説明

歪量表示方法及びその装置、健全性評価方法

【課題】容易且つ安価に計測対象物の変位量を表示可能な歪量表示方法等を提供する。
【解決手段】歪量表示方法は、模様11b、12bが形成された模様領域11a、12aを有する一対の基体11、12の前記模様領域11a、12aが重なり合うようにして、所定の間隔を有して計測対象物に固定され、前記模様11b、12bの干渉によって発生するモアレ縞5によって前記計測対象物にかかる歪量を表示する。また、そのモアレ縞を撮影して、計測対象物の健全性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、コンクリート鋼構造物など計測対象物に発生する歪量を表示する歪量表示方法等であって、特に、モアレ縞を利用して計測対象部位の歪量を視覚的に視認可能な歪量表示方法、及びその装置、当該歪量に基づいて計測対象物の健全性を評価する健全性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建設分野では、建設物など計測対象物の歪などの変位量を計測し、当該変位量に基づいて計測対象物に作用している応力状況を把握して、その計測対象物の健全性を評価することがある。
【0003】
このような計測対象物に作用する応力を推定する方法として、計測対象物に歪ゲージを貼着して当該計測対象物に発生する歪を計測する方法や、計測対象物に測定箇所表面に光ファイバーを貼付し、当該光ファイバーの伸縮による歪に基づいて計測対象物の変形量を測定する装置が存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−237219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、計測対象物に光ファイバーを取り付けて計測対象物の変形量を測定する場合には、当該光ファイバーの伸縮量を求めるための歪計測器などが必要となり、計測装置導入にかかるコストが高価にならざるを得ないばかりか、当該歪計測器などを設置するための手間などがかかる。
【0006】
また、構造物の歪を検出し、当該構造物の健全性などを把握する社会的ニーズは高いにもかかわらず、従来の計測手法では、計測方法の困難さや計測装置導入にかかるコストが高価となるなど障害となっている。
【0007】
また、歪計測は、一般的に50年〜100年という長期間で計測を行う必要があるため、センサや計測装置の耐久性が問題となっている。
【0008】
本願は上記各問題点の解決を課題の一例として為されたもので、第1の目的は容易且つ安価に計測対象物の変位量を表示可能な歪量表示方法等を提供することであり、第2の目的は計測対象物の変位量から計測対象物の健全性を評価する健全性評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の歪量表示方法は、模様(11b、12b)が形成された模様領域(11a、12a)を有する一対の基体(11、12)の前記模様領域が重なり合うようにして、所定の間隔を有して計測対象物(2)に固定され、前記模様の干渉によって発生するモアレ縞(5)によって前記計測対象物にかかる歪量を表示することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の歪量表示方法は、請求項1に記載の歪量表示方法において、一方の前記基体の模様は、平行且つ等間隔なパターンで構成される直線群で構成され、他方の前記基体の模様は、連番で構成される複数の数字をスリット状に形成した数字群で構成され、前記歪量を数値化して表示することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の歪量表示方法は、請求項2に記載の歪量表示方法において、前記各基体には、前記歪量を実際の数値で表示するために、各数値の桁をそれぞれ表示するための複数の数字群と複数の直線群で構成される模様が区分けされて形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の歪量表示方法は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歪量表示方法において、前記計測対象物と一方の基体、及び一方の基体と他方の基体の間は、液状の潤滑剤により密着していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の歪量表示方法は