説明

歯ブラシ

【課題】 特に、大臼歯及び小臼歯の側面部及び、切歯の裏面部を容易かつ確実に磨くことができる歯ブラシを提供する。
【解決手段】
棒状の把持部と、上記把持部の端部に延設され、複数の毛束からなる毛束部を有するブラシ部とを備えた歯ブラシであって、上記毛束部は、先端部に配設された先端毛束部と、上記先端毛束部よりも把持部側に設けられ、より小さい長さ寸法の毛束を有すると共に、上記先端毛束部よりも大きい平面範囲に亘って形成された段差部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに係り、特に、大臼歯、小臼歯及び切歯を磨きやすい歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、一般に、歯ブラシ50は、棒状の把持部51と、上記把持部51の端部に首部52を介して延設され、上記把持部51の端部に延設され、複数の毛束53からなる毛束部54が配設されたブラシ部55とを備えている。
【0003】
従来、このような従来の歯ブラシ50にあっては、上記毛束部54は平面略長方形状に形成され、毛は、先端部から後端部にかけて同一の長さ寸法であることから、毛束部54の先端面部57はフラットに形成されている。
【0004】
このように、毛束部51の毛の長さ寸法が同一で、先端面部57がフラットに形成された歯ブラシ50にあっては、以下のような不具合が生ずることが経験的に把握されている。
【0005】
第一に、このような従来の歯ブラシ50を以て歯を磨く場合に、特に、口腔内の奥にある第二小臼歯、第一大臼歯、及び第二大臼歯、を磨く際に非常に磨きにくい。
【0006】
即ち、図11に示すように、例えば、第二大臼歯56の上面部57及び歯茎部68に面した歯茎側側面部63を磨くために、歯ブラシ50を口腔66内に差し入れ、毛束部54の先端面部57を第二大臼歯56の上面部75に当接させて磨こうとした場合に、第二大臼歯56の上面部75の四偶部には凸部64が形成されていることから、上記毛束部54の先端面部57の中央部65が上記凸部64に当接する。
その結果、上記凸部64が障害となり、毛束部54が第二大臼歯56の上面部75及び歯茎側側面部63の形状に沿わないため、毛束53が大臼歯56の歯茎側側面部63まで回り込むことができず、歯茎側側面部63を充分に磨けない場合が多かった。
【0007】
また、第二に、図12に示すように、歯ブラシ50により、第二大臼歯56、第一大臼歯60、第二小臼歯61の側面部を磨こうとした場合にも非常に磨きにくい、という不具合があった。
【0008】
即ち、第二大臼歯56、第一大臼歯60、第二小臼歯61の間には、夫々、平面略V字状の空隙部59、59が形成されており、毛束部54のフラットな先端面部57が、互いに隣接する第二大臼歯56、第一大臼歯60、又は第一大臼歯60、第二小臼歯61の、互いに鋭角を以て配置される側面部56a、60a、60b、61aの形状に適合しない。
その結果、各空隙部59、59の内方にまで毛束53が入り込まないことから、第二大臼歯56、第一大臼歯60、第二小臼歯61の側面部56a、60a、60b、61cが充分に磨けない場合が多かった。
【0009】
第三に、図13に示すように、従来の歯ブラシ50によっては、前歯である切歯69の裏面側70の根本部分74を磨きにくい、という不具合もあった。
即ち、切歯69は、歯茎部68の上方部位において肉厚部71が形成されると共に歯根部72はより肉薄に形成され、歯茎部68には上記歯根部72を包囲するように盛上部73が形成されている。
【0010】
従って、切歯69の裏面側70を磨くために、歯ブラシ50を縦に使用して、毛束部54を縦方向に切歯69の裏面側70に当接させた場合、従来の歯ブラシ50の毛束部54は先端面部57がフラットに形成されていることから、上記盛上部73と肉厚部71とにより阻まれ、歯ブラシ50の毛束部54は切歯69の根元部分74へは入りにくい。
【0011】
その結果、従来の歯ブラシ50によっては、切歯69の裏面側70の根元部分74が非常に磨きにくいものであった。
