説明

歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット

【課題】広範囲の免疫型を有する患者に対して歯周病を高い精度で検査することができ、かつ、自動化された機器で高速処理することが可能な、歯周病原菌に対する血液試料中の抗体価または抗体の検査キット、該キットに好適に使用できる歯周病原菌抗原タンパク質、および該キットを用いた血液試料中の抗体価または抗体の存在を検査する方法、ポルフィロモーナス・ジンジバリス菌株をタイピングするキットを提供する。
【解決手段】特定の配列群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット、ならびにヒト身体から分離した血液試料を前記した一連のポリペプチドと接触させることを含む該血液試料中の歯周病原菌に対する抗体価または抗体の存在を測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット、より詳細には機器による自動化検査に適した特定の歯周病原菌抗原タンパク質を含んでなる歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット、該キットに用いる改変ポリペプチド、ならびに血液試料の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、口腔細菌が歯周組織へ感染することによって発症する細菌感染症である。
歯科臨床の現場における歯周病の診断は、臨床症状、口腔内写真、レントゲン画像あるいは歯周組織検査などの臨床検査の結果を総合して行われている。これらの検査のうち、口腔内写真やレントゲン画像診査は歯周組織の形態的な変化を視覚的に評価するものであり、歯周組織検査はプラーク付着状況、歯周ポケットの深さ、プロービング時の出血あるいは歯の動揺度などの様々な臨床項目を測定して評価するものである。したがって、これらの検査は繁雑な操作が必要とされ、患者の歯周病病態を正確に診断するためには術者に高度の技術が要求される。
【0003】
すなわち、場合によっては、術者の熟練度によって検査結果が異なり、ひいては患者に対する診断が異なる可能性がある。また、上述したような歯科臨床検査では、歯周病が細菌感染症であるにもかかわらず、歯周病原菌の「感染」レベルではなく、歯周組織の「形態的な変化」のレベルで評価されており、いわば術者の主観によって検査がなされ、従来から、細菌学的・免疫学的観点から妥当であり、かつ、術者の熟練度によって検査結果に差異の生じない客観的な歯周病検査法に対する要望が存在していた。
【0004】
このような状況の中、歯周病原菌に対する血清抗体価を歯周病検査の指標とした歯周病検査システムが行われている(非特許文献1)。この歯周病検査システムは、患者の指先から採血し分離した微量な血液から歯周病原菌に対する「特異抗体」を検出・定量することによって、歯周病原菌の感染状態や歯周病の重篤度(炎症の状態)を評価するものであり、免疫学的手法を採用することによって歯周病の病態を客観的かつ均一に評価することが可能である。
【0005】
また、この歯周病検査システムでは、指先から採血した血液から血漿を分離し、血漿の試料を検査機関に郵送し、検査機関で歯周病原菌に対するIgG抗体価を測定し、歯周病の重篤度を評価後、各患者に歯周病検査の結果が通知される(歯周病原菌 血漿抗体価検査)。したがって、一般開業医あるいは家庭における歯周病検査の補助が実施可能となり、また、検査データを一括収集して解析することにより、膨大なデータを用いて病態との関連付けを行うこともできる。
一方で、このような歯周病検査システムにおいては、大量の試料が取り扱われることから自動で高速処理することが求められる。
【0006】
このような検査システムにおいては、試料(血液)中の検査対象とする抗原に対する抗体の種類が多ければ多いほど検査結果と歯周病との相関性は高く、歯周病を精度よく検査することが可能となる。また、歯周病に感染したヒトにおいては、歯周病原菌およびヒトの個体差に起因して認識される歯周病原菌抗原の種類が異なり、この点においても検査対象とする抗体の種類は多ければ多いほど歯周病を精度よく検査することができる。
しかしながら、多種の抗体の抗体価を測定しようとすると試料の高速処理が困難となり、機器による自動化検査には適さない。
【0007】
現在の抗体価測定に使用されている抗原は、ポルフィロモーナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)などの歯周病原菌を破砕して調製した溶液であり、多種雑多な細菌タンパク質(LPS、膜脂質も含む)を含む混合物である。そのため、大量の試料を機器により自動で高速処理することが困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】工藤値英子、岡山歯学会雑誌、第28巻、第1号(2009)1-14頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、変化する歯周病原菌の抗原性と検査対象の多様な免疫反応性とに起因して生じる多様な抗原抗体反応をカバーして多様な免疫型を有する広範囲の患者の歯周病を高い精度で検査することができ、かつ、自動化された機器で高速処理することが可能な歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット、該キットに好適に使用できる歯周病原菌抗原タンパク質、および該キットを用いた血液試料の歯周病原菌血漿または血清抗体価を検査する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題の下に、少ない種類でも多様な抗原抗体反応をカバーして歯周病を精度よく判定し得る歯周病原菌タンパク質の選抜を検討した。その結果、特定の歯周病原菌タンパク質の組合せが歯周病患者から分離した血液試料中の血漿抗体と特異的に反応し、それらの菌タンパク質の組合せを選択的に用いることによって多様な抗原抗体反応をカバーして血液試料を精度よく検査でき、かつ、自動化された機器で高速処理できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]
配列番号:141のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド;
[2]
配列番号:142のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる前記[1]記載の改変ポリペプチド;
[3]
配列番号:143のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド;
[4]
配列番号:144のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる前記[3]記載の改変ポリペプチド;
[5]
配列番号:145のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド;
[6]
配列番号:146のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる前記[5]記載の改変ポリペプチド;
[7]
配列番号:147のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド;
[8]
配列番号:148のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる前記[7]記載の改変ポリペプチド;
[9]
配列番号:1、3、5、9、15、17、19、23、31、35、37、41、43、47、141、143、145、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット;
[10]
該ポリペプチドが、配列番号:1、3、5、9、15、17、19、31、37、41、43、141、143、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよび配列番号:145のアミノ酸配列を有するポリペプチドである前記[9]記載の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット;
[11]
該ポリペプチドが、配列番号:2、4、6、10、16、18、20、24、32、36、38、42、44、48、142、144、146、148、152、154および156よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである前記[9]記載の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット;
[12]
ヒト身体から分離した血液試料を歯周病原菌抗原ポリペプチドと接触させることを含む該血液試料中の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法であって、該歯周病原菌抗原ポリペプチドが配列番号:1、3、5、9、15、17、19、23、31、35、37、41、43、47、141、143、145、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを特徴とする該方法;
[13]
ヒト身体から分離した血液試料を歯周病原菌抗原ポリペプチドと接触させることを含む該血液試料中の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法であって、該歯周病原菌抗原ポリペプチドが配列番号:1、3、5、9、15、17、19、31、37、41、43、141、143、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよび配列番号:145のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを特徴とする該方法;
[14]
