説明

歩行補助車のブレーキ機構

【課題】この発明は、利用者の歩行能力に応じた速度で走行することができ、利用者の足や腰等に与える負担を小さくして、歩行時の疲労を軽減することができるとともに、歩行及び走行がスムースに行える歩行補助車のブレーキ機構の提供を目的とする。
【解決手段】ハンドル部10のハンドル杆11に固定したブレーキ支持部14dに、該ハンドル杆11の前側下部に配置したブレーキ杆12の基端部を上下回動自在に枢着し、ブレーキ杆12の制動操作と連動する制動機構9の制動部材9aにて後側車輪7の回転を制動する歩行補助車1のブレーキ機構であって、ハンドル杆11に、ブレーキ杆12の遊端側が係止されるフック部材30を設け、該フック部材30に、ブレーキ杆12の遊端側が係止される杆掛け部30c,30dを設けている。また、杆掛け部材31の位置を、フック部材30の長手方向に対して所定間隔を隔てて設定した複数の位置に移動調節可能に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば歩行困難な身障者や老人の歩行訓練、機能回復、買い物、散歩等に用いられ、シルバーカー又は老人車と呼称されるような歩行補助車のブレーキ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の歩行補助車としては、例えば利用者の歩行を補助する歩行補助具が提案されている(特許文献1参照)。この歩行補助具は、ブレーキレバーをハンドル部に取り付けたフックに係合し、そのブレーキレバーの制動操作と連動するブレーキシューによって車輪の回転を停止する。また、フックに対するブレーキレバーの係合を解除すれば、ブレーキシューによる車輪の停止が解かれ、歩行補助具を利用者の手で走行移動させることができる。
【0003】
しかし、ブレーキレバーを利用者の手で引き上げ操作して、車輪に付与される制動力を可変調節するが、歩行補助具の走行速度を、利用者の歩行能力に応じた速度に可変調節することが難しい。車輪に付与する制動力が大き過ぎると、走行時に付加される抵抗が必要以上に大きくなるので、利用者の歩行が妨げられるだけでなく、スムースに走行することができない。
【0004】
また、車輪に付与する制動力が小さ過ぎると、走行時に付加される抵抗が小さくなるので、歩行補助具が利用者の歩行能力よりも速い速度で移動しようとする。このため、歩行時において、例えば躓いたり、足が絡む等して利用者が転倒する恐れがあるだけでなく、利用者の体重を歩行補助車で支えることが難しく、足や腰等に与える負担が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−67972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、歩行補助車を、利用者の歩行能力に応じた速度で走行することができ、利用者の足や腰等に与える負担を小さくして、歩行時の疲労を軽減することができるとともに、歩行及び走行がスムースに行える歩行補助車のブレーキ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前方に向けてU字状に張り出す形状を有するハンドル杆の両端側下部に固定したブレーキ支持部に、該ハンドル杆の前側下部に配置したブレーキ杆の基端部を上下回動自在に枢着し、ブレーキ杆の制動操作と連動する制動手段にて車輪の回転を制動する歩行補助車のブレーキ機構であって、前記ハンドル杆の前端側に、前記ブレーキ杆の遊端側が係止され前記車輪に対して制動が付与される引き上げ角度に回動規制するフック部材を前後回動自在に取り付け、前記フック部材の基端側から遊端側に至る部分に、前記ブレーキ杆の遊端側が係止される複数の杆掛け部を該フック部材の長手方向に対して所定間隔を隔てて設けた歩行補助車のブレーキ機構であることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、歩行補助車を、利用者の歩行能力に応じた速度で走行することができ、利用者の足や腰等に与える負担を小さくして、歩行時の疲労を軽減することができるとともに、歩行及び走行がスムースに行える。
【0009】
詳述すると、ブレーキ杆の遊端側を、ハンドル杆に取り付けたフック部材の杆掛け部に引っ掛けるとともに、該ブレーキ杆の引き上げ操作に連動して、制動部材を車輪の周面に対して圧接する。
【0010】
つまり、ブレーキ杆の遊端側をフック部材の杆掛け部に引っ掛けて、ブレーキ杆を所定の引き上げ角度に回動規制するので、車輪に付与される制動力が常時一定することになる。
【0011】
このため、走行中において、車輪に付与される制動力が変動することがなく一定しているので、利用者の歩行能力に応じた速度で安定走行することができ、歩行及び走行がスムースに行える。
【0012】
また、ブレーキ杆の引き上げ角度に応じて、車輪に付与される制動力を段階的に変化するので、利用者の歩行能力に応じて、車輪に付与される制動力を段階的に可変調節することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記杆掛け部の位置を、前記フック部材の長手方向に対して移動調節可能に設けることができる。
この発明によれば、利用者の歩行能力に応じて、歩行補助車を走行する際の速度を微調節することができる。
【0014】
詳述すると、ブレーキ杆の遊端側を、フック部材の基端側に寄った位置の杆掛け部に引っ掛ければ、車輪に付与される制動力を強くすることができる。また、ブレーキ杆の遊端側を、フック部材の遊端側に寄った位置に調節した杆掛け部を引っ掛ければ、ブレーキ杆の遊端側を、フック部材の基端側に寄った位置の杆掛け部に引っ掛けた際に付与される制動力よりも、車輪に付与される制動力を弱くすることができる。
