説明

歩行型作業機

【課題】ハンドルの把持部を握って機体を操縦する際に、左右のバランスをとるような機体の姿勢制御を行う操作だけでなく、機体を押し引きするような操作も容易なものとして、操作性の向上を図る。
【解決手段】左右に把持部11を備えたハンドル10を有する歩行型作業機1において、前記左右の各把持部11は、前後方向に延伸する縦把持部11aと、該縦把持部11aの後端から外側に向けて延伸する横把持部11bとを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業機は公知となっている。このような管理機では、左右一側もしくは両側の把持部の近傍にデッドマン式クラッチレバーを設け、これをハンドルの把持部と同時に握ることでクラッチを接続し、離すことでクラッチを切断するように構成していた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−212159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような歩行型作業機では、ハンドルの左右の把持部を前後方向に延伸する形状としていたため、ハンドルの左右の把持部をクラッチレバーとともに握って作業を行う際に、左右のバランスをとるような機体の姿勢制御は行いやすいが、機体を押し引きするような操作を行う場合、力を入れて握らなければならず、操作性が悪かった。また、樹木の枝などの周囲の物体が把持部に向かって延びてきている場合、取り除きながら作業を行わねばならず、作業効率が低下していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業機において、前記左右の各把持部は、前後方向に延伸する縦把持部と、該縦把持部の後端から外側に向けて延伸する横把持部とを備えてなるものである。
【0006】
請求項2においては、前記左右いずれか一方の把持部の近傍にクラッチレバーを設けて、該把持部の縦把持部と横把持部とに沿って屈曲し、該クラッチレバーと縦把持部または横把持部とを同時に把持可能としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記把持部に横把持部の外側端から縦把持部の前端に向けて延伸するガード体を設けたものである。
【0008】
請求項4においては、前記把持部を、前記縦把持部と、前記横把持部と、前記ガード体とでループ状に形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、ハンドルの縦把持部または横把持部を状況に応じて使い分けることが可能となり、操作性の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2においては、クラッチレバーを縦把持部または横把持部とともに握ることが可能となり、作業時での操作性を向上させることができる。
【0012】
請求項3においては、ガード体で縦把持部または横把持部を握った手を周囲の物体から保護することができる。よって、周囲の物体を取り除くことなく、作業を継続することが可能となり、作業効率を高めることができる。
【0013】
請求項4においては、把持部の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施例に係る歩行型作業機の側面図、図2は本発明の一実施例に係る歩行型作業機の平面図、図3はハンドルの把持部の平面図、図4はハンドルの左側把持部の下方斜視図である。
【0016】
まず、本発明の一実施例に係る歩行型管理機1の概略構成について説明する。
【0017】
図1、図2に示すように、歩行型管理機1においては、機体フレーム2上にエンジン3を搭載し、該機体フレーム2の下方に複数の耕耘爪4aを有するロータリ耕耘装置4を設けている。エンジン3とロータリ耕耘装置4との間にトランスミッション5を設けて、該トランスミッション5によりエンジン3とロータリ耕耘装置4とを連動連結している。
【0018】
機体フレーム2の後端部には、左右一対の車輪8を上下位置調節可能に取り付けている。これらの左右の車輪8には回転抵抗を付与可能とし、耕耘作業時には当該車輪8を回転不能として土中に差し込むことで、ロータリ耕耘装置4の牽引力に対する抵抗力を与えるようにしている。そして、左右の車輪8の上下位置を調節することにより耕深量を任意に設定することができるようにしている。
【0019】
機体フレーム2の後部には、ハンドル10を後上方へ延出するように設け、該ハンドル10の後側に左右二股に分かれた杆部12・12に連結したループ状の把持部11を備えている。このハンドル10の把持部11近傍にはデッドマン式クラッチレバー15を設け、該クラッチレバー15によりトランスミッション5に設けたクラッチの断接操作を可能している。
