説明

歩行器兼用移動椅子

【課題】来客用の椅子として、移動する車椅子として、歩行器として使用でき、且つ、移動に際しての旋回性が良く、来客用として通常はキャスターがロックされ、移動の時にだけ全キャスターのロックが解除され、且つ、一括して同時にロック及びロック解除操作をことができる歩行器兼用移動椅子を提供する。
【解決手段】基礎部11の前後それぞれに1対の旋回可能なキャスター4c、4dを設けた歩行器兼用移動椅子であって、脚基部11には椅子部12と歩行器部14を設けて、該椅子部の背面に歩行器用の把持部15、16を配置し、該把持部15、16は椅子部12のほぼ全幅に亘って把持棒を両側部に掛け渡し、該把持部15、16の近傍に全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うキャスター操作レバー21を設けた歩行器兼用移動椅子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院のベッド等に配置する椅子と歩行器とを一体にした歩行器兼用移動椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、通常、病院のベッド等には歩行困難な者の為に座ったまま移動可能な車輪を付した車椅子が常備され、別途にリハビリ等のためにやはりキャスターが付いた移動可能な歩行器も常備されている。
ところで、これら移動可能な車椅子と歩行器を合体して1つの装置にしたものは多数開示され提案されている。例えば、特許文献1(特開2000-142419号公報)の「折りたたみ式歩行器」は、前後左右に一対の全4個のキャスターを設け、後方の左右のキャスターのタイヤの表面を制度ピンで押圧してブレーキをかけるものが開示されている。この装置で、車椅子及び歩行器はブレーキレバーを把持した時にキャスターは制動状態になり、通常は非制動状態にある。
【0003】
また、例えば、特許文献2(特開2001-321404号公報)の「歩行器兼用車椅子」は、4つのキャスターの外に駆動用の大車輪が設けられ、通常ブレーキは大車輪のタイヤを押圧するブレーキ部材を操作するものであり、歩行器として用いる場合は肘掛を歩行状態で使用出来る位置まで挙げて使用するものである。
なお、歩行器や車椅子ではないが、キャスターの全てを一括して、同時にロック及びロック解除操作をする装置は、本出願人がテレビ等を載置する床頭台のキャスターとして開発し、特許文献3(特開2010-143290号公報)として開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−142419号公報
【特許文献2】特開2001−321404号公報
【特許文献3】特開2010−143290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献2に開示される「歩行器兼用車椅子」は、駆動用の大径の大車輪1をロックするため、接地面積が大きく制動力も大きいが、大車輪自体は方向が固定されており旋回性が無いため、車椅子が曲がる場合に大きな曲率半径になってしまい、小回りの方向転回が難しいといった問題点もあり、また、回転する大車輪に衣服が巻き込まれる等の思わぬ事故が起きることもあり、更には、歩行器兼用車椅子をロックする場合には1対の駆動用の大車輪それぞれを制動する必要があった。また、歩行器兼用車椅子をロックをする場合にはタイヤに制動ピンに押圧するので、タイヤを痛めることもあった。
【0006】
また、前記特許文献1のように、「折りたたみ式歩行器」の複数のキャスターうち1対の後輪のキャスターだけしかロックできないので、制動が不安定であり、更には、後輪のロック付きのキャスター側は旋回性がなく、歩行器及び車椅子が曲がる場合に大きな曲率半径になってしまい、小回りの方向転回が難しいといった問題点があった。他に個々のキャスターを個々にロックしなければならず、使用者や看護師の負担となっていた。特に、忙しい看護師にとっては極めて煩わしい作業であるという問題点があった。
また、病院において近年ベッドサイドの転倒を防ぐためポータブルトイレをなくすよう進めている。しかし、なくすことによって、看護師が患者のトイレ補助として呼ばれることが多くなる。そこで、通常イスとして利用していたものを用いて歩行補助機となるものを使用することで、看護師の付き添いが減らすことができ、業務軽減となる。
【0007】
更に、狭い病室に来客用の椅子を常備すのことが多いが、これとは別途に車椅子や歩行器や点滴器等を置くこともあるが、常時これらを病室に配置するのはスペース的に問題があった。
また、来客用の椅子として使用する場合には、通常はロック状態にする必要があるが、通常の歩行器や車椅子は常時は移動するように設定され、制動する場合はレバーを操作する構成が多く、大車輪も剥き出しで来客用としては、外観も劣るものであった。
【0008】
本発明の課題は、歩行器兼用移動椅子であって、来客用の椅子としても使用でき、且つ、患者自体の移動を補助する歩行器としても使用でき、且つ、移動に際しての旋回性も良好で移動がし易く、また、来客用として、通常はキャスターがロックされ、移動の時にだけ全キャスターのロックが解除され、更に使用者や看護師の負担が軽減されるように、一括して同時にロック及びロック解除操作をことができ、更には、必要に応じて点滴棒も設けられる歩行器兼用移動椅子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、基礎部の前後左右に複数の旋回可能なキャスターを設けた歩行器兼用移動椅子であって、前記脚基部には椅子部と歩行器部を設けて、該椅子部の背面に歩行器用の把持部を配置し、該把持部の近傍に全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うキャスター操作レバーを設けたことを特徴とする歩行器兼用移動椅子である。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の歩行器兼用移動椅子において、前記背面に設けた歩行器用の把持部は、椅子部のほぼ全幅に亘って把持棒を左右の側部に掛け渡したことを特徴とする。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の歩行器兼用移動椅子において、前記把持棒は上下2段にして左右の側部に掛け渡し、下段の把持棒の下側にキャスター操作レバーを配置し、上段の把持棒は高さ位置を調整可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明によれば、請求項1又は請求項2又は3に記載の歩行器兼用移動椅子において、前記歩行器部又は椅子部には、点滴棒を取り付ける取り付け部を設けたことを特徴とする。
