説明

歯周病の診断方法及び歯周病診断キット

【解決手段】3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩と、該金属塩と金属キレートを作る発色試薬とを唾液と接触させ、唾液中の金属イオン還元力により発色させて、その発色強度により歯周病の進行程度を診断することを特徴とする歯周病の診断方法。
3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩を含有する診断試薬Aと、該金属塩と金属キレートを作る発色試薬を含有する診断試薬Bとを備えてなることを特徴とする歯周病診断キット。
【効果】本発明の歯周病の診断方法及び歯周病診断キットによれば、被検者の歯周病の有無の診断あるいは歯周病の進行程度の予測を迅速に、簡単かつ正確に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の唾液中の抗酸化力(還元力)を診断指標とする歯周病の診断方法及び歯周病診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、局所における細菌感染とそれに対する免疫防御反応の結果引き起こされる、歯周組織の破壊と歯槽骨の吸収を伴う慢性炎症疾患である。歯周病の初期症状としては、歯肉の発赤、腫脹、出血があげられるが、これらの症状は見過ごされる場合が多く、病状はさらに進行して歯肉の退縮、歯槽骨の吸収が起こり、最終的には歯の喪失に繋がる。歯の喪失を防ぐには適切な治療、処置が必要であり、そのためには歯周病の有無、程度を的確にとらえる診断が重要である。
【0003】
現在行われている歯周病の診断には、(1)炎症の程度や出血の有無を目視で判断する(GI:歯肉炎指数、GBI:歯肉出血指数)、(2)歯周ポケットの深さを測定する、(3)歯肉溝滲出液量を測定する、(4)レントゲン撮影により歯槽骨吸収を確認する、(5)歯の動揺を確認するなどの方法がある。しかし、これらの方法は、歯科医師の経験を積んだ技術が必要であり、しかも一人当たりの検診時間に長時間を要するという欠点がある。
【0004】
また、歯垢中の歯周病原性細菌、歯肉溝滲出液や唾液に含まれる特定の酵素や特定の蛋白質などを診断指標として、歯周病の程度を判断するという方法も提案されており、例えば、下記に示す特許文献1〜5などに提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの診断方法の結果と歯周疾患の程度との相関は高くはなく、診断方法として満足できるものではなかった。このため、歯周病の有無の診断あるいはその進行の予測をより的確かつ簡便に行うことができる診断技術の開発が望まれる。
【0006】
【特許文献1】特開平6−043165号公報
【特許文献2】特開平10−501070号公報
【特許文献3】特許第3165788号明細書
【特許文献4】特開2003−066039号公報
【特許文献5】国際公開第02/079780号パンフレット
【非特許文献1】J Periodontal Res. 2005 Oct;40(5):378−84
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、歯周病の有無の診断又はその進行の予測を迅速、簡便かつ正確に行うことができる歯周病の診断方法及び歯周病診断キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、歯周病の有無やその進行程度と唾液中の還元力(=抗酸化力)とに相関関係があり、被検者の唾液中の金属イオン還元能を測定することにより、被検者の歯周病の有無やその進行程度を診断できることを知見した。
【0009】
更に、本発明においては、3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩と、該金属と金属キレートを作る発色試薬とを被検者の唾液と接触させた場合、特に3価の鉄を含有する金属塩と発色試薬として2,4,6−トリス−2−ピリジル−1,3,5−トリアジン(以下、TPTZと略す。)、あるいは2価の銅を含有する金属塩と発色試薬として2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(以下、バソクプロイン(慣用名)と略す。)又はその塩を被検者の唾液と接触させた場合、唾液の還元力により上記金属イオンが還元されて発色試薬と金属キレートを作り発色し、その発色強度が被検者の歯周病の進行程度と高い相関関係があること、よって、上記発色強度を測定することで、被検者の唾液中の金属イオン還元能を測定でき、これにより、被検者の歯周病の有無又はその進行程度の予測を迅速に、簡便かつ正確に行うことができる。
【0010】
この場合、TPTZは2価の鉄イオンとキレートを作り赤紫色に発色する。3価の鉄を含有する金属塩とTPTZとを唾液と接触させたときに発色するのは、唾液中の抗酸化物質の作用により3価の鉄イオンが2価に還元されるためであり、発色強度は唾液の還元力の強さを示す。