該ポリペプチドが、配列番号:2、4、6、10、16、18、20、24、32、36、38、42、44、48、142、144、146、148、152、154および156よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである前記[12]または[13]記載の方法;
[15]
配列番号:151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むポルフィロモーナス・ジンジバリス菌株のタイピングキット;
[16]
該ポリペプチドが、配列番号:152、154および156よりなる群から選択される一種または二種以上のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである前記[15]記載のタイピングキット;
[17]
配列番号:151のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
[18]
配列番号:152のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる前記[17]記載のポリペプチド;
[19]
配列番号:153のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
[20]
配列番号:154のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる前記[19]記載のポリペプチド;
[21]
配列番号:155のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
[22]
配列番号:156のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる前記[21]記載のポリペプチド
を提供する。
【0011】
本発明は第1の態様において、特定の抗原タンパク質を含む歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットを提供する。
本発明の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットは、ヒト身体から分離した少量の血液と反応させて血液試料(血漿または血清)の歯周病原菌に対するIgG抗体価を測定することにより対象の歯周病原菌感染を検査するものであり、一般的には、
(1)対象身体に小さな傷をつけて少量の出血を起こすためのランセット
(2)該血液を採取するためのキャピラリー
(3)特定の歯周病原菌抗原タンパク質を含む溶液を入れたボトル
(4)該ボトル内部を圧縮して血液から血漿を分離するためのシリンダー
(5)該ボトルを密閉するキャップ
からなり、キャピラリーで採取した血液をボトル内の溶液と混合することにより、血液試料中に歯周病原菌に対するIgG抗体が存在する場合にはボトル内の抗原タンパク質と抗原抗体反応を生じ、免疫沈降を測定することにより歯周病原菌による感染を検査するものや、
(1)抗原タンパク質を固定化する96穴プレートに固定化し、
(2)血液試料(血漿または血清)を96穴プレートに加えて抗原抗体反応を行わせ、
(3)96穴プレートを洗浄した後に抗ヒトIgG二次抗体を加えて抗原抗体反応を行わせ、
(4)96穴プレートを洗浄した後に、特異的に結合した抗ヒトIgG二次抗体の存在による発色または発光反応を行わせてそのシグナルを検出するELISA法に用いるもの、
(1)抗原タンパク質をフィルターに固定化し(ビオチン化など)、
(2)血液試料(血漿または血清)をフィルターに加えて、フィルター中で抗原抗体反応を行わせ、
(3)フィルターを洗浄した後に抗ヒトIgG二次抗体を加えて抗原抗体反応を行わせ、
(4)フィルターを洗浄した後に、特異的に結合した抗ヒトIgG二次抗体の存在による発色または発光反応を行わせてそのシグナルを検出する抗原固定化フィルター法に用いるものなどが存在する。
【0012】
本発明のこの態様における特徴は検査キットに含まれる歯周病原菌ポルフィロモーナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)抗原タンパク質にあり、歯周病患者が有する歯周病原菌に対する抗体と特異的に反応し、かつ、広範囲の歯周病患者が有する抗体と反応するものである。
すなわち、本発明の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットに含まれる歯周病原菌抗原タンパク質は、配列表の配列番号:1、3、5、9、15、17、19、23、31、35、37、41、43、47、141、143、145、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、これらの抗原タンパク質の一種または二種以上を組み合わせて使用することにより、歯周病患者が有する抗体の抗体価や種類を検査し、歯周病原菌への感染度や感染タイプを検査することができる。また、歯周病原菌の抗原タンパク質および個々の歯周病患者の免疫型(歯周病原菌に対する抗体の種類)には個体差があるが、本発明の抗原タンパク質を組み合わせて使用することにより、広範な免疫型の歯周病患者をカバーすることができる。また、心臓血管または脳血管の疾患のリスクファクターである歯周病原菌SU63株を検知できる。
また、本発明に使用する歯周病原菌抗原タンパク質は、好ましくは、配列表の配列番号:2、4、6、10、16、18、20、24、32、36、38、42、44、48、142、144、146、148、152、154および156よりなる群から選択される一種または二種以上のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである。
さらに、好ましくは、本発明の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットに含まれる歯周病原菌抗原タンパク質は、配列表の配列番号:3、5、15、19、31、41、141、143、145、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、好ましくは、配列番号:4、6、16、20、32、42、142、144、146、148、152、154および156よりなる群から選択される一種または二種以上のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである。
【0013】
本発明は第2の態様において、前記した歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットに使用する改変ポリペプチドを提供する。
本発明者らは抗体価検査キットに好適な歯周病原菌抗原タンパク質を見出すにあたり、一部の抗原タンパク質が、広範囲の歯周病患者の抗体と反応するにもかかわらずプロテアーゼ活性を有するため、その自己消化作用や他の抗原タンパク質の分解作用により検査に支障をきたすことを見出した。そこで、本発明者らは、これらの抗原タンパク質の抗原性を維持しつつ、プロテアーゼ活性を消失させた改変ポリペプチドを遺伝子工学的手法により作製した。
【0014】
すなわち、本発明の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットに使用する改変ポリペプチドは、配列番号:63、65、67、141、143、145または147のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、配列番号:51の野生型ポリペプチドのポジション477または488のシステイン残基を欠失しているか、または他のアミノ酸残基に置換した、好ましくはアラニン残基に置換した改変ポリペプチド(各々、配列番号:63および65)ならびに配列番号:57の野生型ポリペプチドのポジション471のシステイン残基を欠失しているか、または他のアミノ酸残基に置換した、好ましくはアラニン残基に置換した改変ポリペプチド(配列番号:67)である。また、配列番号:141および143のアミノ酸配列は、各々、配列番号:63のアミノ酸配列を有する突然変異導入Lys−ギンギパインのN末端側およびC末端側の約半分のアミノ酸配列であり、配列番号:145および147のアミノ酸配列は、各々、配列番号:67のアミノ酸配列を有する突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのN末端側およびC末端側の約半分のアミノ酸配列である。
【0015】
本発明は第3の態様において、ヒト身体から分離した血液試料を歯周病原菌抗原ポリペプチドと接触させることを含む該血液試料の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法を提供し、方法に用いる血液試料は、好ましくは指尖毛細血管または静脈から採取した血液、血清または血漿であり、歯周病原菌抗原ポリペプチドは配列番号:1、3、5、9、15、17、19、23、31、35、37、41、43、47、141、143、145、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくは、歯周病原菌抗原ポリペプチドは配列番号:1、3、5、9、15、17、19、31、37、41、43、141、143、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよび配列番号:145のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0016】
本発明のこの態様における方法は、第1の態様の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットを用いて好適に実施することができ、好ましくは歯周病原菌 血漿抗体価検査を用いて好適に実施することができる。
さらに、抗体価に基づいて歯周病の進行度(重症度)も検査することができる。
【0017】
