説明

歩行型管理機

【課題】簡易な畝立て器を、容易に取付け、取外し可能に、かつ既存の製品にも所有者に負担をかけることなく装備可能な歩行型管理機を提供する。
【解決手段】抵抗棒12に取付け部15を設け、該取付け部15に、耕起ロータ10にて耕起された土を畝立てする畝立て器16を取付けるにあたり、前記畝立て器16は、前記取付け部15に、該畝立て器16の成形板16aが前記抵抗棒12の前側にて回動自在となる使用位置と、前記成形板16aが前記抵抗棒12の後側の不使用位置とに姿勢変更可能に取付けると共に、該成形板16aが不使用位置にあっては、耕耘した土塊が飛散しないハンドル5と略平行に向く位置で下方への回動が規制される位置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動車軸に耕起ロータを装着し、該耕起ロータの回転により前進しつつ耕起を行い、かつ走行機体に装着した抵抗棒により前進抵抗を加減して前進速度を調節する歩行型管理機に係り、詳しくは耕起ロータの後部に畝立て器を取付けて、前記耕起ロータにより耕起された土を畝立てし得る歩行型管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、歩行型管理機は、耕起ロータの後方に位置するように、成形板からなる簡易な畝立て器(培土器)配備したものが提案されている(特許文献1及び2参照)。特許文献1のものは、上記畝立て器が、耕起ロータと抵抗棒との間にあって、ヒッチに前後方向揺動自在に配置されている。特許文献2のものにあっては、上記畝立て器が、その上部が抵抗棒の後方に位置し、その下部が抵抗棒の前方に位置するように、側面視で抵抗棒と交差する状態に配備されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−178058号公報
【特許文献2】特開2009−195207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2のものは、いずれも、耕起ロータで耕起した土を畝立て器で押圧して畝を形成するが、この際、畝立て器に作用する土からの圧力を抵抗棒にて受けて、畝立て器自体の強度並びにその取付け部分の強度の軽減化を図っている。
【0005】
しかし、上記畝立て器は、ヒッチ等の走行機体自体にピン等により回動自在に取付けられるため、畝立て器を取付け又は取外す際に抵抗棒が邪魔となり、畝立て器の取付け、取外し、使用位置と不使用位置への付替え等が面倒であった。
【0006】
また、ヒッチ等の走行機体自在に畝立て器取付け用(ピン挿入用)の孔を必要とし、古い形式の歩行型管理機にこの種の畝立て器を取付けるには、上記孔を新たに加工する必要があり、面倒であると共にコスト負担を所有者にかけることになる。
【0007】
そこで、本発明は、抵抗棒自体に畝立て器用の取付け部を設けて、上述した課題を解決した歩行型管理機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジン(2)と、ミッションが内蔵されたミッションケース(6)を有する走行機体に、後上方に向けてハンドル(1)を延設し、かつ前記エンジン(2)にて駆動される耕起ロータ(10)を装備すると共に、該耕起ロータ(10)の後方に抵抗棒(12)を上下方向に位置調節自在に装着してなる、歩行型管理機において、前記抵抗棒(12)に取付け部(15)を設け、該取付け部(15)に、前記耕起ロータ(10)にて耕起された土を畝立てする畝立て器(16)を取付けるにあたり、前記畝立て器(16)は、前記取付け部(15)に、該畝立て器(16)の成形板(16a)が前記抵抗棒(12)の前側にて回動自在となる使用位置と、前記成形板(16a)が前記抵抗棒(12)の後側の不使用位置とに姿勢変更可能に取付けると共に、該成形板(16a)が不使用位置にあっては、耕耘した土塊の飛散を防止すべくハンドル(1)と略平行に向く位置で下方への回動が規制される位置とした、歩行型管理機にある。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、成形板が抵抗棒の後側にて下方への回動が規制される不使用位置に変更された時には、耕起ロータで飛ばされる土が飛散するのを成形板によって防止出来、作業者の特に足元に土塊が当たることを防止出来ると共に、膨軟になった土を均平にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用し得る歩行型管理機を示す平面図。
