説明

歩行玩具及び歩行玩具セット

【課題】 水で描いたライン115に沿って移動し、見た目に楽しく歩くように前進することで飽きることの少ない歩行玩具を提供する。
【解決手段】 少なくとも頭部13、胴部11、脚部17を有するキャラクターを模して移動可能とされる玩具であって、モーター35及びこのモーター35の正逆回転により左右の駆動輪のいずれか一方の駆動輪を前進回転させるギアボックス50を内蔵し、走行面に接地する中心電極83とこの中心電極83を囲み走行面に近接して配置される環状電極85とを備えた検出器81を有し、検出器81により走行面の湿潤箇所を検出したときは前記モーター35の回転方向の正逆を切り換える制御部41を有し、前記制御部41により前記モーター35の正回転及び逆回転を制御して左右の駆動輪を交互に駆動することにより前進を行う歩行玩具とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具本体の左右を交互に前進させることにより、水に濡れたラインに沿って歩行するように前進する玩具に関するものです。
【背景技術】
【0002】
今日、吸水性を有するシートに、ローラーやペンを用いて水を塗布することにより道路や線路を描くようにすると、この水で描いた道路や線路に沿って走行する乗物などの形状とした玩具が提供されている。
【0003】
そして、吸水シートに所定の幅の水に濡れた線を描いたとき、中央と左右との3つの通電検出端子を用いることにより、左右の端子の内の通電が遮断された側の車体を前進させるようにして方向を変換し、水で描かれた曲線に沿って走行する玩具とすることも提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−320176号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の走行玩具は、水で描いたラインに沿って乗物が走行するものである為、変化に乏しく、遊戯を続けていると飽きることもあった。
本発明は、水で描いたラインに沿って移動し、見た目に楽しく歩くように前進させることができ、飽きることの少ない歩行玩具を提供するものです。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行玩具は、少なくとも頭部、胴部、脚部を有するキャラクターを模して移動可能とされる玩具であって、モーター及びこのモーターの正逆回転である回転方向に基づいて右駆動輪又は左駆動輪のいずれか一方の駆動輪を前進回転させるギアボックスを内蔵し、走行面に接地する中心電極とこの中心電極を囲み走行面に近接して配置される環状電極とを備えた検出器を有し、検出器により走行面の湿潤箇所を検出したときは前記モーターの回転方向の正逆を切り換える制御部を有し、前記制御部により前記モーターの正回転及び逆回転を切り換え制御して右駆動輪及び左駆動輪を交互に駆動することによって前進を行う歩行玩具とするものです。
【0007】
又、前記制御部は、右駆動輪又は左駆動輪の前進回転中に検出器によって湿潤箇所を検出できないときは、一方の駆動輪により玩具本体に約1回転の旋回動作をさせた後、他方の駆動輪を前進回転させて玩具本体を逆方向に約1回転させる旋回動作を行わせるようにモーターの正回転及び逆回転を制御するものです。
【0008】
そして、本発明は、前記の歩行玩具と、吸水シートと、水ペンとを組み合わせた歩行玩具セットとすることが好ましいものです。
更に、前記吸水シートは、裏面には防水性シートを配置して複数の層から形成される積層シートとするものです。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る歩行玩具は、検出器により走行面の湿潤箇所を検出して左右の駆動輪を交互に前進回転させるものであるため、湿潤箇所が線状に連続したラインとされているときは、玩具本体の左右を交互に僅かに前進させる歩行動作を行ってこのラインに沿って移動させることができるものです。
【0010】
また、検出器が湿潤箇所を検出できないときは、玩具本体を右旋回や左旋回をさせて広範囲で湿潤箇所を検出することができ、ラインが途切れたときは、旋回により湿潤箇所を検出して元の方向に戻ることもできるものです。
【0011】
更に、吸水シートと水ペンとを組み合わせた歩行玩具セットは、吸水シートに水ペンでラインを描いて容易に歩行玩具に前進歩行をさせることができるものです。
【0012】
そして、裏面を防水性シーとした積層シートである吸水シートを用いれば、玩具セット以外のものを湿らせることなく、安心して容易に歩行玩具を動作させて遊ぶことができるものです。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る歩行玩具の外観側面図。
