説明

歩行案内装置および歩行案内方法

【課題】歩行補助装置を装着したユーザーに対し、階段、坂道などの歩行難経路の通行可否を判定する。
【解決手段】本発明に係る歩行案内装置は、ユーザーの歩行ルート中に存在する歩行難経路を検出する歩行難経路検出処理と、歩行補助装置にて歩行を補助した場合の歩行能力で、歩行難経路検出処理にて検出された歩行難経路を通行できるか否かを判定する歩行判定処理と、歩行判定処理で、歩行難経路を通行できないと判定した場合、通行できない旨をユーザーに告知する告知処理を実行する制御部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの歩行に対してアシスト力を付与することで、歩行を補助する歩行補助装置を装着したユーザーにて使用される歩行案内装置、及び、歩行案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザーの体に装着して、ユーザーの脚部、腕部などの可動部に対してアシスト力を付与する補助装置が開発されている。このような補助装置では、高齢者や身障者の歩行、動作を補助する装置として利用されることが期待されている。また高齢者などに限らず、宅配業者など重い荷物を運ぶ作業者に対する補助装置としても利用することで、作業者に対する負担を軽減することが期待されている。
【0003】
特許文献1には、移動始点から移動終点中の障害物を考慮して移動経路を計画し、移動経路に沿って移動ロボットの足平の着地位置を計画し、移動ロボットを移動させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−258779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザーの歩行を補助する歩行補助装置は、特許文献1に開示される移動ロボットとは異なり、ユーザーの意思に基づいて歩行が補助される。例えば、歩行経路中に障害物などが存在した場合、ユーザーの目視により障害物を認識し、認識に基づいて足を上げることで障害物を避けて歩行することとなる。このように、歩行補助装置を使用した歩行では、歩行できるか否かの判断は、ユーザーの認識に依存することとなる。
【0006】
ところで、歩行補助装置を利用した歩行状況としては、階段や坂道などといった歩行難経路を通過することが想定される。このような歩行難経路の通過においても、前述の障害物と同様、通行できるか否かの判断はユーザーの認識に任されることとなる。しかしながら、ユーザーの歩行に関する認識と、実際の歩行能力が異なる場合には、歩行難経路の途中で立ち往生してしまう可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る歩行案内装置は、
ユーザーの脚部にアシスト力を加えることで歩行を補助する歩行補助装置を装着したユーザーにて使用される歩行案内装置において、
ユーザーの歩行ルート中に存在する歩行難経路を検出する歩行難経路検出処理と、
前記歩行補助装置にて歩行を補助した場合の歩行能力で、前記歩行難経路検出処理にて検出された前記歩行難経路を通行できるか否かを判定する歩行判定処理と、
前記歩行判定処理で、前記歩行難経路を通行できないと判定した場合、通行できない旨をユーザーに告知する告知処理を実行する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明に係る歩行案内装置において、
前記歩行判定処理にて使用されるユーザーの歩行能力は、ユーザーの身体特徴量を含むことを特徴とする。
【0009】
さらに本発明に係る歩行案内装置は、
ユーザーの現在位置を取得する位置取得部と、
前記制御部は、前記位置取得部で取得した現在位置に基づいて、設定した目的地にユーザーを誘導する誘導処理を実行するとともに、
前記告知処理は、前記歩行難経路を通行できないと判定した場合、前記歩行難経路を通行しない歩行ルートを告知することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明に係る歩行案内装置において、
前記歩行判定処理は、休息位置を設定するとともに、前記休息位置を設定したことを含めて前記歩行難経路を通行できるか否かを判定し、