【図2】その側面図。
【図3】本発明に係る畝立て器を装着した状態の歩行型管理機を示す側面図。
【図4】その畝立て器部分を示す背面図。
【図5】畝立て器の長さを変更した実施の形態による歩行型管理機を示す側面図。
【図6】畝立て器を不使用状態とした歩行型管理機を示す側面図。
【図7】畝立て器をリヤカバーとして用いる状態を示す歩行型管理機を示す側面図。
【図8】畝立て器を他の方法で取付けた歩行型管理機を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態を説明する。歩行型管理機1は、図1及び図2に示すように、エンジン2を搭載した走行機体3を有しており、該走行機体には後上方向に向けてハンドル5が延設されている。また、走行機体3はチェーン駆動装置等のミッションが内蔵されていると共に下部に駆動軸7が支持されているミッションケース6を有しており、前記エンジン2の出力がベルト伝動装置9及び上記ケース6内のミッションを介して上記駆動軸7に伝達される。該駆動軸7は、ミッションケース6を貫通して左右に延びており、該左右の駆動軸7にそれぞれ耕起ロータ10が装着されている。
【0013】
前記走行機体3の後端中央部には軸線を上下方向にして取付けパイプ11が固設されており、該パイプ11に抵抗棒12が嵌合して取付けられる。抵抗棒の上部分12aには複数個の横孔12b・・・が形成されており、これら横孔の1個とパイプ11に形成された孔にピン13を貫通・抜止めして、抵抗棒12は上下位置を調節されて固定される。該抵抗棒12は、上部分が垂直方向に延び、中間で屈曲して後方向に延びている。
【0014】
上記抵抗棒12における上部分12aと後退角部分12cとの間の屈曲部12dの内角側に水平方向に軸線を有する短いパイプ材からなる畝立て器取付け部15が溶接等により固設されている。該取付け部15は、畝立て器16の回動中心となるが、該回動がスムーズに保持されるため、耕起ロータ10による耕耘後の土面Gより上方位置に設置されている。なお、従前の歩行型管理機と本発明に係る歩行型管理機1とは、抵抗棒12に上記畝立て取付け部15が設けられているかいないかで相違しており、従前の歩行型管理機に対して、その抵抗棒12に上記パイプ材からなる畝立て器取付け部15を固設するか、又は抵抗棒12を、該取付け部15を有するものに交換するかにより、本発明を適用し得る。
【0015】
上記抵抗棒12の取付け部15には、図3及び図4に示すように、簡易形の畝立て器(培土器)16が取付けられる。畝立て器16は、主にゴム板又は鋼板からなる成形板16aと取付け金具16bとからなる。成形板16aは両側部が下方に向いて幅狭となるようにテーパ面からなる略々逆台形状からなり、全部がゴム板から構成されてもよいが、中央部に上記抵抗棒12と重なるように金属製の縦枠と上端部分に沿うように同じく金属製の横枠を設けて、補強すると共に剛性を高めるようにしてもよい。なお、成形板16aは、畝立て作業時の土の抵抗を受けて弾性変形し、土を左右又は下部に逃して畝を成形する。
【0016】
取付け金具16bは、成形板16aの上端部分中央に一体に固定されており、成形板16aに固定される底板aとその左右で立上る側板b,bとからなる金属製のU字形状(U字ブラケット)からなる。左右側板b,bには両側に亘ってピン17が取付けられるように孔が形成されている。上記畝立て器16は、その成形板16aが上記抵抗棒12の前側に位置するようにして、その取付け金具16bを上記抵抗棒12を後から抱え込むようにして前記取付け部15に合せる。そして、取付け金具16bの両側板b,bをパイプ状の取付け部15の両端を嵌合して、パイプ孔及び上記両側板の孔を貫通するようにピン17を差込んで抜止めする。これにより、畝立て器16は、畝立て使用位置において管理機1に前後方向に回動自在に装着される。なお、上記畝立て器16は、上述したように、板状の成形板16aと取付け金具(U字ブラケット)16bとからなる簡易な構造からなり、従前のプラウ形状の畝立て器に比して大幅に安価に製造され、歩行型管理機の付属品とし付けられる。
【0017】