【図2】本発明に係る歩行玩具の外観正面図。
【図3】本発明に係る歩行玩具の外観底面図。
【図4】本発明に係る歩行玩具の側面断面図。
【図5】本発明に係る歩行玩具に用いるギアボックスの内部構造を示す側面模式図。
【図6】本発明に係る歩行玩具に用いるギアボックスの内部構造を示す正面模式図。
【図7】本発明に係る歩行玩具に用いるギアボックスにおける正回転及び逆回転の状態を示す模式図。
【図8】本発明に係る歩行玩具に用いる検出器の構造を示す側面断面図。
【図9】本発明に係る歩行玩具の回路構成を示すブロック図。
【図10】本発明に係る歩行玩具における制御動作を示すフローチャート図。
【図11】本発明に係る歩行玩具の使用状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る歩行玩具の最良の形態は、裏面を防水性シーとした積層シートである吸水シート100と、水で吸水シート100に線画を描ける水ペン110と、モーター35を内蔵した歩行玩具とを組み合わせた歩行玩具セットとするものです。
【0015】
そして、この歩行玩具は、少なくとも頭部13、胴部11、脚部17を有するキャラクターを模して移動可能とされる玩具であって、モーター35及びこのモーター35の正回転及び逆回転とされる回転方向に基づいて右駆動輪73又は左駆動輪77のいずれか一方の駆動輪を前進回転させるギアボックス50を内蔵し、走行面に接地する中心電極83とこの中心電極83を囲み走行面に近接して配置される環状電極85とを備えた検出器81を有し、検出器81により走行面の湿潤箇所を検出したときは前記モーター35の回転方向の正逆を切り換える制御部41を有し、前記制御部41により前記モーター35の正回転及び逆回転を切り換え制御して右駆動輪73及び左駆動輪77を交互に駆動することにより前進を行う歩行玩具とするものです。
【0016】
そして、前記制御部41は、右駆動輪73又は左駆動輪77の前進回転中に検出器81によって湿潤箇所を検出できないときは、一方の駆動輪により玩具本体10に約1回転の旋回動作をさせた後、他方の駆動輪を前進回転させて玩具本体10を逆方向に約1回転させる旋回動作を行わせるようにモーター35の正回転及び逆回転を制御するものです。
【実施例1】
【0017】
本発明に係る歩行玩具は、図1及び図2に示すように、キャラクターなどの人形の形を模した玩具であって、頭部13、胴部11、腕部15、脚部17を有するものです。
【0018】
又、この脚部17の下端は、歩行玩具を安定させて立たせることのできる大きさの平面とする脚部底面19を有し、図3に示すように、脚部底面19の中央前方に検出器81を有し、脚部底面19の後方左右には右駆動輪73及び左駆動輪77を有するものです。
【0019】
そして、この歩行玩具の頭部13、胴部11、及び、脚部17とする玩具本体10は、図4に示すように前ケース21と後ケース23とにより形成され、前ケース21における胴部11の内側にはスピーカー37が固定されるものです。
【0020】
更に、後ケース23の頭部13から胴部11に亘って電池カバー25が着脱可能に形成され、後ケース23における頭部13の後側には電源スイッチ33を僅かに頭部13から突出させるようにして頭部13の内側にスイッチボックス31が取り付けられているものです。
【0021】
又、後ケース23には、電池がバーの内側に電池29を収納する電池収納部27が形成され、電池収納部27の玩具本体内側には制御ボックス40が取り付けられるものです。
【0022】
そして、玩具本体10の脚部底面19には、モーター35を固定したギアボックス50が固定され、ギアボックス50の下端近くから左右に突出させた回転軸の先端に右駆動輪73及び左駆動輪77が設けられ、この右駆動輪73及び左駆動輪77の一部を脚部底面19から突出させているものです。
【0023】
又、このギアボックス50の下端から前方に突設した検出器支持アーム91の先端下面には検出器81を設けて検出器81の下端を脚部底面19から突出させているものです。
【0024】
尚、この検出器81の下端の脚部底面19からの突出量は、右駆動輪73及び左駆動輪77の脚部底面19からの突出量と略同じか僅かに少ない突出量とされるものです。
【0025】
そして、ギアボックス50の内部には減速歯車や遊動歯車57を組み込むものであって、このギアボックス50は、図5及び図6に示すように上端にモーター35を固定しているものです。
【0026】
