説明

歪みを減少させるためのテンプレート上に成長させたIII族窒化物光放出デバイス

【課題】III族窒化物光放出デバイスにおいて、光放出層を含有するデバイス層は、デバイス中、特に光放出層中の歪みを減少させるように設計されたテンプレートの上に成長する。光放出デバイス中の歪みを減少させることでデバイスの性能を改良する。
【解決手段】デバイスは、基板1上の第1の実質的単一結晶層2と、第2の実質的単一結晶層6と、第1の実質的単一結晶層2と第2の実質的単一結晶層6との間に配置された第3の実質的単一結晶層5と、第1の実質的単一結晶層2と第2の実質的単一結晶層6との間に配置されるインジウムを含有する非単一結晶層3とを含有するIII族窒化物構造を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体光放出デバイスに対する成長技法およびデバイス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LEDs)、共振空洞発光ダイオード(RCLEDs)、垂直キャビティレーザーダイオード(VCSELs)、または端面発光レーザを含む半導体光放出デバイスは現在入手可能な最も効率的な光源の一つである。UV、可視、および、たぶん赤外スペクトルの全域で動作可能な高輝度光放出デバイスの製造のために現在関心が向けられている材料系には、III−V族半導体が含まれ、特に、ガリウム、アルミニウム、インジウム、および窒素の二元、三元、および四元合金は、III族窒化物材料とも称される。一般に、III族窒化物光放出デバイスは、異なる組成およびドーパント濃度の半導体層のスタックをサファイア、シリコン炭化物、III族窒化物、または他の好適な基板上に有機金属化学気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、または他のエピタキシャル技法を用いてエピタキシャル成長させることによって製造される。スタックは、多くの場合、基板全体を覆うように形成される、例えばSiによってドープされた一つ以上のn型層、n型層(単数または複数)を覆うように形成される活性領域中の一つ以上の光放出層、および、活性領域を覆うように形成される、例えばMgによってドープされた一つ以上のp型層を含有する。n型領域およびp型領域に電気コンタクトが形成される。これらのIII族窒化物材料は、他のオプトエレクトロニクスデバイスおよび電界効果トランジスタ(FETs)などの電子デバイスにも、および検出器にも関心が向けられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の実施形態では、III族窒化物デバイスの光放出層を含有するデバイス層を、デバイス中、特に光放出層中の歪みを減少するように設計されたテンプレートの上に成長させる。この歪みは以下のように定義されてもよい。所与の層はその層と同一組成の自立材料の格子定数に対応するバルクの格子定数abulkと構造中で成長したその層の格子定数に対応する面内格子定数a面内を有する。層中の歪み量は特定の層を形成する材料の面内格子定数とデバイス中の該層のバルクの格子定数との差異をバルクの格子定数で除算したものである。
【0004】
光放出デバイス中の歪みを減少させることはデバイスの性能を改良する。該テンプレートは、従来技術で成長させたテンプレートから得られる格子定数の範囲を超えて、光放出層中の格子定数を膨張させる。本発明のいくつかの実施形態では、光放出層中の歪み量は1%未満である。
【0005】
いくつかの実施形態では、テンプレートは、直接基板上に成長したGaNなどのインジウムを含有しない核生成層とインジウムを含有しない層の上に成長したInGaNなどのインジウム含有層との低温で成長した二つの層を含有する。両方の層とも非単一結晶層であってもよい。いくつかの実施形態では、GaN層などの単一結晶層を、核生成層とインジウム含有層との間で成長させてもよい。いくつかの実施形態では、GaN、InGaN、またはAlInGaNなどの単一結晶層を低温インジウム含有層の上に成長させてもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、テンプレートはさらに複数の層スタックまたは傾斜領域を含有してもよく、または熱アニ−ルまたは熱サイクル成長ステップを含むプロセスによって形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、従来技術によるデバイスの一部の横断面図である。
【図2】図2は、従来技術の低温核生成層の後に成長した低温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図3】図3は、複数の低温核生成層の上に成長した低温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図4】図4は、従来技術の低温核生成層の上に成長した複数の低温層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図5】図5は、2セット以上の低温核生成層および低温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図6】図6は、複数の低温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図7】図7は、アニーリングおよびデバイス層成長後の図6の構造の横断面図である。
【図8】図8は、高温GaN層の後に成長した低温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図9】図9は、低温InGaN層の後に成長した高温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図10】図10は、高温GaN層の後に成長した低温InGaN層の後に成長した高温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図11】図11は、二つの高温InGaN層の間に配置された低温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図12】図12は、低温InGaN層の上に成長した二つの高温InGaN層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図13】図13は、熱サイクル成長によって成長した複数のインジウムリッチおよびインジウムプア層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図14】図14は、低温層および傾斜組成層を含有するデバイスの一部の横断面図である。
【図15】図15は、GaN核生成層および厚い高温GaN層を含有するいくつかのデバイス、および低温InGaN層および厚い高温GaN層を含有するいくつかのデバイスに対してa−格子定数の関数としてc−格子定数をプロットした図である。
【図16】図16は、いくつかのデバイスに対してc−格子定数およびa−格子定数をプロットした図である。
【図17】図17は、サファイアなどのウルツ鉱型構造のいくつかの主結晶面を示す図である。
【図18】図18は、成長基板が除去されたフリップチップ光放出デバイスの一部を示す図である。
【図19】図19は、パッケージされた光放出デバイスの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体光放出デバイスの性能は、デバイスに供給される電子に対して該デバイスから抽出される光子の数を測定する外部量子効率を測定することによって評価されてもよい。従来技術のIII族窒化物光放出デバイスに加えられる電流密度が増加すると、デバイスの外部量子効率は最初は増加し、次に減少する。電流密度がゼロを超えて増加するにつれて、外部量子効率は増加し、所与の電流密度(たとえば、あるデバイスでは約10A/cm2)におけるピークに達する。電流密度がピークを超えて増加するにつれて、外部量子効率は最初は急速に下がり、次に、より高い(たとえば、あるデバイスでは200A/cm2を超える)電流密度では徐々に減少する。光放出領域におけるInNの組成が増加するにつれて、および、放射光の波長が増加するにつれて、デバイスの量子効率も減少する。
【0009】
高電流密度における量子効率の降下を減少または逆転させるための一つの手法は、より厚い光放出層を形成することである。しかしながら、厚いIII族窒化物光放出層の成長は、III族窒化物デバイス層中の歪みのために難しい。また、より長い波長での放射を得るためには、より高いInN組成を取り入れることが望まれる。しかしながら、高いInN組成III族窒化物光放出層を成長させることはIII族窒化物デバイス層中の歪みのために難しい。
【0010】
天然のIII族窒化物成長基板は通常は高価であり、広く入手可能ではなく、また市販デバイスの成長には実用的ではないために、III族窒化物デバイスは多くの場合サファイア(Al23)またはSiC基板上に成長させる。当該非天然の基板は、当該基板上で成長するIII族窒化物デバイス層のバルクの格子定数とは異なる格子定数、異なる熱膨張係数、および、デバイス層よりも異なる化学的および構造的な特性を有し、結果としてデバイス層中の歪み、および、デバイス層と基板との間での化学的および構造的な不整合を生じる。この構造的な不整合の例には、たとえば、GaNの結晶構造とその上でGaNが成長するサファイア基板の結晶構造との間での面内回転が含まれる。