同様に、バソクプロイン又はその塩は1価の銅イオンとキレートを作り、オレンジ色に発色する。2価の銅を含有する金属塩とバソクプロイン又はその塩とを唾液と接触させたときに発色するのは、唾液中の抗酸化物質の作用により、2価の銅イオンが1価に還元されるためであり、発色強度は唾液の還元力の強さを示す。
【0011】
近年、活性酸素と様々な疾患との関連が明らかになっており、歯周病についてもその発症及び進行に活性酸素が関与しているという報告がある(非特許文献1;J Periodontal Res. 2005 Oct;40(5):378−84参照)。そのため、本発明者は、歯周病を予防する、あるいはその進行を防ぐには、口腔内の抗酸化力が強く、活性酸素を消去することができることが望ましいと考えられること、よって、上記したように金属イオンの還元力を抗酸化力と言い換えると、唾液中の還元力(=抗酸化力)を測定することにより、歯周病の診断が可能であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は、下記の歯周病の診断方法及び歯周病診断キットを提供する。
〔請求項1〕
3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩と、該金属塩と金属キレートを作る発色試薬とを唾液と接触させ、唾液中の金属イオン還元力により発色させて、その発色強度により歯周病の進行程度を診断することを特徴とする歯周病の診断方法。
〔請求項2〕
金属塩が3価の鉄を含有するものであり、発色試薬が2,4,6−トリス−2−ピリジル−1,3,5−トリアジンである請求項1記載の歯周病の診断方法。
〔請求項3〕
金属塩が2価の銅を含有するものであり、発色試薬が2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン又はその塩である請求項1記載の歯周病の診断方法。
〔請求項4〕
3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩を含有する診断試薬Aと、該金属塩と金属キレートを作る発色試薬を含有する診断試薬Bとを備えてなることを特徴とする歯周病診断キット。
〔請求項5〕
金属塩が3価の鉄を含有するものであり、発色試薬が2,4,6−トリス−2−ピリジル−1,3,5−トリアジンである請求項4記載の歯周病診断キット。
〔請求項6〕
金属塩が2価の銅を含有するものであり、発色試薬が2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン又はその塩である請求項4記載の歯周病診断キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明の歯周病の診断方法及び歯周病診断キットによれば、被検者の歯周病の有無の診断あるいは歯周病の進行程度の予測を迅速に、簡単かつ正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯周病の診断方法は、被検者の唾液中の金属イオン還元能を測定することを特徴とする。この場合、3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩と、該金属と金属キレートを作る発色試薬とを唾液と接触させて反応させることで、被検者の唾液中の還元力により還元された金属塩の金属イオンが発色試薬と金属キレートを作って発色し、この発色強度を測定することによって、被検者の唾液中の金属イオン還元力の強さから歯周病の有無の診断や進行程度を診断することができる。
【0015】
本発明において使用する金属塩としては、還元反応により酸化数が変化して発色試薬と金属キレートを作るものが使用され、具体的には3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩が好適に用いられる。
3価の鉄を含有する金属塩としては、例えば塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)等が挙げられる。2価の銅を含有する金属塩としては、例えば塩化銅(II)、グルコン酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、過塩素酸銅(II)等が挙げられる。
【0016】
また、発色試薬としては、上記還元により酸化数が変化した上記金属イオンとキレートを作って発色するものであればよく、例えば2,4,6−トリス−2−ピリジル−1,3,5−トリアジン(TPTZ)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンジスルホン酸ジナトリウム塩(バソクプロインスルホン酸ナトリウム)等のバソクプロインの塩などが挙げられるが、とりわけ3価の鉄を含有する金属塩を使用する場合はTPTZ、2価の銅を含有する金属塩を使用する場合はバソクプロイン又はバソクプロインスルホン酸ナトリウムがそれぞれ好ましく使用される。