更に、このモーター35の回転軸にはウォーム51を固定し、このウォーム51と噛合うウォーム受け歯車53を設けると共にこのウォーム受け歯車53と一体に回転する平歯車の伝達歯車55をウォーム受け歯車53と同軸に設け、この伝達歯車55の回転中心を回動中心とする遊動支持アーム59の先端近傍に伝達歯車55と噛合う遊動歯車57を設けるものです。
【0027】
又、伝達歯車55の真下に位置する遊動歯車57の前方斜め下方に右減速歯車を配置し、伝達歯車55の真下に位置する遊動歯車57の後方斜め下方に左減速歯車を配置するものとし、伝達歯車55の真下に位置する遊動歯車57の歯先と右減速歯車大径部61の歯先や左減速歯車大径部65の歯先とは僅かに接する程度の距離として右減速歯車及び左減速歯車をギアボックス50に組み込んでいるものです。
【0028】
そして、右減速歯車小径部63を右駆動歯車71と噛合せ、左減速歯車小径部67は中間歯車69を介して左駆動歯車75と噛合せるものであって、右減速歯車と左減速歯車は各々大径部と小径部を有する同一歯車としているものであり、右駆動歯車71と左駆動歯車75も同一の歯車を用いているものです。
【0029】
又、右駆動歯車71及び左駆動歯車75は中心軸線を同軸線とする右駆動軸72及び左駆動軸76に各々固定され、右駆動軸72の右先端近くに右駆動輪73が、左駆動軸76の左先端近くに左駆動輪77が固定されるものです。
【0030】
従って、このギアボックス50は、例えばモーター35を逆回転させてウォーム受け歯車53及び伝達歯車55を図7の(a)に示すように反時計方向に回転させると、遊動歯車57が伝達歯車55の回転によって後方へ移動することにより右減速歯車と離れると共に、遊動歯車57が左減速歯車大径部65と確実に噛合い、左減速歯車及び中間歯車69を介して左駆動歯車75、ひいては左駆動輪77を回転させることができるものです。
【0031】
また、モーター35を正回転させたときは、図7の(b)に示すように、遊動歯車57は伝達歯車55の回転により前方へ移動することにより左減速歯車から離れると共に、遊動歯車57が右減速歯車大径部61と確実に噛合い、右減速歯車小径部63と噛合う右駆動歯車71ひいては右駆動輪73を回転させることができるものです。
【0032】
尚、右駆動輪73及び左駆動輪77は、右駆動軸72や左駆動軸76の摺動摩擦力によって僅かな回転抵抗を有し、モーター35からの駆動力が伝達されたときに前進回転を行うものです。
【0033】
そして、脚部底面19の中央前方に配置する検出器81は、図8に示すように、中央に円柱状の中心電極83を有し、中心電極83の下端に頭部を設けて走行面との接触を滑らかとすると共に走行面が湿潤状態のときは走行面の水分に電位を伝達し易くしているものです。
【0034】
更に、この検出器81は、中心電極83の周囲にスペーサー89を介して円筒形状の筒部電極87を有し、筒部電極87の下端には中心電極83の頭部直径よりも僅かに大きな直径の透孔を備えた円板環状とする環状電極85を有するものです。
【0035】
そして、この環状電極85は中心電極83の頭部先端面位置よりも僅かに高い位置に配置し、走行面との間に僅かな間隙を形成するようにして走行面に近接させるようにするものです。
【0036】
又、制御ボックス40に収納される制御部41は、図9に示すように、音声データを記憶する音声メモリー45と、CPUやROM及びRAMで構成される制御IC43と、制御IC43からの音声データに基づいてスピーカー37を駆動するスピーカードライバー46や制御IC43からの制御信号に基づいてモーター35を正逆回転又は停止させるモータードライバー47、更に、検出器81の出力状態を検出する検出回路48を有するものです。
【0037】
そして、制御IC43は、電源スイッチ33がオン状態とされると、モータードライバー47を介してモーター35を駆動すると共に、検出器81に例えば1キロヘルツ程度の高周波電圧を検出信号として供給するものです。
【0038】
従って、検出器81では、中心電極83と筒部電極87との静電容量により極めて僅かな電流を流すことができ、中心電極83の頭部が走行面の湿潤位置に接すると、路面の水分と環状電極85との間の静電容量が加わり、検出信号の通電量が増加して検出信号の電流値が増加し、この電流値増加を検出回路48で検出することにより走行面の湿潤位置を検知可能としているものです。
【0039】
尚、この検出信号の周波数は、数百ヘルツ乃至数キロヘルツ程度の所定の周波数であれば足りるものです。
【0040】
