説明

歯の感受性が低減される歯科用仮セメント

歯または他の歯科基材に歯科補綴物また歯科装具を一時的に取り付けるために使用する歯科用仮セメントは、歯の感受性を阻止し、または低減するために1種または複数の鎮静剤を含む。この歯科用仮セメントは、イオン浸出剤、ポリカルボン酸、鎮静剤、および水の混合物を含む。鎮静剤(例えば、2−エトキシ安息香酸および2−メトキシ−4−メチルフェノール)は、ポリカルボン酸とイオン浸出剤(塩基)との反応に随伴する歯の感受性を低減または解消するような量を加える。仮セメント組成物は、歯の永久的な修復が望まれるときに歯から容易に取り外すことのできる程度に十分に親水性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ボンディング組成物、より詳細には、歯科補綴物をヒトの歯に一時的にボンディングするのに使用する歯科用仮セメントの分野である。
【背景技術】
【0002】
歯科用永久セメントは、歯科補綴物または歯科装具を受け取る準備ができている歯にその装具または補綴物を接着するのに使用される。歯科用永久セメントは、通常、2つの部分を含み、1つの部分がガラスアイオノマーシリカを含み、第2部分がポリアクリル酸を含む。ガラスアイオノマーシリカと水性ポリアクリル酸を混合すると、塩をもたらす酸塩基反応が起こる。この塩は、歯と補綴物もしくは装具との間に強い結合を形成するマトリックスを有している。
【0003】
歯冠用のルーティングセメントなどの永久ボンディング材料として樹脂を使用するとき、通常、その歯調製物に最終永久ボンディング材料を付着させる前に、親水性レジンプライマーを適用する。ボンディングプライマーが歯表面に結合し、その後、レジンベースの永久ルーティングセメントがそのボンディングプライマー上に結合する。ボンディングプライマーを使用すると、歯へのルーティングセメントの接着が全体として増大する。
【0004】
歯科用永久セメントは、永久的な結合が望まれる種々の異なる歯科用目的のために非常に有用であるが、ある場合には、補綴物または装具を歯に一時的に取り付け、次いで後ほどその補綴物または装具を取り外すことが望まししいこともある。例えば、歯冠を受け取る準備ができている歯に永久歯冠を載せる前に、歯科医は通常、歯の印象を採得する。歯科医は次いで、歯に仮の歯冠を載せ、その印象を永久歯冠製造のため研究所に送る。
【0005】
仮の歯冠は、永久歯冠が調製されるまで歯科用仮セメントによってしかるべき場所に保持される。その後、仮の歯冠は取り外される。次いで、歯科用永久セメントを使用して、永久歯冠を歯に永久に取り付ける。歯科用仮セメントの1種は、オイゲノール、ロジン、パインゴム、またはトール油を酸化亜鉛と混合したものを含む。このような歯科用セメントの問題の1つは、これらが疎水性であることである。このために、そのような仮セメントは、歯との化学的シールおよびはに対する化学的シールを形成することができない。弱いシールの形成は、歯の感受性および感染に繋がりうる。
【0006】
別の問題は、そのような歯科用仮セメントは、完全に除去するのが難しいことである。これらのセメントは、歯に不溶性の油性残渣を残し、および/または下にある象牙質および/またはエナメル質を汚染して、仮セメント除去後の後ほどの永久結合の形成を阻止または妨害しかねない。この油性残渣は、特に水ですすいでも、または歯科業界で使用される従来の乾燥剤を使用しても、除去し難いことがある。油性残渣は、親水性プライマーに十分に結合せず、疎水性樹脂の重合を抑制することさえある。したがって、オイゲノールまたは他の疎水性の油もしくは樹脂を含有する仮セメントは、一般に、オレンジ油などの別の疎水性組成物または別の疎水性洗剤で取り除かなければならない。さらに、オイゲノールなどの典型的な疎水性仮セメントは、神経組織および歯髄組織に対して刺激性になることもある。これらやその他の理由のために、オイゲノールまたは他の疎水性の油もしくは樹脂を含む仮ボンディングセメントは、多くの歯科従業者から非常に不評を招きつつある。
【0007】
オイゲノールベースまたは他の疎水性歯科用仮セメントに固有の前述の問題を考慮して、より親水性である歯科用仮セメントの使用を提唱する者もある。親水性仮セメントを使用することの背後にある理論は、親水性材料が、歯科組織と化学的により適合性があり、それ自体が患者の歯に対してより良好な結合およびシールを形成すると予想されることである。さらに、親水性の仮ボンディングセメントは、水、または水と親水性溶媒の混合物を使用してより容易に洗い落とせると予想される。
【0008】
それにもかかわらず、親水性仮ボンディングセメントは、疎水性仮セメントに付随するある種の問題を解決するが、別の問題を生じている。例えば、Fischerらの(特許文献1)は、イオン浸出剤とポリアクリル酸とを含む二部系を使用している点で歯科用永久セメントと類似しているが、後により容易に除去できるより一時的な結合を形成するために糖または糖誘導体を含むように改変されている歯科用仮セメントを開示している。歯科用仮組成物ならびにその組成物の調製方法および使用方法を開示する目的のために、前述の特許を参照により援用する。このような組成物または同様の化学に基づく歯科用永久セメントであっても、その欠点の1つは、最初に適用するときに患者にかなりの痛みを引き起こし得ることである。そのため、このような組成物は、麻酔下の患者に限り使用が推奨される。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,306,206号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の観点から、歯に対して良好な結合およびシールを形成しうるが、患者の歯への適用時にあまり痛みを引き起こさない歯科用仮セメントを提供することが求められている。このことは、患者または他の者が、歯科医を訪れるのに不便であり、またはそれが不可能であるときに、外れそうな充填物や歯冠などの歯の類を一時的に固定し、または痛ましい空洞もしくは破壊された歯を一時的に修復することが必要である場合に特に当てはまる。
【0011】
感受性が低減された、改良された歯科用仮セメントおよびヒトの歯の一時的な修復方法を本明細書で開示し、特許を請求する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ヒトの歯に置いたときの歯の感受性が低減されている歯科用仮セメントに関する。本発明はまた、そのような組成物を利用したキットおよび方法に関する。本発明の組成物は、患者の歯に仮の補綴物を取り付けるときに歯科従業者が使用できるだけでなく、歯科従業者を訪ねる状況以外で、壊れもしくは外れた補綴物、または歯の欠陥を一時的に修復する必要のある者が使用することもできる。
【0013】
このような歯科用仮セメントは、歯科従業者の即座の力添えがなくても人々が自身の歯を自分で修復できるようにするため、処方箋なしで販売することができる。これは、例えば、人が旅行中であり、または遠隔地におり、直ちに歯科医を訪ねられないときに起こり得る。あるいは、人の緊急事態が、夜、週末、または歯科医を訪れるのに不便もしくはそれが不可能な他のある時間帯に起こるかもしれない。本発明の組成物は、当然、痛みまたは感受性を低減しながら歯科補綴物を患者の歯に一時的に結合するために歯科従業者が使用することもできる。