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の歪量表示方法において、前記基体の一端に前記計測対象物と同じ熱膨張率を有する材料によって形成された延長体を取り付け、歪量を求めるための前記基体間の距離を示す基線長を延長することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の計測対象物の健全性評価方法は、模様が形成された模様領域を有する一対の基体の前記模様領域が重なり合うようにして、所定の間隔を有して計測対象物に固定され、前記模様の干渉によって発生するモアレ縞を撮影して、その撮影されたモアレ縞の表示位置によって計測対象物の健全性を段階的に評価することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の歪量表示装置(10)は、所定の間隔を有して計測対象物に固定され、模様が形成された模様領域を有する一対の基体を具備し、夫々の模様領域が重なり合うように配置され、前記模様の干渉によって発生するモアレ縞によって前記計測対象物にかかる歪量を表示することを特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載の歪量表示装置は、請求項7に記載の歪量表示装置において、前記基体を回転可能に支持し、前記計測対象物に固定される基台(35)と、各基体が離反する一方向に移動が規制される移動規制体(37)と、を更に備えていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項9に記載の歪量表示装置は、所定の間隔を有して計測対象物に固定され、模様が形成された模様領域を有する一対の基体(51、52)と、前記模様の干渉によって横方向に所定のピッチ間隔で発生するモアレ縞を撮像する撮像装置(55)と、その撮像されたモアレ縞のピッチ間隔に基づいて前記計測対象物に発生する歪量を演算し、表示する歪量演算装置(60)と、を備える歪量表示装置において、前記基体には、少なくとも1ピッチ分のモアレ縞が表示される長さを想定し、当該モアレ縞が縦方向に分割して表示されるように前記模様が形成され、前記歪量演算装置は、分割して表示されるモアレ縞をつなぎ合わせ、モアレ縞のピッチ間隔(S)を求めることで歪量が演算されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】計測対象物に歪量表示装置を取り付けた状態を示す平面図である。
【図2】歪量表示装置の設置例を示す断面図である。
【図3】歪量表示装置に表示されるモアレ縞の一例を示し、図3(a)はモアレ縞の一例を示す図、図3(b)は一方の基体の模様領域の模様を示す図、図3(c)は他方の基体の模様領域の模様を示す図である。
【図4】健全性評価装置の構成図である。
【図5】歪量を数値で表示する一例を説明するための図である。
【図6】歪量を複数桁の実際の数値で表示する一例を説明するための図である。
【図7】他の歪量表示装置の設置例を示し、図7(a)は断面図、図7(b)は平面図である。
【図8】他の歪量表示装置の構成図である。
【図9】モアレ縞の表示例を示し、図9(a)はモアレ縞の表示例を示す図、図9(b)は図9(a)に示すモアレ縞を分割して表示する表示例を示す図である。
【図10】他の歪量表示装置の外観図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願の最良の実施形態について、図1乃至図7を用いて詳細に説明する。図1は計測対象物に歪量表示装置を取り付けた状態を示す正面図、図2は歪量表示装置の設置例を示す断面図、図3は歪量表示装置に表示されるモアレ縞の一例を示し、図3(a)はモアレ縞の一例を示す図、図3(b)は一方の基体の模様領域の模様を示す図、図3(c)は他方の基体の模様領域の模様を示す図、図4は健全性評価装置の構成図、図5は歪量を数値で表示する一例を説明するための図、図6は歪量を複数桁の実際の数値で表示する一例を説明するための図、図7は他の歪量表示装置の設置例を示し、図7(a)は断面図、図7(b)は平面図である。
【0020】
なお、以下に説明する実施の形態は、一実施例として、橋桁3に支持されたコンクリート構造物を計測対象物2として適用した場合の実施形態を示すものであるが、この実施形態に限定されるものではなく、たとえば、鉄骨鋼構造物、岩盤、金属材料、石材、石膏等にも適用可能である。なお、以下に示す計測対象領域Yとは、計測対象とすべき点(基準点)Aを含む周辺領域である。
