説明

正面板及びキャビネット

【課題】板本体が非磁性体であっても、磁石を有する収納ラックを取り付けることができる正面板を提供する。
【解決手段】物品を収納するキャビネットの正面に設けられ前記物品の収納及び取り出しの際に開閉される正面板1である。表面が化粧加工された非磁性体よりなる板本体2と、この板本体2の裏面2aのほぼ全域に取り付けられた磁性体板3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに設けられる正面板及びキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンユニットのキャビネットには、ヒンジによって開閉される扉や抽斗等が設けられており、キャビネット内に鍋やフライパン等の調理器具を収納することができる。そして、前記扉や前記抽斗の前部にある板(以下、正面板という)の裏面に、収納ラックが取り付けられる構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載の収納ラックは磁石を有しており、この磁石によって収納ラックを正面板の裏面に取り付けることができる。磁石が採用されていることによって、収納ラックを正面板に対して容易に着脱することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−308713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記収納ラックを正面板に磁石によって取り付けるためには、正面板が磁性体である必要がある。しかし、木製の板によって正面板が構成されているものがある。
そこで、本発明は、板本体が非磁性体であっても、磁石を有する収納ラックを取り付けることができる正面板、及び、この正面板を有するキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、物品を収納するキャビネットの正面に設けられ前記物品の収納及び取り出しの際に開閉される正面板であり、表面が化粧加工された非磁性体よりなる板本体と、この板本体の裏面のほぼ全域に取り付けられた磁性体板とを備えている。
この正面板によれば、板本体が非磁性体であっても、裏面に、磁石を有する収納ラックを取り付けることができる。さらに、磁性体板は板本体の裏面のほぼ全域に取り付けられていることから、収納ラックの取り付け位置を上下調整・左右調整することができるので、収納する物品の種類に応じて当該収納ラックの高さ位置及び左右位置の一方又は双方を変更することが可能となる。
また、板本体の裏面のほぼ全域に磁性体板が取り付けられていることから、正面板の裏面のほぼ全域が磁性体板によって構成され、裏面が煩雑とならず、外観が損なわれることを防止することができる。
【0006】
また、前記正面板は、前記磁性体板の端部を覆う被覆部材を更に備えているのが好ましい。前記磁性体板を例えば鋼板とすることができ、この場合、鋼板の端部がシャープエッジとなることもあるが、前記正面板によれば、磁性体板の端部によって使用者の手指を傷つけることを防止することができる。また、磁性体板は被覆部材によって縁取られ、正面板の裏面における外観をより良くすることができる。
また、この正面板において、前記被覆部材は、前記キャビネットが有するキャビネット本体の正面部と接触するパッキン部材からなるのが好ましい。この正面板によれば、パッキン部材が、使用者の手指を傷つけることを防止する前記被覆部材を兼ねることができ、部品数を少なくすることができる。
【0007】
また、前記正面板は、物品を収納する抽斗を備えた前記キャビネットの当該抽斗用の正面板であって、前記板本体は、裏面に、前記抽斗を構成する側枠部材が取り付けられる取付部を有し、前記磁性体板に、前記側枠部材との干渉を防止する逃げ部が設けられているものとすることができる。前記板本体の裏面のほぼ全域に前記磁性体板が取り付けられているが、この磁性体板に前記逃げ部が設けられていることから、側枠部材を板本体の裏面に取り付けることができる。
【0008】
または、前記正面板は、前記キャビネットの開口部をヒンジによって開閉する開閉扉として用いられる正面板であって、前記板本体は、裏面に、前記ヒンジが取り付けられる取付部を有し、前記磁性体板に、前記ヒンジとの干渉を防止する逃げ部が設けられているものとすることができる。前記板本体の裏面のほぼ全域に前記磁性体板が取り付けられているが、この磁性体板に前記逃げ部が設けられていることから、ヒンジを板本体の裏面に取り付けることができる。
【0009】