【0011】
本明細書で使用する場合、“面内”格子定数はデバイス中の層の実際の格子定数を参照し、および“バルク”格子定数は所与の組成の緩和した、自立材料の格子定数を参照する。層中の歪みの量は式(1)で定義される。
歪み=ε=(a面内−abulk)/abulk (1)
【0012】
式(1)中の歪み、ε、は正または負であってもよく、すなわち、ε>0またはε<0であることに留意されたい。歪みの無いフィルムでは、a面内=abulkなので、式(1)では、ε=0である。フィルムが引張歪み、すなわち引張力を受けると、ε>0であり、フィルムが圧縮歪み、すなわち圧縮を受けるとε<0である。引張歪みの例には、歪んでいないGaNの上に成長した歪んだAlGaNフィルム、または歪んでいないInGaNの上に成長した歪んだGaNフィルムが含まれる。両方の場合とも、歪んだフィルムのバルクの格子定数はそれが上で成長した無歪み層のバルクの格子定数よりも小さいので、歪んだフィルムの面内格子定数は、無歪み層の格子定数に合致するように伸び、フィルムは前記のように引張力のもとにあるので、式(1)ではε>0である。圧縮歪みの例には無歪みGaNの上に成長した歪んだInGaNフィルム、または無歪みAlGaNの上に成長した歪んだGaNフィルムが含まれる。両方の場合とも、歪んだフィルムのバルクの格子定数はそれが上で成長した無歪み層のバルクの格子定数よりも大きいので、歪んだフィルムの面内格子定数は無歪み層の格子定数に合致するよう圧縮され、フィルムは前記のように圧縮を受けるので式(1)ではε<0である。
【0013】
引張フィルムでは、歪みは、面内格子定数を大きくするために原子をお互いに引き離す役割を果たす。フィルムは、引張歪みに対してクラッキングで対応でき、フィルム中の歪みを減少させるが、フィルムの構造的および電気的完全性を損ない、この引張歪みは多くの場合好ましくない。圧縮フィルムでは、歪みは原子をお互いに押す役割を果たし、これはInGaNフィルム中にインジウム等の大きな原子が取り込まれることを減少させる効果があり、たとえば、InGaN LED中のInGaN活性層の材料品質を悪くしてしまうことになる。多くの場合、引張歪みおよび圧縮歪みの両方ともに好ましくなく、デバイスのさまざまな層の引張歪みまたは圧縮歪みを減少させることは有益である。このような場合に、歪みの大きさの絶対値を式(2)で定義することは非常に便利である。本明細書で使用する場合、“歪み”という用語は式(2)で定義される絶対値、つまり歪みの大きさを意味すると理解されるべきである。
歪み=│ε│=│(a面内−abulk)│/abulk (2)
【0014】
III族窒化物デバイスをAl23の上に従来技術で成長させた場合、基板上に成長した第1の構造は、通常、約3.189Å以下の面内格子定数を持つGaNテンプレート層である。GaNテンプレートは、InGaN光放出層を含む光放出領域の格子定数テンプレートとしての機能を果たし、テンプレート層の上方に成長したデバイス層のすべてに対して格子定数を設定する。InGaNのバルクの格子定数は従来技術のGaNテンプレートの面内格子定数よりも大きいので、従来技術のGaNテンプレートの上に成長した場合には光放出層は圧縮され歪んでいる。たとえば、約450nmの光を放出するように構成された光放出層は、3.189Åの格子定数のGaNと比較して、3.242Åのバルクの格子定数を持つ組成であるIn0.16Ga0.84N組成を有していてもよい。光放出層中のInN組成が増加し、デバイスがより長い波長で光を放出するように設計されると、光放出層中の圧縮歪みも増加する。
【0015】
歪んだ層の厚さが限界値を超えて増加すると、参照によって本明細書に援用する「Proceedings of SPIE」,6133巻,613308−1−613308−10頁(2006)Tomiyaらに記載されているように、歪みに関連しているエネルギーを減少させるために、層中の転位または他の欠陥を形成する。構造的な欠陥はデバイスの量子効率を大幅に減少させることができる非放出再結合中心と関連づけられる。結果的に、光放出層の厚さはこの限界厚さ以下を維持しなければならない。InN組成およびピーク波長が増加するにしたがって、光放出層中の歪みは増加し、従って光放出層の限界厚さは薄くなる。
【0016】
たとえ光放出層の厚さが限界厚さ未満を維持しても、参照によって本明細書に援用する「Physica Status Solidi」,B240巻,273−284頁(2003)Ponceらに記載されているように、InGaN合金は、ある組成および温度で熱力学的に不安定である。たとえば、一般にInGaN成長のために使用される温度では、InGaNは、組成が均一なInGaN層が平均的なInN組成よりも高い領域および平均的なInN組成物よりも低い領域を含む層に変わるスピノーダル分解を示す可能性がある。InGaN光放出層中のスピノーダル分解は非放出再結合中心を形成し、デバイスの量子効率を減少させる可能性がある、内部吸収が増加する可能性がある。スピノーダル分解の問題は光放出層の厚さが増加するにしたがって、光放出層中の平均InN組成が増加するにしたがって、および/または光放出層中の歪みが増加するにしたがって悪化することである。たとえば、光放出層がGaNテンプレート上に成長し、550nmで光を放出するように構成された場合に、InN組成が20%を超え、好ましい厚さが30Åを超えた組み合わせにおいて、スピノーダル分解の制限を超えてしまう。
【0017】
したがって、上述したように、電流密度が増加するにしたがって発生する外部量子効率の降下を減少または取り除くために光放出層の厚さを厚くすることが望まれ、より長い発光波長を得るためにInN組成を増加させることが望まれる。両方の場合ともに、より厚いまたはより高い組成の光放出層を成長させるために、限界厚さを増加させることによる許容範囲の欠陥数を維持するために、および、スピノーダル分解の発生が無く成長できる層の厚さを厚くするために、光放出層中の歪みを減少させることが必要である。本発明の実施形態では、III族窒化物デバイスのデバイス層中、特に光放出層中の歪みを減少させるように設計されている。
【0018】
図1では基板1上で従来技術の核生成層2が成長したデバイスを図解する。一つ以上の高温層3および5が核生成層2の上に成長してもよく、デバイス層6が高温層3または5の上に成長してもよい。III族窒化物光放出層中の歪みを減少させる以前の方法には、図1に図解され、米国特許第6,489,636号に記載されているように合体したGaN領域3の上に高温で、実質的に単一結晶のInGaN領域5を成長させること、または、図1に図解され、英国特許出願GB2338107A号に記載されているようにサファイア基板上に直接インジウム含有核生成層2を成長させることが含まれる。しかしながら、合体したGaNの上で成長したInGaN領域は、一般に、効率的に緩和しないので、歪みおよび関連した欠陥の減少は限られたものとなり、および、サファイア上に直接インジウム含有核生成層を成長させることを含む英国特許出願GB2338107A号に記載されたアプローチは、一般に、高転位密度、表面の粗さ、および、高濃度の炭素および酸素等の不純物を含む、デバイス層中の一つ以上の問題を結果として生じる。したがって、デバイス層中の歪みばかりではなく、転位密度および表面粗さをも制御することが必要である。
【0019】
図1に示すような従来技術のGaNテンプレート中の歪みを制御するもうひとつの方法は、参照によって本明細書に援用する「Applied Physics Letters」,78巻,1976−1978頁(2001)Bottcherらに記載されているように、GaNテンプレート中の転位密度を制御することである。このアプローチでは、貫通転位密度(TDD)を増加させてa−格子定数を増加させる。a−格子定数と貫通転位密度との正確な関係は、Si濃度、成長温度、およびテンプレート厚さを含む多くの要因に依存するが、従来技術のGaNテンプレート中のa−格子定数と貫通転位密度との近似関係は以下のように記述される。
面内=3.1832+9.578×10-13*TDD (3)
【0020】
式(3)から、面内a−格子定数の3.189Åは貫通転位密度のおよそ6×109cm-2相当することに留意されたい。このa−格子定数は、異なるSi濃度、異なる成長温度、または異なるテンプレート厚さを使用した低い貫通転移密度で得ることができるが、発明者らは、3.189Åよりも大きいa−格子定数を有する従来技術のGaNテンプレートは、通常、少なくとも2×109cm-2の貫通転位密度を有することを観察した。図1などの従来技術のGaNテンプレート中の貫通転位密度を変えることによって、発明者らはおよそ3.1832Åからおよそ3.1919Åの範囲を超えて、従来技術のGaNテンプレート中の面内a−格子定数を変化させた。
【0021】