【0014】
本発明による歯科用仮セメントは、一成分中に酸を、別の成分中に塩基を含み、これらが水の存在下で混合されると、反応して、ヒトの歯に結合し得る硬化性材料となる。酸成分は、通常、親水性のポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸)である。塩基成分は、通常、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)または酸成分と反応する他のイオン浸出剤である。
【0015】
2種の成分を適用前に混合し、これにより2種の成分が、酸をベースとした反応を受け、歯に接着し得る金属カルボキシレートポリマーが形成されるようになる。金属カルボキシレートポリマーは、ヒトの歯に仮の補綴物を結合するためにセメントとして役立てることもでき、あるいは、ヒトの歯の空隙を単に埋めるのに使用してもよい。しかし、酸、または酸成分と塩基成分の反応の少なくとも1つが、歯への感受性または刺激性を引き起こす原因であると考えられている。
【0016】
酸成分と塩基成分の反応によって引き起こされる痛みを改善し、または少なくとも部分的に低減するために、本発明による歯科用仮セメントは、歯への感受性を大いに低減または消失させることのできる1種または複数の鎮静剤を含む。鎮静剤は、通常、疎水性の油を含む。しかし、鎮静性の油は、通常は組成物全体のうち比較的少ない画分しか占めないので、金属カルボキシレートポリマーの、歯表面に対する良好なシール形成能を妨げることはない。疎水性鎮静化油の比較的低い濃度により、通常は従来の疎水性仮ボンディングセメントを使用したときに生じる油性の薄膜を後に残さずに歯から容易に取り除くことのできる、まだ十分に親水性である仮ボンディングセメントを提供できる。
【0017】
本発明の範囲内で使用できる鎮静剤の例には、2−エトキシ安息香酸、2−メトキシ−4−メチルフェノール、オイゲノール、ロジン、パインゴム、トール油などが含まれる。
【0018】
本発明による組成物は、ヒトの歯に永久ボンディングセメントを適用する前の必要なときにより容易に取り外すことのできる歯科用仮セメントを形成する目的で、糖または糖誘導体(例えば、ソルビトール)を含んでもよい。糖または糖誘導体は、水性成分または水性組成物内の非水溶性成分を、これらの混合前に乳化および/または懸濁するのを助けることもできる。
【0019】
沈降二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ、ヒュームド酸化アルミニウム、コロイドシリカなどの増粘剤を使用すると、ボンディング組成物の粘性を増し、所望の粘稠度を有する組成物を形成ができる。増粘剤はまた、場合によっては組成物に揺変性を付与して、患者の歯の裂け目若しくは割れ目の表示またはそれら中への操作を容易にするが、硬化する間容易に垂れ落ちずにしかるべき場所に留まることのできる組成物をもたらし得る。
【0020】
本発明による歯科用仮セメントは、通常、酸成分が一方の部分に含まれ、塩基成分が別の部分に含まれている複数部分組成物を含む。各部分は、必要に応じて溶液、懸濁液、コロイド、または乾燥成分の混合物でよい。酸部分と塩基部分の一方または両方に1種または複数の鎮静剤、増粘剤、および他の所望の成分が含まれていてもよい。酸成分と塩基成分の一方または両方を、歯科用仮セメントを形成することが望ましいときに、後ほど水と混合される乾燥した混合物として提供することは、確かに本発明の範囲内にあるが、酸成分と塩基成分の一方または両方が水を含んでいてもよい。例えば、水は、所望であれば、酸成分および塩基成分と別に提供することができる。
【0021】
本発明による歯科用仮セメントは、仮修復プロセスを円滑にする1種または複数の追加の成分も含むキット内に含めてもよい。例えば、キットは、金属製、木製、またはプラスチック製の棒、スパチュラ、スプーンなどの攪拌デバイスを含んでよい。キットは、スパチュラ、または歯科用仮セメントを歯の所望の位置に置くのに適する特別に適合させたシリンジおよびシリンジチップなどの適用デバイスも含んでよい。最初は混合されていない成分をシリンジに予め装入し、管または他の適切な分注デバイスを押し込むこともできる。キットは、痛ましい歯に適用して、一時的に麻酔をもたらすことのできる麻酔組成物、乾燥剤、下塗剤などの他の組成物も含んでよい。
【0022】
壊れもしくは外れた歯科用充填物、補綴物、または装具(以下では、一まとめにして「歯科補綴物」と呼ぶ)を一時的に修復することが望ましい場合には、歯科補綴物を取り外し、または歯に歯科用仮セメントを適用できるように調整し、続いて、歯科補綴物を置くことができる。専門の歯科治療が受けられるまで痛みを低減するために、人の歯の裂け目、割れ目、または他の欠損を単に埋めまたはシールするのに歯科用仮セメントを使用することも本発明の範囲内である。
【0023】
本発明による仮ボンディングセメントは親水性であるので、永久ボンディング剤または歯科用セメントを人の歯に適用するのに先立って容易に取り外すことができる。本発明による歯科用仮セメントは、Ultradent Products,Inc.、所在:米ユタ州South Jordanから入手できるCONSEPSIS SCRUBなどの水ベースの精錬剤を使用して、必要に応じて洗い落とすことができる。
【0024】
これらやその他の本発明の特徴および利点は、以下の記述および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなるか、あるいは以下で述べる本発明の実践によって知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
I.序文
本発明による歯科用仮セメントは、ヒトの歯に対して良好なシールとなり得る程度に十分に親水性である歯科用仮セメントを得るために、酸性のポリマー成分と塩基の成分との間の反応を伴うものである。同歯科用仮セメントは、酸、または酸と塩基の反応のうちの少なくとも1つに伴う痛みを低減または解消するために、1種または複数の鎮静剤も含む。
【0026】
本発明による歯科用仮セメントは、補綴物、歯科装具、または患者の歯のための他の構造物を一時的に結合させるために歯科従業者が使用することができる。壊れもしくは外れた歯科補綴物、装具、または他の欠陥を歯科従業者による補助なしで一時的に修復する必要のある者のために、処方箋なしでの販売に適する歯科用仮セメントを提供することも本発明の範囲内である。本発明の歯科用セメントは、歯科医による専門の援助が受けられるまで裂け目、穴、または他の欠損を埋めるための仮充填材料として使用することもできる。本発明による歯科用仮セメントは、酸をベースとした反応に依拠するが、鎮静剤を含まない歯科用セメントよりも痛みまたは感受性が大いに低減されているので、麻酔のかかっていない歯の一時的な修復に使用することができる。
【0027】