【0012】
第四に、図14に示すように、歯に矯正器材62が装着されている場合には、第二大臼歯56、第一大臼歯60、第二小臼歯61の表側側面部64にワイヤー77が固定部76、76、76により配設固定される。
【0013】
この状態で第二大臼歯56、第一大臼歯60、第二小臼歯61を従来の歯ブラシ50により磨こうとして、毛束部54の毛束53を歯の表面部とワイヤー77との間に挿入した場合には、毛束53が、ワイヤー77の固定部76と干渉すると共に、歯の表面部とワイヤー77との間に挟まってしまい、第二大臼歯56、第一大臼歯60、第二小臼歯61を磨きにくい場合が多かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような従来からの不具合を解決するためのものであって、その課題は、歯、特に、大臼歯及び小臼歯の側面部、間隙部及び、切歯の裏面部を容易かつ確実に磨くことができる歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題達成のため、請求項1記載の発明にあっては、棒状の把持部と、上記把持部の端部に延設され、複数の毛束からなる毛束部を有するブラシ部とを備えた歯ブラシであって、上記毛束部は、先端部に配設された先端毛束部と、上記先端毛束部よりも把持部側に設けられ、より小さい長さ寸法の毛束を有すると共に、上記先端毛束部よりも大きい平面範囲に亘って形成された段差部とを備えていることを特徴とする。
【0016】
従って、請求項1記載の発明にあっては、歯、特に、大臼歯の凹凸のある上面部や、大臼歯の歯茎側側面部、さらに、互いに隣接する大臼歯又は小臼歯との間の、鋭角を以て対向して配置される側面部の間に上記先端毛束部が入り込み、また、上記段差部が大臼歯又は小臼歯の上面部及び側面部に毛束部が適合することにより上記側面部の間に先端毛束部が入り込む
【0017】
また、矯正器材を装着した状態にあっても、上記同様に先端毛束部のみが、歯の表側側面部とワイヤーとの間に入り込み、歯の表側側面部を磨くことができる。さらに、切歯の裏面側においても、上記先端毛束部が切歯の根元部分と歯肉部との間へ入り込む。
【0018】
請求項2記載の発明にあっては、上記段差部を構成する毛束の長さ寸法は、上記先端毛束部に隣接する毛束が最も短いと共に、後端部に至るに従って次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
従って、請求項2記載の発明にあっては、上記段差部は、大臼歯の凹凸部が形成された上面部、互いに隣接する大臼歯の対向する鋭角状に配置された側面部形状、及び切歯の裏面側の形状に適合する。
【0020】
請求項3記載の発明にあっては、上記先端毛束部の毛の硬度は、上記段差部の毛の硬度より大きいことを特徴とする。
【0021】
従って、請求項3記載の発明にあっては、先端毛束部は、段差部の毛束よりも長く形成されると共に、段差部よりも小さい平面範囲に亘って形成され、かつ、段差部の毛束の硬度よりも大きいことから、複数の大臼歯の間の空隙部や、矯正器材と歯表面との間の空隙、さらに、切歯の裏面側における根本部分と歯肉部との間に入りこみ易い。
【0022】
請求項4記載の発明にあっては、上記毛束部は、上記把持部の長さ方向及び幅方向に沿って複数列に亘り配設され、長さ方向の列の方が幅方向の列よりも多数列に亘って配置され、先端毛束部は長さ方向に沿って2列であると共に、段差部は長さ方向に沿って7列以上に形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項5記載の発明にあっては、上記先端毛束部を構成する毛束の長さ寸法は1cmであると共に、上記段差部を構成する3列目及び4列目の毛束の長さ寸法は3〜4mmであることを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の発明にあっては、上記段差部の把持部側端部を形成する長さ方向最後列の毛束部の長さ寸法は1cmであることを特徴とする。