請求項5の発明によれば、請求項1又は2又は3又は4に記載の歩行器兼用移動椅子において、前記キャスターは、側板で外部に露出しないようにカバー部を設けて覆うことを特徴とする。
請求項6の発明によれば、請求項1又は2又は3又は4又は5に記載の歩行器兼用移動椅子において、前記キャスターのロック及びロック解除操作機構は、該操作機構のハンドルを把持したときにキャスターのロックを解除するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の歩行器兼用移動椅子の発明によれば、前後左右の全4個(複数)の旋回可能なキャスターを設けたので移動に際しての旋回性も良好で移動がし易く、全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うキャスター操作レバーを設けたので、使用者や看護師の操作の負担が軽減され、脚基部には椅子部と歩行器部を一体にしたので、狭い病室においても場所を占領することもない。
また、近年、病院において患者等がベッドサイドの転倒を防ぐためポータブルトイレをなくすよう進めている。しかし、ポータブルトイレをなくすことによって、看護師が患者のトイレ補助として呼ばれることが多くなっているが、通常イスとして利用していたものを用いて歩行補助機となるものを使用することで、看護師の付き添いが減らすことができ、結果として業務軽減となる。
更に、椅子部は通常の状態では全キャスターがロックされているので、来客用の固定椅子として使用でき、全キャスターを一括してロック解除の操作を行えば、従来の車椅子のように座ったままの移動椅子として使用できる。
請求項2の歩行器兼用移動椅子の発明によれば、把持部の近傍に、全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うキャスター操作レバーを設けたので、把持部に掴まった使用者の手でキャスター操作レバーを簡単に操作することができる。
請求項3の歩行器兼用移動椅子の発明によれば、前記把持棒は2段にして両側部に掛け渡したので、背の高さ等が異なっても適切に対応することができる。
また、下段の把持棒の下側にキャスター操作レバーを配置したので、立ち上がり補助として握る場合、下段の把持棒があるために、とっさに手を付く場合に下段の把持棒に触れてキャスター操作レバーには触れることを防ぐので、歩行器兼用移動椅子のキャスターのロックが解除されような誤作動することが防止できる。
【0012】
請求項4の歩行器兼用移動椅子の発明によれば、前記歩行器部又は椅子部には、点滴棒を取り付ける取り付け部を設けたので、点滴棒を取付けても歩行器兼用移動椅子が安定していることから倒れにくい点滴棒とすることができる。
請求項5の歩行器兼用移動椅子の発明によれば、キャスターは、外部に露出しないように外側カバーで覆うようにしたので、車輪に衣服等を巻き込むこともなく、従来のように大車輪やキャスターが剥き出しで来客用としての外観も良好にすることができ、来客用の椅子として使用することができる。
請求項6の歩行器兼用移動椅子の発明によれば、前記キャスターのロック及びロック解除操作機構は、該操作機構のハンドルを把持したときにキャスターのロックを解除するようにしたので、来客用の椅子として使用できるように、通常はロック状態であり、通常の歩行器や車椅子は常時は移動するようできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の歩行器兼用移動椅子の右側方からの外観斜視図、
【図2】図1の背面からの斜視図、
【図3】図1の底面図、
【図4】図4(a)は図1での歩行器兼用移動椅子の固定状態にしキャスターをロック状態にしたキャスター操作レバーの内部機構の側面からの断面説明図、図4(b)はキャスター操作レバーを手で操作する途中の側面からの断面説明図、図4(c)はキャスター操作レバーを挙げて双輪キャスターのロックを解除した状態を説明するキャスター操作レバーの内部機構の側面からの断面説明図、
【図5】図3の操作伝達機構の全体の構成図、
【図6】図6(a)は図5のレバー連結ワイヤー一方の末端部の拡大分解図、図6(b)はA部のレバー連結ワイヤーの拡大分解図、
【図7】図7(a)は図5のB部の分岐ワイヤーの拡大分解側面図、図7(b)は図5の他の末端部の分岐ワイヤーの拡大分解図、
【図8】図8(a)は図5のワイヤー分岐盤32内部の正面図、図8(b)は図8(a)のa−a線でのワイヤー分岐盤に蓋をした状態の側断面図、
【図9】図1の双輪キャスターの概略の外観斜視図、
【図10】双輪キャスターの一方の車輪部の図で、図10(a)はその正面図、図10(b)はその側面図である。
【図11】車輪ロック状態の双輪キャスターの内部の図で、図11(a)はノック部材が上昇し、歯部542が内歯車45に嵌合した状態の正面透視図、図11(b)は、そのノック部材の側面透視図、
【図12】図12の(a)-(a)線での断面図、
【図13】図13(a)は、双輪キャスターの車輪ロックの解除状態の正面透視図、図13(b)は、そのノック部材の側面透視図、
【図14】図13(a)のキャスター取付金具の上方からの平面図、
【図15】車輪歯噛合ロック部54の基部541の斜視図、
【図16】スライダーカムの図で、図16(a)は正面図、図16(b)は側面図、図16(c)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、全てのキャスターが旋回可能で、かつ、遠隔操作でロック/ロック解除機能を有し、歩行器と移動椅子とに使用出来る歩行器兼用移動椅子に関するものである。ここで、本発明の好適な歩行器兼用移動椅子に適用した実施例を図面に沿って説明する。
【実施例】
【0015】
(キャスター付き基礎部、椅子部及び歩行器部)
図1は実施例の歩行器兼用移動椅子1の全体の右側方からの外観斜視図、図2は背面からの斜視図、図3は背面図である。
キャスター付きの基礎部11の底面には、前側の左右両側に1対の双輪キャスター4a,4bが配置され、後側の左右両側にも1対の双輪キャスター4c,4dが配置されており、この基礎部の上面の前側には台形の脚部13とその上に椅子部12が載置固定されている。
