材28をストッパ受け部材27のU字溝27aの内側に向けて押し込み操作、或いはねじ込み操作してストッパ部材28の先端を回転角度調整操作ノブ25に圧接させることにより、回転軸21の回転位置を停止することができる。
さらに、必要に応じて回転操作ピン31を操作することによって、試料Spの画像に対する方向を調整する。
【0037】
このように、試料受部23の上の試料Spの初期の姿勢変更操作が完了した状態で、暗箱32の開閉窓33が閉位置に移動される。この状態で、正立型発光イメージング装置1による正立型発光イメージングが行なわれる。この正立型発光イメージングは、正立型の観察が必要な試料、例えば胚、萌芽植物、昆虫、培養組織等の立体的且つ生きた生物材料の遺伝子発現等の活性を生体に優しい生物発光を用いて観察することである。すなわち、観察部3の撮像カメラ11で微弱光としての発光を発する試料Spの発光画像を取得し、必要に応じて光源装置を制御して白色光で照明し、明視野画像を取得し、かつまた蛍光を励起する励起光を照明して蛍光画像を取得する。
【0038】
また、長期間の観察において、イメージングの途中で試料受部23の上の試料Spの姿勢が変化する場合には、試料Spの姿勢を初期の姿勢から変更させる操作が必要になる。この場合は、暗箱32の開閉窓33を開位置に移動した明視野観察の状態で、再度、姿勢変更手段18が駆動される。そして、初期の姿勢調整と同様の手順で試料支持機構20の回転角度調整操作ノブ25の回転操作にともない、回転軸21の回転中心線O2を通り、かつ観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する基準平面P1に対して前記試料Spの回転角度θが変更される。
【0039】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の正立型発光イメージング装置1では、試料保持部2に試料Spの姿勢を変更する姿勢変更手段18を設けている。これにより、姿勢変更手段18により試料受部23の上の試料Spの姿勢を変更することにより、正立型での発光イメージングを常に正確に実行できる。
【0040】
さらに、本実施の形態では、姿勢変更手段18の駆動時には、試料支持機構20の回転角度調整操作ノブ25の回転操作にともない回転軸21が回転駆動され、回転軸21の回転中心線O2を通り、かつ観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する基準平面P1に対して前記試料Spの回転角度θが変更される。これにより、結像レンズ10の焦点を姿勢変更する回転軸21に一致させているので、回転軸21の回転時に試料Spの移動量を小さくすることができる。そのため、長期間の発光イメージングによる画像同士の位置合わせが容易になるという効果がある。したがって、試料Spの外形や内部構造に応じた連続的または長期間の観察を可能にした正立型イメージング装置を提供することができる。
【0041】
なお、上記実施の形態では、試料支持機構20の回転角度調整操作ノブ25の回転操作を手動で行う構成を示したが、この操作を電動化する構成にしてもよい。この場合には、回転角度調整操作ノブ25の回転操作を制御部35で制御する構成にすることにより、遮光状態でも試料の姿勢を変更できるので、使い勝手が向上する。
【0042】
[第2の実施の形態]
(構成)
図6および図7は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図5参照)の正立型発光イメージング装置1の姿勢変更手段18の構成を次の通り変更した変形例である。
すなわち、本実施の形態の姿勢変更手段18では、試料支持機構20の第1の軸支部22aと第2の軸支部22bとの間に配置される回転軸21に、その回転中心線O2から外れる方向にほぼU字状に屈曲された試料保持フレーム41が形成されている。この試料保持フレーム41には、回転軸21の回転中心線O2を通り、かつ観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する基準平面P1と平行な第2の基準平面P2が形成されている。
【0043】
また、本実施の形態では、試料Spを収容する収容体である保持容器43が使用される。この保持容器43は、具体的には、例えば、培養シャーレ、ウエル等などである。図7は、シャーレからなる保持容器43に試料Spの一例として寒天培地44上にショウジョウバエの胚45を配置したものである。
【0044】
さらに、収容容器43の下面の第2の基準平面P2には、収容容器43を基準平面P1に対して上下左右方向に駆動するXYZテーブル42を有する。このXYZテーブル42は、制御部35に接続され、制御部35で制御する構成になっている。
