説明

歯ブラシ殺菌装置

【課題】殺菌ランプにて生じる殺菌線を効率良く利用し、殺菌ランプの出力を抑えながらも殺菌対象に十分な殺菌作用を付与することのできる歯ブラシ殺菌装置を提供する。
【解決手段】構造等に起因して殺菌線強度に偏りのある殺菌ランプ25は、該ランプ25を支持する支持部材26において、位置決め凸部27bと嵌合溝(把持部28aの内側面に形成)との嵌め込み位置の変更にてその位置(向きや高さ)が変更可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシの植毛部に付着した細菌類を除去することのできる歯ブラシ殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者が口腔洗浄のために使用する歯ブラシを清潔な状態で管理するために、歯ブラシの植毛部に付着した細菌類を除去することのできる歯ブラシ殺菌装置が数多く提案されている。このような歯ブラシ殺菌装置には、例えば特許文献1にて示されているように、歯ブラシを収納する箱状本体の中に殺菌線を照射する殺菌ランプを設置し、歯ブラシの植毛部に殺菌線を照射して殺菌するものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−250882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、殺菌ランプには、その構造等に起因して周方向や軸方向に殺菌線強度の偏りがあるため、殺菌ランプの位置(向きや高さ)によっては、殺菌対象である歯ブラシに十分な強度の殺菌線が照射されない虞があった。そのため、このような事態を想定し、殺菌ランプの出力(駆動電流)を大きくして殺菌線強度を全体的に強くし、殺菌ランプの位置に左右されることなく、十分な殺菌作用を得るようにすることが考えられていた。
【0005】
しかしながら、このような対応では、殺菌ランプの出力(駆動電流)を大きくすることから、殺菌ランプを点灯させるための駆動回路が大型化したり、また殺菌ランプの寿命が短くなるといった問題が生じてしまうため、検討の余地があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、殺菌ランプにて生じる殺菌線を効率良く利用し、殺菌ランプの出力を抑えながらも殺菌対象に十分な殺菌作用を付与することのできる歯ブラシ殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、扉により開閉される筐体の収容部に、歯ブラシを保持する歯ブラシ保持部と、保持された歯ブラシを殺菌する殺菌ランプとを備えてなる歯ブラシ殺菌装置であって、前記殺菌ランプは、支持部材にて支持されて前記筐体に取り付けられ、前記支持部材には、前記殺菌ランプの位置を変更可能な位置調整機構が設けられていることをその要旨とする。
【0008】
この発明では、殺菌ランプを支持する支持部材に、その殺菌ランプの位置(向きや高さ等)を変更可能な位置調整機構が設けられる。つまり、殺菌ランプには、その構造等に起因して殺菌線強度の偏りがあるため、殺菌線強度の強い部分が殺菌対象である歯ブラシに対して好適に照射されるように位置の調整が可能となる。これにより、殺菌ランプにて生じる殺菌線が効率良く利用され、殺菌ランプの出力を抑えながらも殺菌対象に十分な殺菌作用が付与可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記殺菌ランプは、略円柱形状をなすものであり、前記位置調整機構は、前記殺菌ランプの周方向角度位置を変更可能に構成されていることをその要旨とする。
【0010】
この発明では、殺菌ランプは略円柱形状をなす一般的なものであり、支持部材に設けた位置調整機構は殺菌ランプの周方向角度位置を変更可能に構成される。つまり、支持部材での位置調整にて殺菌ランプの周方向角度位置(向き)が調整され、周方向の殺菌線強度の強い部分が殺菌対象に好適に照射可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記殺菌ランプは、略円柱形状をなすものであり、前記位置調整機構は、前記殺菌ランプの軸方向位置を変更可能に構成されていることをその要旨とする。
【0012】
この発明では、殺菌ランプは略円柱形状をなす一般的なものであり、支持部材に設けた位置調整機構は殺菌ランプの軸方向位置を変更可能に構成される。つまり、支持部材での位置調整にて殺菌ランプの軸方向位置(高さ)が調整され、軸方向の殺菌線強度の強い部分が殺菌対象に好適に照射可能となる。また、請求項2の発明に適用することで、殺菌ランプの向き及び高さがともに調整でき、周方向及び軸方向の両者において殺菌線強度の強い部分が殺菌対象に好適に照射可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記殺菌ランプは、陰極管ランプよりなり、陽極側フィラメントに直流電源の陽極側が接続され、陰極側フィラメントに直流電源の陰極側が接続されて使用されるものであり、陰極側フィラメントを基準に位置調整が実施されていることをその要旨とする。
