説明

歩行型田植機

【課題】部品点数が少なくてメンテナンス性がよく、苗ストッパの作用点を低く設定することができる、苗ストッパの保持構造を備える歩行型田植機を提供する。
【解決手段】苗載台61の下部に上下回動可能に配置され、前記苗載台61上に載置された苗マット66の下端に当接させて、該苗マット66の縦送りを阻止する苗ストッパ240を備える歩行型田植機1において、前記苗ストッパ240は、櫛状に形成され、前記苗ストッパ240の先端には、前記苗マット66の下端に当接させる当接部241aが設けられ、前記苗ストッパ240の基端には、前記苗載面61aから所定高さ位置に横架された支持部材230に嵌合する嵌合部243R・243L・244R・244Lが設けられ、前記嵌合部243R・243L・244R・244Lの少なくとも一側面には、前記支持部材230に係合して、待避位置と作用位置に保持するカム部245を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台の下部に上下回動可能に配置され、条止め時に前記苗載台上に載置された苗マットの下端に当接させて、該苗マットの縦送りを阻止する苗ストッパを備える歩行型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、苗載台の下部に左右の支持板を設け、これら左右の支持板に支持杆を横架して、該支持杆の各条に対応する左右所定位置に苗ストッパを枢支して、該苗ストッパにより、苗マットが条毎に滑り落ちるのを防止して条止めできるように構成された歩行型田植機は公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−160120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す歩行型田植機においては、苗ストッパが、支点越えバネで付勢される構成とされていたために、苗ストッパを作用位置又は退避位置に保持するための構造が複雑となり、部品点数が多くなるという問題があった。また、苗ストッパが支持杆から容易に取り外せず、メンテナンス性が悪いという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、部品点数が少なくてメンテナンス性がよい、苗ストッパの位置を保持する構造を備える歩行型田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、苗載台の下部に上下回動可能に配置され、前記苗載台上に載置された苗マットの下端に当接させて、該苗マットの縦送りを阻止する苗ストッパを備える歩行型田植機において、前記苗ストッパは、櫛状に形成され、前記苗ストッパの先端には、前記苗マットの下端に当接させる当接部が設けられ、前記苗ストッパの基部には、前記苗載面から所定高さ位置に横架された支持部材に嵌合する嵌合部が設けられ、前記嵌合部の少なくとも一側面には、前記支持部材に係合して、待避位置と作用位置に保持するカム部を備えるものである。
【0008】
請求項2においては、前記支持部材は、左右方向に横架された苗押え棒と、該苗押え棒から前記苗載面と略平行に延出された苗マット押えと、で構成され、前記嵌合部は、前記苗押え棒に嵌合されるとともに、前記苗マット押えを跨いで配置されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記カム部は、左右両側の嵌合部の左右内側面に形成され、前記苗マット押えに係合するように配置されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、苗ストッパを保持する構造が簡易となり、部品点数を少なくすることができる。また、苗ストッパは、支持部材から容易に取り外しできるので、メンテナンス性がよい。さらに、苗ストッパを上下方向に少し回動させるだけで退避位置又は作用位置に保持されので、苗ストッパの操作が簡易となる。
【0012】
請求項2においては、嵌合部が苗押え棒に嵌合されるので、苗ストッパの作用点を低く設定することが可能となる。従って、苗ストッパに作用する作用加重に対して軽量に構成することが可能となる。また、嵌合部が苗マット押えに嵌合されるとともに、前記苗マット押えを跨いで配置されるので、苗ストッパが左右に横ずれしない。
【0013】
請求項3においては、苗ストッパが左右に横ずれしない。また、カム部は外側にはみ出ることなく形成されるので、左右幅が大きくならない。また、係合部を別に設ける必要がなくて、構造が簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る歩行型田植機1の実施の一形態を示す右側面図。