本発明による歯科用仮セメントは、通常、反応性の酸成分および塩基成分を含有する最初のうちは別個の各部分、1種または複数の鎮静剤、ならびに所望の性質を有する組成物を得るために含めてよい任意選択の成分を互いに混合して形成される。本発明による歯科用仮セメントは、単独で販売してもよいし、または以下でより十分に論じるように歯科用修復キットの一部として販売してもよい。
【0028】
用語「約」は、数値と組み合わせて使用するとき、数値の±10%を意味すべきである。したがって、用語「約」の意味は、所与の数値の±10%の範囲を規定することである。
【0029】
「反応生成物」または「混合生成物」とは、組成物の要素が互いに混合されるときに生じる1種または複数の生成物である。
【0030】
II.歯科用仮セメント
本発明による歯科用仮セメントは、歯科用仮セメントをヒトの歯に適用する直前に混合される各反応性成分、ならびに反応性成分の一方または両方に随伴する痛みまたは感受性を低減する1種または複数の鎮静剤を含む。歯科用仮セメントは、1種または複数の糖もしくは糖誘導体、増粘剤、水、および所望の他の成分も含むことができ、混合前に所望の性質を有する個々の成分、ならびに反応性成分が互いに反応して歯科用成分を硬化させる前後に所望の性質を有する混合歯科用セメントを得ることができる。
【0031】
用語「歯科用仮セメント」は、本明細書に記載の各成分を混合して形成することのできる任意の組成物を事実上含むものであると広く解釈すべきである。「歯科用仮セメント」がどれだけの間ヒトの歯に付着していなければならないかについて時間的制限はない(例えば、本発明による「歯科用仮セメント」は、必要に応じて数日間、数週間、数カ月、または数年間でさえも歯に付着することができる)。ある場合では、「歯科用仮セメント」を、歯科医による専門の対応処置が受けられるまでヒトの歯の裂け目、割れ目、または他の欠損を一時的に修復するために充填剤として使用してもよい。すなわち、「歯科用仮セメント」が、必ずしも補綴物、装具、または充填物をヒトの歯に実際に接着させる必要はない。
【0032】
A.反応性成分
反応性成分には、酸および塩基が含まれる。水は、これが酸塩基反応の促進に使用される場合、「反応性成分」と呼んでもよい。酸成分と塩基成分は、本発明による歯科用仮セメントの形成が所望されるまで、混合されていない別個の部分のままである。その時点で、最初は別々であった部分が混合されて、所定の期間内に硬化反応を受ける歯科用仮セメントを形成する。これによって、使用者に、完全な硬化または固化の前に歯科用セメントを適用する時間枠が与えられる。
【0033】
本発明による一実施形態では、混合されていない第1の部分がポリカルボン酸を含み、混合されていない第2の部分がイオン浸出剤を含む。水は、所望であれば、混合されていない各部分の一方または両方に含まれてよい。混合されるとき、第1部分のポリカルボン酸と第2部分のイオン浸出剤とが、歯、歯科装具、歯科補綴物または歯科用充填物のような1種または複数の歯科用基材を結合し、シールし得る疎水性マトリックスを形成する。最初は別々である各部分は、所望の特性を有する混合されていない組成物および混合された最終組成物を与えるために、以下でより存分に述べる他の成分を含んでもよい。
【0034】
混合された組成物中には、所望の時間枠で反応して硬化する硬化性の接着剤組成物を形成するため、最初は混合されていない各成分として与えられているポリカルボン酸およびイオン浸出剤が適切な化学量論量で含まれる。通常、混合された組成物中には、所望のレオロジー特性を有する硬化性の歯科用仮セメントを形成するのに十分な量の水が存在する。水はまた、ポリカルボン酸とイオン浸出剤との酸ベースの反応を援助することもできる。
【0035】
本発明で有用なポリカルボン酸の例には、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸(例えば、1,000から400,000の分子量を有する)が含まれる。
【0036】
ポリカルボン酸の濃度は、最初は混合されていない酸組成物中のその濃度、すなわち部分によって、および、混合歯科用仮セメントの形成に使用される、混合されていない諸成分中のその正味濃度によって示すことができる。
【0037】
ポリカルボン酸は、最初は混合されていない酸成分の約10重量%から約90重量%の範囲、より好ましくは、最初は混合されていない酸成分の約20重量%から約80重量%の範囲、最も好ましくは約30重量%から約70重量%の範囲の量で含まれることが好ましい。
【0038】
歯科用仮セメント全体(すなわち、歯科用セメントの形成に使用される混合されていない諸成分)については、ポリカルボン酸は、歯科用仮セメント全体の約5重量%から約50重量%の範囲、より好ましくは歯科用仮セメント全体の約10重量%から約40重量%の範囲、最も好ましくは約15重量%から約35重量%の範囲の濃度を有することが好ましい。
【0039】
本発明による歯科用仮セメントの形成に使用するのに適するイオン浸出剤の例には、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウムのような様々な金属酸化物、およびバリウムアルミノケイ酸塩ガラス、ストロンチウムアルミノケイ酸塩ガラス、他のアルミノケイ酸塩ガラスのようなガラスアイオノマーが含まれる。
【0040】
イオン浸出剤の濃度は、最初は混合されていない塩基組成物中のその濃度、すなわち部分によって、および、本発明による歯科用仮セメントを形成するための混合されていない諸成分中の正味の濃度によって示すことができる。
【0041】
イオン浸出剤は、最初は混合されていない塩基成分の約5重量%から約90重量%の範囲、より好ましくは、最初は混合されていない塩基成分の約10重量%から約70重量%の範囲、最も好ましくは約20重量%から約60重量%の範囲の濃度を有することが好ましい。
【0042】
歯科用仮セメント全体(すなわち、歯科用セメントの形成に使用される混合されていない諸成分)については、イオン浸出剤は、歯科用仮セメント全体の約2重量%から約50重量%の範囲、より好ましくは歯科用仮セメント全体の約5重量%から約35重量%の範囲、最も好ましくは約10重量%から約30重量%の範囲の濃度を有することが好ましい。
【0043】
酸成分と塩基成分が反応するためには、本発明による混合された歯科用仮セメントは、通常、ポリカルボン酸とイオン浸出剤との酸塩基反応を促進するために水を含む。水は、酸成分と塩基成分の一方または両方のうちに含まれていてもよいし、または、歯科用仮セメント形成時に完全に別個の成分として加えてもよい。
【0044】
一般に、水は、歯科用仮セメント全体の約1重量%から約50重量%の範囲、より好ましくは歯科用仮セメント全体の約5重量%から約40重量%の範囲、最も好ましくは約10重量%から約30重量%の範囲で、歯科用仮セメントに対する正味の濃度を有することが好ましい。
【0045】
水が酸成分の中に含まれる場合、通常、水は、酸成分の約1重量%から約99重量%の範囲、好ましくは酸成分の約5重量%から約95重量%の範囲、より好ましくは約15重量%から約85重量%の範囲、最も好ましくは約25重量%から約75重量%の範囲の量で含まれる。
