説明

歯の石灰化のためのフッ化物組成物および方法

【課題】CPP−ACP複合体またはフッ化物組成物の再石灰化活性を増強させて、齲蝕のような病態をよりよく処置すること。
【解決手段】本発明は、安定化ACPおよびフッ化物イオン源を含む組成物を提供することを含む、歯の表面または表面下を石灰化するための組成物および方法に関する。本発明により、例えば、歯の表面および表面下を石灰化する方法であって、安定化ACPまたは安定化ACFP、およびフッ化物イオン源を含む組成物を提供することを含む、方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の表面、特に歯のエナメル質を石灰化するための組成物に関する。齲蝕、歯の腐食、酸蝕、およびフッ素症によって引き起こされる歯のエナメル質における低石灰化病変(表面下病変を含む)を石灰化する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
齲蝕は、通常は歯垢中の歯科病原性細菌による食事の糖質の発酵から生成する有機酸で歯の硬組織が脱灰されることによって開始される。齲蝕は、依然として公衆衛生上の大問題である。さらに、修復された歯の表面は、修復の辺縁の周囲では齲蝕に対して感受性がある可能性がある。大半の先進国において、フッ化物の使用により齲蝕の有病率が低下した場合でさえ、この疾患は、公衆衛生上の大問題のままである。歯の酸蝕または腐食は、食事からのまたは逆流した酸による歯のミネラルの喪失である。象牙質知覚過敏は、保護石灰化層であるセメント質の喪失によって象牙質細管が曝露されることによる。歯石は、歯の表面へのリン酸カルシウムのミネラルの望ましくない沈着である。したがって、これらの病態、齲蝕、歯の腐食、象牙質知覚過敏、および歯石はすべて、リン酸カルシウムのレベルの不均衡である。
【0003】
無作為化比較臨床試験で、フッ化物含有歯磨剤および含漱剤は齲蝕経験を有意に低減することが実証された(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。これらの口腔ケア製品の齲蝕活動性を低減する有効性は、フッ化物イオンを歯垢に取り込むそれらの能力に起因する。というのは、複数の担当医師が、歯垢中フッ化物レベルと齲蝕発生率は逆相関の関係にあることを示唆しているからである(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。
【0004】
歯垢中のフッ化物イオンは、歯垢中の細菌による有機酸によって歯のエナメル質が脱灰される間に生成するカルシウムおよびホスフェートイオンの存在下に、フルオロハイドロキシアパタイトの形成を直接に促進する(非特許文献11)。これは、現在エナメル質脱灰を予防する際のフッ化物イオンの作用の主要なメカニズムと考えられている(非特許文献11;非特許文献10)。しかし、フッ化物を塗布したとき、唾液または歯垢中のカルシウムおよびホスフェートイオンが十分に利用できる場合、フッ化物イオンは以前に脱灰したエナメル質の再石灰化を促進することもできる。フルオロアパタイトの単位格子1個を形成するのには、2個のフッ化物イオンに付き、10個のカルシウムイオンおよび6個のホスフェートイオンが必要である。したがって、フッ化物イオンの局所塗布時に、カルシウムおよびホスフェートイオンの利用能が純エナメル質再石灰化の発生を律速することができる。これは、口腔乾燥(口渇)状態で極めて悪化する。さらに、フッ化物処置は、特に子供においてフッ素症を招く可能性があるので、石灰化効果を実現するのに必要なフッ化物の全量を低減するために、フッ化物の存在量に対して最高の有効性を有する歯科処置組成物を生成することは有利であろう。
【0005】
The University of Melbourne名義の特許文献1(その内容は、参照により本明細書に完全に組み込まれる)には、アルカリ性pHで生成されたカゼインホスホペプチド−非結晶リン酸カルシウム複合体(CPP−ACP)およびCPP安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム複合体(CPP−ACFP)が記載されている。CPP−ACP(Recaldent(商標)として市販)は、エナメル質表面下病変をin vitroおよびin situにおいて再石灰化することがわかっている(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。
【0006】
複合体を形成する活性があるCPPは、完全長カゼインタンパク質の一部であろうとなかろうとそのように行う。完全長カゼインをトリプシン消化した後単離することができる活性(CPP)の例は、特許文献2に明記され、例えば、以下の通りBos αs1−カゼインX−5P(f59−79)[1]、Bos β−カゼインX−4P(f1−25)[2]、Bos αs2−カゼインX−4P(f46−70)[3]、およびBos αs2−カゼインX−4P(f1−21)[4]のペプチドが挙げられる。
【0007】
【化1】

Procter & Gamble Company名義の特許文献3および特許文献4は、CPP−ACP複合体およびフッ化物を含有する口腔用組成物において測定可能なフッ化物イオンレベルを維持することの難しさを確認し、測定可能なフッ化物レベルを維持するための追加の成分を提供する。
【0008】
CPP−ACP複合体またはフッ化物組成物の再石灰化活性を増強させて、齲蝕のような病態をよりよく処置することは有用であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第98/40406号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,015,628号明細書
【特許文献3】国際公開第03/059303号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/059304号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Biesbrock AR, Faller RV, Bartizek RD1 Court LK, McClanahan SF (1998). Reversal of incipient and radiographic caries through the use of sodium and stannous fluoride dentifrices in a clinical trial. J Clin Dent 9:5−10
【非特許文献2】Biesbrock AR, Gerlach RW, Bollmer BW, Faller RV, Jacobs SA, Bartizek RD (2001). Relative anti−caries efficacy of 1100, 1700, 2200, and 2800 ppm fluoride ion in a sodium fluoride dentifrice over 1 year. Community Dent Oral Epidemiol 29:382−389.
【非特許文献3】Curnow MM, Pine CM, Burnside G, Nicholson JA, Chesters RK, Huntington E (2002). A randomised controlled trial of the efficacy of supervised toothbrushing in high−caries−risk children. Caries Res 36:294−300.
【非特許文献4】Davies GM, Worthington HV, Ellwood RP, Bentley EM, Blinkhorn AS, Taylor GO, et al. (2002). A randomised controlled trial of the effectiveness of providing free fluoride toothpaste from the age of 12 months on reducing caries in 5−6 year old children. Community Dent Health 19:131−136.
【非特許文献5】Biesbrock AR, Bartizek RD, Gerlach RW, Jacobs SA, Archila L (2003). Dose response efficacy of sodium fluoride dentifrice at 9 and 21 months with supervised brushing. Am J Dent 16:305−312.
【非特許文献6】Duckworth RM, Morgan SN, Gilbert RJ (1992). Oral fluoride measurements for estimation of the anti−caries efficacy of fluoride treatments. J Dent Res 71 Spec No:836−840.
【非特許文献7】Duckworth RM, Stewart D (1994). Effect of mouthwashes of variable NaF concentration but constant NaF content on oral fluoride retention. Caries Res 28:43−47.
【非特許文献8】Hartshorne JE, Grobler SR, Louw AJ, Carstens IL, Laubscher JA (1994). The relationship between plaque index scores, fluoride content of plaque, plaque pH, dental caries experience and fluoride concentration in drinking water in a group of primary school children. J Dent Assoc S Afr 49:5−10.
