説明

歯のマニキュア用コーティング剤組成物

【課題】歯牙に塗布する歯のマニキュア用に使用するコーティング剤組成物において、美容上の効果を高めることを可能とする。
【解決手段】セラック、エステルガム、増粘・皮膜剤、界面活性剤、およびエタノールを主成分とする歯のマニキュア用コーティング剤組成物である。エステルガムは、樹脂酸のペンタエリスリトールもしくはグリセリンエステルである。増粘・皮膜剤は、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体である。界面活性剤は、非水溶性界面活性剤であり、水酸基が3個以上の多価アルコール及びその脱水縮合物と炭素数8以上の脂肪酸及び/又はアビエチン酸やネオアビエチン酸等を含有する樹脂酸の油溶性エステルから選ばれる。また、顔料、抗う蝕作用を有する薬効成分、殺菌剤・抗菌剤から選ばれた1種又は2種以上を副成分として添加する。顔料は、雲母チタン、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ被覆酸化チタンから選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯のマニキュア用に使用するコーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯に光沢、輝き、白さなどの美容効果をあげるための歯美容塗布剤が知られている。
また、歯のマニキュアも市販されている。
【0003】
一例として、セラックのアルコール溶液、魚鱗箔ペースト等の基質改善剤、酸化チタン等の顔料、および白濁防止剤を主成分としてなる歯牙の被覆用組成物(特許文献1)が挙げられる。
【0004】
また、N−メタクリロイルエチルN,N−ジメチルアンモニウム・α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体と、エタノールと、セラックおよび酢酸ビニル樹脂から選ばれた少くとも一種の樹脂と、体質顔料、天然パールおよび酸化チタンから選ばれた少くとも一種の顔料とを含む歯の塗布液(特許文献2)も提案されている。
なお、前記N−メタクリロイルエチルN,N−ジメチルアンモニウム・α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体は、三菱化学(株)から「ユカフォーマー・AM−75」の商品名で、38〜42%無水エタノール溶液〔粘度500〜2000cps(30℃)〕のグレード番号「201」、「204」、および28〜32%無水エタノール溶液〔粘度50〜200cps(30℃)〕のグレード番号「202」、「R205」、「R205S」、「206」の製品が市販されている。
【0005】
また、炭素数4以下のアルコールとN−メタクリロイルオキシエチルN,N・ジメチルアンモニウム・α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体を含有し、消臭剤もしくは殺菌剤もしくは香料を含むことを特徴とした歯用塗布液(特許文献3)も提案されている。
この歯用塗布液は、さらに、セラックもしくは酢酸ビニル樹脂の1種もしく両方を添加できると記載されている。
【0006】
また、セラック及び酢酸ビニル樹脂の少なくとも一方を含み、主溶剤がエタノールである歯の塗布液(特許文献4)も提案されている。
この歯の塗布液は、さらに、分散剤であると共に、樹脂に耐水性を付与するN−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体を添加できると記載されている。
【0007】
さらに、セラックとロジンとを主成分とし、副成分に顔料、顔料の分散剤、染料、抗う蝕作用を有する薬効成分、抗菌剤、増粘剤、光彩反射剤、漂白剤、香料などを添加することにより、速乾性、持続力、色調、光沢、除去容易性に優れた美容用、虫歯予防用の歯牙塗布用組成物(特許文献5)も提案されている。
この歯牙塗布用組成物は、さらに、顔料の分散剤として、N−メタクリルエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタアクリル酸アルキル共重合体を用いることができると記載されている。
【0008】
前記歯牙塗布用組成物(特許文献5)は、セラックとロジンとの好ましい配合量が5〜25wt%で、10wt%より少ないと被膜強度が低下するとしている。
また、前記歯牙塗布用組成物において、顔料の分散剤として記載された前記共重合体は、親水性ポリマーであり、顔料分散性に寄与する効果はあるものの、膜の強度保持上、自ずから配合量に上限があり、事実、市販品において、雲母チタンのパール光沢は、その性能を十分に発揮し得ず、美容上の効果を高めているとは認めがたい。
【0009】
一方、現行市販品は、長時間水にさらされた条件下では膜が白化し、著しく美的外観が損なわれる。しかし、塗布膜は強靱であり、歯磨きでみがいても容易に除去できない。
この強靱さが、塗布膜除去に際し、問題となっている。
