説明

歯付きベルト搬送コンベヤ

【課題】歯付きベルト搬送コンベヤにおいて、重量物を搬送する際の歯付きベルトの摩擦音を低減できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 従動の丸プーリからなるヘッドプーリ3とテールプーリ4をベルトフレーム2aの前後に配置し、ヘッドプーリ3とテールプーリ4との間に歯付きベルト5をそのベルト歯5aが外側へ向くように掛架し、ベルトフレーム2a上に平坦なプレート2bを取り付けて歯付きベルト5の往路の裏面を支持し、歯付きベルト5の復路側で且つヘッドプーリ3と近接する位置に歯付き駆動プーリ8を外側から噛み合わせる。これにより、歯付きベルト5の平坦な面がプレート2bと接触するから、重量物を載せても面圧が集中することなく分散され、耳障りな摩擦音を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動に弱い搬送物を高速に搬送する歯付きベルト搬送コンベヤに関し、詳しくは重量物を搬送する際の歯付きベルトの摩擦音を低減できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噛み合い時の振動を低減させた歯付きベルト搬送コンベヤが特許文献1に開示されている。この技術は、歯付き駆動プーリの歯底に弾性体を嵌め込み、噛み合い時の振動を弾性体で吸収して振動や騒音を低減できるようにしたものである。しかし、この技術では搬送物が歯付き駆動プーリ上を通過するから、わずかな振動も搬送物に直に伝達されてしまい、満足できるものではなかった。
【0003】
これに対し、出願人は振動を更に低減できる歯付きベルト搬送コンベヤを発明した。この技術は、図7,8に示すように前後に配置した歯無しの従動の丸プーリ21間に歯付きベルト22を掛架し、歯付きベルト22の往路の裏面を支持する平坦なプレート28を丸プーリ21間に設け、歯付きベルト22の復路側の丸プーリ21間位置に歯付き駆動プーリ23を内側から噛み合わせた構造を特徴とし、搬送物は丸プーリ21上を通過するから噛み合い時の振動が直に伝達され難くなるというものである。図中、22aはベルト歯、24は駆動モータ、25はテンションローラ、26はコンベヤフレーム、27はベルトフレーム、Aは搬送物である。
【0004】
ところで、図7,8に示す前記技術は、歯付きベルト22のベルト歯22aがプレート28と接触しながら回動するから、歯付きベルト22に搬送物を載せるとプレート28にベルト歯22aの面圧がかかる。したがって、重い搬送物を載せると面圧が集中してベルト歯22aとプレート28との摩擦が大きくなり、耳障りな摩擦音が発生する問題があった。
【特許文献1】特開2006−131316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、歯付きベルト搬送コンベヤにおいて、重量物を搬送する際の歯付きベルトの摩擦音を低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、歯無しの従動の丸プーリを前後に配置し、同丸プーリ間に歯付きベルトをそのベルト歯が外側へ向くように掛架してベルト歯が上面となる往路を搬送面とし、歯付きベルトの往路の裏面を支持する平坦なプレートを丸プーリ間に設け、歯付きベルトの復路側の丸プーリ間位置に歯付き駆動プーリを外側から噛み合わせた、歯付きベルト搬送コンベヤである。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、歯付き駆動プーリを前側又は後側の丸プーリの近接位置に配置したものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、歯付きベルトを歯付き駆動プーリに押圧させるテンションローラを設けたものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3いずれかにおいて、前後の丸プーリにクラウニングプーリを用いたものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれかにおいて、歯付き駆動プーリを回転させる駆動モータとしてサーボモータを用いたものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5いずれか記載の歯付きベルト搬送コンベヤを所定間隔おいて左右一対設け、左右の歯付き駆動プーリ同士を駆動シャフトで連結した、搬送装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歯付きベルトのベルト歯側が搬送面に、その裏面がプレート側となるように掛架したから、歯付きベルトの平坦な面がプレートと接触し、重量物を載せても面圧が集中することなく分散され、耳障りな摩擦音を抑制できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、歯付き駆動プーリを前側の丸プーリの近接位置に配置すると、駆動力を効率的に伝達できる。歯付きベルトを歯付き駆動プーリに押圧させるテンションローラを設けると、噛み合わせを大きくして駆動力を確実に伝達できる。前後の丸プーリにクラウニングプーリを用いると、蛇行を防止して蛇行防止装置を省略できる。
【0009】
また、搬送物が重い場合、歯付き駆動プーリを回転させる駆動モータに負荷がかかってコンベヤ速度が変動し、この状態で搬送物がコンベヤ間を乗り移ると、前後のコンベヤの速度差で搬送物間のピッチが一定にならないことがある。これに対し、駆動モータとしてサーボモータを用いると、搬送物の荷重に応じたトルク制御ができ、20〜42kgの重量を有する搬送物でも正確な搬送が可能となる。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1〜6に示す実施例は、本発明の歯付きベルト搬送コンベヤを左右一対設けて二条の歯付きベルトで薄型ディスプレイ用パネルを搬送できるようにした搬送装置の例である。図1は実施例の搬送装置の正面図、図2は実施例の搬送装置の平面図、図3は実施例の搬送装置の一部切欠き右側面図、図4は実施例の歯付きベルト搬送コンベヤの断面図、図5は実施例の歯付きベルト搬送コンベヤの説明図、図6は実施例の歯付きベルトとプレートとの接触を示す説明図である。