【0015】
この結果、ブレーキ杆の遊端側が引っ掛けられる杆掛け部の位置を調節することにより、利用者の歩行能力に応じて、車輪に付与される制動力を微調節することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、歩行補助車を、利用者の歩行能力に応じた速度で走行することができ、利用者の足や腰等に与える負担を小さくして、歩行時の疲労を軽減することができるとともに、歩行及び走行がスムースに行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】走行形態の歩行補助車を前方から見た正面図。
【図2】走行形態の歩行補助車を後方から見た背面図。
【図3】走行形態の歩行補助車を上方から見た平面図。
【図4】走行形態の歩行補助車を下方から見た底面図。
【図5】走行形態に変形した歩行補助車の右側面図。
【図6】折畳み形態に変形した歩行補助車の右側面図。
【図7】連結部材の平面図、正面図、底面図。
【図8】連結部材の左側面図、右側面図。
【図9】連結部材のA−A線矢視断面図、B−B線矢視断面図、C−C線矢視断面図。
【図10】肘掛け台を取り付けたハンドル部の平面図。
【図11】肘掛け台を除くハンドル部の正面図。
【図12】肘掛け台を除くハンドル部の平面図。
【図13】ハンドル部のD−D線矢視断端面図。
【図14】肘掛け台の正面図、背面図、平面図。
【図15】肘掛け台の右側面図、左側面図、底面図。
【図16】上側可動部材の内部構造を説明する横断底面図。
【図17】肘掛け台をハンドル杆に取り付けた状態の側面図。
【図18】肘掛け台の取り付け状態及び肘当て部の左右回動状態を説明する幅方向縦断面図。
【図19】ブレーキ杆をフック部材に引っ掛けた状態の側面図。
【図20】トレイをハンドル杆に取り付けた状態の平面図、正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1は走行形態の歩行補助車1を前方から見た正面図、図2は走行形態の歩行補助車1を後方から見た背面図、図3は走行形態の歩行補助車1を上方から見た平面図、図4は走行形態の歩行補助車1を下方から見た底面図、図5は走行形態に変形した歩行補助車1の右側面図、図6は折畳み形態に変形した歩行補助車1の右側面図である。
なお、歩行補助車1の左側面図は、右側面図と対称にあらわれるので、左側面図を省略する。
【0019】
本実施形態の歩行補助車1は、手押し操作される車本体2を、走行形態(図5参照)と折畳み形態(図6参照)とに変形自在に設けている。また、車本体2は、走行方向の前側に配置した左右一対の前側脚部3と、後側に配置した左右一対の後側脚部4と、車本体2の両側上部に配置した前後脚部3,4の上端側を連結する連結部材5とを備えている。
【0020】
前側脚部3は、断面中空丸形状に形成するとともに、下端側を前方に向けて張り出した形状に形成している。また、後側脚部4は、断面中空楕円形状に形成するとともに、側面から見て中央上方から後側斜め下方に向けて滑らかな曲面形状に形成している。
【0021】
前側脚部3の下端部には、後述する首振り機構8を介して前側車輪6を枢着している。また、後側脚部4の下端部には、後述する制動機構9を介して後側車輪7を枢着している。さらに、連結部材5の上方には、利用者の手で操作されるハンドル部10を配置するとともに、利用者の身長に応じて所望する高さに調節自在に設けている。
【0022】
左右脚部3,3の間は、該脚部3,3の中央部対向面間に水平架設した前側支持杆3Aで連結している。また、左右脚部4,4の間は、該脚部4,4の中央部対向面間に水平架設した後側支持杆4Aで連結している。
【0023】
これにより、左右脚部3,3の間及び左右脚部4,4の間を、利用者(老人)の身体幅(肩幅)よりも幅広となる間隔を隔てている。例えば女性用は幅狭サイズに設定し、男性用は幅広サイズに設定する。
【0024】
また、後側支持杆4Aの中央部は、前方に向けて張り出す形状に形成しており、後述するハンドル杆11の両端部間に対して利用者の身体を後方より入り込ませることができる。
さらに、後側支持杆4Aの中央部を、利用者の歩行が許容される高さ(足の前後動を妨げない高さ)に架設し、後側支持杆4Aの下方に、利用者の足の歩行動作が許容される空間を確保している。
【0025】
前側脚部3と後側脚部4の間は、脚部3の前側支持杆3Aより上位中央部に枢着した前側連結杆3Bの遊端と、脚部4の後側支持杆4Aより下位中央部に枢着した後側連結杆4Bの遊端とを連結している。
また、後側連結杆4Bの遊端側には、前側連結杆3Bと後側連結杆4Bとを前後方向Aと平行して直線状態に回動規制するための規制金具4Cを固定している。つまり、車本体2を、図5に示す走行形態に変形した際、規制金具4Cが前側連結杆3Bの遊端側上縁部に当接し、前側脚部3と後側脚部4とを前後方向Aに対して所定角度に開角した角度に回動規制する。
【0026】
後側支持杆4Aより上位で左右脚部3,4の間には、利用者が着座するための座部2Aを配置している。また、座部2Aの下方には、座部2A全体を支持するU字状の座支持枠2Bを架設している。さらに、座部2Aの下面側前端部には、座支持枠2Bの遊端側を保持する保持部材2Cを固定している。
【0027】
座支持枠2Bの両端部は、脚部4の後側支持杆4Aより上位中央部に対して前後回動自在に枢着している。また、座支持枠2Bの両側部に枢着した座支持杆2Dの下端は、後側連結杆4Bの規制金具4Cに近い遊端側に連結している。
【0028】