【0021】
本実施形態の歪量表示方法は、図1〜図3に示すように、模様11b、12bが形成された模様領域11a、12aを有する一対の基体11、12を備え、基準点Aにおいて各基体11、12の模様領域11a、12aが重なり合うようにして、各基体11、12が所定の間隔(基線長X)を有して計測対象物2に固定される。なお、基線長Xとは、歪量を求めるための基体11、12間の距離(長さ)を示すものであって、長いほど大きな変位を得られるが、その長さは適宜設定される。
【0022】
そして、計測対象物2に作用する応力変動により少なくとも一方の基体11が移動することで前記模様11b、12bの干渉によって移動する模様縞によって前記計測対象物2にかかる歪量を表示する。
【0023】
ここで、模様11b、12bとは、例えば、図3(b)に示すように、同一ピッチp(等間隔)で平行に配置された複数の直線パターンで構成される直線群であり、模様縞とは、例えば、図3(a)に示すように、一般にモアレ縞5と称され、一方の直線パターンを少し傾けて重ね合わせた時に発生する。このモアレ縞5によって、直線パターン同士の微小な変位Δtをモアレ縞5の移動量Tとして大きく拡大することができる。
【0024】
なお、ピッチpの間隔や一方の直線パターンに対する他方の直線パターンの傾斜角∠α(図3(c))を適宜変更することにより、モアレ縞5の発生形態を任意に設定可能である。例えば、上記実施形態は、図3(a)に示すように、モアレ縞5が所定のピッチ間隔で縦方向に表示されるが、一方の直線パターンを傾斜させないで重ね合わせることで、図8に示すように、モアレ縞5を所定のピッチ間隔で横方向に表示させることも可能である。
【0025】
前者は、変位量に応じて上下方向へとその模様が移動するものであって、例えば、変位量が大きいほど、下方向へその模様が移動する。一方で後者は、変位量に応じて左右方向へとその模様が移動するものであって、例えば、変位量が大きいほど右方向へその模様が移動する。
【0026】
このように本実施形態の歪量表示方法は、モアレ縞5を利用して計測対象物2に生じる歪量を表示するものであり、この歪量は基体11、12間の変位量に比例するため、この変位量の増加にしたがって、モアレ縞5が基体11、12の縦幅間の上側から下側へと変位するように設定することで、モアレ縞5の表示位置を視認するだけで歪量を推測可能としたものである。なお、画面上に複数のモアレ縞5が発生すると移動したときのモアレ縞を確認することが困難となるため、図4に示すように、当該画面上には1つのモアレ縞5が表示されるように設定される。
【0027】
上述した歪量表示方法で用いられる歪量表示装置10としての一対の基体11、12は、具体的には、図2に示すように、略平面状であって非透明部材により形成された一方の基体11と、略L字状であって透明部材により形成された他方の基体12と、を備えている。各基体11、12は基準点Aを挟むようにして離間して計測対象物2に固定され、他方の基体12の模様領域12aが一方の基体11の模様領域11aの上側になるように重なり合うようにして配置される。そして、計測対象物2に作用する応力変動により歪が発生すると、一方又は他方、又は両方の基体11、12が移動することによって、上述したように、その歪量に応じて当該モアレ縞5が下方向に移動(変位)する。
【0028】
また、基体11、12の材質はどのような材質であっても構わないが、基体11、12が特に軟らかい材質である場合、一方の基体11と他方の基体12との間、一方の基体11と計測対象物2との間の隙間を均一にすることは難しい。この隙間が均一でない場合は誤差の要因となるため、例えば、図示しないが、液状の潤滑剤としての油等を隙間に入れる(基体11、12又は計測対象物2に塗布するなど)ことで密着させることが好ましい。この潤滑剤により、表面張力により、基体11、12が引き付けられ隙間が均一となるため、簡単に誤差を軽減することができる。
【0029】
なお、本実施形態の歪量表示装置では、モアレ縞5の変位量が歪量として基体11、12の縦幅間H(図3(a))に表示されるように、ピッチpの間隔や傾斜角αが適宜変更される。
【0030】
次に、歪量表示装置10を利用して計測対象物2の健全性を評価する健全性評価装置50について図4を用いて説明する。健全性評価装置50は、上述した歪量表示装置10を構成する基体11、12と、この基体11、12の模様が干渉することによって表示されるモアレ縞5を撮像する撮像装置15と、撮像された画像解析の結果、計測対象物2の健全性を段階的に評価する評価装置20と、を備えている。
