説明

歩行者の衝撃を緩和するようにあらかじめ形成されたボデー部品

本発明は、自動車のボデー部品(200)と、ボデー部品を自動車の支持構造(300)へ取り付けるためのボデー部品の少なくとも1つの支持装置(100)から構成される組立体に関する。支持装置(100)は、ボデー部品(200)に加えられる衝撃を緩和するために変形して、ボデー部品(200)の支持構造(300)に対する移動を可能にするように形成される。この組立体は、支持装置(100)が自動車の支持構造(300)へ後に固定されることなく、ボデー部品(200)へ連結されるように構成されることを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボデー部品、特にフェンダーとボンネットのような前部ボデー部品の、自動車の構造への位置決めと支持に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンネットと前部のフェンダーを、変形可能部品、すなわちボンネットに対する衝撃作用を受けて破壊または撓むことが可能な部品を形成する機械部品の上に設けることが知られている。
変形可能部品の変形によって、ボンネットとフェンダーの少なくとも一方が変形し、このことが例えば歩行者の頭部の衝撃を緩和することを可能にする。
【0003】
このような変形可能な介在支持部品は一般に逆U字形を呈し、U字形を描く金属の帯から形成される。
U字の各脚は、曲がるか撓むように作られ、ボデー部品が、その支持構造の方向へ変形することを可能にする。
これらの変形可能部品からなる支持は、一般に自動車の支持構造上に前後に配置され、次いでボデー部品がこれらの支持の上に取り付けられる。
支持と、それに引き続くボデー部品の配置は、特にボデーの形状は複雑であり、ボデーを構成する部品の数は多いので、やっかいな作業である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、衝撃を緩和するために必要な変形可能部品の製造コストを減少させることにある。
【0005】
他方、要求される精度に合致するボデーの配置作業は、現在までに知られている介在支持部品が自動車の支持構造上に存在していることによって、より複雑になることは明らかである。
そこで、本発明の第2の目的は、変形可能部品に係わるボデー部品の組み立てを簡単化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの上記目的は、本発明によれば、自動車のボデー部品と、上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体であって、上記支持装置は、上記ボデー部品に加えられる衝撃を緩和するために変形して、上記ボデー部品の上記支持構造に対する移動を可能にするように形成された、自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体において、上記支持装置は、自動車の上記支持構造へ後に固定されることなく、上記ボデー部品へ連結されるように構成されることを特徴とする、自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体によって達成される。
【0007】
またこれらの上記目的は、本発明によれば、支持構造に対向するボデー部品の移動によって衝撃を緩和するために、上記ボデー部品に加えられる衝撃を受けたときに変形するように形成された少なくとも1つの支持装置によって、上記ボデー部品を上記支持構造へ取り付けることからなる工程を含む、自動車の支持構造へのボデー部品の組み付け方法において、後に上記支持装置を上記支持構造へ取り付けるために、上記支持装置を上記ボデー部品へあらかじめ取り付けることからなる前工程を含むことを特徴とする、自動車の支持構造へのボデー部品の組み付け方法によって達成される。
【0008】
有利な構成によれば:
−上記ボデー部品と上記支持装置は、両方ともプラスティック材料からなり、互いに合体し、
−上記支持装置は、概ね垂直方向の帯の形をなし上記ボデー部品の垂直方向の移動を可能にするために変形するようになされた、少なくとも1つの脚を形成し、
−上記支持装置の脚を形成する帯に、上記帯の変形のための折り曲げ開始線が設けられ、
−上記支持装置は、概ね水平な2つの水平部によって互いに連結された変形する帯状の2つの脚を有し、上の上記水平部は、上記ボデー部品に連結され、下の上記水平部は、自動車の上記支持構造への上記支持装置の取り付けを可能にするように構成され、
−上記支持装置は、更に縦の各縁を介して2つの帯を互いに連結する壁を有し、
−上記帯を連結する上記壁は、少なくとも1つの小窓を有し、
−上記ボデー部品は、自動車のフェンダーであり、
−上記支持装置は、対向する帯状の2つの脚を有し、各帯の縁は、上記支持装置が類似した面積を有して対向する2つの開口を有するように開放されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して行われる以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。添付図面において:
−図1は、本発明による変形可能支持装置の動作原理を示す図であり、
−図2、3は、本発明によるフェンダーへの変形可能支持装置の配置を示す正面図と側面図であり、
−図4は、本発明に適合する、自動車のフェンダーの1実施の形態の全体図であり、
−図5、6は、他の1つの実施の形態による形状を有する少なくとも1つの変形可能支持装置が装着された、本発明による自動車のフェンダーの一部分を表す。
【0010】
以下に提案される変形可能支持装置100の形態は、同時に折り曲げ、展開可能な、対向する2つの脚に根拠を置く。
【0011】
図1には、上の水平部110と下の水平部120を接続する2つの脚130、140が示されている。2つの脚130、140は、それぞれ開いた角を描き、角の頂点は、ヒンジ135、145と一体になっている。
このヒンジは、ここでは、脚によって形成された角の頂点における折り曲げ開始線を形成する。