【0046】
水が塩基成分のうちに含まれる場合、水は、塩基成分の約1重量%から約90重量%の範囲、より好ましくは塩基成分の約5重量%から約80重量%の範囲、最も好ましくは約10重量%から約70重量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0047】
B.鎮静剤
本発明による歯科用仮セメントは、前述の反応性成分に加えて、痛みまたは感受性を被りがちな、新たに切除され、露出し、損傷を受け、またはその他敏感になっている歯に反応性成分の混合物を適用することに伴う痛みまたは感受性を低減または解消する働きをする1種または複数の鎮静剤も含む。本発明による鎮静剤は、通常、本発明による歯科用仮セメントに含まれるとき、歯科用仮セメントが歯科用基材に対する良好なシールとなるのを妨げることなく、反応性成分の1種または複数によって引き起こされる痛みおよび感受性を相殺することのできる、1種または複数の疎水性の油である。
【0048】
本発明の範囲内の鎮静剤の例には、2−エトキシ安息香酸、2−メトキシ−4−メチルフェノール、オイゲノール、ロジン、パインゴム、トール油などが含まれる。脱感受性効果を得るために任意選択で使用できる別の構成要素は、硝酸カリウム(KNO)である。
【0049】
鎮静剤は、本発明による歯科用仮セメントの形成に使用される混合されていない各成分の一方に含まれても、または両方に含まれてもよい。一実施形態では、2−エトキシ安息香酸および2−メトキシ−4−メチルフェノールの一方または両方を含む鎮静剤系は、(それ自体が酸性であり)ポリアクリル酸とより適合性があるので、酸成分内に含まれる。それでもやはり、イオン浸出剤と適合性のある鎮静剤を選択することも間違いなく本発明の範囲内である。
【0050】
酸成分に含まれるとき、鎮静剤は、酸成分の約0.1重量%から約50重量%の範囲、より好ましくは酸成分の約2重量%から約40重量%の範囲、最も好ましくは約6重量%から約30重量%の範囲の量で含まれることが好ましい。
【0051】
鎮静剤は、歯科用仮セメント全体の約0.05重量%から約25重量%の範囲、より好ましくは歯科用仮セメント全体の約1重量%から約20重量%の範囲、最も好ましくは約3重量%から約15重量%の範囲の量で含まれることが好ましい。
【0052】
C.糖および糖誘導体
所望の性質を有する組成物を得るため、必要に応じて酸成分および塩基成分の一方または両方に1種または複数の糖または糖誘導体を加えることができる。例えば、糖は、コロイド懸濁化剤として働いて、イオン浸出剤と水の安定なコロイド懸濁液を形成することができる。これは、イオン浸出剤が懸濁液から沈降しないようにする助けとなる。糖または糖誘導体は、通常はセメントが所望時により容易に除去されるように薄める方法で、歯科用仮セメントの最終強度特性を変更することもできる。
【0053】
糖または糖誘導体は、本発明による歯科用仮セメントに含まれるとき、歯科用仮セメントの約0.5重量%から約35重量%の範囲、より好ましくは歯科用仮セメントの約2.5重量%から約30重量%の範囲、最も好ましくは約7.5重量%から約20重量%の範囲の量で含まれることが好ましい。
【0054】
本発明による歯科用仮セメントには異なる様々な糖または糖誘導体を使用することができる。本発明でコロイド懸濁化剤として有用であり、組み合わさった成分が歯科用仮セメントを形成できる六炭素の糖の例には、ソルビトール、ガラクトール、マンニトール、これらの混合物、およびこれらの誘導体が含まれる。一実施形態では、ソルビトールを他の糖から独立して使用することができる。別の実施形態では、仮セメント組成物中にソルビトールとマンニトールの組合せ、ソルビトールとガラクトールの組合せ、またはガラクトールとマンニトールの組合せを使用することができる。ガラクトールまたはマンニトールを、互いにおよび/または他の六炭素の糖から独立して使用することもできる。
【0055】
本発明の六炭素の糖の好ましい化学式は、C14である。本発明の歯科用仮セメント組成物中に使用される五炭素の糖の好ましい化学式は、C12である。有用な五炭素の糖の例は、キシリトールであり、これは、コロイド懸濁化剤、マトリックス希釈剤として働き、他の糖の恩恵を広く有していることに加え、本発明に抗齲食効果および殺菌効果を付与することもできる。
【0056】
D.増粘剤
所望のレベルの粘性および/または揺変性を有する組成物を得るため、酸成分および塩基成分の一方または両方に1種または複数の増粘剤を含めることは本発明の範囲内である。有用な増粘剤の例は、ヒュームドシリカである。本発明による他の増粘剤には、沈降シリカ、コロイドシリカ、ヒュームド酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ素炭素(silicon carbon)などのような、広範な種類の他の粒状の無機フィラーが含まれる。
【0057】
粒状の増粘剤に加えて、1種または複数のポリマー増粘剤を含むことも本発明の範囲内である。
【0058】
増粘剤が本発明による歯科用仮セメントに含まれるとき、増粘剤は、歯科用仮セメント全体の約1重量%から約40重量%の範囲、より好ましくは歯科用仮セメント全体の約5重量%から約35重量%の範囲、最も好ましくは約10重量%から約30重量%の範囲の濃度を有することが好ましい。
【0059】
E.他の成分
所望の性質を有する組成物を得るため、必要に応じて他の添加剤または補助剤を含めることは本発明の範囲内である。それらには、ポリオール、溶媒、甘味剤、殺菌剤、抗齲食剤などが含まれる。
【0060】
本発明による歯科用仮セメントに含めることのできるポリオールの例には、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが含まれる。詳細な例には、約300から8,000の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール、および約300から8,000の範囲の分子量を有するポリプロピレングリコールが含まれる。
【0061】
本発明による歯科用仮セメントに使用することのできる溶媒の例には、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンなどが含まれる。
【0062】
殺菌剤の例には、クロルヘキシジン、1,1’−ヘキサメチレンビス(5(p−クロロフェニル)ビグアニド)、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルピリジニウム、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、およびプロピルパラベン(p−ヒドロキシ安息香酸プロピル)が含まれる。
【0063】
抗齲食剤の例には、歯科業界でエナメル質の強化に使用される既知のいずれかのフッ化物塩が含まれる。
【0064】
III.仮修復用キット