貫通転位密度を増加させることは、このように通常は従来技術のGaNテンプレート中のa−格子定数を増加させる点で有効であるが、この方法にはいくつかの欠点がある。たとえば、参照によって本明細書に援用する「Applied Physics Letters」,81巻,1940−1942頁(2002)Koleskeらに記載されているように、転位などの欠陥はIII族窒化物光放出デバイスの外部量子効率を低下させる非放出再結合中心としての役割を果たす。したがって、外部量子効率を増加させるために転位密度を減少させることが望まれる。また、従来技術のGaNテンプレート中の面内a−格子定数がおよそ3.189Åに近づいて超えると、参照によって本明細書に援用する「Journal of Applied Physics」,87巻,7745−7752頁(2000)Romanoらに記載されているように,GaN層は過度の引張歪みによってクラックする傾向がある。したがって、二元組成GaNテンプレートによって規定されるa−格子定数と転位密度との関係を解決することが望まれる。特に、低貫通転位密度テンプレートの組み合わせによる低歪み活性層を得ることは、III族窒化物LEDの外部量子効率を増加させ、波長を長くするための重要な目標である。本発明のいくつかの実施形態では、デバイス層が上で成長したテンプレートでは、面内a−格子定数が3.200Åの大きさで貫通転位密度が2×109cm-2未満の組み合わせの場合には、実質的にクラックが無い。
【0022】
本発明の実施形態では、半導体光放出デバイスのデバイス層は、本明細書でテンプレートと称する構造の上に、デバイス層中の格子定数(したがって歪み)を制御する要素を取り込みながら成長する。デバイス中の格子定数を増加させる構造は、望ましくない表面粗さの増加または貫通転位密度の増加を引き起こす可能性があるので、テンプレートはデバイス層中に、特に光放出領域中に、貫通転位密度および表面粗さを制御する要素をも含んでもよい。テンプレートはテンプレートの上に成長する半導体層の貫通転位密度および格子定数を設定する。テンプレートは、GaNの格子定数から光放出層のバルクの格子定数によりいっそう一致する格子定数への格子定数転位としての機能を果たす。テンプレートによって設定された格子定数は、従来技術のテンプレート上で成長したデバイス中で得られる格子定数よりもデバイス層のバルクの格子定数によりいっそう一致することができ、結果として、従来技術のGaNテンプレート上に成長したデバイスと比較して、許容範囲にある貫通転位密度および表面粗さで、歪みがより小さくなる。
【0023】
前述したデバイス層は、少なくとも一つのn型層と少なくとも一つのP型層との間にサンドイッチされた少なくとも一つの光放出層を含む。異なる組成およびドーパント濃度の追加の層は、n型領域、光放出領域、およびp型領域のぞれぞれに含有されてもよい。たとえば、n型およびp型領域は反対の導電型の層または意図的にドープされていない層、後の成長基板の剥離または基板除去後の半導体構造の薄層化を容易にするように設計された剥離層、および、効率よく光を放出するために光放出領域に対して望まれる特定の光学的または電気的特性のために設計された層を含有してもよい。いくつかの実施形態では、光放出層をサンドイッチするn型層はテンプレートの一部であってもよい。
【0024】
以下に記述される実施形態では、デバイスが青色またはUV光を放出するように、光放出層(単数または複数)中のInN組成は低くてもよく、または、デバイスが緑色またはより長い波長光を放出するように、光放出層(単数または複数)中のInN組成は高くてもよい。いくつかの実施形態では、デバイスは一つ以上の量子井戸光放出層を含有してもよい。複数の量子井戸は、バリア層で分離されていてもよい。たとえば、それぞれの量子井戸は15Åよりも厚くてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、デバイスの光放出領域は、厚さ50Åからおよび600Åの範囲の、一層好ましくは100Åから250Åの範囲の、単一の、厚い光放出層である。最適な厚さは光放出層中の欠陥の数に依存する場合がある。光放出領域中の欠陥の濃度は、好ましくは109cm-2未満に制限され、一層好ましくは108cm-2未満に制限され、一層好ましくは107cm-2未満に制限され、および一層好ましくは106cm-2未満に制限される。
【0026】
いくつかの実施形態では、デバイス中の少なくとも一つの光放出層は、Siなどのドーパントで1×1018cm-3から1×1020cm-3の範囲のドーパント濃度でドープされている。Siドーピングは、光放出層中の歪みをさらに減少させる可能性がある光放出層中の面内a−格子定数に影響を与える場合がある。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、テンプレートは少なくとも一つの低温InGaN層を含有する。参照によって本明細書に援用する「Journal of Crystal Growth」,265巻,434−439頁(2004)BosiおよびFornari、に記載されているように、H2はInGaNフィルム中にインジウムを取り入れることに影響を及ぼすことができることが観察された。成長温度、成長圧力、成長率、およびNH3流量などのさまざまな他のパラメータも、参照によって本明細書に援用する「Journal of Applied Physics」,97巻,013707−1−013707−8頁(2005)Oliverらの一部に記載されているように、InGaNフィルム中にインジウムを取り入れることに影響を及ぼすことができる。従って、可変H2流量がInGaNまたはAlInGaNフィルム中のInN組成を制御する手段として使用される場合もある。したがって、いくつかの実施形態では、テンプレートの成長中に反応器内に流れる一つ以上の可変H2流量、可変N2流量、または可変NH3流量を使用して本明細書に記載されるテンプレートを成長させる。他の実施形態では、テンプレート成長中の可変温度または可変圧力、または可変成長率を使用して、テンプレートを成長させる。他の実施形態では、テンプレート成長中に、可変H2流量、可変N2流量、可変NH3流量、可変温度、可変圧力、または可変成長率のうちの一つ以上の任意の組み合わせを使用してテンプレートを成長させる。
【0028】
図2では、本発明の第1の実施形態を図解する。従来技術の低温核生成層22はサファイア基板20の表面上に直接成長する。核生成層22は、一般に、たとえば、400℃から750℃の範囲の温度で500オングストロームまでの厚さに成長させた、アモルファス、多結晶、または、立方相GaN層などの低品質な非単一結晶層である。
【0029】
第2の層26も核生成層22の上に低温で成長する。低温層26は、たとえば、400℃から750℃の範囲、一層好ましくは450℃から650℃の範囲、一層好ましくは500℃から600℃の範囲の温度で500オングストロームまでの厚さに成長させた、アモルファス、多結晶、または立方相III族窒化物層などの低品質な非単一結晶層であってもよい。いくつかの実施形態では、低温層26は300オングストローム厚未満である。低温層26は、たとえば、InNの組成が0%よりも大きくかつ多くの場合は20%未満、一層好ましくは3%から6%の範囲、一層好ましくは4%から5%の範囲であるInGaN層であってもよい。いくつかの実施形態では、低温層26中のInN組成は小さく、たとえば2%未満である。核生成層22の成長後であって、低温層26の成長前、または、低温層26の成長後、または、低温層26の成長前後の両方で、構造はアニールされてもよい。たとえば、構造は温度950℃から1150℃の範囲で30秒から30分間、通常はH2およびNH3;N2およびNH3;またはH2、N2、およびNH3の雰囲気中でアニールされてもよい。いくつかの実施形態では、Ga、Al、またはIn前駆体は少なくともアニーリングプロセスの一部で取り入れられてもよい。次に、デバイス層10は低温層26の上で成長する。低温層26は、従来技術のGaNテンプレートなどの従来の核生成構造を用いて達成可能な格子定数の範囲を超えて、デバイス層10の格子定数を膨張させることができる。サファイア、またはSiC、または他の基板の上で成長するGaN核生成層はそれらと異なる格子定数を有するが、低温層26が下位層と釣り合って成長しないので格子定数の膨張が発生する。従って、前述したように、低温層26は核生成層22の格子定数からより大きい格子定数に転位する機能を果たす。図2に示すように低温InGaN層26を使用するIII族窒化物デバイスは、たとえば図1に示され、英国特許出願番号GB2338107A号に記述された基板上に直接成長するInN含有核生成層2を使用するIII族窒化物デバイスよりも高い品質に成長することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、UVデバイスのAlGaN光放出領域中の引張歪みを減少させるために、低温層26が核生成層22で設定される格子定数を小さくするように、低温層26はInGaNの代わりにAlGaNまたはAlInGaNから構成されてもよい。当該デバイスの光放出活性層は、たとえば、AlGaNまたはAlInGaNであってもよい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、図2で図解されるデバイスは一つ以上の複数の層スタックを含んでいてもよい。複数の層スタックの例には複数の核生成層22または複数の低温層26が含まれる。たとえば、一つ以上の追加のGaN核生成層は、図3に示すように、基板20とInGaN低温層26の間に配置されてもよい。あるいは、複数のInGaN低温層26は、図4に示すように、核生成層22の後に成長させてもよい。