【0025】
請求項7記載の発明にあっては、上記毛束を形成する複数の毛は、ナイロンおよび飽和ポリエステルから選択される少なくとも1種で形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明に係る歯ブラシにあっては、従来の歯ブラシとは異なり、歯、特に、大臼歯の凹凸のある上面部や、大臼歯の歯茎側側面部、さらに、互いに隣接する大臼歯との間に形成され、鋭角を以て対向して配置される側面部の間に、上記先端毛束部が入り込み、大臼歯の上記側面部を容易かつ、迅速、確実に磨くことができる。
【0027】
また、切歯の裏面側においても、上記先端毛束部が切歯の根元部分と歯肉部との間へ入り込みやすく、切歯の根元部分を容易かつ確実に磨くことができる。
【0028】
さらに、歯に歯矯正材を装着した状態にあっても、従来の歯ブラシとは異なり、上記同様に先端毛束部のみが、歯の表側側面部とワイヤーとの間に入り込むことから、ワイヤーの固定部との干渉を起こすこともなく、歯の表側側面部を容易かつ迅速、確実に磨くことができる。
【0029】
請求項2記載の発明にあっては、上記段差部は、段差部を構成する毛束の長さ寸法は、上記先端毛束部に隣接する毛束が最も短いと共に、後端部に至るに従って次第に大きくなるように形成されていることから、上記段差部は、大臼歯及び小臼歯の凹凸部が形成された表面部、及び互いに隣接する大臼歯及び小臼歯の、互いに対向して鋭角状に配置された側面部形状に確実に適合し、より容易かつ確実に磨くことができる。
【0030】
さらに、切歯の裏面側を磨く際にも、歯ブラシを縦方向に使用することにより、先端毛束部を切歯の根本部と歯茎部の盛上部との間に挿入することができると共に、段差部を切歯の肉厚部に対応させて、全体として切歯の裏面側の形状に沿わせて当接させることができ、容易かつ確実に切歯裏面側を磨くことができる。
【0031】
請求項3記載の発明にあっては、先端毛束部は、段差部の毛束よりも長く形成されると共に、段差部よりも小さい平面範囲に亘って形成され、かつ、段差部の毛束の硬度よりも大きいことから、複数の大臼歯及び小臼歯の間の空隙部や矯正器材と歯表面との間の空隙、さらに、切歯の根本部に入り込みやすく、矯正器材が装着された大臼歯及び小臼歯や切歯の裏面側の根本部をさらに容易かつ確実に磨くことができる。
【0032】
請求項4記載の発明にあっては、上記毛束部は、上記把持部の長さ方向及び幅方向に沿って複数列に亘り配設され、長さ方向の列の方が幅方向の列よりも多数配置され、先端毛束部は長さ方向に沿って2列であると共に、段差部は長さ方向に沿って7列以上に形成されていることから、従来の歯ブラシと同様の全体形状を維持しており、使用の際の違和感をなくすことができる。
【0033】
請求項5記載の発明にあっては、上記先端毛束部を構成する毛束の長さ寸法は1cmであると共に、上記段差部を構成する3列目及び4列目の毛束の長さ寸法は3〜4mmであることから、毛束部の構成は従来の歯ブラシと同様であることから、使用者は従来の歯ブラシと同様に、使用上の違和感なく使用することができる。
【0034】
請求項6記載の発明にあっては、上記段差部の把持部側端部を形成する長さ方向最後列の毛束部の長さ寸法は1cmであることから、先端毛束部の毛束の長さ寸法と同一であり、段差部により大臼歯の上面部又は側面部を包み込むように磨くことができるため、大臼歯をより確実に磨くことができる。
【0035】
請求項8記載の発明にあっては、上記毛束を形成する毛は、ナイロンおよび飽和ポリエステルから選択される少なくとも1種で形成されていることから、従来の歯ブラシと同様の素材により違和感を与えることなく使用を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る歯ブラシの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る歯ブラシの毛束部の毛束の配置状態を示す平面図である