前記告知処理は、前記歩行難経路の通行に際し、前記休息位置にて休息する旨をユーザーに告知することを特徴とする。
【0011】
さらに本発明に係る歩行案内装置において、前記歩行難経路は、階段であることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明に係る歩行案内装置において、前記歩行判定処理は、前記歩行難経路としての階段を斜体昇降することで通行できるか否かを判定し、
前記告知処理は、前記歩行判定処理において斜体昇降することで前記階段を通行することができると判定した場合、斜体昇降する旨をユーザーに告知することを特徴とする。
【0013】
また本発明に係る歩行案内方法は、
ユーザーの脚部にアシスト力を加えることで歩行を補助する歩行補助装置を装着したユーザーに対して行われる歩行案内方法において、
ユーザーの歩行ルート中に存在する歩行難経路を検出する歩行難経路検出処理と、
前記歩行補助装置にて歩行補助した場合の歩行能力で、前記歩行難経路検出処理にて検出された前記歩行難経路を通行できるか否かを判定する歩行判定処理と、
前記歩行判定処理で、前記歩行難経路を通行できないと判定した場合、通行できない旨をユーザーに告知する告知処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によれば、階段や坂道などといった歩行難経路の通過の可否をユーザーの歩行能力にて通行できるか否かを判定し、通行できない場合にはユーザーに前もって告知することが可能となる。さらに、歩行難経路の歩行に際して、休息位置や歩行方法をユーザーに告知することで、安全に歩行難経路を通行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る歩行補助装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る歩行補助装置の制御ブロックを示す図
【図3】本発明の実施形態に係る歩行難経路(階段)を説明するための図
【図4】本発明の実施形態に係る歩行難経路(階段)を説明するための図
【図5】本発明の実施形態に係る歩行難経路(階段)を含んだルートを説明するための図
【図6】本発明の実施形態に係る歩行難経路対応処理を示すフロー図
【図7】本発明の実施形態に係る通行判定処理を示すフロー図
【図8】本発明の実施形態に係る休息位置取得処理を示すフロー図
【図9】本発明の実施形態に係る各段昇降確認処理を示すフロー図
【図10】本発明の実施形態に係る正体昇降を説明するための図
【図11】本発明の実施形態に係る斜体昇降を説明するための図
【図12】本発明の実施形態に係る歩行難経路案内処理を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る歩行補助装置の構成を示す図であって、図1(a)は、歩行補助装置を装着したユーザーの側面図、図1(b)は、その正面図となっている。本実施形態の歩行補助装置1は、ユーザーの体躯に固定して用いられる形態であって、左右大腿部、左右下腿部にアシスト力を加えることで歩行を補助する。主な構成としては、体躯装着部11、制御部100を備え、左右それぞれに、大腿支持部12、大腿装着部13、下腿支持部14、下腿装着部15、踵回動部23、足底部16、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22などを備えている。
【0017】
腰部アクチュエーター21は、大腿支持部12を図1(a)に示す方向に回動可能とするとともに、同方向にアシスト力を加えることが可能となっている。さらに、本実施形態では、図1(b)に破線で示すように股を開く方向に対しても回動可能、かつ、アシスト力を加えることとしている。大腿支持部12は、大腿装着部13によってユーザーの大腿部に装着される。腰部アクチュエーター21にて加えられるアシスト力は、ユーザーの大腿部の動作補助を行うこととなる。
【0018】
膝部アクチュエーター21は、下腿支持部14を図1(a)に示す方向に回動可能とするとともに、同方向にアシスト力を加えることが可能とされている。下腿支持部14は、下腿装着部15によってユーザーの下腿部に装着される。膝部アクチュエーター22にて加えられるアシスト力は、ユーザーの下腿部を動作補助する。
【0019】