【0017】
なお、本発明において、ヒト被検者からの検体として口腔内から採取した唾液が用いられるが、この唾液はそのまま反応に用いて、上記金属塩及び発色試薬と接触させることもできるし、遠心分離などにより不純物などを分離した後、上清を反応させてもよい。
【0018】
本発明の歯周病の診断方法では、上記したように3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩と発色試薬とを反応させるが、より好適には下記[I]、[II]の方法が採用できる。また、本発明の歯周病診断キットは、上記金属塩を含有する診断試薬Aと、発色試薬を含有する診断試薬Bとを備えてなるものであるが、下記診断試薬Aと診断試薬Bとを備えた診断キットがより好適に使用される。
【0019】
[I]3価の鉄を含有する金属塩と発色試薬であるTPTZとを唾液と接触させ、唾液により3価から2価に還元された鉄とTPTZとにより発色させ、その発色強度より歯周病の有無又は進行程度を診断する。この場合、3価の鉄を含有する金属塩を含有する診断試薬AとTPTZを含有する診断試薬Bとして保存し、使用時にこれら診断試薬A、Bを混合して、唾液と接触させることが好ましい。
【0020】
[II]上記2価の銅を含有する金属塩とバソクプロイン又はその塩とを唾液と接触させ、唾液により2価から1価に還元された銅とバソクプロイン又はその塩とにより発色させ、その発色強度により歯周病の進行程度を診断する。この場合、2価の銅を含有する金属塩を含有する診断試薬Aとバソクプロイン又はその塩を含有する診断試薬Bとして保存し、使用時にこれら診断試薬A、Bを混合して、唾液と接触させることが好ましい。
【0021】
本発明の歯周病診断キットにおいて、診断試薬Aに使用する3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩は、イオン交換水等の溶媒で希釈して金属塩溶液として用いられる。
この場合、診断試薬A中の金属塩濃度は、0.1〜10mg/mL、特に0.5〜5mg/mLが好ましく、0.1mg/mLに満たないと十分な感度が得られない場合があり、10mg/mLを超えても感度は向上しない。
【0022】
また、診断試薬Bに使用する発色試薬は、メタノール、イオン交換水や、希塩酸,希酢酸等の希酸などの溶媒で溶解・希釈して用いることが望ましく、特にTPTZの溶媒としては1%塩酸等の希酸が好適であり、バソクプロイン又はその塩の溶媒としては、メタノール、イオン交換水、又は1%塩酸等の希酸が好適である。
診断試薬B中の発色試薬の濃度は、0.01〜10mg/mL、特に0.05〜5mg/mLが好ましく、0.01mg/mLに満たないと十分な感度が得られない場合があり、10mg/mLを超えても感度は向上しない。
【0023】
更に、本発明においては、発色反応を正確に行うために上記診断試薬Aと診断試薬Bとを質量比で1:10〜10:1、特に1:2〜2:1の割合で使用することが好ましい。例えば、診断試薬A100μLに対して診断試薬Bを10〜1,000μL、特に診断試薬A100μLに対して診断試薬Bを50〜200μL使用することが好ましい。
【0024】
診断試薬Aと診断試薬Bは、診断キットとしてそれぞれを別々に保存し、使用時(診断時)にこれら診断試薬A、Bを混合して唾液と接触させることが、保存安定性や感度などの点から望ましい。
【0025】
使用時(診断時)に診断試薬Aと診断試薬Bとを混合し、この混合物と唾液とを接触させる際の混合割合は、診断試薬A、Bの混合物と唾液とを質量比で100:1〜1:1、特に50:1〜10:1の割合で使用することが好ましい。例えば、診断試薬A、Bの混合物100μLに対して唾液を1〜100μL、特に2〜10μL使用するのが好ましい。
【0026】
なおこの場合、診断試薬A及びBの混合物と唾液との接触にあたっては、唾液に対して診断試薬A及びBの混合物中に含まれる金属塩の濃度が0.05〜10mg/mLとなる範囲で診断試薬を唾液に添加することが、感度の面から好ましい。
【0027】
本発明においては、診断試薬A及びBの混合物と唾液とが接触して発色後に吸光度を測定することで、発色強度を評価することができる。吸光度の測定は、吸光プレートリーダーを用いて行うことができ、具体的には、マイクロプレートリーダー(スペクトライメージ、和光純薬工業(株)製)、吸光マイクロプレートリーダー(Spectra Max Plus384、モレキュラーデバイス社製)などを用いることができる。なお、吸光度の測定は、診断試薬を唾液に添加、混合後、5〜30分間反応させた後に行うことが望ましい。
【0028】
吸光度測定における検出波長は、440〜630nmの範囲とすることができるが、
[I]3価の鉄を含有する金属塩を含有する診断試薬AとTPTZを含有する診断試薬Bを用いる場合は、570〜630nmが好ましく、