本発明は第4の態様において、ポルフィロモーナス・ジンジバリス菌株のタイピングキットを提供し、このキットはヒト身体から分離された血液試料中に存在するポルフィロモーナス・ジンジバリス菌株、特にFDC381株およびSU63株をタイピングし、試料にいずれの菌株が存在するか検査し得るものである。該キットは、配列番号:151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、好ましくは、ポリペプチドは配列番号:152および156よりなる群から選択される一種または二種のポリヌクレオチドによりコードされるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高速かつ高い精度で歯周病を検査することができる歯周病検査キットを提供することができる。また、施術者技術の熟達度に依存することなく客観的に歯周病を検査することができる歯周病検査キットを提供することができる。
また、本発明の歯周病検査キットが普及することにより、全国の歯科医院において統一した方法で歯周病を検査することができ、また得られた測定結果をデータベース化することにより、歯周病の判定基準や治療指針を作成または改訂することができる。
さらに、本発明の歯周病検査キットは、心血管または脳血管疾患のリスクファクターを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】歯周病原菌抗原タンパク質のヒト血清に対する抗原抗体反応を示す図である。A:健常者血清に対する抗原抗体反応、BおよびC:歯周病患者血清に対する抗原抗体反応。
【図2】抗体カラムを用いて粗精製したポルフィロモーナス・ジンジバリスFDC381菌株抗原タンパク質のSDS-PAGE電気泳動図である。レーンA:健常者血清カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンB:患者血清1カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンC:患者血清2から粗精製した抗原タンパク質。
【図3】粗精製したFDC381菌株抗原タンパク質と血清との抗原抗体反応を示す図である。レーンA:健常者血清カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンB:患者血清1カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンC:患者血清2カラムから粗精製した抗原タンパク質。
【図4】抗体カラムを用いて粗精製したポルフィロモーナス・ジンジバリスSU63菌株抗原タンパク質のSDS-PAGE電気泳動図である。レーンA:健常者血清カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンB:患者血清1カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンC:患者血清2カラムから粗精製した抗原タンパク質。
【図5】粗精製したSU63菌株抗原タンパク質と血清との抗原抗体反応を示す図である。レーンA:健常者血清カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンB:患者血清1カラムから粗精製した抗原タンパク質、レーンC:患者血清2カラムから粗精製した抗原タンパク質。
【図6】抗原タンパク質のMascotサーチ結果を示す図である。
【図7】同定した抗原タンパク質の遺伝子情報および選抜結果を示す図である。
【図8】血清と合成抗原タンパク質との抗原抗体反応を示す図である。
【図9】血清と合成抗原タンパク質との抗原抗体反応シグナル値を示す図である。
【図10】合成抗原タンパク質の安定性を示すSDS-PAGE電気泳動図である。
【図11】健常者血清と合成抗原タンパク質との抗原抗体反応シグナル値を示す図である。
【図12】種々の患者血清と抗原タンパク質との抗原抗体反応シグナル値を示す図である。
【図13】種々の患者血清と抗原タンパク質との抗原抗体反応を要約した図である。
【図14】改変ポリペプチドの安定性および抗原性を示す図である。
【図15】血清と合成抗原タンパク質との抗原抗体反応を示す図である。
【図16】血清と合成抗原タンパク質との抗原抗体反応シグナル値を示す図である。
【図17】種々の血清と抗原タンパク質との抗原抗体反応を要約した図である。
【図18】健常者および患者血清と抗原タンパク質との抗原抗体反応シグナル平均値およびS/N値を示す図である。
【図19】種々の抗原タンパク質に対する各血清のシグナル値について求めたROC曲線およびAUC値を示す図である。
【図20】血清と改変抗原タンパク質との抗原抗体反応を示す図である。
【図21】血清と種々の抗原タンパク質との抗原抗体反応を示す図である。
【図22】血清と合成抗原タンパク質との抗原抗体反応シグナル値を示す図である。
【図23】種々のカットオフ値に基づいて求められた種々の抗原タンパク質の感度および特異度を示す図である。
【図24】種々の抗原タンパク質に対する各血清のシグナル値について求めたROC曲線およびAUC値を示す図である。
【図25】血清と種々の抗原タンパク質(SU63株)との抗原抗体反応を示す図である。
【図26】血清と抗原タンパク質(SU63株)との抗原抗体反応を要約した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】
本実施例全体をとおして、歯周病原菌としてポルフィロモーナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)FDC381菌株およびSU63菌株を用いた。FDC381菌株は住商ファーマインターナショナル(株)から販売されており、SU63菌株はII型またはIV型線毛保有株として入手可能である。
【0022】
抗体カラムの作製
ヒトが歯周病原菌に感染した際、ヒト身体には免疫反応により歯周病原菌の抗原に対する多種の抗体が産生される。ここで産生される抗体が認識する抗原は、個体の免疫反応の差異によって異なる。
そのため、歯周病原菌の抗原調製液の組成のうち、どのような抗原が抗体のターゲットとなっているかを調べ、その結果に基づいてより多くの抗原を精製するための血清を選抜した。
【0023】
抗原タンパク質の調製
ポルフィロモーナス・ジンジバリス菌(FDC381株およびSU63株)を超音波破砕し、超遠心した上清画分を回収した抗原調製液(株式会社 特殊免疫研究所、200μgタンパク質相当量)にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて270μlとした。これに、トリクロロ酢酸を加えて氷中で静置後、低温で遠心を行って上清を除去した。その沈殿に氷冷エタノールを加えて洗浄し、再度低温で遠心を行った後、上清を除去した。さらに、上記の操作を2回行った。風乾後、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.06%加えたPBS 120μlを加えて沈殿を溶解し、各々の菌株ごとに抗原タンパク質溶液を調製した。
【0024】
抗原タンパク質の定量
調製したスタンダード(濃度;1000、500、250、125、62.5または31.25ng/μl)25μl、PBSで希釈した抗原タンパク質溶液25μl、対照としてPBS 25μlを96穴プレートのウェルに各々加え、ついで、タンパク質ワーキングソリューション(Thermo scientific,Reagent A:B=50:1の用量で混合)200μlを各々のウェルに加えた。ついで、反応液をシェーカーで攪拌し、恒温恒湿機内、37℃にて30分間インキュベートした後にプレートリーダー(Intermed,NJ2000)を用いて577nmの吸光度を測定して、収集した抗原タンパク質を定量した。
【0025】
SDS-PAGE電気泳動
定量したジンジバリス菌(FDC381菌株およびSU63菌株)抗原タンパク質について、各々試料バッファー(Invitrogen)を用いてタンパク質濃度400ng/μlに調製した。調製試料を熱変性後、SDS-PAGE電気泳動に付した(タンパク質溶液5μl)。
【0026】
SDS-PAGE電気泳動後のゲルについて、iBlotドライブロッティングシステム(Invitrogen)を用いて、ポリフッ化ビニリデン膜(PVDF膜)にブロッティングを行った。
PVDF膜に転写した後、泳動したレイアウト(分子量マーカー、FDC381株、SU63株)を1セットとして切り出した。切り出した1セットのスリットについて、ポンソー染色を行い、タンパク質のブロッティングを確認した。残りのスリットについては、ファルコンチューブに入れ、ブロッキング溶液(スキムミルク3%およびTween20 0.1%を加えたトリス緩衝生理食塩水(以下、「TBS」という))に浸漬した。
【0027】
血清を用いた抗原抗体反応
ブロッキング後のスリットについて、ブロッキング溶液を除去した後、血清反応液(スキムミルク3%を添加したTBS 20mlに健常者または歯周病患者から採取した血清8μlを加えた溶液)を加え、室温にて振盪した。ついで、Tween20 0.05%を加えたTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(スキムミルク3%を加えたTBSに抗ヒト二次抗体(CHEMICON)を加えた溶液)を加え、室温で振盪した。ついで、Tween20 0.05%を加えたTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、スリットを0.61mg/mLの4-メトキシ-1-ナフトールおよび0.018%の過酸化水素水を含むTBSに浸漬して発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。
【0028】
抗原タンパク質とヒト血清との反応結果を図1に示す。
健常者血清との抗原抗体反応では、ほとんどシグナルが観察されなかった(図1A:健常者対象血清)。
一方、歯周病患者血清との抗原抗体反応では、明瞭なシグナルが観察され、そのパターンは多様であった(図1Bおよび図1C)。また、患者血清との抗原抗体反応において観察された多様なシグナルは、大きく2つに分けることができた。すなわち、明瞭なバンドを示すシグナル(図1B)および全体的に広がるスメアを示すシグナル(図1C)に分けられた。多様な抗原抗体反応パターンは、これらのサイズの違いや菌株への特異性の違いにより形成されていた。
【0029】
そして、下記に示すサイズのシグナルが多くの患者の血清に対して特異的に強く観察された。