ヒンジは、変形(例えば厚さの減少)を可能にする幾何学的なあらゆる形状を有することができる。
【0012】
従って、変形可能支持装置の全体は、水平部の1つと、脚の1つと、もう1つの水平部と、もう1つの脚が相次いで描く、閉じた帯状をなす。
変形可能支持装置100は、支持装置が構成する帯が、自動車の横方向に設けられた仮想の軸の周りを取り巻くように向けられる。
換言すれば、この位置において、変形可能支持装置は、上の水平部110と下の水平部120が水平方向に向けられ、一方、脚130、140は、折り曲げ開始時に、自動車の横方向に、概ね上から下へ伸びる。
【0013】
上の水平部110は、前フェンダーの上の樋110の高さで、前のフェンダー(ボデー部品)200の本体と合体する。
【0014】
側面図(図3)において、支持装置100は、下から上へ幅が減少する縦断面を有する。
このように、下の水平部120の幅は、上の水平部110の幅よりも明らかに大きく、上の水平部110の幅は、前フェンダーの樋に固有の幅と一致する。
【0015】
このように配置された変形可能支持装置は、前フェンダーの頂上に加えられる、特に下向きの衝撃を緩和する。
頭の衝突によって図2に図式化されたこのような衝撃は、下へ向けて支持構造300へ接近する、前フェンダーの移動となって現れる。このような頭の衝撃は、歩行者との衝突の際にしばしば示される。
【0016】
このような衝撃を緩和する移動は、ボンネット400は前フェンダー200に支持されているので、ボンネット400に対する衝突の際にも生じる。
実際、膝の高さで自動車のバンパーに接触された歩行者は、典型的に自動車のボンネット400の上に倒され、従来と同様にここで考察されるように、ボンネット400または前フェンダー200にぶつかる。
【0017】
従って、ボンネット400とフェンダー200の少なくとも一方は、変形可能支持装置100の作用により、歩行者の重量に付随して、優先的に垂直方向の、しかし有利には同時に横方向、すなわち「Y」方向の、望ましい変位を行うことができる必要がある。
【0018】
この変形可能支持装置100は、ここでは、例えば熱硬化性プラスティックあるいは更に熱可塑性プラスティックの、プラスティック材料からなる。
【0019】
図1は、変形可能支持装置100が支持するボデー部品に対する衝撃に引き続く望ましい変形を受けた後の、このような変形可能支持装置100の形態も示す。
この変形した形態において、ボデー部品に連結された上の水平部110は、自動車の支持構造300に連結された下の水平部120へ接近させられる。
【0020】
このような支持構造300は、「板金構造」と呼ばれ、変形可能支持装置100と接して典型的に縦桁310の形で設けられる。
【0021】
変形させられた形態においては、脚130、140の各々は、互いに折り曲げられた2つの部分に見え、ヒンジ135、145からなる折り曲げ開始線の高さに形成される角は、最小値になるまで折り曲げられる。
【0022】
変形可能支持装置は、ここに説明した変形に適合するものであれ、その他の全ての変形に適合するものであれ、フェンダー自身を構成する一部分であることが、確かな利点を呈することが明らかである。
換言すれば、フェンダー200に1または複数の変形可能支持装置100を、単体のブロックとして一体化させることが明らかに有利である。
【0023】
特殊な役割(変形)を有する連結部品としてここまで考察されてきた変形可能支持装置100は、意図的に独立な部品として考察されてきた。これまでと反対に、ここでは変形可能支持装置100は、ボデー部品に本質的に属する付属品の形で提案される。
この場合、フェンダー200は、例えば熱硬化性プラスティックあるいは更に熱可塑性プラスティックの、プラスティック材料からなる。従って、変形可能支持装置100は、望ましくはフェンダーの本体と同時に、この同じプラスティック材料から成型される。
このようにして、1または複数の変形可能支持装置は、最初から、準絶対的な精度でフェンダーに対して位置決めされる。
組立作業は明らかに軽減され、位置決め効率の点で改良される。
また、変形可能支持装置100の製作作業は、フェンダー200の製作作業と同時に実行され、全体の製作コストは明らかに減少される。
【0024】
フェンダー200の全体を示す図4において、変形可能支持装置100はフェンダー1個当たり2個であり、樋210の前の方と後の方にそれぞれ配置され、望ましくはともに変形可能性を有する。
しかし、フェンダー200に一体化される変形可能支持装置100の数は、1から1以上の数にすることができる。
【0025】
フェンダー200が、少なくとも2つの変形可能支持装置100を有する場合には、最も前方の変形可能支持装置100は、下の水平部の前方へ向けて伸びる脚150を有することが望ましい。
脚150は、通常ヘッドライト、フロントグリル、前ガードを含む自動車の前部外面ブロックのための位置決めにおける指標支持の役割を果たす。
【0026】
ここで、自身が衝撃緩和の機能を有する、すなわち自身が引き込む特性を有する、フェンダー200を提案する。
このフェンダー自身が、従って例えば熱−弾−塑性タイプ、より一般的には破壊可能なタイプの、変形可能支持装置の機能を有する。
【0027】
従って、提案されるこのようなフェンダーは、要求される頑丈さ(剛性)を有しながら、歩行者衝突の場合に求められる衝撃緩和の要求を満たす。
【0028】
このタイプのフェンダーは、可能な形状の観点から、一部にとどまらず、全体に変形可能支持装置の機能を持たせるように構成可能である。
【0029】
さて、このようなフェンダー200自身の中で単体部品に適応された変形可能支持装置100の他の1つの形態を示す。
【0030】
この第2の形態は、図1〜3の実施の形態を参照して先に説明した部品を再度使用するが、折り曲げ可能な脚130、140の隣接する縁を連結する垂直な壁160を更に有する。
この壁160は、脚130、140をそれぞれ形成するプラスティックの帯に対して横方向に伸びる。すなわち脚の内側の範囲を横方向に伸びる。