【0014】
この発明では、陰極管ランプよりなる殺菌ランプは、陽極側フィラメントに直流電源の陽極側が接続され、陰極側フィラメントに直流電源の陰極側が接続されて使用されるものであり、陰極側フィラメントを基準に位置調整が実施される。つまり、このような殺菌ランプでは、陰極側フィラメントの正面側の殺菌線強度が最も強く現れるため(図5(c)参照)、この陰極側フィラメントを基準として位置調整を行えば、殺菌対象への好適な殺菌線の照射を容易且つ確実に行うことが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記殺菌ランプは、前記支持部材に設けられるランプソケットに螺入されて装着されていることをその要旨とする。
【0016】
この発明では、殺菌ランプは、支持部材に設けられるランプソケットに螺入されて装着されるため、殺菌ランプの交換が容易である。また、殺菌ランプの支持部材への螺入による装着は殺菌ランプの向きに差が生じ易いため、支持部材に位置調整機構を設けて殺菌ランプの位置調整を行う意義は大きい。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記支持部材は、前記殺菌ランプが取り付けられる第1部材と、該第1部材が装着され前記筐体に取り付けられる第2部材とを備え、前記位置調整機構は、前記第1及び第2部材間の凹凸嵌合による嵌め込み位置の変更にて前記殺菌ランプの位置変更が可能に構成されていることをその要旨とする。
【0018】
この発明では、殺菌ランプを支持する支持部材には第1及び第2部材が備えられ、位置調整機構は、その第1及び第2部材間の凹凸嵌合による嵌め込み位置の変更にて殺菌ランプの位置変更が可能に構成される。これにより、殺菌ランプの位置調整を行う位置調整機構が複雑な機構を必要とせず、凹凸嵌合を用いた簡易な構成で実現可能である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記殺菌ランプ側に向けて送風を行う送風ファンが備えられていることをその要旨とする。
【0020】
この発明では、殺菌ランプ側に向けて送風(冷却)を行う送風ファンが備えられるため、殺菌ランプの点灯時の過熱が防止され、殺菌ランプの長寿命化に寄与できる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記送風ファンは、その送風が前記殺菌ランプを経て前記歯ブラシ側に供給可能とされていることをその要旨とする。
【0021】
この発明では、送風ファンは、その送風が殺菌ランプを経て歯ブラシ側に供給可能とされるため、殺菌ランプにて温められた送風が歯ブラシ等の乾燥に利用でき、その乾燥に別の手段を用いなくて済む。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記殺菌ランプの点灯制御と前記送風ファンの送風制御とを行う制御回路を備え、前記制御回路は、前記殺菌ランプを点灯させその点灯後の所定時間経過後に前記送風ファンを駆動することをその要旨とする。
【0023】
この発明では、制御回路にて、殺菌ランプの点灯後の所定時間経過後に送風ファンが駆動される。つまり、殺菌ランプは点灯時に好適な温度に維持するのが好ましいため、その温度まで速やかに上昇させるために殺菌ランプへの送風(冷却)が待機される。これにより、殺菌ランプの点灯状態を早期に好適な状態(好適に殺菌線を放射できる状態)とでき、また無駄な電力消費の防止等にも寄与できる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、前記殺菌ランプの点灯制御と前記送風ファンの送風制御とを行う制御回路を備え、前記制御回路には、前記殺菌ランプの消灯後の前記送風ファンの駆動時間を変更する駆動時間変更手段を備えていることをその要旨とする。
【0025】
この発明では、制御回路にて備えられる駆動時間変更手段にて、殺菌ランプの消灯後の送風ファンの駆動時間が変更される。これにより、使用者による手動調整や自動調整によって、殺菌ランプの冷却時間や歯ブラシの乾燥時間(請求項8の発明)の季節による相違等に対応できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、殺菌ランプにて生じる殺菌線を効率良く利用し、殺菌ランプの出力を抑えながらも殺菌対象に十分な殺菌作用を付与することのできる歯ブラシ殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態における歯ブラシ殺菌装置の斜視図である。