また、歯のマニキュアの塗布膜は、歯に塗布後、乾燥させた後は、食物を取らないかぎり3〜5時間、口腔中の湿潤な環境中で、はがれることがない強度を保持し、白化せず、光沢を保つことがのぞましい。
かつ、その後、歯磨きでの洗浄により、キレイに落ちることが望まれる。
【0010】
別途、整髪料組成物について、被膜形成性物質の一つとして、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体(特許文献6)が挙げられている。
なお、前記アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体は、BASFジャパンから「ウルトラホールドストロング」の商品名で市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07−017822号公報
【特許文献2】特開平09−100215号公報
【特許文献3】特開平09−202718号公報
【特許文献4】特開平11−071219号公報
【特許文献5】国際公開番号 WO2005/020937A1号
【特許文献6】特開2005−325041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、以下の点である。
(1)歯に塗布した際、塗布液が拡散し、はみ出て、歯茎がしみて痛みを感じる。
(2)2度塗りすると、べたつき、乾きが悪い。
(3)配合する光沢成分の分散性が不十分のために、厚ぼったい感じのギラギラ感がするため、自然の白さや、輝きを訴求する商品としては不十分である。
(4)塗布膜の接着が強すぎて、歯磨きをした後でも残り、汚く見える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、歯の塗布液として、美容的効果を重視し、上記のごとき従来市販の歯の塗布液の欠点を解決するするために、セラック、エステルガム、増粘・皮膜剤およびそれらの溶剤を主成分として含有する歯のマニキュア用コーティング剤組成物であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る歯のマニキュア用コーティング剤組成物は、歯に塗布したとき、塗膜がなめらかで舌が触れても違和感が無く、美容目的を達成できる。
また、塗布膜は落ちることなく長時間安定であり、歯磨きをした後にはきれいに落ちるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、セラック、エステルガム、増粘・皮膜剤、およびエタノールを主成分とすることを特徴とする歯のマニキュア用コーティング剤組成物である。
さらに詳しくは、セラックの含有量が全組成物中の1.0〜16.0wt%、好ましくは3.0〜12.0wt%、
エステルガムの含有量が全組成物中の0.5〜5.0wt%、好ましくは1.0〜3.5wt%、
増粘・皮膜剤として、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体の含有量が全組成物中の2.0〜12.0wt%、好ましくは3.5〜9.0wt%、
界面活性剤の含有量が全組成物中の0.1〜3.5wt%、好ましくは1.0〜3.0wt%、および、エタノールからなることを特徴とする歯のマニキュア用コーティング剤組成物である。
【0016】
前記セラックの市販品としては興洋化学株式会社製の乾燥透明セラックが挙げられる。
前記エステルガムは、樹脂酸のペンタエリスリトールもしくはグリセリンエステルである。
市販品としては、例えば、荒川化学工業製のエステルガムHP(ロジン酸ペンタエリスリトールエステル)、エステルガムAA−G(ロジン酸グリセリンエステル)等が挙げられる。
また、前記増粘・皮膜剤としてのアクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体は、BASFジャパン製のウルトラホールドストロングが挙げられる。
【0017】
さらに、前記界面活性剤は、HLBが7以下の親油性界面活性剤で、外観が油状又はペースト状であることが望ましい。高融点の親油性界面活性剤は、エタノール溶媒への室温以下での溶解性が低く、しばしば析出するため均一溶液とならない。
また、エタノール溶液中で、顔料分散性能を有していることが望ましい。
このような条件に当てはまる界面活性剤としては、水酸基が3個以上の多価アルコール及びその脱水縮合物と炭素数8以上の脂肪酸、ヒドロキシ酸、樹脂酸などとの単一あるいは混合エステル化物を挙げることができる。
例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステルがある。市販品としては、日光ケミカルズ株式会社製のDGMIS(モノイソステアリン酸ジグリセリル)、ヘキサグリンPR−15(ポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル)、デカグリン5−OV(ペンタオレイン酸デカグリセリル)、デカグリン5−HS(ペンタヒドロキシステアリン酸デカグリセリル)、デカグリン7−OV(ヘプタオレイン酸デカグリセリル)を挙げることができる。