【非特許文献9】Skold−Larsson K, Modeer T, Twetman S (2000). Fluoride concentration in plaque in adolescents after topical application of different fluoride varnishes. Clin Oral Investig 4:31−34.
【非特許文献10】Lynch RJ, Navada R, Walia R (2004). Low−levels of fluoride in plaque and saliva and their effects on the demineralisation and remineralisation of enamel; role of fluoride toothpastes, lnt Dent J:304−309.
【非特許文献11】ten Cate JM (1999). Current concepts on the theories of the mechanism of action of fluoride. Acta Odontol Scand 57:325−329.
【非特許文献12】Reynolds EC (1998). Anticariogenic complexes of amorphous calcium phosphate stabilised by casein phosphopeptides. Invited review. Spec Care Dentist 18:8−16.
【非特許文献13】Shen P, Cai F, Nowicki A, Vincent J, Reynolds EC (2001). Remineralization of enamel subsurface lesions by sugar−free chewing gum containing casein phosphopeptide−amorphous calcium phosphate. J Dent Res 80:2066−2070.
【非特許文献14】Reynolds EC, Cai F, Shen P, Walker GD (2003). Retention in plaque and remineralization of enamel lesions by various forms of calcium in a mouthrinse or sugar−free chewing gum. J Dent Res 82:206−211.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来技術に関係する難点および/または欠陥の1つまたは複数を克服または少なくとも軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
一態様では、本発明は、安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)およびフッ化物イオン源を含む歯の石灰化のための組成物を提供する。ACPもフッ化物イオンを含有することができ、これらのフッ化物イオンは、安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体の一部分とすることができる。
【0013】
この組成物としては、任意の適切な口腔用組成物、具体的には患者が使用する口腔/歯科衛生を維持するための組成物および/または歯科医師が使用する処置組成物を挙げることができる。このような組成物としては、歯磨きペースト、歯磨きゲル、歯磨き粉、歯科用クリーム、液体歯磨き、洗口剤、トローチ、チューインガム、歯肉マッサージクリーム、含嗽錠、および歯科用修復剤を挙げることができる。
【0014】
本発明の別の態様では、歯の表面または表面下を石灰化する方法であって、安定化ACPおよびフッ化物イオン源を含む組成物を提供することを含む方法が提供される。好ましい一実施形態では、歯の表面はエナメル質である。
【0015】
本発明の別の態様では、齲蝕を処置および/または予防する方法であって、歯のエナメル質中の齲蝕病変を、安定化ACPおよびフッ化物イオン源を含む組成物と接触させることを含む方法が提供される。
【0016】
フッ化物イオン源を含む口腔用組成物の歯の再石灰化有効性は、該組成物に安定化ACPを添加することによって実質的に向上できることが今回明らかになった。さらに、フッ化物イオン源を含む口腔用組成物から歯のエナメル質へのフッ化物イオンの取り込みは、該組成物に安定化ACPを包含させることによって増大させることができる。
【0017】
したがって、本発明の別の態様では、フッ化物イオン源を有する口腔用組成物の再石灰化の有効性を増大させる方法であって、該口腔用組成物に安定化ACPを組み込むことを含む方法が提供される。
【0018】
本発明の別の態様では、フッ化物イオン源を有する口腔用組成物で処置した後の歯の表面および表面下へのフッ化物イオンの取り込みを増大させる方法であって、該口腔用組成物に安定化ACPを組み込むことを含む方法が提供される。
【0019】
好ましくは、歯の表面および表面下は歯のエナメル質である。
【0020】
別の態様では、本発明は、フッ化物イオン源を有する口腔用組成物で処置した後の歯垢へのフッ化物の取り込みを増大させる方法であって、該口腔用組成物に安定化ACPを組み込むことを含む方法を提供する。
【0021】
通常は、本発明の方法では、フッ化物イオンは、ACPとは別に供給されるが、実質的に同時に供給される。
【0022】
ACPは、好ましくは塩基性可溶性の形のACPである。
【0023】
フッ化物イオンは、組成物中に1ppmを超える量で存在することが好ましい。より好ましくは、3ppmを超える量である。別の実施形態では、10ppmを超えることが好ましい。下記に示す典型的な実施態様では、この量は数百または数千ppmとすることができる。フッ化物含有量は、通常は当技術分野で一般的に使用される方式で、口腔用組成物中でのppmとして測定される。フッ化物が安定化ACPを含む供給源から供給される場合、ppmは、フッ化物のその供給源、通常は生物学的に利用可能なフッ化物の溶液または懸濁液中の濃度を意味する。
【0024】
フッ化物イオンは、任意の適切な供給源に由来するものとすることができる。フッ化物イオン源は、遊離フッ化物イオンまたはフッ化塩を含むことができる。フッ化物イオン源としては例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、ケイフッ化ナトリウム、およびアミンフッ化物が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、溶液(通常は、水溶液)または懸濁液として提供することができる。
【0025】
好ましくは、ACPはホスホペプチド(PP)で安定化されている。好ましくは、ホスホペプチド(下記に定義する)はカゼインホスホペプチドである。好ましい一実施形態では、ACPはカゼインホスホペプチド安定化ACP複合体の形である。
【0026】
本発明の別の態様では、歯の表面または表面下を石灰化する方法であって、ACP複合体およびフッ化物イオン源を歯の表面または表面下に塗布することを含む方法が提供される。好ましくは、該歯の表面および表面下は歯のエナメル質である。好ましい一実施形態では、該歯の表面は、齲蝕病変、歯の酸蝕によって引き起こされた病変、白斑病変、またはフッ素症病変の1つまたは複数からなる群から選択される病変を含む歯のエナメル質である。
【0027】
一実施形態では、該歯の表面はこのような処置が必要である。本発明は、齲蝕、象牙質知覚過敏、フッ素症、または歯石を患っている対象者を処置する方法も含む。
【0028】
驚くべきことに、フッ化物イオン源を含む口腔用組成物に安定化ACPを包含させることによって、安定化ACPを含まない口腔用組成物の場合に比べて、エナメル質病変域全体を通して再石灰化が生じ、病変の表面および表面下を被覆する範囲が増大することが明らかになった。
【0029】
したがって、本発明の別の態様では、表面下エナメル質病変を再石灰化する方法であって、表面下エナメル質病変を、安定化ACPおよびフッ化物イオン源を含む組成物と接触させることを含む方法が提供される。
【0030】