後側支持杆4Aの前端側は、図5中の実線で示す水平姿勢に回動した座部2Aの下面側後端部に対して当接される高さに形成している。
つまり、歩行補助車1を走行形態に変形した際、座部2A全体を、座支持枠2Bの遊端側を支点として後方へ回動し、座部2Aの下面側後端部を後側支持杆4Aの前端側に当接する。
これにより、座部2A全体を、利用者の着座が許容される水平姿勢に支持することができる。
【0029】
座支持枠2Bの遊端側中央部は、保持部材2Cに形成した凹状の受け孔2Caに対して前後回動自在に保持され、座部2A全体を、受け孔2Caにて保持された座支持枠2Bの遊端側を支点として前後回動自在に取り付けている。
座部2Aの下面側両縁部と座支持枠2Bの両側中央部とを連結杆2Dで連結している。また、連結杆2Dよりも前端側に寄った位置で、座部2Aの下面側両縁部よりも内側両側縁部と座支持枠2Bの内側両側中央部とを連結杆2Eで連結している。
【0030】
すなわち、座部2Aの後端側を上方に引き上げながら前方へ回動して、座部2A全体を斜め下向きとなる姿勢に保持した後、該座部2A全体を保持部材2Cの受け孔2Caに沿って斜め下方に移動させ、座支持枠2Bの遊端側を保持部材2Cの受け孔2Caの後端側に係合する。
【0031】
これにより、歩行補助車1の座部2Aが図5中の仮想線で示す斜め下向き姿勢に回動保持されるので、歩行補助車1を用いて歩行する場合、利用者の身体を、後述するハンドル杆11の両端部間に入り込ませるとともに、該ハンドル杆11の前端側に寄せた状態で歩行することができる。
【0032】
この結果、利用者の両肘部を、ハンドル杆11に取り付けた左右の肘掛け台14に当てて歩行する際、利用者の全体重を歩行補助車1にて支えることができ、歩行が安定して行える。
【0033】
また、座部2Aに着座する場合、座部2A全体を斜め上方に引き上げて、座支持枠2Bの遊端側を保持部材2Cの受け孔2Caの前端側に係合した後、座部2A全体を、座支持枠2Bの遊端側を支点として後方へ回動し、該座部2Aの下面側遊端部を後側支持杆4Aの前端側上面に載置する。
これにより、座部2Aが水平に支持されるので、歩行時において利用者が休憩を取る際の椅子として利用することができる。
【0034】
前側脚部3,3の下端部に設けた首振り機構8は、前側車輪6が枢着された下側支持部材8aの上端部を、前側脚部3の下端部に固定した上側支持部材8bの前方側突出部に対して水平回転可能(略360度)に連結している。
つまり、左右の前側車輪6が独立して水平回動するので、歩行補助車1を、利用者が望む方向へ手押し操作できる。
【0035】
後側脚部4,4の下端部に設けた制動機構9は、歩行補助車1に対して左右対称に設けられているので一方の機構について説明する。
すなわち、後側車輪7の周面に対して圧接される形状に形成した制動部材9aの中間部側面を、後側脚部4の外側下端部に枢着した後側車輪7より上方で、該後側脚部4の外側下端部に対して前後回動可能に枢着している。
【0036】
制動部材9aの後端側には、後側車輪7の周面に対して径方向に圧接されるL字状の制動片9bを形成している。また、制動部材9aの前端側中央部には、後述するチューブ9dより引き出した線条体9e(ワイヤー)の下端を連結している。
【0037】
後側脚部4の下端部と制動部材9aの前端部との間には、制動部材9aの前端側を下方に向けて牽引するためのコイルスプリング9cを張架している。そのコイルスプリング9cに蓄積された復元力によって、制動部材9aの制動片9bを後側車輪7の周面に対して離間される方向に付勢している。
【0038】
上述の線条体9eは、柔軟性を有するチューブ9dに挿入している。そのチューブ9dは、利用者の走行動作や走行補助車1の折畳み動作を妨げないように、車本体2の外側に配索している。
チューブ9dの上端は、後述するブレーキ杆12の基端部に係合している。また、チューブ9dより引き出した線条体9eの上端は、ブレーキレバー13の基端部に連結している。
【0039】
つまり、コイルスプリング9cの復元力に抗して、後述するブレーキ杆12あるいはブレーキレバー13を引き上げ操作することにより、制動部材9aの制動片9bを下方へ回動し、後側車輪7の周面に対して径方向に押し付ける。その押し付け部分に生じる接触抵抗によって、後側車輪7の回転を低速に制動するか、回転不可に制動する。
【0040】
また、ブレーキ杆12あるいはブレーキレバー13の引き上げ操作を解除すると、コイルスプリング9cの復元力によって、ブレーキ杆12及びブレーキレバー13が操作前の状態に復帰するとともに、制動部材9aの制動片9bが上方へ回動して、後側車輪7の周面から離間される。
これにより、後側車輪7に対する制動が解除されるので、歩行補助車1を、利用者の手で望む方向に向けて走行移動することができる。
【0041】
次に、図7、図8、図9を用いて、上述の前側脚部3と後側脚部4とを連結する連結部材5の構造について説明する。図7[a][b][c]は連結部材5の平面図、正面図、底面図、図8[a][b]は図7[b]の連結部材5の左側面図、右側面図、図9[a]は図7[b]の連結部材5のA−A線矢視断面図、図9[b]は図7[b]の連結部材5のB−B線矢視断面図、図9[c]は図8[a]の連結部材5のC−C線矢視断面図である。
なお、歩行補助車1の背面図は、正面図と対称にあらわれるので、背面図を省略する。
【0042】
連結部材5は、アルミニウム合金で構成され、図示しない押出し機を用いて図9に示す断面形状に押出し成形している。
連結部材5の前端側と後端側の間に位置する幅方向中央部には、該連結部材5の上端側から下端側に貫通して、ハンドル杆11の両側下面に垂設した支柱17が上下動可能に挿入される筒状の支持孔5aを形成している。
【0043】