上記の議論からわかるであろうが、歯を仮修復するための本発明によるキットは、一般に、最初は別々になっている酸成分と塩基成分とを含む。本発明によるキットはまた、仮修復プロセスを円滑にする1種または複数の追加成分を含んでいてもよい。例えば、本発明によるキットは、金属製、木製、もしくはプラスチック製の棒、スパチュラ、およびスプーンなどの攪拌デバイスを含んでもよい。キットは、スパチュラ、または歯の所望の位置内に歯科用仮セメントを置くのに適する特別に適合させたシリンジとシリンジチップのような適用デバイスを含んでもよい。
【0065】
本発明によるキットは、麻酔剤組成物、乾燥剤、下塗剤など、歯科用仮セメントを補助または強化する他の組成物を含んでよい。
【0066】
最初は混合されていない各部分または成分をシリンジ、スクィーズチューブ、または他の適切な分注デバイスに予め装入しておくこともでき、またはこれらを分注には適さない広口瓶または他の貯蔵デバイス内に収め、次いでシリンジまたは他の分注デバイスに吸引してもよい。最初は混合されていない酸成分と塩基成分は、どんな比率で混合してもよい。一般向け製品の場合では、酸成分と塩基成分を単純に1:1の比率で混合できるように処方すると有利であろう。分注デバイスは、最初は別々になっている各成分が所望の比率で混合するのを助けるように選択することができる。
【0067】
IV.発明の歯科用仮セメントの使用方法
本発明による歯科用仮セメントは、親水性および疎水性のどちらの歯科用仮セメントも含めて、当業界で知られている他の歯科用仮セメントと同じように使用してよい。これらは、歯科手順の際に仮の歯冠、歯科装具、またその他補綴物をヒトの歯に一時的に結合するために、歯科従業者が使用してよい。これらは、後で容易に取り除くことのできる仮充填材料として使用してもよい。
【0068】
本発明による一般向け歯科用仮セメントの場合では、歯科従業者を訪れる前、またはそうする代わりに、非歯科従業者が、損傷を受けた歯、歯冠、歯科装具、またはその他補綴物の修復にこれらを使用することができる。これらを仮充填材料として使用し、歯科従業者を訪ねる前の仮充填材料として、一時的に穴を埋めることができる。
【0069】
歯科用仮セメントは、単独で使用しても、または他の補助剤もしくは補足的な組成物と組み合わせて使用してもよい。例えば、歯に麻酔剤組成物を適用し、歯科用仮セメントの適用前の痛みを一時的に解消することができる。防腐剤もしくは殺菌剤組成物を使用し、歯科用仮セメントの適用前の感染を解消または少なくとも抑制することができる。歯科用仮セメントの適用前に、所望であれば乾燥剤や下塗剤などの他の組成物を使用してもよい。
【0070】
歯科用仮セメントを除去することが望まれる場合、水、またはUltradent Products,Incから入手できるCONSEPSIS SCRUBがその例である水系の洗剤もしくは洗浄剤(scrubbing agent)を使用して、必要に応じて洗い落とすことができる。歯科用仮セメントを除去した後、当業界で知られている修復組成物を使用して、歯を整えることができる。本発明の組成物は、歯科基材に接着したままとなり得る高濃度の疎水性の油を含んでいないので、本発明による歯科用仮セメントは比較的きれいな表面を残し、この表面には、引き続いて修復組成物を適用することができる。
【実施例】
【0071】
V.本発明の実施例
以下の実施例では、実例となる様々な本発明による止血剤組成物および歯科用エッチング組成物を述べる。それら実施例は、単に実例となるものであり、本発明の範囲を限定するものと見るべきでない。実際に行った実施例は過去形で述べ、仮定的な実施例は現在形で述べる。
【0072】
本発明による歯科用仮セメントは、通常、最初は別々であり、混合されていない塩基成分と酸成分とを含む。したがって、以下の実施例は、より詳細には、個々の塩基成分および酸性分を対象としている。どの塩基成分をどの酸成分と混合し、混合された歯科用仮セメント(例えば1:1の比率で)を形成してもよいことを理解されたい。
【0073】
塩基実施例1
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 52.8%
酸化亜鉛 45%
ヒュームドシリカ(Aerosil 200) 2%
ポリエチレングリコール(600 MW) 0.2%
【0074】
塩基実施例2
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 50.5%
酸化亜鉛 45%
Aerosil 200 4%
PEG 600 0.5%
【0075】
塩基実施例3
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 60.5%
酸化亜鉛 35%
Aerosil 200 4%
PEG 600 0.5%
【0076】
塩基実施例4
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 36.6%
酸化亜鉛 60%
ヒュームドシリカ(Cabosil M−5) 3%
PEG 600 0.4%
【0077】
塩基実施例5
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 27.6%
Cabosil M−5 2%
PEG 300 0.4%
グリセリン 30%
酸化亜鉛 40%
【0078】
塩基実施例6
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
PEG 600 26%
グリセリン 30%
Cabosil M−5 4%
酸化亜鉛 40%
【0079】
塩基実施例7
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
キシリトール 25%
蒸留水 35.6%
Aerosil 200 2%
PEG 600 0.4%
酸化亜鉛 35%
エタノール 2%
【0080】
塩基実施例8
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
ソルビトール(水中70%) 43%
ソルビトール粉末 7%
沈降SiO(Zeo 113) 13.2%
酸化亜鉛 35%
エタノール 1.8%
【0081】
塩基実施例9
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
キシリトール 25%
水 25.6%
Aerosil 2%
PEG 600 0.4%
酸化亜鉛 45%
エタノール 2%
【0082】
塩基実施例10
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
ソルビトール 33%
ソルビトール粉末 7%
Zeo 113 13.2%
酸化亜鉛 45%
エタノール 1.8%
【0083】
塩基実施例11
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 33.3%
PEG20,000 11.7%
Zeo 113 13.3%
酸化亜鉛 41.67%
【0084】
塩基実施例12
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 10.2%
ソルビトール粉末 27.3%
エタノール 17.1%