【図2】本発明に係る歩行型田植機1の実施の一形態を示す平面図。
【図3】本発明に係る歩行型田植機1の伝動機構9を示す図。
【図4】苗載台61の下部の左側及び右側の構成を示す平面図。
【図5】苗載台61の下部の左右中央の構成を示す平面図。
【図6】苗載台61の下部の構成を示す右側面図。
【図7】(a)右高さ調節板250R及び右角度調節板260Rの構成を示す斜視図。(b)左高さ調節板250L及び左角度調節板260Lの構成を示す斜視図。
【図8】中高さ調節板250Cの構成を示す斜視図。
【図9】支持部材230の構成を示す斜視図。
【図10】苗ストッパ240の構成を示す斜視図。
【図11】(a)苗ストッパ240の構成を示す平面図。(b)苗ストッパ240の構成を示す右側面図。(c)A−Aの断面矢視図。(d)B−Bの断面矢視図。
【図12】(a)中左嵌合部244Lの構成を示す斜視図。(b)左嵌合部243Lの構成を示す斜視図。(c)左嵌合部243Lの構成を示す右側面図。
【図13】(a)苗ストッパ240の作用位置の右側面図。(b)苗ストッパ240の退避位置の右側面図。
【図14】(a)支持部材230を保持部261aで保持する場合の右側面図。(a)支持部材230を保持部261bで保持する場合の右側面図。
【図15】(a)支持部材230を保持部252dで保持する場合の右側面図。(a)支持部材230を保持部252aで保持する場合の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図1から図3を用いて、本発明に係る歩行型田植機の実施の一形態である歩行型田植機1の全体構成について説明する。
【0016】
本実施形態の歩行型田植機1は、いわゆる四条植えの歩行型田植機である。歩行型田植機1は、機体2と、エンジン3と、左車輪4Lと、右車輪4Rと、植付装置5と、苗供給装置6と、センターフロート7Cと、左サイドフロート7Lと、右サイドフロート7Rと、操作部8と、伝動機構9と、等を備える。
【0017】
機体2は、歩行型田植機1の主たる構造体を成す部材群である。機体2は、エンジン台21と、該エンジン台21の前端部に固定されるバンパー22と、前記エンジン台21の後端部に固定されるミッションケース23と、該ミッションケース23の後端部に固定されるセンターフレーム24と、前記ミッションケース23の左側面及び右側面にそれぞれ回動可能に支持される左車軸ケース25L及び右車軸ケース25Rと、前記ミッションケース23の左側面及び右側面に固定される左側方フレーム26L及び右側方フレーム26Rと、前記センターフレーム24の後端部に固定される中央植付ケース27Cと、前記左側方フレーム26L及び右側方フレーム26Rの後端部にそれぞれ固定される左植付ケース27L及び右植付ケース27Rと、これら左植付ケース27L及び右植付ケース27Rの後端部にそれぞれ固定される左後フレーム28L及び右後フレーム28Rと、で主に構成される。
【0018】
エンジン3は、歩行型田植機1の駆動源である。エンジン3は、機体2の前部に搭載される。本実施形態のエンジン3はガソリンエンジンであり、エンジン台21の上面の後部に固定される。エンジン3の右側方には、リコイルスタータ110のリコイルケース31が設けられる。
【0019】
左車輪4L及び右車輪4Rは、歩行型田植機1の駆動輪である。左車輪4Lは、前記左車軸ケース25Lの後端部に軸支され、右車輪4Rは、前記右車軸ケース25Rの後端部に軸支される。
【0020】
植付装置5は、苗の植え付けを行う装置である。本実施形態の植付装置5は、クランク式の植付装置であり、左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rを備え、左から順に間隔を空けて並んだ状態で配置される。中央左植付アーム51L及び中央右植付アーム51Rは、前記中央植付ケース27Cに回転可能に軸支され、左植付アーム52Lは、前記左植付ケース27Lに回転可能に軸支され、右植付アーム52Rは、前記右植付ケース27Rに回転可能に軸支される。
【0021】
苗供給装置6は、植付装置5に苗を供給する装置である。苗供給装置6は、苗載台61と、縦送り装置62と、横送り装置63と、予備苗台64と、を備える。
【0022】
