説明

歯の白色化材および歯を白くする方法

【課題】歯を白くするための白色化材および歯を白くする方法を提供する。
【解決手段】歯の白色化材は硬化して流体のコンシステンシーを有する一方、ゴム状または弾性の性質を有する。この材料は過酸化水素を含む。歯を白くする方法では、上記材料を歯科用トレー内に配置することによって、または材料を歯に直接配置するようにして上記材料を用いる。一旦、材料が硬化して流体のコンシステンシーを有する一方、固体または半固体となれば、歯科用トレーを用いた場合にはその位置に残したり、あるいは取り除くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2成分歯科用漂白系およびヒト歯列を漂白する方法に関する。より詳細には、本発明は粉末成分と液体成分からなる歯の白色化材に関するもので、この白色化材は硬化してエラストマー状の半固体組織となり、また、マウスピースの中や上、あるいは歯列へ運搬するための運搬媒体、または歯列に直接配置するための流動体状の特性も示す。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ヒトの歯を白くするために歯科医が使用する歯の白色化材に関する。様々な理由から、人の歯を輝いて見えるように、または「白く」見えるようにすることが望まれている。世間では、人の歯の「白さ」が高く評価されている。
【0003】
歯は、内側の象牙質層と、歯の保護層である外側の堅いエナメル層とからなる。歯のエナメル層は、自然の状態では、不透明の白色またはわずかにオフホワイト(灰色がかった白色)である。汚れたり変色するのはこのエナメル層である。
【0004】
日常で人が直面したり接したりするような多くの物質が、人の歯の「白さ」を「汚す」、または減少させたりする。特に、人が口にする食物、タバコ製品および飲み物などに人の歯を汚す傾向がある。これらの製品または物質は、歯のエナメル層に蓄積する傾向があり、歯を覆って薄い被膜を形成する。そして、これらの汚したり変色させる物質がエナメル層に浸透する。この問題は、長い年月にわたって徐々に生じるものであるが、人の歯のエナメルには顕著な変色をもたらす。いくつかの薬、疾病および環境的要因が、人の歯を変色させるような影響をおよぼすこともある。変色した歯が依然として健康であり、健康上の危険や問題を有しない限り、変色した歯を白くする製品または物質は有効である。
【0005】
過酸化水素を含む組成物を提供し、患者の歯をその組成物と接触させることが当該技術分野で知られている。長い間接触させると、汚れた歯が漂白され白くなる。多くの公知の過酸化組成物は粘性を有するか、一様な液体であるので、漂白するのに十分な時間、漂白材料を定位置で保持するように、患者の歯列に合わせて成形された歯科用トレーを設けることが一般的な実施法である。トレーを用いないと、漂白材料がひとりでに流れ出したり、唾液によって劣化され除去されたりする。
【0006】
白色化組成物には、診察室内材料と持ち帰り材料の2つのタイプがあると考えることができる。歯科専門医が診察室内治療を行うことができ、持ち帰り材料は患者自身で投与できるよう意図されている。予想することができるように、診察室内治療は、持ち帰り材料に比べて、高い濃度の過酸化物を有する漂白組成物を使用して実施することができる。これは、明らかに安全上の理由による。
【0007】
当該技術分野で従来知られている歯科用漂白系は、歯を白くするのに効果的であった。しかし、使用される歯科用トレーを歯列にぴったりと合わせて設計する必要がいままであった。そうしなければ、上述した唾液の影響の度合が増してしまう。歯科用トレーを使用する例示的な歯の白色化材としては、例えば、米国特許Re.34,196号に開示されており、これを本明細書中に参考として記載しておく。しかし、歯科用トレーの使用に依存しない、また、ある場合には歯科用トレーを全く必要としない歯科用材料があることが望ましい。ゆえに、そのような改良された歯の白色化材が求められているのである。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、歯の白色化組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、硬化して、少なくとも半固体および/またはエラストマー組織になる材料を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、歯を白くする方法を提供することである。
【0011】
本開示から明らかになる本発明のこれらの目的およびその他の目的は、本明細書で説明する発明によって遂行される。
【0012】
一般に、歯の白色化材は、固体または粉末成分と、液体成分とからなる。混合すると、得られた組成物は、約1〜約5分間で硬化してエラストマーの性質を有する。粉末成分としては、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)の混合ナトリウム/カルシウム塩と、二酸化チタンが挙げられる。液体成分としては、約30〜約35重量%の量の過酸化水素と水が挙げられる。
【0013】
本発明による歯を漂白する方法は、粉末成分と液体成分の混合物を調製することを含む。混合すると、得られた組成物は、約1〜約5秒間で硬化してエラストマーの性質を有する。粉末成分としては、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)の混合ナトリウム/カルシウム塩と、二酸化チタンが挙げられる。液体成分としては、約30〜約35重量%の量の過酸化水素と水が挙げられる。この方法は、歯科用トレー内に混合物を配置し、ヒトの歯列にそのトレーを配置することを含む。この方法はさらに、ある時間が経過し、混合物が硬化してエラストマー組織になった後に、トレーを取り外し、硬化した混合物をヒトの歯列の場所に置くことを含む。
【0014】
本発明による別の方法は、歯科用トレーを使用せずに歯に上記混合物を塗布することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粉末成分と液体成分を混合し、次いで必要に応じて材料を供与するために本発明で使用するのに適したデュアルシリンジ混合装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、約10〜約70重量%の過酸化水素溶液、好ましくは約3〜約50重量%の過酸化水素と水との過酸化水素溶液;0〜約40重量%の過酸化尿素、好ましくは100%過酸化尿素、または少なくとも98重量%の過酸化尿素と水;約0〜約30重量%のグリセリン、好ましくは約96〜約99.8重量%のグリセリンと水;0〜約40重量%の水、好ましくは純水;約15〜約65重量%のメチルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマーのナトリウム/カルシウム塩の混合粉末、またはメチルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマーの混合ナトリウム/カルシウム塩のブレンド;および約0〜約10重量%の二酸化チタンを含む歯の白色化材を提供する。この組成物において、グリセリンを他のポリオールまたは水素化デンプン溶液などで代用することができる。さらに、二酸化チタンを、シリコンなど他の充填剤で代用することができる。
【0017】
本発明は、好ましくは、専門家でない患者が使用するのではなく、歯科医が使用することを意図した2成分の歯の白色化材である。白色化材は、好ましくは約30〜約35重量%の濃度の過酸化水素を使用する。白色化材は、固体または粉末成分が液体成分から分離した状態で事前に包装されている。液体成分は、水中の過酸化水素を含み、安定剤や芳香剤など他の従来の成分を含むこともできる。
【0018】
液体成分はまた、所望により、過酸化尿素など他の従来の漂白剤を含むこともできる。
【0019】
粉末成分は、好ましくは、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)の混合ナトリウム/カルシウム塩を含む。そのようなポリマーは、例えば、Gantrezとして International Specialty Products から市販されている。特に有用な Gantrez のグレードは、Gantrez MS-955 である。
【0020】
液体と粉末の2成分は、20〜80重量部の過酸化水素に対して80〜20重量部のGantrezという比でブレンドされる。好ましい粉末成分は、二酸化チタンと混合されたGantrezである。好ましいGantrezとニ酸化チタンの混合物は、重量で99:1〜90:10(Gantrez:二酸化チタン)である。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施態様は、約40〜約60重量部の過酸化水素と、約60〜約40重量部の99:1Gantrez/二酸化チタン粉末混合物とを含む。この2つの成分を約10〜約60秒間混合すると、得られる混合物はクリーミーホワイトからオフホワイトの材料となる。材料は、約1〜約5分間で硬化してエラストマーまたはゴム状の固体または半固体組織になる。硬化前に材料を歯科用トレー内に配置することができ、またはトレーを使用せずに歯列に直接塗布することができる。材料が一旦硬化したら、トレーを使用する場合はその場所に置いておくか、または取り外すことができる。
【0022】
図1に本発明による材料のためのパッケージングの好ましい形態を示す。図1のパッケージ10は、出力端12で第2のシリンジ14の出力端13に接続された第1のシリンジ11を含む。シリンジ11または14の一方が上述した粉末成分を収容し、もう一方が液体成分を収容する。シリンジ11と14の間で流体が移動するのを選択的に防止するいかなる方法も本発明の範囲内である。例えば、コック20を用いることができる。このようにすれば、必要とされるまで、材料を個別にパッケージしたり、運んだり、貯蔵することができる。必要になったとき、シリンジ11および14の内部は、従来のコック20を使用することによって流体を移動させることができる。コック20などのコックは、当該技術分野でよく知られており、コック20の内部機構は特に説明する必要はない。
【0023】
一旦、シリンジ11の内部とシリンジ14の内部との間で流体が移動すると、使用者は、シリンジ11および14の一方のプランジャ21を手動で押し、次いでもう一方のプランジャ21を押す。それにより各シリンジ11および14の内容物は交互に流れ合い、混合が行われる。
【0024】
混合が完了すると、シリンジは、1つのシリンジ11または14内に混合物を保持した状態で分離される。次いでそのシリンジ11または14を使用して、必要に応じて混合物を供与する。上述したように、従来の歯科用トレー(図示せず)に供与することも、歯に直接供与することもできる。
【0025】
[一般的な実験]
本発明による配合物を表1にしたがって調製した。表1中、HPは過酸化水素であり、CPは過酸化尿素である。
【表1】