複数の層スタックを有するテンプレートを含むもうひとつのデバイスの例では、GaN低温層22にInGaN低温層26が続く配列は、図5に示すように、一回以上繰り返されてもよい。複数の核生成層または低温層の使用によってデバイス中の貫通転位密度および積層欠陥密度を減少させることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、図4または図5中の複数の低温層26は、図6中の複数の低温層32、34、および36で図解されるように異なるInN組成、または異なる厚さを有していてもよい。図6に示される構造は、図2で図解されるように、従来技術の基板20上に直接、または核生成層22の上に成長してもよい。基板に最も近い低温層である層32は、インジウムの組成が最も大きくてもよく、一方基板から最も遠い低温層である層36は、インジウムの組成が最も小さくてもよい。別の実施形態では、基板に最も近い低温層である層32は、インジウムの組成が最も小さくてもよく、一方基板から最も遠い低温層である層36は、インジウムの組成が最も大きくてもよい。あるいは、どのような任意の低温層の配列が使用されてもよい。GaNキャップ層38は低温層の上端に形成されてもよい。それぞれの低温層は同一の厚さである必要はない。たとえば、インジウム組成が小さい層は、より高いインジウム組成の層よりも厚くてもよい。図6に示される三つの低温層よりも多いまたは少ない層が使用されてもよい。さらに、図6に図解される低温層の複数のスタックはデバイス中に含まれていてもよい。これらの層のそれぞれの厚さは10オングストロームから1000オングストロームの範囲またはそれよりも厚くてもよい。
【0033】
図6に示される構造では一つ以上の層32、34、36、または38の成長後に一回以上のアニールをしてもよい。このアニーリングプロセスによってInGaN低温層32、34、36、およびGaNキャップ層38は、その上にデバイス層10が成長する図7に示す単一のInGaN領域35を形成するように混ざり合ってもよい。図6中のGaNキャップ層38は、アニ−ル中に、InGaN低温層32、34、および36から出されたInNの量を減少させてもよい。アニ−ル条件は最終的な構造が滑らかな表面を有し欠陥密度が低くなるように選択される。いくつかの実施形態では、アニ−ルには成長の休止が含まれる。たとえば、950℃から1150℃の範囲の温度で30秒から30分間、構造がアニールされる。低温層32、34、および36の成長後、温度はキャップ層38または成長させるべき次の層の成長温度に上げられてもよく、そのときにキャップ層38または次の層が成長する前に成長休止がある。他の実施形態では、アニ−ルは、低温層32、34、および36の成長後のキャップ層38の成長温度への、成長反応器内の温度の単なる上昇である。いくつかの実施形態では、キャップ層38の成長は、成長反応器内の温度がキャップ層38の所望の成長温度に達する前に始まる。いくつかの実施形態では、キャップ層38は核生成層22を成長させるために使用された低温と同様の温度で成長させてもよい。低温層32、34、および36およびキャップ層38の構造では、低InN組成層は、アニ−ル中に、高InN組成層からのInNの損失を抑えるのに役立つ。
【0034】
図3または図4または図5の複数の層スタック、または図6中の傾斜InN含有層32、34および36並びに図7中の傾斜InN含有層35は、本明細書に記載される実施形態のいずれかに示される単一の低温層26に置き換えてもよい。本明細書で使用する場合、「傾斜(graded)」という用語は、デバイスの層(単数または複数)中の組成物またはドーパント濃度について記述する場合には、組成および/またはドーパント濃度における単一のステップ以外のどのような方法であるかを問わず、組成および/またはドーパント濃度の変化を得るすべての構造を含むことを意味する。それぞれの傾斜層はサブ層のスタックであってもよく、それぞれのサブ層は、隣接するそれぞれのサブ層とは異なるドーパント濃度または組成を有している。サブ層が分解できる厚さである場合には、傾斜層はステップ−傾斜層である。いくつかの実施形態では、ステップ−傾斜層中のサブ層は数十オングストロームから数千オングストロームの範囲の厚さであってもよい。個々のサブ層の厚さがゼロに近づく極限では、傾斜層は連続した傾斜領域となる。それぞれの傾斜層を構成するサブ層は、厚さに対する組成および/またはドーパント濃度について、これに限定されるものではないが、線形傾斜、放物線傾斜、およびべき乗則傾斜を含むさまざまなプロファイルを形成するように配置することが可能である。また、傾斜層は単一の傾斜プロファイルに限定されず、異なる傾斜プロファイルを有する部分および実質的に一定の組成および/またはドーパント濃度領域を有する一つ以上の部分を含んでいてもよい。
【0035】
一つの実施例では、層32、層34、および層36はそれぞれ9%、6%、および3%のInN組成を有するInGaNから構成されてもよい。もうひとつの実施例では、層32、層34、および層36は9%、3%、および9%のInN組成を有していてもよい。アニーリング後、図7中の混じり合った領域35のInN組成は、下から上に単調に減少、下から上に単調に増加、または非単調な方法で変化してもよい。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、半導体光放出デバイスのデバイス層は、高温層の上に成長した少なくとも一つの低温層を含むテンプレートの上に成長する。高温層は、例えば低貫通転位密度および滑らかな表面形態を達成することができ、一方で低温層は、テンプレート上に成長した層に対して膨張した格子定数を達成する。GaN核生成層は、それが上に成長するサファイア、またはSiC、または他の基板とは異なる格子定数を有するが、低温層26は下位層と整合して成長していないので、格子定数の膨張が発生する。図8は、そのようなデバイスの一部の横断面図である。
【0037】
図8に示されるデバイスでは、高温層24は、図2に関連して前述した核生成層22と同じである核生成層22の上に成長する。高温層24は、たとえば、900℃から1150℃の範囲の温度で少なくとも500オングストロームの厚さに成長した、高品質な、結晶性のGaN、InGaN、AlGaN、またはAlInGaN層であってもよい。
【0038】
高温層24の成長後に、温度を低くし、低温層26を成長させる。いくつかの実施形態では、望ましくない荒い表面を避けるために、低温層26は成長率0.1Å/sから10Å/sの間、一層好ましくは5Å/s未満であり、一層好ましくは0.5から2Å/sの間で成長する。低温層26は、たとえば、400℃から750℃の範囲、一層好ましくは450℃から650℃の範囲、一層好ましくは500℃から600℃の範囲の温度において最大で500オングストロームの厚さまで成長させた、たとえば、アモルファス、多結晶、または立方層等の低品質な、非単一結晶層であってもよい。より高い温度では、低温層26は、それ自体の格子定数を緩和または達成するよりもむしろ下位層の格子定数を、所望されるように複製してもよい。低温層26は、高温層24の格子定数を複製しないために充分低い温度で成長させ;もっと正確にいえば、低温層26は、おそらく低温層26の品質の悪さに起因して、高温層24の格子定数よりも大きい格子定数を有する可能性がある。低温層26は、たとえば、InN組成の範囲が1%から20%、一層好ましくは3%から6%の範囲、一層好ましくは4%から5%の範囲であるInGaN層であってもよい。低温層26は、GaN核生成層22の格子定数からデバイスの光放出層のバルク格子定数により正確にマッチしたより大きな格子定数への転位としての機能を果たす。
【0039】
いくつかの実施形態では、高温層24と低温層26との成長温度の差は少なくとも300℃であり、一層好ましくは少なくとも450℃、および一層好ましくは少なくとも500℃である。たとえば、低温層26は450℃から650℃の範囲の温度で成長する一方、高温層24は900℃から1150℃の範囲の温度で成長してもよい。
【0040】
さまざまな本発明の実施形態において層26の成長に使用される低成長温度のために、低温層26は高濃度の炭素を含有していてもよい。いくつかの実施形態では、低温層26中の炭素含有量は1×1018cm-3から1×1020cm-3の範囲であり、多くの場合1×1018cm-3から1×1019cm-3の範囲である。対照的に、高温層24の炭素含有量は、通常5×1017cm-3未満であり、一層好ましくは1×1017cm-3未満であり、一層好ましくは1×1016cm-3未満である。高濃度の炭素含有量のために、低温層26は活性層によって放出された光を吸収する。従って、好ましい実施形態では、低温層26の厚さは1000Å未満、一層好ましくは500Å未満、および、一層好ましくは300Å未満に制限される。
【0041】