踵回動部23、足底部16を回動可能に支持する部材である。下腿支持部14に連なる足底部16が足底に対して固定された場合、歩行が不安定となるが、この踵回動部23を回動可能とすることで、人体の動きにあわせることができ、歩行を安定させるとともに、歩行補助装置1の装着を安定させている。なお、本実施形態では、この踵回動部23は、人体の動きに連動して回動するのみで、アシスト力を加えていないが、この踵回動部23に対しても腰部アクチュエーター21などと同様、アシスト力を加える構成としてもよい。
【0020】
体躯装着部11に固定されている制御部100は、各種センサーからの出力に応じて、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22にアシスト力を加える。アシスト力を加えるために用いられるセンサーとしては、大腿部、下腿部などに貼付した筋電位センサーや、各アクチュエーターに設け関節角度を計測する関節センサーなどを用いることが考えられる。各アクチュエーターに対するアシスト力を加える制御方法は、各種センサー、各種アルゴリズムを用いて適宜に設計したものを採用することができる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る歩行補助装置の制御ブロックを示す図である。本実施形態では、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22のそれぞれに関節センサー21c、d、22c、dを設け、体躯の動きを予測してアシスト力を加えることとしている。また、各足底部26には、足裏センサー16c、dが設けられており、着地状態、並びに、足裏の荷重分布などを取得することができる。制御ECU101(制御部)は、各アクチュエーター21、22に設けられた関節センサー、並びに、足裏センサー16からの出力信号に基づいて、各アクチュエーター21、22に対してアシスト力を付与してユーザーの方向を補助する。なお、各アクチュエーター21、22は、図示しないバッテリーからの電力供給を受けてアシスト力を発生することとしている。
【0022】
また、本実施形態の制御部100には、歩行補助装置1を装着したユーザーの周囲を検出する各種周囲センサーが設けられている。周囲センサーとしては、発光素子と、当該発
光素子から発光された光の反射光を受光し、周囲の障害物を検出する光センサー31、ユーザーの前方、後方の様子をそれぞれ撮影する前方カメラ32a、後方カメラ32b、衛星からのGPS信号を受信し、歩行位置を検出するとともに、地図情報を参照することでユーザーを目的地に導くナビモジュール、インターネットなどの通信網に接続し、各種情報を取得する無線モジュールなどがある。なお、前方カメラ32a、後方カメラ32bは、それぞれについて2つのカメラユニットを設けることで外界を立体的に撮像し、障害物までの距離を算出可能としてもよい。
【0023】
この他、各種設備に設置され、当該位置の位置信号を送出する狭エリア位置確認システムのための受信モジュール35が設けられている。この狭エリア位置確認システムとしては、例えば、LED照明などの照明駆動信号中に、当該位置の位置信号を含ませておき、照明光から位置信号を抽出することで位置を確認するシステムや、あるいは、室内GPSなど室内における位置確認システムなどが考えられる。
【0024】
以上、本実施形態では、歩行補助装置1に対して、このような各種周囲センサーを設けたことで、安全な歩行補助を行うことのみならず、目的地までのルート案内や、各種情報をユーザーに提供することが可能となる。なお、各種情報の確認は、制御部100に設けられた拡声装置、表示装置などで音声、画像出力することとしてもよいし、制御部100と無線あるいは有線で接続された携帯情報端末(図示せず)に対して音声、画像出力することとしてもよい。
【0025】
では、このような歩行補助装置を装着するユーザーに対して使用される歩行案内装置について説明する。本実施形態の歩行案内装置は、歩行補助装置に組み込まれた形で提供されるものであって、図2に示されるように、制御ECU101を制御部として共用している。また、ユーザーに対して各種情報を告知するための表示部41、スピーカー42を備え、それぞれに映像信号、音響信号を出力制御するための表示制御部101、音響制御部102を有している。なお、ユーザーへの告知手段は、無線通信モジュール34にて無線接続される携帯情報端末に対して出力されるものであってもよい。
