説明

歯付ベルト

【課題】小径プーリで使用できる歯付ベルトを開発する。
【解決手段】芯線がガラスコードであり、歯ピッチが0.65〜0.85mmであるウレタン製歯付ベルトであって、芯線の線径が0.20〜0.28mmであり、芯線を構成する繊維の直径が6〜9ミクロンであるウレタン製歯付ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付ベルトに関する。特に、一般OA機器やプリンタなどの駆動用に用いられる歯付ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般OA機器やプリンタなどの駆動用として、主に歯ピッチ1.0mm、1.5mm、2mm、3mmの歯付ベルトが使用されている。近年、装置のコンパクト化、高精度化、省エネ化にともない、更に小プーリ径での使用、低速度変動等が要求されてきている。
従来、歯付ベルト特有のかみあい周期でのベルト速度変動により、印字ムラが起こっていた。また、カード、紙幣の識別機に歯付ベルトを使用した装置においても、噛み合い周期の速度ムラにより、搬送物の速度がバラツキ、正確に識別できない問題が発生いていた。
一方、モータを小型化し、装置を省力化する必要があり、プーリ径を小さくすると、プーリの歯数が少なくなり、ベルトとプーリの噛み合いが多角形になり、速度変動が増大する問題点がある。また、プーリ径を小さくすると、歯付ベルトの芯線の曲率が大きくなり、屈曲疲労による強度低下を生じ、耐久性が満足しない問題があった。
現在プリンタの駆動ベルトに使用されている プーリピッチ径はΦ6.468mm(ピッチ1.016mm、歯数20)、であるが、モータの省力化により、更に小径で使用する要求があった。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平9−280329号公報)には、ベルトの歯形状を丸歯とし、ベルトの歯間ピッチが0.75〜1.0mmであって、歯付ベルトの芯線として、0.5〜2.0デニールのモノフィラメントからなるアラミド繊維を収束したフィラメント群を少なくとも一本束ねて片撚りして得られた直径0.10〜0.20mmのアラミド繊維ロープを使用し、歯付ベルトを構成するエラストマー100重量部に対して多孔質充填剤を5〜80重量部添加し、ベルト背部を研磨することにより多孔質充填剤をベルト背面に表出させた歯付ベルトが開示され、ベルト速度の変動を小さくし、低温度においてもしなやかで、また油がベルト表面に付着しても摩擦係数の変化を極力小さくすることができる旨が記載されている。
精密ベルト用ウレタン製ハス歯ベルトは、特許文献2(特開2009−014023号公報)等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−280329号公報
【特許文献2】特開2009−014023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小径プーリで使用できる歯付ベルトを開発することを目的とする。特に、プーリピッチ径はΦ6.468mm(ピッチ1.016mm、歯数20)より、更に小径で使用できる歯付ベルトを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.芯線がガラスコードであり、歯ピッチが0.65〜0.85mmであるウレタン製歯付ベルトであって、
芯線の線径が0.20〜0.28mmであり、芯線を構成する繊維の直径が6〜9ミクロンであることを特徴とするウレタン製歯付ベルト。
2. ウレタン層にカーボン0.5〜1.5重量%を添加したことを特徴とする1.記載のウレタン製歯付ベルト。
3.カーボンは導電性であり、導電性カーボン0.5〜1.5重量%を添加したことを特徴とする2.記載のウレタン歯付ベルト。
4.カーボンは導電性であり、ベルトの電気抵抗が10^5〜10^8Ω・cmであることを特徴とする3.記載のウレタン歯付ベルト。
【発明の効果】
【0007】
1.本発明では、さらに小ピッチのウレタン製精密ベルトを提供することができた。小径プーリで使用できることから、モータを小型化でき、装置の省力化ができる。プーリピッチ径はΦ6.468mm(ピッチ1.016mm、歯数20)より、更に小径で使用できる歯付ベルトを実現することができた。ガラス繊維製の芯線を細い繊維を用い細い線径に撚ることにより、小径プーリの曲率にも十分に屈曲対応ができる歯付ベルトを実現することができた。モータを小型化することにより、省電力、装置の小型・軽量化に寄与することができる。