また低成長温度、格子不整合、および熱膨張不整合のために、低温層26では、低温層26および低温層26の上に直接成長する層との界面またはその近辺、または、その上に低温層26が成長する層と低温層26との界面またはその近辺に位置する積層欠陥、転位ループ、および転位線などの欠陥濃度が高くともよい。欠陥は、多くの場合、基板20と核生成層22との間の成長界面にほぼ平行な方向に向いている。これらの面内欠陥の密度は低温層26および低温層26の上に成長する層の歪み緩和に貢献している。これらの面内欠陥の濃度は、必ずしも式(3)に関連して前述した貫通転位密度と関連しているわけではないことに留意されたい。所与の高温層24では、TEMの検出限界、一般に約1×102cm-1以下の成長界面に平行な積層欠陥および転位密度を示す、成長界面に平行な積層欠陥または転位は透過型電子顕微鏡(TEM)による観察では見られない。InGaN低温層26のTEM像では、およそ数千オングストローム厚のTEMサンプルに対して、成長界面に平行な多くの転位があることが明らかにされ、少なくとも1×102cm-1、よりふさわしくは少なくとも1×103cm-1、およびよりふさわしくは少なくとも1×104cm-1の成長界面に対して平行な転位の密集状態が示される。いくつかの実施形態では、成長界面に対して平行な方向の転位の密度は、1×102cm-1から1×107cm-1の範囲である。
【0042】
いくつかの実施形態では、低温層26は成長面内で不連続になるような方法で成長させてもよく、すなわち、それによって非平面または不連続とする意図的または意図的ではない特徴を有してもよい。該意図的な特徴の例には一つ以上の横方向過剰成長を含む類の技法の使用が含まれてもよい。これらの技法には、参照によって本明細書に援用する、「Journal of Physics:Condensed Matter」,13巻,6961−6975頁(2001)Hiramatsuに記載されているように、エピタキシャル横方向過剰成長(ELOまたはELOG)、ファセット制御エピタキシャル横方向過剰成長(FACELO)、およびペンデオ(Pendeo)エピタキシー(PE)を含むさまざまな用語の使用が参照されている。該意図的でない特徴の例には、低温III族窒化物層の上面と交差するV字型の欠陥(一般に「ピット」として知られている)、大きな表面段差、および低温層26中のまたは低温層26より下の層(単数または複数)中の他の欠陥の存在が含まれてもよい。これらの意図的な横方向過剰成長技法または意図的でない技法の一つ以上の使用は、欠陥領域の横方向の範囲をテンプレートのごく一部または複数の小さな部分に制限することができるが、一方でテンプレートの横方向過剰成長は低温層26によって達成される大きな格子定数を維持することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、デバイス層は図8の低温層26上に直接成長する。別の実施形態では、追加の高温層28は低温層26の上方に成長してもよく、図9に示すように低温層26によって達成される格子定数を複製する。高温層28は、たとえば、GaN、InGaN、AlGaN、またはAlInGaNであってもよい。いくつかの実施形態では、高温層28は、800℃から1000℃の範囲の温度で500オングストロームから10,000オングストロームの範囲の厚さに成長したInGaNあってもよい。高温層28中のInN組成は、通常、低温層26中のInN組成未満であり、たとえば、0.5%から20%の範囲、一層好ましくは3%から6%の範囲、一層好ましくは4%から5%の範囲であってもよい。
【0044】
低温層26は続いて成長する層の格子定数を大きくすることを目的としている一方で、高温層28は、低温層26中のピット、大きな表面段差、および他の欠陥を埋め、またはそれらの上を滑らかにすることを目的としている。高温層28は、その上に続く層が成長するための高品質なベースを提供する。低温層26のInN組成は、格子定数をできるだけ膨張させるために比較的高く、高温層28のInN組成は、望ましい高品質の層を成長させるために比較的低い。図9に図解されるデバイスは、基板からデバイス層の間に低温層26と高温層28との複数のセット含んでいてもよい。それぞれのセットで基板に最も近い低温層26中の最も低いInN組成からデバイス層に最も近い低温層26中の最も高いInN組成へと低温層26中のInN組成を増加させることによって、格子定数を少量膨張させてもよい。格子定数が膨張するにしたがって、許容できる高品質な高温層28を成長させることが可能なInN組成を増加させることができる。従って、基板に最も近い高温層28中の最も低いInN組成からデバイス層に最も近い高温層28中の最も高いInN組成へと、高温層28中のInN組成は、増加してもよい。層26中のInN組成を増加させることは層28のInN組成を増加させる一つの方法ではあるものの、層28の組成は、層26のInN組成を増加させない他の方法で増加させてもよい。図10に示される別の実施形態では、図8の高温層24を図9中の高温層28と組み合わせで使用することができる。
【0045】
図11に示される別の実施形態では、低温核生成層22を最初に成長させ、その後に図8に関連して前述した高温層24を成長させる。第2の高温層30は高温層24の上に成長させ、低温InGaN層26は層30の上に成長させる。次に高温層28を低温層26の上に成長させ、デバイス層10を高温層28の上方に成長させる。あるいは、図11中で高温層28を省略してもよく、デバイス層10を低温InGaN層26の上面に直接成長させてもよい。
【0046】
高温層30は、たとえば、900℃から1000℃の範囲の温度で500オングストロームから10、000オングストロームの範囲の厚さに成長した低InN組成、たとえば5%未満を有するInGaN層であってもよい。高温層30は、通常、高温層24の格子定数よりも大きいバルクの格子定数を有する材料である。結果として、低温層26および続いて成長する高温層28中の面内格子定数は、低温層26が高温層24上に直接成長する場合に達成可能な面内格子定数よりも大きくできる。
【0047】
いくつかの実施形態では、図11中の高温層30および28はInGaNから構成される。そのような一つの実施形態では、高温層28は大気よりもH2濃度が低い雰囲気中で、または、高温層30よりも低温で成長させてもよく、そのような場合には、高温層28は高温層30よりも高濃度なInN組成を有することができる。たとえば、高温層30と低温層26との成長温度の差異は、少なくとも350℃、一層好ましくは少なくとも400℃、および一層好ましくは少なくとも450℃であってもよい。対照的に、低温層26と高温層28との成長温度の差異は少なくとも250℃、一層好ましくは少なくとも300℃、および一層好ましくは少なくとも350℃であってもよい。別の実施形態では、高温層28は、高温層30よりも高い温度または高濃度のH2で成長させてもよく、この場合には高温層28は高温層30よりもInN組成が低くともよい。別の実施形態では、高温層28は高温層30と実質的に同一の条件で成長させてもよく、または高温層28は、高温層30と実質的に同一の組成であってもよい。それぞれのこれらの実施形態では、低温InGaN層26は高温層24の格子定数を遮断し、続いて成長する層の格子定数を膨張させるから、高温層28は高温層30よりも大きい面内格子定数を有する。
【0048】
構造のいくつかの実施形態では、低温層26は大きな格子定数を達成でき、それとともに高温層28は滑らかな表面を達成できる。低温層26の面内格子定数が実質的に高温層28のバルクの格子定数よりも大きい場合には、高温層28は実質的に、式(1)で記述される引張歪みの状態であってもよく、この引張歪みは高温層28中または高温層28に近いクラックまたは他の欠陥の形成によって、部分的に緩和されてよい。クラックはデバイスの電気的および構造的な完全性を低下させるであろうし、層28中のクラックまたは他の構造的な欠陥は層28中の格子定数を小さくし、活性領域中の圧縮歪みを増加させるので、この結果は好ましくない。したがって、デバイスのいくつかの実施形態では、基板20とデバイス層10との間に追加の層を成長させることが好ましい。一つの該実施形態では、高温層31は、図12に示すように低温層26と高温層28との間に配置されてもよい。この実施形態では、高温層31は低温層26の温度よりも高いが高温層28の温度よりも低い温度で成長させてもよい。高温層28および高温層31のそれぞれでは、たとえば、InGaNを、800℃から1000℃の温度範囲で500オングストロームから10、000オングストロームの範囲の厚さに成長させてもよい。それぞれの高温層中のInN組成は、たとえば、0.5%から20%の範囲、一層好ましくは3%から6%の範囲、一層好ましくは4%から5%の範囲であってもよい。
【0049】
あるいは、高温層28および高温層31は実質的に同一温度で成長させてもよいが、高温層31は、高温層28を成長させるために使用されるよりも大気中のH2量を減少させて成長させてもよい。この場合には、高温層31は高温層28よりも高いInN組成を有してもよい。あるいは、高温層31は高温層28よりも高い温度または大気中のH2量を増加させて成長させてもよく、この場合には高温層31は高温層28よりも低いInN組成を有してもよい。
【0050】
別の実施形態では、低温層26とデバイス層10との間に三つ以上の異なる層を成長させてもよい。この実施形態の一つの実施例は図13に示され、ここではInNリッチ材料とInNプア材料が交互に重なった層が低温層26とデバイス層10との間の複数の層スタック中に含まれる。図13中の複数の層スタックは図2の核生成層22の上に、または、図10の高温層24の上に成長することができることに留意されたい。InNリッチ層およびInNプア層の三つのセットが図13で図解されるが、より多くのまたはより少ないセット数が使用されてもよい。インジウムリッチ層60、62、および64は、たとえば、InGaNまたはAlInGaNであってもよい。インジウムプア層61、63、および65は、たとえば、GaN、InGaN、またはAlInGaNであってもよい。層60、62、および64は3%のInN組成であってもよく、それと同時に層61、63、および65は0.5%のInN組成であってもよい。
