説明

歩行型管理機

【課題】アタッチメントとして提供されている従来の培土器を使用することなく、うね立て作業を可能にすると共に、培土板を取り外すことなく、通常の耕耘作業を可能にする。
【解決手段】機体から左右外側方に延出する車軸9に、複数の耕耘爪10を備える車軸耕耘式の歩行型管理機1であって、機体の後部に、圃場に接触して走行抵抗を発生させる抵抗棒13用の取付部(作業機連結ヒッチ12)と、機体移動時に機体後部を支える移動尾輪21用の取付部とを備え、該移動尾輪21用の取付部を、移動尾輪21を接地高さに保持する下降姿勢と、移動尾輪21を非接地高さ保持する上昇姿勢とに回動変姿自在な移動尾輪ブラケット20で構成すると共に、該移動尾輪ブラケット20に、うね立て用の培土板24を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業やうね立て作業に用いられる車軸耕耘式の歩行型管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
機体から左右外側方に延出する車軸に、複数の耕耘爪を備える車軸耕耘式の歩行型管理機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の歩行型管理機では、機体の後部に、圃場に接触して走行抵抗を発生させる抵抗棒が取付可能となっており、該抵抗棒が発生させる走行抵抗で走行速度を抑制することにより、所望の耕深が得られるようになっている。また、この種の歩行型管理機では、機体の後部にアタッチメントを装着することにより、通常の耕耘作業以外の作業も行うことが可能となっている。例えば、機体の後部に培土器を取り付ければ、耕耘と同時にうね立てを行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−20号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アタッチメントとして提供されている従来の培土器は、抵抗棒用の取付部(作業機連結ヒッチ)に取り付けるように構成されているので、作業種別を、通常の耕耘作業からうね立て作業に変更する場合や、うね立て作業から通常の耕耘作業に変更する場合に、抵抗棒と培土器の交換作業が必要となり、作業種別の変更に手間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、機体から左右外側方に延出する車軸に、複数の耕耘爪を備える車軸耕耘式の歩行型管理機であって、前記機体の後部に、圃場に接触して走行抵抗を発生させる抵抗棒用の取付部と、機体移動時に機体後部を支える移動尾輪用の取付部とを備え、該移動尾輪用の取付部を、移動尾輪を接地高さに保持する下降姿勢と、移動尾輪を非接地高さ保持する上昇姿勢とに回動変姿自在な移動尾輪ブラケットで構成すると共に、該移動尾輪ブラケットに、うね立て用の培土板を設けたことを特徴とする。
また、前記培土板は、移動尾輪ブラケットの回動に伴う抵抗棒との干渉を回避する切欠きを備えることを特徴とする。
また、前記培土板は、移動尾輪ブラケットを自由回動状態としたとき、耕深に応じて上下回動するリヤカバーとして機能することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、下降姿勢と上昇姿勢に回動変姿自在な移動尾輪ブラケットにうね立て用の培土板を設けたので、アタッチメントとして提供されている従来の培土器を使用することなく、うね立て作業を行うことができる。また、移動尾輪ブラケットを上昇させれば、培土板も上昇位置に退避させることができるので、培土板を取り外すことなく、通常の耕耘作業を行うことができる。
また、請求項2の発明によれば、培土板は、移動尾輪ブラケットの回動に伴う抵抗棒との干渉を回避する切欠きを備えるので、培土板と抵抗棒の干渉によって移動尾輪ブラケットの回動が阻害されることもない。
また、請求項3の発明によれば、培土板は、移動尾輪ブラケットを自由回動状態としたとき、耕深に応じて上下回動するリヤカバーとして機能するので、従来のリヤカバーを廃止し、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪外側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図2】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪外側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す平面図である。
【図3】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪外側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す要部後面図である。