苗載台61は、植付装置5に供給する苗を載置する台である。苗載台61は前下がりに傾斜した苗載面61aを有する板状の部材であり、後述するハンドルフレーム81に左右方向に固定された上苗台レール81aおよび下苗台レール81bの上を左右に摺動可能に載置される。苗載面61aには、条数分の苗マット66(床土、レキメンマット等のマット状物の上に種子を蒔いて発芽させることにより苗の根をマット状物に絡ませたもの)が載置される(図4参照)。苗載台61の前端部は、前記左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rの上方となる位置に配置される。
【0023】
縦送り装置62は、苗載面61aに載置された苗マット66を、苗載台61の前端部に搬送する(縦送りする)装置である。縦送り装置62は、苗載台61の前下部であって、苗載面61aの反対側の面(裏面)に設けられる。縦送り装置62は、苗載面61aから突出するローラ62aを備え、苗載台61が左右往復ストローク端に到達するごとに、ローラ62aを作動させて、苗載台61上の苗マット66を下方へ向かって搬送するように構成される。
【0024】
横送り装置63は、苗載台61を左右に往復駆動させるものである。横送り装置63は、苗載台61の前下方に配置される。横送り装置63は、外周面にネジ状の溝(ネジ溝)を有する横送り軸63aと、該ネジ溝に外嵌される滑子受け63bと、を備え、該滑子受け63bが前記苗載台61に固設される。
【0025】
予備苗台64は、苗載台61に供給するための予備苗(予備の苗マット)を載置するための台である。予備苗台64は機体2に固定され、苗載台61の前方かつ機体2の上方となる位置に配置される。
【0026】
センターフロート7C、左サイドフロート7Lおよび右サイドフロート7Rは、歩行型田植機1に浮力を付与するものである。センターフロート7Cは、機体2の左右中央かつ下方となる位置に配置され、機体2の左右中央部かつ後下部となる位置に回動可能に連結される。左サイドフロート7Lは機体2の下方かつ左後寄りとなる位置に配置され、機体2の左後下部となる位置に回動可能に連結される。右サイドフロート7Rは機体2の下方かつ右後寄りとなる位置に配置され、機体2の右後下部となる位置に回動可能に連結される。
【0027】
操作部8は、作業者が歩行型田植機1の各部を操作するためのものである。操作部8はハンドルフレーム81と、主クラッチレバーと、走行変速レバー82と、株間変速レバーと、左サイドクラッチレバー83Lと、右サイドクラッチレバー83Rと、植付クラッチレバーと、リコイル握り84と、等を備える。
【0028】
ハンドルフレーム81は、操作部8の主たる構造体であり、機体2の後部に固定される。ハンドルフレーム81は、中央植付ケース27Cから後斜め上方に延出されて、予備苗台64の後方に配置される。ハンドルフレーム81の上部は、左右方向に延出されるとともに、後方に向けて湾曲され、その左右両端に作業者が握るグリップが装着される。ハンドルフレーム81の下部は、左右方向に延出されて、その左端が、前記左後フレーム28Lの後端部に固定され、その右端が、右後フレーム28Rの後端部に固定される。
【0029】
伝動機構9は、エンジン3において発生した駆動力を、左車輪4L、右車輪4R、植付装置5及び苗供給装置6に伝達するための機構である。図3に示すように、伝動機構9は、主クラッチ機構9a、走行変速機構9b、株間変速機構9c、左サイドクラッチ機構9d、右サイドクラッチ機構9e及び植付クラッチ機構9f等を備え、これらは、主クラッチ機構9aを除き、ミッションケース23に収納される。
【0030】
このような歩行型田植機1においては、エンジン3の動力が主クラッチ機構9aを介して、ミッションケース23に伝達される。そして、ミッションケース23に伝達された動力が、走行変速機構9bで変速された後に、左サイドクラッチ機構9d及び右サイドクラッチ機構9eを介して、左車輪4L及び右車輪4Rにそれぞれ伝達されて、左車輪4L及び右車輪4Rが回転駆動する。これにより、歩行型田植機1が前進又は後進走行可能とされる。
【0031】
また、ミッションケース23に伝達された動力が、株間変速機構9cで変速された後、植付クラッチ機構9fを介して、左植付ケース27L、中央植付ケース27C、右植付ケース27Rにそれぞれ伝達されて、左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rが回転作動する。これにより、左植付アーム52L、中央左植付アーム51L、中央右植付アーム51R及び右植付アーム52Rは、苗載台61の前端部に載置された苗マット66から所定量の苗を切り取り、切り取られた苗を水田に移植する一連の作業を行うことにより、苗を水田に植え付ける。
【0032】