【0026】
では、このような歩行案内装置について図を参照しつつ説明を行う。図3は、本発明の実施形態に係る歩行難経路を説明するための図であって、歩行難経路としての階段にさしかかったユーザーが示されている。歩行補助装置を使用するユーザーは、高齢者など体力に乏しいケースが考えられる。そのため、このような階段あるいは坂道などといった歩行難経路では、歩行補助装置を装着した場合においても通行できない場合が想定される。歩行難経路の途中で通行不能となってしまった場合には、途中で立ち往生してしまう可能性も考えられる。
【0027】
そのため、本実施形態では、歩行補助装置にて歩行を補助した場合のユーザーの歩行能力と、歩行難経路の各種情報とを照合し、当該ユーザーが歩行難経路を通行できるか否かを判断し、特に、通行できないと判断された場合にはその旨をユーザーに告知することで、歩行難経路の通行させないこととしている。さらに、通行できると判断された場合においても、歩行難経路のどこで休息すればよいか、あるいは、どのような歩行方法をとればよいか、歩行難経路を通過するためのアドバイスを告知することとしている。
【0028】
本実施形態では、歩行難経路の各種情報は、狭エリア位置確認システムを用いて提供される。図3に示される51は、歩行難経路としての階段登り口付近に設置された送信モジュールであって、数メートル四方の狭いエリアにおいて無線で、位置信号と歩行難経路としての階段に関する各種情報を送信している。この送信モジュール51の通信エリアに入った場合、歩行補助装置に設けられている狭エリア受信モジュール35を介して、位置信号、階段に関する各種情報が受信されることとなる。
【0029】
歩行難経路としての階段に関する情報としては、階段各段の高さ、奥行き、全体の段数、また、図4に示される幅などがある。この他、休息位置としての踊り場の位置などが含まれることとしてもよい。このような階段のプロフィールを元にして、歩行補助装置を装着したユーザーが通過できるか否かが判定されることとなる。
【0030】
図5は、本発明の実施形態に係る歩行難経路(階段)を含んだルートを示す図であって、図3の状態はちょうど、図5に示されるBの位置にさしかかったユーザーの状態が示されたものとなっている。また、本実施形態では、ナビモジュール33を使用してユーザーを目的地まで誘導する歩行ナビゲーション機能を備えたものとなっている。ナビモジュール33は、GPSなどの位置取得部から現在位置を取得し、地図情報を参照することで、ユーザーにて設定された目的地までの最適ルートを決定する。図5の例では、A→B→Cを通過して目的地まで誘導する最適ルート(ルート1)が提供されている。
【0031】
本実施形態では、Bの位置にて歩行難経路にさしかかったユーザーに対して、歩行難経路に関する各種情報が提供され、歩行難経路を通行できるか否かが判定されることとなる。では、このような場合における歩行難経路対応処理について図6のフロー図を用いて説明を行う。
【0032】
まず、歩行補助装置の電源がオンとされた場合(S101)、記憶部に当該ユーザーに関する設定情報が記憶されているか否かが判定される(S102)。この設定情報は、ユーザーの歩行能力を特定するための各種情報から構成されており、筋肉量、歩幅、関節の可動範囲などユーザーの身体特徴量を含んで構成される。当該ユーザーの設定情報を記憶している場合には、S104において歩行が終了したことを判断するまで、歩行難経路に関する各種処理が実行される。
【0033】
一方、設定情報を記憶していない場合には、ユーザーに対して各種情報の入力を促す、あるいは、各種センサーを使用する、あるいは、負荷試験を行うことで設定情報としての身体特徴量の取得処理が実行される(S103)。例えば、筋肉量については、大腿装着部13、下腿装着部15に超音波センサーを設けることで測定することが考えられる。また、ユーザーに所定の負荷をかけつつ歩行させる負荷試験を行うことで、筋肉量、歩幅、関節可動範囲などを測定することとしてもよい。
【0034】
歩行補助装置を使用するユーザーの各種情報が準備され、ユーザーによる歩行が開始されると、S105において歩行難経路の検出が実行される。本実施形態では、図3で説明したように狭エリア位置確認システムの送信モジュール51から受信した信号中に、歩行難経路についての情報が含まれていた場合、歩行難経路を検出したと判断している(S105:Yes)。