【0031】
撮像装置15は、例えば、デジタルカメラ等の光学式撮像装置であって、計測対象物2から所定の距離離れた場所から歪量表示装置10によって表示されるモアレ縞5を撮像し、撮像した画像データを評価装置20に送信する。
【0032】
評価装置20は、撮像装置15によって撮像された画像データに基づいてモアレ縞5の表示位置を特定する画像解析部22と、解析結果に基づいて計測対象物の健全性を段階的に評価する評価部24と、を備える。また、評価装置20は、図示しないが、評価結果を表示する表示部や評価結果を他の通信端部に送信する通信部等を備えている。なお、評価装置20は、例えば、一般的に汎用コンピュータと称される装置であって、各部22、24を統括的に制御する制御部25を備える。
【0033】
制御部25は、CPU(Central Processing Unit)、作業用RAM(Random Access Memory)、及び各種プログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)等によって構成されている。そして、制御部25は、CPUが例えばROM等に記憶された画像解析プログラム、及び評価プログラムを実行することにより、画像解析部22によってモアレ縞の表示位置が特定され、評価部24によって現状における計測対象物の健全性が評価され、表示部等に表示、又は通信部を用いて他の端末に報知等されるものである。
【0034】
具体的には、制御部25は、撮像装置15から送信される画像データに基づいて画面上の上下方向におけるモアレ縞5の表示位置を特定するとともに、その表示位置から、例えば、高・中・低の3段階で健全性を評価し、その評価結果を表示等する。ここで、高評価とは、図4中(a)に示すように、画面上の上部位置にモアレ縞5が表示される状態を示し、計測対象物2の健全性が高いことを表す。また、中評価とは、図4中(b)に示すように、画面上の中央位置にモアレ縞5が表示される状態を示し、計測対象物2の診断が必要である程度を表す。さらに、低評価とは、図4中(c)に示すように、画面上の下部位置にモアレ縞5が表示される状態を示し、計測対象物2に何らかの処置が必要であり、計測対象物の健全性が低いことを表す。
【0035】
なお、モアレ縞5の表示位置の特定にあっては、例えば、予め画面上を上下方向に複数の領域に区分けしておき、それぞれの領域の色調(濃淡、明暗等)を解析し、モアレ縞5がどの領域に存在するかを特定する。また、予め歪量が多くなるほど、モアレ縞5が下側に推移するように設定される。このようにすれば、モアレ縞5の表示位置から容易に計測対象物2の健全性を判断できる。
【0036】
このように本実施形態の健全性評価装置50では、模様11b、12bが形成された模様領域11a、12aを有する一対の基体11、12の前記模様領域11a、12aが重なり合うようにして、所定の間隔を有して計測対象物2に固定され、前記計測対象物2に作用する応力変動により少なくとも一方の基体11が移動して前記模様の干渉によって移動(発生)するモアレ縞5を撮像装置15により撮影して、評価装置20の制御部25がその撮影されたモアレ縞5の表示位置によって計測対象物2の健全性を段階的に評価する。よって、計測対象物2の正確な劣化状態を逐次監視することが容易にできる。
【0037】
上述したように本実施形態では、モアレ縞5の表示位置により、計測対象物2の健全性を段階的に評価するようになっているが、数値化することで、より具体的に歪量を表現しても構わない。
【0038】
この場合、歪量表示装置10は、図5に示すように、一方の基体11をスリット状の算用数字を下方に並べて配置することで、基体11、12の移動量に応じて、下方の数値が浮き出るように表示させることが可能となる。
【0039】
具体的に、歪量表示装置10は、所定のピッチでスリットが形成された複数の連続する算用数字で構成される数字パターン16を有する一方の基体11と、所定のピッチpで所定の角度傾けて平行に配置された複数の直線群で構成される直線パターン17を有する一方の基体12と、を備え、当該直線パターン17と数字パターン16とが重ね合わせられるようにして配置される。なお、各基体11、12は、直線パターン17及び数字パターン16が歪発生方向に対して直交する方向に線の方向及び数字が整列するように配置される。
【0040】