また、車本体2の外側に位置する連結部材5の上端側外面部には、支持孔5aに対して径方向に連通して、調節ネジ5Nを螺合するためのネジ孔5bを幅方向に形成している。
ネジ孔5bに螺合した調節ネジ5Nの先端側は、支持孔5aの内周面より孔中心に向けて突出され、該支持孔5aに挿入した支柱17の孔部17aに対して係合される。
【0044】
すなわち、支持孔5aの内周側に突出した調節ネジ5Nの先端側を、支柱17の所望する位置に形成した孔部17aに係合して、支持孔5a上端より上方に突出される支柱17の高さを調節する。
これにより、ハンドル部10を、利用者の身長に応じて所望する高さに段階的に伸縮調節することができる。また、ハンドル部10の高さが上下に変位することを確実に防止でき、利用者の身長に応じた高さを維持することができる。
【0045】
連結部材5の前端側には、前側脚部3の上端側が垂直に挿入及び保持される縦長凹状の前側受け溝5Xを上下方向に形成している。また、連結部材5の後端側には、後側脚部4の上端側が垂直に挿入及び保持される縦長凹状の後側受け溝5Yを上下方向に形成している。
【0046】
前側受け溝5Xの両側壁部5Xb間に形成した前側開口部5Xaは、前側脚部3の横幅(外径)よりも幅狭に形成され、該前側受け溝5Xの内部に対して前側脚部3が保持される間隔に開口している。
【0047】
さらに、前側受け溝5Xには、前側脚部3の上端側が下方から垂直挿入され、前側受け溝5Xの両側壁部5Xbによって、前側脚部3の上端側が垂直に挿入した状態に保持される。
【0048】
前側受け溝5Xに挿入した前側脚部3の上端側は、前側受け溝5Xの両側壁部5Xb間に挿通した上下2本のリベットXcによって、前側受け溝5Xの両側壁部5Xb間に固定している。また、リベットXcは、前側脚部3の上端側に対して径方向に挿通している。
すなわち、前側脚部3の上端側を、前側受け溝5Xの両側壁部5Xb間に対して前後方向A及び左右方向Bに対して移動不可に固定している。
【0049】
後側受け溝5Yの両側壁部5Yb間に形成した後側開口部5Yaは、後側脚部4の横幅(或いは外径)よりも幅広に形成され、該後側受け溝5Yの内部及び外部に対して後側脚部4の出し入れが許容され該後側脚部4が前後方向に回動ガイドされる間隔に開口している。
【0050】
さらに、後側受け溝5Yには、後側脚部4の上端側が後方又は下方から挿入され、後側受け溝5Yの両側壁部5Ybによって、後側脚部4の上端側が垂直に挿入した状態に保持される。
【0051】
後側受け溝5Yに挿入した後側脚部4の上端側は、後側受け溝5Yの上端側壁部5Yb間に挿通した1本のリベットYcによって、後側受け溝5Yの上端側両側壁部5Yb間の上端側に枢着している。
そのリベットYcを回動中心として、歩行補助車1の前後方向Aと対応する方向に対して前後回動自在に設けている。
【0052】
すなわち、歩行補助車1を、図6に示す折畳み形態に変形すると、後側脚部4は、リベットYcを回動中心として前方へ回動し、連結部材5の後側受け溝5Yに対して挿入及び保持される。
【0053】
また、歩行補助車1を、図5に示す走行形態に変形すると、後側脚部4は、リベットYcを回動中心として後方へ回動し、連結部材5の後側受け溝5Yから引き出され、図5中の実線で示す所定角度に開角した角度に回動規制される。
【0054】
次に、図10〜図13を用いて、上述の歩行補助車1を走行操作するハンドル部10の構造について説明する。図10は肘掛け台14を取り付けたハンドル部10の平面図、図11[a][b][c]は肘掛け台14を除くハンドル部10の正面図、背面図、右側面図、図12[a][b]は肘掛け台14を除くハンドル部10の平面図、底面図、図13は図11[c]のハンドル部10のD−D線矢視断端面図である。
なお、肘掛け台14を除くハンドル部10の左側面図は、右側面図と対称にあらわれるので、左側面図を省略する。
【0055】
ハンドル部10は、前方に向けて張り出す形状に形成したU字状のハンドル杆11と、ハンドル杆11の前側下部に配置したU字状のブレーキ杆12と、ハンドル杆11の後側下部に配置した左右一対のブレーキレバー13と、ハンドル杆11の両側上面に対して着脱自在に取り付けた左右一対の肘掛け台14と、ハンドル杆11の前端側中央部に取り付けたフック部材30とで構成している。
【0056】
ハンドル杆11及びブレーキ杆12は、歩行補助車1の前方に向けてU字状に張り出した形状に形成している。また、肘掛け台14及びフック部材30が取り付けられる部分を除いたハンドル杆11の外周面は、柔軟性を有するウレタン樹脂で被覆している。
【0057】
また、ハンドル杆11の両端部に形成したグリップ部11aは、該ハンドル杆11の両端部外周面に、利用者の手で把持しやすい大きさ及び形状に形成したウレタン樹脂を装着して構成している。
【0058】
次に、図14〜図18を用いて、上述のハンドル部10に対して着脱される肘掛け台14の構造について説明する。
図14[a][b][c]は肘掛け台14の正面図、背面図、平面図、図15[a][b][c]は肘掛け台14の右側面図、左側面図、底面図、図16は図14[a]の上側可動部材14Mの内部構造を説明する横断底面図、図17[a]は肘掛け台14をハンドル杆11から分離した状態の側面図、図17[b]は肘掛け台14をハンドル杆11に取り付けた状態の側面図、図18は肘掛け台14の取り付け状態及び肘当て部14Cの左右回動状態を説明する幅方向縦断面図である。
【0059】
肘掛け台14は、ハンドル杆11のグリップ部11aよりも前方側外周面に固定した下側支持部14Aと、下側支持部14Aに対して着脱自在に設けた上側支持部14Bと、上側支持部14Bに固定した凹状の肘当て部14Cとで構成している。