別の態様では、歯の表面または表面下の石灰化のための医薬品の製造における安定化ACP複合体およびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0031】
本発明の別の態様では、フッ化物イオン源を有する口腔用組成物の再石灰化の有効性を増大させるための組成物の製造における安定化ACPおよびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0032】
本発明の別の態様では、フッ化物イオン源を有する口腔用組成物で処置した後の歯の表面および表面下へのフッ化物イオンの取り込みを増大させるための口腔用組成物の製造における安定化ACPおよびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0033】
本発明の別の態様では、フッ化物イオン源を有する口腔用組成物で処置した後の歯垢へのフッ化物イオンの取り込みを増大させるための口腔用組成物の製造における安定化ACPおよびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0034】
本発明の別の態様では、表面下エナメル質病変を再石灰化するための組成物の製造における安定化ACPおよびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0035】
特定の理論または作用機序に拘泥するものではないが、フッ化物イオンはACPと相互作用して、正常な歯のエナメル質より酸への曝露に対して抵抗性がある歯の表面との接触時にフルオロアパタイトを形成すると考えられる。これによって、優れた齲蝕抵抗性をもつ歯のエナメル質を生じることができる。この機序の別の部分は、PP安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム複合体を形成するフッ化物イオンが関与することがある(使用中、in situにおいて塩基性非結晶リン酸カルシウムおよびフッ化物イオンの混合物を含むことがある)。非結晶フッ化リン酸カルシウムの使用としては、ACPと非結晶フッ化リン酸カルシウムとの混合物の使用が挙げられる。
【0036】
本発明の説明の文脈では、「ホスホペプチド」または「PP」は、少なくとも1つのアミノ酸がリン酸化されているアミノ酸配列を意味する。好ましくは、ホスホペプチドは、アミノ酸配列−A−B−C−の1つまたは複数を含み、式中、Aはホスホアミノ残基であり、Bはホスホアミノ残基を含む任意のアミノアシル残基であり、Cはグルタミル、アスパルチル、またはホスホアミノ残基から選択される。ホスホアミノ残基はいずれも、独立にホスホセリル残基とすることができる。Bは、望ましくは残基であり、その側鎖は比較的に大きくも疎水性でもない。これは、Gly、Ala、Val、Met、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Asp、Glu、Asn、Gln、またはLysとすることができる。
【0037】
別の実施形態では、配列中のホスホアミノ酸の少なくとも2つは、好ましくは隣接している。好ましくは、ホスホペプチドは、配列A−B−C−D−Eを含み、式中、A、B、C、D、およびEは独立に、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ホスホヒスチジン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸であり、A、B、C、D、およびEの少なくとも2つ、好ましくは3つはホスホアミノ酸である。好ましい一実施形態では、ホスホアミノ酸残基はホスホセリン、最も好ましくは3つの隣接するホスホセリン残基である。DおよびEは独立に、グルタミン酸またはアスパラギン酸であることも好ましい。
【0038】
本明細書で使用される用語「含む(comprises)」(またはその文法上の変形)は、用語「含む(includes)」と等しく、同義に使用することができ、他の要素または特徴の存在を排除するものと見なされるべきでないことも理解されよう。
【0039】
ACPとしては、ACFPも挙げることができ、あるいはACPの代わりに、ACFPを本発明の組成物および方法に含めることができる。
【0040】
一実施形態では、ACPまたはACFPは、未変化のカゼインまたはカゼインの断片の形のカゼインホスホペプチド(CPP)で安定化されており、形成された複合体は、好ましくは式[CPP(ACP)または[(CPP)(ACFP)を有し、式中、nは1以上、例えば6である。形成された複合体は、コロイド複合体とすることができ、この場合、コア粒子は凝集して、水に懸濁した大きい(例えば、100nm)コロイド粒子を形成する。したがって、PPは、カゼインタンパク質またはポリホスホペプチドとすることができる。
【0041】
PPは、任意の供給源に由来することができる。これは、完全長カゼインポリペプチドを含めて、より大きいポリペプチドの場合に存在することができ、あるいはカゼイン、または他のホスホアミノ酸に富んだタンパク質、具体的にはホスフィチンのトリプシンもしくは他の酵素消化または化学的消化、または化学もしくは組み換え合成によって単離することができる。ただし、上述する配列−A−B−C−またはA−B−C−D−Eを含むことを条件とする。このコア配列に隣接する配列は、任意の配列とすることができる。しかし、αs1(59−79)[1]、β(1−25)[2]、αs2(46−70)[3]、およびαs2(1−21)[4]における隣接配列が好ましい。隣接配列は、場合によっては1つまたは複数の残基の欠失、付加、または保存的置換によって改変することができる。隣接領域のアミノ酸組成および配列は重要ではない。下記の表1に、保存的置換の例を示す。
【0042】
【表1】

隣接配列は、非自然発生アミノ酸残基も含むことができる。遺伝暗号によってコードされない、よく遭遇するアミノ酸としては、下記が挙げられる。
GluおよびAspについての2−アミノアジピン酸(Aad);
GluおよびAspについての2−アミノピメリン酸(Apm);
Met、Leu、および他の脂肪族アミノ酸についての2−アミノ酪酸(Abu);
Met、Leu、および他の脂肪族アミノ酸についての2−アミノヘプタン酸(Ahe);
Glyについての2−アミノイソ酪酸(Aib);
Val、およびLeuおよびIleについてのシクロヘキシルアラニン(Cha);
ArgおよびLysについてのホモアルギニン(Har);
Lys、Arg、およびHisについての2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr);
Gly、Pro、およびAlaについてのN−エチルグリシン(EtGly);
AsnおよびGlnについてのN−メチルアスパラギン(EtAsn);
Lysについてのヒドロキシリシン(Hyl);
Lysについてのアロヒドロキシリシン(AHyl);
Pro、Ser、およびThrについての3−(および4)ヒドロキシプロリン(3Hyp、4Hyp);
Ile、Leu、およびValについてのアロイソロイシン(Alle);
Alaについてのp−アミジノフェニルアラニン;
Gly、Pro、AlaについてのN−メチルグリシン(MeGly、サルコシン)。
【0043】
IleについてのN−メチルイソロイシン(Melle);
Metおよび他の脂肪族アミノ酸についてのノルバリン(Nva);
Metおよび他の脂肪族アミノ酸についてのノルロイシン(Nle);
Lys、Arg、およびHisについてのオルニチン(Orn);
Thr、Asn、およびGlnについてのシトルリン(Cit)およびメチオニンスルホキシド(MSO);
PheについてのN−メチルフェニルアラニン(MePhe)、トリメチルフェニルアラニン、ハロ(F、Cl、Br、およびI)フェニルアラニン、トリフルオリルフェニルアラニン。
【0044】
一実施形態では、PPは、αs1(59−79)[1]、β(1−25)[2]、αs2(46−70)[3]、およびαs2(1−21)[4]からなる群から選択される1つまたは複数のホスホペプチド類である。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、ホスフェート緩衝剤および/またはカルシウムキレート剤を含まない。
【0046】
本発明の一実施態様では、安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)およびフッ化物イオン源を含む歯の石灰化用組成物であって、ホスフェート緩衝剤および/またはカルシウムキレート剤を含まない組成物が提供される。