[II]2価の銅を含有する金属塩を含有する診断試薬Aとバソクプロイン又はその塩を含有する診断試薬Bを用いる場合は、440〜500nmが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0030】
〔実験例1〕
下記の診断方法及び診断試薬について、抗酸化物質の測定能について下記方法で評価した。
【0031】
[実施例1]3価鉄とTPTZを用いた抗酸化物質の測定
塩化鉄(III)・6水和物(和光純薬工業(株)製)1gにイオン交換水を加えて100mLとし、診断試薬Aとした。TPTZ0.2gに0.1M塩酸を加えて100mLとし、診断試薬Bとした。診断試薬A50mL及び診断試薬B50mLを使用時(診査時)の直前に混合した。アスコルビン酸(和光純薬工業(株)製)0.2gにリン酸緩衝液を加えて10mLとした。これをリン酸緩衝液で希釈して使用した。なお、リン酸緩衝液は、以下のように調製した。
【0032】
0.01mol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)の調製:
リン酸水素2ナトリウム・12水和物8.6g、リン酸2水素ナトリウム・2水和物0.99g、塩化ナトリウム25.5gをイオン交換水に溶解、3Lとした。
【0033】
次に、マイクロテストプレート(96ウェル、FALCON 35−3072)に、濃度0.00625mg/mL、0.0125mg/mL、0.025mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mLのアスコルビン酸溶液10μL、診断試薬A、Bの混合液150μLを添加、混合し、5分後に595nmの吸光度測定を行った。吸光度測定には、マイクロプレートリーダー(スペクトライメージ、和光純薬工業(株)製)を用いた。測定結果は図1に示すとおりであり、アスコルビン酸の濃度依存的に595nmの吸光度は上昇した。この結果から、本発明にかかわる上記方法により、抗酸化物質の測定が可能であることがわかった。
【0034】
[実施例2]2価銅とバソクプロインスルホン酸ナトリウムを用いた抗酸化物質の測定
塩化銅(II)・2水和物(和光純薬工業(株)製)1gにイオン交換水を加えて100mLとし、診断試薬Aとした。バソクプロインスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)0.2gに0.1M塩酸を加えて100mLとし、診断試薬Bとした。診断試薬A50mL及び診断試薬B50mLを使用時(診査時)の直前に混合した。アスコルビン酸(和光純薬工業(株)製)0.2gにリン酸緩衝液を加えて10mLとした。これをリン酸緩衝液で希釈して使用した。なお、リン酸緩衝液は、実施例1と同様に調製、使用した。
【0035】
マイクロテストプレート(96ウェル、FALCON 35−3072)に、濃度0.025mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mLのアスコルビン酸溶液10μL、診断試薬Aと診断試薬Bの混合液150μLを添加、混合し、5分後に492nmの吸光度測定を行った。吸光度測定には、マイクロプレートリーダー(スペクトライメージ、和光純薬工業(株)製)を用いた。
結果は図2に示すとおりであり、アスコルビン酸の濃度依存的に450nmの吸光度は上昇した。この結果から、本発明にかかわる上記方法により、抗酸化物質の測定が可能であることがわかった。
【0036】
〔実験例2〕
下記組成の歯周病診断試薬(キット)を実施例1と同様に調製し、これら診断試薬A及びBの混合物とアスコルビン酸を混合したときの発色強度を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
具体的な実験方法は、0.1mg/mL アスコルビン酸溶液10μL、下記に示す診断試薬Aと診断試薬Bの混合液150μLをマイクロテストプレート(96ウェル、FALCON 35−3072)に添加、混合し、5分後にマイクロプレートリーダー(スペクトライメージ、和光純薬工業(株)製)で吸光度を測定した。測定波長は、診断試薬BにTPTZを含有する場合は595nm、診断試薬Bにバソクプロイン又はその塩を含有する場合は492nm、診断試薬Bにキシレノールオレンジを含有する場合は560nmとした。なお、0.1mg/mLのアスコルビン酸溶液は、実施例1と同様に調製し、使用した。
【0038】
[実施例3]
診断試薬A:
10mg/mL塩化鉄(III)溶液。塩化鉄(III)(和光純薬工業(株)製)0.1gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
10mg/mLのTPTZ溶液。TPTZ(和光純薬工業(株)製)1gに0.1M塩酸を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0039】
[実施例4]
診断試薬A:
2mg/mL硝酸鉄溶液。硝酸鉄(和光純薬工業(株)製)0.2gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
