説明

歪検出装置

【課題】本発明の歪検出装置は、組立て時に構成された梁の長さの変化が少なく、出力信号の精度を必要とする歪検出装置の用途に適用できるものである。
【解決手段】少なくとも2つ以上の歪抵抗素子11cとこの歪抵抗素子11cと電気的に接続される回路部を設けた基板11と、この基板11に配置した歪抵抗素子11cを外周とする領域の中央部に固定する第一の固定部材21と、この基板11に配置した歪抵抗素子11cの外周部に固定する第二の固定部材31を有し、この構成において第一の固定部材21と第二の固定部材31が基板11上で梁を形成しており、この第一の固定部材21と第二の固定部材31が一体的に固定されていることによって衝撃印加時に固定位置のズレを起こさず、梁として構成される固定長さが変化しないため、特性(感度および0点電圧など)の変動を起こさない安定した歪検出装置を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に荷重を付加することによって発生する歪を検出する歪検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の歪検出装置は、図12、図13、図14に示されるような構成を有していた。
【0003】
図12は従来の歪検出装置の下面図、図13は同歪検出装置の斜視図、図14は同歪検出装置の取付け状態を示す断面図である。
【0004】
図12、図13において、1は弾性部材の表面に絶縁層を形成した絶縁基板で、この絶縁基板1は押圧部材2の下面に固着されている。また、前記絶縁基板1の下面には4つの歪抵抗素子3を設けており、この歪抵抗素子3をそれぞれ一対の電源電極4、一対の出力電極5および一対のGND電極6と電気的に接続することにより、ブリッジ回路を構成している。
【0005】
以上のように構成された従来の歪検出装置について、次にその動作を説明する。
【0006】
図14に示すように、従来の歪検出装置を相手側の固定部材7にネジ8を使用して固定した後、絶縁基板1の略中央の上面に押圧部材2により押圧力が付加されると、この押圧力により前記絶縁基板1に曲げモーメントが発生し、この曲げモーメントにより前記絶縁基板1の下面に設けた4つの歪抵抗素子3にも曲げモーメントが発生する。そして、この歪抵抗素子3に曲げモーメントが生じると歪抵抗素子3の抵抗値が変化するため、この抵抗値の変化を一対の出力電極5により外部のコンピュータ(図示せず)等に出力し、絶縁基板1に加わる押圧力を測定するものである。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平8−87375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の構成においては、絶縁基板1を相手側の固定部材7にネジ8で締め付け固定しているため、衝撃印加時に固定位置がズレを起こし梁として構成される固定長さが変化し、歪検出装置の特性(感度および0点電圧など)を悪化させるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、固定位置のズレを起こさず特性の安定した歪検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の歪検出装置は、少なくとも2つ以上の歪抵抗素子とこの歪抵抗素子と電気的に接続される回路部を設けた基板と、前記基板に配置した歪抵抗素子を外周とする領域の中央部に固定する第一の固定部材と前記基板に配置した歪抵抗素子の外周部に固定する第二の固定部材を有し、これら前記第一の固定部材の軸芯と、前記第二の固定部材の軸芯と、前記基板に配置した歪抵抗素子を外周とする領域の中心がほぼ一直線上になるように溶着などの手段で一体的に固定された構成としたものである。
【0011】
本構成によって、第一の固定部材と第二の固定部材が基板上で梁を形成しており、この第一の固定部材と第二の固定部材が一体的に固定されることによって衝撃印加時に固定位置のズレを起こさないため、梁として構成される固定長さが変化しない。これにより歪検出装置の特性(感度および0点電圧など)が変動を起こさない効果を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
梁を形成している第一の固定部材と第二の固定部材が基板に溶着などにより一体的に固定されていることによって、衝撃印加時に固定部の位置ズレを起こすことがないため、梁として構成される固定長さが変化することはない。これにより歪検出装置の特性(感度および0点電圧など)は変動を起こさず安定した特性を維持できるという効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1および2に記載の歪検出装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態1における歪検出装置の組立て斜視図、図2は同歪検出装置の分解斜視図、図3は同歪検出装置における基板の作成プロセス図である。
【0015】
図1、図2において、基板11の片面には第一の固定部材21が固定され、他面にはその軸芯を同じとする位置に第二の固定部材31が固定されている。基板11の端部には回路部を覆い、信号を取り出すためのコネクタ41が設けられている。図3の(a)から(e)に順に示すように、基板11はステンレスからなり、その一方の面に絶縁層11aを形成し、その上に配線電極11bと歪抵抗素子11cを設け、更にその上から保護膜11dを積層形成したものである。図2に示すように、第一の固定部材21は基板11と熱膨張係数を概ね一致させたステンレスからなり、円柱部21aとこの円柱部21aと軸芯をほぼ同じくするネジ部21bを備えている。第二の固定部材31は基板11と熱膨張係数を概ね一致させたステンレスからなり、リング形状の凸部31aとこのリング形状の凸部31aと軸芯をほぼ同じくするネジ部31bを備えている。コネクタ41は、例えばガラスフィラを含有したPBT樹脂により成形されたものであり、少なくとも3本の端子41aと取付け穴41bと枠体41cを有している。
【0016】
以上の構成部品からなる歪検出装置の組立て方法について述べる。