46kDa(FDC381菌株およびSU63菌株の抗原タンパク質)
25-37kDa(FDC381菌株およびSU63菌株の抗原タンパク質)
100-110kDa(FDC381菌株およびSU63菌株の抗原タンパク質)
57kDa(SU63菌株の抗原タンパク質)
150-250kDa(SU63菌株の抗原タンパク質)
【0030】
歯周病患者血清を用いた抗原抗体反応の結果を見ると、大きく2種類のシグナルパターン(明瞭なバンドおよび全体に広がるスメア)が観察され、それらの組合せ(サイズ・菌株)により多様な抗原抗体反応パターンが形成されていた。すなわち、ジンジバリス菌感染者が産生する抗体は様々であり、ある血清では抗原タンパク質として認識されている一方で、他の血清ではまったく認識されていない場合があることが示された。このことは、様々な歯周病患者血清に含まれる抗体が多様なタンパク質を抗原としているという報告と矛盾しない。そのため、ジンジバリス菌の感染を抗体価で測定するためには、多様な検査抗原タンパク質が必要となることが示された。
【0031】
また、FDC381菌株とSU63菌株に共通する抗原タンパク質を検査に用いた場合には、菌株の同定までは困難と考えられる。一方、菌株に特異的な抗原タンパク質のみを検査に用いれば、その検査で陽性が示される場合、その菌株による感染が疑われる。
患者血清において観察された抗原抗体反応パターンは多様であったが、初診患者(FV)とメインテナンス患者(SPT)のパターンに顕著な違いは観察されなかった。このことから、患者血清において強いシグナルを示す抗原タンパク質を同定し、それを検査に使用する抗原の候補とすることとした。
【0032】
多くの患者血清に対して強いシグナルを示したバンドとして、結果に示したとおり、46kDa、25-37kDa、100-110kDa、57kDaおよび150-250kDaの抗原タンパク質群が挙げられる。そこで、種々な患者の血清に対するこれらのタンパク質群の抗原性の有無を調べた。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から明らかなように、これら5種の抗原タンパク質群の組合せを用いることにより、すべての患者血清中のジンジバリス菌に対する抗体の有無を確認することができ、広範な歯周病患者の検査をカバーすることができることが示された。
【0035】
イムノアフィニティカラム作製に使用する血清の選抜
つぎに、これら5種類の抗原タンパク質群をイムノアフィニティカラムを用いて精製するために、カラム作製に使用する血清を選抜した。その際、患者血清の抗原抗体反応パターンおよび血漿抗体価の測定値を考慮し、2種類の患者血清プールを抗体カラム作製に用いることとした。すなわち、標的抗原に明瞭なバンドを示し、血漿抗体価の高い、No.7350、No.6921およびNo.6870の血清プールを46kDa(FDC381菌株およびSU63菌株)および57kDa(SU63菌株)の抗原タンパク質群を精製するための抗体カラム作製に使用した。一方、全体的にスメアなバンドを示すが標的抗原に強いシグナルを示し、血漿抗体価の高い、No.7107、No.7523およびNo.6980の血清プールを25-37kDa(FDC381菌株およびSU63菌株)、100-110kDa(FDC381菌株およびSU63菌株)および150-250kDa(SU63菌株)の抗原タンパク質群を精製するための抗体カラム作製に使用した。なお、比較対象として、健常者のNAI、TOMおよびKOBの血清プールを健常者の抗原タンパク質を精製するための抗体カラム作製に使用した。
【0036】
一方、血漿抗体価検査に用いる抗原タンパク質として、5種の抗原タンパク質群(46kDa、25-37kDa、100-110kDa、57kDaおよび150-250kDa)を選択した。これらの5種の抗原タンパク質群をイムノアフィニティカラムを用いて精製するために、3種類のカラムを作製した。すなわち、カラムA:健常者血清カラム(NAI、TOMおよびKOB血清リガンド)、カラムB:明瞭なバンド精製カラム(No.7350、No.6921およびNo.6870血清リガンド)およびカラムC:スメアなバンド精製カラム(No.7107、No.7523およびNo.6980血清リガンド)を作製した。
【0037】
イムノアフィニティカラムを用いた抗原タンパク質の精製
選択した抗原タンパク質を同定するためには、抗原調製液から抗原タンパク質を精製する必要がある。そこで、選抜した血清を用いて抗体カラムを作製し、抗原タンパク質を精製した。
【0038】
イムノアフィニティカラムは、岡田雅人および宮崎香著,「タンパク質実験ノート(下巻)」,羊土社,pp.131−136(1990)および高津聖志ら著,「タンパク質研究のための抗体実験マニュアル」,羊土社,pp.53−61(2005)に基づいて以下の手法により作製した。
歯周病患者血清または健常者血清1.5ml(各血清500μl×3検体)に、抗体結合バッファー(50mM 酒石酸緩衝液、3M NaCl、pH9.0)2.5ml、塩化ナトリウム0.26gを加えて混合し、抗体反応液を調製した。
【0039】
一方、プロテインGセファロース(GE Healthcare)をエコノパックカラム(BIO-RAD)に加えて超純水で洗浄し、さらに、抗体結合バッファーを用いて洗浄した。そのカラムに調製した抗体反応液を全量加え、カラムを密閉した後に、ローテーターを用いて攪拌した。攪拌後、抗体反応液を除去した後に、抗体結合バッファー(50mM 酒石酸緩衝液、3M NaCl、pH9.0)でカラムを洗浄した。
クロスリンカーBS3(PIERCE)100mgを6.8mlのクロスリンカー溶液(0.2M トリエタノールアミン-HCl、pH8.0)に溶解し、3本のカラム(健常者血清カラムおよび2本の患者血清カラム)に分注後、室温でローテーターを用いて攪拌した。
【0040】
カラムからクロスリンカー溶液を除去した後、ブロッキング溶液(0.2M エタノールアミン-HCl、pH8.0)で洗浄した。カラムを密閉した後にブロッキング溶液を加え、ローテーターを用いて室温で攪拌した。その後、ブロッキング溶液を除去し、カラムを溶出溶液(0.1M グリシン-HCl、pH2.8)、ついで50mM Tris-HCl(pH7.5)で洗浄した後に50mM Tris-HCl(pH7.5)を加えて保存した(イムノアフィニティカラムA、BおよびC)。
【0041】
抗原タンパク質試料の調製
ジンジバリス菌(FDC381株およびSU63株)の抗原調製液(特殊免疫研究所、200μgタンパク質相当量)にPBSを加えて270μlに調製した。それにトリクロロ酢酸を加え、氷中で静置後、低温で遠心を行い、上清を除去した。さらに、氷冷エタノールを加え、沈殿を洗浄後、再度低温で遠心を行い、上清を除去した。上記の操作を3回行った。
風乾後、SDS 0.06%を添加したPBS 200μlを加えて沈殿を溶解した後に、それぞれの菌株ごとのタンパク質溶液をまとめた。まとめたタンパク質溶液と等量のPBS(0.01% Brij-35および0.2% CHAPS含有)を加えて沈殿を溶解させて、各々の菌株ごとに抗原タンパク質試料を調製した。
【0042】
抗原タンパク質定量
調製したスタンダード(濃度;1000、500、250、125、62.5および31.25ng/μl)25μl、PBSで希釈した抗原タンパク質試料25μl、コントロールとしてPBS 25μlを96穴プレートのウェルに各々加え、ついで、タンパク質ワーキングソリューション(Thermo scientific,Reagent A:B=50:1の用量で混合)200μlを各々のウェルに加えた。ついで、反応液をシェーカーで攪拌し、恒温恒湿機内、37℃にて30分間インキュベートした後にプレートリーダー(Intermed,NJ2000)を用いて577nmの吸光度を測定して、試料中の抗原タンパク質を定量した。
【0043】
イムノアフィニティカラムを用いた抗原タンパク質の精製
PBSで平衡化したイムノアフィニティカラム(A、BおよびC)に、それぞれ約133μg/1.5mlの抗原タンパク質試料をアプライした(試料のバッファー組成;0.03% SDS、0.005% Brij-35および0.2% CHAPS(同仁化学研究所)を含有するPBS)。ローテーターを用いて室温で攪拌した後、フロースルーを回収し、試料として保存した。また、ウォッシュバッファー(0.005% Brij-35、0.1% CHAPS、20mM Tris-HClおよび500mM NaCl、pH7.5)を加え、ローテーターを用いて室温で攪拌してカラムを洗浄した。攪拌後、フロースルーを回収し、試料として保存した。この操作を3回行った。
超純水でカラムを洗浄後、溶出バッファー(0.05% トリフルオロ酢酸)5mlを2回加え、溶出タンパク質溶液を回収して凍結乾燥した。
【0044】
SDS-PAGE電気泳動
抗原タンパク質試料、各過程のフロースルーおよび溶出タンパク質の一部を分取し、終濃度5%のメルカプトエタノールを含む試料バッファーとなるように調製した。
調製した試料を熱変性後、SDS-PAGE電気泳動に付した(CBB染色用10μl、抗原抗体反応用5μl)。
【0045】
SDS-PAGE電気泳動後のゲルについて、蒸留水で洗浄した後にCBB染色液に浸漬し、室温で攪拌した。その後、バンドが明瞭に観察できるまで蒸留水で洗浄した。
また、SDS-PAGE電気泳動後のゲルについて、iBlotドライブロッティングシステム(Invitrogen)を用いて、PVDF膜にブロッティングを行った。
PVDF膜に転写した後、レイアウトを1セットとして切り出し、ブロッキング溶液(スキムミルク3%、Tween20 0.1%を加えたTBS)に浸漬した。
【0046】
血清を用いた抗原抗体反応
ブロッキング後のスリットについて、ブロッキング溶液を除去した後、血清反応液(3%スキムミルクを含むTBS 20mlに血清8μlを加えた溶液)を加え、室温で振盪した。加えた血清のセットを以下に記載する。
セットA(健常者血清):NAI、TOM、KOB
セットB(患者血清1):No.7350、No.6921
セットC(患者血清2):No.7107、No.7523、No.6980