また、エンジン3の動力が中央植付ケース27Cから横送り装置63に伝達されて、横送り軸63aが回動作動するように構成される。これにより、横送り軸63aの回転作動にともなって滑子受け63bがネジ溝に沿って左右に摺動して、この滑子受け63bとともに苗載台61が左右方向に摺動する。そして、苗載台61が左右往復ストローク端に到達すると、ローラ62aが作動して、苗マット66が縦送りされて適切な位置に移動することとなる。
【0033】
以下では、図4から図15を用いて、苗載台61の下部の構成について詳細に説明する。なお、以下の説明において、矢印Fを前方向、矢印Bを後方向、矢印Lを左方向、矢印Rを右方向、矢印Uを上方向、矢印Dを下方向として規定する。
【0034】
図4から図8に示すように、苗載台61の下部には、左支持板210L及び右支持板210Rと、苗押え板220と、支持部材230と、各条に対応する四つの苗ストッパ240・240・240・240と、左高さ調節板250L、中高さ調節板250C及び右高さ調節板250Rと、左角度調節板260L及び右角度調節板260Rと、が設けられる。
【0035】
左支持板210L及び右支持板210Rは、苗押え板220、支持部材230及び前記縦送り装置62のローラ62aを支持するものである。左支持板210L及び右支持板210Rは、それぞれ側面視略長方形状であり、左右対称に構成される。左支持板210Lは、苗載台61の下部の左側に、苗載面61aと垂直となるように立設される。右支持板210Rは、苗載台61の下部の右側に、苗載面61aと垂直となるように立設される。これら左支持板210L及び右支持板210Rの後部には、前記縦送り装置62のローラ62aが軸支される。
【0036】
苗押え板220は、苗の倒れを防止するものである。苗押え板220は、略長方形状で、苗載台61の左右幅と同程度の幅を有し、苗載面61aに対して略垂直に配置される。苗押え板220の左右両端は、前記左支持板210L及び右支持板210Rの前下部に設けられた側面視略L字状の左右のステー221L・221Rに固定される。苗押え板220の左右中途部は、苗載台61の下部の左右中央側に設けられた側面視略L字状の支持フレーム222に固定され、苗押え板220の左側の中途部及び右側の中途部は、それぞれ苗載台61の下部に立設された左支持アーム65L(図2参照)及び右支持アーム65Rに固定される。
【0037】
支持部材230は、苗ストッパ240・240・240・240を支持するものであり、かつ、苗の倒れを防止する機能と、苗マット66の崩れ落ちを防止する機能と、を有する。図9に示すように、支持部材230は、苗押え棒231と、苗マット押え232と、で構成される。
【0038】
苗押え棒231は、苗の倒れを防止するものである。苗押え棒231は、左右方向を軸心方向とする棒状で、前記苗押え板220と同程度の幅を有し、前記苗押え板220の後下方に配置される。苗押え棒231は、左支持板210L及び右支持板210Rの間で、苗載面61aから所定高さ位置に横架される。苗押え棒231は、後述するように、左高さ調節板250L及び右高さ調節板250R等により、苗載面61aに対する高さが調節可能とされる。
【0039】
苗マット押え232は、苗マット66の崩れ落ちを防止するものである。各条に対応するそれぞれの苗マット押え232は、前記苗押え棒231から、苗載面61aと略平行に上方へ延設される。苗マット押え232は、基端側で側面視略L字状に屈曲されて、苗マット66の下端部側から確実に押圧するように構成されるとともに、その先端が上方に向けてやや湾曲される。
【0040】
一つの条に対して、三つの苗マット押え232L・232C・232Rが、苗押え棒231の左右位置に所定間隔を空けて配置され、これら三つの苗マット押え232L・232C・232Rのうち、左側に配置された左苗マット押え232L及び右側に配置された右苗マット押え232Rは、中央側に配置された中苗マット押え232Cよりも長く形成される。苗マット押え232は、後述するように、左角度調節板260L及び右角度調節板260R等により、苗載面61aに対する角度が調節可能とされる。
【0041】
苗ストッパ240は、縦送り装置62による苗マット66の縦送りを阻止するものである。苗ストッパ240は、プラスチック等の合成樹脂で構成される。各条に対応する四つの苗ストッパ240・240・240・240が、前記苗押え棒231の前上方で、左右方向に所定間隔を空けて配置される(図2参照)。図10及び図11に示すように、各苗ストッパ240は、四つの突出部241・241・241・241を有する櫛状に形成され、その先端(後端)部が、側面視略逆V字状に屈曲されて、前記苗マット66の下端と当接する当接部241a・241a・241a・241aが設けられる。