この椅子部12は臀部を受けるクッション部121と背もたれ部122と左右に一対の肘掛け部123が設けられ、来客用の椅子としても使用可能な高級感のある椅子を形成している。
【0016】
また、基礎部の上面の後側には歩行器部14が形成されるが、この歩行器部14は、歩行器兼用移動椅子1の左右の側部を形成する側板17(17a,17b)の後方部に設けた把持部(キャスター操作部)の取付柱部172に2段の把持棒からなる把持部から構成されており、患者や看護師等が中腰にならなくても操作し易い比較的低い位置にキャスター操作2及びキャスター操作レバー21が配置されるが、この2段の把持棒のうち、下段の把持棒15の下側の近傍には、掛け渡されキャスター操作部2のキャスター操作レバー21が配置され、片手で下段把持棒15とキャスター操作レバー21を同時に握れるようにしている。また、下段の把持棒15の下側にキャスター操作レバー21を配置したので、立ち上がり補助として握る場合、下段の把持棒があるために、とっさに手を付く場合に下段の把持棒に触れてキャスター操作レバー21には触れことを防ぐので、歩行器兼用移動椅子1のキャスターのロックが解除されるようなこともなく、誤作動することが防止でき安全である。
更に、上段把持棒16は背もたれ部122のやや高い位置に配置され、必要に応じて高さ位置を調整可能に固定されており、患者や看護師等の使用者にとって操作しやすい構成にしてある。
【0017】
前記の左右の側板17a,17bの下方部は、双輪キャスター4を側方外部から隠し、また、キャスターにものを巻き込まないように床の直前までのカバー部171が構成されており、椅子の外観も来客用の椅子としても使用可能な高級感のあるものにしている。
また、実施例ではキャスター操作レバー21が配置されていない方の側板17の取付柱部172には、必要に応じて点滴棒(図示せず)が取り付けることができる点滴部取付部材18(図2)が設けられているが、この取付部18の位置は歩行器兼用移動椅子1の歩行器部14又は椅子部12の適宜の箇所でよく、この歩行器兼用移動椅子1が重量があり、かなり安定した移動装置であることから、取り付けた点滴部棒も倒れづらいものとなっている。
【0018】
図3の点線や一点鎖線に示すように、前記キャスター操作2から各双輪キャスター4までは操作伝達機構3の同軸ワイヤーである操作伝達ワイヤー30が連結され、キャスター操作レバー21を操作することによって、全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うように構成されている。即ち、図2に示すように、キャスター操作レバー21を握って上に挙げると、キャスター操作2内のレバー連結ワイヤー31(一点鎖線)が引っ張り、次に、図3に示すように、ワイヤー分岐盤32によって4本の分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d:点線)に分割され、各分岐ワイヤー33a,33b,33c,33dが引っ張られ、各双輪キャスター4a,4b,4c,4dの車輪ロック機構5を操作して、全双輪キャスター4a,4b,4c,4dを一括して同時にロック解除される。逆に、キャスター操作レバー21を離すと、車輪ロック機構5内のバネ等でキャスター操作レバー21が自動的に下がり、
4本の分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)も元に戻って、車輪ロック機構5で各双輪キャスター4a,4b,4c,4dがロックされる。
【0019】
(キャスター操作部)
以下の操作構造の詳細を説明する。
図1及び図2は、キャスター操作部2で前後左右の複数の全4個の双輪キャスター4をロック状態にした外観斜視図であるが、図2は4個の双輪キャスター4のロック状態の図であり、図4a〜cはこのロック状態からからロックを解除した状態を説明するキャスター操作部2の部分断面である。
先ず、図4aからcは、4個の双輪キャスター4のロック状態からロックを解除した状態を図3及び図4であり、その機構概略を示す図4(a)〜(c),図10,図11,図12を参照して説明すると、キャスター操作部2は主に操作レバー21、回動軸22、ワイヤー末端(球)係止部23、ワイヤー案内プーリ24、ワイヤー被覆(外周)係止部25、回転ストパー26、キャスターロック解除保持レバー27、及びケース28から構成されている。
【0020】
キャスター操作部2の作動は、キャスターロック状態の図4(a)において、キャスター操作レバー21が回動軸22を中心に回動し、キャスター操作レバー21と一体にワイヤー末端(球)係止部23と回転ストパー係止部211とロック保持係止部212も回動する。通常は、キャスターロック機構のバネ力によって、各分岐ワイヤー33を介して、レバー連結ワイヤー31(操作伝達ワイヤー30)のインナーワイヤー312も常時引っ張られている(図4(a)で右側)。
これに伴い、キャスター操作レバー21は、インナーワイヤー312の末端部311がワイヤー末端(球)係止部23に係止されているので、ワイヤー案内プーリ24で引っ張り方向を変更した後に、斜め上方に引き上げられ、その結果、操作レバー21は反時計回りに回動して下げられた状態(図4(a))になり、通常は、車輪ロック機構5のバネによりロックし固定されている。
なお、過度にキャスター操作レバー21が回動し過ぎないように、回転ストパー係止部211がケース28側に固定されている回転ストパー26を係止してしいる。
【0021】
看護師や患者が、歩行器兼用移動椅子1の椅子部12を移動したり、歩行器部14を使用したい場合は、図4(c)、その作動途中の図4(b)に示すように、操作レバー21を上方に挙げることにより行われる。
図4(c)において、キャスター操作部2のキャスター操作レバー21を挙げると、操作レバー21はキャスターロック機構のバネの力に抗して、ワイヤー分岐盤32、各分岐ワイヤー33を介してレバー連結ワイヤー31を図で上向に引っ張り、キャスター操作レバー21を図4(c)の状態まで挙げる。その結果、操作レバー21は時計回りに回動した図10(c)の状態になり、車輪ロック機構5のバネに抗してロックを解除する。
【0022】
この状態で、歩行器兼用移動椅子1は移動可能であるが、キャスター操作レバー21を手で挙げていなければならいので、移動可能状態を長時間維持する場合には、キャスターロック解除保持レバー27を引いてロック保持係止部212にロック部を係止して、手を離しても、キャスター操作レバー21が挙がった状態(図4c)を保持し、移動が終了すればキャスターロック解除保持レバー27を戻せば、キャスター操作レバー21の元の状態(図4(a))になり、車輪ロック機構5のバネによりロックし固定される。