【0047】
本発明の別の実施形態では、安定化ACP複合体は、フッ化物イオン源を含む口腔用組成物、具体的には歯磨きペースト、洗口剤、または口腔用製剤に組み込まれて、齲蝕、歯の崩壊、歯の酸蝕、および/またはフッ素症の予防および/または処置に役立つ。ACP複合体は、組成物の0.01重量%〜50重量%、好ましくは1.0重量%〜50重量%を構成することができる。口腔用組成物の場合、ACP複合体の投与量は、組成物の0.01重量%〜50重量%、好ましくは1.0重量%〜50重量%であることが好ましい。特に好ましい一実施形態では、本発明の口腔用組成物は約2%のCPP−ACPを含有する。フッ化物イオンは、口腔用組成物中に約200ppm〜3000ppmの範囲の濃度で存在することができる。好ましい一実施形態では、フッ化物イオンは、約400ppm〜約1500ppmの範囲の濃度で存在する。さらに好ましい一実施形態では、口腔用組成物中のフッ化物イオンは約900ppmの濃度で存在する。
【0048】
上記の作用剤を含有する本発明の口腔用組成物を、口腔に適用できる様々な形態、具体的には歯磨きペースト、歯磨き粉、および液体歯磨きを含めて歯磨剤、洗口剤、トローチ、チューインガム、歯科用ペースト、歯肉マッサージクリーム、含嗽錠、乳製品、ならびに他の食糧として調製および使用することができる。本発明に従う口腔用組成物は、特定の口腔用組成物のタイプおよび形に応じて、追加のよく知られている材料をさらに含むことができる。
【0049】
本発明のいくつかの好ましい形では、口腔用組成物は、特性が実質的に液体、具体的には洗口剤またはリンスとすることができる。このような調合物では、ビヒクルは、通常は水−アルコールの混合物、望ましくは下記に示す保湿剤を含む水−アルコールの混合物である。一般に、水とアルコールの重量比は約1:1〜約20:1の範囲である。このタイプの調合物中の水−アルコールの混合物の全量は、通常は調合物の約70重量%〜約99.9重量%の範囲である。該アルコールは、通常はエタノールまたはイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0050】
本発明のこのような液体および他の調合物のpHは、一般に約5〜約9、通常は約5.0〜7.0の範囲である。該pHは、酸(例えば、クエン酸または安息香酸)または塩基(例えば、水酸化ナトリウム)、または緩衝剤(クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、または重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの場合と同様に)で調節することができる。
【0051】
本発明の他の望ましい形では、安定化ACP組成物は、特性が実質的に固体またはペースト、具体的には歯磨き粉、歯科用錠剤、または歯磨きペースト(歯科用クリーム)、またはゲル歯磨剤とすることができる。このような固体またはペースト状の口腔用調合物のビヒクルは、一般に歯科上許容できる研磨材料を含有する。研磨材料の例は、水不溶性メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、無水第二リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、炭酸カルシウム、水和アルミナ、仮焼アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、ベントナイト、およびそれらの混合物である。他の適切な研磨材料としては、熱硬化性樹脂粒子、具体的にはメラミン−、フェノール−、および尿素−ホルムアルデヒド類、ならびに架橋ポリエポキシド類およびポリエステル類が挙げられる。好ましい研磨材料としては、粒径約5ミクロンまで、平均粒径約1.1ミクロンまで、表面積約50,000cm/gまでの結晶シリカ、シリカゲルまたはコロイド状シリカ、および複雑な非結晶アルミノケイ酸アルカリ金属塩が挙げられる。
【0052】
視覚的に透明なゲルを使用する場合、コロイド状シリカ研磨剤、具体的には商標SYLOIDでSyloid 72およびSyloid 74として販売されているもの、または商標SANTOCELでSantocel 100、アルミノケイ酸アルカリ金属複合体は、歯磨剤でよく使用されるゲル化剤−液体(水および/または保湿剤を含む)系の屈折率に近い屈折率を有するので特に有用である。
【0053】
いわゆる「水不溶性」研磨材料の多くは、特性がアニオン性であり、少量の可溶性材料も含む。したがって、不溶性メタリン酸ナトリウムを任意の適切な方式、例えばThorpe’s Dictionary of Applied Chemistry, Volume 9, 4th Edition, pp. 510−511に示されている方式で形成することができる。Madrell塩およびKurrol塩と呼ばれる不溶性メタリン酸ナトリウムの形は、適切な材料のさらなる例である。これらのメタリン酸塩は、水に対してわずかな溶解性しか示さず、したがって一般に不溶性メタホスフェート(IMP)と呼ばれる。その中には、不純物として、少量の可溶性ホスフェート材料が通常は数%、具体的には最高4重量%存在している。不溶性メタホスフェートの場合は可溶性トリメタリン酸ナトリウムを含むと思われる可溶性ホスフェート材料の量は、望むなら水で洗浄することによって低減またはなくすことができる。不溶性メタリン酸アルカリ金属塩は、通常は材料の1%以下が37ミクロンより大きい粒径の粉末の形で使用される。
【0054】
研磨材料は、一般に固体またはペースト組成物中、約10%〜約99%の重量濃度で存在する。好ましくは、これは、歯磨きペーストでは約10%〜約75%の量、歯磨き粉では約70%〜約99%の量で存在する。歯磨きペーストでは、研磨材料がシリカ性である場合、一般に約10重量%〜30重量%の量で存在する。他の研磨材料は、通常は約30重量%〜75重量%の量で存在する。
【0055】
歯磨きペーストでは、液体ビヒクルは、通常は調合物の約10重量%〜約80重量%の範囲の量で水および保湿剤を含むことができる。グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、およびポリプロピレングリコールは、適切な保湿剤/担体の例である。また、水、グリセリン、およびソルビトールの液体混合物も有利である。屈折率が考慮すべき重要な点である透明なゲルでは、約2.5重量/重量%〜30重量/重量%の水、0重量/重量%〜約70重量/重量%のグリセリン、および約20重量/重量%〜80重量/重量%のソルビトールを使用することが好ましい。
【0056】
歯磨きペースト、クリーム、およびゲルは、通常は天然もしくは合成増粘剤、またはゲル化剤を約0.1重量/重量%〜約10重量/重量%、好ましくは約0.5重量/重量%〜約5重量/重量%の割合で含有する。適切な増粘剤は、例えばLaporte Industries Limitedによって上市されているLaponite(例えば、CP、SP 2002、D)として入手可能なコロイド状合成ケイ酸マグネシウムアルカリ金属複合体クレーである合成ヘクトライトである。Laponite Dは、約58.00重量%のSiO、約25.40重量%のMgO、約3.05重量%のNaO、約0.98重量%のLiO、ならびに水、および微量の金属である。その真比重は2.53であり、見掛けかさ密度は、水分8%で1.0g/mlである。
【0057】
他の適切な増粘剤としては、アイリッシュモス(Irish moss)、イオタカラゲナン、トラガカントゴム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えば、Natrosolとして入手可能)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびコロイド状シリカ、具体的には微粉砕Syloid(例えば、244)が挙げられる。可溶化剤、具体的にはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびヘキシレングリコールのような保湿性ポリオール類、具体的にはメチルセロソルブやエチルセロソルブのようなセロソルブ類、オリーブ油、ヒマシ油、およびワセリンのような直鎖で少なくとも約12個の炭素を含む植物油類および蝋類、ならびに酢酸アミル、酢酸エチル、および安息香酸ベンジルのようなエステルも含むことができる。