酸化亜鉛 43%
Aerosil 200 2%
PEG 600 0.4%
【0085】
塩基実施例13
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
2−エトキシ安息香酸 58%
酸化亜鉛 40%
Aerosil 200 2%
この塩基組成物は、酸を主体とした反応で2−エトキシ安息香酸が酸化亜鉛と反応したとみられるので、十分な長期安定性を示さなかった。
【0086】
塩基実施例14
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
エタノール 51%
酸化亜鉛 45%
Aerosil 200 4%
【0087】
塩基実施例15
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
2−メトキシ−4−メチルフェノール 54%
酸化亜鉛 42%
Aerosil 200 4%
この塩基組成物は、2−メトキシ−4−メチルフェノールが酸化亜鉛と認めうるほどには反応しなかったとみられたので、実施例13の組成物よりも安定であった。
【0088】
塩基実施例16
以下の成分を記載の量で混合して塩基組成物を形成した。
成分 重量濃度
ソルビトール(水中70%) 44.8%
沈降SiO 20%
酸化亜鉛 42%
顔料 0.2%
顔料を加えて、実施例16の塩基組成物に、酸組成物に比べて若干目立つ色を与えた。これは、使用者が2種の成分の混合度合いを決定する助けとなる。
【0089】
酸実施例1
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
蒸留水 25.7%
ポリアクリル酸(水中60%) 55.8%
Aerosil 200 6%
Zeo 113 12%
PEG 600 0.5%
この実施例の酸組成物には、開示したようないずれの好ましい鎮静剤も含めなかったので、この酸組成物を、1種または複数の鎮静剤を含有する塩基組成物(例えば、塩基実施例13および15)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0090】
酸実施例2
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中25%) 93%
(M.W.240,000)
Aerosil 200 7%
この実施例の酸組成物には、開示したようないずれの好ましい鎮静剤も含めなかったので、この酸組成物を、1種または複数の鎮静剤を含有する塩基組成物(例えば、塩基実施例13および15)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0091】
酸実施例3
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中25%) 50%
(M.W.240,000)
ポリアクリル酸(水中50%) 42%
M.W.5,000
Aerosil 200 8%
この実施例の酸組成物には、開示したようないずれの好ましい鎮静剤も含めなかったので、この酸組成物を、1種または複数の鎮静剤を含有する塩基組成物(例えば、塩基実施例13および15)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0092】
酸実施例4
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中25%) 50%
(M.W.240,000)
2−メトキシ安息香酸 42%
Aerosil 200 8%
この実施例の酸組成物には、鎮静剤(2−メトキシ安息香酸)を含めたので、この酸組成物を、酸塩基反応でポリアクリル酸と反応することのできる適切なイオン浸出剤を含有する任意の塩基組成物(例えば、塩基実施例1〜16)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0093】
酸実施例5
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中25%) 83%
(M.W.240,000)
2−メトキシ安息香酸 10%
Aerosil 200 7%
この実施例の酸組成物には、鎮静剤(2−メトキシ安息香酸)を含めたので、この酸組成物を、酸塩基反応でポリアクリル酸と反応することのできる適切なイオン浸出剤を含有する任意の塩基組成物(例えば、塩基実施例1〜16)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0094】
酸実施例6
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中25%) 82.5%
(M.W.240,000)
2−メトキシ安息香酸 10%
Aerosil 200 7%
酢酸 0.5%
この実施例の酸組成物には、鎮静剤(2−メトキシ安息香酸)を含めたので、この酸組成物を、酸塩基反応でポリアクリル酸と反応することのできる適切なイオン浸出剤を含有する任意の塩基組成物(例えば、塩基実施例1〜16)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0095】
酸実施例7
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中25%) 82%
(M.W.240,000)
2−メトキシ安息香酸 10%
Aerosil 200 7%
2−メトキシ−4−メチルフェノール 1%
この実施例の酸組成物には、鎮静剤(2−メトキシ安息香酸および2−メトキシ−4−メチルフェノール)を含めたので、この酸組成物を、酸塩基反応でポリアクリル酸と反応することのできる適切なイオン浸出剤を含有する任意の塩基組成物(例えば、塩基実施例1〜16)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0096】
酸実施例8
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中25%) 32.5%
(M.W.240,000)
ポリアクリル酸(水中50%) 50%
(M.W.5,000)
2−メトキシ安息香酸 10%
Aerosil 200 7%
2−メトキシ−4−メチルフェノール 0.5%
この実施例の酸組成物には、鎮静剤(2−メトキシ安息香酸および2−メトキシ−4−メチルフェノール)を含めたので、この酸組成物を、酸塩基反応でポリアクリル酸と反応することのできる適切なイオン浸出剤を含有する任意の塩基組成物(例えば、塩基実施例1〜16)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0097】
酸実施例9
以下の成分を記載の量で混合して酸組成物を形成した。
成分 重量濃度
ポリアクリル酸(水中60%) 77%
(M.W.2100)
2−メトキシ安息香酸 15%
2−メトキシ−4−メチルフェノール 1%
Aerosil 7%