また、本発明のキャビネットは、キャビネット本体と、当該キャビネット本体の正面に設けられ物品の収納及び取り出しの際に開閉される正面板と、を有し、前記正面板は、表面が化粧加工された非磁性体よりなる板本体と、この板本体の裏面のほぼ全域に取り付けられた磁性体板とを備えている。
このキャビネットによれば、正面板が備えている板本体が非磁性体であっても、裏面に、磁石を有する収納ラックを取り付けることができる。さらに、磁性体板は板本体の裏面のほぼ全域に取り付けられていることから、収納ラックの取り付け位置を上下調整・左右調整することができるので、収納する物品の種類に応じて当該収納ラックの高さ位置及び左右位置の一方又は双方を変更することが可能となる。
また、板本体の裏面のほぼ全域に磁性体板が取り付けられていることから、正面板の裏面のほぼ全域が磁性体板によって構成され、裏面が煩雑とならず、外観が損なわれることを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、板本体が非磁性体である正面板の裏面に、磁石を有する収納ラックを取り付けることができる。また、正面板の裏面の外観が損なわれることを防止することができるので、この正面板がキャビネットに使用されることで、外観の良いキャビネットが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のキャビネットの実施の一形態を示す斜視図である。図1のキャビネット10は、キッチンユニット31に組み込まれている。キャビネット10は、シンク32及びガス調理器33を取り付けることができると共に、内部に収納空間が形成されたキャビネット本体11を備えている。前記収納空間を活用するために、キャビネット10は、物品を収納する抽斗13を備えている。この抽斗13は、前後に移動することができ、鍋やフライパン等の調理器具を収納することができる。なお、使用者がキッチンユニット31の正面に立った状態で、当該使用者が立つ側が前であり、キッチンユニット31の奥側が後である。
【0012】
抽斗13は、キャビネット本体11内に設けられたレール19に沿って前後移動可能であり、抽斗13は、底板23、後部の背板24、左右の側枠部材14及び前部の正面板1を備えている。正面板1は、キャビネット本体11の正面(前面)に設けられ、正面板1の表面1a(前面)に取っ手25が取り付けられている。使用者は、この取っ手25を掴むことで正面板1を含む抽斗13を開閉させ、物品の取り出し及び収納を行なうことができる。
【0013】
図2は、裏面1b側から見た正面板1の斜視図である。図3は正面板1の側部の断面図(図2のIII矢視における断面図)である。正面板1は、表面2bが化粧加工された非磁性体よりなる板本体2と、この板本体2の裏面2aのほぼ全域に取り付けられた一枚の磁性体板3とを備えている。
前記板本体2は矩形の板であり、例えば木製の板からなり非磁性体である。板本体2の表面2b及び側周面2cには化粧加工が施されており、化粧加工として塗装や樹脂シートが貼り付けられている。
【0014】
前記磁性体板3は板本体2よりも僅かに小さい輪郭形状を持つ薄板であり、例えば鋼板(鉄板)からなり磁性体である。磁性体板3の裏面3bは防錆処理(塗装)が施されている。磁性体板3は、板本体2よりも僅かに小さい輪郭形状を持つこと、及び、後述する逃げ部7aとなる欠損部が部分的に設けられていることにより、板本体2の裏面2aのほぼ全域に磁性体板3が取り付けられている構成となる。磁性体板3は、板本体2の裏面2aに、接着剤9(図3参照)又は粘着テープによって貼り付けられたり、ネジによって取り付けられたりしている。
【0015】
正面板1は、磁性体板3の四方の端部3aを覆う被覆部材を更に備えている。被覆部材は、前記キャビネット本体11(図1参照)の正面部12と接触するパッキン部材4からなる。パッキン部材4は、板本体2の裏面2aにおける四辺の縁部に設けられている。前記正面部12は、キャビネット本体11を構成する壁板部材の端面等である。パッキン部材4は、樹脂製又はゴム製であり、正面板1を閉じた場合に正面板1と前記正面部12との間に介在することで、両者間を密閉することができ、また、抽斗13を閉じた際の衝撃を和らげるものである。
【0016】
図3のパッキン部材4は、板本体2の裏面2aに接触しているベース部4aと、前記正面部12に当接する当接部4bとを有している。ベース部4aが、磁性体板3の左右方向(及び上下方向)の外側の位置で、釘26によって板本体2に固定される。ベース部4aには段付き部4cが形成されており、ベース部4aは、磁性体板3の端部3aの裏面3bを覆う突出部4dを有している。突出部4dは磁性体板3の裏面3b側へ向かって延びるように形成されている。そして、この突出部4dを含むベース部4a上に前記当接部4bが設けられている。
