説明

歩行者用周辺監視装置

【課題】本発明は、歩行者が、接近する歩行者周辺の物体と衝突するのを未然に防げる歩行者用周辺監視装置を提供する。
【解決手段】本発明は、歩行者に着脱可能に装着され、当該歩行者を中心とした歩行者周辺を撮影するカメラ10と、カメラで撮影した画像から、歩行者周辺から歩行者へ接近する物体を検出する接近物体検出手段11と、カメラで撮影した画像から、歩行者へ接近する物体が歩行者と衝突する危険度を判定する危険度判定手段11と、判定された危険度が高いとき、歩行者に物体が接近している旨を知らせる報知手段4,11と具備して構成した。同構成により、歩行者に接近する物体が、歩行者に対し衝突する危険があると、歩行者にその旨が報知されるから、歩行者は、同報知をうけて、接近物体との衝突を避ける行動を行えば、未然に衝突が避けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者に利用される歩行者用周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
街中などを歩行していると、歩行者は、歩行者の周辺から、接近する人や自転車など接近物体に気付かない場合がある。例えば考え事をしている場合、接近する物体が途中で急激に速度が上昇した場合などで生じやすい。このような場合、歩行者は、接近する物体と衝突するトラブルが発生することがある。
そこで、特許文献1に開示されているような眼鏡形の表示装置を歩行者が装着して、歩行者の周辺を撮影した画像を歩行者の眼に伝え、接近する物体を歩行者で認識する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−217520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1は、装着者である歩行者の周囲の状況を表示するのみで、衝突の危険性の判断は歩行者に依存している。このため、歩行者と、接近する物体とが衝突するおそれは避けられない。
そこで、本発明の目的は、歩行者が、接近する歩行者周辺の物体と衝突するのを未然に防げる歩行者用周辺監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の歩行者用周辺監視装置は、歩行者に着脱可能に装着され、当該歩行者を中心とした歩行者周辺を撮影するカメラと、カメラで撮影した画像から、歩行者周辺から歩行者へ接近する物体を検出する接近物体検出手段と、カメラで撮影した画像から、歩行者へ接近する物体が歩行者と衝突する危険度を判定する危険度判定手段と、判定された危険度が高いとき、歩行者に物体が接近している旨を知らせる報知手段と具備して構成した。
【0006】
同構成によると、歩行者に接近する物体が、歩行者に対し衝突する危険があると、歩行者にその旨が報知される。そのため、歩行者は、衝突のおそれのある接近物体に気付き、接近物体との衝突を避ける行動を起こす。
請求項2に記載の発明は、カメラで撮影した画像の簡単な処理で、歩行者に衝突のおそれの有る接近物体を歩行者に気付かせるよう、カメラは、歩行者の身体を含む歩行者周辺を撮影し、接近物体検出手段は、カメラで撮影した歩行者像の身体周囲に、所定の距離をおいて接近判断ラインを設定し、接近判断ラインの内側への物体像の進入から歩行者へ接近する物体を検出し、危険度判定手段は、接近判断ラインから進入する物体像と歩行者像との相対速度を算出し、同相対速度から歩行者と物体との衝突回避に必要とされる相対距離を算出し、同距離で歩行者像の周囲に注意喚起ラインを設定して、歩行者と物体との相対速度および相対距離から衝突の危険度を算出し、報知手段は、注意喚起ラインを危険度の高い地点として、歩行者像に接近する物体像が注意喚起ラインから内側へ進入すると、歩行者に物体との衝突を避ける注意喚起を行うものとした。
【0007】
請求項3に記載の発明は、さらに接近物体に対処しやすいよう、接近物体検出手段は、カメラで撮影した複数の物体像うち、最先に歩行者に接近する物体像を選択する機能を有するものとした。
請求項4に記載の発明は、さらに歩行者の体格の個体差に合わせて適切に注意が喚起されるよう、接近判断ラインおよび注意喚起ラインの設定は、歩行者像の身体周囲に、歩行者像の身体端に接する身体境界面を設定してから、同身体境界面を基準に設定されるものとした。
【0008】