【図3】本発明に係る歯ブラシの毛束部の毛束の配置状態を示す側面図である
【図4】本発明に係る歯ブラシの一実施の形態を示し、第二大臼歯の上面部に毛束部の上面部を当接させ、第二大臼歯の歯茎側側面部を磨く状態を示す側面図である。
【図5】本発明に係る歯ブラシの一実施の形態を示し、本発明に係る歯ブラシを寝かせて使用し、第二大臼歯と第一大臼歯との間の間隙部、及び第一大臼歯と第二小臼歯との間の間隙部に、歯の側面方向から当接させて磨く場合を示す平面図である。
【図6】本発明に係る歯ブラシの一実施の形態を示し、本発明に係る歯ブラシを立てて使用し、切歯の裏面側に毛束部を当接させて、切歯の根元部分を磨く場合を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る歯ブラシの一実施の形態を示し、歯に矯正器具が装着されている場合の、小臼歯及び大臼歯を磨く場合を示す側面図である。
【図8】従来の歯ブラシを用いて第二大臼歯の歯茎側側面部を磨くために毛束部を当接させた状態を示す側面図である。
【図9】従来の歯ブラシと本発明に係る歯ブラシを用いて第二小臼歯と第一大臼歯との間、及び第一大臼歯と第二大臼歯との間を磨く場合を対比して示す平面図である。
【図10】従来の歯ブラシを一般的に示す斜視図である。
【図11】従来の歯ブラシを用いて第二大臼歯の上面部に毛束部の上面部を当接させ、第二臼歯の歯茎側側面部を磨く状態を示す側面図である。
【図12】従来の歯ブラシを寝かせて使用し、第二大臼歯と第一大臼歯との間の間隙部、及び第一大臼歯と第二小臼歯との間の間隙部を、歯の側面方向から歯ブラシの毛束部を当接させて磨く場合を示す図である。
【図13】従来の歯ブラシを立てて使用し、切歯(前歯)の裏面側に毛束部を当接させて、切歯の根元部分を磨く場合を示す図である。
【図14】従来の歯ブラシを用いて、歯に矯正器具が装着されている場合の小臼歯及び大臼歯を磨く場合を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る歯ブラシ10は、棒状の把持部11と、上記把持部11の端部に首部52を介して延設され、複数の毛束からなる毛束部12を有するブラシ部13とを備えている。
【0038】
上記毛束部12は、先端部17に配設された先端毛束部14と、上記先端毛束部14よりも把持部11側に設けられ、より小さい長さ寸法の毛束16c〜16hを有すると共に上記先端毛束部14よりも大きい平面範囲に亘って形成された段差部15とを備えている。
【0039】
上記段差部15を構成する毛束16の長さ寸法は、先端毛束部14に隣接する毛束16cが最も短いと共に後端部の毛束16hに至るに従って次第に大きくなるように形成されている。
【0040】
上記毛束部12は、毛束16が上記把持部11の長さ方向及び幅方向に沿って複数列に亘り配設されて構成され、長さ方向の列の方が幅方向よりも多数列に亘って配設されている。
【0041】
本実施の形態にあっては、図2に示すように、毛束部12は、先端毛束部14は長さ方向に沿って2列の毛束16a、16bにより構成されると共に、段差部15は長さ方向に沿って6列の毛束16c、16d、16e、16f、16g、16hにより、全体として長さ方向において8列の毛束16により構成されている。また、長さ方向第一列の毛束16aのみは幅方向において2列に形成されている。
【0042】
上記毛束16の直径Lは1mmであって50本〜60本の毛により構成され、各毛束16は、各毛束16の中央部19を基準とした間隔L1は2mmで配置されている。
【0043】
図3に示すように、上記先端毛束部14を構成する毛束16a、16bの長さ寸法L2は1cmであると共に、上記段差部15を構成する3列目の毛束16cの長さ寸法L3は4〜5mmであり、上記段差部15の把持部側端部18を形成する長さ方向最後列の毛束16hの長さ寸法L4は1cmである。
【0044】
上記先端毛束部14の毛束16a、16bを構成する毛の硬度は、上記段差部15の毛の硬度より大きく形成されている。本実施の形態にあっては、上記毛束16を形成する毛はナイロン製であり耐熱温度は80℃に構成されている。