2.また、ガラス繊維性の芯線を採用することにより、湿度影響による寸法変化が小さく、寸法安定性が向上する。小径プーリになるに従い、プーリ歯とベルトの歯のかみ合わせのクリアランスが小さくなるので、寸法変化によりベルトとプーリの噛み合い干渉が生じ易くなり、速度変動が大きくなる要因となるが、本発明では、寸法安定性を向上させることができたので、小径プーリにも十分に対応できるタイミングベルトの速度変動を押さえることができる。
2.速度変動が小さいので、画像ムラを低減できる。
3.カーボン添加により、耐摩耗性が向上できる。歯ピッチが小さくなると、歯の形状が小さくなってベルトに掛かる面圧が大きくなるが、ウレタンにカーボンを添加することによって、ウレタン歯部の耐摩耗性を向上させることができる。
4.小プーリを使用すると、プーリの回転数は大プーリのときより、速くなる。ベルトとプーリの歯の噛み合わせ速度が速くなり、よりプーリと摺動することとなり、より静電気が発生しやすくなる。導電性カーボンを添加することにより、ベルトやプーリおよび周辺部品の帯電を抑制し、インクジェットプリンターではインクミストの汚染を防止できる。絶縁タイプのベルトを使用した場合にはプーリとの摺動により部品が帯電し、スケールが帯電すると、インクミストを引きよせ、スケールが汚染することにより、位置決め制御が不能となる問題があるが、この問題を解決することができる。
一方、導電性カーボンは、凝集が生じやすく、成形性を低下させ、分布密度が不均一となるとベルト歯欠けの原因となる。本発明では、添加量を0.5〜1.5重量%と微量添加によって、耐久性を保ちながらミスト吸引を防止できる電気抵抗を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ベルト装着概略構成図
【図2】ベルト構造概略図
【図3】速度変動の最小・最大値を示すグラフ
【図4】耐久試験模式図
【図5】芯線径に関する200万回往復稼働後の残存強度保持率を示すグラフ
【図6】耐摩耗試験結果を示すグラフ
【図7】寸法安定性試験模式図
【図8】ガラス芯線とアラミド芯線に関する環境湿度による寸法変化特性を示すグラフ
【図9】ガラス芯線ポリエステル芯線に関する環境温度による寸法変化特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ウレタン製歯付ベルトについて、プーリピッチ径Φ5.840mmでも使用できる芯線の素材、線径、構成、撚りに関して研究開発を行った。これらの検討要素は、研究開発の過程で次のような矛盾した事項が含まれることが判明したので、単純な解決手法で対処することは困難である。ベルトの芯線は成型用内金型に巻線された状態が多角形になっているので、歯付ベルト用のプーリが小さくなると、プーリピッチを従来と同じにすると多角形の角数が少なくなり、芯線ピッチの変動に起因する速度変動が大きくなる。その解決として、ピッチを小さくすることが生ずるが、ピッチが小さくなることは、歯形が小さくなり、より精密な設計及び成形を実現する必要がある。
芯線径が小さいとベルトが伝達できる力が少なく、機能を満足しない。一方、太いと小プーリに巻き付けたときの疲労性が増大し、寿命を満足しない。
また、芯線用素材として、ガラスコード以外に、ポリエステル繊維、アラミド繊維があるが、ポリエステル繊維製芯線はガラスコードと比較し、強度が低く、温度による寸法変化が大きい。アラミド繊維はガラス繊維と同等の強度を有するが、湿度の影響による寸法変化が大きく、寸法変化によりベルトとプーリの噛み合い干渉を生じ、速度変動が大きくなる要因となることがわかった。
よって、芯線は以下に示すガラスコードを使用することが好ましい。
また、小径プーリにすることで、歯ピッチは小さい方が、多角形運動が円運動に近づくため、歯ピッチは0.65〜0.85mmピッチが好ましい。他方、歯ピッチを小さくすると、歯の大きさが小さくなるため、ベルトに掛かる面圧が大きくなり、ベルト歯部の損耗が生じ、ベルトの破損や寿命が短くなる。このため、ウレタン歯部の摩耗性対策が必要となる。本発明では、耐摩耗性を向上させるために、カーボンを添加することを検討した。
また、表面を帆布で被覆する手段は、小ピッチの歯形では、帆布が歯部に占める割合が高くなって、歯部の樹脂量を十分に確保できず、歯付ベルトの構造としては不適切である。本発明のベルトでは帆布を使用しない。
従来のウレタンベルトは絶縁タイプであるが、ベルト歯部とプーリ歯部の摩擦が多くなると、プーリとの摺動により部品が帯電する問題が大きくなる。スケールを使用する機械例えばインクジェットプリンターのキャリッジ駆動用ベルトでは、スケールが帯電するとインクミストを引きよせ、スケールが汚染することとなり、位置決め制御が不能となる問題が発生する。この課題に対して、本研究開発では、導電性カーボンを付与することで、キャリッジ駆動ベルトにおける帯電を防止することを検討した。この結果、帯電を防止でき、インクミストを引きよせによるスケールが汚染することを防止することができた。特に導電性カーボンは、凝集など樹脂の成型には難点もあるので、成形性の及ぼす影響や成形されたベルトの強度などに及ぼす影響も考慮して、使用量を検討した。