【0058】
口腔用調合物は、通常通り一般に適切な表示パッケージで販売またはその他の方法で分配されることが理解されよう。したがって、口腔用リンスの瓶は、口腔用リンス剤または洗口剤として物質が記載され、その使用のための指示が記載されているラベルを有する。歯磨きペースト、クリーム、またはゲルは、歯磨きペースト、ゲル、または歯科クリームとして物質が記載されているラベルを有する、一般に押出しチューブ、通常はアルミニウム、ライニング鉛、またはプラスチックのチューブ、または内容量を計量するための他のスクイーズ、ポンプ、または加圧ディスペンサー中に入っている。
【0059】
有機表面活性剤を本発明の組成物中で使用して、予防作用の増大を実現させ、口腔全体への活性剤の徹底した完全な分散を実現する助けとなり、本組成物を美容上許容できるものにすることができる。有機表面活性材料は、好ましくはアニオン性、非イオン性、または両性であり、好ましくは活性剤と相互作用しない。表面活性剤として、組成物に洗浄性および起泡性を付与する洗浄効果のある材料を使用することが好ましい。アニオン性界面活性剤の適切な例は、水溶性高級脂肪酸モノグリセリド一硫酸塩類、具体的には水添ヤシ油脂肪酸の一硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩、高級アルキル硫酸塩類、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸塩類、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルキルスルホ−アセテート類、1,2−ジヒドロキシプロパンスルホネートの高級脂肪酸エステル類、および低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和の高級脂肪族アシルアミド類、具体的には脂肪酸、アルキル基、またはアシル基などに12個〜16個の炭素を有するものである。最後に述べたアミド類の例は、N−ラウロイルサルコシン、ならびにN−ラウロイル、N−ミリストイル、またはN−パルミトイルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩、およびエタノールアミン塩であり、石鹸または類似の高級脂肪酸材料を実質的に含むべきでない。本発明の口腔用組成物におけるこれらのサルコナイト化合物の使用は、特に有利である。というのは、これらの材料は、歯のエナメル質の酸溶液への溶解性の低下をもたらすことに加えて、炭水化物分解による口腔での酸生成の抑制において顕著な効果を長期に示すからである。使用に適した水溶性非イオン性界面活性剤の例は、エチレンオキシドと、それと反応することができる疎水性長鎖(例えば、約12個〜20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有する様々な反応性水素含有化合物との縮合生成物であり、この縮合生成物(「エトキサマー」)は、ポリ(エチレンオキシド)と脂肪酸類、脂肪アルコール類、脂肪アミド類、多価アルコール類(例えば、ソルビタンモノステアレート)、およびポリプロピレンオキシド(例えば、Pluronic材料)との縮合生成物のような親水性ポリオキシエチレン部分を含む。
【0060】
表面活性剤は、通常は約0.1重量%〜5重量%の量で存在する。該表面活性剤は、本発明の活性剤の溶解を助け、それによって可溶化保湿剤の必要量を低減できることは注目に値する。
【0061】
様々な他の材料、具体的にはホワイトニング剤、保存剤、シリコーン、クロロフィル化合物、および/またはアンモニア化材料、具体的には尿素、リン酸二アンモニウム、およびそれらの混合物を、本発明の口腔用調製物に組み込むことができる。これらのアジュバントが存在する場合は、所望の特性および特徴に実質的に悪影響を及ぼさない量で調合物に組み込む。
【0062】
任意の適切な矯味または甘味材料も使用することができる。適切な矯味構成要素の例は、矯味油、例えばスペアミント油、ペパーミント油、冬緑油、サッサフラス油、チョウジ油、セージ油、ユーカリ油、マヨラナ油、シナモン油、レモン油、およびオレンジ油、ならびにサリチル酸メチルである。適切な甘味剤としては、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニン、メチルエステル)、サッカリンなどが挙げられる。適切には、矯味剤および甘味剤はそれぞれまたは一緒になって、調合物の約0.1%から5%超を構成する。
【0063】
本発明の組成物は、例えば温かいガム基材に掻き混ぜることによって、あるいは例えばジェルトン、ゴムラテックス、ビニライト樹脂などであるガム基材の外側表面を、望ましくは通常の可塑剤または軟化剤、糖、または他の甘味剤、具体的にはグルコース、ソルビトールなどでコーティングすることによって、ロゼンジ、またはチューインガム、または他の製品に組み込むこともできる。
【0064】
別の態様では、発明は、上述するACP複合体およびフッ化物イオン源を含む医薬組成物と、医薬として許容できる担体を共に含む組成物を提供する。このような組成物は、歯科用抗齲蝕組成物および処置組成物からなる群から選択することができる。歯科用組成物または治療組成物は、ゲル、液体、固体、粉末、クリーム、またはロゼンジの形とすることができる。治療組成物は、錠剤またはカプセル剤の形とすることもできる。例えば、下記:水;グリセロール;CPP−ACP;フッ化ナトリウム、D−ソルビトール;二酸化ケイ素;カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na);プロピレングリコール;二酸化チタン;キシリトール;リン酸;グアーガム;酸化亜鉛;サッカリンナトリウム;p−ヒドロキシ安息香酸エチル;酸化マグネシウム;p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、およびp−ヒドロキシ安息香酸プロピルを含有するクリーム製剤を使用することができる。
【0065】
本発明はさらに、齲蝕、または歯の崩壊、歯の腐食、およびフッ素症のいずれか1つまたは複数を処置または予防するためのその使用に関する指示書を備えた上述する製剤を含む。
【0066】
別の態様では、本発明は、(a)フッ化物イオン源、および(b)薬剤として許容できる担体中のCPP−ACP複合体を含むパーツのキットを提供する。望ましくは、キットはさらに、歯の表面の石灰化を必要とする患者において歯の表面の石灰化のために使用するための指示書を含む。一実施形態では、作用剤および複合体は、患者の処置に適した量で存在する。本発明はまた、歯の表面に塗布する前にフッ化物源と混合するための(a)フッ化物イオン源、および(b)薬剤として許容できる担体中のCPP−ACP複合体を含む再石灰化改善システムも提供する。
【0067】
別の態様では、本発明は、口腔ケア組成物中のフッ化物イオンの再石灰化効果を向上させる方法であって、安定化ACPを口腔ケア組成物に添加することを含む方法を提供する。
【0068】
別の態様では、本発明は、フッ化物のエナメル質病変への取り込みを改善する方法であって、歯のエナメル質中の病変を安定化ACPおよびフッ化物イオン源を含む組成物と接触させることを含む方法を提供する。
【0069】
本発明の別の態様では、歯の表面または表面下の石灰化のための医薬品の製造における安定化ACP複合体およびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0070】
本発明の別の態様では、齲蝕の処置および/または予防のための医薬品の製造における安定化ACP複合体およびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0071】
本発明の別の態様では、歯の酸蝕を処置および/または予防する方法であって、歯のエナメル質中の齲蝕による病変を、安定化ACPおよびフッ化物イオン源を含む組成物と接触させることを含む方法。
【0072】
本発明の別の態様では、歯の酸蝕の処置および/または予防のための医薬品の製造における安定化ACP複合体およびフッ化物イオン源の使用が提供される。
【0073】