請求項5に記載の発明は、さらに歩行者へ適切に衝突回避の情報が伝えられるよう、報知手段は、カメラで撮影した画像を歩行者の眼に導くとともに、危険度が高いとき同画像中の接近物体像に衝突回避を促す情報を加えて表示する表示部と、危険度が高いとき物体の衝突回避を促す音声情報を歩行者の耳に伝えるイヤホンとの少なくも一つを有して構成されるものとした。
【0009】
請求項6に記載の発明は、さらに装置がコンパクトに集約されるよう、歩行者に装着可能な、左右のレンズおよび左右のテンプルを有する眼鏡形の装着具を有し、装着具の各テンプルに、カメラとして、歩行者の両側の肩部および歩行者の前後を含む周辺を広角に撮影するカメラを設け、テンプルに接近物体検出手段、危険度判定手段を構成する制御部を設け、レンズに報知手段としての表示部を設け、テンプルに報知手段としてのイヤホンを設けることとした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、歩行者周辺に存在する物体が、歩行者と衝突の危険のある地点まで接近したとき、歩行者がその接近物体に気付かなくとも、物体が接近している旨の報知により、歩行者は同接近物体に気付き、接近物体との衝突を避ける行動が起こせる。
したがって、歩行者が、歩行者周辺の物体と衝突するのを未然に防ぐことができる。
請求項2の発明によれば、さらにカメラで撮影した画像の簡単な処理で、歩行者に衝突のおそれの有る接近物体を歩行者に気付かせることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、さらに接近物体に対処しやすくできる。
請求項4の発明によれば、さらに歩行者の体格の個体差に合わせて適切に注意を喚起することができる。
請求項5の発明によれば、さらに歩行者が適切に衝突回避の情報を受けることができる。
【0012】
請求項6の発明によれば、さらに歩行者用周辺監視装置の各機器をコンパクトに集約させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る歩行者用周辺監視装置を、同装置を装着した歩行者の頭部と共に示す斜視図。
【図2】同装置において物体接近を捉えて報知する制御を示すフローチャート。
【図3】図2に続く制御を示すフローチャート。
【図4】同装置の広角カメラによる撮影イメージを示す図。
【図5】身体境界面の設定の仕方を説明する図。
【図6】表示部での表示イメージを示す図。
【図7】接近判断ラインと注意喚起ラインの設定の仕方を説明する図。
【図8】注意喚起ラインの設定で用いられる接近物体と歩行者との相対速度と相対距離との関係を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図1〜図8に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は歩行者用周辺監視装置の全体を示し、図2および図3は同装置の制御の流れを示し、図4〜図8は同制御で用いる各種情報を示している。
歩行者用周辺監視装置を説明すると、図1中1は眼鏡形の装着具である。この装着具1は、前側に左右一対のレンズ2を有し、左右両側に一対のテンプル3を有して構成され、レンズ2間を歩行者aの鼻に掛け、テンプル3の両端部を歩行者aの耳bに掛けることで、歩行者aの眼にレンズ2が配置される。つまり、装着具1は、歩行者aに着脱自在に装着される構造としてある。歩行者aは、装着具1を装着する人なので、ここからは装着者aという。
【0015】
装着具1は、装着者aの頭部に装着した状態から、レンズ2の有る側を前方向F、反対のテンプル3端を後方向B、装着者aの右側に配置されるテンプル3側を右方向R、装着者aの左側に配置されるテンプル3側を左方向Lと規定される。
この装着具1に、歩行者用周辺監視装置の各部が組み付けられている。同装置の各部を説明すると、図中5は、左右のレンズ2の一部に設けられた一対の表示部を示す。表示部5は、例えば薄膜の液晶ディスプレーで形成され、装着者aの眼へ画像が伝えられる構造にしている。
【0016】
テンプル3の長手方向中央部には、それぞれ一対の制御ユニット7が設けられている。この制御ユニット7の外殻をなすケース7aには、後方へ延びるアーム部8を介して、一対のイヤホン9が取り付けられている。これで、装着具1を頭部に装着すると、装着者aの耳bにイヤホン9が配置される構造にしている。
