説明

正面照射検出器、A/D変換器の載置方法及びCT装置

【課題】 検出器の構成に対して変更を最小とするに、A/D変換器を正面照射検出器内に載置することができる、正面照射検出器、A/D変換器を正面照射検出器内に載置する方法、及びCT装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 正面照射検出器は、コリメータ、X線から可視光への変換器、可視光からアナログ信号への変換器、基板、及び前記アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備える。A/D変換器を検出器内に載置する方法は、A/D変換器を基板のX線が照射されない位置に載置するステップを含む。CT装置は前記正面照射検出器を含んでいる。従来の検出器の構成に対して変更を最小とする上に、A/D変換器を正面照射検出器の中に載置し、A/D変換器がX線に照射されず、A/D変換器が良好に保護されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT装置による撮像技術に関し、特に正面照射検出器、A/D変換器の載置方法、及びCT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検出器はCT装置において最も重要な部品の1つである。この検出器はX線管からのX線を電気信号に変換する。そして、A/D変換部品がアナログ信号をディジタル信号に変換する。A/D変換部品は、サイズが大きいので、検出器内に実装することは困難である。そのため、アナログ信号を検出器の外部に引き出し、検出器の外部に位置したA/D変換部品によりアナログ信号をディジタル信号に変換することによる処理が必要である。
【0003】
通常、1つの検出器において、数百、数千のアナログ電気信号を出力し、これらのアナログ電気信号を検出器の外部に出力することは、巨大な電気ケーブルだけでなく、信号の完璧性に対する要求も高い。
【0004】
ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途集積回路)設計技術の発展に従って、A/D変換器のサイズ及びパワーは小さくなってきており、サイズ的にはA/D変換器を検出器内に載置することができるようになっている。
【0005】
しかし、X線によりASICチップが壊れる可能性があるので、A/D変換器を検出器内に載置しながらX線の照射を避けることが研究のポイントとなっている。
特許文献1では「Module assembly for multiple die back-illuminated diode」の背面照射検出器に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許7,439,516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この背面照射検出器はA/D変換器をダイオードと基板との間に載置し、主に高級なCT装置に用いられる。この技術はコストが高く、背面照射検出器の構成に対して大幅な変更がされている。
【0008】
本発明は、検出器の構成に対して変更を最小とする上に、A/D変換器を正面照射検出器内に載置することができる、正面照射検出器、A/D変換器を正面照射検出器内に載置する方法、及びCT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の問題を解決するために、第1観点は、コリメータ、X線から可視光への変換器、可視光からアナログ信号への変換器、基板、及びアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備える正面照射検出器である。そして、前記コリメータを通過したX線は、前記X線から可視光への変換器へ照射されて前記X線から可視光への変換器により可視光に変換され、前記基板に載置された前記可視光からアナログ信号への変換器により前記可視光がアナログ信号に変換される。

【0010】
A/D変換器は、幅を広げたことで形成された拡張部を有する前記基板の該拡張部の上面または下面に設けられている。
A/D変換器は基板の下面に設けられ、且つ基板と可視光からアナログ信号への変換器との間には遮蔽片が設けられている。
A/D変換器は基板の下面に設けられ、且つ基板の上端には遮蔽片が嵌め込まれている。
【0011】
A/D変換器の基板と離れる側にヒートシンクがさらに設けられている。
遮蔽片には、高密度材料が用いられる。
遮蔽片には、熱膨張係数が可視光からアナログ信号への変換器の熱膨張係数に近いものが用いられる。
【0012】