もっとも、キャスターロック解除保持レバー27やロック保持係止部212は、車輪ロックをしなければならない通常の状態でも、誤ってロック解除をしてしまうのを防止するためには、削除しておいてもよい。
【0023】
(操作伝達機構)
操作伝達機構3は、芯を形成するインナーワイヤーと同軸で被覆部でもあるアウターワイヤーとからなる同軸の所謂ロックワイヤーを用いたもので、図5に示すように、主に、操作伝達ワイヤ30とワイヤー分岐盤32とから構成され、この操作伝達ワイヤ30はレバー連結ワイヤー31(31a,31b)と4本の分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)とから構成される。
【0024】
前述したキャスター操作部2に取り付けられるレバー連結ワイヤー31は、その末端部の拡大図Aの図6bに示すように、芯のインナーワイヤー312、それを覆うアウターワイヤーである被覆部313とからなり、インナーワイヤー312の先端には球状の末端部311aが設けられ、被覆部313の先端には取付固定部314が設けられ、インナーワイヤー312が取付固定部314に対して、末端部311が進退可能に構成され、他方の末端部311b(図6a参照)はワイヤー分岐盤32に接続される。レバー連結ワイヤー31の反対側の末端部311bは、図6(a)に示すように円筒状で、ワイヤー分岐盤32の嵌合部3221(図8参照)の接続する。
【0025】
ここで、ワイヤー分岐盤32の構成を図8で説明すると、ワイヤー分岐機構の第1ワイヤー分岐盤32は、図8(a)(b)に示すように、ワイヤー分岐盤32の蓋321(図8(b))を開けた内部は、スライダー322が左右移動可能に収納されている。ワイヤー分岐盤32のレバー連結ワイヤー31側の側板323aにレバー連結ワイヤー31の取付固定部314を取り付け、前記スライダー322の反対側の側板323b側にはそれぞれのワイヤーの末端部331bに対応して、末端が解放された半円筒形状の半円筒部32211と貫通溝32212からなる嵌合部3221に末端部331bを嵌合する。
【0026】
また、図8(a)でのa−a線断面図8(b)に示すように、このスライダー322は4本の分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)のインナーワイヤー332の末各端部331aの移動距離が同じでなければならいので、スライダー322の上面の移動方向に平行な山部3223が複数設けられ、蓋321を嵌め込んだ側面図に示すように、山部3223を左右方向に案内する案内溝3211を蓋321に設けて、正確にスライダー322がワイヤー軸線に対して平行移動するようにしている。勿論、この逆に、平行な山部3223を蓋321に設け、対応する案内溝3211をスライダー322に設けてもよい。なお、蓋321の嵌合側面には固定凸部3212はワイヤー分岐盤32の内壁に挿入固定するためのものである。
したがって、スライダー322をインナーワイヤー312,332の前進後退方向と平行に移動させるための平行進退移動手段として、ワイヤー分岐盤32の内側の両側壁は勿論こと、これだけでは、平行移動には不十分であるので、スライダー322の上面には平行な山部3223が複数設けられ、蓋321側にも山部3223を左右方向に案内する案内溝3211が設けられている。
【0027】
次に、ワイヤー分岐盤32と分岐ワイヤー33との構成と機能を説明する。
分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)は、図7に示すようなもので、その1本について図5での符号Bの拡大図である図7に示すように、芯のインナーワイヤー332、それを覆う被覆部333からなり、ワイヤー332の先端には中心に係合孔を有する末端部331が設けられ、被覆部333の先端には取付固定部334が設けられ、インナーワイヤー332が取付固定部334に対して、末端部331が進退可能に構成される。
このように、一方の末端部331a(図8(b))がレバー連結ワイヤー31の末端部331bと同じで円筒形であり、4個の双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)に連結する末端部311b(図8(a))は、ロック機構枠体51に連結するために嵌合孔が設けられていることが異なるだけであるので、他の説明は省略する。
【0028】
このように、前記1本のレバー連結ワイヤー31を側板323aの取付固定部314を取り付け、レバー連結ワイヤー31のインナーワイヤー312の末端部311bはスライダー322の嵌合部3221に嵌合している。同様に、前記4本の分岐ワイヤー33の取付固定部334も、側板323bに取り付けられ、分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)の一方の末端部331aも嵌合部3221に嵌合している。
このような構成であるので、レバー連結ワイヤー31の末端部311bが引っ張られると、スライダー322が側板323a側に移動(図8:右方向)するが、スライダー322に嵌合される4個の末端部331aも一括して側板323bから離れるように移動(図8:右方向)する。
【0029】
このように、レバー連結ワイヤー31の進退移動がワイヤー分岐盤32を介して4本の分岐ワイヤー33に伝達される。また、操作伝達に同軸ワイヤーを用いたので、図8に示すように、歩行器兼用移動椅子1の基礎部11の下面に4個の双輪キャスター4の位置を自由に設定でき、また、リンク機構の組み合わせや、前掲特許文献1のようなテーブル全体を浮かせるための接地部材とは異なり、構造も簡単で製作費も安価で、保守も容易になる。更に、基本的にレバー連結ワイヤー31の1本から4本の分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)に分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にロック状態及びロック解除状態にでき、ワイヤー分岐盤32を薄く扁平に成形できるので、ワイヤー分岐機構の高さも低く薄くできるので、床から高くない低い基礎部11の底部に取り付けることもできる。