【0011】
図中、1は歯付きベルト搬送コンベヤ、2はコンベヤフレーム、2aはベルトフレーム、2bはプレート、3はヘッドプーリ(丸プーリ)、4はテールプーリ(丸プーリ)、5は歯付きベルト、5aはベルト歯、6は従動側ブラケット、7は駆動側ブラケット、8は歯付き駆動プーリ、9は駆動シャフト、10は駆動モータ、11はテンションローラ、12はガイドローラ、Aは搬送物、Cは搬送装置である。
【0012】
本実施例の歯付きベルト搬送コンベヤ1は、図1〜6に示すように歯無しの従動の丸プーリからなるヘッドプーリ3とテールプーリ4をベルトフレーム2aの前後に配置し、ヘッドプーリ3とテールプーリ4との間に歯付きベルト5をそのベルト歯5aが外側へ向くように掛架し、ベルトフレーム2a上に平坦なプレート2bを取り付けて歯付きベルト5の往路の裏面を支持し、歯付きベルト5の復路側のヘッドプーリ3とテールプーリ4との間で且つヘッドプーリ3と近接する位置に歯付き駆動プーリ8を外側から噛み合わせ、歯付き駆動プーリ8の下方位置にテンションローラ11を設けている。
【0013】
この歯付きベルト搬送コンベヤ1を所定間隔おいて左右一対設け、左右の歯付き駆動プーリ8同士を駆動シャフト9で連結し、二条の歯付きベルト5を同期して回動させる搬送装置Cを構成している。尚、本実施例においては、歯付きベルト5が二条の場合のものを示したが、三条以上の複数条の歯付きベルト5を用いてもよい。また、歯付き駆動プーリ8はテールプーリ4の近接位置に配置してもよい。
【0014】
ヘッドプーリ3とテールプーリ4はナイロン樹脂製のクラウニングプーリで、直径121.45mm、幅47mm、クラウン高さは0.35mmに形成されている。歯付きベルト5はポリウレタン製で、ベルト幅40mm、ベルト厚み4.5mm、溝ピッチ10mm、溝深さ2.5mmである。歯付き駆動プーリ8はスチール製である。プレート2bはウレタン製である。
【0015】
本実施例と図7,8に示す従来技術による搬送時の静摩擦係数μを測定した。歯付きベルト5への荷重は約20kgである。結果を表1に示す。このように、本実施例は歯付きベルト5の平坦な面がプレート2bと接触するから、重量のある搬送物Aを載せても面圧が集中することなく分散され、耳障りな摩擦音を抑制できるようになった。
【0016】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の歯付きベルト搬送コンベヤは、LCDやPDP等の薄型ディスプレイ用パネル、太陽電池などの薄板状で寸法や重量が大きいものや、トレイに入れた小部品など、振動に弱い搬送物の搬送に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の搬送装置の正面図である。
【図2】実施例の搬送装置の平面図である。
【図3】実施例の搬送装置の一部切欠き右側面図である。
【図4】実施例の歯付きベルト搬送コンベヤの断面図である。
【図5】実施例の歯付きベルト搬送コンベヤの説明図である。
【図6】実施例の歯付きベルトとプレートとの接触を示す説明図である。
【図7】従来の歯付きベルト搬送コンベヤの説明図である。
【図8】従来の歯付きベルトとプレートとの接触を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 歯付きベルト搬送コンベヤ
2 コンベヤフレーム
2a ベルトフレーム
2b プレート
3 ヘッドプーリ(丸プーリ)
4 テールプーリ(丸プーリ)
5 歯付きベルト
5a ベルト歯
6 従動側ブラケット
7 駆動側ブラケット
8 歯付き駆動プーリ
9 駆動シャフト
10 駆動モータ
11 テンションローラ
12 ガイドローラ
21 丸プーリ
22 歯付きベルト
22a ベルト歯
23 歯付き駆動プーリ
24 駆動モータ
25 テンションローラ
26 コンベヤフレーム
27 ベルトフレーム
28 プレート
A 搬送物
C 搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯無しの従動の丸プーリを前後に配置し、同丸プーリ間に歯付きベルトをそのベルト歯が外側へ向くように掛架してベルト歯が上面となる往路を搬送面とし、歯付きベルトの往路の裏面を支持する平坦なプレートを丸プーリ間に設け、歯付きベルトの復路側の丸プーリ間位置に歯付き駆動プーリを外側から噛み合わせた、歯付きベルト搬送コンベヤ。
【請求項2】
歯付き駆動プーリを前側又は後側の丸プーリの近接位置に配置した、請求項1記載の歯付きベルト搬送コンベヤ。
【請求項3】
歯付きベルトを歯付き駆動プーリに押圧させるテンションローラを設けた、請求項1又は2記載の歯付きベルト搬送コンベヤ。
【請求項4】
前後の丸プーリにクラウニングプーリを用いた、請求項1〜3いずれか記載の歯付きベルト搬送コンベヤ。
【請求項5】
歯付き駆動プーリを回転させる駆動モータとしてサーボモータを用いた、請求項1〜4いずれか記載の歯付きベルト搬送コンベヤ。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の歯付きベルト搬送コンベヤを所定間隔おいて左右一対設け、左右の歯付き駆動プーリ同士を駆動シャフトで連結した、搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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