また、ペンタエリスリトール系脂肪酸エステルとしては、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルがある。市販品としては、日清オイリオグループ株式会社製のコスモール168ARV(ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル)、コスモール168EV((ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル)等を挙げることができる。
さらに、混合物としては、コグニスジャパン株式会社製のデヒムルスE(クエン酸ジステアリル、ヤシ油脂肪酸ペンタエリスリチル、セスキオレイン酸ソルビタン、ミツロウの混合物)を挙げることができる。
なお、前記界面活性剤は上記の化合物の1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0018】
前記歯のマニキュア用コーティング剤組成物には、顔料、抗う蝕作用を有する薬効成分、抗菌剤・抗菌剤からなる群より選ばれた1種または2種以上を副成分として添加することができる。
前記顔料は、雲母チタン、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ被覆酸化チタンから選ばれた1種または2種以上を0.5〜6.0wt%含有することができる。
雲母チタンは、BASFジャパン株式会社製のFLAMENCO、酸化チタンは、テイカ株式会社製の微粒子酸化チタンMT−500B、ヒドロキシアパタイトは、株式会社サンギ製のアパタイザーC、シリカ被覆酸化チタンは、昭和電工製マックスライトF−TS20等が挙げられる。
前記抗う蝕作用を有する薬効成分は、ヒノキチオール(高砂香料株式会社製)、グアイアズレン(甲南化工株式会社製)、βーグリチルレチン酸(丸善製薬株式会社製)、ビサボロール(αービサボロール:BASFジャパン株式会社製)、カンゾウフラボノイド(油溶性甘草エキスP−T:丸善製薬株式会社製)、チョウジエキス(チョウジ抽出液:丸善製薬株式会社製)等が挙げられる。
殺菌剤・抗菌剤は、イソプロピルメチルフェノール(以下、IPMPと表示する。大阪化成株式会社製)、塩化セチルピリジニウム(CPC:和光純薬工業株式会社製)、チモール(大阪化成株式会製)、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン(パイオニンB−611−S:竹本油脂株式会製)等が挙げられる。
【実施例1】
【0019】
実施例1は、以下の処方1からなる歯のマニキュア用コーティング剤組成物である。
比較例1は、特許文献2記載の実施例4である。
各処方の配合量はwt%である。エタノールで100wt%とする。以下、同じである。
処方 処方1 比較例1
セラック 12.0 25.0
エステルガムHP 2.2
コスモール168ARV 3.0
ウルトラホールドストロング 3.6
ユカフォーマーAM75R205 0.8
雲母チタン 2.6
酸化チタン 0.6
エタノール 100.0 100.0
なお、前記セラックは、興洋化学株式会社製の乾燥透明セラックである。
また、前記エステルガムHPは、荒川化学工業製のロジン酸ペンタエリスリトールエステルであり、前記コスモール168ARVは、日清製油製のヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリトールエステルである。
さらに、前記ウルトラホールドストロングは、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体であり、前記ユカフォーマーAM75R205は、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体である。
また、前記雲母チタンは、BASFジャパン株式会社製のFLAMENCOであり、
酸化チタンは、テイカ株式会社製の微粒子酸化チタンMT−500Bである。
なお、エタノールは、純度99wt%のものを使用した。以下、同じである。
【0020】
[製造方法]
前記処方の製造方法は、以下のとおりである。
(1)セラック、エステルガム、およびウルトラホールドストロングを適量のエタノールに加えて加温し溶解する。
(2)顔料および界面活性剤を、少量のエタノールを用い乳鉢ですりつぶして混合する。
(3)前記(2)の混合物溶液に、先に溶解しておいたセラック等の混合溶液の一部を加えて、再度乳鉢ですりつぶす。
(4)前記(3)の混合物溶液を、先のセラック等の混合溶液に加え攪拌・混合した後、残りのエタノールを加えて全量を100部とする。
製造方法は、以下、同様である。
【実施例2】
【0021】
実施例2は、以下の処方2からなる歯のマニキュア用コーティング剤組成物である。