当接部4bは内部に空間が形成されており、この空間が縮小されるようにして当接部4bが弾性変形することによって、抽斗13を閉じた際の衝撃が和らげられる。
【0017】
当接部4bはベース部4aと一体であるが、当接部4bはベース部4aよりも軟質の材料によって形成されている。例えば当接部4bは軟質樹脂によって形成され、ベース部4aは硬質樹脂により形成されている。当接部4bを軟質とすることによって、抽斗13を閉じた際の衝撃を和らげる作用を高めることができる。ベース部4aを硬質とすることによって、パッキン部材4を板本体2に強固に固定することができる。
【0018】
図3において、板本体2の裏面2aは面一に形成されていることから、この裏面2aに磁性体板3を貼り合わせると、磁性体板3は裏面2aから僅かに突出する。また、磁性体板3の端部3aはシャープエッジ(角形状)となっている。そこで、磁性体板3の四方の端部3aをパッキン部材4が被覆することにより、磁性体板3の端部3aによって使用者の手指を傷つけることを防止することができる。さらに、正面板1に必要であるパッキン部材4が、使用者の手指を傷つけることを防止する被覆部材を兼ねることができ、部品数を少なくすることができる。また、正面板1にパッキン部材4を設けていることにより、キャビネット本体11側にパッキン部材が不要となる。また、磁性体板3の端部3aをパッキン部材4が被覆していることにより、磁性体板3の端部3aの防錆処理を不要としてもよい。
【0019】
図4は、別のパッキン部材44が採用された場合の断面図である。図4のパッキン部材44は、図3のパッキン部材4と比べて当接部の形状が異なる。図3のパッキン部材4の当接部4bは、ベース部4aの幅方向の両端部に跨って連続して形成されているが、図4のパッキン部材44の当接部44bの幅方向一端部(外側の端部)は、ベース部44aの幅方向の一端部(外側の端部)と連続しているが、当接部44bの幅方向他端部(内側の端部)は、ベース部44aの幅方向の他端部(内側の端部)と離れている。図4のパッキン部材44におけるその他の構成及び機能は、図3のパッキン部材4の構成及び機能と同様である。
【0020】
図2において、板本体2は、その裏面2aに、抽斗13を構成する前記側枠部材14が取り付けられる取付部6aを有している。図2の実施形態では、板本体2の裏面2aに、側枠部材14の端部の取り付け軸14aを挿入させる複数の孔が、取付部6aとして形成されている。そして、磁性体板3には、この取付部6aに取り付けられる側枠部材14との干渉を防止する逃げ部7aが設けられている。図2では、磁性体板3の左右の下部に、逃げ部7aとして切欠部が形成されている。板本体2の裏面2aに磁性体板3が取り付けられているが、この磁性体板3に逃げ部7aが設けられていることから、側枠部材14を板本体2の裏面2aに取り付けることができる。
【0021】
前記実施形態では、キッチンユニット31のキャビネット10が備えている抽斗13用として、正面板1を説明した。つまり、図2に示している正面板1は、抽斗13を備えたキャビネット10の当該抽斗13用のものである。他の実施形態として(図5参照)、正面板1は、キャビネット10(キャビネット本体11)の開口部11aを、ヒンジ15によって開閉する開閉扉として用いられるものであってもよい。
開閉扉として用いられる正面板1は図1のキッチンユニット31用であってもよいが、図5に示しているように、洗面台41用とすることができる。
【0022】
図5のキャビネット10は洗面台41に組み込まれている。キャビネット10は、洗面ボウル42及び水栓吐水部43を取り付けることができると共に、内部に収納空間が形成されたキャビネット本体11を備えている。
図6は、裏面1b側から見た図5の正面板1の斜視図である。この正面板1は、表面2bが化粧加工された非磁性体よりなる板本体2と、この板本体2の裏面2aのほぼ全域に取り付けられた一枚の磁性体板3とを備えている。
【0023】
図6の正面板1は図2の構成と同様である。板本体2は矩形の板であり、例えば木製の板からなり非磁性体である。板本体2の表面2b及び側周面2cには化粧加工が施されており、化粧加工として塗装や樹脂シートが貼り付けられている。
前記磁性体板3は板本体2よりも僅かに小さい輪郭形状を持つ薄板であり、例えば鋼板(鉄板)からなり磁性体である。磁性体板3の裏面3bは防錆処理が施されている。磁性体板3は、板本体2よりも僅かに小さい輪郭形状を持つこと、及び、後述する逃げ部7bとなる欠損部が部分的に設けられていることにより、板本体2の裏面2aのほぼ全域に磁性体板3が取り付けられている構成となる。磁性体板3は、板本体2の裏面2aに、接着剤又は粘着テープによって貼り付けられたり、ネジによって取り付けられたりしている。