【0020】
すなわち、クラッチレバー15を把持部11とともに握ることで、トランスミッション5のクラッチを接続して、駆動力をエンジン3から伝達し、ロータリ耕耘装置4を駆動させるようにしている。逆に、クラッチレバー15を離すことで、クラッチを切断して、駆動力の伝達を遮断し、ロータリ耕耘装置4を停止させるようにしている。
【0021】
次に、前記左右のハンドル10の構成について詳細に説明する。
【0022】
ハンドル10は、左右の把持部11と、左右の杆部12と、取付部13とで構成し、取付部13を機体フレーム2の後部から後上方へ延設されたハンドル基部14に取り付ける一方、左右の杆部12を取付部13に前低後高に斜設し、該杆部12の後側上端に把持部11を連結して、平面視略Y字状に形成している。この把持部11は後部左右中央を除いて滑り止め部材で被覆し、しっかりと把持可能なものとしている。
【0023】
このハンドル10において、取付部13はハンドル基部14に左右方向の軸周りに回動可能に連結し、その回動支点16を中心として杆部12に連結した把持部11を前方または下方へ回動することで、これを機体側に折り畳むことができるようにしている。ここで、前方へ回動した場合には、把持部11がエンジン3の側方もしくは前方へ位置するようにコンパクトに折り畳むことができるようにし、その際には平面視でハンドル10とエンジン3を覆うボンネットと重複しないように構成している。回動支点16には、把手付き止めねじ17等の固定手段を設け、把持部11を任意の回動位置に固定可能としている。
【0024】
図3、図4に示すように、左右の各把持部11はループ状に形成し、その前端を杆部12の後端に連結して、その開口方向が略鉛直方向となるように配置している。そして、当該把持部11内側から後側にかけての部分を略L字状に屈曲して、その内側を前後方向に延伸する縦把持部11aとし、その後側を縦把持部11aの後端から外側に向けて延伸する横把持部11bとしている。
【0025】
また、把持部11は横把持部11bの外側端から縦把持部11aの前端に向けて延伸するガード体11cを一体的に設けて、該ガード体11cの前端と縦把持部11aとの前端とを連結している。こうして、前記縦把持部11aと、前記横把持部11bと、前記ガード体11cとで掌が十分に入る大きさの開口を有するループを形成し、その開口に手を挿入して、これら縦把持部11a、横把持部11b、ガード体11cのいずれかを把持することができるようにしている。
【0026】
なお、把持部はT字状などに形成して、縦把持部と横把持部とを備えるようにしてもよい。また、ガード体は把持部の最も外側に位置する横把持部の外側端から前方へ延出するものであればよく、把持部と別体としたり、縦把持部の前端に連結させずに構成したりすることも可能である。
【0027】
左右一側の把持部11の前端、すなわち縦把持部11aとガード体11cとの連結部付近には、エンジン3の回転数を調節してロータリ耕耘装置4の耕耘爪4aの回転数を調整するアクセルレバー18を設け、該縦把持部11aを把持したまま指先だけで操作可能としている。左右他側の把持部11の前端、すなわち縦把持部11aとガード体11cとの連結部付近には、エンジン3を停止させるストップボタン19を設け、該縦把持部11aを把持したまま指先だけで操作可能としている。
【0028】
また、左右一側の把持部11の近傍に前記クラッチレバー15を設けている。但し、両側の把持部11にそれぞれクラッチレバー15を設けることもできる。クラッチレバー15は縦把持部11aと横把持部11bの下方でこれらの形状に沿って平面視L字状に屈曲し、その屈曲部分の一側を前後方向に延伸する縦操作部15aとし、他側に左右方向に延伸する横操作部15bとしている。縦操作部15aは縦把持部11aと、横操作部15bは横把持部11bと平面視で略重合するように配置して、それぞれの操作部15a・15bと対向する把持部11a・11bとを同時に把持可能としている。
【0029】
クラッチレバー15はその前端に突設した連結片22の基部側で把持部11と杆部12との連結部付近に左右方向の軸回りに回動可能に支持して、その支点21を中心としてクラッチレバー15を把持部11に近接または離間させる方向(上下方向)に揺動可能としている。
【0030】
クラッチレバー15の連結片22の先端側にはワイヤー23の一端を接続し、該ワイヤー23の他端をトランスミッション5(またはベルトケース)に備えたクラッチに接続して、クラッチレバー15と当該クラッチとを連動連結している。そして、クラッチレバー15を把持部11の内側に位置する縦把持部11a、または把持部11の後側に位置する横把持部11bと同時に握ることでクラッチを接続し、逆に離すことで切断するようにしている。