比較例2は、特許文献2に記載された着色液4を使用した実施例6である。
各処方の配合量は、wt%である。
処方 処方2 比較例2
セラック 10.0 15.0
エステルガムHP 2.2
デカグリン5−OV 1.0
ウルトラホールドストロング 8.4
ユカフォーマーAM75R205 1.0
雲母チタン 3.4
黄色5号Alレーキ 0.01
酸化チタン 1.0
エタノール 100.0 100.0
なお、前記デカグリン5−OVは、日光ケミカルズ製のペンタオレイン酸デカグリセリンエステルである。
また、黄色5号Alレーキは、特許文献2の着色液4に使用されている顔料である。
【0022】
実施例1の処方1、および実施例2の処方2は、前歯に塗布したとき、塗膜がなめらかで舌が触れても違和感が無かった。
比較例1、および比較例2は、前歯の塗布したとき、膜に光沢が無く表面がざらつき、舌で触れたとき違和感があり美容目的での塗膜の役割を果たしているとはいいがたい。
また、前歯への塗布の際、比較例1、および比較例2は、液が塗布面に留まらず拡散して歯茎や隣接する歯との間に溜まり塗布面のコントロールが出来なかった。
これはエタノール溶液の粘度が低いための現象であり、溶液中への共重合体の配合量を多くすれば増粘して拡散が抑えられコントロールが可能になる。
しかしながら比較例1、および比較例2で用いているカルボキシベタイン基をもつポリマーは親水性であるため、配合量を多くすると塗布膜の耐水性が低下するという二律背反の問題を抱えている。
これに対して、実施例1の処方1、および実施例2の処方2で使用した共重合体(ウルトラホールドストロング)は、比較例1、および比較例2で使用した共重合体(ユカフォーマー)に比べて、はるかに親水性が低いため、多く配合することが可能である。
【実施例3】
【0023】
実施例3は、以下の処方3から処方5よりなる歯のマニキュア用コーティング剤組成物である。各処方の配合量は、wt%である。
処 方 処方3 処方4 処方5
セラック 4.8 5.2 5.0
エステルガムHP 2.6 2.2 2.4
デカグリン5−OV 0.9 0.4
コスモール168ARV 0.6 0.8
デカグリン5−HS 0.4
ウルトラホールドストロング 3.3 3.8 4.8
雲母チタン 2.4 2.0 3.4
酸化チタン 0.6
ヒドロキシアパタイト 0.8
エタノール 100.0 100.0 100.0
なお、前記デカグリン5−HSは、日光ケミカルズ製のペンタヒドロキシステアリン酸デカグリセリルである。
また、ヒドロキシアパタイトは、株式会社サンギ製のアパタイザーCである。
【0024】
実施例3の処方3から処方5について、前歯に塗布した実施テストをおこなった。
男性2人、女性1人の前歯上下2本づつに塗布し経過を調べた。
実施例3の処方3から処方5は、5時間経過後も塗布膜は落ちることなく安定であった。
但し、実施例3の処方3では、下歯に塗った場合に、液の粘性がやや不足し、歯茎までたれる傾向がみられた。
【実施例4】
【0025】
実施例4は、以下の処方6から処方10よりなる歯のマニキュア用コーティング剤組成物である。各処方の配合量は、wt%である。
処方 処方6 処方7 処方8 処方9 処方10
セラック 5.2 7.0 8.0 5.5 3.8
エステルガムHP 1.8 2.2 2.0
エステルガムAAG 1.2 0.4 2.0
デカグリン5−HS 1.0
デカグリン5−OV 1.0
DGMIS 0.6
デカグリン7−OV 0.8 1.0
コスモール168ARV 1.4 0.5
コスモール168EV 1.0 0.5
デヒムルスE 0.8
ウルトラホールドストロング 4.5 6.0 5.1 7.5 7.8
雲母チタン 1.0 1.0 2.0 3.0
ヒドロキシアパタイト 2.0 2.0 3.0
ヒノキチオール 0.01 0.005 0.02
IPMP 0.007 0.005 0.01
エタノール 100.0 100.0 100.0 100.0 100
なお、エステルガムAAGは、荒川化学工業製のロジン酸グリセリンエステルである。
また、DGMISは、日光ケミカルズ株式会社製のモノイソステアリン酸ジグリセリルであり、コスモール168EVは、日清オイリオグループ株式会社製の(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチルであり、デヒムルスEは、コグニスジャパン株式会社製の(クエン酸ジステアリル、ヤシ油脂肪酸ペンタエリスリチル、セスキオレイン酸ソルビタン、ミツロウ)の混合物である。
さらに、ヒノキチオールは、高砂香料株式会社製の薬効成分であり、IPMPは、大阪化成株式会社製の殺菌剤・抗菌剤である。
【0026】
実施例4の処方6から処方10の歯のマニキュア用コーティング剤組成物について、前歯に塗布した実施テストを行った。
[塗布膜強度試験]
午前10時、処方6、処方7のコーティング剤を成人男性の上側の左と右の前歯それぞれ2本に塗布し、1分ほど乾かした。