上述したようにモアレ縞5は基体11、12間の変位量の増加にともなって上側から下側へと移動するように設定されているため、この特性を利用すれば、本実施形態の歪量表示装置10では、歪量に応じて算用数字が上から下へ順々に浮き上がって視認可能となっており、その数値によっておおよその歪量を知ることが可能となっている。
【0041】
また、上述した歪表示装置10では歪量をその危険度に応じて段階的に表示したものであるが、図6に示すように、その歪量を実際の数値として複数桁の数字で表示しても構わない。
【0042】
具体的には、表示する桁数分の領域を縦方向に区分けし並べて配置し、一方の基体41の各領域41a、41b、41cには、所定のピッチでスリットが形成された連続する複数の算用数字で構成される数字パターン16を形成し、他方の基体42の各領域42a、42b、42cには、所定のピッチで所定の角度傾けて平行に配置された複数の直線群で構成される直線パターン17を形成する。基体41の各領域41a〜41cは、上から順に、例えば、百の位、十の位、一の位を表し、基体42の各領域42a〜42cに形成される直線パターン17は各桁の歪量の実際値を示す数値が表示されるように、ピッチ間隔や傾斜角が適宜変更される。
【0043】
このように構成された歪量表示装置10によれば、各領域(各桁)の算用数字が浮き上がって視認可能となり、その数値によって歪量の実際値を知ることが可能である。
【0044】
なお、上述した健全性評価装置50では、制御部25は、画像解析部22によって、各領域(各桁)の当該数値を特定し、実際の数値を特定し、評価部24によって当該実際の数値から現状における計測対象物の健全性を評価する。具体的には、制御部25は、予め危険度を段階的に定めておき、その危険度に対応する数値範囲を規定しておくことで、評価部24では、画像解析部22によって特定された数値に基づいて危険度を判定させる。
【0045】
次に、歪量表示装置10の他の設置例について説明する。上述した歪量表示装置10は、計測対象物に対して基体が固定されるのに対して、本設置例の歪量表示装置30では、計測対象物2に対して基体31、32が回転可能に取り付けられる点で異なる。
【0046】
本実施例の歪量表示装置30は、一対の基体31、32と、夫々の当該基体31、32を回転可能に支持する基台35と、を備え、当該基台35は、例えば、計測対象物2に埋め込んで固定され、基体31、32は基台35上を回転可能になっている。なお、一方の基体31は、他方の基体32に重ね合わさるようにその上部に配置される。また、各基体31には、上述した基体11、12と同様に、模様11b、12bが形成された模様領域11a、12aを有する。
【0047】
また、基体31、32には、各基体31、32が離反する一方向にのみ移動可能な移動規制体37が設けられている。当該移動規制体37は、例えば、他方の基体32に設けられる枠体38であって、当該枠体38は、一方の基体31の三方を囲むように設けられる。
【0048】
このように構成された歪量表示装置30によれば、例えば、歪の発生方向に応じて基台が移動し、その歪量に応じて基体が移動するので、正確に歪量を表示することが可能である。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態について図8及び図9を用いて説明する。図8は他の歪量表示装置の構成図であり、図9はモアレ縞の表示例を示す図である。
【0050】
本実施形態は、上下一対の基体51、52に表示されるモアレ縞5によって歪量を演算して表示するものである。図8に示すように、歪量表示装置80は、模様が形成された上下一対の基体51、52と、この基体51、52の模様が干渉することによって表示されるモアレ縞5を撮像する撮像装置55と、撮像された画像解析の結果、歪量を求める歪量演算装置60と、を備えている。
【0051】
この歪量表示装置50は、モアレ縞5を所定のピッチで横方向に表示させるように、各基体51、52に形成される模様や模様のピッチの間隔等が適宜変更される。
【0052】
撮像装置55は、当該モアレ縞5を撮影する装置であって、この撮像装置55では、図9(a)に示すように、1ピッチ以上のモアレ縞5が撮影される。
【0053】
ここで、高倍率のモアレ縞である程、ピッチ間隔Sは大きくなり、言い換えれば、高精度で計測を行うためには、このピッチ間隔Sは大きくなる。よって、基体51、52の長さは当然長くなることになるが、設置作業に対する作業者の負担が大きくなるとともに、基体51、52と計測対象物2との熱膨張率が異なる場合には特に基体51、52の長さが長い場合に温度による誤差が歪量の計測に影響を与えることが考えられる。