【0042】
各苗ストッパ240の基部242(前部)には、前記苗押え棒231と嵌合する嵌合部が前下方(突出部241と反対方向)に突出して設けられる。本実施形態においては、嵌合部は、左嵌合部243Lと、中左嵌合部244Lと、中右嵌合部244Rと、右嵌合部243Rと、で構成され、これらが左右方向に所定間隔を空けて順次配置される。
【0043】
左嵌合部243L及び右嵌合部243Rは、苗ストッパ240に対して左右対称に構成され、同様に、中左嵌合部244L及び中右嵌合部244Rは、苗ストッパ240に対して、左右対称に構成される。ここでは、左嵌合部243L及び中左嵌合部244Lの説明を行い、右嵌合部243R及び中右嵌合部244Rの説明は省略する。
【0044】
図11(a)、図11(c)及び図12(a)に示すように、中左嵌合部244Lは、一片244Laと他片244Lbとにより下方が開放されるように側面視略U字状に構成される。平面視において、一片244Laは、基部242の前部から長手方向に延出されて、内側(左側)に配置される。他片244Lbは、基部242の後部から長手方向に延出されて、外側(右側)に配置される。これら一片244Laと他片244Lbとで囲まれた空間に嵌合孔244Lcが形成され、該嵌合孔244Lcに、前記苗押え棒231が嵌合されて、苗ストッパ240がこの苗押え棒231に、上下方向に回動可能に枢支される。
【0045】
図11(a)、図11(d)、図12(b)及び図12(c)に示すように、左嵌合部243Lは、一片243Laと他片243Lbとにより下方が開放されるように側面視略U字状に構成される。一片243Laは、基部242の前部から長手方向に延出される。他片243Lbは、基部242の後部から長手方向に延出される。これら一片243Laと他片243Lbとで囲まれた空間に嵌合孔243Lcが形成され、該嵌合孔243Lcに、前記苗押え棒231が嵌合されて、苗ストッパ240がこの苗押え棒231に、上下方向に回動可能に枢支される。
【0046】
このように、苗ストッパ240の嵌合部(左嵌合部243L、中左嵌合部244L、中右嵌合部244R及び右嵌合部243R)は、苗押え棒231に嵌合されるので、苗ストッパ240の作用点を低く設定することが可能となる。従って、苗ストッパ240に作用する苗マット66の作用加重に対して軽量に構成することが可能となり、ひいては歩行型田植機1の軽量化が可能となる。
【0047】
更に、図4に示すように、左嵌合部243L、中左嵌合部244L、中右嵌合部244R及び右嵌合部243Rは、左苗マット押え232L、中苗マット押え232C及び右苗マット押え232Rを跨いで配置されるので、苗ストッパ240が苗押え棒231に対して左右に横ずれしない。
【0048】
なお、図12(c)に示すように、内側に配置された中左嵌合部244Lの嵌合孔244Lcは、外側に配置された左嵌合部243Lの嵌合孔243cよりも大きく形成され、かつ、図12(a)に示すように、この嵌合孔244Lcを形成する一片244Laと他片244Lbとが、左右にずれた位置に配置されるので、苗ストッパ240の着脱が容易となる。
【0049】
また、左嵌合部243L及び右嵌合部243Rの内側側面には、カム部245が形成される。カム部245は、前記苗押え棒231に当接して苗押え棒231に対する苗ストッパ240の位置を保持するものである。左嵌合部243Lについて説明すると、カム部245は、左嵌合部243Lの右側面に設けられた、なだらかな傾斜面を有する二つの凸部245a・245bで構成され、凸部245aが苗ストッパ240の先端側に配置され、凸部245bが、苗ストッパ240の基端側に配置される。凸部245aと凸部245bとの間には、前記苗マット押え232が係合する凹部245cが形成される。また、凸部245aと基部242との間には、前記苗マット押え232が係合する凹部245dが形成される。
【0050】
そして、図13(a)に示すように、苗ストッパ240が下方(右側面視において反時計方向)に回動されると、左嵌合部243L及び右嵌合部243Rのカム部245・245の凹部245c・245cに、左苗マット押え232L及び右苗マット押え232Rの基端側が係合して、苗ストッパ240の先端が苗載面61aと当接する作用位置となり、この位置で保持されることとなる。この際、苗ストッパ240の当接部241a・241a・241aは、苗載面61aに対して略垂直となる。こうして、縦送り装置62が駆動して、ローラ62aにより苗マット66が縦送りされた場合であっても、当接部241a・241a・241aが苗マット66の下端と当接して、苗マット66の縦送りを阻止することとなる。