【図4】移動尾輪ブラケット自由回動状態(尾輪外側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図5】移動尾輪ブラケット上昇固定状態(尾輪外側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図6】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪内側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図7】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪内側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す平面図である。
【図8】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪内側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す要部後面図である。
【図9】(A)〜(C)は培土板の例を示す後面図である。
【図10】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪外側装着、培土板非装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図11】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪外側装着、培土板装着)の歩行型管理機を示す平面図である。
【図12】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪外側装着、培土板装着)の歩行型管理機を示す要部後面図である。
【図13】移動尾輪ブラケット自由回動状態(尾輪外側装着、培土板装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図14】移動尾輪ブラケット上昇固定状態(尾輪外側装着、培土板装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図15】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪内側装着、培土板装着)の歩行型管理機を示す側面図である。
【図16】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪内側装着、培土板装着)の歩行型管理機を示す平面図である。
【図17】移動尾輪ブラケット下降固定状態(尾輪内側装着、培土板装着)の歩行型管理機を示す要部後面図である。
【図18】従来例に係る歩行型管理機の側面図である。
【図19】従来例に係る歩行型管理機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。まず、図18及び図19に示す従来例と共通する部分について、図1〜図3を参照して説明する。図1〜図3において、1は車軸耕耘式の歩行型管理機であって、該歩行型管理機1は、前後方向に沿う機体フレーム2を備え、該機体フレーム2の下側に、前低後高状に傾斜するチェンケース3が配置される一方、機体フレーム2の上側に、動力源であるエンジン4が搭載されている。
【0009】
エンジン4の左側面部には、エンジン4の動力をチェンケース3に伝達するベルト伝動機構(図示せず)と、これを覆うベルトカバー5が設けられている。また、エンジン4の上部には、ステー6を介して燃料タンク7が設けられると共に、燃料タンク7の周囲を覆うエンジンカバー8が設けられている。
【0010】
チェンケース3の下部には、エンジン動力で駆動される車軸9が設けられている。車軸9は、チェンケース3の下部から左右に延出しており、その中間部に複数の耕耘爪10が設けられると共に、左右両端部にそれぞれ車輪11が設けられている。
【0011】
本実施形態の車軸9は、チェンケース3に突設される固定車軸と、該固定車軸に着脱自在に設けられて軸長を延長する延長軸とを備えて構成されており、例えば、通常の耕耘作業時には、延長軸を取り付けて耕耘幅を広く確保する一方、中耕作業時には、延長軸を取り外して機体幅を狭くすることができるようになっている。
【0012】
また、チェンケース3の後端部には、作業機連結ヒッチ12が一体的に設けられている。この作業機連結ヒッチ12には、抵抗棒13などの任意の作業機が装着されるようになっている。
【0013】
さらに、チェンケース3の上端部には、ハンドルフレーム14が突設されており、該ハンドルフレーム14に左右のハンドル15L、15Rが設けられている。そして、左側のハンドル15Lには、主クラッチレバー16が設けられ、右側のハンドル15Rには、スロットルレバー17が設けられている。
【0014】