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の正立型発光イメージング装置1の使用時には、例えば暗箱32の開閉窓33を開位置に移動した状態で、正立型イメージング装置の本体4の試料保持フレーム41のXYZテーブル42の上に発光イメージング用の試料Spの収容容器43が載置される。
【0045】
その後、試料保持フレーム41のXYZテーブル42が駆動される。そして、XYZテーブル42の駆動にともない、回転軸21の回転中心線O2を通り、かつ観察部3の観察方向の中心線O1に対して直交する基準平面P1に対して前記試料Spの位置がXYZ方向に移動され、試料を中心線О1および中心線О2の交点に合致させる。さらに試料保持フレーム41の上の試料Spの収容容器43の初期の姿勢変更操作が第1の実施の形態と同様の操作で行われる。ここでは、その説明は省略する。このように試料受部23の上の試料Spの初期の姿勢変更操作が完了した状態で、暗箱32の開閉窓33が閉位置に移動される。この状態で、正立型発光イメージング装置1による正立型発光イメージングが行なわれる。本実施の形態の正立型発光イメージングでは、試料Spの基質は噴霧して発光させる。室温の環境で、成長に伴って特定の組織だけが光るように改変されている。そして、観察部3の撮像カメラ11で微弱光としての発光を発する試料Spの発光画像を取得する。
【0046】
また、長期間の観察において、イメージングの途中で試料受部23の上の試料Spの姿勢が変化する場合や異なる姿勢からの観察も行いたい場合には、試料Spの姿勢を初期の姿勢から別の向きへと変更させる操作が必要になる。この場合は、暗箱32の開閉窓33を閉位置に保持したまま、制御部35からの制御信号に基づき、光源装置36から光ファイバ38を通して暗箱32の内部の試料保持部2の近傍位置に照射される照明光が照射された状態で、試料Spを、回転軸21の回転による姿勢の調整に加え、XYZテーブルによって位置が変更される。このとき、光源装置36は、制御部35からの制御信号に基づき、試料Spの画像取得する際の光量よりは相対的に充分少ない光量で照明を行うようにすることで、試料Spの姿勢を入出力手段37に搭載されているディスプレー画面上でリアルタイムに確認可能にする共に、撮像カメラ11の撮像素子(CCD等)または試料内部での残光等のノイズを防いで、迅速に発光画像の取得を継続できる点で好ましい。ここにおいて、暗箱32の開閉窓33を開位置に移動した明視野観察の状態で、試料Spを、回転軸21の回転による姿勢の調整に加え、XYZテーブルによって位置が変更されるようにしてもよい。
【0047】
(効果)
そこで、本実施の形態では第1実施形態の効果に加え、収容容器43内の試料Spの位置決めが容易になる。つまり、本実施の形態では、XYZテーブル42の駆動によって、試料Spの着目点を回転軸21に一致させることができるので、試料Spをセットする際に回転軸21と試料Spの着目点がずれていてもよい。また、長期間の観察において試料Spの動きによって回転軸21から着目点がずれてしまっても、XYZテーブルによって修正することができる。そのため、長期間の発光イメージングによる画像同士の位置合わせが容易になるという効果がある。とくに光源装置36からの照明光を用いて姿勢変更する場合には、開閉窓33を閉めた遮光状態のままでリアルタイムに姿勢変更を行えるという利点もある。したがって、試料Spの外形や内部構造に応じた連続的または長期間の観察を可能にした正立型イメージング装置を提供することができる。
【0048】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。例えば、姿勢変更手段18は、手動の操作部に代えて(或いは併用で)電磁モータ等の電気駆動部を設けるようにして、使用者が入出力手段37を介して、ディスプレー画面を見ながらキーボード(または入力用マウス)等の入力手段を用いて制御部35から駆動制御することで、遠隔的に姿勢変更するようにしてもよい。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。

(付記項1) 正立型の発光イメージングを行う正立型発光イメージング装置において、試料を保持し、試料の少なくとも1箇所を基点に角度を変更する姿勢変更手段を有する保持手段を備え、前記姿勢保持手段が発光イメージングのための使用状態で姿勢を調整可能としたことを特徴とする正立型発光イメージング装置。
【0049】
(付記項2) 前記保持手段を遮光する遮光手段(具体的には暗箱)をさらに備え、前記姿勢変更手段による試料の姿勢変更状態を観察するための開閉窓を有する、付記項1に記載の装置。
(付記項3) 前記保持手段を遮光する遮光手段(具体的には暗箱)をさらに備え、前記姿勢変更手段による試料の姿勢変更状態を観察するための姿勢観察用光学手段(具体的には明視野観察手段、赤外線でもよい)を有する、付記項1に記載の装置。
【0050】
(付記項4) 試料を収容する収容体(具体的には培養シャーレ、ウエル等)の接地箇所を前記姿勢変更手段の基点とする、付記項1に記載の装置。