本明細書は具体的にはヒトにおける適用に言及しているが、本発明が動物の適用にも有用であることは明らかに理解されよう。したがって、すべての態様において、本発明は、ウシ、ヒツジ、ウマ、および家禽のような家畜;ネコやイヌのようなコンパニオン動物;ならびに動物園の動物に有用である。
【0074】
次に、本発明をさらに、下記の実施例および図によって説明するが、これらに限定されない。
【0075】
図について、図1は、in situにおける再石灰化およびin vitroにおける酸への曝露(AC)の後のエナメル質表面下病変の代表的なマイクロラジオグラムを示す。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
歯の表面および表面下を石灰化する方法であって、安定化ACPまたは安定化ACFP、およびフッ化物イオン源を含む組成物を提供することを含む、方法。
(項目2)
上記組成物が、歯磨きペースト;歯磨きゲル;歯磨き粉;歯科用クリーム;液体歯磨き;洗口剤;トローチ;チューインガム;歯肉マッサージクリーム;含嗽錠、および歯科用修復剤からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
組成物が、安定化ホスホペプチドであるACPを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記フッ化物イオン源が、遊離フッ化物イオン;フッ化ナトリウム;モノフルオロリン酸ナトリウム;フッ化第一スズ;ケイフッ化ナトリウム、およびアミンフッ化物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目5)
表面下エナメル質病変を再石灰化するための方法であって、表面下エナメル質病変を、安定化ACPおよびフッ化物イオン源を含む組成物と接触させることを含む、方法。
(項目6)
上記組成物が、歯磨きペースト;歯磨きゲル;歯磨き粉;歯科用クリーム;液体歯磨き;洗口剤;トローチ;チューインガム;歯肉マッサージクリーム;含嗽錠、および歯科用修復剤からなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記ACPが安定化ホスホペプチドである、項目5に記載の方法。
(項目8)
齲蝕を処置および/または予防する方法であって、歯のエナメル質中の齲蝕病変を、安定化ACPを含む組成物と接触させることを含む、方法。
(項目9)
歯の表面または表面下の石灰化のための医薬品の製造における安定化ACP複合体およびフッ化物イオン源の使用。
(項目10)
フッ化物イオン源を有する口腔用組成物で処置した後の歯の表面および表面下へのフッ化物の取り込みを増大させる方法であって、該口腔用組成物に安定化ACPを組み込むことを含む、方法。
(項目11)
フッ化物イオン源を有する口腔用組成物の歯の再石灰化有効性を増大させる方法であって、該口腔用組成物に安定化ACPを組み込むことを含む、方法。
(項目12)
フッ化物イオン源を含む口腔用組成物で処置した後の歯垢へのフッ化物取り込みを増大させる方法であって、該口腔用組成物に安定化ACPを組み込むことを含む方法。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
歯垢フッ化物試験は、暗号化した3つの口腔用リンス剤を含む無作為化二重盲検三元配置クロスオーバーデザインで行われた。3つの口腔用リンス剤は、(i)Recaldent Pty Ltd(Melbourne、Australia)から供給された2重量/体積%のCPP−ACP(Recaldent(商標))および脱イオン水中NaFとして450ppmのF、(ii)脱イオン水中NaFとして450ppmのF、(iii)プラセボ対照リンス剤としての脱イオン水であった。CPP−ACP口腔用リンス剤を1M HClでpH7.0に調整した。対象者には、暗号化したリンス剤を不透明プラスチックチューブで供給し、それぞれリンス剤の15mlを60秒間、1日3回(朝食後、昼食後、および就寝前の夜)、4日間使用し、口腔用リンス剤使用の日誌を記入した。5日目、リンス剤を朝食後に使用し、歯肉縁上歯垢を2〜3時間後に回収した。対象者は、リンス剤を使用している間、すべての口腔衛生手順を控えた。対象者にはそれぞれ、処置の間に4週間の休薬期間を設けて各口腔用リンス剤を使用するように交差させた。Graceyキュレット7/8を用いて、全ての歯頬側面および舌側面から歯肉縁上歯垢を回収した。歯垢を計量済みの微小遠心管に集め、再計量し、次いで−70℃で保存した。歯垢試料を解凍した後、5分間20,000gで遠心し、Jouan RC10.10ロータリーエバポレータで乾燥し、次いで再計量して、乾燥重量を確定した。次いで、ボルテックス混合器中で、乾燥した試料を200μlの1M HClと1分間混合することによって抽出し、次いでBranson 12超音波浴(Consolidated Ultrasonic, Melbourne, Australia)中、氷水で8時間処理した。遠心した(20,000g、5分間)後、上澄み中のフッ化物イオン濃度を、以前に記載されたように確定した(SilvaおよびReynolds、1996)。歯垢中フッ化物レベルは、ノンパラメトリックFriedmans検定を用いてWilcoxon符号付順位検定で統計解析した(Norusis, 1993)。
【0077】
フッ化物リンス剤は両方とも、歯垢中フッ化物レベルの上昇をもたらし、450ppmのフッ化物リンス剤で、プラセボ対照リンス剤で得られたフッ化物レベルのほぼ2倍であった(表2)。450ppmのフッ化物リンス剤に2%のCPP−ACPを添加することによって、フッ化物イオンの歯垢への取り込みが有意に増大し、歯垢中フッ化物レベルは、フッ化物リンス剤で得られたレベルの2倍を超えた。歯垢の乾燥重量については、3つのリンス剤間で有意差は認められなかったが、2%のCPP−ACPと450ppmのフッ化物リンス剤で得られた歯垢の乾燥重量は、他の2つのリンス剤で得られた乾燥重量より高い傾向を示した。
【0078】
【表2】

(実施例2)
再石灰化試験は、以前に記載されたin situモデルを用いて、5つの歯磨きペーストスラリーを含む無作為化二重盲検五元配置クロスオーバー再石灰化試験として行われた(Shenら、2001;Reynoldsら、2003)。表面下脱灰病変を含む6つのヒトエナメル質半スラブを取り付けた口蓋プレートを、Shenら(2001)によって記載されたように準備した。歯磨きペーストを暗号化した製品として調製し、製品の基材は、ソルビトール、シリカ、ラウリル硫酸ナトリウム、矯味剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、二酸化チタン、キサンタンガム、サッカリンナトリウム、および水で構成された。この製剤のpHをリン酸で7.0に調整した。5つの歯磨きペースト製剤を調製した。(i)プラセボ、(ii)フッ化ナトリウムとして1100ppmのフッ化物、(iii)フッ化ナトリウムとして2800ppmのフッ化物、(iv)2%のCPP−ACP、および(v)2%のCPP−ACPとフッ化ナトリウムとして1100ppmのフッ化物。ペースト1gを脱イオン水4mlに添加し、ボルテックスで60秒間混合することによって、歯磨きペーストスラリーを調製した。対象者は、スラリーで、1回60秒間、1日4回(次の時間:午前10.00、午前11.30、午後2.00、および午後3.30)、14日間すすいだ。対象者は、歯磨きペーストスラリー使用の日誌を記入し、プレートを装着している間は飲食、または口腔衛生手順を行わないように指示された。プレートは、口内に装着していないときは、シールした湿潤プラスチック袋中に室温で保存した。対象者は、脱イオン水を使用してプレートをすすぐように指示された。各処置が終了した後、エナメル質半スラブをプレートから取り外し、酸曝露の準備をした。
【0079】
再石灰化病変の酸曝露については、被検エナメル質ブロックを耐酸性マニキュア液で被覆して、各再石灰化ウィンドウの(1×3mm)の半分のみを曝露した。スラブを3〜4cmの歯科用ワックス棒の先端に載せ、撹拌していない乳酸/Carbopol脱灰緩衝液(Reynolds,1997)40mlに37℃で8時間浸漬した。この酸曝露が終了した後、エナメル質スラブを脱イオン水ですすぎ、両方のウィンドウの正中線で分割して、2つのブロックにした。再石灰化病変および酸曝露再石灰化病変を含むこれら2つのエナメル質ブロックを、元の脱灰病変を含むそれらの対照ブロックと対にし、以前に記載されたように包埋し、切片化し、マイクロラジオグラムを撮った(Shenら、2001)。病変および隣接する良好なエナメル質の影像を走査し、lijimaら(2004)によって記載されたように各病変のミネラルプロファイル(%)を確定した。台形積分で算出された、元の脱灰病変と良好なエナメル質の濃度プロファイルでの領域間の差をΔZdで表す。台形積分で算出された、再石灰化病変と良好なエナメル質の濃度プロファイルでの領域間の差をΔZrで表す。再石灰化の百分率(R(%))は、ΔZ値の変化の百分率を表す。例えば、