【0054】
そこで、図9(a)に示すように、実際に必要な長さの基体を想定し、図9(b)に示すように、当該基体51、52を領域R1〜R4毎に多分割して縦方向に並べることで省スペースの基体とすることが可能となり、作業者の負担を軽減できるとともに、温度による誤差を軽減できる。
【0055】
このとき、当然のことながら、各基体51、52の分割された各領域R1〜R4に対応する模様を構成する直線群のピッチの間隔等が適宜変更されることはいうまでもない。
【0056】
撮像装置55は、このようにして形成された基体51、52の模様によって発生するモアレ縞5の全体像を撮像し、歪量演算装置60に当該撮像したデータを送信する。
【0057】
歪量演算装置60は、撮像装置55によって撮像された画像データに基づいて分割された領域R1〜R4を繋ぎ合わせ、1ピッチ以上のモアレ縞5を作成し、当該モアレ縞5のピッチ間隔Sから歪量を演算し、図示しない表示部に表示する。なお、歪量演算装置60は、例えば、一般的に汎用コンピュータと称される装置であって、制御部65を備える。
【0058】
制御部65は、CPU(Central Processing Unit)、作業用RAM(Random Access Memory)、及び各種プログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)等によって構成されている。そして、制御部65は、CPUが例えばROM等に記憶された歪量演算プログラムを実行することにより、上述したように歪量が演算される。
【0059】
このように構成された歪量表示装置50によれば、省スペースの基体とすることができるので、設置作業に対する作業者の負担を軽減できるとともに、歪量の算出に際して温度による誤差の影響を軽減することができる。
【0060】
以下、さらに本発明の他の実施形態について図10を用いて説明する。図10は他の歪量表示装置の外観図である。
【0061】
本実施形態は、歪量を計測する場合に、基線長Xを長くした方が大きな変位が得られることから、基線長Xを長くするほど高精度の計測が可能であることに着目したものである。ここで、温度変化について考えると、基体11、12と計測対象物2との熱膨張率が等しければ温度による誤差は生じないものの、基体11、12と計測対象物との熱膨張率が異なる場合には、基線長が長い程、温度による誤差が歪量の計測に影響を与えることが考えられる。しかしながら、計測対象物2と同じ熱膨張率を有する基体を用いることは現実的でないことから、本実施形態では、計測対象物2と同じ材料で形成された板状体62、63を用いることによって、基線長Xを長くとるようにしている。
【0062】
具体的には、図9に示すように、本実施例の歪量表示装置70は、計測対象物2と同じ材料で形成された板状体62、63を基体11、12の端部にそれぞれ連結するようにしている。また、板状体62、63の他方の端部は、計測対象物2に固定される。
【0063】
このように構成された歪量表示装置70によれば、基線長を長くとれるので高精度の計測を行うことができる。また、温度による誤差の影響を軽減できる。
【0064】
また、計測対象物2の材料が不明である場合、図示しないが、熱膨張率が異なる(材料が異なる)板状体を配置した歪量表示装置70を複数組み設けることで、温度変化によって表示されるモアレ縞には差が生じる。この差より温度を算出し、その材料によって特定される熱膨張率による誤差から歪量を求めるようにしても良い。
【0065】
なお、本実施形態は一形態であって、この形態に限定されるものではない。例えば、一対の基体11、12の間に隙間がある場合には、視認する角度によってモアレ縞5が変化し、言い換えれば、視認する角度によって見え方に誤差(ずれ)が生じる。そこで、図示しないが、一対の基体を計測対象物の同じ平面上に複数設置し、当該基体により種類の異なるモアレ縞5を2種類以上表示し、視認する角度によって、それぞれのモアレ縞の動きに差が生じるようにしておき、この差により視認している角度を演算することでこの誤差を解消するようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態の歪量表示装置では、視認する位置によっては、一対の基体の位置関係がずれるために、視差によりモアレ縞の見え方にずれが生じるが、視認側に設けられる基体にFOP(Fiber Optic Plate)材料を用いることで解消される。また、傾斜させるべき模様はどちらか一方でよく、本実施形態に限定されるものではない。