【0035】
歩行難経路を検出、すなわち、ユーザーが歩行難経路にさしかかったと判断した場合には、まず、歩行難経路を通過できるか否かを判定する歩行難経路通行判定処理(S200)が実行される。この処理の詳細はあとで説明することとするが、この処理において歩行可能と判定された場合(S106:Yes)には、歩行難経路案内処理(S300)にて、歩行難経路の歩行開始前あるいは歩行中の適宜タイミングで、各種アドバイスが告知される。一方、歩行不能と判定された場合(S106:No)には、表示部41への表示、あるいは、スピーカー42への音響出力を行うことで、歩行できない旨をユーザーに告知する。さらに、歩行ナビゲーション機能を備えた本実施形態では、ナビモジュール33にて歩行難経路を通行せずに目的地に到達する別のルートが案内(告知)される(S109)。図5に示す例では歩行難経路を迂回して目的地に到達する別ルート(ルート2)が案内されることとなる。
【0036】
では、歩行難経路を通過できるか否かが判定される歩行難経路通行判定処理について図7のフロー図を用いて説明する。処理が開始されると、歩行難経路に関する情報の取得が実行される(S201)。本実施形態では、階段入口に設置された送信モジュール51から、階段の各段について高さ、奥行き、幅、段数などの情報が取得される。本実施形態では、まず、この階段についての各種情報から階段を上りきるための昇降エネルギーが算出される(S202)。次に、予め取得した使用ユーザーの各種情報の内、筋肉量に基づいて推定体力が算出される(S203)。この推定体力の算出には、ユーザーの筋肉量のみならず、歩行補助装置のアシスト能力が加味される。
【0037】
S204では、算出された階段についての昇降エネルギーと、ユーザーの推定体力とを比較される。推定体力が昇降エネルギーよりも大きいと判定(S204:No)された場合には、ユーザーは階段を上りきることができると判定される(S208)。一方、推定体力が昇降エネルギーよりも小さいと判定(S204:Yes)された場合には、一度に階段を上りきることはできないが、途中の休息位置で休息をとることで昇降することができるかが判断される(S400)。S204あるいはS400にて昇降可能と判定された場合には、階段の各段について、正体昇降あるいは斜体昇降で昇降可能かを確認する各段昇降確認処理(S500)が実行される。昇降可能と判断された場合(S206:Yes)には、歩行難経路としての階段を通行可能と判断(S208)して処理を終了する。一方、S205あるいはS206にて昇降不能と判断された場合には、通行不能と判断して処理を終了する。
【0038】
図7で説明したように推定体力が昇降エネルギーよりも小さい場合、すなわち、1回で階段を上りきることができない場合には、休息をとることで何回かに分けて階段を上りきることができるか否かを判定する休息位置取得処理が実行される。処理が開始されると、取得している階段のプロフィールに基づいて、踊り場位置の取得が実行される。踊り場位置は、階段の奥行きが比較的大きい段であって、送信モジュール51からの送信信号にその段位置が含まれていてもよいし、奥行きの長さに基づいて判断することとしてもよい。
【0039】
休息位置としての踊り場位置が取得できた場合には、まず、最初の踊り場位置までの部分昇降エネルギーが算出される(S402)。S403では、前述の推定体力と部分掌高エネルギー403の比較が実行され、最初の踊り場までの昇降が可能か否か判定される。昇降可能とされた場合には、順次、次の踊り場までの部分昇降エネルギーを算出(S405)し、算出された部分昇降エネルギーと推定体力の比較は、全段が終了するまで繰り返し実行される(S407)。対象となる階段について全ての部分昇降エネルギーが推定体力よりも小さい場合(S406:No)には、歩行難経路としての当該階段を昇降可能と判断して(S408)処理を終了する。一方、何れかの部分昇降エネルギーが推定体力よりも大きい場合には、昇降不能と判断(S404)と判断して処理を終了する。
【0040】
このように、本実施形態では、休息位置としての踊り場を設定することで、一気に階段を上りきることができないと判断された場合においても、踊り場で休息をとることで階段を上りきることができるかが判定される。