そして、この制御IC43の制御動作は、電源スイッチ33がオン状態とされることにより制御を開始するものであって、図10に示すように、制御の開始に際しては、先ず制御IC43の初期設定(S101)を行った後、音声メモリー45から所定の音声データを読み出してスピーカー37に音声出力を行わせる音声出力処理(S105)を行うものです。
【0041】
この最初の音声出力では、「さー、がんばるぞー」や「ぼくは・・・だよ」などの音声を出力するものです。
【0042】
そして、モーター35に正転信号の出力を開始させるモーター正転開始処理(S110)を行ってモーター35を正回転させると共に、検出器81に検出信号を出力することによって水で描かれたラインに検出器81の中心電極83が接したときの検出回路48からの検知信号の入力を検出する湿潤位置検出判断(S113)を行って水で描かれたラインを検出したか否かの判断を行いつつ、所定の設定時間T1が経過したか否かの時間経過判断(S115)を行うものです。
【0043】
この様にして、モーター35の正回転を開始すると、前述の様に遊動歯車57が右減速歯車と噛合して右駆動歯車71及び右駆動輪73を回転させ、左駆動輪77を停止状態として右駆動輪73により前進を開始させることができるものです。
【0044】
このため、玩具本体10は、左駆動輪77を旋回中心として左旋回を行い、検出器81が走行面の湿潤状態位置を検出するまで、又は設定時間T1が経過するまで左旋回を続けるものです。
【0045】
この設定時間T1は、右駆動輪73と左駆動輪77との距離及び右駆動輪73による移動速度に基づいて、玩具本体10の旋回量として一回転以下である例えば330度など、300度余りの旋回を行う所定時間としているものです。
【0046】
そして、湿潤位置を検出することなく設定時間T1が経過したときは、モーター35を逆転させるモーター逆転開始処理(S120)を行って水で描かれたラインを検出する湿潤位置検出判断(S123)を行い、設定時間T2が経過したか否かの判断である時間経過判断(S125)を行いつつ湿潤位置検出判断(S123)を行って水で描かれたラインの検出を継続するものです。
【0047】
この様にモーター35を逆回転させると、遊動歯車57が左減速歯車と噛合して左駆動歯車75及び左駆動輪77を回転させることとなり、右駆動輪73が停止状態とされて玩具本体10は右駆動輪73を旋回中心として右旋回を行って走行面における湿潤位置の検出を行うものです。
【0048】
そして、この設定時間T2は、右駆動輪73を中心として左駆動輪77により玩具本体10が旋回を行い、玩具本体10が一回転以上の400度近くの旋回を行うのに必要な所要時間としているものです。
【0049】
更に、設定時間T2が経過したときは、カウント値Nに「1」を加えるカウント処理(S131)を行って音声出力処理(S133)を行い、カウント値Nが「3」又は「4」などの所定回数Kに達しているか否かの回数判断(S135)を行って所定回数Kに達していないときはモーター正転開始処理(S110)に戻るものです。
【0050】
そして、この音声出力処理(S133)では、音声メモリー45のデータに基づいてスピーカー37から「あれれー」「おかしいなー」などの戸惑ったときに発する音声を発生させるものです。
【0051】
従って、この歩行玩具では、電源スイッチ33がオン状態とされると、モーター35の正回転により左駆動輪77を中心に約1回転の左旋回を行うようにして走行面の湿潤箇所を検出器81により検出する処理を行い、左旋回で湿潤箇所を検出することなく一回転近くの旋回を行ったときは続けて右駆動輪73を中心に一回転余りの右旋回を行うようにして走行面の湿潤箇所の検出を行うようにして検出器81で8の字を描くように旋回動作を行うものです。
【0052】
そして、左旋回及び右旋回により検出器81で8の字を描くように湿潤箇所の検出動作を行い、湿潤箇所が検出できないときは戸惑ったときの音声の出力を行って更にモーター35の正回転及び逆回転により左旋回及び右旋回を繰り返すものであって、左旋回を一回転未満とし、右旋回を一回転余りとしている為、2回目の8の字は前回の8の字とは方向を異にする8の字として湿潤箇所の検出開始位置を中心に広い範囲で湿潤箇所を検出する動作を行うことができるものです。
【0053】
また、所定回数Kである3回又は4回程度の回数だけ検出器81で8の字を描くように左旋回及び右旋回を行って湿潤箇所を検出できないときは動作制御の処理を終了するものです。
【0054】