また、図2の実施形態と同様に、正面板1は、磁性体板3の四方の端部3aを覆う被覆部材を更に備えており、被覆部材はパッキン部材4からなる。パッキン部材4は前記実施形態と同じである。
【0024】
板本体2は、その裏面2aに、前記ヒンジ15が取り付けられる取付部6bを有している。図6の実施形態では、板本体2の裏面2aに、ヒンジ15の一部を挿入させる凹部が、取付部6bとして形成されている。そして、磁性体板3には、この取付部6bに取り付けられるヒンジ15との干渉を防止する逃げ部7bが設けられている。図6では、磁性体板3の左右方向一方側の縁部に、逃げ部7bとして切欠部が二箇所形成されている。板本体2の裏面2aに磁性体板3が取り付けられているが、この磁性体板3に逃げ部7bが設けられていることから、ヒンジ15を板本体2の裏面2aに取り付けることができる。
【0025】
以上の各実施の形態の正面板1によれば、板本体2の裏面2aのほぼ全域に一枚の磁性体板3が取り付けられていることから、正面板1の裏面1bのほぼ全域が当該磁性体板3の裏面3bによって構成され、当該裏面1bが煩雑とならず、外観が損なわれることを防止することができる。さらに、板本体2の裏面2aにおいて、磁性体板3の四方の端部3aがパッキン部材(被覆部材)4によって覆われていることから、磁性体板3はパッキン部材4によって縁取られ、外観をより一層良くすることができる。これにより、この正面板1がキャビネット10の一部として使用されることにより、外観の良いキャビネット10が得られる。
【0026】
さらに、本発明のキャビネット10は、磁石を有する収納ラック21(図7)を更に備えている。そして、板本体2の裏面2aのほぼ全域に一枚の磁性体板3が取り付けられていることから、板本体2が非磁性体であっても、前記収納ラック21を正面板1の裏面1bのほぼ全域に取り付けることができる。さらに、この収納ラック21の取り付け位置を上下調整することができ、収納する物品の種類に応じて当該収納ラック21の高さ位置を変更することが可能となる。
【0027】
収納ラック21について説明する。
図7は、収納ラック21の分解斜視図である。この収納ラック21は、例えば図1に示したキッチンユニット31等に設けられた抽斗13の内の有効高さの大きい正面板1の裏面(内壁面)に取り付けて使用される。
【0028】
収納ラック21は、棚部材113と、棚枠部材114とを備えている。棚枠部材114は、左右の側壁部115と、後壁部116とを備えている。左右の側壁部115と後壁部116と正面板1の裏面とで囲まれた空間が、収納ラック21における物品の収納空間となる。
側壁部115は、合成樹脂製又は金属製の板材からなり、中央部には左右方向に貫通する開口118が形成されている。側壁部115の上縁は後下がり傾斜状に形成されている。側壁部115の内側面には、上縁から下方に延びる凹溝119が形成されており、この凹溝119には、収納ラック21内を前後に仕切る仕切りバー120が着脱可能に取り付けられている。
【0029】
側壁部115の前端部には、収納ラック21を正面板1の裏面1bに取り付けるための取付部122が左右内方に向けて延設するように一体形成されている。取付部122は、内部に設けられた磁石100によって正面板1の裏面1bに取り付けられる。
後壁部116は、左右の側壁部115の後端縁上部に架設されている。後壁部116は、金属製又は合成樹脂製の板材からなり、上下方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい帯形状に形成されている。後壁部116の上下方向の寸法は側壁部115の上下方向の寸法よりも小さく、後壁部116の下側において、左右の側壁部115の間が後方に開放されている。
【0030】
左右の側壁部115の下端部には、前後一対の連結バー124F,124Rが架設されている。左右の側壁部115は、後壁部116と連結バー124F,124Rとによって相互に連結されている。連結バー124F,124Rは、金属製又は合成樹脂製の中空又は中実の棒材であり、本実施の形態では、断面円形状の丸棒材が用いられている。この連結バー124F,124Rは、後述するように棚部材113が取り付けられる被取付部(被係合部)として機能する。
【0031】
棚部材113は、合成樹脂製又は金属製であり、長方形の板形状に形成された第1の棚部126と、長方形の板形状に形成された第2の棚部127とを備えている。第1の棚部126と、第2の棚部127とは、短手方向の一端部同士(長辺同士)が連結され、L字形状をなすように直交している。
棚部材113は、第1の棚部126を使用する第1の姿勢(図8(a)参照)と、第2の棚部127を使用する第2の姿勢(図8(b)参照)とに切換可能に棚枠部材114に取り付けられている。なお、図8において、後壁部116には、収納ラック21内を左右に仕切る仕切り板128が左右方向にスライド可能に取り付けられている。