【0031】
こうして、把持部11の開口に手を挿入して、縦操作部15aをクラッチレバー15の縦操作部15aとともに握ることによって、当該縦把持部11aをしっかりと握って耕耘作業を行ったり、左右のバランスをとって機体の姿勢制御を行ったりすることを容易にしている。一方、横把持部11bをクラッチレバー15の横操作部15bとともに握ることによって、機体の押し引きを容易にしたり、耕耘作業時に機体の姿勢を安定させた状態で後方から操縦したりすることを可能としている。
【0032】
また、このように縦把持部11aまたは横把持部11bをクラッチレバー15とともに握って耕耘作業を行う場合に、該縦把持部11aおよび横把持部11bよりも把持部11外側に配置したガード体11cよって、把持部11に向かって延びる果樹園での樹木の枝、ハウスでの支柱などの周囲の物体から手を保護することを可能としている。さらに、ハンドル10を前方へ折り畳む時や、折畳後に機体を持ち運ぶ時などには、ガード体11cを握ることで、折畳作業や運搬作業を容易にしている。
【0033】
以上のように、左右に把持部11を備えたハンドル10を有する歩行型作業機1において、前記左右の各把持部11は、前後方向に延伸する縦把持部11aと、該縦把持部11aの後端から外側に向けて延伸する横把持部11bとを備えて構成したことにより、通常作業時においては縦把持部11aを握り、特に押し引き操作する必要が生じた場合には力の入れやすい横把持部11bを握るように状況に応じて縦把持部11aまたは横把持部11bを使い分けることが可能となり、操作性の向上を図ることができる。
【0034】
また、前記歩行型作業機1において、前記左右いずれか一方の把持部11の近傍にクラッチレバー15を設けて、該把持部11の縦把持部11aと横把持部11bとに沿って屈曲し、該クラッチレバー15と縦把持部11aまたは横把持部11bとを同時に把持可能としたことにより、該クラッチレバー15を縦把持部11aまたは横把持部11bとともに握ることが可能となり、作業時での操作性を向上させることができる。
【0035】
また、前記歩行型作業機1において、前記把持部11に横把持部11bの外側端から縦把持部11aの前端に向けて延伸するガード体11cを設けたことにより、該ガード体11cで縦把持部11aまたは横把持部11bを握った手を周囲の物体から保護することができる。
【0036】
また、前記歩行型作業機1において、前記把持部11を、前記縦把持部11aと、前記横把持部11bと、前記ガード体11cとでループ状に形成したことにより、該把持部11の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例に係る歩行型作業機の側面図。
【図2】本発明の一実施例に係る歩行型作業機の平面図。
【図3】ハンドルの把持部の平面図。
【図4】ハンドルの左側把持部の下方斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1 歩行型作業機
10 ハンドル
11 把持部
11a 縦把持部
11b 横把持部
11c ガード体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業機において、前記左右の各把持部は、前後方向に延伸する縦把持部と、該縦把持部の後端から外側に向けて延伸する横把持部とを備えてなることを特徴とする歩行型作業機。
【請求項2】
前記左右いずれか一方の把持部の近傍にクラッチレバーを設けて、該把持部の縦把持部と横把持部とに沿って屈曲し、該クラッチレバーと縦把持部または横把持部とを同時に把持可能としたことを特徴とする請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記把持部に横把持部の外側端から縦把持部の前端に向けて延伸するガード体を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歩行型作業機。
【請求項4】
前記把持部を、前記縦把持部と、前記横把持部と、前記ガード体とでループ状に形成したことを特徴とする請求項3に記載の歩行型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−295384(P2008−295384A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145968(P2007−145968)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】