【図2】歯ブラシ装置の断面図である。
【図3】殺菌ランプの設置態様を説明するための斜視図である。
【図4】殺菌ランプの設置態様を説明するための斜視図である。
【図5】(a)は平面における殺菌ランプと歯ブラシとの位置関係を示す平面図であり、(b)は側面における殺菌ランプと歯ブラシとの位置関係を示す側面図であり、(c)は殺菌ランプの殺菌線の照射特性を説明するための特性図である。
【図6】殺菌ランプと送風ファンとの制御態様を説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態の歯ブラシ殺菌装置10を示す。同図1にて示す歯ブラシ殺菌装置10の使用状態において、矢印Y1方向を上下方向、矢印Y2方向を左右方向、矢印Y3方向を前後方向(奥行き方向)とする。
【0029】
歯ブラシ殺菌装置10は、ブロック状の基台11の上部左側に設置され、電動歯ブラシ装置から取り外された歯ブラシHの殺菌を行う殺菌装置本体部12と、基台11の上部右側にて並設され、電動歯ブラシ装置を起立状態で保持しつつ充電を行う電動歯ブラシ充電部13とを備えている。
【0030】
殺菌装置本体部12は、前面に開口部Kを有する収容部Sが構成された四角箱形状の筐体15と、該筐体15の左側上下方向に回動軸を有して筐体15の開口部Kを開閉可能に取り付けられる扉16とを備えている。扉16の右上部内側面には、扉16を閉めた際に筐体15に係合される係合爪16aが形成されている一方で、筐体15の右側壁内側面において係合爪16aと対向する位置には、係合爪16aと係合する係合部15aが構成されている。即ち、係合爪16aと係合部15aとが係合することによって扉16が筐体15にロックされ、開口部Kの不意の開放が防止されている。扉16のロック解除は、筐体15の上板に設けた扉解除スイッチ17の押下による係合部15aと係合爪16aとの係合が解除されることで行われるようになっている。また、扉16には、内部確認窓16bが備えられている。
【0031】
また、扉解除スイッチ17が備えられている筐体15の上板には、歯ブラシ殺菌装置10の電源オン・オフを切り替える際に押下される電源スイッチ18と、装置10の動作状態を示す表示ランプ19とが備えられている。
【0032】
筐体15の左側板及び右側板の内側下部には、筐体15の奥行き方向に向かって延びるレールRが形成されており、電動歯ブラシ装置の歯ブラシHを保持する歯ブラシ保持トレイ20がそのレールRにて案内されて奥行き方向に移動可能に取り付けられている。歯ブラシ保持トレイ20は、扉16の開作動に連動して手前側に水平に引き出され、扉16の閉作動に連動して収納されるように扉16と連結されている。
【0033】
歯ブラシ保持トレイ20の上面には、複数個(本実施形態では2個)の突片21が所定位置に立設されている。尚、電動歯ブラシ装置の歯ブラシH部分は、電動歯ブラシ本体に対して取り外し可能に構成されており、取り外された歯ブラシHが各突片21に起立状態で保持できるようになっている。そして、歯ブラシHを歯ブラシ保持トレイ20に保持させて扉16を閉じることで、収容部Sの奥側に設置される殺菌ランプ25に歯ブラシH(植毛部HS)が近接した状態で歯ブラシHが収容部S内に収容されるようになっている。即ち、使用者は、歯ブラシHの植毛部HSが殺菌ランプ25側を向くように歯ブラシ保持トレイ20上に保持させるようにする。
【0034】
収容部Sの奥側には、図1及び図2に示すように、複数個の透孔22aを有する略円筒状のカバー22にて囲われた殺菌ランプ25が配設されている。殺菌ランプ25は、カバー22の透孔22aから収容部S内に殺菌線として紫外線(UV)を照射し、該収容部S内に収容された歯ブラシHの植毛部HSを主として殺菌を行う。殺菌ランプ25はカバー22にて、使用者の指や歯ブラシHの植毛部HSが直接接触することが防止されている。
【0035】
殺菌ランプ25は、略円柱形状をなすものであり、その軸方向が筐体15の上下方向、即ち歯ブラシHの立設方向と平行となるように支持部材26にて支持されている。支持部材26は、図3及び図4に示すように、上端に殺菌ランプ25が取り付けられるソケット部材27と、該ソケット部材27を保持し筐体15側に取り付けるための取付部材28との2つの部品から構成されている。
【0036】