【0060】
下側支持部14Aは、車本体2の側部に位置するハンドル杆11のグリップ部11aよりも前方側外周面に固定している。また、下側支持部14Aの下部には、ブレーキ杆12及びブレーキレバー13が支持されたブレーキ支持部14dを形成している。
【0061】
ブレーキ支持部14dの前側端部には、ブレーキ杆12の基端部を上下回動自在に枢着している。また、ブレーキ支持部14dの後側端部には、ブレーキレバー13の基端部を上下回動自在に枢着している。
【0062】
さらに、車本体2の側部に位置するブレーキ支持部14dの外側中央面には、横断面T形状の凸部14eを、該ブレーキ支持部14dの外側中央面に沿って上下方向に形成している。
【0063】
また、下側支持部14A(ブレーキ支持部14d)の下端側中央部に形成した孔部14daには、中空断面形状に形成した丸形状の支柱17の上端部を挿入して、リベット5Xcにて固定している(図18参照)。
これにより、支柱17を、下側支持部14Aの下端部に対して歩行補助車1の後側斜め上方から前側斜め下方に向けて傾いた角度に垂設している。
【0064】
下側支持部14Aの下端部より下方に露出した支柱17の外周面には、丸形状の孔部17aを支柱17の径方向に貫通して形成するとともに、該支柱17の長手方向に対して所定間隔を隔てて複数配列している。また、下側支持部14Aに垂設した支柱17は、連結部材5の支持孔5aに対して上下動可能に挿入している。
【0065】
つまり、ハンドル杆11を把持して、支柱17全長を支持孔5aに沿って上下動するとともに、連結部材5の上端側外面に取り付けた調節ネジ5Nを、支柱17に形成した所望する位置の孔部17aに係合して、支持孔5a上端より上方に突出される支柱17の高さを調節する。
これにより、ハンドル部10を、利用者の身長に応じて所望する高さに伸縮調節することができる。
【0066】
上側支持部14Bは、肘当て部14Cの下面に固定した上側可動部材14Mと、上側可動部材14Mの一側端部に連結した下側連結部材14Nとで構成している。
車本体2の側部に位置する上側可動部材14Mの下面側端部には、下側連結部材14Nの上端部を、例えばリベットやネジ等の連結手段にて左右回動自在に連結している。
【0067】
すなわち、肘当て部14Cを、図18中の実線で示す肘当て姿勢に回動すると、上側可動部材14Mの下面側凹面部が、下側連結部材14Nの上端側外周面に当接し、肘当て部14Cがハンドル杆11上に回動した水平姿勢に回動規制される。
【0068】
また、肘当て部14Cを、図18中の仮想線で示す起立姿勢に回動すると、上側可動部材14Mの下面側縁部に、下側連結部材14Nの上端側縁部が当接し、肘当て部14Cがハンドル杆11の外側に回動した起立姿勢に回動規制される。
【0069】
肘当て部14Cは、利用者の肘部が当てやすく、該肘部が安定した状態に受け止められる大きさ及び形状に柔軟性を有するウレタン樹脂で形成している。また、肘部が当てられる上面側肘当て面は、中央部から両側部に向けて徐々に高くなる滑らか凹状曲面に形成している。
【0070】
これにより、利用者の肘部を肘当て部14Cに当てた際、利用者の肘部が肘当て部14Cの上面側肘当て面にホールドされ、利用者の肘部が肘当て部14Cからズレ落ちることを防止できる。
なお、肘当て部14Cを、例えばウレタン樹脂等のクッション材の外面に、柔軟性を有するカバーを被覆して構成するもよい。
【0071】
前述の下側連結部材14Nには、ブレーキ支持部14dの凸部14eと係合する横断アリ溝形状の凹部14fを上下方向に形成している。また、凹部14fの下端部は、下方に向けて開口している。
【0072】
すなわち、利用者の左右肘部を、左右一対の肘掛け台14の肘当て部14Cに当てる場合、下側連結部材14Nの凹部14fを、ブレーキ支持部14dの凸部14eに上方から係合して、上側支持部14Bを下側支持部14Aに取り付ける。
【0073】
これにより、利用者の左右肘部を、ハンドル杆11に取り付けた左右一対の肘掛け台14の肘当て部14Cに当てて身体を支えるので、利用者の足や腰等に与える負担を軽減することができる。
【0074】
走行中において、利用者が歩行補助車1の座部2Aに腰掛ける場合、左右の肘当て部14Cを、上側支持部14Bと下側支持部14Aの枢着部を中心として、ハンドル杆11の外側へ回動し、図18中の仮想線で示す起立姿勢に回動規制する。
これにより、利用者が座部2Aに腰掛ける際、左右の肘当て部14Cが邪魔になることがなく、腰掛けたり、立ち上がったりする動作が何等支障なく行える。
【0075】
凸部14eの外面側中央部には、先端部が滑らかな半球形状に形成されたロックピン14gを出没自在に保持している。また、凸部14eの外面側中央部と対向する凹部14fの内面側中央部には、上述のロックピン14gの係合が許容されるロック孔14hを厚み方向に貫通して形成している。
【0076】
さらに、ロックピン14gの後端側には、コイルスプリング14iを圧縮装填しており、ロックピン14gを、コイルスプリング14iの復元力により突出する方向に付勢している。
すなわち、凹部14fと凸部14eを係合し、ロックピン14gをロック孔14hに係合すれば、左右の肘掛け台14をハンドル杆11に固定することができる。
【0077】
また、肘掛け台14をハンドル杆11から取り外す場合、コイルスプリング14iに抗して、ロックピン14gとロック孔14hとの係合を解除し、上側支持部14Bを持ち上げて下側支持部14Aから分離すれば、肘掛け台14をハンドル杆11から取り外すことができる。
【0078】
前述の上側可動部材14Mは、肘当て部14Cの下面側に固定した板状の上側部材15と、該上側部材15の下面側に配置した下側部材16とで構成している。