【0045】
以下、本実施の形態に係る歯ブラシ10の作用について説明する。
本実施の形態に係る歯ブラシ10を使用して、図4に示すように、毛束部12を、例えば、第二大臼歯56の上面部20及び歯茎側側面部21に配置させた場合には、段差部15が第二大臼歯56の上面部20の四偶部に形成された凸部22に当接することにより、先端毛束部14が歯茎部23と歯茎側側面部21との間の空隙部24内に進入し、第二大臼歯56の上面部20及び歯茎側側面部21を容易に磨くことができる。
この場合、上記のように、先端毛束部14の毛束16a、16bを構成する毛の硬度は、上記段差部15の毛の硬度より大きく形成されていることから、先端毛束部14は、上記の空隙部24内へ進入しやすい。
【0046】
また、図5に示すように、本実施の形態に係る歯ブラシ10を使用して第二大臼歯56、第一大臼歯60及び第二小臼歯61の側面部25を磨く場合には、歯ブラシ10を寝かせて口腔26内に挿入し、毛束部12を例えば、第一大臼歯60の側面部25に当接させた場合には、上記第一大臼歯60の側方凸部27aに上記段差部15が適合し、上記先端毛束部14が第一大臼歯60と第二大臼歯61との間の空隙部28a内に進入する。
従って、第一大臼歯60の側面部25及び、第一大臼歯60と第二大臼歯61との間の空隙部28a内を容易かつ確実に磨くことができる。
同様に、第一大臼歯60及び第二小臼歯61の側面部25を磨く場合には、上記段差部15が第二小臼歯61の側方凸部27bに適合し、先端毛束部14が、第一大臼歯60と第二小臼歯61との間の空隙部28b内に侵入する。
その結果、第二小臼歯61の側面部25及び、第一大臼歯60と第二小臼歯61との間の空隙部28a内を容易かつ確実に磨くことができる。
この場合、上記のように、先端毛束部14の毛束16a、16bを構成する毛の硬度は、上記段差部15の毛の硬度より大きく形成されていることから、先端毛束部14は、上記の空隙部28a、28b内へ進入しやすい。
【0047】
また、図6に示すように、本実施の形態に係る歯ブラシ10を用いて切歯69の裏面側29を磨く場合には、歯ブラシ10を縦にして口腔26内へ挿入し、毛束部12を切歯69の裏面側29に当てる。
【0048】
この場合、切歯69の肉厚部71には上記段差部15が適合し、歯茎部23の盛上部73と肉厚部71との間の空隙部30には上記先端毛束部14が進入する。その結果、切歯69の裏面側29及び切歯69の肉厚部71と歯茎部23の盛上り73部の間の空隙部30内を、容易かつ確実に磨くことができる。
この場合、上記のように、先端毛束部14の毛束16a、16bを構成する毛の硬度は、上記段差部15の毛の硬度より大きく形成されていることから、先端毛束部14は、上記の空隙部30内へ進入しやすい。
【0049】
さらに、図7に示すように、歯に矯正器材62が装着されている状態の第二大臼歯56、第一大臼歯60及び第二小臼歯61の側面部31を磨く場合には、矯正器材62を構成するワイヤー77の固定部76に段差部15が対応するように、下方から第二大臼歯56、第一大臼歯60又は第二小臼歯61の側面部31とワイヤー77の間隙に先端毛束部14を挿入する。
その結果、先端毛束部14が第二大臼歯56、第一大臼歯60又は第二小臼歯61の側面部31とワイヤー77との間に入り込み、歯の側面部31を磨くことができる。
【0050】
この場合、本実施の形態にあっては、上記段差部15の構成する毛束16の長さ寸法は、先端毛束部14の毛束16a、16bが最も長いと共に、段差部15おいては、毛束16cが最も短く、後端部に至るに従って次第に長くなるように形成され、上記段差部15の長さ方向最後列の毛束16hの長さ寸法L4は先端毛束部14の毛の長さ寸法L2と同一に形成されていることから、段差部15は歯の側面部31の形状に沿って配置され、ワイヤー77が配設されていない歯の側面部31を適切に磨くことができる。