歩行型管理機1は、図2に示すように、エンジン2により耕起ロータ10が矢印A方向に回転することにより、土を耕耘して膨軟にすると共に前進する。この際、予め抵抗棒12の長さを、作業者の身長、土壌の質等により多数の孔12bの1個を選択してピン13で固定することにより設定すると共に、作業者がハンドル5をもって抵抗棒12の土への侵入を加減することにより、前進速度が調節されると共に、耕耘深さ及び砕土塊の大きさ等の耕耘量が調節される。
【0018】
そして、畝立て器16は、図3に示すように、抵抗棒12の取付け部15にピン17を差込んで、その成形板16aを抵抗棒12の前方に位置する使用位置にて取付けされる。該畝立て器16の使用位置での取付けにあって、取付け金具16bの上縁部eが抵抗棒12の上部分に干渉して、Bに示す位置より前方に回動することが規制される。これにより、畝立て器16がロータ10側に回動して干渉することが防止される。
【0019】
この状態で、上述したように、エンジン2により耕起ロータ10を回転すると、耕起ロータ10は、土壌を耕耘して膨軟にすると共に走行機体3を前進する。すると、畝立て器16が上記膨軟にした土により押圧されて、抵抗棒12から離れて垂下した位置Bから成形板16aが抵抗棒12に接触する位置Cに移動する。この状態では、成形板16aに受けた土の圧力は、抵抗棒12にて受けられ、成形板16aの形状に合せて、正確にはゴム板等からなる成形板16aがその左右側部及び底部が後退角になるように弾性変形しつつ、上記耕起ロータ10にて膨軟になった土を左右方向に押し分けて、溝が形成される。この耕起ロータ10を推進力とする耕耘及び畝立て器16による土の押分け作業が所定間隔で平行に行われることにより、畝立てが行われる。
【0020】
この際、抵抗棒12は、作業者の身長、土壌状況等に合せてその長さが調節された状態にあり、耕起ロータ10による耕耘深さに合せた畝立てになるように自動的に調整される。
【0021】
また、本実施の形態にあっては、図3に示すように、畝立て器16の長さが耕盤Kに届かないように短か目に設定される。従って、上述した畝立て作業において、作業者はハンドル5を持って抵抗棒12を上下に調節することにより、抵抗棒12の耕盤への進入量を調節して、耕起ロータ10による耕耘を制御できる。なお、該短か目の畝立て器16は、軟弱土壌又は水分の多い場所に適しており、耕起ロータ10による耕耘された充分の量の土が畝立て器16の成形板16aに作用しており、上記抵抗棒12による調節時に畝立て器16が耕盤に作用しないように設定されている。
【0022】
図5は、畝立て器16’が、耕盤Kに届くように長めに設定されている実施の形態を示す。該畝立て器16’は、土壌が硬い等により、耕起ロータ10の耕耘により畝立て器に供給される土の持ちまわり量が少なく、又は畝立て器からの土離れがよすぎて、成形板16aに作用する土の抵抗が少ない場合に適している。この状態では、成形板16aが抵抗棒12に接触しないことがあり、作業者はハンドル5を持って成形板16aの下部分を耕盤Kに侵入するように操作する。これにより、成形板16aには充分な土抵抗が作用して、抵抗棒12に接触することになり、円滑な畝立て作業を行うことができる。
【0023】
畝立て器16を使用しない不使用状態にあっては、図6に示すように、ピン17を取付け部15から抜き出すことにより畝立て器16を抵抗棒12から取外す。そして、その取付け金具16bを抵抗棒12の後側において取付け部15を下方から抱き抱えるようにしてピン17により取付ける。この状態では、畝立て器16は、矢印D方向のモーメントが作用し、取付け金具16bの上縁部eが抵抗棒12に当接して位置決めされる。この状態で、耕起ロータ10により作業しつつ前進し、かつ抵抗棒12により前進速度(耕耘量)を制御する。この際、除草等により耕起ロータ10の回転が速い作業にあって、ロータが草等を矢印E方向に飛ばしても、畝立て器16がガードして作業者に直接当たることがない。また、畝立て器16の不使用状態にあっても、畝立て器16は図6に示す不使用位置に取付けられた状態にあって、紛失することを防止できる。
【0024】
また、図7に示すように、畝立て器16の取付け金具16bを、抵抗棒12の後側において取付け部15を上下方から抱え込むようにしてピン17により取付ける。この状態では、畝立て器16は、抵抗棒12の後側においてピン17を中心に回転自在に、かつ所定値以上の上方向への回動は上縁部eが抵抗棒12と干渉することにより規制され、また下方向への回動は、成形板16aが抵抗棒12の後側に当接することにより規制される。