【0051】
そして、図13(b)に示すように、苗ストッパ240が上方(右側面視において時計方向)に回動されると、左嵌合部243L及び右嵌合部243Rのカム部245・245の凹部245c・245cに、左苗マット押え232L及び右苗マット押え232Rの基端側が係合して、苗ストッパ240の当接部241a・241a・241aが苗載面61aから離間し、苗マット66が通過可能な退避位置となり、この位置で保持される。こうして、縦送り装置62が駆動すると、ローラ62aにより苗マット66が縦送りされることとなる。
【0052】
また、前記カム部245・245は、左右両側の左嵌合部243L及び右嵌合部243Rの左右内側面に形成されるので、苗ストッパ240が苗押え棒231に対して左右に横ずれしない。また、カム部245・245が外側にはみ出ることなく、左右幅が大きくならない。また、カム部245・245は、支持部材230の苗マット押え232L・232Rに係合するため、作用位置および退避位置で保持するための係合部を別に設ける必要がなく、構造が簡単となる。なお、前記カム部245・245は、左右両側の左嵌合部243L及び右嵌合部243Rの左右外側面に形成されることも可能である。
【0053】
左高さ調節板250L、中高さ調節板250C及び右高さ調節板250Rは、苗載面61aに対する前記苗押え棒231の高さを調節するものである。左高さ調節板250L、中高さ調節板250C及び右高さ調節板250Rは、図7(a)、図7(b)及び図8に示すように、それぞれ同形状に形成される。
【0054】
図4及び図7(b)に示すように、左高さ調節板250Lは、左支持板210Lの内側側面(右側面)に配置され、二つのボルト253・253により、左支持板210Lの前下部に固設される。図5及び図8に示すように、中高さ調節板250Cは、支持フレーム222の右側面に配置され、二つのボルト253・253により押えバネ254とともに、支持フレーム222の後下方に設けられた取付部材255に固設される。図4及び図7(a)に示すように、右高さ調節板250Rは、右支持板210Rの内側側面(左側面)に配置され、二つのボルト253・253により、右支持板210Rの前下部に固設される。
【0055】
左高さ調節板250L、中高さ調節板250C及び右高さ調節板250Rは、側面視略U字状に形成され、上部の前後両側にボルト孔が開口されて、前記ボルト253・253を挿通可能し、下部の前側に貫通孔が開口されて、前記支持杆251を支持可能としている。つまり、左高さ調節板250L、中高さ調節板250C及び右高さ調節板250Rの下部の前側に支持杆251が横架されている。
【0056】
左高さ調節板250L、中高さ調節板250C及び右高さ調節板250Rは、側面視略L字状に開口された長孔252が設けられ、該長孔252の下部が波状に形成されて、前記苗押え棒231の高さを保持するための複数(本実施形態では四つ)の保持部252a・252b・252c・252dが形成される。そして、左高さ調節板250Lの長孔252には、苗押え棒231の左端が挿嵌され、中高さ調節板250Cの長孔252には、苗押え棒231の左右中央部が挿嵌され、右高さ調節板250Rの長孔252には、苗押え棒231の右端が挿嵌され、苗押え棒231は、押えバネ254により前下方に付勢されて、保持部252a・252b・252c・252dのいずれかの位置で苗押え棒231が回動可能に支持される。
【0057】
左角度調節板260L及び右角度調節板260Rは、苗押え棒231の角度を調節するものであり、ひいては苗載面61aに対する苗マット押え232の角度を調節するものである。図7(a)及び(b)に示すように、左角度調節板260L及び右角度調節板260Rは、それぞれ同形状で側面視で略扇状に形成される。左角度調節板260Lの円弧の中心部には、前記苗押え棒231の左端が挿嵌され、右角度調節板260Rの円弧の中心部には、前記苗押え棒231の右端が挿嵌され、図9に示すように、これらが苗押え棒231と一体的に固設される。
【0058】
図7(a)及び(b)に示すように、左角度調節板260L及び右角度調節板260Rの外周側には、長孔261が形成され、該長孔261の外周側内面が波状に形成されて、左調節ノブ262L及び右調節ノブ262Rの位置を保持するための複数(本実施形態では四つ)の保持部261a・261b・261c・261dが形成される。
【0059】