なお、車本体2の側部に位置する下側部材16の下面側端部には、下側連結部材14Nの上端部を、例えばリベットやネジ等の連結手段にて左右回動自在に連結している。
【0079】
上側部材15及び下側部材16は、車本体2の内側に位置する部材15,16の前側角隅部を1本の支軸18にて水平回動自在に連結している。また、車本体2の外側に位置する上側部材15の後側角隅部に垂設したガイド軸19を、下側部材16の後側角隅部に形成した支軸18を中心とする円弧状のガイド孔20に挿通している。
【0080】
車本体2の内側に位置する部材15,16の後側角隅部間には、肘掛け台14の角度を調節するための角度調節レバー23を水平回動自在に取り付けている。
角度調節レバー23は、円弧状のガイド孔22が形成された基端部を、下側部材16の後側外壁部に形成した開口部16aより該下側部材16内に挿入するとともに、該基端部のガイド孔22に、上側部材15の後側角隅部に垂設したガイド軸21を挿通して、ガイド軸21を中心として水平回動自在に枢着している。
【0081】
開口部16aより外側に突出した角度調節レバー23の遊端側には、該角度調節レバー23を回動操作するためのハンドル部23bを形成している。また、角度調節レバー23の前側端部には、開口部16aの前側内壁部と対向して凸部23aを突出している。
【0082】
その凸部23aと対向する開口部16aの前側内壁部には、凸部23aが係合される凹部16bを、支軸18を中心とする円周上に2箇所形成している。また、2箇所の凹部16bは、支軸18を中心として10度ずつ変位した角度位置に配置している。
【0083】
さらに、角度調節レバー23は、ガイド軸21に巻回したコイルバネ24の復元力によって、角度調節レバー23の凸部23aが開口部16aの凹部16b対して係合される方向に回動付勢している。
【0084】
肘掛け台14の角度を可変調節する場合、角度調節レバー23のハンドル部23bを指先で摘んだ後、支軸18を中心として、コイルバネ24の復元力に抗して後方側に向けて回動操作し、角度調節レバー23の凸部23aを下側部材16の凹部16bから抜き取る。
【0085】
これにより、肘掛け台14の固定が解除され、支軸18を中心として、図10及び図19の実線で示す角度あるいは仮想線で示す角度に回動することができ、利用者の両肘部を掛けるのに適した角度に回動調節できる。
【0086】
次に、肘掛け台14の角度に固定する場合、角度調節レバー23のハンドル部23bから指先を離すと、角度調節レバー23が、支軸18を中心として、コイルバネ24の復元力によって前方側に向けて回動操作し、角度調節レバー23の凸部23aが開口部16aの凹部16bに係合する。
【0087】
すなわち、角度調節レバー23の凸部23aを下側部材16の内側凹部16b又は外側凹部16bのいずれか一方に係合することにより、左右の肘掛け台14を、内向き角度と外向き角度の2段階に角度θを可変調節することができる。
【0088】
また、左右の肘掛け台14の開角間隔は、例えば43.7cmの幅狭角度と、49.2cmの幅広角度とに可変調節することができる。
この結果、左右の肘掛け台14を、利用者の両肘部を掛けるのに適した角度に水平回動調節することができる。
【0089】
次に、図19を用いて、上述のハンドル杆11に取り付けたフック部材30の構造について説明する。図19[a][b][c]は肘掛け台14を除くハンドル部10の側面図であり、図19[a]はブレーキ杆12をフック部材30の最上段に引っ掛けた状態の側面図、図19[b]はブレーキ杆12をフック部材30の中段に引っ掛けた状態の側面図、図19[c]はブレーキ杆12をフック部材30の最下段に引っ掛けた状態の側面図である。
【0090】
フック部材30は、ハンドル杆11の中央部外周面に対して前後回動自在に取り付けられるフック本体30aと、フック本体30aの遊端側に取り付けられブレーキ杆12の遊端側を規制する杆掛け部材31と、該フック本体30aの遊端側に対して杆掛け部材31を固定するネジ部材32とで構成している。
【0091】
フック本体30aの基端側には、ハンドル杆11の中央部外周面に対して係止される側面から見てC字状の係止部30bを形成している。
フック本体30aの基端側から遊端側に至る部分には、ブレーキ杆12の遊端側が引っ掛けられる杆掛け部30c,30dと杆掛け部材31とを設けている。
【0092】
フック本体30aの遊端側には、側面から見てU字状の杆掛け部30cを形成している。また、杆掛け部30cより上位でフック本体30aの基端側に寄った部分には、ブレーキ杆12の遊端側が上段位置に規制される杆掛け部30dを形成している。
【0093】
杆掛け部30cの内側対向面は、ブレーキ杆12の遊端側の引っ掛けが許容される間隔に隔てられ、フック本体30aの基端側に向けて開放している。
また、杆掛け部30cの内側対向面は、杆掛け部材31の保持が許容される間隔を隔てて平行に形成するとともに、該杆掛け部材31の両端面に形成した凸部31eが係止される凹部30eを、フック本体30aの基端側と遊端側とに寄って該フック本体30aの長手方向に対して所定間隔を隔てて設定した上下位置に2箇所形成している。
【0094】
次に、ブレーキ杆12をフック部材30に引っ掛けて、歩行補助車1に対して制動を掛ける方法を説明する。
先ず、ブレーキ杆12をフック部材30の杆掛け部30dに引っ掛ける場合、ブレーキ杆12の遊端側を図19[a]に示す位置より上方に引き上げた後、フック部材30をブレーキ杆12の遊端側が係止される位置に回動する。
【0095】