ソケット部材27は、殺菌ランプ25と同様に略円柱形状をなして筐体15の上下方向に沿うように配置され、上端にランプソケットが内蔵されている。ソケット部材27の上端には、ランプソケットへの殺菌ランプ25の螺入により殺菌ランプ25が取り付けられる。ソケット部材27の外周面は、軸方向略中央部分が周方向に凹設された凹設部27aが形成され、該凹設部27aには、周方向等角度間隔に複数個(本実施形態では3個、図4ではそのうち2個図示)の位置決め凸部27bが形成されている。各位置決め凸部27bは、軸方向に連続した直線状をなしている。
【0037】
取付部材28は、上部において二股に分かれた把持部28aを有している。各把持部28aは、ソケット部材27の凹設部27a部分を把持すべく、該凹設部27a部分の周面形状に倣った円弧形状に形成されている。把持部28aの内側面には、軸方向に連続した直線状の複数個の嵌合溝28bが周方向全体に等角度間隔に形成されている。ソケット部材27は、その下端から各把持部28aを互いに広げながら凹設部27a部分まで挿入され、各位置決め凸部27bをいずれか選択した嵌合溝28bに嵌合させて取付部材28の把持部28aに把持されて取り付けられる。ソケット部材27は、位置決め凸部27bの嵌合溝28bへの嵌合により周方向に移動しないように取り付けられる。そして、ソケット部材27の取り付けの際、選択する嵌合溝28bにより該ソケット部材27、即ち殺菌ランプ25の周方向角度位置(向き)がその溝ピッチで変更可能となっている。
【0038】
また、ソケット部材27の凹設部27aの軸方向長さL1は、取付部材28の把持部28aの軸方向長さL2よりも長く設定されている。即ち、位置決め凸部27bと嵌合溝28bとは軸方向に直線状に形成されていることから、把持部28aに対してソケット部材27が軸方向(上下方向)に移動可能となっており、これによりソケット部材27、即ち殺菌ランプ25の上下方向位置(高さ)も任意の位置とすることが可能となっている。
【0039】
そして、各把持部28aに設けられるネジ取付片28cにネジ(図示略)を挿通させて筐体15に固定することで、筐体15に取付部材28を介してソケット部材27が固定されるとともに、そのネジの固定にて把持部28aがソケット部材27の凹設部27aを締め付け、ソケット部材27が上下方向に移動しないように固定される。把持部28aの下側部分には、ソケット部材27の下側外側面に当接する湾曲状の支持面28dが設けられ、把持部28aでの保持と支持面28dでの支持とによってソケット部材27の安定支持が図られている。
【0040】
ここで、殺菌ランプ25は、陰極管ランプにて構成されており、図5に示すように、陽極側フィラメント25a及び陰極側フィラメント25bが内部に備えられている。陽極側フィラメント25aと陰極側フィラメント25bとは、図5(a)にて示す平面において、殺菌ランプ25の中心から互いに反対方向に配置されている。殺菌ランプ25は、本実施形態では高電圧の直流電源が供給されることで点灯し、殺菌線が放射されるようになっている。この場合、殺菌ランプ25の陽極側フィラメント25aには直流電源の陽極側が接続され、陰極側フィラメント25bには同電源の陰極側が接続されて使用される。
【0041】
このような使用状況においては、図5(c)に示すように、殺菌ランプ25を中心とした同一殺菌線強度位置から分かるように、陰極側フィラメント25bの正面側(両フィラメント25a,25bが並ぶ直線の陰極側フィラメント25bの延長上)が最も殺菌線強度が強く、陽極側フィラメント25aに向かう程、殺菌線強度が次第に弱くなるような指向性のある特性となっている。これを考慮し、照射対象である歯ブラシHが1本の場合は、殺菌ランプ25の陰極側フィラメント25bの正面に配置し、本実施形態のように照射対象である歯ブラシHが2本近接配置される場合は、殺菌ランプ25の陰極側フィラメント25bの正面が2本の歯ブラシHの中間位置となるように配置するのが望ましい。
【0042】
また、図5(b)にて示す側面において、その陰極側フィラメント25bの上下方向(高さ方向)の殺菌線強度は陰極側フィラメント25bの上端部分が最も強く、そこから同方向に離間する程、次第に弱くなる特性となっている。これを考慮し、殺菌線強度の最も強くなる陰極側フィラメント25bの上端部分と歯ブラシHの植毛部HSの上下方向中間部分とが水平方向において対向するように配置するのが望ましい。
【0043】
従って、本実施形態では上記したように、殺菌ランプ25を支持する支持部材26において、筐体15に取り付けられる取付部材28に対して殺菌ランプ25を支持するソケット部材27が周方向及び上下方向での位置調整が可能に構成されているため、歯ブラシ保持トレイ20上に配置される2本の歯ブラシHの中間位置に殺菌ランプ25の陰極側フィラメント25bが正面を向くように、また歯ブラシHの植毛部HSの上下方向中間部分が陰極側フィラメント25bの上端部分と対向するように、殺菌ランプ25の向き及び高さが調整されている。つまり、本実施形態では、いずれの歯ブラシ殺菌装置10においても殺菌ランプ25にて生じる殺菌線の効率の良い利用が図られて、殺菌ランプ25の出力(駆動電流)を小さく抑えつつも、歯ブラシHに十分な殺菌作用が得られるように構成されている。