図7(b)に示すように、左角度調節板260Lは、左支持板210Lの外側側面(左側面)に配置され、その長孔261に外側(左側)から左調節ノブ262Lが挿嵌されるとともに、該左調節ノブ262Lが左支持板210Lの前後中途部の上部に設けられた取付部材263に螺嵌して固設される。同様に、図7(a)に示すように、右角度調節板260Rは、右支持板210Rの外側側面(右側面)に配置され、その長孔261に外側(右側)から右調節ノブ262Rが挿嵌されるとともに、該右調節ノブ262Rが右支持板210Rの前後中途部の上部に設けられた取付部材263に螺嵌して固設される。なお、前記取付部材263・263は、左支持板210L及び右支持板210Rに溶接等で固設されている。
【0060】
このような苗載台61の下部において、図14(a)及び図14(b)に示すように、苗押え棒231及び苗マット押え232(支持部材230)の角度を調節する場合は、左調節ノブ262L及び右調節ノブ262Rを緩めて、苗押え棒231を中心に左角度調節板260L及び右角度調節板260Rを回動し、左角度調節板260R及び右角度調節板260Lと一体的に構成される苗押え棒231及び苗マット押え232が所望の角度となる保持部261a・261b・261c・261dのいずれかの位置で保持させた状態で、左調節ノブ262L及び右調節ノブ262Rを締付固設する。
【0061】
こうして、苗マット66上の苗丈に合わせて、苗押え棒231の高さが調節可能とされ、この際、条毎に苗マット押え232を調節する必要がなく、苗マット押え232の高さ調節が手間とならない。また、各条の苗マット押え232の高さを同一に揃えることが簡易となる。また、苗マット66の厚さに対する調節を行うことで、苗押え棒231の高さ調節も同時に行えるので、調節が容易となる。
【0062】
また、図15(a)及び図15(b)に示すように、苗押え棒231及び苗マット押え232(支持部材230)の高さを変更する場合には、左調節ノブ262L及び右調節ノブ262Rを緩めて、苗押え棒231を上下方向に移動し、所望の高さ位置となる保持部252a・252b・252c・252dのいずれかの位置で保持させ、苗マット押え232の角度も調整して、左調節ノブ262L及び右調節ノブ262Rを締付固設する。
【0063】
こうして、苗マット66の厚さに合わせて、苗マット押え232の角度が調節可能とされ、苗マット押え232を適切な位置に配置でき、確実に苗マット66の崩れ落ちを防止できる。また、苗マット66の取出しが容易となる。
【0064】
また、前記左調節ノブ262L及び右調節ノブ262Rは、前記支持板210R・210Lの外側に着脱可能に取り付けられるので、分解が容易で、メンテナンスが容易となる。また、苗押え棒231の高さや角度の調節時に苗マット66の葉が邪魔とならず、調節が容易となる。
【0065】
また、左調節ノブ262L、右調節ノブ262R、ボルト253・253・・・、左角度調節板260L、右角度調節板260R、左高さ調節板250L、中高さ調節板250C及び右高さ調節板250Rを外すことにより、苗押え棒231及び苗マット押え232を外すことができ、メンテナンスが容易にできる。
【0066】
以上のように、本発明の一実施形態に係る歩行型田植機1においては、苗載台61の下部に上下回動可能に配置され、前記苗載台61上に載置された苗マット66の下端に当接させて、該苗マット66の縦送りを阻止する苗ストッパ240を備える歩行型田植機1において、前記苗ストッパ240は、櫛状に形成され、前記苗ストッパ240の先端には、前記苗マット66の下端に当接させる当接部241aが設けられ、前記苗ストッパ240の基端には、前記苗載面61aから所定高さ位置に横架された支持部材230に嵌合する嵌合部243R・243L・244R・244Lが設けられ、前記嵌合部243R・243L・244R・244Lの少なくとも一側面には、前記支持部材230に係合して、待避位置と作用位置に保持するカム部245を備えるものである。これにより、苗ストッパ240を保持する構造が簡易となり、部品点数を少なくすることができる。また、製作が容易となる。また、苗ストッパ240は、支持部材となる苗押え棒231から容易に取り外しできるので、メンテナンス性がよい。さらに、苗ストッパ240を上下方向に少し回動させるだけで退避位置又は作用位置に保持されるので、苗ストッパ240の操作が簡易となる。
【0067】