【0017】
まず、図3(b)に示すように基板11の一方の面に絶縁層11aを印刷した後、焼成する。次に(c)のごとく、この絶縁層11aの上に配線電極11bを印刷した後、焼成し、さらに(d)のごとく、歪抵抗素子11cを配線電極11bにおいてブリッジ構成となるように印刷した後、焼成する。また(e)のごとく、これら印刷焼成された層を水分などに対する保護のために、ICなどの回路部品の実装に供するランド部および接続電極11i以外を覆うように保護膜11dを印刷した後、焼成する。次に、図2に示すように、基板11の固定に供するエリア11eの中心と第一の固定部材21の軸芯がほぼ一致するように、例えばレーザ溶接により固定に供するエリア11eと第一の固定部材21の円柱部21aとで形成される隅肉部にて一体的に固定する。同様に、第二の固定部材31も基板11の固定に供するエリア11gに、第一の固定部材21の軸芯と第二の固定部材31の軸芯が一致するように配置し、例えばレーザ溶接によりリング形状の凸部31aと固定に供するエリア11gとをレーザ溶接により一体的に固定する。このようにして固定された第一の固定部材21の円柱部21aの外周と第二の固定部材31のリング形状の凸部31aとによって基板11上で梁を構成する。コネクタ41はネジ51によりコネクタ41の取付け穴41bを通して基板11の穴部11hに固定され、さらに基板11上の接続電極11iがコネクタ41の端子41aと半田などにより金属結合される。さらにコネクタ41の枠体41cの内部は、回路部の保護のため例えばシリコン樹脂のようなもので覆うのが良い。
【0018】
なお、第一の固定部材21と第二の固定部材31の固定方法はレーザ溶接以外の溶接および接着などの方法を用いてもよい。また、第一の固定部材21と第二の固定部材31が基板11に対して上下逆の構成にしてもよい。ただし、この場合第二の固定部材31には図4に示すように基板11に設けた配線電極11bや保護膜11dとの干渉を避けるために、切り欠き部31cが必要となる。
【0019】
また、基板11と第一の固定部材21と第二の固定部材31の熱膨張係数は概ね一致させることが望ましい。また、回路部には歪抵抗素子11cの抵抗値の変動を補正するICを設けても良い。
【0020】
以上のように構成、組立てられた本発明の実施の形態1における歪抵抗装置について、その動作を説明する。
【0021】
まず、第二の固定部材31が図示しない相手側の取付け部材に取付けられる。次に第一の固定部材21が被測定物からの荷重を受けると、第一の固定部材21の円柱部21aの底面の外周と第二の固定部材31のリング形状の凸部31aの内周によって基板11上で構成された梁が撓む。この撓みによる歪によって歪抵抗素子11cの抵抗値が変化する。この歪抵抗素子11cは配線電極11bにおいてブリッジ構成となっているため歪に応じて出力が変化する。このようにして被測定物からの荷重が出力の変化として得られる。得られた出力変化は図示しない処理回路により演算処理され荷重として変換されるものである。
【0022】
以上のように本発明の実施の形態1によれば第一の固定部材21および第二の固定部材31が基板11に対して一体的に固定されていることによって、衝撃印加時に固定位置のズレを起こさないため、梁として構成される固定長さが変化しない。これにより歪検出装置の特性(感度および0点電圧など)の変動を起こさず安定した特性を維持できるという効果を有するものである。
【0023】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3および4に記載の歪検出装置について、図5を参照しながら本発明の実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0024】
基板11の固定に供するエリア11eの中央に穴部11jを設ける。また、第一の固定部材21の円柱部21aの底部にネジ部21cを設ける。さらに締付け部材61を加えた構成とする。この構成における組立てについて本発明の実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。穴部11jにネジ部21cを挿通し、この挿通されたネジ部21cを基板11に対して締付け部材61により締付け固定する。その後、第一の固定部材21の円柱部21aの底面が第一の固定部材21の軸芯とほぼ一致するように、例えばレーザ溶接により固定に供するエリア11eと第一の固定部材21の円柱部21aとで形成される隅肉部にて一体的に固定される。
【0025】
この構成によって第一の固定部材21への強度的負担を軽減することによって、衝撃印加時における固定位置の破壊限界値を高める効果を有するものである。なお、締付け部材61による締付け固定は、溶接後に行っても同じ効果がある。さらに、締付け部材61も基板11に対して例えばレーザ溶接により一体的に固定することで締付け部材61の緩みを防止し、破壊限界値を高める効果がある。
【0026】
また、図6に示すように第一の固定部材21と締付け部材61が上下逆に配置する構成も可能となる。第一の固定部材21にはつば部21dとネジ部21eが設けられている。第一の固定部材21を基板11の穴部11jを挿通した後、第一の固定部材21のつば部21dと基板11の固定に供するエリア11gを例えばレーザ溶接により固定する。基板11の穴部11jに挿通されたネジ部21eを基板11に対して締付け部材61により締付け固定する。このような構成とすることにより、上記と同様に衝撃印加時における固定位置の破壊限界値を高める効果を有するものである。
【0027】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項5に記載の歪検出装置について、図7、図8を参照しながら本発明の実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0028】
第二の固定部材31に案内部31dが設けられている。図8に示すように、この案内部31dに基板11を挿入し、第二の固定部材31と基板11を例えばレーザ溶接により一体的に固定する。この構成によって仮に第二の固定部材31と基板11の溶着部が破断しても、機械的に保持される効果を有するものである。