スリットを0.05% Tween20を含むTBSで洗浄し、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヒツジ抗ヒト二次抗体反応液(3%スキムミルクを含むTBSにヒト二次抗体(CHEMICON)を加えた溶液)を加え、室温で攪拌した。
ついで、スリットを0.05% Tween20を含むTBSで洗浄し、スリットを発色液(0.61mg/mlの4-メトキシ-1-ナフトールおよび0.018%の過酸化水素水を含むTBS)に浸し、発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。
【0047】
FDC381菌株抗原タンパク質の精製
カラムより精製した抗原タンパク質のSDS-PAGE電気泳動図を図2に示す。
抗原タンパク質試料をそれぞれのイムノアフィニティカラムに供した後のフロースルーを確認したところ、健常者血清カラムと患者血清カラムの間に大きな違いは観察できなかった。しかし、精製されたタンパク質を観察すると、健常者血清カラムより精製されたものと比べて(図2、レーンA)明らかに患者血清カラムから精製された方がCBB染色のシグナルが強かった(図2、レーンBおよびC)。特に50kDa近辺のバンドは、患者血清カラムにおいて顕著に強いシグナルを示した。また、25kDaより少し大きいサイズのバンドも患者血清において強いシグナルを示した(図2、レーンBおよびC)。
【0048】
SU63菌株抗原タンパク質の精製
カラムより精製した抗原タンパク質のSDS-PAGE電気泳動図を図4に示す。
抗原タンパク質試料をそれぞれのイムノアフィニティカラムに供した後の精製されたタンパク質を観察すると、FDC381菌株の場合ほど明確ではないが、健常者血清カラムより精製された方と比べて(図4、レーンA)明らかに患者血清カラムから精製された抗原タンパク質のCBB染色シグナルが強かった(図4、レーンBおよびC)。特に顕著な差は、25kDaより少し大きいサイズのバンドと、50kDaより少し大きいサイズのバンドにおいて観察された。FDC381菌株の精製において観察された強いシグナルは、SU63菌株の精製においても強いシグナルを示す傾向にあった(図4)。
【0049】
抗原タンパク質の抗原抗体反応
SDS-PAGE電気泳動に付したFDC381菌株およびSU63菌株の抗原タンパク質の抗原抗体反応の結果を各々図3および図5に示す。
血清セットA(健常者血清)は、健常者血清カラムおよび患者血清カラムのいずれから溶出した抗原タンパク質にも、高分子量のタンパク質には反応したが150kDa以下のタンパク質にはほとんど反応しなかった(図3および図5)。
一方、血清セットB(患者血清1;カラムBの作製に使用した血清群)は、患者血清カラムから溶出した抗原タンパク質と強く反応した(図3および図5、「患者血清1」のレーンBおよびC)。なお、患者血清カラム(カラムB)から溶出したタンパク質の方が、強いシグナルを観察した。
血清セットC(患者血清2;カラムCの作製に使用した血清群)も、血清セットBと同様に患者血清カラムから溶出したタンパク質と強く反応した(図3および図5、「患者血清2」のレーンBおよびC)。一方、血清セットCは健常者血清カラムから溶出したタンパク質とも比較的反応した(図3および5、「患者血清2」のレーンA)。なお、患者血清カラム(カラムC)から溶出したタンパク質の方が、強いシグナルが観察された。
【0050】
イムノアフィニティカラムから溶出されたタンパク質を観察すると、患者血清カラムから溶出したタンパク質は、健常者血清カラムから溶出したタンパク質と比べて明らかに多かった。これは、患者血清カラムのプロテインGセファロースには、ジンジバリス菌に対する抗体が多く結合しており、それを用いた精製過程でジンジバリス菌抗原タンパク質とより多く結合し、精製できるためと考えられる。
このことから、健常者血清カラムと患者血清カラムを用いて精製したタンパク質を比較することにより、抗原タンパク質の候補を選抜した。
【0051】
前記の精製した抗原タンパク質を比較した結果、表1に候補として示した共通する抗原(46kDa、25-37kDaおよび100-110kDa)を含む抗原タンパク質が、患者血清カラムにより精製したタンパク質において健常者血清カラムにより精製したタンパク質よりも多く含まれることがわかった。したがって、精製されたタンパク質全体の構成を明らかにして、両者を比較することにより検査キットに用いることが可能な抗原タンパク質の候補として選択することが可能であることから、各々の精製タンパク質を構成する全てのタンパク質を質量分析に付して同定した。
【0052】
質量分析
前記と同様にして粗精製した抗原タンパク質をSDS-PAGE電気泳動に付して分離し、CBB染色した溶出タンパク質(カラムA・B・C)のバンドを、それぞれ3レーン分まとめて切り出した。切り出したゲルをファルコンチューブに入れ、超純水200μlを加えて以下の質量分析に付した。
【0053】
質量分析用試料の調製
調製した試料を、下記のようにProGest(Genomic Solutions)workstationによりタンパク質消化し、60℃でジチオトレイトールによる還元を行った後、室温まで冷やした。ついで、ヨードアセトアミドを用いてアルキル化した。トリプシンの存在下、37℃にて4時間インキュベートし、ギ酸を加えて反応を停止させた。反応停止後の上清を試料として解析に使用した。
【0054】
LC/MS/MS
調製した試料について、ThermoFisher LTQ Orbitrap XLを用いてナノLC/MS/MS解析を行った。
加水分解産物30μlを、5mm×75μm ID C12カラム(Jupiter Proteo,Phenomenex)ventedカラムに適用した。グラディエント溶出は300nl/minで、15cm×75μm ID C12カラム上で行った。
MS/MSについては、data-dependent mode,six most abundant ionsにより操作されるマススペクトロメーターにより解析した。Orbitrap MSスキャンは60000 FWHM解像度で行った。
MS/MSデータはMascot(www.matrixscience.com)のローカルコピーを用いてサーチした。
LC/MS/MSサーチのパラメーターは下記のように設定した。
検索タイプ:MS/MSイオンサーチ
分類:バクテリア全般、あるいは全生物種
酵素:トリプシン
既定修飾:カルバミドメチル
可変修飾:酸化、アセチル化、ピログルタミル化、脱アミド化
マスvalue:モノイソトピック
タンパク質質量:制限しない
ペプチド質量許容範囲:±10ppm(Orbitrap)
フラグメント質量許容範囲:±0.5ダルトン(LTQ)
誤切断の最大値:2
【0055】
SCAFFOLD
試料は、Mascotにより作成されたDATファイルを用いて、Scaffold algorithm(www.proteomesoftware.com)内で加工した。LTQ Orbitrap XLデータパラメーターは、2ペプチド以上マッチするタンパク質を同定した。
結果を図6に示す。
【0056】
FDC381菌株
解析した3試料(A〜C:A:健常者血清カラム、B:患者血清カラム1、C:患者血清カラム2)について、バクテリア全般を対象にMascotサーチを行った結果、合計28種のタンパク質が同定された(図6左)。同定されたタンパク質のうち、No.9、17および18についてはIgG抗体の一部であった。また、28種のうち15種のタンパク質が、患者血清カラム(BおよびC)より精製されたタンパク質群にのみ同定された。一方、その他の10種のタンパク質については、健常者血清カラム(A)より精製されたタンパク質群においても観察されたが、患者血清カラム(BおよびC)より精製されたタンパク質群において、スペクトルカウント数が高かった。
【0057】
SU63株
解析した3つの試料(A〜C)について、バクテリア全般を対象にMascotサーチを行った結果、合計28種のタンパク質が同定された(図6右)。同定されたタンパク質のうち、No.8および12についてはIgG抗体の一部であった。また、28種のうち20種のタンパク質が、患者血清カラム(BおよびC)より精製されたタンパク質群にのみ同定された。一方、5種のタンパク質については、健常者血清カラム(A)精製タンパク質群においても観察されたが、患者血清カラム(BおよびC)精製タンパク質群において、スペクトルカウント数が高かった。また、No.22については、健常者血清カラム(A)においてのみ同定された。
【0058】
今回得られた結果をみると、FDC381菌株およびSU63菌株とも、健常者血清カラムより溶出したタンパク質群よりも患者血清カラムより溶出したタンパク質群の方が、種類・量ともに明らかに多かった。このことは、イムノアフィニティカラム法により、患者血清が有する抗体に保持される抗原タンパク質が精製されたことを示唆している。同定されたタンパク質の中には、既に抗原として報告されているタンパク質が含まれていた。このことから、今回イムノアフィニティカラム法を用いた精製で得られたタンパク質についても、抗原タンパク質である可能性が高いと考えられた。
【0059】
合成タンパク質の選択
2回の抗原タンパク質同定において観察されたタンパク質を整理し、実際に合成するタンパク質を選抜した。
同定されたタンパク質について、アクセションNo.を基に両株で同定されたタンパク質については同じ行として記し、遺伝子情報を調べて機能が既知か未知か、抗原性が既知か未知かを調べて分類した(図7)。
患者に特異的かどうかについて、健常者カラムより同定されたタンパク質の方が明らかに高いスペクトルカウントを示す場合を×、健常者カラムと患者カラムより同定されたタンパク質のスペクトルカウントがあまり変わらないもの△、明らかに患者カラムより同定されたタンパク質のスペクトルカウントが高いものを○とした(1次選抜)。また、ジンジバリス菌に対して特異的かどうか調べるため、塩基配列を基に相同性の高いタンパク質を調べた。他の菌種と相同性が若干あるものを△、他の菌種と相同性が高いものを×、相同性が低くジンジバリス菌に特異的なタンパク質を○とした(2次選抜)。
【0060】