言い換えれば、キャスター操作部2からの1本のレバー連結ワイヤー31を4本の分岐ワイヤー33に分岐して4個の車輪ロック機構5であるキャスター操作機構に接続し、1本のレバー連結ワイヤー31のインナーワイヤー312の前進/後退を4本の分岐ワイヤー33のインナーワイヤー332の前進/後退に伝達しており、4本の分岐ワイヤー33に分岐するためにワイヤー分岐機構としてワイヤー分岐盤32を設け、これらワイヤー分岐盤32には分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)の4本の末端部331を並列にして固定するスライダー322を設け、このスライダー322をインナーワイヤー312,332の前進後退方向とて正確に平行に移動伝達できる。
【0030】
(双輪キャスターの配置)
前述した図8は、キャスター付き基礎部11の裏面の平面図で、前後に一対の双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)が取り付けられ、これらのキャスター4の外観概略は、図9に示すようなもので、キャスター4の構成の詳細は後述するが、キャスター操作機構である車輪ロック機構5のロック機構枠体51の両側に一対の車輪41A、41Bがそれぞれ回転可能に軸支されており、ロック機構枠体51の上面には、キャスター4が取付枠に対して旋回可能に軸支するための旋回支持部52が設けられ、旋回支持部52の軸心Xと同軸に、上下動するノック部材531が設けられており、ノック部材531を押圧バネ543により押し上げられると双輪キャスター4がロックされ車輪部41は回転することができない。逆に、ノック部材531の押し上げを解除して下方に押し下げると、双輪キャスター4の内歯車45への歯部542が離反しロックが解除され、双輪が自由に回転することができる。
ところで、本実施例で使用する双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)は、双輪の巾が単輪よりも広いので、単輪キャスターに比べて走行安定性があり、また、双輪の回転をロックすると進行方向は勿論のこと、双輪の巾が広いことから旋回阻止できる。
したがって、本実施例のように、4箇所のキャスターをロックしようとした場合は、仮に、4箇所のうち一箇所のキャスターのロック機構が不完全、或いは、破損した場合でも、ベッドサイドテーブルを確実に固定及び解除できる。
【0031】
(キャスターの車輪部)
上述した双輪キャスター4の車輪部41を説明するが、図9に示すように、4個のそれぞれの双輪キャスター4の両側に1個ずつ車輪部41(41A,41B:車輪)が配置され、その内の片方の車輪部41は、図10に示すように、車輪軸42は、車輪ロック機構5(図11参照)の車輪軸受部511に回転自在に軸支され、車輪部41の車輪軸固定部43に軸支される(車輪軸固定部43は、車輪を回転自在に軸支する構成でもよい。)。車輪部41の外輪44はゴム製で振動を吸収し走行を滑らかにし雑音を軽減するとともに、床へのグリップを強くしている。
また、双輪キャスター4の車輪部41の内側の外輪44近傍には、車輪軸42と同軸心の内歯車45が形成され、後述するロック歯部542が押圧バネ543により上昇した際には、内歯車45に歯部542が噛み合い車輪部41の回転を阻止する。
【0032】
(キャスターの車輪ロック機構)
本実施例のキャスターは、図9でも説明したように、車輪ロック機構5のロック機構枠体51を挟んで、所定の間隔を持った車輪41A,41Bの双輪キャスター4であり、移動時には単輪キャスターに比べて走行に安定性がある。また、車輪41(41A,41B)の両車輪(双輪)がロックすると走行が出来なくなり、キャスターの旋回も制限されて、更に、本実施例のように、歩行器兼用移動椅子1の基礎部11の枠体132の両端の2箇所の双輪キャスター4a,4b、及び、双輪キャスター4c,4dの各車輪41A,41Bが固定されると、キャスター4自体の旋回を固定しなくても、車輪の回転の固定だけで歩行器兼用移動椅子1は、ほぼ完全に固定されることを見出し、この知見を基礎とするものである。
【0033】
先ず、上記のキャスター付き基礎部11の裏面に配置する双輪キャスター(4a〜4d)の車輪ロック機構5について、図11乃至図16に沿って更に詳しく説明する。
図11は、キャスターロック状態の図で、ノック部材531が、分岐ワイヤー33が弛緩し、コイルバネ567によりスライダーカム56が図で左側に移動し、ノック部53が上方に上がった状態の図であり、図14(a)は車輪ロック機構5の横断面図で、図11(b)は図11(a)の側断面図である。また、図12は、図12(a)のa−a線での断面図であり、歯部542が双輪キャスター4の内歯車45に嵌合してロックした状態の図である。
図13は、歯部542を内歯車45から離反させて、双輪キャスター4のロック解除状態の図で、ノック部材531が分岐ワイヤー33により引っ張られ、コイルバネ567の引張力に抗してスライダーカム56が図で右側に移動し、また、キャスター内部の押圧バネ543に抗して、歯部542が下った状態の図、即ち、キャスターのロック解除状態の図で、図14は図13(a)の上方からの平面図である。
【0034】
図11(a)(b)は、歩行器兼用移動椅子1の通常の状態、すなわち、図1(図2)で操作レバー21を下がった状態で、双輪キャスター4をロック状態にした図で、車輪ロック機構5の枠体51内には、キャスター取付金具55に対して双輪キャスター4が旋回可能なように旋回支持部52が軸支され、旋回支持部52の内側に上下動するノック部53が設けられ、ノック部53に続いて車輪歯噛合ロック部54が押圧バネ543を介して連結されている。車輪歯噛合ロック部54は、ノック部材531を上下動させるスライダーカム56のカム面561によって、歯部542が押圧バネ543の押圧力によってノック部53が上昇している状態では、歯部542も上昇していて、この歯部542が車輪部41の内側の内歯車45に嵌合して、車輪41A,41Bの回転を阻止し、双輪キャスター4をロック状態となる。
【0035】
ここで、各部の構成を更に詳細に説明するが、先ず、ロック機構枠体51はプラスチックで成型されたもので、図11に示すように、中心に車輪軸受部511が設けられ、枠体51の左側には、旋回支持部52(ノック部53)を挿入する円筒型の嵌合部512と収納部513が配置され、嵌合部512のキャスター取付金具55に近接する部分は双輪キャスター4の旋回をスムーズにするために突出輪514が設けられ、前記車輪軸受部511の上側には上下動する車輪歯噛合ロック部54及び押圧バネ543を収納する収納部515が配置されている。この収納部515を含めた双輪キャスター4の嵌合部512と旋回支持部52とを回動自在に強固に支持するが、旋回支持部52はキャスター取付金具55側に強固に固着している。