【0051】
追加のキャップ層67は一番上のInNプア層65の上に成長してもよく、次にデバイス層10はキャップ層67または一番上のInNプア層65の上に成長する。キャップ層67は、たとえば、GaNまたはInGaNであってもよい。別の実施形態では、一番上のインジウムプア層は省略されてもよく、デバイス層は層60、62、または64など一番上のインジウムリッチ層の上に直接成長させてもよい。
【0052】
デバイスの別の実施形態では、参照によって本明細書に援用する,「Applied Physics Letters」、52巻、1617−1618(1988)頁Itohら、に記載されているように、図13中の複数の層スタックは熱サイクル成長またはアニーリングを使用して形成することができる。熱サイクル成長は、良好な表面形態および従来技術のGaNテンプレート上での成長から得られるa−格子定数よりも大きいデバイス層中のa−格子定数を有するデバイスを成長させるために使用される。熱サイクル成長プロセスはInGaNなどのエピタキシャル層の成長を含み、その後に高温成長またはアニーリングステップを含む。
【0053】
それぞれの層60、61、62、63、64、および65の成長後に、Ga、AlおよびIn前駆体などのいくつかの前駆体ガスの流量を停止させることで成長を休止させてもよく、その次に、あらかじめ定められた時間だけ温度を維持しまたは上昇させると同時に、多くの場合NH3であるN前駆体を連続して流して構造をアニールしもよい。次の層の成長温度へ調節すると次の層の成長が始り、必要であれば、適切な前駆体が導入される。典型的なアニーリング条件はH2およびNH3雰囲気中1100℃で5分間から成る。InGaN層が過度に分解することを防ぐために、N2も雰囲気に追加でき、または、雰囲気からH2を除去することもできる。あるいは、これらの高温ステップまたは温度勾配中に成長を続けてもよい。それぞれの層が成長した後のアニーリングは、それぞれの層が成長した後にアニールをしないデバイスの表面形態を改良することになる。しかし、InNプア層61、63、および65が成長した後にアニーリングすると、これらの層がInNリッチ層のより大きいa−格子定数に対してこれ以上歪まないように、InNプア層中の歪みをいくらか緩和させることができるが、余分な転位または転位ループを形成することになり、結果として所望のa−格子定数よりも小さいテンプレートを生じる。
【0054】
あるいは、構造はInNリッチ層60、62、および64の全てまたはいくつかの成長後にのみアニールされ、またはInNプア層61、63、および65の全てまたはいくつかの成長後にのみアニールされる。InNプア層61、63、および65の成長後にのみアニーリングする場合には、すべてのアニーリングステップの間でInNプア層はデバイス中のInNリッチ層中のInNをより多くトラップするので、テンプレート中のInN組成の平均は高くなってもよい。別の実施形態では、構造はそれぞれの層の成長後にアニールしてもよく、ここでインジウムリッチ層の成長後に使用されるアニーリング条件はインジウムプア層の成長に使用されるアニーリング条件とは異なる。それぞれのインジウムリッチ層60、62、および64は同一の組成または厚さであることは必要とされないことに留意されたい。同様に、それぞれのインジウムプア層61、63、および65は同一の組成または厚さであることは必要とされない。
【0055】
別の実施形態では、傾斜InGaN層59は、図14に示すように、低温層26とデバイス層10との間に配置されてもよい。傾斜層59は、たとえば、InN組成が変化した一つ以上の二元、三元、または四元III族窒化物層を含んでいてもよい。前述した追加のキャップ層(図14に図示せず)は、傾斜層59とデバイス層10との間に配置されてもよい。たとえば、傾斜層59は、低温層26に隣接する最もInN組成が高い11%からデバイス層10に隣接する最もInN組成が低い3%へと線形に傾斜する組成を有するInGaN層であってもよい。もうひとつの例では、傾斜層59は低温層26に隣接するInN組成が高い10%からデバイス層10に隣接するInN組成が低い0%に下がる傾斜を含むことができる。さらにもう一つの例では、傾斜層59は低温層26に隣接するInN組成の高い8%から、ある中間の位置でInN組成の低い0%に下がる傾斜または単一のステップと、その後デバイス層10に隣接するInN組成が高い3%に戻る傾斜または単一のステップを含んでもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、図11中の層24および30は、図12中の層28と31との組み合わせを使用してもよい。別の実施形態では、低温層26は図14に示される二つの傾斜InGaN層59の間にサンドイッチされてもよい。別の実施形態では、低温層26の任意のスタックは、高温層の任意のスタックまたは高温層および低温GaN層の任意のスタックの間で分散して成長してもよい。図2、図8、図9、および図10に示される実施形態のそれぞれは、図3から図7および図11から図14において記述した傾斜層、複数の層スタック、およびアニールされた層または熱サイクル成長によって成長した層を含んでいてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、図12中の高温層31などの層の特性は低温層26によって得られる格子定数を固定(lock in)するように選択される。いくつかの実施形態では、図12中の高温層28などの層の特性はデバイス中の表面形態を改良するために選択される。
【0058】
図15および図16は、いくつかのデバイスに対してa−格子定数の関数としてc−格子定数をプロットしたものである。図15は、本発明の実施形態によるテンプレートは実際に付加(overlying)層を少なくとも部分的に緩和させていることを明示している。構造の歪み状態は構造のc−格子定数およびa−格子定数を決定することで測定できる。図15中のダイヤモンドで示される構造では、図1で図解されるように、GaN核生成層2の上に厚い高温GaN層3を成長させ、式(3)に関連して前述したように、貫通転位密度およびしたがってGaNテンプレート中の面内a−格子定数を変えるために、核生成層2および高温GaN層3の成長条件を変化させた。貫通転位密度を変化させる該方法は,参照によって本明細書に援用する「Journal of Crystal growth」,221巻,262−266頁(2000)Figgeらに記述されている。したがって、図15中のダイヤモンドで示される構造では、貫通転位密度およびa−格子定数は式(3)に一致して変化する。黒丸で示される構造では、厚い高温GaN層を本発明の実施形態によって調製した低温InGaN層の上に成長させた。弾性理論によれば、III族窒化物材料中のc−格子定数とa−格子定数とは逆相関し、これはダイヤモンドで示される構造によって明示され、それらは全て図15で図解される斜線に近接して収まる。ダイヤモンドで示される構造とは対照的に、斜線の下に位置する黒丸によって示されるそれぞれの構造では、これらの構造のc−格子定数はダイヤモンドで示される構造のc−格子定数よりも小さいことを意味している。黒丸によって示される構造のより小さいc−格子定数は、これらの構造中の厚い高温GaN層が引張歪みのもとで成長することを意味し、高温GaN層のa−格子定数は下層の少なくとも部分的に緩和した低温InGaN層26のa−格子定数と合致するために伸びたことを示す。黒丸によって示される構造は、ダイヤモンドで示される構造よりも、所与のa−格子定数に対してより小さい貫通転移密度であることをも示し、本発明は、前述したように式(3)によって定量化した従来技術のGaNテンプレート中で観察されたa−格子定数と貫通転位密度との間のトレードオフを解決することを示す。
【0059】
図16は、一つ以上の本発明の実施形態中のいくつかの層で観察されたc−格子定数およびa−格子定数のプロットである。図16中の黒丸は図9中の層28を示し、図16中の白丸は図13中の一つ以上のインジウムリッチ層を示し、およびダイヤモンド記号は図13中の一つ以上のインジウムプア層またはキャップ層を示す。図16中の斜めの実線は前に図15で示した斜めの実線に対応し、図1で図解される構造等のGaNテンプレートの実験データを示し、破線の斜線は、より大きいa−格子値に対する実線の外挿である。図16で図解されるように、インジウムリッチ層60のc−格子定数およびa−格子定数の両方とも、図15中のダイヤモンド記号によって示される従来技術のGaNテンプレートのデータと比較してかなり大きい。インジウムリッチ層60の上に形成されたインジウムプア層61またはキャップ層67のc−格子定数およびa−格子定数はインジウムリッチ層60の格子定数よりも小さいが、図15中の従来技術のGaNテンプレートで観察した最も大きいa−格子定数よりもずっと大きく、図13で図解される実施形態に従って成長したインジウムプア層61およびキャップ層67は、より大きい格子定数のインジウムリッチ層60に対して少なくとも部分的に歪んでいることを示している。インジウムプア層61およびキャップ層67は、通常、クラッキングを避けるために充分に薄く維持され、または、InN組成が充分に高いように成長させることに留意されたい。インジウムプア層61およびキャップ層67上に歪んで成長したデバイス層10はこのGaNよりも大きいa−格子定数を複製し、これは光放出層中の歪みを減少させる。したがって、前述した実施形態中のテンプレートは、一般に3.189Å以下の格子定数を有する従来技術のGaNテンプレートよりも大きいa−格子定数を有することができる。