そして、モーター正転開始処理(S110)による左旋回中の湿潤位置検出判断(S113)で湿潤箇所を検出したときや、モーター逆転開始処理(S120)による右旋回中の湿潤位置検出判断(S123)で湿潤箇所を検出したときは、カウント値Nを「0」とするカウント値リセット処理(S141)を行って設定時間T3が経過したか否かの時間経過判断(S143)を行い、設定時間T3が経過したときはモーター35の回転方向を逆方向に切り換える極性切り換え処理(S145)を行うものです。
【0055】
この設定時間T3は、右駆動輪73又は左駆動輪77を回転させることによって玩具本体10を20度程度旋回させるために要する時間であって、設定時間T3が経過したか否かの時間経過判断(S143)は、検出器81が湿潤箇所を検出しなくなったときからの時間経過を計測するものです。
【0056】
従って、右旋回中に検出器81が湿潤箇所を検出して検出回路48から検知信号が制御IC43に入力されると、検知信号が入力されなくなっても右旋回を持続して検出器81が湿潤箇所を通過した後も更に右旋回を20度程度行った後にモーター35の回転方向を逆方向として左旋回に移行し、検出器81により再度湿潤箇所を検出する湿潤位置検出判断(S147)を行うものです。
【0057】
そして、この湿潤位置検出判断(S147)で湿潤箇所を再度検知したときは音声出力(S151)を行って設定時間T3が経過したか否かの判断(S143)に戻り、この判断により湿潤箇所を検知しなくなってから20度程度左旋回を持続して極性切り換え処理(S145)により右旋回を行って湿潤位置検出判断(S147)を行うように右旋回及び左旋回を交互に繰り返しつつライン状に続いている湿潤箇所を検出する湿潤位置検出判断(S147)を継続するものです。
【0058】
このため、湿潤箇所が直線状に走行面に描かれているときは、例えば右駆動輪73を停止させて右旋回で湿潤箇所を検出したときは、湿潤箇所を検出しなくなっても更に左駆動輪77の前進回転により20度程度の右旋回を持続した後、左駆動輪77を停止させて右駆動輪73の前進回転により左旋回を開始し、湿潤箇所を再度検出したときは湿潤箇所を検出しなくなってから20度程度旋回を行うように右駆動輪73の回転を持続して右駆動輪73を停止させ左駆動輪77を回転させるように右駆動輪73と左駆動輪77の回転を交互に行って前進を行うものです。
【0059】
そしてこのとき、音声出力としては「イチ」又は「ニイ」の号令音声を交互に出力し、更に、「ぼく、カンバルヨー」などの音声も出力するものです。
【0060】
又、極性切り換え処理(S145)を行った後の湿潤位置検出判断(S147)では、設定時間T4が経過した否かの判断である時間経過判断(S149)を合せて行い、湿潤箇所を検出することなく設定時間T4が経過したときは、時間経過判断(S149)によりモーター35の回転方向が正回転状態であるか否かの回転方向判断(S155)を行ってモーター35の回転方向が正転方向であるときはモーター逆転開始処理(S110)に戻り、モーター35の回転方向が逆転方向であるときはモーター正転開始処理(S120)に戻って玩具本体10を約1回転させることにより湿潤箇所の検出を行うものです。
【0061】
この設定時間T4としては、右駆動輪73又は左駆動輪77の前進回転により、玩具本体10が約90度余り旋回するのに要する時間を設定し、走行面に水で描かれた線が湾曲している場合でも、この歩行玩具は玩具本体10の方向を右又は左に90度近くまで旋回させて検出器81により湿潤箇所の検出を行うことができ、防水シートに描かれた線が曲がった場合でも、曲線に沿って玩具本体10の左右を交互に前方へ移動させてラインに沿った歩行をしているように見える動作を継続するものです。
【0062】
そして、この歩行玩具を走行させる給水シートは、数十センチメートル乃至1メートル程度の大きさの正方形又長方形のシートであって、裏面を防水性のシートとし多孔質又は繊維質のシートを積層したシートとするものです。又、水タンクを内蔵してペン先から水分をシートなどに移すことのできる水ペンと防水シートとをあわせて歩行玩具と組合せることもあるものです。
【0063】
この組合せの場合は、裏面が防水シートとされて水分を含むことができる積層シートであるため、シートの下や周囲を不用意に濡らさないようにすることができ、図11に示すように、吸水シート100に水ペン110で線を描いてこの歩行玩具を水で描いた線であるラインの近くに置くように吸水シート100に載せ、電源スイッチ33をオン状態とすることにより水で描いた線のライン115に沿って歩行させることができるものです。
【0064】
従って、吸水シート100に水で線を描いても水分がシート裏面に抜けて床やテーブルを湿らせることが無く、安心して種々のライン115を描いて遊ぶことができるものです。
【0065】