【0044】
筐体15の収容部Sの上側には上収容部S1が形成されており、該上収容部S1内には送風ファン30が収容されている。送風ファン30からの送風は、殺菌ランプ25に向けられており、点灯時に発熱する殺菌ランプ25の冷却と、殺菌ランプ25の冷却の際に温められた送風を収容部S内に導入することによる歯ブラシHや収容部S自体の乾燥とを行うものとなっている。また、上収容部S1には、筐体15の上板に設けられる電源スイッチ18と表示ランプ19とが実装された実装基板31が収容され、該基板31は後述する制御回路32と電気的に接続されている。
【0045】
殺菌装置本体部12の下の基台11には下収容部S2が形成されており、該下収容部S2内には制御回路(制御回路基板)32が収容されている。制御回路32は、制御回路32は、図示しない電源ケーブルを介して供給される外部電源(家庭用電源)から殺菌ランプ25、送風ファン30、及び電動歯ブラシ充電部13のそれぞれに適した電源の生成を行い、殺菌ランプ25の点灯制御、送風ファン30の送風制御、及び電動歯ブラシ充電部13の充電制御を行っている。また、制御回路32は、表示ランプ19の点灯制御も行っている。
【0046】
また、本実施形態の制御回路32では、殺菌ランプ25の点灯制御と送風ファン30の送風制御とを連携して行っている。詳述すると、電源スイッチ18がオンされると、図6に示すように、制御回路32は、先ず殺菌ランプ25の点灯を行う。殺菌ランプ25は点灯時に好適な温度に維持するのが好ましいため、その温度まで速やかに上昇させるために殺菌ランプ25に送風(冷却)を行う送風ファン30の駆動が所定時間t1だけ待機される。所定時間t1が経過すると、送風ファン30が駆動されて殺菌ランプ25への送風が行われ、殺菌ランプ25のこれ以上の温度上昇を抑えて好適温度とすべく冷却がなされる。
【0047】
やがて、歯ブラシH(植毛部HS)の殺菌及び乾燥が十分なされる所定時間が経過すると、制御回路32は、殺菌ランプ25を消灯するとともに、送風ファン30の駆動を停止する。この場合、季節に起因する殺菌ランプ25の冷却時間や歯ブラシH(植毛部HS)の乾燥時間の相違等を考慮して、殺菌ランプ25の消灯から送風ファン30の駆動停止が相対的に遅くなるような所定時間t2を設定してもよい。因みに、この時間t2の設定は、電源スイッチ18の押下する毎に時間t2の異なるモードが変更されるようにしてもよい。
【0048】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、殺菌ランプ25を支持する支持部材26がソケット部材27と取付部材28とで構成され、位置決め凸部27bと嵌合溝28bとの嵌め込み位置の変更(位置調整機構)にて取付部材28に対するソケット部材27の位置、即ち殺菌ランプ25の位置(向きや高さ)が変更可能とされている。つまり、殺菌ランプ25には、その構造等に起因して殺菌線強度の偏りがあるため(図5(c)参照)、殺菌線強度の強い部分が殺菌対象である歯ブラシHに対して好適に照射されるように位置の調整が可能である。これにより、殺菌ランプ25にて生じる殺菌線が効率良く利用され、殺菌ランプ25の出力を抑えながらも殺菌対象に十分な殺菌作用を付与できる歯ブラシ殺菌装置10を提供できる。
【0049】
(2)本実施形態では、殺菌ランプ25は、支持部材26に設けた位置調整機構(位置決め凸部27b及び嵌合溝28b)にて、その向き及び高さがともに調整される。これにより、周方向及び軸方向(上下方向)ともに、殺菌線強度の強い部分を殺菌対象に好適に照射することができる。
【0050】
(3)本実施形態では、殺菌ランプ25は、陽極側フィラメント25aに直流電源の陽極側が接続され、陰極側フィラメント25bに直流電源の陰極側が接続されて使用され、陰極側フィラメント25bを基準に位置調整が実施されている。つまり、この殺菌ランプ25では、陰極側フィラメント25bの正面側の殺菌線強度が最も強く現れるため(図5(c)参照)、この陰極側フィラメント25bを基準として位置調整を行う本実施形態では、殺菌対象への好適な殺菌線の照射を容易且つ確実に行うことができる。
【0051】