【0060】
前述した実施形態中のいくつかの構造のように、3.189Åよりも大きい面内格子定数を有するテンプレート上の一つ以上の光放出層を含むデバイス層の成長では、欠陥密度を許容範囲にし、スピノーダル分解を減少させて、より厚い光放出層が成長できるように、光放出層中の歪みを十分に減少できる。たとえば、青色光を放出するInGaN層は3.23Åのバルクの格子定数を有する組成物である組成In0.12Ga0.88Nを有してもよい。光放出層中の歪みは光放出層中の面内格子定数(従来技術のGaNバッファ層上に成長した光放出層における約3.189Å)と光放出層のバルクの格子定数との差異によって決定されるので、歪みは式(2)によって決定されるように│(a面内−abulk)│/abulkで表現されてもよい。従来技術のIn0.12Ga0.88N層の場合には、歪みは│(3.189Å−3.23Å)│/3.23Åであり、約1.23%である。同一組成物の光放出層が前述した構造のようにより大きい格子定数テンプレート上に成長する場合には、歪みは減少または取り除くことができる。本発明のいくつかの実施形態では、430nmから480nmの間のデバイス放出光の光放出層中の歪みは、1%未満、一層好ましくは0.5%未満に減少させることができる。シアン色光を放出するInGaN層は、従来技術のGaNバッファ層上に成長した場合にはバルクの格子定数が3.24Åであり、かつ、歪みが約1.7%である組成物である組成In0.16Ga0.84Nを有してもよい。本発明のいくつかの実施形態では、480nmから520nmのデバイス放出光の光放出層中の歪みは、1.5%未満、一層好ましくは1%未満に減少させることができる。緑色光を放出するInGaN層はバルクの格子定数が3.26Åの組成物である組成In0.2Ga0.8Nを有してもよく、従来技術のGaNバッファ層上に成長させた場合には、結果として約2.1%の歪みを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、520nmから560nmのデバイス放出光の光放出層中の歪みは、2%未満、一層好ましくは1.5%未満に減少させることができる。
【0061】
図2で図解されるデバイスに対して、発明者らは3.212Åという大きなa−格子定数および4×109cm-2という低い貫通転移密度を有する構造を成長させた。該構造の上に成長した光放出層は、青色光放出層に対して0.55%歪み、シアン光放出層に対して0.87%歪み、および緑色光放出層に対して1.5%歪んでいてもよい。図8および図10で図解されるデバイスに対して、発明者らは、3.196Åという大きなa−格子定数および1.5×109cm-2という低い貫通転移密度を有する構造を成長させた。該構造の上に成長した光放出層は、青色光放出層に対して1.1%歪み、シアン光放出層に対して1.4%歪み、緑色光放出層に対して2.0%歪んでいてもよい。図9および図13で図解されるデバイスに対して、発明者らは3.202Åという大きなa−格子定数および1.5×109cm-2という低い貫通転移密度を有する、図16で図解される構造を成長させた。該構造の上に成長した光放出層は、青色光放出層に対して0.87%歪み、シアン光放出層に対して1.2%歪み、および緑色光放出層に対して1.8%歪んでいてもよい。図11で図解されるデバイスに対して、、発明者らは3.204Åという大きなa−格子定数および1.5×109cm-2という低い貫通転移密度を有する構造を成長させた。該構造の上に成長した光放出層は、青色光放出層に対して0.8%歪み、シアン光放出層に対して1.1%歪み、および緑色光放出層に対して1.7%歪んでいてもよい。したがって、これらの実施例のそれぞれは、式(3)において前述した面内a−格子定数と貫通転位密度との間の関係を壊す。
【0062】
本発明の実施形態によれば、前述した成長テンプレートおよびデバイス層は、サファイアの主結晶面から傾いたサファイアまたはSiC成長基板表面上に成長させてもよい。図17ではサファイアのc面、m面、およびa面を図解する。III族窒化物デバイスは多くの場合サファイアのc面、r面、m面、またはa面の上に成長させる。本発明の実施形態では、III族窒化物デバイス層が成長する成長表面がc面、r面、m面、またはa面から方向12に、たとえば0.1°を超えて傾くように、サファイア基板をスライスし研磨してもよい。該基板の上に成長した光放出層では、スピノーダル分解が減少し、光放出層中の歪みが減少することが可能である。該基板は、前述したテンプレートの何れを成長させるのに使用してもよい。
【0063】
図解し、前述した半導体構造は、コンタクトがデバイスの両側にそれぞれ形成されたデバイスまたは二つのコンタクトがデバイスの同じ側に形成されたデバイスなどの光放出デバイスのすべての好適な構造に含まれてもよい。二つのコンタクトが同じ側に配置される場合には、デバイスは、コンタクトが形成されているいずれかの同じ側から光が抽出されるように透明コンタクトにより形成され、かつ、取付けられてもよく、または、反射コンタクトにより形成され、かつ、コンタクトが形成されている側とは反対の側から光が抽出されるフリップチップとして取付けられてもよい。
【0064】
図18では、成長基板が除去されたフリップチップデバイスである、好適な構造の一つの例の一部を図解する。前述したように、デバイス層10は、少なくとも一つのn型層を含有するn型領域71と少なくとも一つのP型層を含有するP型領域73との間にサンドイッチされた少なくとも一つの光放出層を含む光放出領域72を含有する。N型領域71は成長テンプレートの一部であってもよい、すなわち分離構造である。P型領域73の一部および光放出領域72は、n型領域71の一部を露出するメサを形成するために除去される。n型領域71の一部を露出する一つのビアを図18に示すが、単一のデバイス中に複数のビアが形成されてもよいことが理解されるべきである。N−コンタクト78およびp−コンタクト76は露出したn型領域71の一部およびp型領域73上に、たとえば蒸着またはめっきによって形成される。コンタクト78およびコンタクト76は、空気または誘電層によって、電気的にお互いに絶縁されていてもよい。コンタクト金属78および76を形成した後に、デバイスのウェハは個々のデバイスにダイスカットされてもよく、その次にそれぞれのデバイスを成長方向に対してフリップし、マウント84上にマウントし、この場合には、図18で図解されるようにマウント84の横方向の範囲はデバイスの横方向の範囲よりも広くともよい。あるいは、デバイスのウェハをマウントのウェハと接続してもよく、次に個々のデバイスにダイスカットしてもよい。マウント84は、たとえば、Siなどの半導体、金属、またはAlNなどのセラミックであってもよく、P−コンタクト76に電気的に接続する少なくとも一つの金属パッド80およびn型コンタクト78に電気的に接続する少なくとも一つの金属パッド82を含んでもよい。コンタクト76および78とパッド80および82の間に配置されたインターコネクト(図18に図示せず)は半導体デバイスをマウント84に接続する。インターコネクトは、たとえば、金などの元素金属、または、はんだであってもよい。
【0065】
マウント後、成長基板(図示せず)は、エッチングまたはレーザ溶融などの基板材料に好適なプロセスによって除去される。マウントの前後で半導体層を支え、基板除去中のクラッキングを防ぐために、デバイスとマウント84との間に硬いアンダーフィルを提供してもよい。上にデバイス層10が成長するテンプレート75は、そのまま残され、たとえばエッチングによって、完全に除去され、または部分的に除去されてもよい。成長基板およびいくらかの半導体材料の除去によって露出した表面は、たとえば、光電気化学エッチングなどのエッチングプロセスまたは研削などの機械プロセスによって、粗面化しもよい。光が抽出される表面の粗面化はデバイスからの光抽出を改良できる。あるいは、フォトニック結晶構造を表面中に形成してもよい。蛍光体層または当該技術分野においてダイクロイックまたはポラライザ等などとして知られている二次的な光学素子などの構造85を放出面に適用してもよい。
【0066】
図19は、米国特許6,274,924号に詳細に記述されているパッケージされた光放出デバイスの分解図である。ヒートシンクスラグ100はインサート成形リードフレーム中に入れられる。インサート成形リードフレームは、たとえば、電気的な経路を提供する金属フレーム106のまわりにモールドされた充填プラスチック材料105である。スラグ100は追加の反射カップ102を含んでもよい。前述した実施形態中のデバイスのいずれであってもよい光放出デバイスダイ104は、直接または間接的に熱伝導サブマウント103を介してスラグ100にマウントされる。光学的レンズであってもよいカバー108を追加してもよい。