【0010】
1.本発明のウレタン製歯付ベルトは、芯線がガラスコードであり、歯ピッチが0.65〜0.85mmであるウレタン製歯付ベルトである。芯線の線径が0.20〜0.28mmであり、芯線を構成する繊維は直径が6〜9ミクロンを用いることが好ましい。
ウレタン素材は、ウレタン製歯付ベルト用に用いられている材料を使用することができる。
ガラスコードの例としては、繊維直径9μm、ストランド繊維数200本、ストランド番手34tex(g/1000m)、下撚り構成ストランド2本、下撚り糸数1本、上撚り数3.7tpiとするコード構成が挙げられる。コード特性(規格値)は、中心値が番手84g/1000m、強熱減量16重量%、上撚り数3.7tpi、コード径0.24mm、最小引張強さ49Nである。
2.ウレタン層に耐摩耗用として添加するカーボン量は、0.5〜1.5重量%が好ましい。添加カーボンとしては、サーマルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、カラーブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックがある。
3.添加するカーボンは導電性であり、導電性カーボンの添加量は0.5〜1.5重量%が好ましい。添加導電性カーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等がある。
添加量が多すぎるとポリウレタン中にカーボンが凝集し、ベルトの歯欠け耐久性が悪化する。また、添加量が多すぎるとポリウレタンの粘度が高くなり、外型と内型の隙間にウレタンを注型し、ベルト形状形成する際、エアー混入による形成不良が発生する。
4.カーボンは導電性であり、ベルトの電気抵抗が10^5〜10^8Ω・cmであることを特徴とする2.記載のウレタン歯付ベルト。導電性カーボンの添加量は0.5〜1.5重量%、望ましくは0.8〜1.2重量%である。電気抵抗は、10^5〜10^8Ω・cm、望ましくは10^6〜10^7Ω・cmである。
導電性を付与するカーボンとしては、
例えば、サーマルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、カラーブラック、ファーネスブラック等の導電性カーボンブラック;グラファイト等を挙げることができる。
5.これまで、グラスファイバー芯線のウレタン歯付ベルトで使用されたプーリのピッチ円直径は、例えば、インクジェットプリンターのキャリッジ駆動用としてφ6.468mm(ピッチ1.016mm、タイプ20歯)であったが、本発明によりφ5.840mm(ピッチ0.7056mm、歯数26歯)と小径プーリに使用できるウレタン製精密ベルトを実現できた。
6.本発明のウレタン製精密ベルトは、プリンタ用キャリッジ駆動用ベルト、カード、紙幣等を搬送するエラストマーからなる無端状の搬送用ベルト、プリンタ用キャリッジベルト、紙幣搬送用ベルト、カード搬送用ベルト、及び軽負荷用駆動ベルト等に使用する歯付ベルト駆動装置及び歯付ベルトOA機器(事務機器)などに適用されており、例えば、プリンタのキャリッジ駆動、紙送り、あるいは複写機の紙送りや感光ドラム駆動などに使用される。
【実施例】
【0011】
ウレタン樹脂製の背部と歯部及び芯線とから構成される通常構成の歯付ベルトを通常の製法で作成した。本実施例、比較例では帆布を使用しない。
歯ピッチ、芯線、カーボン添加量は、表1、2の構成を採用した。ベルト長787mm、ベルト幅3mmとした。ウレタンの種類は通常ウレタンベルトに用いられている組成である。添加カーボンは、導電性カーボンであるケッチェンブラックEC-300J(ライオン社製)を使用した。可塑化剤としては、CGSスター社製のDOP、ジ・2エチルヘキシル・フタレートなどを添加することができる。
評価試験及び試験結果の全体のまとめを表1、2に記載し、それぞれの試験に関する詳述を次に展開する。表1は実施例1〜10を、表2は比較例1〜9を掲載する。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
<A 速度ムラ測定試験>
速度変動を駆動プーリと従動プーリ間に試験用ベルトを掛けまわし、従動プーリに2kgf(19.6N)の軸荷重を与え、駆動プーリを2500min-1の回転数で走行させて発生する速度ムラを計測した。測定装置の基本構成は特開2002−098202号公報図12に掲載されている公知の装置を用いた。
試験結果の評価は次の基準とし、その結果は表1、2に記載したとおりである。
速度変動率% ◎:1.0以下 ○:1.0以上2.5以下 ×:2.5以上