また、前記支持部材230は、左右方向に横架された苗押え棒231と、該苗押え棒231から前記苗載面61aと略平行に延出された苗マット押え232と、で構成され、前記嵌合部243R・243Lは、前記苗押え棒231に嵌合されるとともに、前記苗マット押え232を跨いで配置されるものである。これにより、嵌合部243R・243Lが苗押え棒231に嵌合されるので、苗ストッパ240の作用点を低く設定することが可能となる。従って、苗ストッパ240に作用する作用加重に対して軽量に構成することが可能となる。また、嵌合部243R・243L・244R・244Lが前記苗マット押え232R・232C・232Lを跨いで配置されるので、苗ストッパ240が苗押え棒231に対して左右に横ずれしない。
【0068】
また、前記カム部245・245は、左右両側の嵌合部243R・243Lの左右内側面に形成され、前記苗マット押え232R・232Lに係合するように配置されるものである。これにより、苗ストッパ240が左右に横ずれしない。また、カム部245・245は外側にはみ出ることなく形成されるので、左右幅が大きくならない。また、係合部を別に設ける必要がなくて、構造が簡易となる。
【0069】
以上のように、本発明の一実施形態に係る歩行型田植機1においては、苗載台61の下部から苗載面61aと略平行に上方へ延設されて、前記苗載面61aに載置された苗マット66を押さえて、該苗マット66の崩れ落ちを防止する苗マット押え232を備える歩行型田植機1において、前記苗マット押え232は、前記苗載面61aから所定高さ位置に横架された苗押え棒231から延設されるものである。これにより、苗マット押え232の高さを調節することで、苗押え棒231の高さの調節が可能となり、調節が手間とならない。また、複数条の苗マット押え231・231・・・を一体とすることで、条毎に苗マット押え231の高さを調節する必要がなく、高さ調節が手間とならない。さらに、苗マット押え231の高さを同一に揃えることが簡易となる。苗マット押え232を簡単な構成とすることができ、コスト低減化が図れる。
【0070】
また、前記苗押え棒231は、複数条備える前記苗載台61の左右両側に立設した支持板210R・210Lに、回動可能に支持されるとともに、前記苗載面61aに対し、高さ及び角度を調節可能に取り付けられるものである。これにより、苗押え棒231の高さ及び角度が調節可能であるので、苗マット押え231を適切な位置に配置でき、確実に苗マットの崩れ落ちを防止できる。また、苗マット66の取出しが容易となる。
【0071】
また、前記苗押え棒231の高さ及び角度を調節する調節部材となる左調節ノブ262L及び右調節ノブ262Rは、前記支持板210R・210Lの外側に着脱可能に取り付けられるものである。これにより、分解が容易で、メンテナンスが容易にできる。また、苗押え棒231の高さや角度の調節時に苗マット66の葉が邪魔にならない。
【符号の説明】
【0072】
1 歩行型田植機
61 苗載台
61a 苗載面
66 苗マット
210R 右支持板
210L 左支持板
230 支持部材
231 苗押え棒
232 苗マット押え
240 苗ストッパ
241 突出部
241a 当接部
242 基部
243R 右嵌合部
243L 左嵌合部
244R 中右嵌合部
244L 中左嵌合部
245 カム部
245c 凹部(作用位置)
245d 凹部(退避位置)
250R 右高さ調節板
250C 中高さ調節板
250L 左高さ調節板
260R 右角度調節板
260L 左角度調節板
262R 右調節ノブ(調節部材)
262L 左調節ノブ(調節部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台の下部に上下回動可能に配置され、前記苗載台上に載置された苗マットの下端に当接させて、該苗マットの縦送りを阻止する苗ストッパを備える歩行型田植機において、
前記苗ストッパは、櫛状に形成され、
前記苗ストッパの先端には、前記苗マットの下端に当接させる当接部が設けられ、
前記苗ストッパの基部には、前記苗載面から所定高さ位置に横架された支持部材に嵌合する嵌合部が設けられ、
前記嵌合部の少なくとも一側面には、前記支持部材に係合して、待避位置と作用位置に保持するカム部を備えることを特徴とする歩行型田植機。
【請求項2】
前記支持部材は、左右方向に横架された苗押え棒と、該苗押え棒から前記苗載面と略平行に延出された苗マット押えと、で構成され、
前記嵌合部は、前記苗押え棒に嵌合されるとともに、前記苗マット押えを跨いで配置されることを特徴とする請求項1に記載の歩行型田植機。
【請求項3】
前記カム部は、左右両側の嵌合部の左右内側面に形成され、前記苗マット押えに係合するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の歩行型田植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate