説明

歯のホワイトニング用の多孔性ポリマーコーティング

本発明は、歯のホワイトニング用組成物に関し、この組成物は、(i)歯に付着することができる、実質的に水不溶性で実質的に非分解性のポリマーマトリックス構成要素であって、ポリマーマトリックス構成要素が非固形形態である場合は化学的変質により凝固可能である、ポリマーマトリックス構成要素と、(ii)ポリマーマトリックス構成要素に埋め込まれた気体または液体充填小孔であって、気体または液体充填小孔の少なくとも一部は、約70nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有し、気体または液体充填小孔およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.1の屈折率差を有する。本発明は、アプリケータ装置と組み合わせて、前記の組成物を含有する、歯のホワイトニング用システムにも関する。本発明はまた、歯のホワイトニング用組成物を歯に適用する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、概して歯の化粧品(dental cosmetics)の分野に関し、より詳細には、歯をホワイトニングする組成物に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
歯のホワイトニングは、一般的には、汚れ(すなわちクロモゲン)を歯から除去するために、歯を化学的に処理することにより行われる。ほとんどの化学的処理は、過酸化水素、過酸化カルバミド、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムおよび同種のものなどの漂白剤を利用する。化学的処理はしばしば、汚れ吸着を脱着または防止するのに役立つ研磨剤の使用を伴う。
【0003】
しかしながら、このような汚れ除去用化学薬品は、歯のホワイトニングに誘発される一時的な敏感さの可能性の増加、一時的な歯肉炎症の可能性の増加、および、所望の歯のホワイトニングレベルを達成するため歯に対する度重なる、または長期にわたる施与の必要性といった、いくつかの欠点を有する。さらに、化学的処理は、特定のタイプの歯の汚れには、しばしば効果がない。
【0004】
ポーセレン(セラミック)の歯の前装(dental veneers)が、歯の汚れを隠すため、汚れた歯を覆うのに、当技術分野で使用されてきた。これらは、無孔で光沢のある表面をもたらし、これにより、歯の光沢が増す。セラミックの前装は、前述の化学的な汚れ除去プロセスに対する代替案を提供するが、典型的には、前装を受容するそれぞれの歯について特注設計し、また、ぴったり合うよう特別に作られなければいけないという、重大な欠点がある。これにより、ポーセレンの前装は特に値段が高くなる。さらに、適用プロセスでは、典型的には、ポーセレンの前装に適応するように、歯を縮小成形する必要がある。歯の縮小成形は、歯を永続的に変える。さらに、ポーセレンの前装は、薄く、もろいことが知られており、そのため、使用中に簡単に損傷することがよく知られている。これらの理由から、ポーセレンの前装は、典型的には、変色した歯または見苦しい歯の、より深刻なケースに推奨され、一方、化学的な歯のホワイトニングは、より一般的で普通の歯の変色に推奨される。
【0005】
汚れの化学的除去を必要とせず、ポーセレンの前装の欠点を軽減または排除する、歯のホワイトニングプロセスに対する必要性が、当技術分野には残っている。費用対効果が高く容易な方法で歯に適用できる、歯のホワイトニング用組成物が当技術分野では特に必要とされている。ぴったり合うように特別に作ることや、縮小加工工程を必要とせずに歯に容易に適用でき、かつ、もろくない、歯のホワイトニング用組成物には、特別な利点がある。このような組成物および使用方法により、非化学的なホワイトニングの代替案が、より主流になり、また一般社会に利用可能となることができる。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、知覚される歯の白さを増大するため、コーティングとして歯に容易に適用され得る、歯のホワイトニング用組成物に関する。この組成物は、約100ナノメートル(100nm)〜約5ミクロン(5μm)のサイズ範囲以内の気体充填または流体充填区画(本明細書では、小孔、空隙、もしくは気泡とも呼ばれる)を内部に収容する、実質的に水不溶性で実質的に非分解性のポリマーマトリックス(すなわち連続相)を含有し、気体または液体およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.1の屈折率差を有する。組成物の気体または液体小孔とポリマーマトリックスとの屈折率差により、光の回折(すなわち散乱)が促進され、これにより、より白い外観が生じる。
【0007】
歯のホワイトニング用組成物の構成要素は、歯のホワイトニング用組成物が口腔環境で実質的に非分解性であり、非毒性であり、微生物増殖に抵抗力があり、歯の表面に付着することができるようになっている。ポリマーマトリックス(すなわち組成物)が非固形形態である場合、化学的変質により凝固することができる。一実施形態では、組成物は、硬化性非固形組成物として歯に適用され、その後、凝固フィルム形成プロセスによって、固形フィルムへと硬化する。別の実施形態では、組成物は、予め形成された(すなわち予め硬化した)固形フィルムとして、歯に適用される。
【0008】
本発明は、前述した歯のホワイトニング用組成物を製造するための前駆体組成物にも関し、前駆体組成物は、前述したポリマーマトリックスと、その内部に埋め込まれた水溶性かつ/または生分解性粒子と、を含有し、前駆体組成物が口腔内に見られるような水性かつ/または生分解性環境に曝された場合に、前述した気体もしくは液体充填小孔が生成される。
【0009】
本発明は、前述の歯のホワイトニング用組成物または前駆体組成物と、その組成物を歯に送達できる1つまたは複数の塗布装置と、を含む、歯のホワイトニングシステムにも関する。
【0010】
本発明は、前述の歯のホワイトニング用組成物または前駆体組成物を歯に適用して、歯のホワイトニング用組成物または前駆体組成物の付着した固形フィルムが歯に形成されるようにすることにより、歯を白くする方法にも関する。
【0011】
本発明は、有利なことに、歯のホワイトニング用組成物と、結果として生じるプロセスと、を提供し、このプロセスは、化学的な汚れ除去プロセスの必要性を不要にするものである。さらに、歯のホワイトニング用組成物は、費用対効果が高く、ぴったり合うように特別に作る必要性、または縮小加工工程なしで、容易に歯に適用され得る。結果として得られる、歯のコーティングは、光沢のある白い外観をもたらすと共に、硬質で、もろくなく、分解および微生物増殖に対して抵抗力がある。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
第1の態様では、本発明は、歯のホワイトニング用組成物に関する。歯のホワイトニング用組成物は、少なくとも2つの構成要素、すなわちi)実質的に水不溶性で実質的に非分解性のポリマーマトリックスと、ii)ポリマーマトリックスに埋め込まれた気体充填または液体充填小孔(気泡)と、を含有し、気体または液体充填気泡は、約100nm〜約5μmの範囲のサイズを有する。
【0013】
口腔環境において水不溶性で実質的に非分解性であることに加え、ポリマーマトリックスは、毒性がなく、微生物増殖に抵抗力があり、歯の表面に付着することができる。ポリマーは、熱可塑性物質および熱硬化性物質のどちらであってもよく、連鎖重合および逐次重合を通じて合成されることができる。
【0014】
特定の実施形態では、ポリマーマトリックスは、口腔環境にある間に実質的にわずかな劣化または腐食を伴って、その形態学的完全性を長期間(例えば、数日、数週、または数ヶ月)にわたって維持することにより、実質的に非分解性となる(すなわち耐久性がある)。例えば、特定の実施形態では、歯の上の組成物のポリマーフィルムの全重量、被覆領域、または厚さが、30日間にわたって、±20%以内、さらに好ましくは±10%以内に維持される。他の実施形態では、ポリマーフィルムは、歯磨きと歯磨きの間または歯科衛生のイベントとイベントの間に持続するよう設計される。好ましくは、ポリマーマトリックスはまた、微生物がポリマーマトリックスに結合または付着するのを妨げる(例えば、バイオフィルム形成の妨害)。
【0015】
ポリマーマトリックスはまた、歯の表面に付着できなければならない。典型的には、ポリマーマトリックスに極性基を含めることで、歯に対するポリマーマトリックスの付着が容易になる。いくつかのタイプの、この目的に特に適した極性基には、カルボン酸、アミン、エステル、アミド、ヒドロキシル、ウレタン、尿素、および尿素基が含まれる。極性基のない、実質的に無極性の(例えば炭化水素またはフッ化炭化水素)ポリマーマトリックスは、歯の表面との相互作用が不十分であると予想されるので、それらのタイプのポリマーは好ましくない。
【0016】
一実施形態では、組成物(すなわちポリマーマトリックス)は、固形形態であり、典型的には、歯に適用される準備のできたフィルムとして、予め成形される。本明細書で使用される組成物の「固形形態」とは、流れず、局所圧力により押すことができず、典型的な(標準的な)条件下でその形態を強固に維持する、組成物の形態を意味するために使用される。組成物は、熱可塑性材料または熱硬化性材料の特性を有することができる。好ましくは、組成物は、もろくない、すなわち、削り取りまたは深割れに抵抗力がある。組成物は、口腔環境中で歯に対して使用される間、固形のままであることができなければならない。
【0017】
あるいは、組成物は、組成物を歯に適用する前または適用中に、非固形形態(例えば液体またはペースト)であってもよい。しかしながら、組成物は、固形形態でないとき、化学的変質により凝固可能である特性を有する。「化学的変質」とは、放射、熱、または化学的硬化などのプロセスによりもたらされ得る、組成物の化学結合構造における変化を意味する。したがって、組成物が非固形状態にあるとき、組成物は、凝固を可能にする適切な化学官能性(chemical functionality)を有する。凝固プロセスはまた、単に、組成物(またはその溶液)を歯の上へ乾燥させることを含み得る。
【0018】
好適な実施形態では、ポリマーマトリックスは、ビニルポリマーである(またはビニルポリマーを含む)。ビニルポリマーが合成され得るいくつかのタイプのビニルモノマー単位には、スチレン(例えば、ポリスチレン、もしくはスチレンのコポリマー)、酢酸ビニル(例えばポリ(酢酸ビニル)、もしくは酢酸ビニルのコポリマー)、エチレン(例えば、ポリエチレン、もしくはエチレンのコポリマー)、プロピレン(例えば、ポリプロピレン、もしくはプロピレンのコポリマー)、ビニルトルエン(例えば、ポリビニルトルエン、もしくはビニルトルエンのコポリマー)、クロロ含有ビニルモノマー、例えば塩化ビニル(例えば、ポリ(塩化ビニル)、もしくは塩化ビニルのコポリマー)、および、フルオロ含有ビニルモノマー、例えばフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシビニルモノマー(perfluoroalkoxyvinyl monomers)、およびフッ化ビニリデン(例えばポリ(フッ化ビニリデン))、ならびに、これらのモノマーのうちいずれかのポリマーまたはコポリマーが含まれる。
【0019】
ビニルポリマーは、ホモポリマーであってよく、あるいは、2つまたは3つ以上の異なるタイプのビニルモノマー(単位)から得られたコポリマーであってもよい。本明細書で考えられる異なる種類のコポリマーのいくつかの例には、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0020】
さらに好適には、ビニルポリマーの少なくとも一部が、アクリレート基(acrylate group)を含有する1つまたは複数のモノマーから得られる。一実施形態では、ビニルポリマーは、非アクリレート単位およびアクリレート単位(non-acrylate and acrylate units)の双方で構成される。別の実施形態では、ビニルポリマーは、完全にアクリレート単位で構成され、アクリレート単位は全て化学的に同じ(すなわちホモポリマー)であってよく、または、化学的に異なっていてよい(すなわちコポリマー、ターポリマー、または、より高次のポリマー系(higher polymer system))。
【0021】
一実施形態では、1つまたは複数のアクリレートモノマーの少なくとも一部は、以下の式によるものである:
【化1】

【0022】
式(1)では、R、R、およびRは独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表し、Rは、水素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表し、炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子で置換されてもよい(すなわちオプションとして)。
【0023】
式(1)に対してさらに具体的な実施形態では、1つまたは複数のアクリレートモノマーの少なくとも一部は、以下の式によるものである:
【化2】

【0024】
式(2)では、Rは、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜3個の炭素原子を含有する)を表し、Rは、飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表し、炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子で置換されてよい(すなわちオプションとして)。
【0025】
式(1)または(2)により決定されるモノマーのいくつかの例には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、3−メチルアクリル酸、3,3−ジメチルアクリル酸、2,3−ジメチルアクリル酸、2−フルオロアクリル酸、2−クロロアクリル酸、2−フルオロアクリル酸メチル(methyl 2-fluoroacrylate)、2−シアノアクリル酸、2−シアノアクリル酸メチル(methyl 2-cyanoacrylate)、2−シアノアクリル酸エチル(ethyl 2-cyanoacrylate)、2−シアノアクリル酸n−プロピル(n-propyl 2-cyanoacrylate)、2−シアノアクリル酸イソプロピル(isopropyl 2-cyanoacrylate)、2−シアノアクリル酸n−ブチル(n-butyl 2-cyanoacrylate)、および2−シアノアクリル酸イソブチル(isobutyl 2- cyanoacrylate)が含まれる。
【0026】
別の実施形態では、1つまたは複数のアクリレートモノマーの少なくとも一部は、以下の式によるものである:
【化3】

【0027】
式(3)では、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表し、Rは、水素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表し、炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、もしくは塩素原子で置換されてよく(すなわちオプションとして)、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのヒドロキシル(OH)基で置換された飽和もしくは不飽和炭化水素基である。ヒドロキシル基の数は、例えば、1、2、3、またはそれ以上であってよい。
【0028】
式(3)に対してより具体的な実施形態では、R、R、およびRは独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表し、炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、塩素原子、もしくはヒドロキシル基で置換されてよく(すなわちオプションとして)、Rは、少なくとも1つの−OH基で置換された(すなわち少なくとも1つの−OH基を含有する)飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表す。
【0029】
式(3)に対してさらに具体的な実施形態では、1つまたは複数のアクリレートモノマーの少なくとも一部は、以下の式によるものである:
【化4】

【0030】
式(4)では、R、R、およびRは独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)を表し、炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または−OH基で置換されてよい。下付きのnは、任意の適切な整数(好ましくは少なくとも1〜20まで)であってよいが、より好適には1〜12の整数、さらに好適には1〜8の整数、さらに好適には1〜6の整数を表す。異なる実施形態では、下付きのnは、好ましくは、5、4、3、2、もしくは1の値(または最大で5、4、3、2、もしくは1の値)であってもよい。
【0031】
式(4)についてさらに具体的な実施形態では、1つまたは複数のアクリレートモノマーの少なくとも一部が、以下の式によるものである:
【化5】

【0032】
式(5)では、Rは、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または飽和もしくは不飽和炭化水素基(好ましくは1〜6、1〜5、1〜4、もしくは1〜3個の炭素原子を含有する)を表し、nは、前述の任意の値(および好適には、1〜4の整数)を表し、炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、塩素原子、もしくはヒドロキシル基により置換されてよい(すなわちオプションとして)。
【0033】
式(3)、(4)、または(5)により決定されるモノマーのいくつかの例には、ヒドロキシメチルアクリレート、(2−ヒドロキシエチル)アクリレート、(1−ヒドロキシエチル)アクリレート、(3−ヒドロキシプロピル)アクリレート、(2−ヒドロキシプロピル)アクリレート、(4−ヒドロキシブチル)アクリレート、(3−ヒドロキシルブチル)アクリレート、(2−ヒドロキシルブチル)アクリレート、(5−ヒドロキシペンチル)アクリレート、(4−ヒドロキシルペンチル)アクリレート、(3−ヒドロキシペンチル)アクリレート、(6−ヒドロキシヘキシル)アクリレート、(5−ヒドロキシヘキシル)アクリレート、(7−ヒドロキシヘプチル)アクリレート、および(8−ヒドロキシオクチル)アクリレートが含まれる。さらなる例は、前述の例のいずれかにおける「アクリレート」を、例えば「メタクリレート」または「エタクリレート(ethacrylate)」で置き換えることによりもたらされる。式(3)〜(5)によるモノマーの他の例には、エチル−2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、メチル−2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル−2−(ヒドロキシエチル)アクリレート、3−(ヒドロキシメチル)メタクリレート、および3−(ヒドロキシメチル)エタクリレートが含まれる。
【0034】
1組の実施形態では、ポリマーマトリックスは、少なくとも2つのアクリレートモノマータイプ、すなわち前記の式(1)による第1のモノマータイプ、および前記の式(3)、(4)、または(5)による第2のモノマータイプ、から得られる(すなわち、少なくともコポリマーである)。別の組の実施形態では、ポリマーマトリックスは、少なくとも2つのアクリレートモノマータイプ、すなわち前述の式(2)による第1のモノマータイプ、および前述の式(3)、(4)または(5)による第2のモノマータイプ、から得られる(すなわち、少なくともコポリマーである)。ポリマーマトリックスは、式(1)または(2)によるモノマータイプと、式(3)、(4)または(5)によるモノマータイプとの、任意の適切な重量比を有することができる。異なる実施形態では、非ヒドロキシル化モノマー(すなわち、式(1)または(2))と、ヒドロキシル化モノマー(すなわち、式(3)、(4)または(5))との間の比率は、例えば、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45、50:50、45:55、40:60、35:65、30:70、25:75、20:80、15:85、10:90、または5:95である。
【0035】
アクリレートモノマーはまた、エチレン性不飽和ジカルボン酸であってもよい。そのようなモノマーのいくつかの例には、フマル酸、マレイン酸、および3−ブテン酸が含まれる。
【0036】
アクリレート単位はまた、2つ以上のアクリレート基、例えば、ジアクリレート、トリアクリレート、またはより高次のアクリレート含有分子を含有することもできる。そのようなポリアクリレート分子は、典型的には架橋剤として使用される。本明細書で使用される用語「アクリレート」は、「メタクリレート」、「シアノアクリレート」、および他の誘導体化アクリレートを含むことを意図されており、したがって、「ジアクリレート」、「トリアクリレート」および「ポリアクリレート」は、そのような全ての誘導体化アクリレートを含むことを意図されている。1種類のポリアクリレート分子は、ジオールに基づいたもの、例えばエチレングリコールジメタクリレート(CAS No.97−90−5、EGDMA)、ならびに、より長鎖のジオール(higher chain diols)に基づいたジメタクリレート、例えばプロパンジオール、ブタンジオール(例えば、1,3−ブタンジオール、および1,4−ブタンジオール)、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール(例えば、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、HDDMA、CAS No.6606−59−3)、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ならびにそれらのエトキシ化およびプロポキシレート化誘導体など、である。別の種類のポリアクリレート分子は、ジオールの反復単位に基づいたもの、例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート(CAS No.2358−84−1)、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコール(例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル)ジメタクリレート、およびテトラエチレングリコールジメタクリレート(TEDMA)である。別の種類のポリアクリレート分子は、ビスフェノールAに基づいたもの、例えば、2,2’−ビス[4−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(すなわち、「ビス−GMA」)、であり、これは、ビスフェノールAおよびグリシジルメタクリレートの付加生成物である。ビスフェノールAに基づく他のジアクリレートには、エトキシ化およびプロポキシレート化ビスフェノールAジメタクリレート(例えば、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、すなわちEBPDMA、またはEBPADMA)が含まれる。別の種類のポリアクリレート分子は、ポリオールに基づくジアクリレート、トリアクリレート、およびより高次の官能基化アクリレート、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、クエン酸、またはペンタエリスリトールに基づくもの(例えば、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート;または2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールトリアクリレート(TMPTA);またはジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート;またはペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアクリレート、もしくはジアクリレート;またはグリセロールジメタクリレートもしくはトリメタクリレート;ならびにそれらのエトキシ化およびプロポキシレート化誘導体)である。さらに別の種類のポリアクリレート分子は、ウレタンポリアクリレート、例えば、7,7,9(もしくは7,9,9)−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオキシメタクリレートおよび異性体、すなわち「ウレタンジメタクリレート」(UDMA)または「ジウレタンジメタクリレート」すなわち(DUDMA)、例えばCAS No.74389−53−0または72869−86−4)、および、ポリウレタンジメタクリレート(PUDMA)である。さらに別の種類のポリアクリレート分子は、ポリカーボネートに基づくポリアクリレート(例えば、ポリカーボネートジメタクリレート、PCDMA)であり、これは、典型的には、ヒドロキシアルキルメタクリレートの2部分と、ビス(クロロギ酸)(bis(chloroformate))の1部分との縮合生成物である。さらに別の種類のポリアクリレート分子は、リン酸塩またはリン酸に基づくもの、例えばビス−[(2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートである。さらに別の種類のポリアクリレート分子は、ビス−アクリルアミド(例えば、N,N’−エチレンビス(アクリルアミド)、またはN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド)である。さらに、別の種類のポリアクリレート分子は、トリアジン、またはイソシアヌレートジ−およびトリ−メタクリレート、例えば、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、もしくはトリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートである。
【0037】
ポリマーマトリックスは、前述のようにポリマーマトリックスの特性が保持される限り、当技術分野で既知のイオノマーポリマー組成物のいずれかを含むこともできる。イオノマー組成物は、典型的には、50%以下の酸性官能基の重量百分率を含む。異なる実施形態では、酸性官能基は、例えば、40%、30%、20%、10%、5%、または1%以下であってよい。
【0038】
ポリマーマトリックスは、異なるポリマー種類のポリマー構成要素または単位を含有するコポリマーを含む(またはそのコポリマーから構成される)こともできる。そのようなコポリマーのいくつかの例には、ポリビニル−ポリウレタン、ポリビニル−ポリ尿素、ポリビニル−ポリアミド、ポリビニル−ポリカーボネート、ポリカーボネート−ポリウレタン、およびポリカーボネート−(フェノール−ホルムアルデヒド)タイプのコポリマーが含まれる。
【0039】
本明細書で使用される用語「炭化水素基」は、1つまたは複数のヘテロ原子の存在が示されない限り、炭素および水素のみを含有する化学基を指す。炭化水素基は、任意の炭化水素基、すなわち直鎖もしくは分枝、飽和もしくは不飽和、脂肪族もしくは芳香族、および環式もしくは多環式であってよい。異なる実施形態では、炭化水素基は、好ましくは、約20個以下の炭素原子、または18個以下の炭素原子、または12個以下の炭素原子、または6個以下の炭素原子を含有することができる。特定の実施形態では、炭化水素基は、5個、4個、または3個以下の炭素原子を含有することができる。いくつかの実施形態では、炭化水素基は、少なくとも1個、2個、または3個の炭素原子を含有する。前述の最小値と最大値(the minima and maxima)との間の任意の炭素原子範囲が本明細書では適切である。例えば、異なる実施形態では、炭化水素基は、好ましくは、1〜20、1〜18、1〜12、1〜8、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、2〜20、2〜18、2〜12、2〜8、2〜6、2〜5、4〜4、2〜3、3〜20、3〜18、3〜12、3〜8、3〜6、3〜5、3〜4、4〜20、4〜18、4〜12、4〜8、4〜6、または4〜5個の炭素原子を有してよい。
【0040】
飽和直鎖炭化水素基のいくつかの例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが含まれる。
【0041】
飽和分枝炭化水素基のいくつかの例には、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロプ−1−イル(1,2-dimethylprop-1-yl)、1−メチルペント−1−イル(1-methylpent-1-yl)、2−メチルペント−1−イル(2-methylpent-1-yl)、3−メチルペント−1−イル(3-methylpent-1-yl)、1,2−ジメチルブト−1−イル(1,2-dimethylbut-1-yl)、2,2−ジメチルブト−1−イル(2,2-dimethylbut-1-yl)、および3,3−ジメチルブト−1−イル(3,3-dimethylbut-1-yl)、が含まれる。
【0042】
飽和環式炭化水素基のいくつかの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、3−メチルシクロプロプ−1−イル(3-methylcycloprop-1-yl)、3,4−ジメチルシクロプロプ−1−イル(3,4-dimethylcycloprop-1-yl)、4−メチルシクロヘキス−1−イル(4-methylcyclohex-1-yl)、および3,5−ジメチルシクロヘキス−1−イル(3,5-dimethylcyclohex-1-yl)、が含まれる。
【0043】
飽和多環式炭化水素基のいくつかの例には、デカリン、ビシクロヘキシル、ノルボルニル、およびビシクロ[4.3.0]ノナンが含まれる。
【0044】
不飽和直鎖炭化水素基のいくつかの例には、ビニル、2−プロペン−1−イル、3−ブテン−1−イル、2−ブテン−1−イル、4−ペンテン−1−イル、3−ペンテン−1−イル、2,4−ペンタジエン−1−イル、5−ヘキセン−1−イル、3,5−ヘキサジエン−1−イル、および1,3,5−ヘキサトリエン−1−イルが含まれる。
【0045】
不飽和分枝炭化水素基のいくつかの例には、2−メチル−2−プロペン−1−イル、2−メチル−2−ブテン−1−イル、2−メチル−3−ブテン−1−イル、2−メチル−3−ペンテン−1−イル、4−メチル−3−ペンテン−1−イル、および3−メチル−3−ペンテン−1−イルが含まれる。
【0046】
不飽和環式炭化水素基のいくつかの例には、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ならびに芳香族単環式炭化水素基(例えば、フェニル、トリル、キシリル、およびベンジル)が含まれる。
【0047】
不飽和多環式炭化水素基のいくつかの例には、ナフチル、インダニル、インデニル(indenyl)、アントラセニル(anthracenyl)、フェナントリル、およびビフェニルが含まれる。
【0048】
炭化水素基は、他に特に規定しない限り、1つまたは複数の酸素原子(−O−)、アミノ(例えば、−NH−またはtert−アミノ)、アミド、エステル(−C(O)O)、カーボネート、尿素、またはカルバメート基炭素−炭素結合妨害(interruptions)を含み得る。炭化水素基はまた、1つまたは複数のケイ素含有基(例えば、酸化ケイ素もしくはシロキサン基(siloxane groups))を含むこともできる。
【0049】
本発明の歯のホワイトニング用組成物は、前記のポリマーマトリックスに埋め込まれた気体または液体充填区画(すなわち小孔または気泡)を含む。小孔中の液体または気体は、好ましくは、ポリマーマトリックスとは異なる(典型的には、より低い)屈折率を有し、さらに好ましくは、ポリマーマトリックスの屈折率と、少なくとも0.1単位、さらに好ましくは少なくとも0.2単位、さらに好ましくは少なくとも0.3単位、さらに好ましくは少なくとも0.4単位、さらに好ましくは少なくとも0.5単位異なる屈折率を有する。例えば、ポリマーマトリックスが約1.5の屈折率を有する場合、好ましくは、小孔中の気体または液体の屈折率は、約1.4以下、さらに好ましくは約1.3以下、さらに好ましくは約1.2以下、さらに好ましくは約1.1以下、さらに好ましくは約1.0の屈折率を有する。
【0050】
一実施形態では、気泡は気体を充填される。適切な気体のいくつかの例には、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、またはこれらの混合物が含まれる。
【0051】
別の実施形態では、気泡は液体を充填される。適切な液体のいくつかの例には、水、アルコール(例えばエタノール)、またはこれらの混合物が含まれる。
【0052】
気泡の少なくとも一部は、少なくとも100nm〜5μm(5ミクロン)(以下、このパラメータの「主要範囲」と呼ぶ)の少なくとも1つのサイズ寸法(すなわち「サイズ」または「直径」)を有する。この範囲内の特定の実施形態では、気泡の少なくとも一部が、少なくとも100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1μm、1.2μm、1.4μm、1.6μm、1.8μm、2μm、2.2μm、2.4μm、2.6μm、2.8μm、または3μmの最小サイズを有することができる。主要範囲内の他の特定の実施形態では、気泡の少なくとも一部が、4.8μm、4.6μm、4.4μm、4.2μm、4mm、3.8μm、3.6μm、3.4μm、3.2μm、3μm、2.8μm、2.6μm、2.4μm、2.2μm、2μm、1.8μm、1.6μm、1.4μm、1.2μm、1μm、950nm、900nm、850nm、800nm、750nm、700nm、650nm、600nm、550nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、または200nmの最大サイズを有することができる。前記の最小値および最大値から得られる任意の範囲を本明細書では企図する。例えば、特定の実施形態では、気泡は、好ましくは、100〜5000nm、または100〜4000nm、または100〜3000nm、または100〜2000nm、または100〜1000nm、または200〜5000nm、または200〜4000nm、または200〜3000nm、または200〜2000nm、または200〜1000nm、または300〜5000nm、または300〜4000nm、または300〜3000nm、または300〜2000nm、または300〜1000nmの範囲内である。気泡は、実質的に単分散、多分散、または多モード(multimodal)を含む、任意の適切なサイズ分布を有することができる。
【0053】
示したサイズ範囲内の気泡部分は、例えば、気泡の総数の100%、または例えば、気泡の総数の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、または5%であってよい。例えば、気泡の約60%が100nm〜5μmの範囲内のサイズを有し、気泡の40%が前記範囲外のサイズ(例えば、100nm未満、または5μm超)を有する、気泡分布が提供されてよい。いかなる理論にも縛られるものではないが、気泡の少なくとも一部が100nm〜5μmのサイズ範囲内であると、気泡は(入射光の波長に相当するサイズを有することで)入ってくる光と適切に相互作用することができ、歯上の組成物の光学的特性が適切に改変されて、より白い反射を生じると考えられる。
【0054】
好ましくは、気泡は、ホワイトニング効果を著しく減少させる程度まで、実質的に閉じていない(すなわち実質的に平らになっている)。一実施形態では、気泡の形状は、好ましくは、球形状に近い(例えば、ゼロに近い離心率)。前述の実施形態では、気泡は、好ましくは、平均で0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、もしくは0.1、またはそれ未満の離心率、あるいは、前述した値のうち任意の2つから得られる任意の範囲の離心率を有することができる。別の実施形態では、気泡の形状は、平均で0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、もしくは0.9、またはそれより大きい離心率、あるいは、前述した値のうち任意の2つから得られる任意の範囲の離心率を有することにより、平らになる(例えばロッドまたは針形状)ことが好ましい。
【0055】
好ましくは、気泡は、組成物の少なくとも0.1容量%〜約60容量%を占める。この範囲内の特定の実施形態では、気泡は、組成物の少なくとも0.2容量%、0.5容量%、1容量%、2容量%、5容量%、10容量%、15容量%、20容量%、25容量%、30容量%、35容量%、40容量%、または45容量%を占めていてよい。主要範囲内の他の特定の実施形態では、気泡は、組成物の55容量%、50容量%、45容量%、40容量%、35容量%、30容量%、25容量%、20容量%、15容量%、10容量%、5容量%、2容量%、もしくは1容量%以下を占めていてよい。前述の最小値および最大値から得られる任意の範囲を、本明細書で企図する。例えば、特定の実施形態では、気泡は、組成物の0.5〜60容量%、または1〜60容量%、または2〜60容量%、または5〜60容量%、または10〜60容量%、または0.5〜50容量%、または1〜50容量%、または2〜50容量%、または5〜50容量%、または10〜50容量%、または0.5〜40容量%、または1〜40容量%、または2〜40容量%、または5〜40容量%、または10〜40容量%、または0.5〜30容量%、または1〜30容量%、または2〜30容量%、または5〜30容量%、または10〜30容量%、または0.5〜20容量%、または1〜20容量%、または2〜20容量%、または5〜20容量%、または10〜20容量%を占めていてよい。
【0056】
気泡は、任意の適切なプロセスにより形成され得る。一実施形態では、酸または塩基でエッチング可能な粒子をポリマーマトリックス中に含め、その後、それらの粒子を酸もしくは塩基で処理(エッチング)して小孔が残るように粒子を溶解させることにより、気泡が生成される。酸でエッチング可能な粒子のいくつかの例には、金属炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物、または酸化物で構成されるものが含まれる。塩基でエッチング可能な粒子のいくつかの例には、金属酸化物、または有機酸で構成されるものが含まれる。別の実施形態では、ポリマーマトリックス中の水溶性または生分解性の粒子を、前述したように前駆体組成物に含め、その後、粒子を水または生分解性条件で処理して、小孔が残るように粒子を除去することによって、気泡が生成される。別の実施形態では、反応性粒子をポリマーマトリックスに含め、その後、気体または液体を形成させる適切な反応物で粒子を処理することによって、気泡が生成される。反応性粒子のいくつかの例には、酸と反応して二酸化炭素および水を形成する、金属炭酸塩が含まれる。さらに別の実施形態では、ポリマーマトリックス(またはその中に埋め込まれた特殊粒子)を、物理的プロセス、例えば熱分解、放射線暴露、加圧、または減圧、レーザー暴露、および関連プロセスにさらすことにより、気泡が生成される。そのようなプロセスでは、ポリマーマトリックス自体、またはその中に含まれる構成要素(例えば粒子)が、物理的プロセスにさらされた場合に気体または液体を形成する特性を有する。
【0057】
別の態様では、本発明は、前述の歯のホワイトニング用組成物に変換され得る前駆体組成物に関する。前駆体組成物は、前述したポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス中に埋め込まれた水溶性または生分解性材料の粒子と、を含有する。水溶性粒子はまた、好ましくは、ポリマーマトリックス中での溶解が妨げられる範囲で、有機媒体に不溶性である。水および/または生分解が起こり得る適切な環境(すなわち、具体的には口腔内)と接触すると、前駆体組成物内の粒子は、可溶化および/または生分解され、空隙(すなわち、気体または液体の気泡)が生じる。結果として得られた空隙は、前述したようなサイズ範囲および他の特性を有する。好ましくは、前駆体組成物中の粒子は、約50nm〜5μm、さらに好ましくは約50nm〜4μm、または50nm〜3μm、または50nm〜2μm、または50nm〜1μm、または50〜500nmの範囲内のサイズを有する。
【0058】
前駆体組成物中の水溶性または生分解性粒子は、これらの特性を有する、当技術分野で既知の任意の非毒性材料で構成されてよい。例えば、一実施形態では、前駆体組成物の粒子は、生分解性ポリエステル材料、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、またはポリヒドロキシアルカノエート(例えば、ポリ−4−ヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシバレレート(polyhydroxyvalerate)、ポリヒドロキシヘキサノエート(polyhydroxyhexanoate)、ポリヒドロキシオクタノエート(polyhydroxyoctanoate))、およびそれらのコポリマーを含有する。別の実施形態では、粒子は、天然のポリマーまたは分子材料、例えば糖またはでんぷん、を含有する。別の実施形態では、粒子は、可溶性の塩材料、例えばアルカリハロゲン化物(例えば、NaClもしくはKCl)、アルカリ炭酸塩、アルカリ硫酸塩、アルカリリン酸塩、アルカリ土類ハロゲン化物、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ土類リン酸塩、またはそれらの組み合わせを含有する。
【0059】
別の態様では、本発明は、歯のホワイトニング用システムに関する。歯のホワイトニング用システムは、前述のホワイトニング用組成物または前述の前駆体組成物を、歯に組成物を送達できる適用装置(すなわち、アプリケータまたは送達器具)と共に含む。歯のホワイトニング用システムは、例えば、キットの形態であってよい。送達器具は、液体またはペーストを歯に適用するのに有用な、当技術分野で既知の任意の送達器具であってよい。
【0060】
第1の実施形態では、送達器具は、本明細書では「トレー内ゲル送達システム(gel in tray delivery system)」と呼ぶ。トレー内ゲル送達システムでは、モノマーが、最終的なポリマーフィルムの所望の物理的特性に基づいて選択される。好適なプロセスにより、これらのモノマーは、光開始剤(例えば、UVで活性化される)と予め混合され組み合わせられる。モノマーは次に、好ましくは、光開始(例えばUV)光にさらされて、部分的に重合した粘性前駆体が得られる。暴露時間は、モノマーの選択および光開始剤によって決まる。腐食可能な粒子を含有する前駆体組成物が望ましい場合には、小孔形成粒子(例えば、水溶性粒子)をこの段階で含めることができる。例えば、粒子は、適切な溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)中に分散され、次に混合されて粘性前駆体にされることができる。追加の光開始剤および架橋剤(例えば、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA))が次に、粘性前駆体に加えられてよい。結果として得られた混合物は、典型的にはぴったり合うように作られた口腔用トレー内に分配される。口腔用トレーは口に挿入されて、歯を粘性前駆体と接触させる。歯に粘性前駆体が堆積した後、コーティングされた歯が、光開始(例えば、UV)光にさらされ、ポリマー予混合溶液を硬化させる。腐食可能な粒子を含有する前駆体組成物が使用される場合、表面フィルム内部の粒子は、ゆっくりと腐食し、歯表面に多孔性コーティングを生じる。結果として得られる小孔は、その後、前述したように、所望の光学的特性をもたらす。
【0061】
第2の実施形態では、送達器具は、本明細書では「反応性フィルム送達システム」と呼ぶ。この反応性フィルム送達システムでは、モノマーが選択され、好ましくは、第1の実施形態のように加工されて、粘性前駆体を生じる。前駆体混合物を、非反応性で粘着性の裏打ち層上に鋳造すること(casting)(約20〜500μm(約20〜500ミクロン))によってフィルムが準備される。その後、揮発性溶媒が、熱を加えずに、蒸発させられる。結果として得られるフィルムは、歯の表面に適用され、表面硬化のため光開始(例えばUV)光にさらされる。
【0062】
第3の実施形態では、送達器具は、本明細書では「上塗り送達システム(paint-on delivery system)」と呼ぶ。上塗り送達システムでは、組成物を歯表面に塗ることによって歯表面にフィルムを形成することができる。この解決策の組成物は、歯表面に適用されると、歯への適用中または適用後に、固形フィルムを歯表面に形成することができるようになっている。これを達成し得る1つの方法は、歯への適用前に組成物中に溶解したフィルム形成材料を保持するが、唾液と接触するとフィルム形成材料を可溶性に維持できない、溶媒系を組成物に含めることによる。溶媒が十分に低い沸点を有する場合、代わりに蒸発により除去されてもよく、それにより、組成物の固形フィルムが残る。あるいは、コーティングされた歯に対して加熱工程を使用して、溶媒を除去し、フィルム形成を早めることができる。
【0063】
好ましくは、結果として得られる、歯の上のフィルムは、350μm(350ミクロン)以下の厚さである。異なる実施形態では、フィルムは、好ましくは、300μm(300ミクロン)以下の厚さ、250μm(250ミクロン)以下の厚さ、200μm(200ミクロン)以下の厚さ、150μm(150ミクロン)以下の厚さ、100μm(100ミクロン)以下の厚さ、80μm(80ミクロン)以下の厚さ、50μm(50ミクロン)以下の厚さ、25μm(25ミクロン)以下の厚さ、10μm(10ミクロン)以下の厚さ、5μm(5ミクロン)以下の厚さ、または1μm(1ミクロン)の厚さであってよい。前述した値のうち任意の値間の範囲(例えば、1〜300、1〜200、1〜100または10〜300μm(1〜300、1〜200、1〜100または10〜300ミクロン))もまた、本明細書中で適切であり、企図されている。特定の実施形態では、フィルムは、約20〜200μm(約20〜200ミクロン)、20〜150μm(20〜150ミクロン)、20〜100μm(20〜100ミクロン)、20〜80μm(20〜80ミクロン)、または20〜50μm(20〜50ミクロン)の厚さ範囲の厚さを有してよい。
【0064】
別の態様では、本発明は、前述した組成物または前駆体組成物を歯に適用する方法に関する。(例えば前記の送達器具のいずれかによって)組成物を歯に適用し、歯上の粘着性固形フィルムを得る、当技術分野で既知の任意の方法が、本明細書では適している。一実施形態では、組成物は、固形形態で歯に適用される。例えば、歯は、当技術分野で既知の任意の適切なプロセスにより準備または調整され(例えば、リン酸でエッチングされるか、もしくは被着剤でコーティングされ)てよく、固形フィルムがその歯に適用され結合される。別の実施形態では、組成物は、前述した方法のうちいずれかにより、非固形形態で適用されてよく、その非固形コーティングは、凝固フィルム形成プロセスにより処理される。凝固フィルム形成プロセスは、当技術分野で既知の任意のそのようなプロセスであってよい。典型的には、凝固フィルム形成プロセスは、典型的には熱、放射、または化学的硬化工程を伴う、硬化プロセスを伴う。フリーラジカル開始のため、典型的には光開始剤を使用する。光開始剤には、例えば、ヨードニウム塩、ホスフィンオキシド、三級アミン、レドックス硬化システム(redox cure systems)、過酸化物、およびアゾ化合物(例えばAIBN)の種類が含まれる。当技術分野で既知のように、光開始剤は、光増感剤、促進剤、還元剤、酸化剤、UV吸収体、または感光性化合物(例えば、DL−カンファーキノンなどのベンジルジケトン)などの、さまざまな助剤のいずれかと組み合わせ可能である。
【0065】
特定の実施形態では、歯をホワイトニングする方法は、本明細書中では、「形成フィルム送達方法」と呼ぶ。形成フィルム送達方法では、モノマーが、水中で低溶解性または限られた溶解性を有するように選択される。典型的には、過酸化水素が導入され(例えば、35%水溶液として、またはポリビニルピロリドンとの非水性錯体として)、混合物中の過酸化水素の目標濃度は、0.01〜1%w/wである。追加の増粘ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、および/またはエチルセルロース)を導入して、粘度を所望のレベルにすることができる。有機溶媒(例えばエタノール)を加えて、粘度および鋳造挙動(casting behavior)を制御することができる。少量の遷移金属源(例えば、鉄または銅塩)を加えて、重合および発泡開始を助けることができる。例えば加熱(例えば、40〜12O℃まで)もしくはUV光暴露、またはそれらの組み合わせによって、フィルムを鋳造し硬化させる。鋳造および硬化プロセス中、フィルムは、重合し、気泡を生成し、固まる。追加の接着層を発泡層に適用して、口腔表面への接着をもたらすことができる。この発泡フィルムが歯に適用されると、フィルムはホワイトニング効果をもたらす。
【0066】
結果として得られる、気体または液体充填気泡含有フィルムが歯に付着すると、歯は、粘着性フィルムなしの歯と比べて、白く見える。歯の白さは、任意の適切な白さの尺度によって、より白いと評価され得る。本明細書で考えられる好適な白さの尺度は、CIE明度指数(LI)尺度であり、これは、0(白さ無し、すなわち、黒く汚れている)〜100(黒ずんだ成分がない完全な白さ)の尺度で白さを評価するものである。特に他に規定のない限り、本明細書で使用される白さの値は全て、CIE明度指数に基づいている。好ましくは、本発明の組成物は、気体または液体充填小孔を備える固形フィルムとして歯にいったん適用されると、CIE明度指数尺度において少なくとも5単位だけ、さらに好ましくは少なくとも10、15、または20単位だけ、歯の白さを増大させることができる。
【0067】
例示目的で、また、現時点における本発明の最良の態様を説明するため、以下に実施例を記載してある。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に記載される実施例により決して限定されない。
【0068】
実施例1 ホワイトニング用組成物のフィルムの準備
モノマー、メタクリル酸メチル(MMA)(Acros Organicsより)、および2−ヒドロキシメタクリル酸エチル(HEMA)(Aldrich Chemicalsより)を、異なる重量比(40:60、60:40、75:25、または90:10)で混合し、3wt%の光開始剤(Darocur 1173, Ciba Specialty Chemicals Inc.)を、2.5mLのモノマー混合物に加え、これをUV光(UVP Blak-Ray 〜8mW/cm)にさらして、部分重合粘性前駆体を得た。40:60および60:40の容量比でMMAおよびHEMAを含有するモノマー混合物を、UV光に3分間さらし、より多量のMMAを含有するモノマー混合物を10分間さらした。イソプロピルアルコール中に分散した、直径70〜100nmのシリカ粒子(IPA-ST-ZL, Nissan Chemical Industries Ltd.)を、異なる量で粘性前駆体に混合した(最終的なシリカ含量は、モノマー混合物の0.75〜7.5wt%の範囲)。追加の光開始剤(モノマー混合物の2wt%)、および架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)(モノマー混合物の1wt%)を、粘性前駆体に加えた。前駆体の滴をシリコンウェーハに注ぎ、これを平らなポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)エラストマー片でプレスし、その後、12000mJ/cmの線量でUV光(Oriel NUV Illumination System、ニューポート)にさらすことにより、ポリマーフィルムが作られた。これにより、約200μmの厚さを有する、ポリマー−シリカ粒子複合フィルムが生じた。このフィルムを次に、フッ化水素酸で2分間処理し、埋め込まれたシリカ粒子をエッチングで取り去り、その後、水ですすいで、空気流中で乾燥させた。得られた多孔性フィルムの色は白であった。
【0069】
実施例2 フィルムの白さの分析
フィルムの白さを、MHT機器によりL、a、bの尺度で測定した。Lは、0〜100の段階のフィルムの白さである。多孔性フィルムの断面を、5kVの加速電圧でSEM(FEI Strata DB235 FIB)により画像化した。小孔のサイズおよび密度が、ImageJソフトウェアを用いて特徴付けられた。
【0070】
多孔性ポリマーフィルムの色は、白色に見えた。図1および図2は、このような1つのフィルムの断面図および白い外観を示す。粘性前駆体中へのシリカの装填が増えると、結果として得られる多孔性フィルムの小孔体積分率および白さが増大する(表1)。小孔サイズは、〜100nm〜2μmの範囲である。
【表1】

【0071】
図3に示すように、ポリマー−シリカ複合フィルムがHFで処理されると、シリカ粒子はエッチングで取り去られ、ランダムな小孔網を含有するフィルムが残る。フィルムで起こる主なエッチングのメカニズムは、以下の反応に基づいていると考えられる:
SiO+4HF=2HO+SiF(g)
【0072】
屈折率が空気(1.0)とポリマー(〜1.5)とで大きく異なるため、入射光は、多孔性網によってランダムに散乱し、フィルムの白い外観を生じさせる。小孔のサイズは、光の波長に相当する、>100nm〜〜2μmの範囲であり、結果として、光の有効なランダム散乱が生じる。小孔のサイズは、シリカ粒子サイズ(70〜100nm)より大きいことが分かった。シリカ粒子は、ポリマーフィルム中で塊にならず、均一に分布したことが分かった(図4)。より大きな小孔のサイズは、SiFの気体が形成され、フィルム全体にわたり拡散される、エッチングプロセス中の小孔の凝集に起因し得る。
【0073】
この説明を確認するため、HFで処理された純ポリマーフィルム(neat polymer films)の断面を調べた。小孔は観察されず(図5)、フィルムは透明なままであった。結果により、白さが小孔形成により生じ、小孔の発生(evolution)が、エッチングプロセス中の気体の拡散によるものであったという概念が確認される。さまざまなシリカ装填量での小孔の特徴を、以下の表2に示す。
【0074】
小孔の密度および小孔体積分率の関数としての白さを、以下の表3に示す。表3により示すように、少なくとも、研究したHEMA/MMA系については、白さは概して小孔体積分率と共に増大する。
【0075】
表4は、HEMA−MMAフィルムの白さに対する、HFエッチング後に経過した時間、ならびにMMA重量パーセントの影響を示す。この表により示されるように、HEMA−MMAフィルムは、MMA重量パーセントの増加と共に白さの値が増加するという一般的な傾向を示している。MMA含量がより高いHEMA−MMAフィルムはまた、HFエッチング後に経過した時間の増加と共に、白さの値が増加するという一般的な傾向にも沿っているようである。
【表2】


【表3】


【表4】

【0076】
図6は、HEMA−MMAフィルムの小孔構造に対する、HFエッチング後に経過した時間、ならびにMMA重量パーセントの影響を示す。この図により示されるように、HEMA−MMAフィルムは、HFエッチング後に経過した時間が増大すると共に平らになるという一般的な傾向を示している。白さの値は、平坦化が75wt%のMMAサンプルについて、より顕著になると、増大する。40wt%のMMAサンプルでは、小孔が完全に平坦になるので、白さが減少する。
【0077】
さらに、より高いMMA重量パーセント(例えば、75wt%)を含むHEMA−MMAフィルムは、MMA重量パーセントが低い(例えば40wt%)のHEMA−MMAフィルムよりも、小孔平坦化に対して抵抗性があることが、図6には示されている。例えば、HFエッチングから24時間後、MMAが40wt%のHEMA−MMAフィルムは、ほぼ完全に平坦化した小孔を含むのに対し、MMAが75wt%のHEMA−MMAフィルムは、わずかに平坦化した小孔を含む。
【0078】
表5は、MMAの重量パーセントが異なるHEMA−MMAフィルムにおける白さの値に対する湿気(水分)の影響を示している。この表に示されるように、25:75の重量比のHEMA−MMAフィルムは、乾燥状態で78.6の白さの値を有し、湿気を帯びると61.5まで値が減少したことが分かった。驚いたことに、フィルムが再び乾くと、フィルムの白さはほぼ初めの値まで再度増加した。MMAの重量パーセントがより高いHEMA−MMAフィルムが、水分にさらされた際にあまり白さの値の減少を示さないという驚くべき結果も、この表に示される。例えば、10:90のHEMA:MMAフィルムは、湿った後であっても、乾燥状態での初めの白色度を実質的に保つ。
【表5】

【0079】
MMAの重量パーセントが高いHEMA−MMAフィルムは、小孔の完全性および水分への抵抗性を維持する上で優れた品質を示すようだが、MMAの重量パーセントを増やすと、フィルムのもろさも増大する。したがって、前述した利点を提供できると共に、フィルムを過度にもろくしない、PMMAまたは非膨張性ポリマーの重量パーセントが最適な組成物を発見することが、本発明を実施する上で重要である。異なる実施形態では、適切なMMAの重量パーセントは、例えば10wt%、20wt%、30wt%、40wt%、50wt%、60wt%、70wt%、80wt%、または90wt%以上であってよい。
【0080】
本発明の好適な実施形態であると現在考えられるものを図示し説明してきたが、本出願で説明した本発明の主旨および範囲から逸脱せずに他の実施形態およびさらなる実施形態を作ることができること、ならびに本出願が、本明細書に記載する請求項の意図する範囲内にある全ての改変を含むことを、当業者は認識するであろう。
【0081】
〔実施の態様〕
(1) 歯のホワイトニング用組成物において、
(i)歯の表面に付着することができる、実質的に水不溶性で実質的に非分解性のポリマーマトリックス構成要素であって、前記ポリマーマトリックス構成要素が非固形形態である場合は化学的変質によって凝固可能である、ポリマーマトリックス構成要素と、
(ii)前記ポリマーマトリックス構成要素に埋め込まれた気体または液体充填小孔であって、前記気体または液体充填小孔の少なくとも一部が、約100nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有し、前記気体または液体充填小孔およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.1の屈折率差を有する、気体または液体充填小孔と、
を含む、組成物。
(2) 実施態様1に記載の組成物において、前記小孔は、気体充填のみされている、組成物。
(3) 実施態様2に記載の組成物において、前記気体は、空気である、組成物。
(4) 実施態様1に記載の組成物において、
前記小孔およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.3の屈折率差を有する、組成物。
(5) 実施態様1に記載の組成物において、
前記組成物は、固形フィルムの形態である、組成物。
【0082】
(6) 実施態様5に記載の組成物において、
前記フィルムは、300μm(300ミクロン)以下の厚さである、組成物。
(7) 実施態様5に記載の歯のホワイトニング用フィルムにおいて、
前記フィルムは、約20〜100μm(約20〜100ミクロン)の範囲の厚さを有する、歯のホワイトニング用フィルム。
(8) 実施態様1に記載の組成物において、
前記組成物は、ペーストまたは液体の形態である、組成物。
(9) 実施態様1に記載の組成物において、
前記組成物は、少なくとも10単位だけ、歯のCIE明度指数を増大させることができる、組成物。
(10) 実施態様1に記載の組成物において、
前記組成物は、少なくとも20単位だけ、歯のCIE明度指数を増大させることができる、組成物。
【0083】
(11) 実施態様1に記載の組成物において、
前記小孔は、前記組成物の0.1〜60容量%を占める、組成物。
(12) 実施態様1に記載の組成物において、
前記小孔は、前記組成物の2〜20容量%を占める、組成物。
(13) 実施態様1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約100nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
(14) 実施態様1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約200nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
(15) 実施態様1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約100nm〜約1μm(約1ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
【0084】
(16) 実施態様1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約200nm〜約1μm(約1ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
(17) 実施態様1に記載の組成物において、
前記ポリマーマトリックスは、ビニル添加ポリマーで構成される、組成物。
(18) 実施態様17に記載の組成物において、
前記ビニル添加ポリマーの少なくとも一部が、式:
【化6】

によるアクリレート基を含有する1つまたは複数のモノマーから得られ、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子によって置換され得る、組成物。
(19) 実施態様17に記載の組成物において、
前記ビニル添加ポリマーの少なくとも一部が、式:
【化7】

によるアクリレート基を含有する1つまたは複数のモノマーから得られ、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子によって置換されることができ、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの−OH基で置換された飽和もしくは不飽和炭化水素基である、組成物。
(20) 実施態様17に記載の組成物において、
前記ビニル添加ポリマーの少なくとも一部が、それぞれアクリレート基を含有する少なくとも2つのモノマータイプから得られ、第1のモノマータイプは、式:
【化8】

によるものであり、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子で置換されることができ、
第2のモノマータイプは、式:
【化9】

によるものであり、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子で置換されることができ、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの−OH基で置換された飽和もしくは不飽和炭化水素基である、組成物。
【0085】
(21) 歯のホワイトニング用組成物のための前駆体組成物において、
(i)歯の表面に付着することができる、水不溶性で実質的に非分解性のポリマーマトリックス構成要素であって、前記ポリマーマトリックス構成要素が非固形形態である場合は化学的変質により凝固可能である、ポリマーマトリックス構成要素と、
(ii)前記ポリマーマトリックス構成要素に埋め込まれた水溶性または生分解性粒子であって、前記水溶性または分解性粒子の少なくとも一部は、前記前駆体組成物が水性環境にさらされた場合に約70nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の少なくとも1つのサイズ寸法を有する気体または液体充填小孔を生成することができ、結果として得られる前記気体または液体充填小孔およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.1の屈折率差を有する、前駆体組成物。
(22) 実施態様21に記載の前駆体組成物において、
前記ポリマーマトリックスは、ビニル添加ポリマーで構成される、前駆体組成物。
(23) 歯のホワイトニング用システムにおいて、
(i)実施態様1に記載の歯のホワイトニング用組成物、または実施態様21に記載の前駆体組成物と、
(ii)前記組成物を歯に送達することができる適用装置と、
を含む、歯のホワイトニング用システム。
(24) 実施態様23に記載の歯のホワイトニング用システムにおいて、
前記適用装置は、ぴったり合うように作られた口腔用トレーである、歯のホワイトニング用システム。
(25) 実施態様23に記載の歯のホワイトニング用システムにおいて、
前記適用装置は、前記組成物のフィルムを含有する裏打ち層である、歯のホワイトニング用システム。
【0086】
(26) 実施態様23に記載の歯のホワイトニング用システムにおいて、
前記適用装置は、上塗り送達装置である、歯のホワイトニング用システム。
(27) 歯をホワイトニングする方法において、
実施態様1に記載の歯のホワイトニング用組成物、または実施態様21に記載の前駆体組成物の付着固形フィルムが歯に形成されるように、前記歯のホワイトニング用組成物または前記前駆体組成物を前記歯に適用すること、
を含む、方法。
(28) 実施態様27に記載の方法において、
前記歯のホワイトニング用組成物または前駆体組成物は、非固形形態で歯に適用され、前記歯のホワイトニング用組成物または前駆体組成物は、いったん前記歯の上にくると、凝固フィルム形成プロセスにより処理される、方法。
(29) 実施態様28に記載の方法において、
前記凝固フィルム形成プロセスは、前記歯のホワイトニング用組成物または前記前駆体組成物を放射硬化プロセスにさらすことを含む、方法。
(30) 実施態様28に記載の方法において、
前記凝固フィルム形成プロセスは、前記歯のホワイトニング用組成物または前記前駆体組成物を化学硬化プロセスにさらすことを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】MMA:HEMA(75:25wt/wt)多孔性ポリマーフィルムの断面SEM画像である。
【図2】空気中で72の白さ(L値)を示す、(図1の)MMA:HEMA(75:25wt/wt)多孔性ポリマーフィルムの光学像である。
【図3】多孔性の白いフィルムの製造プロセスを示す概略図である。
【図4】MMA−co−HEMAフィルムに埋め込まれたシリカ粒子のSEM画像である。
【図5】HF処理後の、図4の純ポリマーフィルム(neat polymer film)の断面SEM画像である。
【図6】7.5重量%の70〜100nmのシリカがHFでエッチングされたHEMA−MMAフィルムの顕微鏡写真である(エッチング後の時間とMMAの重量%との小孔構造に対する影響を示す)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯のホワイトニング用組成物において、
(i)歯の表面に付着することができる、実質的に水不溶性で実質的に非分解性のポリマーマトリックス構成要素であって、前記ポリマーマトリックス構成要素が非固形形態である場合は化学的変質によって凝固可能である、ポリマーマトリックス構成要素と、
(ii)前記ポリマーマトリックス構成要素に埋め込まれた気体または液体充填小孔であって、前記気体または液体充填小孔の少なくとも一部が、約100nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有し、前記気体または液体充填小孔およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.1の屈折率差を有する、気体または液体充填小孔と、
を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記小孔は、気体充填のみされている、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物において、前記気体は、空気である、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物において、
前記小孔およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.3の屈折率差を有する、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物において、
前記組成物は、固形フィルムの形態である、組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物において、
前記フィルムは、300μm(300ミクロン)以下の厚さである、組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の歯のホワイトニング用フィルムにおいて、
前記フィルムは、約20〜100μm(約20〜100ミクロン)の範囲の厚さを有する、歯のホワイトニング用フィルム。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物において、
前記組成物は、ペーストまたは液体の形態である、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物において、
前記組成物は、少なくとも10単位だけ、歯のCIE明度指数を増大させることができる、組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物において、
前記組成物は、少なくとも20単位だけ、歯のCIE明度指数を増大させることができる、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物において、
前記小孔は、前記組成物の0.1〜60容量%を占める、組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物において、
前記小孔は、前記組成物の2〜20容量%を占める、組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約100nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約200nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約100nm〜約1μm(約1ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物において、
前記小孔の少なくとも80%が、約200nm〜約1μm(約1ミクロン)の範囲の、少なくとも1つのサイズ寸法を有する、組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物において、
前記ポリマーマトリックスは、ビニル添加ポリマーで構成される、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物において、
前記ビニル添加ポリマーの少なくとも一部が、式:
【化1】

によるアクリレート基を含有する1つまたは複数のモノマーから得られ、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子によって置換され得る、組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の組成物において、
前記ビニル添加ポリマーの少なくとも一部が、式:
【化2】

によるアクリレート基を含有する1つまたは複数のモノマーから得られ、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子によって置換されることができ、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの−OH基で置換された飽和もしくは不飽和炭化水素基である、組成物。
【請求項20】
請求項17に記載の組成物において、
前記ビニル添加ポリマーの少なくとも一部が、それぞれアクリレート基を含有する少なくとも2つのモノマータイプから得られ、第1のモノマータイプは、式:
【化3】

によるものであり、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子で置換されることができ、
第2のモノマータイプは、式:
【化4】

によるものであり、
式中、R、R、およびRは、独立して、水素原子、ニトリル基、フッ素原子、塩素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、Rは、水素原子、または1〜6個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、1つまたは複数のニトリル基、フッ素原子、または塩素原子で置換されることができ、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの−OH基で置換された飽和もしくは不飽和炭化水素基である、組成物。
【請求項21】
歯のホワイトニング用組成物のための前駆体組成物において、
(i)歯の表面に付着することができる、水不溶性で実質的に非分解性のポリマーマトリックス構成要素であって、前記ポリマーマトリックス構成要素が非固形形態である場合は化学的変質により凝固可能である、ポリマーマトリックス構成要素と、
(ii)前記ポリマーマトリックス構成要素に埋め込まれた水溶性または生分解性粒子であって、前記水溶性または分解性粒子の少なくとも一部は、前記前駆体組成物が水性環境にさらされた場合に約70nm〜約5μm(約5ミクロン)の範囲の少なくとも1つのサイズ寸法を有する気体または液体充填小孔を生成することができ、結果として得られる前記気体または液体充填小孔およびポリマーマトリックス構成要素は、少なくとも0.1の屈折率差を有する、前駆体組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の前駆体組成物において、
前記ポリマーマトリックスは、ビニル添加ポリマーで構成される、前駆体組成物。
【請求項23】
歯のホワイトニング用システムにおいて、
(i)請求項1に記載の歯のホワイトニング用組成物、または請求項21に記載の前駆体組成物と、
(ii)前記組成物を歯に送達することができる適用装置と、
を含む、歯のホワイトニング用システム。
【請求項24】
請求項23に記載の歯のホワイトニング用システムにおいて、
前記適用装置は、ぴったり合うように作られた口腔用トレーである、歯のホワイトニング用システム。
【請求項25】
請求項23に記載の歯のホワイトニング用システムにおいて、
前記適用装置は、前記組成物のフィルムを含有する裏打ち層である、歯のホワイトニング用システム。
【請求項26】
請求項23に記載の歯のホワイトニング用システムにおいて、
前記適用装置は、上塗り送達装置である、歯のホワイトニング用システム。
【請求項27】
歯をホワイトニングする方法において、
請求項1に記載の歯のホワイトニング用組成物、または請求項21に記載の前駆体組成物の付着固形フィルムが歯に形成されるように、前記歯のホワイトニング用組成物または前記前駆体組成物を前記歯に適用すること、
を含む、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記歯のホワイトニング用組成物または前駆体組成物は、非固形形態で歯に適用され、前記歯のホワイトニング用組成物または前駆体組成物は、いったん前記歯の上にくると、凝固フィルム形成プロセスにより処理される、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、
前記凝固フィルム形成プロセスは、前記歯のホワイトニング用組成物または前記前駆体組成物を放射硬化プロセスにさらすことを含む、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、
前記凝固フィルム形成プロセスは、前記歯のホワイトニング用組成物または前記前駆体組成物を化学硬化プロセスにさらすことを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−512890(P2012−512890A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542437(P2011−542437)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068486
【国際公開番号】WO2010/080501
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(506105814)マクニール−ピーピーシー・インコーポレーテツド (69)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】