【0032】
図9は、棚枠部材114に第1の姿勢で棚部材113を取り付けた場合の収納ラック21の縦断面図である。第1の棚部126の短手方向(前後方向)の両端部の下面には、前後一対の係合部(棚取付部)129,130が設けられている。前係合部129は、下方に開口した断面略C字状に形成され、前側の連結バー124Fに対して上側から係合(嵌合)される。後係合部130は、第1の棚部126の後端縁から下方及び前方へ延びるように略L字形状に形成されている。後係合部130と第1の棚部126とによって前方へ開口した断面略コ字の溝が形成され、この溝内に後側の連結バー124Rを収めるようにして、後係合部130が当該連結バー124Rに係合される。なお、前係合部129及び後係合部130は、棚部材113の左右方向の全幅に亘って形成されているが、幅方向の複数箇所(例えば両端と中央等)に形成されていてもよい。
【0033】
第1の棚部126は、前後の連結バー124F,124R上で前後方向に沿うように横向き姿勢で配置され、第2の棚部127は、第1の棚部126の後端部から上方へ向けて延び、縦向き姿勢で配置されている。この第2の棚部127は、後壁部116の下側で、後壁部116と略同じ前後位置に配置されている。したがって、棚部材113を第1の姿勢とした場合、第1の棚部126が実質的な棚として機能し、第2の棚部127は、後壁部116の下側開放部分を塞ぐ壁として機能している。
【0034】
図10は、棚枠部材114に第2の姿勢で棚部材113を取り付けた場合の収納ラック21の縦断面図である。第1の棚部126に形成された前係合部129は、前側の連結バー124Fに係合しているが、後係合部130は、後側の連結バー124Rに係合していない。そして、棚部材113は、前側の連結バー124Fにぶら下がった状態で連結されている。したがって、棚部材113の第2の姿勢は、第1の姿勢から前側の連結バー124Fを中心に下方へ略90度回転した姿勢となっている。なお、棚部材113を第1の姿勢から第2の姿勢に変更する場合、棚部材113の前係合部129及び後係合部130を一旦連結バー124F,124Rから取り外し、棚部材113の前係合部129を前側の連結バー124Fに連結する。
【0035】
第1の棚部126は、前側の連結バー124Fから下方向へ向けて延び、縦向き姿勢で配置されている。また、第2の棚部127は、第1の棚部126の下端から後方向へ向けて延び、前後方向に沿うように横向き姿勢で配置されている。したがって、第2の姿勢では、第2の棚部127が実質的な棚として機能する。第1の棚部126は、棚枠部材114の下方に所定間隔をあけて第2の棚部127を配置した状態で連結バー124Fに連結させるための連結部材として機能している。第2の姿勢における第2の棚部127は、第1の姿勢における第1の棚部126よりも低い位置に配置されている。
【0036】
棚部材113を第2の姿勢とした場合、後係合部130が正面板1の裏面1bに当接し、第2の棚部127は、やや後上がり傾斜状に配置されるように姿勢が保持されている(水平方向に対する第2の棚部127の傾斜角度をθで示す)。すなわち、第2の姿勢において、後係合部130は第2の棚部127の姿勢を後上がり傾斜状に設定する姿勢設定部として機能している。後係合部130の前端には、前方へ突出(屈曲)して正面板1の裏面1bに当接する当接部132が形成されている。
【0037】
以上の構成において、棚部材113を図9に示すように第1の姿勢とし、第1の棚部126を使用した場合、背の低い物品(例えば、調味料容器Y1等)の出し入れを容易に行うことができる。しかし、この場合、食品包装用フィルムの箱のように背の高い収納物Y2を収納すると、図11に示すように、当該収納物Y2が正面板1よりも上方に突出し、抽斗13を閉めることができなくなる。
したがって、専ら背の高い収納物Y2を収納する用途で収納ラック21を使用する場合には、図10に示すように棚部材113を第2の姿勢とし、第2の棚部127を使用する。これによって、抽斗13の開閉を妨げることなく背の高い収納物Y2を収納することが可能となる。
【0038】
図9に示すように、棚部材113を第1の姿勢とした場合、第2の棚部127は後壁部116の下側開放部分を塞ぐ壁として機能しているので、収納物Y1の落下を防止することができる。
図10に示すように、棚部材113を第2の姿勢とした場合、第2の棚部127は後上がり傾斜状に配置されるので、第2の棚部127によって支持された収納物Y2は正面板1の裏面1bに凭れるような姿勢となる。そのため、当該収納物Y2が後側に倒れるのを防止することができ、抽斗13に対する調理器具等の出し入れの際に当該収納物Y2が邪魔になるのを防止することができる。