また、収納部513は下側面及び片側面が開放口となっており(必要に応じて、防塵のための蓋部を設けてもよい。)、これは組み立て作業で、キャスター取付金具55に固着される旋回支持部52を嵌合部512に回動自在に、旋回補助ワッシャー523及び止め金具(固定スナップリング)524を取り付ける際のためのものである。
旋回支持部52を嵌合部512に挿入した後、旋回支持部52の下部末端には、旋回補助ワッシャー523を挿入し、旋回支持部52の下端に設けられた止め金具(固定スナップリング)524用のスナップリング用の固定円周溝525に、旋回支持部52を固定するためスナップリング524を係止して、旋回支持部52からロック機構枠体51が抜け落ちないようにしている。
【0036】
更に、ノック部53のノック部材531の下端部に車輪歯噛合ロック部54の基部541を取り付けるが、この基部541は図11に示すが、車輪軸42を囲むようにコの字状(或いは、反対側から見れば逆コの字状)であり、下部水平部5411と上部水平部5412とこれを連結する連結部5413とから構成され、下部水平部5411の上面はノック部材531の下部先端部533により押圧され、又は解除(図13では解除)される受圧部を有し、上部水平部5412は歯部542が固着されるとともに、外方に拡がるように押し圧するバネ543の上端部に係合する上部バネ係合部544を有する。なお、押圧バネ543の下端部はロック機構枠体51側に設けた下部バネ係合部545に係合し、常に、上部水平部5412の下面の上部バネ係合部544を上方に押圧している。
【0037】
(旋回支持部及びノック部)
次に、図11での嵌合部512と旋回支持部52とノック部材531について説明する。
旋回支持部52の固定支持筒部材521は金属製の円筒(パイプ)で、その上端部を金属のキャスター取付金具55の底板554に取付縁部522の上端を溶接等で固着する。ここで、双輪キャスター4の旋回とは、図9に示されるように、通常の双輪キャスター4の接地箇所X2の垂直線とノック部材531の軸心の接地箇所X1とが偏芯することによって、歩行器兼用移動椅子1を移動させる際に、自動的に双輪キャスター4の進行方向が移動方向に向くようにしたものであるが、当然、双輪キャスター4がロック状態では、双輪キャスター4が回動しないことによって旋回は阻止されるが、逆に、歩行器兼用移動椅子1の移動時のロック状態で無い場合には自由に旋回させなければならない。そのため、旋回支持部52とキャスター取付金具55の底板554との間に突出輪514を介在させて、ロック機構枠体51の上面での旋回をスムーズにさせるようにしてある。
旋回支持部52は、キャスターの旋回軸を構成するとともに、ノック部材531を嵌合して収納するが、このノック部53は旋回支持部52の同心上の嵌合部512に上下動が自在に嵌合されている。
【0038】
(車輪歯噛合ロック部)
基部541は、図15に示すように、基部541の断面コの字状(反対側からは、逆コの字状)の上部水平部5412の下面の(図14での)中央部分には、押圧バネ543の上端を係止する上部バネ係合部544を設け、さらに、双輪キャスター4の一対の車輪部41の各内歯車45に嵌合するように左右に一対の2本の歯部542a,bが固着してあり、外側に拡がるような押圧する押圧バネ543で、常に上方に押し上げる構成になっている。
したがって、車輪歯噛合ロック部54の歯部542a,bは、図10、図12に示すように、ノック部材531の規制がなければ、常に、押圧バネ543によって上側に押圧され上昇するようになっており、歩行器兼用移動椅子1をベッド近傍に設置した通常の場合は、歯部542a,bは押圧バネ543によって各双輪キャスター4の内歯車45に嵌合して、双輪キャスター4の回転を阻止し、ロック状態になり歩行器兼用移動椅子1の移動を不可能にしている。
なお、車輪歯噛合ロック部54の上下動は、ロック機構枠体51に設けた車輪歯噛合ロック部54の収納部515の案内溝516の側壁に沿って降下・上昇する。
また、双輪キャスター4の車輪部41の内側の外輪44近傍には、車輪軸42に同心の内歯車45が形成され、歯部542a,bが上昇した際には、内歯車45に歯部542が噛み合い車輪部41の回転を阻止する。
【0039】
(キャスター取付金具とスライダーカム)
図13乃至図16におけるキャスター取付金具55とノック部材531を操作するスライダーカム56について説明する。
キャスター操作部2の操作レバー21(図4を参照)を上方に挙げる操作によって、レバー連結ワイヤー31が引っ張られ、ワイヤー分岐盤32によって4本の分岐ワイヤー33も引っ張られる。更に、この各分岐ワイヤー33a,33b,33c,33dのインナーワイヤー332が引っ張られるが、これをノック部53の動きに変換するのがキャスター取付金具55に装着されたスライダー状のカム機構を有したスライダーカム56である。
このスライダーカム56は、主に、図16に示すように、全体形状は扁平で下面が傾斜するカム面561が設けられ、スライダーカム56が移動する方向の一端には分岐ワイヤー33の末端部331を接続し、キャスター取付金具55の前板551(図14参照)に取付固定部334を装着し、レバー連結ワイヤー31及び分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d:図11,16を参照)に引っ張られることにより、全体として水平移動するようにしている。図13、図14、図16に示すように、中心部にはスライダーカム56の水平上面563に平行して案内長孔564が設けられ、この案内長孔564にはキャスター取付金具55の両側板552に固定された案内軸565が嵌合している。
【0040】
係止部562とは反対側の係止部566には縮む方向のコイルバネ567の一端が係止され、コイルバネ567の他端はキャスター取付金具55の背板553の係止部568に係止され、このコイルバネ567はレバー連結ワイヤー31及び分岐ワイヤー33が弛緩された状態では、スライダーカム56を図12の位置に戻すようにしている。また、図14に示すように、案内軸565の軸線はノック部材531の上部先端部532の軸線と交わるようにしている。
なお、図14において、キャスター取付金具55(全4個)の両側板552には枠体取付部555が設けられ、キャスター付き枠体132a,bの両端部に、ボルト孔556にボルト(図示せず)等を挿入して固着する。