【0080】
【数1】

データを、反復測定ANOVAを用いてポストホックScheffe検定で統計解析した(Norusis, 1993)。
【0081】
すべての歯磨きペースト製剤は、in situ試験でエナメル質表面下病変中のミネラルを置換した(表3)。フッ化物は用量反応性の再石灰化をもたらした。2800ppmの製剤は、1100ppmの製剤より有意に多くのミネラルを置換し、その1100ppmの製剤は、プラセボ対照より有意に多くのミネラルを置換した。2%のCPP−ACPを含む歯磨きペーストは、2800ppmのフッ化物製剤に類似の再石灰化のレベルをもたらし、2%のCPP−ACPと1100ppmのフッ化物を含むペーストは、2800ppmのフッ化物のペーストを含めて、他のどの製剤より優れていた。再石灰化後の病変のマイクロラジオグラフィによって、フッ化物イオン単独では、表層の再石灰化を促進する傾向があり、CPP−ACPは、フッ化物の存在下でさえ、病変全体を通して再石灰化を促進したことが明らかになった(図1)。
【0082】
in situにおける再石灰化エナメル質スラブのin vitroでの酸曝露によって、プラセボ処置エナメル質スラブからミネラルが実質的に喪失した。2%のCPP−ACPで再石灰化した病変からは、酸曝露時に、より少ない量のミネラルが喪失した。フッ化物製剤で処置したエナメル質から少量のミネラルが喪失する傾向があったが、その喪失には統計的有意性が見られなかった。2%のCPP−ACPと1100ppmのフッ化物を含有するペーストについて、酸曝露後の残留再石灰化部は、2800ppmのフッ化物を含有するペーストを含めて、他のすべてのペーストで得られた残留再石灰化部に比べて、有意に大きかった。酸曝露後の再石灰化病変のマイクロラジオグラフィによって、酸が主に再石灰化域下からミネラルを除去したことが明らかになった。
【0083】
このin situ試験によって、フッ化物によるエナメル質表面下病変の再石灰化において明確な用量反応性が示された。1100ppmのF−を含有する歯磨きペーストによる再石灰化は8.2%±0.2%であり、2800ppmのF−を含有する歯磨きペーストによる再石灰化は15.5%±2.4%であった。エナメル質表面下病変を再石灰化する上で、2%のCPP−ACPを含有するペーストは1100ppmのF−を含有するペーストに比べて優れているが、2800pmのFを含有するペーストとは有意差が見られないことも明らかになった。2%のCPP−ACPと1100ppmのF−を含有するペーストは、2800ppmのF−を含有するペーストより大きな再石灰化部をもたらした。2%のCPP−ACPを1100ppmのF−に添加すると、1100ppmのF−のペーストに比べて、エナメル質表面下の再石灰化が156%増大した。
【0084】
カゼインホスホペプチド類(CPP)は、非結晶リン酸カルシウム(ACP)を安定化するだけでなく、歯の表面にACPを送達および局在化させることがわかっている(Reynolds、1998;Reynoldsら1999;Reynoldsら2003)。洗口剤中のCPP−ACPは、CPPが唾液ペリクル、および歯肉縁上歯垢バイオフィルム中の細菌の表面に結合して、歯肉縁上歯垢中のカルシウムおよび無機ホスフェートイオンのレベルを有意に上昇させた(Reynoldsら、2003)。この臨床試験は、CPP−ACPがフッ化物イオンの歯垢への取り込みを促進できることも実証した。したがって、フッ化物含有歯磨きペースト製剤が添加されると、CPP−ACPは、カルシウム、ホスフェート、およびフッ化物イオンの歯肉縁上歯垢への取り込みを促進するはずである。本in situ試験は、歯磨きペースト製剤として送達されたCPP−ACPは、エナメル表面下の再石灰化において非常に有効であること、形成されたミネラルは天然のエナメル質アパタイトより酸に対して抵抗性があることを実証した。フッ化物の存在下でCPP−ACPによって再石灰化されたエナメル質は、天然のエナメル質またはCPP−ACPによって再石灰化されたエナメル質に比べて、酸曝露に対して高い抵抗性を示した。これは、F−イオン存在下のCPP−ACPが耐酸性フルオロアパタイトによる再石灰化を促進することを示唆している。これらの結果は、CPP−ACPの歯磨きペースト製剤への添加によって、フッ化物のエナメル質表面下病変を耐酸性フルオロアパタイトで再石灰化する能力が有意に増強されることを実証した。
【0085】
【表3】

(実施例3)
電子線マイクロプローブ波長分散型分光法を使用して、再石灰化病変中のフッ化物レベルを下記の通り測定した。
【0086】
エナメル質切片を、1インチ標本ホルダー上でエポキシ樹脂に包埋した。樹脂をフラットポリッシュして、2400グリットの研摩紙を用いて、エナメル質切片を曝露した。光学的滑らかさを実現するために、3μmおよび1μmのダイヤモンド研磨ペーストを布パッド上で使用し、0.25μmの酸化アルミニウムペーストで最終仕上げを行った。Dynavac 300を用いて、試料および標準物質をすべて20nmの炭素でコーティングした。電子線プローブ(8900R SuperProbe JEOL, Japan)を、加速電圧15kV、試料電流12nA、取り出し角40°で操作した。滞留時間は、ピークについては10秒、各点に付きバックグラウンドについて10秒を使用した。Fの検出限界は800ppmであった。標準物質の収集中に使用するビーム径は、10μmのスポットであり、病変解析の直径は2μmであった。カルシウム、リン、フッ素、および塩素のX線強度を、それぞれペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、合成W/Si層、ペンタエリスリトールのフィルター結晶を備えた4つの分光計を用いて同時に測定した。標準物質は、直径10μm(非合焦点)および2μm(合焦点)のビームを使用して、X線カウント強度を較正して解析した。標準物質は、カルシウム対リンの比1.667、フッ化物含有量3.70重量%の合成フルオロアパタイトであった。病変の基底部から表層に向けて病変を横断して、カルシウム、リン、フッ素、酸素、および塩素の元素マップおよび定量ラインスキャンを収集した。STRATA(Thin Film Analysis Package)で実施するPhi(RhoZ)−Parabolic法補正手順を使用して、データを補正した。
【0087】
酸曝露後の再石灰化病変のマイクロラジオグラフィによって、酸が主に再石灰化域下からミネラルを除去したことが明らかになった。プラセボ、1100ppmのF、および2%のCPP−ACPと1100ppmのFのペーストについて再石灰化病変のフッ化物レベルを、電子線マイクロプローブ波長分散型分光法を使用して確定した(表4)。2%のCPP−ACPと1100ppmのFのペーストは、1100ppmのFのペーストに比べて、病変に取り込まれたフッ化物が有意に多かった(表4)。さらに、2%のCPP−ACPと1100ppmのFのペーストについて、フッ化物レベルの測定値は、再石灰化ミネラルがフルオロアパタイトであると推定して予測されたレベルに近かった(表4)。
【0088】
【表4】

(実施例4)
下記の材料を有する局所クリームを、本発明に従って生成することができる。

グリセロール
CPP−ACP複合体
D−ソルビトール
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)
プロピレングリコール
二酸化ケイ素
二酸化チタン
キシリトール
リン酸
フッ化ナトリウム
矯味剤
サッカリンナトリウム
p−ヒドロキシ安息香酸エチル
p−ヒドロキシ安息香酸プロピル
p−ヒドロキシ安息香酸ブチル
(実施例5)
下記の組成物を有する口腔用リンス製剤を、本発明に従って生成することができる。

アルコール
ポロキサマー407
ラウリル硫酸ナトリウム
CPP−ACP複合体
フッ化ナトリウム