【0039】
前係合部129や前側の連結バー124Fは、棚部材113を第1の姿勢とした場合と第2の姿勢とした場合との双方で使用されるため、各姿勢用に個別の係合部や連結バーを設ける場合に比べて部品点数を少なくすることができ、製造コストを低減することができる。
【0040】
また、本発明の前記正面板1及び前記キャビネット10は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。図2の逃げ部7aを切欠部として説明したが、取付部6aに取り付けられる側枠部材14の取り付け軸14aとの干渉を防止するために、逃げ部7aを当該取り付け軸14aが挿通する孔としてもよい(図示せず)。
【0041】
また、前記収納ラック21は、抽斗13の正面板1の裏面に取り付けて使用されているが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示した開閉扉とした正面板1の裏面に取り付けて使用することも可能である。但し、収納ラック21は、例えば抽斗13の内部のように高さの制限がある場所に取り付けて使用する場合により有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のキャビネットの実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】裏面側から見た正面板の斜視図である。
【図3】正面板の側部の断面図である。
【図4】別のパッキン部材44を採用した場合の断面図である。
【図5】本発明のキャビネットの他の実施の形態を示す斜視図である。
【図6】裏面側から見た正面板の斜視図である。
【図7】収納ラックの分解斜視図である。
【図8】(a)は、棚枠部材に第1の姿勢で棚部材を取り付けた場合の収納ラックの斜視図、(b)は、棚枠部材に第2の姿勢で棚部材を取り付けた場合の収納ラックの斜視図である。
【図9】図8(a)に示される収納ラックの縦断面図である。
【図10】図8(b)に示される収納ラックの縦断面図である。
【図11】図8(a)に示される収納ラックに背の高い収納物を収納した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 正面板
2 板本体
2a 裏面
2b 表面
3 磁性体板
3a 端部
4 パッキン部材(被覆部材)
6a 取付部
6b 取付部
7a 逃げ部
7b 逃げ部
10 キャビネット
11 キャビネット本体
11a 開口部
12 正面部
13 抽斗
14 側枠部材
15 ヒンジ
21 収納ラック
44 パッキン部材(被覆部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納するキャビネットの正面に設けられ前記物品の収納及び取り出しの際に開閉される正面板において、
表面が化粧加工された非磁性体よりなる板本体と、この板本体の裏面のほぼ全域に取り付けられた磁性体板とを備えていることを特徴とする正面板。
【請求項2】
前記磁性体板の端部を覆う被覆部材を更に備えている請求項1に記載の正面板。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記キャビネットが有するキャビネット本体の正面部と接触するパッキン部材からなる請求項2に記載の正面板。
【請求項4】
物品を収納する抽斗を備えた前記キャビネットの当該抽斗用の正面板であって、
前記板本体は、裏面に、前記抽斗を構成する側枠部材が取り付けられる取付部を有し、前記磁性体板に、前記側枠部材との干渉を防止する逃げ部が設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の正面板。
【請求項5】
前記キャビネットの開口部をヒンジによって開閉する開閉扉として用いられる正面板であって、
前記板本体は、裏面に、前記ヒンジが取り付けられる取付部を有し、前記磁性体板に、前記ヒンジとの干渉を防止する逃げ部が設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の正面板。
【請求項6】
キャビネット本体と、当該キャビネット本体の正面に設けられ物品の収納及び取り出しの際に開閉される正面板と、を有し、
前記正面板は、表面が化粧加工された非磁性体よりなる板本体と、この板本体の裏面のほぼ全域に取り付けられた磁性体板とを備えていることを特徴とするキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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