1mg/mLのTPTZ溶液。TPTZ(和光純薬工業(株)製)0.1gに0.1M塩酸を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0040】
[実施例5]
診断試薬A:
1mg/mL硫酸鉄溶液。硫酸鉄(和光純薬工業(株)製)0.1gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
5mg/mLのTPTZ溶液。TPTZ(和光純薬工業(株)製)0.5gに0.3M酢酸を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0041】
[実施例6]
診断試薬A:
0.5mg/mL塩化鉄溶液。塩化鉄(和光純薬工業(株)製)0.05gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
0.01mg/mLのTPTZ溶液。TPTZ(和光純薬工業(株)製)0.001gに0.1M塩酸を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0042】
[実施例7]
診断試薬A:
0.1mg/mL塩化銅溶液。塩化銅(和光純薬工業(株)製)0.01gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
1mg/mLバソクプロインスルホン酸ナトリウム溶液。バソクプロインスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)0.1gに0.1M塩酸を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0043】
[実施例8]
診断試薬A:
5mg/mLグルコン酸銅溶液。グルコン酸銅(和光純薬工業(株)製)0.5gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
0.05mg/mLバソクプロイン溶液。バソクプロイン(和光純薬工業(株)製)0.005gにメタノールを加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0044】
[実施例9]
診断試薬A:
1mg/mL硫酸銅溶液。硫酸銅(和光純薬工業(株)製)0.1gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
0.5mg/mLバソクプロインスルホン酸ナトリウム溶液。バソクプロインスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)0.05gに0.3M酢酸を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0045】
[実施例10]
診断試薬A:
2mg/mL硝酸銅溶液。硝酸銅(和光純薬工業(株)製)0.2gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
5mg/mLバソクプロイン溶液。バソクプロイン(和光純薬工業(株)製)0.5gにメタノールを加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0046】
[実施例11]
診断試薬A:
1mg/mL過塩素酸銅溶液。過塩素酸銅(和光純薬工業(株)製)0.1gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
10mg/mLバソクプロインスルホン酸ナトリウム溶液。バソクプロインスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)1gに0.1M塩酸を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0047】
[比較例1]
診断試薬A:
1mg/mLフッ化すず(IV)溶液。フッ化すず(IV)(和光純薬工業(株)製)0.1gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
0.5mg/mLの3,3’−ビス(N,N−ビス(カルボキシメチル)アミノメチル−o−クレソルスルホフタレイン−2ナトリウム(キシレノールオレンジ)溶液。キシレノールオレンジ(和光純薬工業(株)製)0.05gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0048】
[比較例2]
診断試薬A:
1mg/mL塩化鉄(III)溶液。塩化鉄(III)(和光純薬工業(株)製)0.1gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
0.5mg/mLキシレノールオレンジ溶液。キシレノールオレンジ(和光純薬工業(株)製)0.05gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0049】