実施例2、7、8及び比較例7、8について、測定した速度変動率を表3に示し、速度変動率の最小数値と最大数値のグラフを図3に示す。
【0015】
速度変動について着目すると、比較例7が速度変動率を最小に抑えることが可能であり、比較例8では、速度変動率が2.5%以上となり、十分な安定性が得られない。本発明の小径駆動プーリピッチでは、歯ピッチ0.9mmでは、成形工程で多角形に芯線が巻き付けられることによる、影響が大きく作用していると推測される。この結果は、駆動プーリ径6.0mm以下、歯数20以上の小径プーリでは、歯ピッチを0.85mm以下とする歯付ベルトが適しているとみなすことができる。図3から、実施例2、7、8及び比較例7は、速度変動率が2.5%以下であって、その幅も小さいことが確認できるが、比較例8は、速度変動率の幅が大きく、印字などの微細な駆動コントロールには不適である。
【0016】
【表3】

【0017】
<B 耐久性試験>
図4に示す試験機を用いた。2軸のプーリ5、6に各仕様直歯ベルト1を巻き掛け、一定荷重を与える。下スパンにはベルトにプリンタのキャリッジを模擬したワークG(500gの重り)が装着されている。駆動ブーリを正逆に回転させることによりワークを左右に往復させる。このとき、駆動プーリに巻き付いたべルトの歯部は繰り返し、駆動プーリに巻き付き、応力を受けることにより歯付べルトの歯部が疲労し、歯部がせん断破壊を生じる。200万回の往復屈曲試験後の残存強度を測定して評価した結果を表1、表2に示す。
○、◎:200万回往復走行を達成
(注)200万回往復走行後の歯部の摩耗量の違いを目視評価
×:200万回往復走行未達成(ベルト歯欠け、切断が発生し、走行不能となる)
【0018】
実施例3、4、6及び比較例1、2、3、4、9について具体的な数値データを表5に示す。実施例は、200万回往復動後の屈曲疲労性について残存強度が80%以上示し、十分な強度を維持することが確認できる。一方、アラミド繊維芯線では、歯欠けが発生し、ポリエステル繊維芯線では切断し、200万回試験を達成しない。ガラス繊維芯線でも、0.18mm径では7万回未満で切断した。図5に200万回後の残存強度保持率をグラフ表示した。図5に200万回試験後の残存強度保持率を示すと、ガラス繊維0.3mm径以上では、残存強度が70%以下に急激に低下することが示されている。
【0019】
【表4】

【0020】
【表5】

【0021】
<C 耐摩耗性試験(テーバー摩耗試験)JIS K7024>
JIS K7024に規定されるプラスチック―摩耗輪による摩耗試験方法にしたがって試験を行った。試験条件を表6に示す。結果を表1、表2に示す。各試験例とも十分な対摩耗性を示す。導電性に差のある実施例1と実施例2について、具体的な試験データを表7に示し、図6にそのグラフを示す。
表7、図6から、回数の増加、荷重の増加に比例して摩耗が進むことが示されている。導電性カーボンを添加した実施例2は、非導電性カーボンを添加した実施例1よりも摩耗性が少ないことが示されている。実施例2は実施例1に比較して、50〜80%程度に抑制されている。荷重が大きいほど抑制効果が大きい。
【0022】
【表6】

【0023】
【表7】

【0024】
<D 寸法安定性試験>
芯線の種類に着目した、ベルトの寸法安定性について試験を行った。
対象芯線は、ガラス繊維製芯線、アラミド繊維製芯線、ポリエルテル繊維製芯線を用いた。図7に示すように2つのプーリにベルトを掛け回し、荷重をかけたときの寸法変化を測定した。
芯線を構成する繊維の太さについては、表1、表2に記載したとおりである。
1.試験条件
・各環境下での放置時間:24Hrs
・各環境下の温度設定 :20℃
・各試料は環境下にフリーの状態で放置
・軸間長さ測定は各環境下で2分以内に測定
・軸間長さ測定条件