各ケース7aの外側の側面には、装着者周辺を撮影するカメラ10が設けられている。左右のカメラ10には、いずれも装着者aの身体の一部を含む周辺、ここでは例えば肩部c(図3)を含む装着者aの側方、例えば前後200度位内で数十m、例えば50m程度まで周辺領域の物体が捕捉可能な広角のカメラが用いられている。このカメラ10により、装着者aの前後両方および左右両方(肩部cを含む)を広角に撮影、すなわち装着者aを中心とした周辺を広範囲に撮影(監視)できるようにしている。
【0017】
また各ケース7a内には、制御部11が収められている(図1に片側だけ図示)。制御部11は、例えばマイクロコンピュータを搭載した各種制御基板や画像処理を行う電子機器を搭載した基板などを組み合わせて構成される。制御部11には、左右のカメラ10で撮影した画像を用いて、装着者周辺から装着者aへ接近する人や自転車など物体を検出する接近物体検出機能(接近物体検出手段に相当)、同じく接近物体が装着者aと衝突する危険度を判定する危険度判定機能(危険度判定手段に相当)、判定した危険度が高いとき表示部5やイヤホン9を用いて、装着者aに物体が接近している旨を知らせる報知機能(報知手段に相当)が設定されている。
【0018】
具体的には、接近物体検出機能は、カメラ10で撮影した画像の中から装着者像α、ここでは肩部c(歩行者像:図4)を捉え、同装着者像αの身体周囲に、所定の距離、すなわち衝突のおそれのある接近物体を認識できる距離、ここでは、ほとんどの場合で十分に衝突の回避行動が起こせる距離、例えば装着者像αから15m離れた距離に接近判断ラインS(図7)を設定しておき、接近する物体の物体像β(図6、図7)が接近判断ラインSの内側へ進入するか否かにより、装着者aへ接近する物体、つまり衝突のおそれのある物体が検出されるようにしている。
【0019】
危険度判定機能は、上記接近判断ラインSから進入する物体像βと装着者像αとの相対速度を算出し、同相対速度から装着者aと物体との衝突回避に必要とされる相対距離を算出し、同距離で、装着者像αの周囲(接近判断ラインSの内側)に、高い危険度に相当するラインである、注意喚起を必要とする注意喚起ラインT(ここでは15m以下:図6)を設定するものである。つまり、装着者aと接近する物体との相対速度および相対距離から、衝突の危険度を算出するものである。
【0020】
報知機能は、装着者像αへ接近する物体像βが注意喚起ラインTから内側へ進入すると、衝突を回避する行動を装着者aに促すために、画面部5、イヤホン9から装着者aヘ、物体が接近する旨を報知するものである。具体的には、画面部5は、通常、カメラ10で撮影した画像を映し出すとともに(ここでは身体の映り込みのない画像)、映し出される物体像βには、例えば枠線で囲んで表示するといった画像処理を施しておく。そして、物体像βが注意喚起ラインTから装着者a側(内側)へ進入すると、例えば枠線に点滅表示を加え、物体像βを強調表示させる設定が施されていて、装着者aに対し注意喚起を行う。イヤホン9は、物体像βが注意喚起ラインTから装着者a側(内側)へ進入すると、例えば物体が接近している旨を示す音声情報をイヤホン9から出力させる設定が施されていて、同様に装着者aに対し注意喚起を行うようにしている。
【0021】
また、一様なタイミングで注意喚起が行われるのではなく、装着者aの体格に準じたタイミングで注意喚起が行われるよう、注意喚起ラインTや接近判断ラインSの設定には、カメラ10で撮影される装着者像αの身体周囲に、同装着者像αの身体端に接する身体境界面U(図5)を設定し、同身体境界面Uを基準に、注意喚起ラインTや接近判断ラインSの設定を行うものとしている。
【0022】
左右の制御ユニット7のケース7a(例えば左側)には、同設定のための初期設定スイッチ13が設けられている。
さらに装着者a自身は、装着者a前方からの物体に対しては気付きやすいものの、装着者a側方や後方からの物体に対しては気付きにくい傾向があるので、その点を考慮して、注意喚起ラインTのうち、装着者像αの側方に設定される側方注意喚起ラインT2は、前方に設定される前方注意喚起ラインT1よりも装着者像αから離れた地点に設定し、装着者像αの背面に設定される後方注意喚起ラインT3は、さらに側方に設定される側方注意喚起ラインT2よりも装着者像αから離れた地点に設定している(T1<T2<T3)。
【0023】
また装着者aは、適切に接近物体に反応できるよう、接近物体検出機能には、カメラ10で撮影した複数の物体像うち、最先に歩行者に接近する物体像βを選択し、同選択した物体像βに対する危険度を算出する設定にしてあり、衝突のおそれの高い接近物体に注視して注意喚起が行えるようにしている。