【0025】
従って、畝立て器16を図7に示すように取付けることにより、畝立て器16をリヤカバーとして用いることができる。この状態で、耕起ロータ10を矢印A方向に回転することにより、上述したように、歩行型管理機1は、耕耘、畝くずし等の作業を行うことができる。この際、リヤカバーとなる畝立て器16は、ピン17を中心に回動自在となって、耕起ロータ10が作業した土の上を滑って移動する。これにより、耕起ロータ10で飛ばされる土が飛散することを防止して、作業者に土塊が当ることを防止すると共に、膨軟になった土を均平にすることができる。この際、畝立て器16に、上縁部eが抵抗棒12と干渉して所定値以上の上向き方向の回動を阻止され、膨軟になった土の上面を押えて均平化する。なお、畝立て器16を鋼板で構成することによって、その重量により土の均平化を図るようにしてもよい。
【0026】
図8は、畝立て器16を抵抗棒12とは異なる位置に取付けた状態を示す。図3に示すように、畝立て器16を抵抗棒12に取付けると、畝立て器16は抵抗棒12の下部後退角に合せた比較的立上った状態となって、高い畝を作ることに適している。
【0027】
ミッションケース6は、部品の共通化により左右対称に形成されており、エンジンフレーム取付け用孔となる一方のケースが空孔6aとなって(図2参照)、走行機体3の後部分でかつ抵抗棒12の前方部分に位置している。該空孔6aを利用して、同じ畝立て器16を取付ける。即ち、畝立て器16の取付け金具16bを、ピン17を上記孔6aに差込むことにより取付ける。この状態では、畝立て器16は、取付け金具16bの上縁部eがミッションケース6と干渉して下向きの回動が規制されると共に、成形板16aの先端fが抵抗棒12に当接して上向きの回動が規制され、比較的水平に近い緩やかな角度で固定される。
【0028】
この状態で、耕起ロータ10を回転することにより、耕耘すると共に前進すると、上記緩やかな角度の畝立て器16により比較的低い(浅い)畝立て作業が行われる。これにより、同じ畝立て器16を用いるものでありながら、比較的浅い畝立てを作ることができ、かつこの際、畝立て器16はその前後で固定されているため、安定した作業を行うことができる。また、畝立て器16が抵抗棒12又はリヤヒッチの後方部分に回動自在に取付けると、機体重心が後方になり勝であるが、図8に示すように畝立て器16をミッションケース6に取付けることにより前後バランスを良好に保つことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 歩行型管理機
2 エンジン
3 走行機体
5 ハンドル
10 耕起ロータ
12 抵抗棒
15 取付け部
16,16’ (簡易)畝立て器
16a 成形板
16b 取付け金具
17 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、ミッションが内蔵されたミッションケースを有する走行機体に、後上方に向けてハンドルを延設し、かつ前記エンジンにて駆動される耕起ロータを装備すると共に、該耕起ロータの後方に抵抗棒を上下方向に位置調節自在に装着してなる、歩行型管理機において、前記抵抗棒に取付け部を設け、該取付け部に、前記耕起ロータにて耕起された土を畝立てする畝立て器を取付けるにあたり、前記畝立て器は、前記取付け部に、該畝立て器の成形板が前記抵抗棒の前側にて回動自在となる使用位置と、前記成形板が前記抵抗棒の後側の不使用位置とに姿勢変更可能に取付けると共に、該成形板が不使用位置にあっては、耕耘した土塊が飛散しないハンドルと略平行に向く位置で下方への回動が規制される位置としたことを特徴とする歩行型管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−59356(P2013−59356A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1224(P2013−1224)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2010−151980(P2010−151980)の分割
【原出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】