第2観点は、A/D変換器を正面照射検出器に載置する方法である。正面照射検出器はコリメータ、X線から可視光への変換器、可視光からアナログ信号への変換器及び基板を備え、前記コリメータを通過したX線が、前記X線から可視光への変換器へ照射されて前記X線から可視光への変換器により可視光に変換され、前記基板に載置された前記可視光からアナログ信号への変換器により前記可視光がアナログ信号に変換されるものであり、A/D変換器を、前記基板のX線が照射できない位置に設けるステップを有する。
【0013】
A/D変換器を基板のX線が照射できない位置に設けるステップは、幅を広げたことにより形成された拡張部を有する基板を用意し、A/D変換器を基板の拡張部の上面または下面に設ける。
【0014】
A/D変換器を基板のX線が照射できない位置に設けるステップは、A/D変換器を基板の下面に設け、基板と可視光からアナログ信号への変換器との間に遮蔽片を設ける。
【0015】
A/D変換器を基板のX線が照射できない位置に設けるステップは、A/D変換器を基板の下面に設け、A/D変換器の上端に遮蔽片を嵌め込む。
【0016】
第2観点のA/D変換器を正面照射検出器に載置する方法はA/D変換器の基板と離れる側にヒートシンクがさらに設けられている。
遮蔽片には高密度材料が用いられる。
遮蔽片には、熱膨張係数が可視光からアナログ信号への変換器の熱膨張係数に近いものが用いられる。
【0017】
第3観点は正面照射検出器を含むCT装置であって、該正面照射検出器は、コリメータ、X線から可視光への変換器、可視光からアナログ信号への変換器、基板、及びアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備え、前記コリメータを通過したX線が、前記X線から可視光への変換器へ照射されて前記X線から可視光への変換器により可視光に変換され、前記基板に載置された前記可視光からアナログ信号への変換器により前記可視光がアナログ信号に変換されるものである。
【0018】
A/D変換器は幅を広げたことで形成された拡張部を有する前記基板の該拡張部の上面または下面に設けられている。
A/D変換器は基板の下面に設けられ、且つ基板と可視光からアナログ信号への変換器との間には遮蔽片が設けられている。
【0019】
A/D変換器は基板の下面に設けられ、且つ基板の上端には遮蔽片が嵌め込まれている。
A/D変換器の基板と離れる側にヒートシンクがさらに設けられている。
遮蔽片には、高密度材料が用いられる。
【発明の効果】
【0020】
従来技術と比べれば、本発明の正面照射検出器、A/D変換器を正面照射検出器内に載置する方法、及びCT装置は以下の有益な効果がある。
【0021】
本発明は従来の検出器の構成に対して変更を最小とする上に、A/D変換器をその中に載置し、A/D変換器がX線に照射されず、A/D変換器が良好に保護されている。
また、本発明は検出器の構成がよりモジュール化され、検出器の設計の融通性及び信頼性が高くなり、検出器のメンテナンスに優れ、検出器のメンテナンスコストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下、本開示内容をより容易に理解するために、図面を参照しながら説明する。
【図1】本発明の正面照射検出器の1つの実施例を示した図である。
【図2】本発明の正面照射検出器の別の実施例を示した図である。
【図3】本発明の正面照射検出器のさらに別の実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明はこの実施形態に限られない。
図1〜図3に示されたように、本発明の正面照射検出器は、コリメータ1、X線から可視光への変換器2、可視光からアナログ信号への変換器3、及び基板4を備える。なお、前記コリメータ1を通過したX線は、前記X線から可視光への変換器2へ照射されて前記X線から可視光への変換器2により可視光に変換され、前記可視光からアナログ信号への変換器3により前記可視光がアナログ信号に変換される。また、可視光からアナログ信号への変換器3は基板4に載置されている。アナログ信号は線結合により基板に接続されている。そして、本発明の正面照射検出器はアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器6をさらに備えている。
【0024】
ここで、コリメータ1は散乱したX線ビームの整形に用いられ、隣接した画素でのX線の妨害を減らすことができる。X線から可視光への変換器2はScintillator pack(シンチレータ、特別な材料で焼成)が用いられる。可視光からアナログ信号への変換器3はダイオードが用いられる。基板4はガラス繊維またはセラミックを絶縁材料とした多層電気回路板が用いられる。
【0025】