むろん、制御部11には、接近物体の相対速度の算出の際、既に接近判断ラインSの距離を越える距離が算出される場合、直ちに表示部5、イヤホン9による注意喚起が開始される設定がなされていて、緊急の場合にも備えている。
【0024】
制御ユニット7のケース7a(右側)には、歩行者用周辺監視装置の作動のオンオフを行う電源スイッチ14が設けてある。さらに例えば各ケース7aには、歩行者用周辺監視装置の電源となるバッテリ15がそれぞれ収められていて、眼鏡形の装着具1に各機器をコンパクトに集約させている。
図2および図3には、このように構成された歩行者用周辺監視装置の作用を示す制御フローチャートが示されている。
【0025】
同フローチャートを説明すると、今、装着具1の各テンプル3を耳bに掛けて、装着者aの頭部に歩行者用周辺監視装置を装着する。これにより、図1に示されるようにレンズ2は、表示部5と共に装着者aの眼前に配置され、イヤホン9は装着者aの耳bに配置される。
その後、装着者aは、例えば街中に向かうために歩行する。この際、安全性の確保のため、装着者aは、電源スイッチ14をオン操作し、歩行者用周辺監視装置を作動させる。すると、図2中のステップS1からステップS2へ進み、左右両側のカメラ10によって、図1中のθ(一点鎖線)のように装着者aを中心とした装着者a周辺が広角に撮影される。例えば左右のカメラ10からは、図3に示される撮影像のように装着者aの肩部cが映り込んだ装着者aの前・後方を含む左右周辺の広範囲な領域が撮影される。これにより、装着者aの前方や後方や側方などに存在する路地までも撮影される。
【0026】
歩行者用周辺監視装置を始めて利用する場合、装着者aの体格に関するデータを取得するため、初期設定スイッチ13をオン操作する。すると、制御部11は、ステップS3からステップS4へ進み、装着者aの体格を算出するモードに入る。すなわち、制御部11は、撮影された画像に映り込む装着者像αの肩部cや装着具1の各部寸法や装着具1の向きなどを用いて、装着者aに準じた体格(身体の前後幅、左右幅)を割り出す。具体的には、図5(a)に示されるように装着者aの左右幅Wは、テンプル3間の寸法Wcに、画像処理により得たテンプル3端から肩部cの端までの左右の距離WL、WRを加えた値(W=Wc+WL+WR)で算出し、装着者aの前後幅Dは、画像処理で得た肩部cの端から胸や背までの各距離DF、DRを加えた値(D=DF+DR)で算出する。
【0027】
同算出を終えると、ステップS5へ進み、制御部11は、算出した左右幅W、前後幅Dを用いて、図5(a),(b)に示されるように撮影で得た装着者像αを囲むよう周りに、装着者aに準じた体格となる、身体端に接する身体境界面Uを設定する。
この設定を終えると、ステップS6のように装着者像αを基準、ここではこの身体境界面Uを基準に、装着者像αの周りに、図7に示されるように所定の距離(一定の距離)、例えば緊急でも物体の衝突が避けられる行動が起こせるだけの距離(ここでは例えば15m)をおいて、接近物体の進入を判断する接近判断ラインSを設定する。
【0028】
なお、初期設定スイッチ13をオン操作しない場合、制御部11は、既に前回に体格設定を済ましていると判定して、ステップS3からステップS7を経てステップS6へ進み、前回に設定(あるいは当初から設定)した体格情報を用いて、接近判断ラインSの設定を行う。
装着者aは、こうした設定がなされたまま、街中を歩く。この歩行中、制御部11は、撮影された画像から、ステップS8に示されるように接近判断ラインS内に進入する物体の存在があるか否かを監視している。
【0029】
ここで、例えばカメラ10が捉えていた装着者a周辺の画像から、接近判断ラインSへ接近する人が例えば路地から現れたとする。続いて制御部11は、同物体(人)の物体像βが接近判断ラインS内へ進入したことを検出したとする。
すると、制御部11は、ステップS9へ進み、接近する物体の存在を表示部5に表示する。この表示は、例えば図6に示されるように物体像βの存在するカメラ10からの撮影像を、見やすい画像に処理して、表示部5の画面に映し出すことで行っている。具体的には、画像処理により、肩部cの映り込んだ部分の無い撮影像を表示部5に表示させている。
【0030】
ついで、ステップS10へ進み、装着者像αと接近する物体像βとの相対速度を算出する。ここで、接近判断ラインS内に進入した物体が複数、存在する場合は、混乱をきたすおそれがあるので、つぎの図3中のステップS11において、混乱をきたさないよう、接近判断ラインS内に進入した複数の物体のうち、相対速度の速い物体を選択する。