【0041】
階段全体あるいは階段の部分毎に昇降可能と判断された場合であっても、ユーザーの歩行能力との関係上、各段について昇降不能となる場合が考えられる。図7のS500では、ユーザーが各段について昇降可能か否かが確認される。その際、階段に対して直交して昇る正体昇降ができない場合には、階段に対して斜めの方向に昇る斜体昇降で昇降可能か否かが判定される。
【0042】
図9は、この各段昇降確認処理を示すフロー図である。処理が開始されると、設定情報
に含まれる関節可動範囲などの身体特徴量と、階段の奥行きなどに基づいて正体昇降時の足上げ限界高さが算出される(S502)。ここで、正体昇降と斜体昇降について図10、図11を用いて説明する。図10は、正体昇降を説明するための図であって、図11は、斜体昇降を説明するための図とされている。
【0043】
図10(a)に示されるように正体昇降とは、階段の段形成方向と同じ方向に登坂する方法であって、いわゆる通常、階段を登坂する方法である。図10(b)に示されるように段の奥行きが狭い場合には、足を上げるための空間が限定されるため、ユーザーの関節可動範囲との関係から足上げ限界高さが限定されることなる。一方、斜体昇降とは、図11(a)に示されるように、階段の段形成方向に対して斜めに登坂する方法である。この場合、階段の奥行きは、見かけ上拡大されるため、足を上げるための空間は、正体昇降の場合よりも拡大されることとなり、ユーザーの足上げ限界高さの拡大を図ることが可能となっている。
【0044】
S502では、まず正体昇降時の足上げ限界高さが、登坂する階段の最大高さよりも大きいか否かを判定する。足上げ限界高さの方が大きい、すなわち、正体昇降で登坂できると判定(S503:Yes)の場合には、S504で正体昇降に設定して処理を終了する。
【0045】
一方、足上げ限界高さの方が小さい場合には(S504:No)、斜体昇降で登坂可能か否かが判定される。S505では、斜体昇降により拡大される階段の奥行き、ユーザーの関節可動範囲などに基づいて、斜体昇降時の足上げ限界高さが算出される。S506では、斜体昇降時の足上げ限界高さが、登坂する階段の最大高さよりも大きいか否かを判定する。足上げ限界高さが大きいと判定された場合(S506:Yes)には、斜体昇降に設定して(S508)処理を終了する。そして、足上げ限界高さが小さいと判定された場合(S506:No)には、当該階段を昇降することはできないと判定して(S508)処理を終了する。
【0046】
このように本実施形態の各段昇降確認処理では、階段の各段について昇降可能か否かが判定される。さらに、通常の登坂(正体昇降)ができない場合には、階段を斜めに登坂する斜体昇降についての可能性が確認される。斜体昇降で登坂できると判定された場合には、その旨、ユーザーに対して告知されることとなる。
【0047】
図12は、本発明の実施形態に係る難歩行経路案内処理を示すフロー図であって、階段を昇降できると判定された場合、ユーザーに対して各種情報が告知されることとなる。まず、階段を登坂する前には、斜体昇降に設定されていた場合(S301:Yes)、ユーザーに対して斜体昇降する旨が告知される。これは、表示部41による表示あるいはスピーカー42による音響出力で行うことが考えられるが、ユーザーが所持する携帯情報端末に対して無線で出力することとしてもよい。なお、本実施形態では、正体昇降時に設定されている場合は、通常の登坂方法であるため特に案内を行わないこととしている。
【0048】
階段の登坂が開始されると、ナビモジュール33などで自己の位置を確認しつつ、休息位置に到着したと判断される(S303)と、ユーザーに対して休息をとる旨が告知される(S304)。休息の案内は、昇降の各休息位置にて行われることとなり、現在位置に基づいて階段の昇降終了が判定される(S305:YES)ことで処理を終了する。
【0049】
以上、本実施形態の歩行案内装置によれば、階段あるいは坂道などといった歩行難経路について、歩行補助装置を使用するユーザーの歩行能力に基づいて、通行可能か否かが判定することが可能となる。なお、本実施形態では、歩行難経路に関する各種情報を狭エリア位置確認システムの送信モジュール51を利用して受信することとしていたが、この歩