【0041】
したがって、スライダーカム56のカム面561にノック部材531の上部先端部532が接触するようになっているが、分岐ワイヤー33が引っ張られているロック解除状態では、図13、図16に示すように、カム面561は左側から右側にかけて移動するようになっているので、最も下の位置である最下点5611にあり、ノック部材531を下方に押し下げた状態になる。
逆に、図11、図12に示すように、通常でのレバー連結ワイヤー31及び分岐ワイヤー33が弛緩された状態では、コイルバネ567により、スライダーカム56は、図11、図12のように左側に移動し、カム面561は最も高い位置である最上点5612にあり、歯部542の押圧バネ543の作用により、ノック部材531の上部先端部532も上昇し、歯部542も上昇して、双輪キャスター4の内歯車45に嵌合し、双輪キャスター4をロック状態に維持する。
この扁平のスライダーカム56は、カム面561の最下点5611から最上点5612がノック部材531の上部先端部532を移動するように作動するが、スライダーカム56の分岐ワイヤー33の末端部331の移動距離Z(図11参照)は、カム面561の最下点5611から最上点5612の距離Y(図16参照)とほぼ同じとなる。
したがって、カム面561の傾斜角度により、最下点5611から最上点5612の距離が変えられるので、キャスター取付金具55の高さを低くしたままで、分岐ワイヤー33の移動距離(ストローク)に合わせることができる。
【0042】
(キャスターのロック及びロック解除の作動)
本実施例の歩行器兼用移動椅子1を固定する末端操作装置は、以上のような構成であるので、大凡、次のように作動する。
歩行器兼用移動椅子1の基礎部11に設けたキャスター4のロック解除の操作レバー21(テーブル昇降操作兼用)は、図1(図2)に示すように、通常の設置状態では、キャスター4がロックされ、歩行器兼用移動椅子1を移動する際には、図3(図4)に示すように、解除維持のための操作レバー21を上方に持ち上げ、キャスター4のロックを解除する。
歩行器兼用移動椅子1のキャスター4を元のロック状態にし、テーブル部11の高さを固定するには、操作レバー21を手から離せば、テーブル昇降機構23内のバネやキャスター4内のロック機構によるワイヤーの引張力のバネにより、自然に操作レバー21は下降するとともにテーブル部11は固定し双輪キャスター4のロック状態になる。
【0043】
[双輪キャスターのロック状態]
双輪キャスター4のロック状態は図11に示したような状態である。
歩行器兼用移動椅子1を病室の適所やベッドの近傍に配置した通常の状態で、操作レバー21が自動的に下方に位置する(図4参照)。
分岐ワイヤー33は結果的にキャスター内の押圧バネ543によって歯部542をキャスターの内歯車45に嵌合させるとともに、押圧バネ543にノック部材531も上方にあり、分岐ワイヤー33も弛緩状態にある。この場合の状態は長時間に亘るが、操作レバー21がワイヤー31を常に引っ張る状態に維持する必要がないので、各ワイヤーは緊張状態にはなく(弛緩状態)、経年でワイヤーが伸びるようなことがなく、装置の保守も容易になる。
[双輪キャスターのロック解除状態]
双輪キャスターのロック解除状態は図13に示したような状態である。
この場合には、歩行器兼用移動椅子1を移動する状態で、操作レバー21を挙げて、レバー連結ワイヤー31を引っ張り上げて緊張状態にし、分岐ワイヤー33によってノック部材531を下方に押し下げ、結果的にキャスター内の押圧バネ543に抗し、歯部542をキャスターの内歯車45から開放する。したがって、操作レバー21が挙がっている状態では、双輪キャスターのロック解除状態にあり、歩行器兼用移動椅子1は移動可能となる。
【0044】
本実施例は以上の説明したような構成であるので、歩行器或いは移動椅子として使用する歩行器兼用移動椅子1において、一括してキャスターをロック/解除を一括して操作可能な操作レバーを歩行器兼用移動椅子1の背もたれ部122の上端近傍に配置したので、歩行器として使用する把持部の近傍に配置することが可能となり、医療行為の邪魔にもならず、スッキリとしたデザインが可能となる。
また、把持部の近傍にキャスターのロック/解除のキャスター操作レバー21を設けたので、歩行器兼用移動椅子1の操作部が集中させることができ、使用者が操作に戸惑うことが少なくなる。かつ、歩行器兼用移動椅子1の歩行器部14にキャスター操作レバー21を設けたので、容易に使用者に近いキャスター操作レバー21を使用すれば、キャスターのロック/解除を一括操作できるので、操作が単純になり操作を一回で完結する。
このように、一回の操作で歩行器兼用移動椅子1の全てのキャスターをロック状態及び解除状態にでき、従来のように各キャスター毎にロックをする必要がなく、特に、忙しい看護師や使用者の労力を軽減することができ、歩行器兼用移動椅子1にキャスター操作部2を設けたので、患者や看護師が簡単に歩行器兼用移動椅子1とキャスターロック・解除操作を一回の操作で終えることができる。
【0045】
また、キャスターのロック/解除の操作を操作伝達ワイヤー30を用いた操作伝達機構3としたので、これまでのリンク機構の組み合わせと異なり、構造も簡単で製作費も安価で、部品点数が少ないことから保守も容易になり、1本の操作ワイヤーを4本に分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にロック状態及び解除状態にできる。
更に、ワイヤー分岐機構の高さも小さく薄くできるので、基礎部11の裏面に設けても基礎部11を高く或いは厚くする必要がなく、デザイン的にも制約がなくスッキリとしたデザインが可能となり、各キャスターまでの分岐ワイヤー33の長さを自由に設定でき、キャスターのロック及びロック解除作動が均一に働かせることが可能となる。
【0046】
また、双輪キャスター4のロック及びロック解除操作機構は、操作機構のハンドル21を把持したときにキャスターのロックを解除するようにしたので、通常はロック状態であるので、来客用の椅子として使用でき、必要に応じて、歩行器や車椅子は常時は移動するようできる。
更に、近年、病院において患者等がベッドサイドの転倒を防ぐためポータブルトイレをなくすよう進めている。しかし、ポータブルトイレをなくすことによって、看護師が患者のトイレ補助として呼ばれることが多くなっているが、通常イスとして利用していたものを用いて歩行補助機となるものを使用することで、看護師の付き添いが減らすことができ、結果として業務軽減となる。