2回の質量分析により同定されたタンパク質を整理した結果、合計37種のタンパク質を抗原タンパク質候補として同定した。アミノ酸配列の重複、1次選抜および2次選抜の結果、全ての要件を満足するタンパク質はNo.3、4、6、9、10、15、16、19、24、26、37、32および37の合計13種のタンパク質であった。
【0061】
1次選抜および2次選抜により、患者特異的であってジンジバリス菌特異的なタンパク質を選抜することも考えたが、この段階で候補タンパク質を選抜することは、使用可能な抗原タンパク質を失う可能性がある。例えば、患者に非特異的と選抜されないタンパク質であっても、健常者に対する抗体価よりも患者に対する抗体価が充分高ければ、検査の抗原として利用可能なタンパク質である。そのため、実際に合成したタンパク質において抗原性を評価する方が抗原タンパク質候補のもれをなくすことができると考えた。
【0062】
そこで、質量分析により同定した合計37種のタンパク質からアミノ酸配列が重複していたNo.1、17、18、25、30および31を除く合計31種のタンパク質を候補としてタンパク質合成した。
【0063】
タンパク質合成および合成タンパク質の抗原性評価
候補とした31種のタンパク質が実際に抗原性を示すかを評価するため、タンパク質合成を行い、つづいて、合成したタンパク質について健常者血清および患者血清を用いて抗原性を評価した。
【0064】
各々の目的タンパク質の遺伝子情報をデータベースより入手し(抗原タンパク質情報)、配列表の配列番号:71から132に示す合成したプライマー対を用いてジンジバリス菌株のゲノムDNAより目的遺伝子を増幅し、ゲートウェイシステム(Invitrogen社)を用いてプラスミドDNA(pDONRベクター)にクローニングした。
【0065】
つづいて、遺伝子をクローニングしたpDONRベクターDNAを制限酵素処理して、同制限酵素で処理したタンパク質発現ベクター(セルフリーサイエンス社:pEuベクター)にライゲーションした。ライゲーション産物をトランスフォーメーションにより大腸菌(E.coli)に導入した。ついで、遺伝子が導入されたクローンを選抜した。
選抜したクローンよりプラスミドDNAを回収し、シークエンス解析を行った。シークエンス解析の結果から重大な変異が認められなかったクローンについて、プラスミドを大量調製して、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を合成し、GSTタグを用いて精製した。
【0066】
31種のすべての遺伝子についてイン・ビトロ(in vitro)タンパク質合成を目指したが、No.33はタンパク質発現ベクターへのクローニングができず、No.5についてはタンパク質合成ができないあるいは非常に合成量が少ない結果となったため、残りの29種のタンパク質について抗原性を評価した。合成タンパク質についての抗原性を評価するためにドットブロット解析を行った。
【0067】
ドットブロット
29種の抗原タンパク質をドットブロットに付した。抗原タンパク質の量は50ngに調製し、各々の抗原タンパク質についてドットブロットを4セット作成した。ただし、No.32および35のタンパク質は定量できなかったため、合成タンパク質溶液4μlをドットブロットに付した。ドットブロットした後、ブロッキング溶液(スキムミルク(3%)およびTween20(0.1%)を含むTBS溶液)に浸漬した。
一次抗体として、健常者対象NAI、TOMおよびKOBからの血清を3μlずつ混合した健常者血清プールのうちの8μl、歯周病患者No.7350および6921からの血清を4μlずつ混合した患者血清プール1 8μl、および歯周病患者No.7107、7523および6980からの血清を3μlずつ混合した患者血清プール2のうちの8μlを3%のスキムミルクを含むTBS 20mlにそれぞれ加え、この3種類の抗体溶液にドットブロットのスリットを加え、抗原抗体反応を行わせた。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(スキムミルク(3%)を含むTBSに抗ヒト二次抗体(CHEMICON)を添付した溶液)を加え、室温で振とうした。ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、スリットを4-メトキシ-1-ナフトール(0.61mg/ml)および過酸化水素(0.018%)を含むTBSに浸漬して発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。
ドットブロットに付した合成タンパク質のレイアウトおよびドットブロット解析の結果を図8に示す。
【0068】
ドットブロット解析の結果、健常者血清プールとの反応においてはNo.2、6、10、26、29、32および35のスポットの発色が認められた。一方、患者血清プール1との反応においてはNo.2、3、4、6、9、10、11、13、19、21、22、24、26、28、32および35のスポットの発色が認められ、患者血清プール2との反応においてはNo.2、3、4、6、10、11、19、24、26、32および35のスポットの発色が認められた。
目視での確認では、いずれのスポットも健常者血清プールにおける発色よりも患者血清プールにおける発色の方が高かった。また、患者血清プールでは、健常者血清プールでは観察されないスポットの発色を確認できた。
【0069】
シグナル値の検出
つぎに、以下の方法でドットブロット解析の結果を定量化した。
1.ImageQuant LAS4000(GEヘルスケア社)を用いて、メンブレンの画像を撮影した。フォーカスを合わせた後、下記の条件で画像を撮影した。
・画像取り込み条件
Exposure Type:Precision
Exposure Time:1/100 Sec
Sensitivity/Resolution:Standard
2.ImageQuant TL(GEヘルスケア社)を用いて、撮影画像のドットのシグナル値を求めた。
・シグナル値の取り込み条件
Array analysisモードにおいて、ドットのスポットサイズおよび配置に併せて、シグナル値を数値化した。なお、バックグラウンド設定はスポットに近接する一部を設定した。
3.数値化の後、各スポットのシグナル値を表として整理した。また、抗原タンパク質を載せていないスポット(ブランク)のシグナル値のうち最も高いシグナル値を示したシグナル値を基準として、それ以下のシグナル値についてはノイズとして処理した。定量化したシグナル値を図9に示す。
【0070】
スポットのシグナルを数値化した結果、目視で確認した結果とほとんど同様の結果が得られた。ただし、患者血清プール1におけるNo.28はノイズと判断されるほどシグナル値が低かった。一方、No.34については目視ではほとんどスポットを確認できなかったにもかかわらず、シグナル値が検出された。また、患者血清プール2におけるNo.19もノイズと判断されるほどシグナル値が低かった。
【0071】
これらの結果を総合すると、合成した29種のタンパク質のうち、健常者血清と反応せず患者血清とのみ反応したタンパク質は、No.3、4、9、11、13、19、21、22、24および28の10種のタンパク質であった。一方、健常者血清よりも患者血清において発色が高かったタンパク質は、No.2、3、4、6、9、10、11、13、19、21、22、24、26、28、32および35の16種のタンパク質であった。
これらの結果から、No.2、3、4、6、9、10、11、13、19、21、22、24、26、28、32および35のタンパク質が、本発明の抗体価検査キットに使用する抗原タンパク質として適当であることが示された。
【0072】
合成タンパク質の安定性
合成した抗原タンパク質について、これらのタンパク質が抗体価検査キットに実際に使用し得るかを確認するため、SDS-PAGEを行って合成タンパク質の状態を調べた。
50ng/10μl試料バッファー(+DTT)となるように試料を調製した。また、No.5、32および35のタンパク質は定量値がないため、合成タンパク質溶液を4μlと試料バッファー(+DTT)を6μlを混合して試料とした。
調製した試料を熱変性し、全量10μlの試料をアプライしてSDS-PAGE電気泳動を行った。つづいて、泳動後のゲルについて、蒸留水で洗浄した後にCBB染色してバンドが明瞭に観察できるまで蒸留水で洗浄した。その結果を図10に示す。
【0073】
No.5、32および35以外のタンパク質については、目的のサイズのタンパク質が合成されていることが確認された。一方、No.5のタンパク質についてはバンドがまったく観察されず、No.32および35のタンパク質については複数のバンドが観察された。
No.5については、メッセンジャーRNAの合成までは確認できたが、タンパク質の合成は確認できなかった。したがって、このタンパク質が非常に不安定なタンパク質であるか、合成自体が困難なタンパク質であることが予想された。
一方、No.32および35のタンパク質はプロテアーゼであることが知られており、合成タンパク質においてもプロテアーゼ活性を有するために自己消化すると考えられた。このように一部分の抗原タンパク質がプロテアーゼ活性を有する場合は、本発明の抗体価検査キットに含まれる他の抗原タンパク質の分解を生じ、タンパク質の安定性が悪く、検査に用いることができないと考えられる。
【0074】
したがって、No.5のタンパク質は合成困難なため使用できず、また、No.32および35のタンパク質はプロテアーゼ活性を有するため、そのままでは利用できないことが判明した。
【0075】
患者血清との抗原抗体反応
表1からもわかるように、個々の血清中の抗体が抗原とするタンパク質はそれぞれ異なることが考えられる。そこで、多数の患者血清と反応性の高い抗原タンパク質を選抜するため、抗原性が観察されたタンパク質について様々な患者血清との抗原抗体反応を調べた。
この実験では、健常者血清よりも患者血清において発色が高かった16種の抗原タンパク質をドットブロットに付した。ドットブロットに付したタンパク質量は50ngとした。また、No.32および35についてはタンパク質濃度が不明のため、4μlの合成タンパク質溶液をアプライした。また、それぞれの抗原タンパク質について個々の健常者血清と反応させて基準値を設定した。
【0076】
シグナル値の検出
1.ImageQuant LAS4000(GEヘルスケア社)を用いて、メンブレンの画像を撮影した。フォーカスを合わせた後、下記の条件で画像を撮影した。