また、上記のように、先端毛束部14の毛束16a、16bを構成する毛の硬度は、上記段差部15の毛の硬度より大きく形成されていることから、先端毛束部14は、第二大臼歯56、第一大臼歯60又は第二小臼歯61の側面部31とワイヤー77との間に入り込みやすい。
【実施例1】
【0051】
以下のように、本実施の形態に係る歯ブラシ10に関し、従来の、ブラシ部の毛束部の先端面部がフラットに形成された歯ブラシ50との対比実験を行った。
【0052】
1)ブラシ部の口腔内への挿入角度について
上顎右上第2小臼歯と右上第1大臼歯の歯間部を清掃する際に歯ブラシの柄と中切歯間を通る正中線とにより形成される角度を調べた。表1中、上段は従来の歯ブラシであり、下段は本発明に係る歯ブラシである。
この場合、上記の形成される角度が少なければ少ないほど、腕、手等に無理のないブラッシングができるものと考えられる。
【表1】

【0053】
表1に示すように本願発明に係る歯ブラシのほうが正中線に対してより平行に近い状態で口腔内に挿入して目的部位にブラシを到達できるため、歯ブラシとしての操作性が高いと考えられる。従って、操作性が高いことにより清掃性の向上につながる。
本願発明に係る歯ブラシは、従来の歯ブラシの半分の角度であり、本願発明に係る歯ブラシの方が、圧倒的に、腕、手に負担のない状態でのブラッシングを可能にしている。
【0054】
2)歯ブラシの歯間部への到達性
上顎口腔内模型を白の硬石膏を使用して作成した。従来の毛束の長さが同一の歯ブラシの先端部2列および当該歯ブラシの先端部2列にレッドコートを塗布し20秒間挿入角度を同一にして(歯列に対して30°)ブラッシングを行った。石膏に付着したレッドコート(歯垢染色剤)を比較して清掃性を検討した。
【表2】

【0055】
従来の毛束の長さが同一の歯ブラシで歯間部を選択的に刷掃しようとすると写真Aのように第2小臼歯側面部に磨き残しが形成されている。
また歯間部に毛先を挿入しようとするためブラシ圧が高くなり(色素の沈着が写真Bより強い)歯肉に対しての侵害刺激が増してしまう。その上に、操作性が低いためブラシが目的部位の範囲を超えて当接することとなる。
一度に広範囲を清掃する、という観点で考えると従来の毛束の長さが同一の歯ブラシのほうが有利であるが、目的部位(たとえば矯正装置を装着した歯牙の清掃、歯間部歯頚部の清掃)をピンポイントで清掃するという観点で考えると本願発明に係る歯ブラシの方がはるかに優位性を有している。
【0056】
3)大臼歯側面部を清掃する際に必要な力
図8に示すように、従来の毛束の長さが同一の歯ブラシ50を使用する場合、例えば、第二大臼歯56の上面部に毛束部を当接させて、第二大臼歯56の側面部58に歯ブラシ50を到達させるために中央部65(当接のさせ方によっては後方部)を折るようにして歯に当接させる必要がある。この際に必要な力を計測した(表3)。
一方、本願発明に係る歯ブラシ10においては、このような到達させるための力は必要ない。なお、歯ブラシの重さは考慮していない。
【表3】

【0057】
4)歯間部の清掃について
図9に示すように、歯間部、例えば、第二小臼歯61、第一大臼歯60及び第二大臼歯56の間を側面部方向から清掃する際にも、上記3)と同様である。
図9に示すように、従来の歯ブラシ50の毛束部54において、符号Aで示す部位を折らないと歯間部78に毛束部54の先端部74を挿入できない。
即ち、目的部位である歯間部78に毛束部54を到達させようとするためには、図9に示すように、毛束部54に部分的に力を加えて、一部の毛束53を折るようにしなければならない。
【0058】
その結果、従来の歯ブラシ50においては、歯間部78の清掃を行う場合には、余分な力が必要となり、適切な力で、容易かつ確実にブラッシングを行うことは不可能である。
一方、図9において示される本願発明に係る歯ブラシ10においては、例えば、段差部15を第一大臼歯60の側方凸部27に当てることにより先端毛束部14を容易に第二大臼歯56と第一大臼歯60との間の歯間部78内へ挿入することができることが実験の結果判明している。