2.芯線比較 ガラス繊維、アラミド繊維
ガラス繊維製芯線とアラミド繊維製芯線を用いたウレタン製ベルトについて、湿度変化に影響されるベルト長の変化を試験した。結果を表8、図8に示す。
・ガラス繊維製芯線ベルト:実施例2
・アラミド繊維製芯線ベルト:比較例2
【0025】
結果は、ガラス繊維製芯線は、0.012〜−0.006%の範囲であるのに対して、アラミド繊維製芯線は、湿度環境の変化によって、0.03〜0.11%も寸法が変化することが測定された。ガラス繊維製芯線は耐湿度安定性が高いことが確認された。
なお、表1、表2に示すように、芯線を構成する繊維の太さを変えた試験も行っている。芯線を構成する繊維の太さは、比較例5で用いた5ミクロンでは耐久性が劣り、比較例6で用いた10ミクロンでも屈曲耐性が低下することが示されているので、繊維の太さは、6〜9ミクロンが適していることが確認された。
【0026】
【表8】

【0027】
3.芯線比較 ガラス繊維、ポリエステル繊維
ガラス繊維製芯線とポリエステル繊維製芯線を用いたウレタン製ベルトについて、温度変化に影響されるベルト長の変化を試験した。結果を表9、図9に示す。
・ガラス繊維製芯線ベルト:実施例2
・ポリエステル繊維製芯線ベルト:比較例1
【0028】
結果は、ガラス繊維製芯線は、0.002〜−0.023%の範囲であるのに対して、ポリエステル繊維製芯線は、温度環境の変化によって、−0.019〜−0.093%も寸法が変化することが測定された。ガラス繊維製芯線は耐温度安定性が高いことが確認された。
【0029】
【表9】

【0030】
<E.電気抵抗(導電性テスト)>
帯電防止仕様のウレタンタイミングベルトの電気抵抗について、次のような試験を行った。測定装置、測定環境、測定方法を表10に示す。測定結果を表1、表2に示す。
非導電性カーボン添加は、10^10〜10^12Ω・cmであるのに対して、導電性カーボンの添加によって、10^5〜10^8Ω・cmの電気抵抗に改善されることが確認された。
【0031】
【表10】

【0032】
[考察]
以上のように、各試験結果及び全体をまとめた表1、表2の結果から次のように言える。
1.芯線素材は、ガラス繊維製芯線が適している。ガラス繊維製芯線は、湿度変化及び温度変化に対する寸法安定性が高い。一方、適度な耐久性を確保するには、適した太さが必要であることも確認された。0.18mm径では切断してしまい、0.32mm径では、疲労耐久性の低下が大きいことが確認された(表5参照)。特に、太い芯線径では、ガラス繊維の剛性が本発明の小径プーリに適応できないと想定される。芯線を構成する繊維の太さは、比較例5で用いた5ミクロンでは耐久性が劣り、比較例6で用いた10ミクロンでも屈曲耐性が低下することが示されているので、繊維の太さは、6〜9ミクロンが適していることが確認された。
したがって、歯ピッチが0.65〜0.85mmであるウレタン製歯付ベルト用として、ガラス繊維製芯線が適しており、その線径が0.20〜0.28mmであり、芯線を構成する繊維の直径が6〜9ミクロンが適している。
2.200万回屈曲耐久性試験後の80%以上の残存強度を発揮することが確認できた。
3.カーボン0.5〜1.5重量%添加により対摩耗性は十分に維持できる。特に、導電性カーボンは、対摩耗性の向上にも寄与していることが確認できる。
4.導電性カーボン0.5〜1.5重量%添加により、十分な導電性が得られることが確認された。特に、1.5重量%添加した本実施例のベルトにおいて、ベルト成型及び耐久性が良好であることが確認されているので、凝集や歯欠けなどの成型に悪影響を及ぼすことが無いことが確認できた。
5.本発明のベルト構成によって、プーリピッチ径Φ6.468mm(ピッチ1.016mm、歯数20)より小径で使用できる、速度変動が小さく安定し、耐久性のある歯付ベルトを提供することができることを確認した。
【符号の説明】
【0033】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 芯線
4 背部
5 プーリ
6 プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線がガラスコードであり、歯ピッチが0.65〜0.85mmであるウレタン製歯付ベルトであって、
芯線の線径が0.20〜0.28mmであり、芯線を構成する繊維の直径が6〜9ミクロンであることを特徴とするウレタン製歯付ベルト。
【請求項2】
ウレタン層にカーボン0.5〜1.5重量%を添加したことを特徴とする請求項1記載のウレタン製歯付ベルト。
【請求項3】
カーボンは導電性であり、導電性カーボン0.5〜1.5重量%を添加したことを特徴とする請求項2記載のウレタン歯付ベルト。
【請求項4】
カーボンは導電性であり、ベルトの電気抵抗が10^5〜10^8Ω・cmであることを特徴とする請求項3記載のウレタン歯付ベルト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133022(P2011−133022A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292530(P2009−292530)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)