・画像取り込み条件
Exposure Type:Precision
Exposure Time:1/100 Sec
Sensitivity/Resolution:Standard
2.つぎに、ImageQuant TL(GEヘルスケア社)を用いて、撮影画像のドットのシグナル値を求めた。
・シグナル値の取り込み条件
Array analysisモードにおいて、ドットのスポットサイズを合わせ、配置については2列×8行(2×8)に対して3列×8行のスポット配置として、シグナル値を数値化した。
3.数値化の後、それぞれのスポットのシグナル値より、真ん中の1列をスポットに近接するバックグラウンドとして、その差を各スポットのシグナル値として表に整理した。なお、目視にて確認できないスポットのシグナル値は、検出不可として処理した。
4.健常者基準として、NAI、TOMおよびKOBのシグナル値を求めた。このうち、目視にて確認できたスポットのシグナル値を比較して、3検体の中で最も高いシグナル値を健常者血清基準とした(図11)。なお、どの検体においても発色の確認できなかったスポットについては、基準値を0とした。そのシグナル値よりも高いシグナル値を示したスポットに○印をつけて整理した(図12および図13)。
【0077】
その結果、健常者血清と比較して、明らかに発色スポット数が多く、また、そのシグナル値も健常者血清における発色と比べて高いことが確認できた。予想していた通り、患者によっては抗原とならないタンパク質が存在した。
ここで、全ての患者抗体との反応が認められた抗原タンパク質No.32または35を用いることにより全ての患者の歯周病を判定し得ることが示されたが、変化する歯周病原菌の抗原性と検査対象の多様な免疫反応性を考慮して、選択したタンパク質の二種以上の組合せを適宜選択して用いることにより、広範囲にわたる歯周病原菌および検査対象における歯周病の検査が可能になる。
また、発色シグナル値は患者の血漿または血清中の歯周病原菌タンパク質に対する抗体価を反映する。したがって、得られたシグナル値に基づいて歯周病の進行度(重症度)も検査できるが、この際にも選択したタンパク質の一種または二種以上を適宜選択して用いることにより、広範囲にわたる歯周病原菌および検査対象による歯周病進行度の検査が可能になる。
【0078】
健常者血清と患者血清のシグナル値の比較
健常者基準と比較して、患者血清に対してシグナル値が高かった抗原タンパク質について整理したところ、No.32および35の抗原タンパク質は調査した23名すべての血清に対して基準よりも高いシグナル値を示し、本発明の抗体価検査キットに使用する抗原タンパク質として特に適していることが判明した(図12および図13)。また、No.2、3および26の抗原タンパク質は、各々、調査した23名のうち19名、16名および12名の血清に対して基準よりも高いシグナル値を示し、検査対象のカバー率が比較的高いことが判明した(図12および図13)。
【0079】
このように、No.32および35の抗原タンパク質はシグナル値およびカバー率ともにが高く、抗体価検査キットに使用する抗原として適していることが判明したが、プロテアーゼ活性が伴うためそのままでは検査抗原として利用できない。
一方、No.32および35以外のタンパク質を抗体価検査キットの抗原として使用するためには、複数種の抗原タンパク質を組合せることが必要となる。例えば、No.2と3との抗原タンパク質を組合せることにより、カバー率を100%まで上げることが可能であることが確認できた。
【0080】
前記したように、No.32および35の抗原タンパク質は優れた特性を有するもののプロテアーゼであるため、検査抗原として使用することができない。
そのため、これらの抗原タンパク質の抗原性を残した状態で、プロテアーゼ活性を消失させた改変ポリペプチドを作製した。
【0081】
Genetyxの相同性検索ツールを用いてNo.32および35のタンパク質のアミノ酸配列を解析し、各々のタンパク質について確認された2箇所のシステイン残基について以下の方法によりそれぞれアラニン残基に置換した。No.32について作製した2種の改変ポリペプチド(No.32Aおよび32B)のアミノ酸配列を配列番号:63および65に、それらをコードするポリヌクレオチド配列を各々配列番号:64および66に示す。また、No.35について作製した2種の改変ポリペプチド(No.35Aおよび35B)のアミノ酸配列を配列番号:67および69に、それらをコードするポリヌクレオチド配列を各々配列番号:68および70に示す。
タンパク質発現プラスミドの作製
・プライマー合成
変異導入部位を含む以下の配列表の配列番号に示すプライマー対を合成した。
改変ポリペプチドNo.32A
フォワードプライマー 配列番号:133
リバースプライマー 配列番号:134
改変ポリペプチドNo.32B
フォワードプライマー 配列番号:135
リバースプライマー 配列番号:136
改変ポリペプチドNo.35A
フォワードプライマー 配列番号:137
リバースプライマー 配列番号:138
改変ポリペプチドNo.35B
フォワードプライマー 配列番号:139
リバースプライマー 配列番号:140
・プライマーのリン酸化:T4 Polynucleotide Kinase(東洋紡)
反応液組成 20μl調製
合成プライマー(50μM) 14μl
10×Protruding End Kinase Buffer 2μl
10mM ATP 2μl
T4 Polynucleotide Kinase(5-20U/μl) 2μl
【0082】
反応組成
37℃に60min、ついで95℃に5min保持した後、50μlのDWを加えた(10pmol/μlプライマーDNA)。
・インバースPCR:Prime STAR MAX(Takara)
反応液組成 50μl調製
Takara PrimeSTAR MAX Premix(2×) 25μl
フォワードプライマー(10pmol/μl) 1.5μl
リバースプライマー(10pmol/μl) 1.5μl
Template DNA(No.32または35抗原タンパク質の
プラスミドDNA:10ng/μl) 1μl
滅菌水 21μl
反応条件
98℃にて30sec処理した後に、98℃にて10sec、55℃にて5sec、72℃にて50secのサイクルを30サイクル行った。
【0083】
QIAGENキットを用いてPCR産物を精製した後に、Template DNA(プラスミドDNA)を分解するためにDpnI処理を行った。
以下の組成でQIAGENキットを用いてPCR産物を精製した。
・DpnI処理
精製PCR産物 30μl
NEB4 5μl
BSA 5μl
DpnI(20unit/μL) 0.5μl
滅菌水 9.5μl
37℃、1時間
【0084】
制限酵素処理産物の精製:PCI処理を行い、DNA産物を精製した。
・ライゲーション
精製DNA 5μl
Ligation Mighty Mix 5μl
16℃、1時間
ライゲーション産物をトランスフォーメーションにより大腸菌(E.coli)に導入した。
遺伝子導入が確認されたプラスミドDNAについて、シークエンス解析を行った。
目的の変異が導入されたプラスミドを大量調製して、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を合成し、GSTタグを用いて精製した。
【0085】
合成タンパク質の確認
SDS-PAGE
合成タンパク質溶液を4μlと試料バッファー(+DTT)を6μlを混合して試料とした。調製試料を熱変性し、全量10μlの試料をアプライし、SDS-PAGE電気泳動に付した。
CBB染色
SDS-PAGE後のゲルについて、蒸留水で洗浄し、CBB染色液に浸漬後、攪拌した。
蒸留水でバンドが明瞭に観察できるまで洗浄した。
ドットブロット
作製した4種の改変ポリペプチド(No.32A、32B、35Aおよび35B)をドットブロットに付した。ドットブロットする抗原タンパク質量12.5ng/μlを4μlアプライして、50ngとした。ドットブロットは3セット実施した。ドットブロットはスキムミルク5%を加えたTBSに一晩浸漬してブロッキングし、以下の血清溶液と室温にて反応させた。
血清溶液(一次抗体)
A:NAI、TOMおよびKOBの血清を3μlずつを混合したうちの8μlを3%スキムミルクを含むTBS 20mlに混合した溶液
B:No.7350および6921の血清を4μlずつ混合した8μlを3%スキムミルクを含むTBS 20mlに混合
C:No.7107、7523および6980の血清を3μlずつ混合したうちの8μlを3%スキムミルクを含むTBS 20mlに混合 140mL 1×TBS
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(スキムミルク(3%)を含むTBSに抗ヒト二次抗体(CHEMICON)を添加した溶液)20mlを加え、室温で振盪した。ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、スリットを4-メトキシ-1-ナフトール(0.61mg/ml)および過酸化水素(0.018%)を含むTBSに浸漬して発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。
【0086】
結果を図14に示す。
No.32については、どちらの改変ポリペプチドにおいてもプロテアーゼ活性が抑制されていた。一方、No.35については、No.35Bの改変ポリペプチドでは完全にプロテアーゼ活性が抑制されていなかったが、No.35Aではプロテアーゼ活性が抑制されていた。また、抗原性を調べた結果、いずれの改変ポリペプチドについても抗原性の維持が確認された。
【0087】
試験方法
・ドットブロット解析
先に記載した実験と同様に、16種の抗原タンパク質を健常者10名、歯周病患者20名の血清に対してドットブロットした(ただし、No.32とNo.35の抗原タンパク質については、得られた改変ポリペプチドであるNo.32AおよびNo.35Aを使用した)。ドットブロットに付したタンパク質量は50ngとした(ただし、No.4の抗原タンパク質についてはタンパク質濃度が薄く、37ngを付した。また、試験途中にタンパク質溶液が不足したため、血清番号H9、H10、P10、P20についてはブロットしていない)。