なお、本実施の形態における毛束部の幅寸法、配置寸法、毛束部の配置状態、毛束の素材に関しては、本実施の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、広く、大臼歯、小臼歯及び切歯を磨きやすい歯ブラシに適用することができることから、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0060】
10 歯ブラシ
11 把持部
12 毛束部
13 ブラシ部
14 先端毛束部
15 段差部
16 毛束
17 先端部
18 把持部側端部
19 中央部
20 上面部
21 歯茎側側面部
22 凸部
23 歯茎部
24 空隙部
25 側面部
26 口腔
27 側方凸部
28 空隙部
29 裏面側
30 空隙部
31 側面部
50 歯ブラシ
51 把持部
52 首部
53 毛束
54 毛束部
56 第二大臼歯
57 先端面部
58 側面部
59 空隙部
60 第一大臼歯
61 第二小臼歯
62 矯正器材
63 歯茎側側面部
64 凸部
65 中央部
66 口腔
67 表面部
68 歯茎部
69 切歯
70 裏面側
71 肉厚部
72 歯根部
73 盛上部
74 先端部
75 上面部
76 固定部
77 ワイヤー
78 歯間部
L 毛束の幅寸法
L1 毛束間の、毛束中心との間の間隔寸法
L2 先端毛束部の長さ寸法
L3 段差部における先端に配置された毛束の長さ寸法
L4 段差部における後端に配置された毛束の長さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の把持部と、上記把持部の端部に延設され、複数の毛束からなる毛束部を有するブラシ部とを備えた歯ブラシであって、上記毛束部は、先端部に配設された先端毛束部と、上記先端毛束部よりも把持部側に設けられ、より小さい長さ寸法の毛束を有すると共に、上記先端毛束部よりも大きい平面範囲に亘って形成された段差部とを備えていることを特徴とする。
【請求項2】
上記段差部を構成する毛束の長さ寸法は、上記先端毛束部に隣接する毛束が最も短いと共に、後端部に至るに従って次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
上記先端毛束部を構成する毛の硬度は、上記段差部を構成する毛の硬度より大きいことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
上記毛束部は、毛束が上記把持部の長さ方向及び幅方向に沿って複数列に亘り配設されて構成され、長さ方向の列の方が幅方向よりも多数列に亘って配設され、先端毛束部は長さ方向に沿って2列の毛束により構成されると共に、段差部は長さ方向に沿って7列以上の毛束により構成されていることを特徴とする請求項3記載の歯ブラシ。
【請求項5】
上記先端毛束部を構成する毛束の長さ寸法は1cmであると共に、上記段差部を構成する3列目及び4列目の毛束の長さ寸法は3〜4mmであることを特徴とする請求項4記載の歯ブラシ。
【請求項6】
上記段差部の長さ方向最後列の毛束の長さ寸法は1cmであることを特徴とする請求項5記載の歯ブラシ。
【請求項7】
上記毛束の直径は1mmであって50本〜60本の毛により構成され、各毛束は、各毛束の中央部を基準として2mmの間隔で配置されていることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項8】
上記毛束を形成する毛は、ナイロンおよび飽和ポリエステルから選択される少なくとも1種で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−85654(P2013−85654A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228123(P2011−228123)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(511250264)
【Fターム(参考)】