この状態で、ブレーキ杆12の遊端側をフック部材30の杆掛け部30dに引っ掛けると、該ブレーキ杆12が図19[a]に示す上段位置の引き上げ角度に回動規制され、チューブ9dの上端より引き出される線条体9eの引き出し量が最長となる。
【0096】
これにより、制動機構9のコイルスプリング9cに蓄積される復元力が最大となるので、後側車輪7に付与される制動力を最も強くすることができる。
この結果、歩行補助車1が完全に走行停止させておくことができる。また、歩行補助車1を停車した場所が傾斜していても、走行停止した状態を維持することが可能である。
【0097】
次に、ブレーキ杆12の遊端側を杆掛け部30cに引っ掛ける場合、予めネジ部材32による杆掛け部材31の固定を解除し、杆掛け部材31を、フック本体30aの杆掛け部30cから抜き取っておく。
【0098】
この場合、ブレーキ杆12の遊端側を杆掛け部30cに引っ掛けて、該ブレーキ杆12を図19[c]に示す下段位置の引き上げ角度に回動規制した際、制動機構9のコイルスプリング9cに蓄積された復元力によって、線条体9eがチューブ9d内に収容され、チューブ9dの上端より引き出される線条体9eの引き出し量が最短となる。
【0099】
これにより、コイルスプリング9cに蓄積される復元力が最小となるので、後側車輪7に付与される制動力を、歩行能力が低い利用者に応じて最も弱い状態に調節することができる。
この結果、歩行補助車1を利用者の歩行能力に応じた速度で移動することが可能で、車自体が勝手に移動しない程度に制動を掛けることができる。
【0100】
次に、杆掛け部材31を、フック本体30aの杆掛け部30c内に嵌め込み、該杆掛け部30c内の上段側凹部30eに係止してネジ部材32で固定した後、ブレーキ杆12の遊端側を杆掛け部30c内の杆掛け部材31に引っ掛けると、該ブレーキ杆12が図19[b]に示す中段位置の引き上げ角度に回動規制され、チューブ9dの上端より引き出される線条体9eの引き出し量が上述の最長よりも短く、最短よりも長い中程度の長さとなる。
【0101】
これにより、制動機構9のコイルスプリング9cに蓄積される復元力が上述の最大よりも弱くなるので、後側車輪7に付与される制動力を、歩行能力が中程度の利用者に応じた状態に調節することができる。
この結果、歩行補助車1を、歩行能力が中程度の利用者に応じた速度で走行移動することができる。
【0102】
次に、杆掛け部材31を、杆掛け部30c内の下段側凹部30eに係止してネジ部材32で固定した場合、ブレーキ杆12の遊端側を杆掛け部30c内の杆掛け部材31上に引っ掛けると、該ブレーキ杆12が図19[b]に示す中段位置よりも低い位置の引き上げ角度に回動規制され、チューブ9dの上端より引き出される線条体9eの引き出し量が上述の中程度よりも短くなる。
【0103】
これにより、制動機構9のコイルスプリング9cに蓄積される復元力が上述の中程度よりも弱くなるので、後側車輪7に付与される制動力を、歩行能力が中程度以下の利用者に応じた状態に弱くすることができる。
この結果、歩行補助車1を、歩行能力が中程度以下の利用者に応じた速度で走行移動することができる。
【0104】
次に、ロック部材30による制動を解除する場合、制動機構9のコイルスプリング9cに抗して、ブレーキ杆12の遊端側を上方へ引き上げ、フック部材30の杆掛け部30cから抜き取った後、フック部材30を前方へ回動してロック解除する。
【0105】
すると、ブレーキ杆12が、線条体9e及びチューブ9dを介して、コイルスプリング9cに蓄積された復元力によって、図1中実線で示す制動状態から図中仮想線で示す制動解除状態へ回動するとともに、制動部材9aの制動片9bが上方へ回動して、後側車輪7の周面から離間される。
これにより、後側車輪7に対する制動が解除され、フリー回転可能な状態となるので、歩行補助車1を、利用者の手で軽く押すだけで走行移動することができる。
【0106】
以上のように、前後脚部3,4を連結する連結部材5の支持孔5a上端より上方に突出される支柱17の高さを調節ネジ5Nにて調節するので、歩行補助車1のフレーム形状によってハンドル部10の高さ調節領域が制限されることがなく、利用者の身長に応じた高さに調節することができる。
【0107】
すなわち、ハンドル部10の支柱17を、前後脚部3,4の間で連結部材5の支持孔5a下端より下方に突出することにより、連結部材5の支持孔5a直下に、支柱17の突出が許容される空間部を確保することができる。
【0108】
これにより、フレーム形状によってハンドル部10の伸縮高さが制限されることがなく、従来例のようにハンドル部のハンドルベースを前輪用フレームに挿入する構造よりも、ハンドル部10の高さ調節領域を大きくすることができる。
【0109】
この結果、ハンドル部10を、利用者の身長に応じて操作しやすい高さであって、利用者の身体を支えたり、歩行を補助するのに最適な高さに調節することができる。また、前後脚部3,4を所望する形状(例えば滑らかな曲線形状)に形成することができ、補助車全体のデザイン性が向上する。
【0110】
さらに、前後脚部3,4の上端側を連結部材5に対してガタ付きなく固定又は枢着することができるので、ハンドル部10の支柱17を、連結部材5の支持孔5aにより上下方向に対して安定した状態に支持することができる。
【0111】
この結果、図示しない溶接手段にて溶接することなく、連結部材5及びリベット5Xc,5Ycによって前後脚部3,4を強固に連結することができるとともに、連結部材5の支持孔5aによってハンドル部10の支柱17を真っ直ぐにガイドすることができる。
つまり、前後脚部3,4と連結部材5の連結部分、支持孔5aと支柱17の間にガタ付きが生じにくく、歩行補助車1全体の構造的強度が向上する。かつ、歩行補助車1全体の耐久性が向上するので、利用者の歩行を補助する目的、用途に長期に亘り安定して寄与することがきる。