続くステップS12において、選択した物体像βに枠線γ(囲み線)を加える処理を施して、接近する物体像βを注視するよう、強調表示を行う。進入した物体が一つの場合は、一つの物体像が選択され、図6に示されるように物体像βに枠線γを加える処理が施される。
【0031】
続くステップS13は、図7中に示されるように装着者像αの周りに身体境界面Uを基準とした上記相対速度に応じた注意喚起ラインTを設定する。注意喚起ラインTは、「相対速度m/s」に、回避行動に必要な時間となる「余裕時間t」を掛けて求まる距離で算出される。
ここで、装着者aは、通常、前方を目視している状況なので、前方よりも、側方、側方よりも背面から、接近する物体に対して気付きにくい。
【0032】
そのため、図8のように余裕時間tは、装着者aの前方に比べ、装着者aの側方、装着者aの背面に対して多く設定して、図7,8に示されるように注意喚起ラインTのうち、装着者像αの側方に配置される側方注意喚起ラインT2は、装着者像αの前方に配置される前方注意喚起ラインT1よりも装着像αから離して設定し、装着者像αの後方に背面される後方注意喚起ラインT3は、同側方注意喚起ラインT2よりも装着像αから離した位置に設定する(T1<T2<T3)。こうした注意喚起ラインT3の設定は、物体像βの推移の都度、繰り返し行われる。
【0033】
続くステップS15において、設定した注意喚起ラインTが、接近判断ラインS以上となる距離かを判定している。ここで、接近物体の「相対速度」に「回避行動」を掛けた距離で求まる距離が、接近判断ラインS(ここでは15m)以上であれば、すぐさま衝突を回避する行動が求められるが、通常は、そのようなことはない。そのため、通常は、ステップS15へ至る。
【0034】
ステップS15は、接近する物体の物体像βが、設定された注意喚起ラインT内へ進入したか否かを判定するものである。物体像βが注意喚起ラインT内へ進入するまでは、物体が装着者aと衝突する心配はないが、物体像βが注意喚起ラインT内へ進入すると、物体が装着者aに衝突する危険が生じてくる。そのため、物体像βが注意喚起ラインT内へ進入すると、ステップS16へ至り、装着者aに注意喚起を促し、装着者aに衝突するおそれのあることを伝える(報知)。
【0035】
具体的にはステップS16では、接近する物体像βを囲んだ枠線γを点滅させて、接近物体が装着者aと衝突するおそれのある旨を伝えたり、イヤホン9から音声で、どの方向から接近する物体が装着者aと衝突するおそれのある旨を伝えたりして、装着者aに対し注意を喚起する。
先のステップS14で、直ちに衝突を回避する行動が求められる場合も、ステップS16へ至り、直ちに表示部5やイヤホン9で、物体像βが衝突するおそれがある旨を装着者aへ伝える。
【0036】
この注意喚起により、たとえ装着者周辺に存在する物体が、気付かずに衝突のおそれのある地点まで装着者aに接近したとしても、注意喚起(報知)により、気付かせることができ、装着者aに衝突を避ける行動を促す。なお、接近する物体像βが、注意喚起ラインT外へ出ると(ステップS17)、注意喚起ラインTは、対象の物体が無くなることで消滅し、再び、物体監視モードに戻る。
【0037】
したがって、装着者aは、注意喚起を受けて回避行動を起こし、物体との衝突を避けるから、装着者aが装着者周辺の物体と衝突するのを未然に防ぐことができる。特に画像や音声で、接近する物体の位置や方向を示しているので、物体像βに対する回避行動は起こしやすい。
しかも、画像処理で、装着者像αの周りに、接近判断ラインS、注意喚起ラインTを設定して、装着者aに注意喚起を行う構造は、簡単な技術で、接近物体を装着者aに気付かせることができる。しかも、カメラ10で撮影した複数の物体像βうち、最先に接近する物体像βを選択すると、混乱が無くなり、接近物体に対処しやくなる。そのうえ、接近判断ラインSや注意喚起ラインTの設定は、装着者aの身体周囲に、装着者像αの身体端に接する身体境界面Uを設定してから、同身体境界面Uを基準に設定するものとしたから、装着者aの個々の体格の個体差に合わせ、適切に注意喚起をすることができる。
【0038】
また装着者aへの報知には、表示部5を用いて、カメラ10で撮影した画像を装着者aの眼へ導き、危険度が高いとき同画像中の接近物体像βに衝突回避を促す情報を加えて表示するだけでなく、イヤホン9を用いて、衝突回避を促す音声情報を装着者aへ伝えるようにしたから、装着者aへ適切に衝突回避の情報を伝えることができる。