行難経路に関する各種情報は、ナビモジュール33に予め記憶させておくこともできる。この場合、ナビモジュール33におけるルート決定に際して、歩行難経路が通行できるか否かを含めてルート決定することが可能となる。なお、通行できない歩行難経路は、その旨を表示するなどしてユーザーに告知することが好ましい。
【0050】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0051】
10…歩行補助装置
11…体躯装着部
12a、b…大腿支持部
13a、b…大腿装着部
14a、b…下腿支持部
15a、b…下腿装着部
16a、b…足底部
16c、d…足裏センサー
21a、b…腰部アクチュエーター
21c、d…関節センサー
22a、b…膝部アクチュエーター
22c、d…関節センサー
23a、b…踵回動部
31…光源装置
32a…前方カメラ
32b…後方カメラ
33…ナビモジュール
34…無線通信モジュール
101…制御ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの脚部にアシスト力を加えることで歩行を補助する歩行補助装置を装着したユーザーにて使用される歩行案内装置において、
ユーザーの歩行ルート中に存在する歩行難経路を検出する歩行難経路検出処理と、
前記歩行補助装置にて歩行を補助した場合の歩行能力で、前記歩行難経路検出処理にて検出された前記歩行難経路を通行できるか否かを判定する歩行判定処理と、
前記歩行判定処理で、前記歩行難経路を通行できないと判定した場合、通行できない旨をユーザーに告知する告知処理を実行する制御部と、を備えることを特徴とする
歩行案内装置。
【請求項2】
前記歩行判定処理にて使用されるユーザーの歩行能力は、ユーザーの身体特徴量を含むことを特徴とする
請求項1に記載の歩行案内装置。
【請求項3】
ユーザーの現在位置を取得する位置取得部と、
前記制御部は、前記位置取得部で取得した現在位置に基づいて、設定した目的地にユーザーを誘導する誘導処理を実行するとともに、
前記告知処理は、前記歩行難経路を通行できないと判定した場合、前記歩行難経路を通行しない歩行ルートを告知することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の歩行案内装置。
【請求項4】
前記歩行判定処理は、休息位置を設定するとともに、前記休息位置を設定したことを含めて前記歩行難経路を通行できるか否かを判定し、
前記告知処理は、前記歩行難経路の通行に際し、前記休息位置にて休息する旨をユーザーに告知することを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の歩行案内装置。
【請求項5】
前記歩行難経路は、階段であることを特徴とする
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の歩行案内装置。
【請求項6】
前記歩行判定処理は、前記歩行難経路としての階段を斜体昇降することで通行できるか否かを判定し、
前記告知処理は、前記歩行判定処理において斜体昇降することで前記階段を通行することができると判定した場合、斜体昇降する旨をユーザーに告知することを特徴とする
請求項5に記載の歩行案内装置。
【請求項7】
ユーザーの脚部にアシスト力を加えることで歩行を補助する歩行補助装置を装着したユーザーに対して行われる歩行案内方法において、
ユーザーの歩行ルート中に存在する歩行難経路を検出する歩行難経路検出処理と、
前記歩行補助装置にて歩行補助した場合の歩行能力で、前記歩行難経路検出処理にて検出された前記歩行難経路を通行できるか否かを判定する歩行判定処理と、
前記歩行判定処理で、前記歩行難経路を通行できないと判定した場合、通行できない旨をユーザーに告知する告知処理を実行することを特徴とする
歩行案内方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−205700(P2012−205700A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72818(P2011−72818)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】