【0067】
本発明を詳細に記述してきたが、本発明の開示によって、本明細書に記載される発明概念の精神を逸脱することなく、本発明に対して変更を加えてもよいことを当業者は理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、図示され記述された特定の実施形態に制限されることを意図しない。特に、低温層26は、InGaNの代わりにAlGaNまたはAlInGaNから構成されてもよい。低温層26がAlGaNから構成される実施形態では、低温層26の面内格子定数は核生成層22の面内格子定数よりも小さく、これは短波長UV放射体として使用されるAlGaNまたはAlInGaN層中の歪みを減少させる。低温層26がAlInGaNから構成される実施形態では、低温層26の面内格子定数は層22の面内格子定数よりも大きくとも小さくともよく、低温層26中のインジウムのアルミニウムに対する割合に依存する。また、本明細書に記述された本発明は、光放出デバイスばかりではなく、たとえばFETなどのトランジスタまたは検出器を含む電子デバイスまたはオプトエレクトロニクスデバイスに適用されてもよい。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1 デバイスであって、
第1の層と、
前記第1の層の上に成長する第2の層と、
前記第2の層の上に成長するデバイス層と、
を含有するIII族窒化物構造を含み、
前記第1の層は実質的にインジウムを含有せず、前記第2の層はインジウムを含有する非単一結晶層であり、前記デバイス層はn型領域とP型領域との間に配置されるIII族窒化物光放出層を含むデバイス。
2 上記1に記載のデバイスにおいて、
前記第1の層はGaNでありおよび前記第2の層はInGaNであるデバイス。
3 上記1に記載のデバイスにおいて、
前記III族窒化物構造はさらに前記第1の層と前記第2の層との間に配置される第3の層を含み、前記第3の層は実質的にインジウムを含有しない非単一結晶層であるデバイス。
4 上記1に記載のデバイスにおいて、
前記III族窒化物構造は前記第2の層と前記光放出層との間に配置されるさらに第3の層をさらに含み、前記第3の層はインジウムを含有する非単一結晶層であるデバイス。
5 上記4に記載のデバイスにおいて、
前記第2の層は前記第3の層とは異なるインジウム組成を有するデバイス。
6 上記1に記載のデバイスにおいて、
さらに、前記光放出層と前記第1の層との間に配置される傾斜組成を有する層を含むデバイス。
7 上記1に記載のデバイスにおいて、
前記光放出層は前記光放出層と同一組成の自立材料の格子定数に対応するバルクの格子定数abulkを有し、
前記光放出層は前記構造中で成長する前記光放出層の格子定数に対応する面内格子定数a面内を有し、
前記光放出層中の|(a面内−abulk)|/abulkは1%未満であるデバイス。
8 上記1に記載のデバイスにおいて、
前記光放出層は3.189オングストロームよりも大きいa−格子定数を有するデバイス。
9 デバイスであって、
第1の実質的単一結晶層と、
第2の実質的単一結晶層と、
前記第1の実質的単一結晶層と前記第2の実質的単一結晶層との間に配置されるインジウムを含有する非単一結晶層とを含有するIII族窒化物構造を含むデバイス。
10 上記9に記載のデバイスにおいて、前記III族窒化物構造はさらにn型領域とP型領域との間に配置された光放出層を含み、前記第2の実質的単一結晶層は前記光放出領域と前記非単一結晶層との間に配置されるデバイス。
11 上記10に記載のデバイスにおいて、前記第1の実質的単一結晶層の組成は前記第2の実質的単一結晶層の組成とは異なるデバイス。
12 上記10に記載のデバイスにおいて、前記第1の実質的単一結晶層はGaNまたはInGaNであり、前記第2の実質的単一結晶層はInGaNであり、前記第2の実質的単一結晶層は前記第1の実質的単一結晶層よりも大きいInN組成を有するデバイス。
13 上記10に記載のデバイスにおいて、前記第2の実質的単一結晶層は前記第1の実質的単一結晶層よりも大きい面内a−格子定数を有するデバイス。
14 上記10に記載のデバイスにおいて、前記非単一結晶層はInGaNであるデバイス。
15 上記10に記載のデバイスにおいて、さらに、前記第1の実質的単一結晶層と前記非単一結晶層の間に配置された第3の実質的単一結晶層を含むデバイス。
16 上記10に記載のデバイスにおいて、さらに、インジウムを含有する前記非単一結晶層と前記光放出層との間に配置される第3の実質的単一結晶層を含むデバイス。
17 上記10に記載のデバイスにおいて、
前記光放出層は前記光放出層と同一組成の自立材料の格子定数に対応するバルクの格子定数abulkを有し、
前記光放出層は前記構造中で成長する前記光放出層の格子定数に対応する面内格子定数a面内を有し、
前記光放出層中の|(a面内―abulk)|/abulkは1%未満であるデバイス。
18 上記10に記載のデバイスにおいて、
前記光放出層は3.189オングストロームよりも大きいa−格子定数を有するデバイス。
19 デバイスであって、n型領域とP型領域との間に配置された光放出層を含むIII族窒化物構造を含有し、前記光放出層中の貫通転位密度は3×109cm-2未満であり、前記光放出層中のa−格子定数は3.200Åよりも大きいデバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
第1の実質的単一結晶層と、
第2の実質的単一結晶層と、
前記第1の実質的単一結晶層と前記第2の実質的単一結晶層との間に配置された第3の実質的単一結晶層と、
前記第1の実質的単一結晶層と前記第2の実質的単一結晶層との間に配置されるインジウムを含有する非単一結晶層とを含有するIII族窒化物構造を含むデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記III族窒化物構造はさらにn型領域とP型領域との間に配置された光放出層を含み、前記第2の実質的単一結晶層は前記光放出領域と前記非単一結晶層との間に配置されるデバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスにおいて、前記第1の実質的単一結晶層の組成は前記第2の実質的単一結晶層の組成とは異なるデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の実質的単一結晶層はGaNまたはInGaNであり、前記第2の実質的単一結晶層はInGaNであり、前記第2の実質的単一結晶層は前記第1の実質的単一結晶層よりも大きいInN組成を有するデバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第2の実質的単一結晶層は前記第1の実質的単一結晶層よりも大きい面内a−格子定数を有するデバイス。
【請求項6】
請求項2に記載のデバイスにおいて、前記非単一結晶層はInGaNであるデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスにおいて、第3の実質的単一結晶層は前記第1の実質的単一結晶層と前記非単一結晶層の間に配置されるデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスにおいて、第3の実質的単一結晶層はインジウムを含有する前記非単一結晶層と前記光放出層との間に配置されるデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記光放出層は前記光放出層と同一組成の自立材料の格子定数に対応するバルクの格子定数abulkを有し、
前記光放出層は前記構造中で成長する前記光放出層の格子定数に対応する面内格子定数a面内を有し、
前記光放出層中の|(a面内―abulk)|/abulkは1%未満であるデバイス。
【請求項10】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記光放出層は3.189オングストロームよりも大きいa−格子定数を有するデバイス。
【請求項11】
n型領域とP型領域との間に配置された光放出層を含むIII族窒化物構造を含有し、前記光放出層中の貫通転位密度は3×109cm-2未満であり、前記光放出層中のa−格子定数は3.200Åよりも大きいデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−80942(P2013−80942A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264703(P2012−264703)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2009−542384(P2009−542384)の分割
【原出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500507009)フィリップス ルミレッズ ライティング カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (197)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】