矯味剤
サッカリンナトリウム
p−ヒドロキシ安息香酸エチル
p−ヒドロキシ安息香酸プロピル
p−ヒドロキシ安息香酸ブチル
(実施例6)
下記の組成物を有する無糖チューインガム製剤を、本発明に従って生成することができる。
結晶質ソルビトール/マンニトール/キシリトール
ガム基材
炭酸カルシウム
グリセリン
CPP−ACP複合体
フッ化ナトリウム
矯味油

明細書に開示および定義する本発明は、本文または図面に記載され、あるいはそれから明らかな個々の特徴のうち2つ以上の組合せの代替すべてに及ぶことが理解されよう。これらの様々な組合せはすべて、本発明の様々な代替の態様を構成する。
【0089】
【表5−1】

【0090】
【表5−2】

【0091】
【表5−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物であって、ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)と、遊離フッ化物イオンとを含み、カルシウムキレート剤もホスフェート緩衝剤も含まない、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物。
【請求項2】
ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)と、遊離フッ化物イオンとを含む歯科用ゲル組成物であって、該組成物は、カルシウムキレート剤もホスフェート緩衝剤も含まない、組成物。
【請求項3】
前記ホスホペプチドがカゼインホスホペプチドである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項4】
前記フッ化物イオンが、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、アミンフッ化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項5】
前記ホスホペプチドが、
[1] Gln59−Met−Glu−Ala−Glu−Ser(P)−Ile−Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Glu−Ile−Val−Pro−Asn−Ser(P)−Val−Glu−Gln−Lys79.αs1(59−79)
[2] Arg−Glu−Leu−Glu−Glu−Leu−Asn−Val−Pro−Gly−Glu−Ile−Val−Glu−Ser(P)−Leu−Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Glu−Ser−Ile−Thr−Arg25.β(1−25)
[3] Asn46−Ala−Asn−Glu−Glu−Glu−Tyr−Ser−Ile−Gly−Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Glu−Ser(P)−Ala−Glu−Val−Ala−Thr−Glu−Glu−Val−Lys70.αs2(46−70)
[4] Lys−Asn−Thr−Met−Glu−His−Val−Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Glu−Ser−Ile−Ile−Ser(P)−Gln−Glu−Thr−Tyr−Lys21.αs2(1−21)
のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項6】
前記フッ化物イオンが、約200ppm〜約3000ppmの量で前記歯磨き剤中に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項7】
前記フッ化物イオンが、約400ppm〜1500ppmの量で前記歯磨き剤中に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項8】
前記フッ化物イオンが、約900ppm〜1100ppmの量で前記歯磨き剤中に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項9】
前記ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)が、0.01重量%〜50重量%で前記組成物中に存在する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項10】
前記ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)が、1.0重量%〜50重量%で前記組成物中に存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項11】
前記ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)が、2重量%で前記組成物中に存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項12】
歯の表面または表面下の歯の石灰化のための、特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物であって、ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)と、遊離フッ化物イオンとを含み、カルシウムキレート剤もホスフェート緩衝剤も含まない、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物。
【請求項13】
歯の表面または表面下の歯の石灰化のための、ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)と、遊離フッ化物イオンとを含む歯科用ゲル組成物であって、該組成物は、カルシウムキレート剤もホスフェート緩衝剤も含まない、組成物。
【請求項14】
前記歯の表面または表面下が、歯のエナメル質である、請求項12または13に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項15】
歯の表面または表面下の石灰化が、歯の齲蝕、歯の知覚過敏、フッ素症、または歯石を予防または処置する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項16】
前記ホスホペプチドがカゼインホスホペプチドである、請求項12〜15のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項17】
前記フッ化物イオンが、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、アミンフッ化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12〜15のいずれか1項に記載の特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物。
【請求項18】
歯の表面または表面下の歯の石灰化のための特性が実質的に液体の、洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物の製造における、ホスホペプチド安定化非結晶リン酸カルシウム(ACP)またはホスホペプチド安定化非結晶フッ化リン酸カルシウム(ACFP)と、遊離フッ化物イオンとの使用であって、該洗口剤、口腔用リンス剤、または他の口腔用組成物、あるいは歯科用ゲル組成物が、カルシウムキレート剤もホスフェート緩衝剤も含まない、使用。

【公開番号】特開2013−47271(P2013−47271A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−254039(P2012−254039)
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【分割の表示】特願2008−553579(P2008−553579)の分割
【原出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(304054507)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (4)
【Fターム(参考)】