エンジン4の下方には、機体の左右中心部から左右外側方に張り出して車軸9の基部上方を覆うフェンダ18が設けられている。このフェンダ18は、主として、耕耘爪10によって跳ね上げられる泥や石が、耕耘爪10の上方にあるエンジン4にかかることを防止するために設けたものであって、歩行型管理機1を運転する作業者の足元を保護するためには、車軸9の後方を覆うリヤカバー19を設ける必要がある。そして、この種のリヤカバー19は、耕深の変化などに追従するために、上端側を支点として上下回動自在であることが求められる。因みに、従来の歩行型管理機100では、図18及び図19に示すように、作業機連結ヒッチ12に回動支点部材19aを突設し、該固定支点部材19aでリヤカバー19を回動自在に支持している。
【0015】
次に、本発明の実施形態に係る歩行型管理機1と、従来例に係る歩行型管理機100との相違点、つまり、本発明の特徴的な構成について、図1〜図17を参照して説明する。
【0016】
図1〜図3に示すように、本発明の実施形態に係る歩行型管理機1は、機体移動時に機体後部を支える移動尾輪用の取付部として移動尾輪ブラケット20を備えている。本実施形態の移動尾輪ブラケット20は、左右一対の脚部20aを有する後面視冂字形状であり、左右脚部20aの下端部には、それぞれ、移動尾輪21を回転自在に装着可能な尾輪装着部20bが設けられている。また、移動尾輪ブラケット20の上端部は、作業機連結ヒッチ12に上下回動自在に連結されており、この回動にもとづいて、移動尾輪21を接地高さに保持する下降姿勢と、移動尾輪21を非接地高さ保持する上昇姿勢とに変姿することができるようになっている。
【0017】
移動尾輪ブラケット20の基端部には、少なくとも上昇位置と下降位置で移動尾輪ブラケット20の回動をロックする回動ロック手段22が設けられている。本実施形態の回動ロック手段22は、移動尾輪ブラケット20と一体的に回動する左右一対のロックプレート20cと、左右のロックプレート20cを貫通する抜き挿し自在なロックピン23とを備えて構成されており、ロックピン23を作業機連結ヒッチ12の孔12aに差し込むと、移動尾輪ブラケット20が下降位置で回動ロックされ、また、ロックピン23を作業機連結ヒッチ12の後端部に当接させると、移動尾輪ブラケット20が上昇位置で回動ロックされ、さらに、ロックピン23を抜くと、移動尾輪ブラケット20が自由回動するようになっている。尚、回動ロック手段22は、図1〜図5に図示し、他の図では図示を省略する。
【0018】
移動尾輪ブラケット20に装着される左右の移動尾輪21は、作業の種類などに応じて、着脱したり、装着位置を変更することができるようになっている。例えば、図1〜図5は、尾輪装着部20bの外側に移動尾輪21を装着した状態を示し、図6〜図8は、尾輪装着部20bの内側に移動尾輪21を装着した状態を示している。
【0019】
移動尾輪ブラケット20には、うね立て用の培土板24を装着可能な培土板装着部20dが設けられている。本実施形態の培土板装着部20dは、左右の脚部20aを連結する連結部材20eと、該連結部材20eに突設される複数の装着ピン20fとを備えて構成されており、培土板24に形成される装着孔24aを装着ピン20fに係合させることによって、培土板24を移動尾輪ブラケット20に装着することができるようになっている。このようにすると、下降姿勢と上昇姿勢に回動変姿自在な移動尾輪ブラケット20にうね立て用の培土板24を装着することができるので、アタッチメントとして提供されている従来の培土器を使用することなく、うね立て作業を行うことができる。また、移動尾輪ブラケット20を上昇させれば、培土板24も上昇位置に退避させることができるので、培土板24を取り外すことなく、通常の耕耘作業を行うことができる。
【0020】
具体的に説明すると、本実施形態の培土板24は、図9に示すように、うねの谷部を形成すべく逆三角形状に形成されており、その中央上部には、装着ピン20fに係合可能な二つの装着孔24aが形成されている。本実施形態の装着ピン20fは、基部が小径で、頭部が大径な形状を有する一方、培土板24の装着孔24aは、装着ピン20fの頭部よりも大径な大径孔部と、装着ピン20fの基部よりも大径で、かつ、頭部よりも小径な小径孔部とを連続的に有するひょうたん形状となっており、装着孔24aの大径孔部を装着ピン20fに差し込んでから、培土板24を下方にスライドさせることにより、装着孔24aの小径孔部が装着ピン20fの頭部に抜止め状に係合されるようになっている。尚、本実施形態では、培土板24を装着ピン20fに対して係合状態で装着しているが、装着ピン20fにRピンなどの抜止め部材を装着するようにしてもよい。
【0021】
また、本実施形態の培土板24には、抵抗棒13との干渉を回避するための孔24b又は切欠き24cが形成されている。つまり、本実施形態の歩行型管理機1では、図10などに示すように、培土板24と抵抗棒13の位置がオーバーラップするので、抵抗棒13が貫通する孔24b又は切欠き24cを培土板24に形成している。