(4)本実施形態では、殺菌ランプ25は、支持部材26のソケット部材27に設けられるランプソケットに螺入されて装着されているため、殺菌ランプ25の交換が容易である。また本実施形態のように、殺菌ランプ25の支持部材26(ソケット部材27)への螺入による装着は殺菌ランプ25の向きに差が生じ易いため、支持部材26に位置調整機構を設けて殺菌ランプ25の位置調整を行う意義は大きい。
【0052】
(5)本実施形態では、殺菌ランプ25を支持する支持部材26にはソケット部材27と取付部材28とが備えられ、これら各部材27,28に設けられる位置決め凸部27bと嵌合溝28bとの嵌め込み位置の変更にて殺菌ランプ25の位置変更が可能に構成されている。これにより、殺菌ランプ25の位置調整を行う機構が複雑な機構を必要とせず、凹凸嵌合を用いた簡易な構成とすることができる。
【0053】
(6)本実施形態では、殺菌ランプ25側に向けて送風(冷却)を行う送風ファン30が備えられているため、殺菌ランプ25の点灯時の過熱が防止され、殺菌ランプ25の長寿命化に寄与できる。
【0054】
(7)本実施形態では、送風ファン30は、その送風が殺菌ランプ25を経て歯ブラシH側に供給可能とされているため、殺菌ランプ25にて温められた送風が歯ブラシH等の乾燥に利用でき、その乾燥に別の手段を用いなくて済む。
【0055】
(8)本実施形態では、制御回路32は、殺菌ランプ25の点灯後の所定時間t1経過後に送風ファン30の駆動を行う。つまり、殺菌ランプ25は点灯時に好適な温度に維持するのが好ましいため、その温度まで速やかに上昇させるために殺菌ランプ25への送風(冷却)が待機される。これにより、殺菌ランプ25の点灯状態を早期に好適な状態(好適に殺菌線を放射できる状態)とでき、また無駄な電力消費の防止等にも寄与することができる。
【0056】
(9)本実施形態の制御回路32において、殺菌ランプ25の消灯後に送風ファン30を駆動する時間t2を変更可能とし、使用者による手動調整や自動調整とすることで、殺菌ランプ25の冷却時間や歯ブラシHの乾燥時間の季節による相違等に対応することができる。
【0057】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、殺菌ランプ25を1個用いて構成したが、2個以上の複数個の殺菌ランプを用いて構成してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、殺菌ランプ25は陰極管ランプであったが、これ以外の構成の殺菌ランプ、例えば紫外線LEDを用いてもよい。また、紫外線以外の殺菌線を放射する殺菌ランプを用いてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、殺菌ランプ25を支持部材26のソケット部材27に設けたランプソケットに螺入する態様としたが、これ以外の態様にて殺菌ランプの固定及び電気的接続を図る態様としてもよい。
【0060】
・上記実施形態では特に言及しなかったが、扉16の開時に殺菌ランプ25を消灯させるようにしてもよい。このようにすれば、殺菌線(UV)の外部漏れを低減できる。
・上記実施形態では、装置10の動作状態を示す表示ランプ19、液晶表示装置や数字表示が可能な表示装置を用いて、種々の動作状態の表示を行ってもよい。
【0061】
・上記実施形態では、最大2本までの歯ブラシHの殺菌を行う構成であったが、1本又は3本以上の歯ブラシの殺菌を行う構成としてもよい。
・上記実施形態では、殺菌ランプ25を支持する支持部材26にて、殺菌ランプ25の周方向と上下方向との両者の調整を行う構成であったが、そのいずれか一方のみの調整を行う構成としてもよい。また、支持部材26にて殺菌ランプ25の傾きを調整する構成を付加してもよい。例えば、支持部材26の取付部材28に設けた一対のネジ取付片28cのネジ孔をそれぞれ円弧状の長孔として支持部材26を傾斜可能とする。
【0062】
・上記実施形態では、支持部材26を構成するソケット部材27と取付部材28との間の凹凸嵌合にて殺菌ランプ25の位置調整を行うようにしたが、その他の構成を採用してもよく、またモータ等の駆動源を用いて電動で調整可能としてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、扉16の開閉と連動して歯ブラシ保持トレイ20の引き出し・収納を可能に構成したが、連動させなくてもよい。また、扉16の開閉と連動する歯ブラシ保持トレイ20の動作に加え、殺菌ランプ25部分も引き出し・収納するように構成してもよい。このようにすれば、殺菌ランプ25の交換が容易となる。
【0064】
・上記実施形態では、殺菌ランプ25を直流電源にて点灯させたが、交流電源にて点灯させてもよい。この場合、陽極側フィラメント25aの正面、及び陰極側フィラメント25bの正面のそれぞれで殺菌線強度が強くなるため、これを考慮した殺菌ランプ25の向きに設定する。