【0029】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4を用いて、本発明の特に請求項6に記載の歪検出装置について、図9、図10を参照しながら本発明の実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0030】
基板11に挿通穴11kを設け、第二の固定部材31のリング形状の凸部31aには鉤型部31eを設ける。この挿通穴11kに鉤型部31eを挿入し回転させることにより、図10に示すように第二の固定部材31を基板11に懸架するようにした後、例えばレーザ溶接により一体的に固定する。この構成によって仮に第二の固定部材31と基板11の溶着部が破断しても、機械的に保持される効果を有するものである。
【0031】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5を用いて、本発明の特に請求項7に記載の歪検出装置について、図11を参照しながら本発明の実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。基板11の一部を第二の固定部材31と同一の外形形状11Lとする。この構成にすることにより、例えばレーザ溶接の際には両者が突合せ形状となり、溶着時に効率良く溶着深さを得ることができるもので、第二の固定部材31と基板11との溶着強度を上げることができ衝撃印加時に固定位置の破壊限界値を高める効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の歪検出装置は、組立て時に構成された梁の長さが変化しないので特性が安定しており、出力信号の精度を必要とする歪検出装置等の用途への適用に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における歪検出装置の組立て斜視図
【図2】同歪検出装置の分解斜視図
【図3】(a)〜(e)同歪検出装置における基板の作成プロセスを示す斜視図
【図4】第二の固定部材のもう一つの実施例の斜視図
【図5】本発明の実施の形態2における歪検出装置の分解斜視図
【図6】同歪検出装置の締付け部材と第一の固定部材を上下反転した構成の分解斜視図
【図7】本発明の実施の形態3における歪検出装置の分解斜視図
【図8】本発明の実施の形態3における基板と第二の固定部材の配置を示す斜視図
【図9】本発明の実施の形態4における歪検出装置の分解斜視図
【図10】本発明の実施の形態4における基板と第二の固定部材の配置を示す斜視図
【図11】本発明の実施の形態5における歪検出装置の分解斜視図
【図12】従来の歪検出装置の下面図
【図13】従来の歪検出装置の斜視図
【図14】従来の歪検出装置の取付け状態を示す断面図
【符号の説明】
【0034】
11 基板
11a 絶縁層
11b 配線電極
11c 歪抵抗素子
11d 保護膜
11e 固定に供するエリア
11f 固定に供するエリア
11g 固定に供するエリア
11h 穴部
11i 接続電極
11j 穴部
11k 挿通穴
11L 外形形状
21 第一の固定部材
21a 円柱部
21b ネジ部
21c ネジ部
21d つば部
21e ネジ部
31 第二の固定部材
31a 凸部
31b ネジ部
31c 切り欠き部
31d 案内部
31e 鉤型部
41 コネクタ
41a 端子
41b 取付け穴
41c 枠体
51 ネジ
61 締付け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つ以上の歪抵抗素子とこの歪抵抗素子と電気的に接続される回路部を設けた基板と、前記基板に配置した歪抵抗素子を外周とする領域の中央部に固定する第一の固定部材と、前記基板に配置した歪抵抗素子の外周部に固定する第二の固定部材を有し、前記第一の固定部材の軸芯と、前記第二の固定部材の軸芯と、前記基板に配置した歪抵抗素子を外周とする領域の中心がほぼ一直線上になるように一体的に固定した構成の歪検出装置。
【請求項2】
第一の固定部材と第二の固定部材を基板に対して溶着で固定した請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項3】
基板に配置した歪抵抗素子を外周とする領域の中央に穴部を設け、さらに第一の固定部材にはネジ部を設けて、前記穴部に前記ネジ部を挿通できるようにし、この挿通された前記ネジ部を前記基板に対して締付け部材により締め付けて固定する構成とした請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項4】
第一の固定部材のネジ部を締め付けて固定する締付け部材と第二の固定部材を基板に対して溶着で固定した請求項3に記載の歪検出装置。
【請求項5】
第二の固定部材に案内部を設け、基板が前記案内部に挿入できるようにした請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項6】
基板の外周部に少なくとも1つ以上の開口穴を設け、また第二の固定部材に鉤型部を設けて、前記鉤型部が前記開口穴を通して懸架できるようにした請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項7】
基板を円弧状とし、第二の固定部材と同じ外径とした請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項8】
基板と第一の固定部材と第二の固定部材の熱膨張係数を概ね一致させた請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項9】
回路部に歪抵抗素子の抵抗値の変動を補正するICを有する請求項2に記載の歪検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−105758(P2006−105758A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292224(P2004−292224)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】