[比較例3]
診断試薬A:
1mg/mL塩化銅溶液。塩化銅(和光純薬工業(株)製)0.1gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
診断試薬B:
0.5mg/mLキシレノールオレンジ溶液。キシレノールオレンジ(和光純薬工業(株)製)0.05gにイオン交換水を加えて溶解し、100mLとした。
上記診断試薬A50mLと診断試薬B50mLを混合し、混合液を試験に供した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の結果から、3価の鉄を含有する金属塩を含有する診断試薬AとTPTZを含有する診断試薬Bとをアスコルビン酸と反応させると、発色し、アスコルビン酸の測定が可能あることがわかった。
また、表1の結果から、2価の銅を含有する金属塩を含有する診断試薬Aとバソクプロイン又はバソクプロインスルホン酸ナトリウムを含有する診断試薬Bを反応させると、発色し、アスコルビン酸の測定が可能であることがわかった。
【0052】
〔実験例3〕ヒト唾液の発色とGI(GI:歯肉炎指数)との関係
安静時無刺激全唾液2mLを喀痰処理器(栄研器材(株)製)に採取し、遠心分離(使用機器 eppendorf centrifuge 5804 R、処理条件4℃、10,000rpmで10分間)し、この遠心上清を唾液溶液とした。マイクロテストプレート(96ウェル、FALCON 35−3072)に、唾液溶液10μL、実施例1と同様に調製した診断試薬A、Bの混合液150μLを添加、混合し、5分後に595nmの吸光度測定を行った。吸光度測定には、マイクロプレートリーダー(スペクトライメージ、和光純薬工業(株)製)を用いた。被験者は、永久歯16本以上を有する26歳から71歳の22名とし、全ての永久歯を対象とし、被験歯につき頬側近心1箇所のGIを測定した。GIの平均値が0.5未満の9名を健常群、GIの平均値が0.5以上の13名を歯周病群として、2群の吸光度分布を図3に示す。なお、GIとは、歯肉の状態を判断する指標で、その基準は以下の通りである。
【0053】
GI基準
0=正常歯肉
1=軽度の炎症。軽度の色変化、浮腫があるが、探針により出血しないもの。
2=中程度の炎症。発赤、浮腫があり、探針により出血するもの。
3=高度の炎症。著しい発赤、腫脹、自然出血の傾向、潰瘍形成のあるもの。
健常群の唾液の吸光度は歯周病群と比較して高い数値を示し(p<0.05、t検定)、健常群の唾液は3価の鉄イオンを還元する力が強いことが確認された。
【0054】
図3の結果から、上記吸光度と歯周病の有無とは相関関係が認められ、本発明の診断方法により唾液中の金属イオン還元能を測定することで、歯周病の診断が可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例1の吸光度測定結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例2の吸光度測定結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実験例3の吸光度分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩と、該金属塩と金属キレートを作る発色試薬とを唾液と接触させ、唾液中の金属イオン還元力により発色させて、その発色強度により歯周病の進行程度を診断することを特徴とする歯周病の診断方法。
【請求項2】
金属塩が3価の鉄を含有するものであり、発色試薬が2,4,6−トリス−2−ピリジル−1,3,5−トリアジンである請求項1記載の歯周病の診断方法。
【請求項3】
金属塩が2価の銅を含有するものであり、発色試薬が2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン又はその塩である請求項1記載の歯周病の診断方法。
【請求項4】
3価の鉄及び/又は2価の銅を含有する金属塩を含有する診断試薬Aと、該金属塩と金属キレートを作る発色試薬を含有する診断試薬Bとを備えてなることを特徴とする歯周病診断キット。
【請求項5】
金属塩が3価の鉄を含有するものであり、発色試薬が2,4,6−トリス−2−ピリジル−1,3,5−トリアジンである請求項4記載の歯周病診断キット。
【請求項6】
金属塩が2価の銅を含有するものであり、発色試薬が2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン又はその塩である請求項4記載の歯周病診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−151636(P2008−151636A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339590(P2006−339590)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】