【0026】
上記記載にしたがって調製した表1による配合物は、シリンジ11、14を用いて、または液体成分と粉末成分を混合する何らかの他の方法により、1〜10分間で硬化して、流体状の特性も示すエラストマー状半固体組織になる。次いで、材料を歯科用トレー、マウスピース、または歯の表面に運ぶためのその他の運搬手段内に配置することができる。1種または複数の過酸化物成分が存在するので、歯の白色化材は、従来の方法でも歯の表面に対する歯の白色化効果を有するであろう。液体および粉末成分の初期混合時における、流動可能な流体から弾性を有する半固体相への移行は、例えば、粉末相に対する溶液(液体)相の速度比、粉末相の水分含有量、混合する溶液相部分と粉末相部分の温度、混合方法自体等を含む多くの因子によって影響を受けることが判明している。
【0027】
前述した開示に基づき、本明細書中で記載した歯の白色化組成物および歯を白くする方法が、前述した本発明の目的を達成することは明らかである。したがって、いかなる自明な変更も本発明の範囲内にあり、本明細書に開示し記載された本発明の精神を逸脱することなく、特定の構成要素や置換要素を選択できることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲の範囲内にある全ての修正および変更を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末相および液体相からなり、前記粉末相が、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマーのナトリウム/カルシウム塩の混合粉末、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマーの混合ナトリウム/カルシウム塩のブレンド、およびこれらの混合物からなる群から選択される塩、ならびに、任意に選択されるフィラーからなり、前記液体相が、水中で3〜50重量%の過酸化水素の溶液からなることを特徴とする歯の白色化組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107056(P2012−107056A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39809(P2012−39809)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2001−568376(P2001−568376)の分割
【原出願日】平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】