(付記項5) 前記試料からの発光に基づく結像を行う結像光学系をさらに有し、結像光学系による焦点を前記姿勢変更手段の基点と一致するように設定したことを特徴とする、付記項1または4記載の装置。
【0051】
(付記項6) 前記姿勢変更手段は、前記基点を中心にした回転軌跡に基づき試料の姿勢を変更する手段である、付記項4または5に記載の装置。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、試料を保持する試料保持部の上方に試料を観察する観察部が配置され、観察部によって試料保持部の試料を観察する正立型イメージング装置を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0053】
2…試料保持部、3…観察部、Sp…試料、18…姿勢変更手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する試料保持部の上方に前記試料を観察する観察部が配置され、前記観察部によって前記試料保持部の試料を観察する正立型イメージング装置において、
前記試料保持部は、前記試料の姿勢を変更する姿勢変更手段を備えていることを特徴とする正立型イメージング装置。
【請求項2】
前記試料保持部は、前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線を中心に前記試料を回転可能に支持する試料支持機構を有し、
前記姿勢変更手段は、前記回転中心線を通り、かつ前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する基準平面に対して前記試料の回転角度を変更する状態で前記試料支持機構を駆動する回転角度変更手段であることを特徴とする請求項1に記載の正立型イメージング装置。
【請求項3】
前記試料支持機構は、前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心を中心に回転する回転軸と、
前記回転軸の両端をそれぞれ回転自在に軸支する軸支部と、
前記回転軸における前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する方向の回転中心線上で前記試料を保持する試料受部と、
を有し、
前記回転角度変更手段は、前記回転中心線を中心に前記回転軸を回転させる回転操作部と、
前記回転軸の回転のトルク調整を行うトルク調整部と、
前記基準平面に対する前記試料の回転角度を任意の角度に調整した状態で前記回転軸の回転位置を停止するストッパと、
を有することを特徴とする請求項2に記載の正立型イメージング装置。
【請求項4】
前記試料保持部は、前記試料を収容する収容体を有し、
前記試料支持機構の回転中心線上に前記収容体内の前記試料が配置されることを特徴とする請求項2に記載の正立型イメージング装置。
【請求項5】
前記試料保持部は、前記収容体の下面に前記収容体を前記基準平面に対して上下左右方向に駆動するXYZテーブルを有することを特徴とする請求項4に記載の正立型イメージング装置。
【請求項6】
前記姿勢変更手段は、前記試料保持部を前記観察部の観察方向の中心線に対して軸回り方向に回転する回転方向の回転位置調整手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の正立型イメージング装置。
【請求項7】
前記正立型イメージング装置の本体は、前記試料保持部を遮光する遮光手段と、
前記遮光手段を開閉する開閉窓と、
を有し、
前記遮光手段で前記試料保持部を遮光した状態で前記観察部によって前記試料保持部の試料を観察する発光イメージングを行う正立型発光イメージング装置であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の正立型イメージング装置。
【請求項8】
前記正立型イメージング装置の本体は、前記遮光手段で遮光した状態で前記試料保持部の前記試料の姿勢を観察するための試料姿勢観察用光学手段をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の正立型イメージング装置。
【請求項9】
前記正立型イメージング装置の本体は、前記試料からの発光部の結像を行う結像光学系をさらに有し、
前記回転中心線を通り、かつ前記観察部の観察方向の中心線に対して直交する基準平面上の基点と一致するように前記結像光学系による焦点を設定したことを特徴とする請求項7に記載の正立型イメージング装置。
【請求項10】
前記姿勢変更手段は、前記基点を中心にした回転軌跡に基づき前記試料の姿勢を変更する手段であることを特徴とする請求項9に記載の正立型イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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