【0112】
また、ブレーキ部10を構成するブレーキ杆12の遊端側を、ハンドル杆11に取り付けたフック部材30の杆掛け部30c,30d又は杆掛け部材31に引っ掛けて、ブレーキ杆12の制動操作と連動する制動機構9の制動部材9aによって後側車輪7に付与される制動力を調節する。
【0113】
これにより、歩行補助車1を、利用者の歩行能力に応じた速度で走行することができ、利用者の足や腰等に与える負担を小さくして、歩行時の疲労を軽減することができるとともに、歩行及び走行がスムースに行える。
【0114】
すなわち、ブレーキ杆12の遊端側をフック部材30の杆掛け部30c,30d又は杆掛け部材31に引っ掛けて、ブレーキ杆12を所定の引き上げ角度に回動規制するので、後側車輪7に付与される制動力が常時一定することになる。
【0115】
このため、走行中において、後側車輪7に付与される制動力が変動することがなく一定しているので、利用者の歩行能力に応じた速度で安定走行することができ、歩行及び走行がスムースに行える。
【0116】
また、ブレーキ杆12の引き上げ角度に応じて、後側車輪7に付与される制動力が段階的に変化するので、利用者の歩行能力に応じて、後側車輪7に付与される制動力を段階的に可変調節することができる。
【0117】
次に、図20を用いて、透光性を有するプラスチック製のトレイ40をハンドル杆11に取り付けた他の例を説明する。図20[a][b]はトレイ40をハンドル杆11に取り付けた平面図、正面図である。
【0118】
トレイ40は、ハンドル杆11に取り付けたトレイ支持枠41によって支持され、ハンドル杆11の内側で該ハンドル杆11より下方に配置している。また、トレイ40は、ハンドル杆11の内側下方に対して取り付けが許容される大きさ及び形状に形成され、ブレーキ杆12の引き上げ操作が高さに取り付けられる。
【0119】
トレイ支持枠41の後側両端部は、ハンドル杆11のグリップ部11aと肘掛け台14の下側支持部14Aとの間に係止している。また、トレイ支持枠41の前側端部は、ハンドル杆11に取り付けたフック部材30の両側部に係止している。
【0120】
つまり、透光性を有するトレイ40をハンドル杆11に取り付けても、走行時において、トレイ40を通して下方の目視が可能であるため、利用者が足元を目視確認しながら歩行することができ、歩行が何等支障なく行える。
また、トレイ40の上に、例えば財布や眼鏡、携帯電話等の物品を置いておくことができるので、必要な物品を手で保持して即使用することができ、小物類を置いておくのに便利である。
【0121】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明のブレーキ機構は、実施形態の制動機構9及びブレーキ部30に対応し、
以下同様に、
杆掛け部は、杆掛け部30c,30d及び杆掛け部材31に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0122】
実施形態では、ブレーキ杆12の遊端側を、フック部材30の杆掛け部30c,30d又は杆掛け部材31に引っ掛けて、後側車輪7に付与される制動力を調節するが、例えばフック部材30を長手方向に伸縮調節して、後側車輪7に付与される制動力を調節してもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…歩行補助車
2…車本体
2A…座部
3…前側脚部
4…後側脚部
5…連結部材
5a…支持孔
5N…調節ネジ
5X…前側受け溝
5Xa…前側開口部
5Xb…壁部
5Xc…リベット
5Y…後側受け溝
5Ya…前側開口部
5Yb…壁部
5Yc…リベット
6…前側車輪
7…後側車輪
8…首振り機構
9…制動機構
10…ハンドル部
11…ハンドル杆
12…ブレーキ杆
13…ブレーキレバー
14…肘掛け台
14C…肘当て部
14d…ブレーキ支持部
17…支柱
17a…孔部
30…フック部材
30c,30d…杆掛け部
31…杆掛け部材
40…トレイ
41…トレイ支持枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に向けてU字状に張り出す形状を有するハンドル杆の両端側下部に固定したブレーキ支持部に、該ハンドル杆の前側下部に配置したブレーキ杆の基端部を上下回動自在に枢着し、ブレーキ杆の制動操作と連動する制動手段にて車輪の回転を制動する歩行補助車のブレーキ機構であって、
前記ハンドル杆の前端側に、前記ブレーキ杆の遊端側が係止され前記車輪に対して制動が付与される引き上げ角度に回動規制するフック部材を前後回動自在に取り付け、
前記フック部材の基端側から遊端側に至る部分に、前記ブレーキ杆の遊端側が係止される複数の杆掛け部を該フック部材の長手方向に対して所定間隔を隔てて設けた
歩行補助車のブレーキ機構。
【請求項2】
前記杆掛け部の位置を、前記フック部材の長手方向に対して所定間隔を隔てて設定した複数の位置に移動調節可能に設けた
請求項1に記載の歩行補助車のブレーキ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−78425(P2013−78425A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219249(P2011−219249)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(502020168)ユーバ産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】