この実施例の酸組成物には、鎮静剤(2−メトキシ安息香酸および2−メトキシ−4−メチルフェノール)を含めたので、この酸組成物を、酸塩基反応でポリアクリル酸と反応することのできる適切なイオン浸出剤を含有する任意の塩基組成物(例えば、塩基実施例1〜16)と混合して、本発明による歯科用仮セメントを製造することができる。
【0098】
本発明は、本発明の意図または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化してもよい。記載した実施形態は、すべての点で、単に例示するものにすぎず、限定するものでないとみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は、これまでの記述よりも添付の特許請求の範囲によって示される。各請求項と同等の意味および範囲のうちに入る変更はすべて、その特許請求の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初は別々になっている少なくとも2つの部分を含み、前記部分が混合されると、最初は変形可能でヒトの歯に置くのに適する混合歯科用仮セメントを形成し、時間が経つにつれて硬化する複数部分組成物であり、この複数部分組成物が、
最初は別々になっている部分の少なくとも1つに含まれる少なくとも1種のポリカルボン酸と、
前記ポリカルボン酸を含有していない、前記の最初は別々になっている部分の別の少なくとも1つに含まれている少なくとも1種のイオン浸出成分と、
前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つに、混合歯科用仮セメントによって引き起こされる歯の感受性が、鎮静剤なしで前記歯科用セメントによって引き起こされるであろう歯の感受性よりも低減されるような量で含まれる少なくとも1種の鎮静剤であって、2−エトキシ安息香酸、2−メチル−4−メチルフェノール、オイゲノール、トール油、ロジン、またはパインゴムの少なくとも1種を含む鎮静剤と、
前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つに含まれる任意選択の水と
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸はポリアクリル酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸は、前記混合歯科用仮セメントの約5重量%から約50重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸は、前記混合歯科用仮セメントの約10重量%から約40重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸は、前記混合歯科用仮セメントの約15重量%から約35重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項6】
前記イオン浸出剤は金属酸化物またはアルミノケイ酸塩ガラスの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項7】
前記イオン浸出剤は酸化亜鉛を含むことを特徴とする請求項6に記載の複数部分組成物。
【請求項8】
前記イオン浸出剤は、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、またはアルカリ土類金属アルミノケイ酸塩ガラスの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6に記載の複数部分組成物。
【請求項9】
前記イオン浸出剤は、前記混合歯科用仮セメントの約2重量%から約50重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項10】
前記イオン浸出剤は、前記混合歯科用仮セメントの約5重量%から約35重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項11】
前記イオン浸出剤は、前記混合歯科用仮セメントの約10重量%から約30重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項12】
前記鎮静剤は、2−エトキシ安息香酸または2−メチル−4−メチルフェノールの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項13】
前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つに、脱感受性効果をもたらすために鎮静剤に加えて硝酸カリウムをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項14】
前記鎮静剤は、前記混合歯科用仮セメントの約0.05重量%から約25重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項15】
前記鎮静剤は、前記混合歯科用仮セメントの約1重量%から約20重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項16】
前記鎮静剤は、前記混合歯科用仮セメントの約3重量%から約15重量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項17】
前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つに含まれる少なくとも1種の糖または糖誘導体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項18】
前記の糖または糖誘導体は、五炭素の糖もしくは六炭素の糖または誘導体の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項17に記載の複数部分組成物。
【請求項19】
前記の糖または糖誘導体の化学式はC14であることを特徴とする請求項17に記載の複数部分組成物。
【請求項20】
前記の糖または糖誘導体はソルビトールを含むことを特徴とする請求項17に記載の複数部分組成物。
【請求項21】
前記の糖または糖誘導体はマンニトールまたはガラクトールのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17に記載の複数部分組成物。
【請求項22】
前記の糖または糖誘導体は、前記混合歯科用仮セメントの約0.5重量%から約35重量%の濃度を有することを特徴とする請求項17に記載の複数部分組成物。
【請求項23】
前記の最初は別々になっている部分の一方に含まれる少なくとも1種の増粘剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項24】
前記の増粘剤は、ヒュームドシリカ、ヒュームド酸化アルミニウム、コロイドシリカ、または沈降シリカのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項23に記載の複数部分組成物。
【請求項25】