また、把持棒は2段にして左右の側部に掛け渡したので、背の高さ等が異なっても適切に対応することができる。下段の把持棒の下側にキャスター操作レバーを配置したので、立ち上がり補助として握る場合、下段の把持棒があるために、とっさに手を付く場合に下段の把持棒に触れてキャスター操作レバーには触れなくてよいので、歩行器兼用移動椅子のキャスターのロックが解除されような誤作動することが防止できる。
更に、上段把持棒16は背もたれ部122のやや高い位置に配置され、必要に応じて高さ位置を調整可能に固定されており、患者や看護師等の使用者にとって適切な高さに適宜調整すれば操作しやす。
【0047】
また、歩行器兼用移動椅子1の側板17は、双輪キャスター4を隠すキャスターのカバー部171を設け外部に露出しないように外側をカバーで覆うようにしたので、車輪に衣服等を巻き込むこともなく、従来のように大車輪やキャスターが剥き出しでいかにも車椅子といったものではなく、スッキリとしたデザインが可能となり、来客用としての外観も良好にすることができ、来客用の椅子として使用することができる。
また、歩行器としては、把持棒は2段にして左右の側部に掛け渡したので、背の高さ等が異なっても適切に対応することができる。
なお、歩行器部14或いは肘掛け部123歩行器兼用移動椅子1の適所には、点滴棒を取り付ける取り付け部を設けたので、倒れにくい点滴棒とすることができる。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1・・歩行器兼用移動椅子
11・・キャスター付き基礎部、
12・・椅子部、121・・クッション部、122・・背もたれ部、123・・肘掛け部、
13・・脚部、
14・・歩行器部、15・・下段把持棒(把持部)、16・・上段把持棒(把持部)
17,17a,17b・・側板、
171・・キャスターのカバー部、172・・把持部(キャスター操作部)の取付柱部
18・・点滴部取付部材、
2・・キャスター操作部、
21,・・キャスター操作レバー、211・・回転ストパー係止部、
212・・ロック保持係止部、
22・・回動軸、23・・ワイヤー末端(球)係止部、24・・ワイヤー案内プーリ、
25・・ワイヤー被覆(外周)係止部、26・・回転ストパー、
27・・キャスターロック解除保持レバー、28・・ケース、
3・・操作伝達機構、30(31,32,33)・・操作伝達ワイヤー、
31,31a,31b・・レバー連結ワイヤー、311,311a,311b・・末端部、
312・・インナーワイヤー、313・・被覆部(アウターワイヤー)、
314・・取付固定部、
32・・ワイヤー分岐盤、321・・蓋、3211・・案内溝、
3212・・固定凸部、322・・スライダー、
3221・・嵌合部、32211・・半円筒部、32212・・貫通溝、
3223・・山部、323a,323b・・側板、
33(33a,33b,33c,33d)・・分岐ワイヤー、
331,331a,331b・・末端部、332・・インナーワイヤー、
333・・被覆部(アウターワイヤー)、334・・取付固定部、
4,4a,4b,4c,4d・・双輪キャスター、
41・・車輪部、41A,41B・・車輪、
42・・車輪軸、43・・車輪軸固定部、44・・外輪、45・・内歯車、
5・・車輪ロック機構、
51・・ロック機構枠体、511・・車輪軸受部、512・・嵌合部、
513,515・・収納部、514・・突出輪、516・・案内溝、
52・・旋回支持部、521・・固定支持筒部材、522・・取付縁部、
523・・旋回補助ワッシャー、524・・止め金具(固定スナップリング)、
525・・スナップリング用の固定円周溝、
53・・ノック部、531・・ノック部材、532・・上部先端部、533・・下部先端部、
54・・車輪歯噛合ロック部、541・・基部、
5411・・下部水平部、5412・・上部水平部、
5413・・連結部、542,542a,542b・・歯部、543・・押圧バネ、
544・・上部バネ係合部、545・・下部バネ係合部
55・・キャスター取付金具、551・・前板、552・・側板(側部)、
553・・背板、554・・底板、555・・枠体取付部、556・・ボルト孔、
56・・スライダーカム、561・・カム面、5611・・最下点、5612・・最上点、
562,566,568・・係止部、563・・水平上面、564・・案内長孔、
565・・案内軸、567・・コイルバネ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部に前後左右に複数の旋回可能なキャスターを設けた歩行器兼用移動椅子であって、
前記脚基部には椅子部と歩行器部を設けて、該椅子部の背面に歩行器用の把持部を配置し、
該把持部の近傍に全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うキャスター操作レバーを設けたことを特徴とする歩行器兼用移動椅子。
【請求項2】
前記背面に設けた歩行器用の把持部は、椅子部のほぼ全幅に亘って把持棒を左右の側部に掛け渡したことを特徴とする請求項1に記載の歩行器兼用移動椅子。
【請求項3】
前記把持棒は上下2段にして左右の側部に掛け渡し、下段の把持棒の下側にキャスター操作レバーを配置し、上段の把持棒は高さ位置を調整可能としたことを特徴とする請求項2に記載の歩行器兼用移動椅子。
【請求項4】
前記歩行器部又は椅子部には、点滴棒を取り付ける取り付け部を設けたことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の歩行器兼用移動椅子。
【請求項5】
前記キャスターは、側板に外部に露出しないようにカバー部を設けて覆うことを特徴とする請求項1又2又は3又は4に記載の歩行器兼用移動椅子。
【請求項6】
前記キャスターのロック及びロック解除操作機構は、該操作機構のハンドルを把持したときにキャスターのロックを解除するようにしたことを特徴とする請求項1又2又は3又は4又は5に記載の歩行器兼用移動椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−106649(P2013−106649A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251947(P2011−251947)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(500302404)トーヨーベンディング株式会社 (25)
【Fターム(参考)】