【0022】
特に、図9の(B)、(C)に示すように、培土板24の下端部まで到達する切欠き24cとした場合には、移動尾輪ブラケット20の回動に伴う抵抗棒13との干渉を回避することができるので、培土板24と抵抗棒13の干渉によって移動尾輪ブラケット20の回動が阻害されることがなく、その結果、移動尾輪ブラケット20の回動操作に際して、培土板24や抵抗棒13の着脱を不要とし、作業性の向上が図れる。
【0023】
また、培土板24の下端部まで到達する切欠き24cとする場合は、図9の(c)に示すように、切欠き24cを開閉自在に覆うゴム製のカバー25を設けることが好ましい。このようにすると、切欠き24cからの土の流出を最小限に抑えることができる。
【0024】
培土板24の寸法は、任意に設定することが可能であるが、培土板24の下端が移動尾輪21の下端よりも上方に位置するように寸法設定を行うことが好ましい。例えば、図10に示すように、培土板24の下端と移動尾輪21の下端との間に寸法Gを確保する。このようにすると、移動尾輪21を使用した機体移動に際し、培土板24を地面から浮かせることができるので、機体移動が培土板24によって阻害されることがないだけでなく、培土板24の損傷も防止することができる。
【0025】
また、本実施形態の培土板24(図9の(B)、(C)に示す培土板)は、リヤカバーとして機能させることができるようになっている。つまり、培土板24を装着された移動尾輪ブラケット20を自由回動状態として耕耘作業を行うと、培土板24が耕深に応じて上下回動するリヤカバーとして機能することになる。これにより、従来のリヤカバーを廃止し、コストダウンを図ることができる。
【0026】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、機体から左右外側方に延出する車軸9に、複数の耕耘爪10を備える車軸耕耘式の歩行型管理機1であって、機体の後部に、圃場に接触して走行抵抗を発生させる抵抗棒13用の取付部(作業機連結ヒッチ12)と、機体移動時に機体後部を支える移動尾輪21用の取付部とを備え、該移動尾輪21用の取付部を、移動尾輪21を接地高さに保持する下降姿勢と、移動尾輪21を非接地高さ保持する上昇姿勢とに回動変姿自在な移動尾輪ブラケット20で構成すると共に、該移動尾輪ブラケット20に、うね立て用の培土板24を設けたので、アタッチメントとして提供されている従来の培土器を使用することなく、うね立て作業を行うことができる。また、移動尾輪ブラケット20を上昇させれば、培土板24も上昇位置に退避させることができるので、培土板24を取り外すことなく、通常の耕耘作業を行うことができる。
【0027】
また、培土板24は、移動尾輪ブラケット20の回動に伴う抵抗棒13との干渉を回避する切欠き24cを備えるので、培土板24と抵抗棒13の干渉によって移動尾輪ブラケット20の回動が阻害されることもない。
【0028】
また、培土板24は、移動尾輪ブラケット20を自由回動状態としたとき、耕深に応じて上下回動するリヤカバーとして機能するので、従来のリヤカバーを廃止し、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 歩行型管理機
9 車軸
10 耕耘爪
12 作業機連結ヒッチ
13 抵抗棒
20 移動尾輪ブラケット
20b 尾輪装着部
20d 培土板装着部
21 移動尾輪
24 培土板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体から左右外側方に延出する車軸に、複数の耕耘爪を備える車軸耕耘式の歩行型管理機であって、
前記機体の後部に、圃場に接触して走行抵抗を発生させる抵抗棒用の取付部と、機体移動時に機体後部を支える移動尾輪用の取付部とを備え、該移動尾輪用の取付部を、移動尾輪を接地高さに保持する下降姿勢と、移動尾輪を非接地高さ保持する上昇姿勢とに回動変姿自在な移動尾輪ブラケットで構成すると共に、該移動尾輪ブラケットに、うね立て用の培土板を設けたことを特徴とする歩行型管理機。
【請求項2】
前記培土板は、移動尾輪ブラケットの回動に伴う抵抗棒との干渉を回避する切欠きを備えることを特徴とする請求項1記載の歩行型管理機。
【請求項3】
前記培土板は、移動尾輪ブラケットを自由回動状態としたとき、耕深に応じて上下回動するリヤカバーとして機能することを特徴とする請求項1又は2記載の歩行型管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−16284(P2012−16284A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153684(P2010−153684)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】