特に歩行者用周辺監視装置は、眼鏡形の装着具1に、広角撮影用のカメラ10、接近物体検出機能や危険度判定機能を構成する制御部11、表示部5、イヤホン9など各機器を設ける構造を用いたから、コンパクトに集約できる。
【0039】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。一実施形態では、表示部、イヤホンの双方を用いたが、場合によっては片方でもよい。また一実施形態では、制御ユニットにバッテリを設けたが、これに限らず、バッテリを制御ユニットとは別体にし、装着者がバッテリを携帯するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 装着具
2 レンズ
3 テンプル
5,9 表示部、イヤホン(報知手段)
7 制御ユニット
10 カメラ
11 制御部(接近物体検出手段、危険度判定手段)
S 接近判断ライン
T 注意喚起ライン
U 身体境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者に着脱可能に装着され、当該歩行者を中心とした歩行者周辺を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像から、歩行者周辺から歩行者へ接近する物体を検出する接近物体検出手段と、
前記カメラで撮影した画像から、前記歩行者へ接近する物体が前記歩行者と衝突する危険度を判定する危険度判定手段と、
前記判定された危険度が高いとき、前記歩行者に物体が接近している旨を知らせる報知手段と
を具備したことを特徴とする歩行者用周辺監視装置。
【請求項2】
前記カメラは、歩行者の身体を含む歩行者周辺を撮影し、
前記接近物体検出手段は、前記カメラで撮影した歩行者像の身体周囲に、所定の距離をおいて接近判断ラインを設定し、前記接近判断ラインの内側への物体像の進入から歩行者へ接近する物体を検出し、
前記危険度判定手段は、前記接近判断ラインから進入する物体像と歩行者像との相対速度を算出し、同相対速度から歩行者と物体との衝突回避に必要とされる相対距離を算出し、同距離で前記歩行者像の周囲に注意喚起ラインを設定して、前記歩行者と物体との相対速度および相対距離から衝突の危険度を算出してなり、
前記報知手段は、前記注意喚起ラインを危険度の高い地点として、前記歩行者像に接近する物体像が前記注意喚起ラインから内側へ進入すると、前記歩行者に対し前記物体との衝突を避ける注意喚起を行うものである
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者用周辺監視装置。
【請求項3】
前記接近物体検出手段は、前記カメラで撮影した複数の物体像うち、最先に歩行者に接近する物体像を選択する機能を有することを請求項2に記載の歩行者用周辺監視装置。
【請求項4】
前記接近判断ラインおよび前記注意喚起ラインの設定は、前記歩行者像の身体周囲に、前記歩行者像の身体端に接する身体境界面を設定してから、同身体境界面を基準に設定されることを特徴とする請求項2に記載の歩行者用周辺監視装置。
【請求項5】
前記報知手段は、前記カメラで撮影した画像を歩行者の眼に導くとともに、前記危険度が高いときは、同画像中の接近物体像に衝突回避を促す情報を加えて表示する表示部と、前記危険度が高いときは、物体の衝突回避を促す音声情報を歩行者の耳に伝えるイヤホンとの少なくも一つを有して構成される
ことを特徴とする請求項2に記載の歩行者用周辺監視装置。
【請求項6】
さらに歩行者に装着可能な、左右のレンズおよび左右のテンプルを有する眼鏡形の装着具を有し、
前記装着具の各テンプルに、前記カメラとして、歩行者の両側の肩部および歩行者の前後を含む周辺を広角に撮影するカメラが設けられ、
前記テンプルに、前記接近物体検出手段、前記危険度判定手段を構成する制御部が設けられ、
前記レンズに、前記報知手段としての表示部が設けられ、
前記テンプルに、前記報知手段としてのイヤホンが設けられる
ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一つに記載の歩行者用周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−8307(P2013−8307A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142018(P2011−142018)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】