この壁160は、フェンダー200の本体に隣接する脚130、140の縁の高さで、各脚130、140と合体する。
【0031】
このように、この追加の壁160は、フェンダー200の本体と、壁160が接合される脚130、140の間に配置される。
【0032】
この追加の壁160は、2つの脚130、140の間隔が開くこと、従って折れ曲げられることに対抗する傾向を有し、従って、変形に逆らう増大した剛性を支持装置にもたらす。
しかしながら、この増大した剛性は、衝撃の際に所望の変形が生じることを保証するように調節可能である。
このようにこの剛性を調節するために、この壁に、その面積が支持装置の剛性に直接影響する、ここでは円形の開口の形の中央の小窓165が設けられる。
【0033】
壁160は、ここでは、フェンダーの本体と関連がないように説明したが、フェンダーの本体の剛性を高める利益ももたらす。
【0034】
このように、壁160は、フェンダーの垂れ下がった、すなわち概ね垂直な領域220に対する支持として配置することができる。このフェンダーの垂れ下がった領域に、特にこの支持の変形可能性を維持するための小窓を設けることによって、変形可能支持装置100の柔軟性を妨げなくすることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のボデー部品(200)と、上記ボデー部品を自動車の支持構造(300)へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置(100)から構成される組立体であって、上記支持装置(100)は、上記ボデー部品(200)に加えられる衝撃を緩和するために変形して、上記ボデー部品(200)の上記支持構造(300)に対する移動を可能にするように形成された、自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体において、上記支持装置(100)は、自動車の上記支持構造(300)へ後に固定されることなく、上記ボデー部品(200)へ連結されるように構成されることを特徴とする、自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項2】
上記ボデー部品(200)と上記支持装置(100)は、両方ともプラスティック材料からなり、互いに合体することを特徴とする、請求項1に記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項3】
上記支持装置(100)は、帯の形をなし上記ボデー部品の垂直方向の移動を可能にするために変形するようになされた、少なくとも1つの脚(130、140)を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項4】
上記支持装置の脚(130、140)を形成する帯に、上記帯の変形のための折り曲げ開始線(135、145)が設けられたことを特徴とする、請求項3に記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項5】
上記支持装置(100)は、概ね水平な2つの水平部(110、120)によって互いに連結された変形する帯状の2つの脚(130、140)を有し、上の上記水平部(110)は、上記ボデー部品(200)に連結され、下の上記水平部(120)は、自動車の上記支持構造(300)への上記支持装置の取り付けを可能にするように構成されていることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項6】
上記支持装置(100)は、互いに対向して配置された変形する帯状の2つの脚(130、140)を有し、上記支持装置(100)は、更に縦の各縁を介して2つの帯を互いに連結する壁(160)を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項7】
上記帯を連結する上記壁(160)は、少なくとも1つの小窓(165)を有することを特徴とする、請求項6に記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項8】
上記支持装置(100)は、対向する帯状の2つの脚(130、140)を有し、各帯の縁は、上記支持装置(100)が類似した面積を有して対向する2つの開口を有するように開放されていることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項9】
上記ボデー部品(200)は、自動車のフェンダーであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の自動車のボデー部品と上記ボデー部品を自動車の支持構造へ取り付けるための上記ボデー部品の少なくとも1つの支持装置から構成される組立体。
【請求項10】
支持構造(300)に対向するボデー部品(200)の移動によって衝撃を緩和するために、上記ボデー部品(200)に加えられる衝撃を受けたときに変形するように形成された少なくとも1つの支持装置(100)によって、上記ボデー部品(200)を上記支持構造(300)へ取り付けることからなる工程を含む、自動車の支持構造(300)へのボデー部品(200)の組み付け方法において、後に上記支持装置(100)を上記支持構造(300)へ取り付けるために、上記支持装置(100)を上記ボデー部品(200)へあらかじめ取り付けることからなる前工程を含むことを特徴とする、自動車の支持構造へのボデー部品の組み付け方法。

【公表番号】特表2007−508200(P2007−508200A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534809(P2006−534809)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050500
【国際公開番号】WO2005/035325
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】