そして、緩やかな曲線や直線ではライン115に沿って玩具本体10の左右を交互に前進させ、ライン115が不鮮明や急激な変化の曲線では一回転して元に戻るように前進歩行をしたり左右への回転を何度か行って停止したり、種々の動作を行いつつ号令や元気のある声、戸惑った声などを発生するため、種々の曲線ライン115を描いて見た目に面白く変化に富んだ動作をさせて楽しく遊ぶことができるものです。
【0066】
尚、吸水シート100には、顔料などを分散させた着色層を積層し、水ペン110などにより水分を与えたところが変色する吸水シート100を用いることもあり、この場合は、水で描いたライン115を明確に見ることができ、この歩行玩具のライン115に沿った歩行を楽しむことができるものです。
【0067】
又、特定の吸水シート100を用いることなく、フェルトや厚紙など、水を浸透させることのできる適宜のシートに水で線を描くことによってもこの水で描いた線のライン115に沿って歩行させることができるものです。
【0068】
そして、設定時間T3が経過したか否かの時間経過判断(S143)は、検出器81が湿潤箇所を検出しなくなったときからの時間経過を計測する場合に限ることなく、検出器81が湿潤箇所を検出したときからの時間経過を計測することもあるものです。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、吸水シート100に水でライン115を描くことにより、ライン115に沿った歩行のような移動走行を行わせて楽しく遊ぶことのできる歩行玩具を提供できるものです。
【符号の説明】
【0070】
10 玩具本体
11 胴部 13 頭部
15 腕部 17 脚部
19 脚部底面
21 前ケース 23 後ケース
25 電池カバー 27 電池収納部
29 電池
31 スイッチボックス 33 電源スイッチ
35 モーター 37 スピーカー
40 制御ボックス
41 制御部 43 制御IC
45 音声メモリー 46 スピーカードライバー
47 モータードライバー 48 検出回路
50 ギアボックス
51 ウォーム 53 ウォーム受け歯車
55 伝達歯車 57 遊動歯車
59 遊動支持アーム
61 右減速歯車大径部 63 右減速歯車小径部
65 左減速歯車大径部 67 左減速歯車小径部
69 中間歯車
71 右駆動歯車 72 右駆動軸
73 右駆動輪
75 左駆動歯車 76 左駆動軸
77 左駆動輪
81 検出器 83 中心電極
85 環状電極 87 筒部電極
89 スペーサー 91 検出器支持アーム
100 吸水シート
110 水ペン 115 ライン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも頭部、胴部、脚部を有するキャラクターを模して移動可能とされる玩具であって、モーター及びこのモーターの正逆回転である回転方向に基づいて右駆動輪又は左駆動輪のいずれか一方の駆動輪を前進回転させるギアボックスを内蔵し、走行面に接地する中心電極とこの中心電極を囲み走行面に近接して配置される環状電極とを備えた検出器を有し、検出器により走行面の湿潤箇所を検出したときは前記モーターの回転方向の正逆を切り換える制御部を有し、前記制御部により前記モーターの正回転及び逆回転を切り換え制御して右駆動輪及び左駆動輪を交互に駆動することにより前進を行うことを特徴とする歩行玩具。
【請求項2】
前記制御部は、右駆動輪又は左駆動輪の前進回転中に検出器によって湿潤箇所を検出できないときは、一方の駆動輪により玩具本体に約1回転の旋回動作をさせた後、他方の駆動輪を前進回転させて玩具本体を逆方向に約1回転させる旋回動作を行わせるようにモーターの正回転及び逆回転を制御することを特徴とする請求項1に記載の歩行玩具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した歩行玩具と、吸水シートと、水ペンとを組み合わせたことを特徴とする歩行玩具セット。
【請求項4】
前記吸水シートは、裏面には防水性シートを配置して複数の層から形成される積層シートであることを特徴とする請求項3に記載した歩行玩具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−162084(P2010−162084A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4963(P2009−4963)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(399012929)株式会社アガツマ (26)
【Fターム(参考)】