本発明の正面照射検出器の1つの実施例において、図1に示されたように、A/D変換器6が幅を広げたことで形成された拡張部を有する前記基板4の該拡張部の上面または下面に設けられている。A/D変換器6の位置はX線ビーム内ではないので、X線による損傷がない。
【0026】
本発明の正面照射検出器の別の実施例において、図2に示されたように、A/D変換器6は基板4の下面に設けられ、且つ基板4と可視光からアナログ信号への変換器3との間には遮蔽片5が設けられている。遮蔽片5の長さはA/D変換器6の全体を覆うように形成されている。
【0027】
本発明の正面照射検出器のさらに別の実施例において、図3に示されたように、A/D変換器6は基板4の下面に設けられ、且つ基板4の上端には遮蔽片5が嵌め込まれている。
【0028】
遮蔽片5は高密度材料、例えばタングステンが用いられる。これにより、A/D変換器6がX線照射範囲内に位置しても、タングステンなどの遮蔽片5がA/D変換器6に照射されないようにX線を遮断する。したがって、A/D変換器6がX線に照射されないように保つことができ、X線照射によりA/D変換器6が壊れることがない。
【0029】
また、遮蔽片5の熱膨張係数は可視光からアナログ信号への変換器3の熱膨張係数に近づいたほうがよい。これにより、異なる熱膨張係数で可視光からアナログ信号への変換器が変形することを防止することができる。
【0030】
図1から図3に示されたように、本発明の正面照射検出器はA/D変換器6の基板4と離れる側にヒートシンク7がさらに設けられている。ヒートシンク7は素早くA/D変換器6からの熱を放散させることができ、温度による可視光からアナログ信号への変換器3の性能の影響を減らすことができる。
【0031】
ここでは、ヒートシンク7によりA/D変換器6からの熱を放散しているが、当業者が周知である別の放熱方法を使用してもよい。
【0032】
A/D変換器6には小さい電流、複数チャンネル機能のA/D変換器、例えばGEから開発されたvyper系、AD会社のADAS系などが用いられ、基板4は層数及び平坦性の要求に基づいてセラミックまたはガラス繊維の多層電気回路板が用いられる。回流ロウ付けによりチャンネル数に対応するA/Dを基板4にロウ付けし、vyper系のチップを一例として32列の検出器の基板に8個のA/Dチップをロウ付けする必要がある。
【0033】
図3において、遮蔽片5が基板4の上部に嵌め込まれているので、基板4が該遮蔽片5を介して可視光からアナログ信号への変換器3に接続されるようになっている。このときの基板4は混合電気回路板と称する。
【0034】
本発明はA/D変換器を正面照射検出器内に載置した方法を開示しているが、本発明の別の観点として、正面照射検出器は、コリメータ1、X線から可視光への変換器2、可視光からアナログ信号への変換器3及び基板4を備える。なお、可視光からアナログ信号への変換器3は基板4に載置されている。
【0035】
該方法は、A/D変換器6を、基板4の、X線が照射できない位置に設ける。
以下、ステップを実現する3つの方法について紹介する。ここでは3つの方法について紹介するが、本発明はこの3つの方法に限られなく、当業者が周知している任意の方法で実現することができる。
【0036】
1つの方法は:
基板4を長くする、
A/D変換器6を、基板を広げたことにより形成された拡張部の上面または下面に設ける、
基板4を広げたことにより形成された拡張部にはX線が照射できないので、A/D変換器6を基板の拡張部に設けると、A/D変換器6がX線に照射されて壊れることを避けることができる。
【0037】
別の方法は:
A/D変換器6を基板4の下面に設ける、
基板4と可視光からアナログ信号への変換器3との間に遮蔽片5を設ける。
【0038】
この方法は、基板4いないが、A/D変換器6がX線に放射されることを防止するために、基板4と可視光からアナログ信号への変換器3との間に遮蔽片5を設け、遮蔽片5がX線を遮断することができ、A/D変換器6を有効的に保護することができる。
【0039】
さらに別の方法は:
A/D変換器6を基板4の下面に設ける、
A/D変換器6の上端に遮蔽片5を嵌め込む。
【0040】
この方法は、遮蔽片5を基板4の上端、すなわち基板4と可視光からアナログ信号への変換器3とが接触する表面に嵌め込んで、上述の方法と同じ効果が得られる。
【0041】
また、A/D変換器の動きによる熱を防止するために、本発明のA/D変換器を正面照射検出器内に載置する方法はA/D変換器6の基板4と離れる側にヒートシンク7がさらに設けられている。
【0042】
遮蔽片5には高密度材料が用いられている。その熱膨張係数は可視光からアナログ信号への変換器3の熱膨張係数に近いほうがよい。
【0043】