ヒドロキシアパタイトは、白さと被覆力の点で酸化チタンに劣るが、薄いパール光沢の皮膜が形成された。
午前10時30分休憩時間でお茶を飲んだ。12時に昼食の弁当と味噌汁をとり、お茶を飲んだ。弁当の中に特に硬い物はなかった。
食後口をすすいで前歯の様子を調べたが、左右とも塗布膜の剥離はなかった。
午後3時の休憩でお茶を飲んだ。
午後5時30分の帰宅まえに調べたところ、左側の正面の前歯一本の下側にわずかに剥がれた部分がみられたが、塗布膜は7時間経過してもほぼ完全に維持されていた。
[塗布膜耐久性試験]
処方8、処方9のコーティング剤について、成人男性2名と成人女性1名が左右の上2本づつの前歯に塗布して耐久試験を行った。
午前9時に左右の歯にそれぞれ処方8と処方9のコーティング剤を塗布し乾燥させた。
午前10時30分休憩時に、各人がお茶又はコーヒーを飲んだ。3人とも12時に昼食の弁当・味噌汁をとりお茶を飲んだ。
食後に塗布膜の状態を調べたが、3人ともに塗布膜の膨潤や剥離は見られなかった。
午後3時にはコーヒーを飲んだ。5時半被験者2名は残業のためサンドイッチの軽食と牛乳をとった。
その後に、その2名の歯を調べたところ、塗布した前歯はパール光沢を保っていた。
処方8を塗布した歯のパールは、処方9に比べて薄かった。
帰宅した1名は午後8時に夕食をとり、午後8時30分に塗布した歯の膜の状態を観察した。左側前歯にこすれたキズ跡が見られたが塗布膜自体はパール光沢を保ちしっかりコートされていた。
歯ブラシで丁寧に磨いたところ、研磨剤無しで塗布膜はきれいに除去された。
処方10のコーティング剤については、男性被験者1名の上前歯4本に塗布し、乾燥させた。
左側前歯2本は、処方10を攪拌して、直ぐにブラシで塗布した。
右側前歯2本は、処方10を攪拌して、1分間静置した後、上層を塗布した。
攪拌後、直ぐに塗布した皮膜は、表面がざらつき、なめらかさがみられなかった。
これに対して、静置後、上層を塗布した膜は滑らかであった。
いずれの場合も、左右前歯の塗布膜は、共に丈夫で、食事をとった後でも、6時間は膜が保たれた。
上記テストの結果から、実施例4の処方6から処方10の歯のマニキュア用コーティング剤組成物は、いずれも強度および耐久性が優れており、しかも歯ブラシで磨くと、塗布膜はきれいに除去することができるという格別な効果を奏することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の歯のマニキュア用コーティング剤組成物は、人間の自然の歯だけではなく、入れ歯や、義歯の用途にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラック、エステルガム、増粘・皮膜剤、およびエタノールを主成分とすることを特徴とする歯のマニキュア用コーティング剤組成物。
【請求項2】
セラックの含有量が1.0〜16.0wt%、好ましくは3.0〜12.0wt%、
エステルガムの含有量が0.5〜5.0wt%、好ましくは1.0〜3.5wt%、
増粘・皮膜剤として、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体の含有量が2.0〜12.0wt%、好ましくは3.5〜9.0wt%、
界面活性剤の含有量が0.1〜3.5wt%、好ましくは1.0〜3.0wt%、
およびエタノールからなることを特徴とする歯のマニキュア用コーティング剤組成物。
【請求項3】
請求項1および請求項2記載のエステルガムは、樹脂酸のペンタエリスリトールもしくはグリセリンエステルであることを特徴とする請求項1および請求項2記載の歯のマニキュア用コーティング剤組成物。
【請求項4】
請求項2記載の界面活性剤は、非水溶性界面活性剤であり、水酸基が3個以上の多価アルコール及びその脱水縮合物と炭素数8以上の脂肪酸、ヒドロキシ酸、樹脂酸との単一あるいは混合エステル化物の1種あるいは2種以上からなることを特徴とする請求項1から請求項3記載の歯のマニキュア用コーティング剤組成物。
【請求項5】
顔料、抗う蝕作用を有する薬効成分、殺菌剤・抗菌剤からなる群より選ばれた1種または2種以上を副成分として添加することを特徴とする請求項1から請求項4記載の歯のマニキュア用コーティング剤組成物。
【請求項6】
請求項5記載の顔料は、雲母チタン、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、およびシリカ被覆酸化チタンから選ばれた1種または2種以上を全組成物中の0.5〜6.0wt%含有することを特徴とする請求項1から請求項5記載の歯のマニキュア用コーティング剤組成物。

【公開番号】特開2012−6848(P2012−6848A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142371(P2010−142371)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(503241065)株式会社ユリカ (2)
【Fターム(参考)】