前記の増粘剤は、前記混合歯科用仮セメントの約1重量%から約40重量%の濃度を有することを特徴とする請求項23に記載の複数部分組成物。
【請求項26】
複数部分組成物が、前記混合歯科用仮セメントの約5重量%から約35重量%の濃度を有する水を含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項27】
複数部分組成物が、前記混合歯科用仮セメントの約10重量%から約30重量%の濃度を有する水を含むことを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項28】
シリンジと請求項1の複数部分組成物とを含む歯科修復システムであって、前記複数部分組成物の最初は別々になっている各部分は、前記シリンジの対応するシリンジの胴に含まれていることを特徴とする歯科修復システム。
【請求項29】
複数胴のシリンジと請求項1の複数部分組成物とを含む歯科修復システムであって、前記ポリカルボン酸を含有する前記の最初は別々になっている部分は、前記複数胴のシリンジの第1の胴に含まれ、前記イオン浸出剤を含有する前記の最初は別々になっている部分は、前記複数胴のシリンジの第2の胴に含まれていることを特徴とする歯科修復システム。
【請求項30】
前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つは、前記の最初は別々になっている部分の別の少なくとも1つと異なる色を有することを特徴とする請求項1に記載の複数部分組成物。
【請求項31】
ヒトの歯に歯科補綴物を一時的に結合するためのボンディングシステムであって、
少なくとも1種のポリカルボン酸、少なくとも1種の鎮静剤、および水を含み、
前記鎮静剤が、2−エトキシ安息香酸、2−メチル−4−メチルフェノール、オイゲノール、トール油、ロジン、またはパインゴムのうちの少なくとも1種を含む第1の組成物と、
少なくとも1種のイオン浸出剤、糖または糖誘導体の少なくとも1種、および水を含む第2の組成物と
を含み、
前記第1の組成物と第2の組成物は、混合されると、最初は変形可能でヒトの歯に置くのに適する歯科用仮セメントを形成し、時間が経つにつれて硬化して、歯科補綴物を歯に一時的に結合し、
前記鎮静剤は、前記歯科用仮セメントによって引き起こされる歯の感受性が、前記鎮静剤なしで前記歯科用セメントによって引き起こされるであろう歯の感受性よりも低減されるような量で含まれていることを特徴とするボンディングシステム。
【請求項32】
ヒトの歯の一時的な修復に使用するためのキットであって、
(a)少なくとも1種の仮歯科補綴物と、
(b)少なくとも2種の最初は別々になっている部分を含み、前記部分が混合されると、最初は変形可能でヒトの歯に置くのに適する混合歯科用仮セメントを形成し、時間が経つにつれて硬化する少なくとも1種の複数部分組成物であり、
最初は別々になっている部分の少なくとも1つに含まれる少なくとも1種のポリカルボン酸、
前記ポリカルボン酸を含有していない、前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つに含まれている少なくとも1種のイオン浸出成分、
前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つに、混合歯科用仮セメントによって引き起こされる歯の感受性が、鎮静剤なしで前記歯科用セメントによって引き起こされるであろう歯の感受性よりも低減されるような量で含まれる少なくとも1種の鎮静剤であって、2−エトキシ安息香酸、2−メチル−4−メチルフェノール、オイゲノール、トール油、ロジン、またはパインゴムの少なくとも1種を含む鎮静剤、および
前記の最初は別々になっている部分の少なくとも1つに含まれる任意選択の水
を含む組成物と
を含むことを特徴とするキット。
【請求項33】
前記複数部分組成物の最初は別々になっている部分の少なくとも1つが装入される少なくとも1本のシリンジをさらに含むことを特徴とする請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記の最初は別々になっている部分の混合を容易にするために使用することのできる少なくとも1種の混合デバイスをさらに含むことを特徴とする請求項32に記載のキット。
【請求項35】
前記の混合歯科用仮セメントを歯に適用するのに使用することのできる少なくとも1種のアプリケータをさらに含むことを特徴とする請求項32に記載のキット。
【請求項36】
歯または歯肉の痛みの少なくとも一方の処置に適する局所麻酔剤組成物をさらに含むことを特徴とする請求項32に記載のキット。
【請求項37】
ヒトの歯を修復する方法であって、
(a)ポリカルボン酸、イオン浸出剤、鎮静剤、および水を混合して、最初は変形可能でヒトの歯に置くのに適し、時間が経つにつれて硬化する歯科用仮セメントを形成し、前記鎮静剤が、歯科用仮セメントによって引き起こされる歯の感受性が、鎮静剤なしで前記歯科用セメントによって引き起こされるであろう歯の感受性よりも低減されるような量で含まれており、
前記鎮静剤は、2−エトキシ安息香酸、2−メチル−4−メチルフェノール、オイゲノール、トール油、ロジン、またはパインゴムのうちの少なくとも1種を含むステップと、
(b)前記歯科用仮セメント組成物の少なくとも一部を歯の表面に置くステップと、
(c)前記歯科用仮セメントを硬化させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
前記歯科用仮セメントの少なくとも一部の上に、前記歯科用仮セメントが硬化する前に歯科補綴物を載せ、前記歯科用仮セメントが前記ヒトの歯に前記歯科補綴物を結合するステップをさらに含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記歯科補綴物を取り外すステップをさらに含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記歯科用仮セメントの少なくとも一部を除去し、前記歯に永久ボンディング剤を適用するステップをさらに含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記永久ボンディング剤の少なくとも一部の上に永久歯科補綴物を置くステップをさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。

【公表番号】特表2006−505612(P2006−505612A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551517(P2004−551517)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/032413
【国際公開番号】WO2004/044085
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(399128493)ウルトラデント プロダクツ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】