本発明の別の方面として、本発明はCT装置を開示している。そのCT装置は正面照射検出器を含んでいる。該正面照射検出器は、コリメータ1、X線から可視光への変換器2、可視光からアナログ信号への変換器3、及び基板4を備える。なお、前記コリメータ1を通過したX線は、前記X線から可視光への変換器2へ照射されて前記X線から可視光への変換器2により可視光に変換され、前記可視光からアナログ信号への変換器3により前記可視光がアナログ信号に変換される。また、可視光からアナログ信号への変換器3は基板4に載置されている。そして、該正面照射検出器はアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器6をさらに備えている。
【0044】
A/D変換器6は、幅を広げたことで形成された拡張部を有する基板4の該拡張部の上面または下面に設けられている。
【0045】
A/D変換器6は基板4の下面に設けられ、且つ基板4と可視光からアナログ信号への変換器3との間には遮蔽片5が設けられている。
【0046】
A/D変換器6は基板4の下面に設けられ、且つ基板4の上端には遮蔽片5が嵌め込まれている。
【0047】
また、本発明のCT装置はA/D変換器6の基板4と離れる側に設けられたヒートシンク7をさらに含んでいる。
【0048】
遮蔽片5には、高密度材料が用いられる。
遮蔽片5には、熱膨張係数が可視光からアナログ信号への変換器3の熱膨張係数に近いものが用いられる。
【0049】
本発明のCT装置に含まれる正面照射検出器は本発明の正面照射検出器と似ているので、ここで説明を省略する。
【0050】
上述のように本発明の具体的な実施例について図面を参照しながら説明したが、当業者は本発明の主旨及び範囲を逸脱しない範囲で、本発明に対して様々な変形、修正及び改良を加えて実施することができる。これらの変形、修正及び改良は本発明の請求の範囲が限定する主旨及び範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリメータ、X線から可視光への変換器、可視光からアナログ信号への変換器、及び基板を備える正面照射検出器であって、
前記正面照射検出器は、前記コリメータを通過したX線が、前記X線から可視光への変換器へ照射されて前記X線から可視光への変換器により可視光に変換され、前記基板に載置された前記可視光からアナログ信号への変換器により前記可視光がアナログ信号に変換されるものであり、
前記アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器をさらに備えている正面照射検出器。
【請求項2】
前記A/D変換器は、幅を広げたことで形成された拡張部を有する前記基板の該拡張部の上面または下面に設けられている請求項1に記載の正面照射検出器。
【請求項3】
前記A/D変換器は前記基板の下面に設けられ、且つ前記基板と前記可視光からアナログ信号への変換器との間には遮蔽片が設けられている請求項1に記載の正面照射検出器。
【請求項4】
前記A/D変換器は前記基板の下面に設けられ、且つ前記基板の上端には遮蔽片が嵌め込まれている請求項1に記載の正面照射検出器。
【請求項5】
前記A/D変換器の前記基板と離れる側にヒートシンクがさらに設けられている請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の正面照射検出器。
【請求項6】
前記遮蔽片には高密度材料が用いられる請求項3または請求項4に記載の正面照射検出器。
【請求項7】
前記遮蔽片の熱膨張係数は前記可視光からアナログ信号への変換器の熱膨張係数に近い請求項6に記載の正面照射検出器。
【請求項8】
A/D変換器を正面照射検出器に載置する方法であって、
前記正面照射検出器は、コリメータ、X線から可視光への変換器、可視光からアナログ信号への変換器、及び基板を備え、前記コリメータを通過したX線が、前記X線から可視光への変換器へ照射されて前記X線から可視光への変換器により可視光に変換され、前記基板に載置された前記可視光からアナログ信号への変換器により前記可視光がアナログ信号に変換されるものであり、
前記A/D変換器を基板のX線が照射できない位置に設けるステップを含む方法。

【請求項9】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の正面照射検出器を含むCT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−88301(P2012−88301A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200105(P2011−200105)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】