【0067】
また、移動規制体37は、各基体31、32が離反する一方向にのみ移動可能となるようにできればよく、例えば、他方の基体32から上方に凸部を設けて、その凸部と嵌合する各基体31、32が離反する一方向に延びる溝を一方の基体31に設けるような形態であっても構わない。
【0068】
さらに、適宜上記各実施形態を組み合わせて構成しても構わない。
【符号の説明】
【0069】
2 計測対象物
5 モアレ縞
10、80、70 歪量表示装置
11、12 基体
11a、12a 模様領域
11b、12b 模様
35 基台
37 移動規制体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様が形成された模様領域を有する一対の基体の前記模様領域が重なり合うようにして、所定の間隔を有して計測対象物に固定され、前記模様の干渉によって発生するモアレ縞によって前記計測対象物にかかる歪量を表示することを特徴とする歪量表示方法。
【請求項2】
一方の前記基体の模様は、平行且つ等間隔なパターンで構成される直線群で構成され、
他方の前記基体の模様は、連番で構成される複数の数字をスリット状に形成した数字群で構成され、
前記歪量を数値化して表示することを特徴とする請求項1に記載の歪量表示方法。
【請求項3】
前記各基体には、前記歪量を実際の数値で表示するために、各数値の桁をそれぞれ表示するための複数の数字群と複数の直線群で構成される模様が区分けされて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の歪量表示方法。
【請求項4】
前記計測対象物と一方の基体、及び一方の基体と他方の基体の間は、液状の潤滑剤により密着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の歪量表示方法。
【請求項5】
前記基体の一端に前記計測対象物と同じ熱膨張率を有する材料によって形成された延長体を取り付け、歪量を求めるための前記基体間の距離を示す基線長を延長することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の歪量表示方法。
【請求項6】
模様が形成された模様領域を有する一対の基体の前記模様領域が重なり合うようにして、所定の間隔を有して計測対象物に固定され、前記模様の干渉によって発生するモアレ縞を撮影して、その撮影されたモアレ縞の表示位置によって計測対象物の健全性を段階的に評価することを特徴とする計測対象物の健全性評価方法。
【請求項7】
所定の間隔を有して計測対象物に固定され、模様が形成された模様領域を有する一対の基体を具備し、
夫々の模様領域が重なり合うように配置され、前記模様の干渉によって発生するモアレ縞によって前記計測対象物にかかる歪量を表示することを特徴とする歪量表示装置。
【請求項8】
前記基体を回転可能に支持し、前記計測対象物に固定される基台と、
各基体が離反する一方向に移動が規制される移動規制体と、
を更に備えていることを特徴とする請求項7に記載の歪量表示装置。
【請求項9】
所定の間隔を有して計測対象物に固定され、模様が形成された模様領域を有する一対の基体と、前記模様の干渉によって横方向に所定のピッチ間隔で発生するモアレ縞を撮像する撮像装置と、その撮像されたモアレ縞のピッチ間隔に基づいて前記計測対象物に発生する歪量を演算し、表示する歪量演算装置と、を備える歪量表示装置において、
前記基体には、少なくとも1ピッチ分のモアレ縞が表示される長さを想定し、当該モアレ縞が縦方向に分割して表示されるように前記模様が形成され、
前記歪量演算装置は、分割して表示されるモアレ縞をつなぎ合わせ、モアレ縞のピッチ間隔を求めることで歪量が演算されることを特徴とする歪量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−247229(P2012−247229A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117389(P2011−117389)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(591248223)株式会社計測リサーチコンサルタント (12)
【Fターム(参考)】