【0065】
・上記実施形態では、歯ブラシ殺菌装置10は図示しない電源ケーブルを用いて家庭用電源から電源供給を受ける構成であったが、一次電池や二次電池を搭載可能とし、これら電池からの電源供給を受ける構成としてもよい。この場合、携帯可能な構成としてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、制御回路32による制御態様を図6に示すタイミング図のようにしたが、制御態様はこれに限らず、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…歯ブラシ殺菌装置、15…筐体、16…扉、20…歯ブラシ保持トレイ(歯ブラシ保持部)、25…殺菌ランプ、25a…陽極側フィラメント、25b…陰極側フィラメント、26…支持部材、27…ソケット部材(第1部材)、27b…位置決め凸部(位置調整機構)、28…取付部材(第2部材)、28b…嵌合溝(位置調整機構)、30…送風ファン、32…制御回路(駆動時間変更手段)、H…歯ブラシ、S…収容部、t1,t2…時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉により開閉される筐体の収容部に、歯ブラシを保持する歯ブラシ保持部と、保持された歯ブラシを殺菌する殺菌ランプとを備えてなる歯ブラシ殺菌装置であって、
前記殺菌ランプは、支持部材にて支持されて前記筐体に取り付けられ、
前記支持部材には、前記殺菌ランプの位置を変更可能な位置調整機構が設けられていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記殺菌ランプは、略円柱形状をなすものであり、
前記位置調整機構は、前記殺菌ランプの周方向角度位置を変更可能に構成されていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記殺菌ランプは、略円柱形状をなすものであり、
前記位置調整機構は、前記殺菌ランプの軸方向位置を変更可能に構成されていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記殺菌ランプは、陰極管ランプよりなり、陽極側フィラメントに直流電源の陽極側が接続され、陰極側フィラメントに直流電源の陰極側が接続されて使用されるものであり、陰極側フィラメントを基準に位置調整が実施されていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記殺菌ランプは、前記支持部材に設けられるランプソケットに螺入されて装着されていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記支持部材は、前記殺菌ランプが取り付けられる第1部材と、該第1部材が装着され前記筐体に取り付けられる第2部材とを備え、
前記位置調整機構は、前記第1及び第2部材間の凹凸嵌合による嵌め込み位置の変更にて前記殺菌ランプの位置変更が可能に構成されていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記殺菌ランプ側に向けて送風を行う送風ファンが備えられていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項8】
請求項7に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記送風ファンは、その送風が前記殺菌ランプを経て前記歯ブラシ側に供給可能とされていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記殺菌ランプの点灯制御と前記送風ファンの送風制御とを行う制御回路を備え、
前記制御回路は、前記殺菌ランプを点灯させその点灯後の所定時間経過後に前記送風ファンを駆動することを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の歯ブラシ殺菌装置において、
前記殺菌ランプの点灯制御と前記送風ファンの送風制御とを行う制御回路を備え、
前記制御回路には、前記殺菌ランプの消灯後の前記送風ファンの駆動時間を変更する駆動時間変更手段を備えていることを特徴とする歯ブラシ殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−4943(P2011−4943A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150995(P2009−150995)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】