ドットブロットした後、ブロッキング溶液(スキムミルク(5%)を含むTBS溶液)に浸漬した。
一次抗体溶液として、個々の健常者血清(H1〜H10)あるいは歯周病患者血清(P1〜P20)8μLを、3%スキムミルクを含むTBS 20mLに混合した溶液を使用し、ブロッキング後のスリットをこれに浸漬し、室温で2時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(スキムミルク(3%)を含むTBSに抗ヒト二次抗体(MILLIPORE)を添加した溶液)20mLを加え、室温で1時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、スリットを4-メトキシ-1-ナフトール(0.61mg/mL)および過酸化水素(0.018%)を含むTBSに浸漬して発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。結果を図15に示す。
【0088】
・シグナル値の検出
1.ImageQuant LAS4000(GEヘルスケア社)を用いて、メンブレンの画像を撮影した。フォーカスを合わせた後、下記の条件で画像を撮影した。
-画像取り込み条件-
Exposure Type:Precision
Exposure Time:1/100 Sec
Sensitivity/Resolution:Standard
2.つぎに、ImageQuant TL(GEヘルスケア社)を用いて、撮影画像のドットのシグナル値を求めた。
-シグナル値の取り込み条件-
Array analysisモードにおいて、ドットのスポット全体を取り囲むように丸型カーソルを合わせ、配置については2列×8行のスポットレイアウトとして合わせ、シグナル値を数値化した。
バックグラウンドの設定は、Spot Edge Averageモードを設定し、スポット周囲のバックグラウンドに対してスポットのシグナル値が反映されるように設定した。
【0089】
・シグナル値の解析
1.それぞれの抗原タンパク質に対する各血清のシグナル値について、健常者血清グループおよび患者血清グループのシグナル平均値を計算した(図16および17)。その結果、No.13、21、22、28の抗原タンパク質はいずれの血清とも反応しない、あるいは反応する割合が低いことが判明した。
ついで、患者血清グループのシグナル値をSignal値、健常者血清グループのシグナル値をNoise値として、Signal/Noiseの比を求めた。なお、健常者血清グループのシグナル平均値がゼロのものについては、計算値の算出ができないためNoise:0と記した(図18)。その結果、No.2、6、10および26の抗原タンパク質については、シグナル平均値は高いがS/N比が低く、多様な免疫型を有する広範囲の患者の歯周病の検査には適当でないことが示された。一方、No.3、4、9、11、19、24、32Aおよび35Aの抗原タンパク質は、S/N比が高く、患者血清に対する特異性が高いと考えられた。
2.それぞれの抗原タンパク質に対する各血清のシグナル値について、エクセル統計2010ソフトウェアを用いてROC(Receiver Operating Characteristic)曲線およびROC曲線下面積(Area under the curve,AUC)を求めた(図19)。
【0090】
ここで、ROC曲線は、境界値(カットオフ値)を変化させていった時に、陽性率(感度)と偽陽性率(1−特異度)がどのように変化するかをグラフ化したしたものであり、理想的な検査を考えると、感度も特異度も1.0である状態、すなわち左上端の点にある時が理想の状態となる。そのため、ROC曲線が左上端に近くなるように推移するグラフが、検査の診断能・予測能が高いと考えられる。そこで、ROC曲線下面積を測定することによって、検査の予測能・診断能を判断できる。
一般的には、AUCの値に基づく予測能・診断能は下記の様に判断される。
AUC 0.9−1.0 High accuracy
AUC 0.7−0.9 Moderate accuracy
AUC 0.5−0.7 Low accuracy
【0091】
図19の結果から、No.3、4、9、11、19、24、32Aおよび35Aの抗原タンパク質はAUC 0.6以上の診断能・予測能を有することが判明した。
【0092】
高発現抗原タンパク質の作製
試験方法
・No.32N、32C、35Nおよび35Cのタンパク質合成
No.32AおよびNo.35Aのヌクレオチド配列に基づき、以下のプライマーリストに示す合成したプライマー対を用いて、約半分のヌクレオチドサイズとなるように目的遺伝子配列を増幅した。
タンパク質発現プラスミドの作製
・プライマー合成
以下の配列表の配列番号に示すプライマー対を合成した。
改変ポリペプチドNo.32N
フォワードプライマー 配列番号:157
リバースプライマー 配列番号:158
改変ポリペプチドNo.32C
フォワードプライマー 配列番号:159
リバースプライマー 配列番号:160
改変ポリペプチドNo.35N
フォワードプライマー 配列番号:161
リバースプライマー 配列番号:162
改変ポリペプチドNo.35C
フォワードプライマー 配列番号:163
リバースプライマー 配列番号:164
【0093】
つづいて、増幅DNA産物を制限酵素処理して、同制限酵素で処理したタンパク質発現ベクター(セルフリーサイエンス社:pEuベクター)にリーディングフレームが合うようにライゲーションした。ライゲーション産物をトランスフォーメーションにより大腸菌(E.coli)に導入した。ついで、遺伝子が導入されたクローンを選抜した。
選抜したクローンよりプラスミドDNAを回収し、シークエンス解析を行った。No.32Aについて作製した2種の改変ポリペプチド(No.32Nおよび32C)のアミノ酸配列を配列番号:141および143に、それらをコードするポリヌクレオチド配列を各々配列番号:142および144に示す。また、No.35Aについて作製した2種の改変ポリペプチド(No.35Nおよび35C)のアミノ酸配列を配列番号:145および147に、それらをコードするポリヌクレオチド配列を各々配列番号:146および148に示す。
シークエンス解析の結果から重大な変異が認められなかったクローンについて、プラスミドを大量調製して、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を合成し、GSTタグを用いて精製した。
No.32AのN末端およびC末端、No.35AのN末端およびC末端の4種のタンパク質合成に成功し、これらについてドットブロット解析を行った。
【0094】
・ドットブロット解析
4種の抗原タンパク質(No.32N、32C、35Nおよび35C)をドットブロットした。ドットブロットに付したタンパク質量は10ngと200ngとした。
ドットブロットした後、ブロッキング溶液(スキムミルク(5%)を含むTBS溶液)に浸漬した。
一次抗体溶液として、健常者プール血清(H1〜H10)、歯周病患者プール血清1(P1〜P10)あるいは歯周病患者プール血清2(P11〜P20)4μLを、3%スキムミルクを含むTBS 10mLに混合した溶液を使用し、ブロッキング後のスリットをこれに浸漬し、室温で2時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(スキムミルク(3%)を含むTBSに抗ヒト二次抗体(MILLIPORE)を添加した溶液)10mLを加え、室温で1時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、スリットを4-メトキシ-1-ナフトール(0.61mg/mL)および過酸化水素(0.018%)を含むTBSに浸漬して発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。結果を図20に示す。
その結果、No.32Aおよび35Aのいずれの抗原タンパク質とも、N末端とC末端の断片で抗原性が異なり、C末端側は健常者血清と反応性を示したが、N末端側は歯周病患者血清において特異的な反応性を示した。
【0095】
検査精度の高い抗原タンパク質の選抜
試験方法
・ドットブロット解析
10種の抗原タンパク質をドットブロットした。ドットブロットに付したタンパク質量は200ngとした。ただし、No.32Cおよび35Cについては感度が高いため、10ngとした。
ドットブロットした後、ブロッキング溶液(スキムミルク(5%)を含むTBS溶液)に浸漬した。
一次抗体溶液として、個々の健常者血清(H1〜H10)あるいは歯周病患者血清(P1〜P20)8μLを、3%スキムミルクを含むTBS 10mLに混合した溶液を使用し、ブロッキング後のスリットをこれに浸漬し、室温で2時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(スキムミルク(3%)を含むTBSに抗ヒト二次抗体(MILLIPORE)を添加した溶液)10mLを加え、室温で1時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、スリットを4-メトキシ-1-ナフトール(0.61mg/mL)および過酸化水素(0.018%)を含むTBSに浸漬して発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。結果を図21に示す。
【0096】
・シグナル値の検出
1.CanoScan 9000F(Canon社)を用いて、メンブレンの画像をスキャンした。メンブレンをスキャニングボードに設置した後、下記の条件で画像をスキャンした。
-画像取り込み条件-
・入力設定
原稿の種類:紙/写真
カラーモード:グレースケール
・出力設定
出力解像度:300dpi
出力サイズ:フリーサイズ
・画像設定
画像調製:自動
その他の項目:オフ
【0097】
次に、取り込んだ画像は、ArcSoft PhotoStudio 6のソフトウェアを用いて、各スリットにトリミングし、Tiffファイルに変換した。
2.つぎに、ImageQuant TL(GEヘルスケア社)を用いて、撮影画像のドットのシグナル値を求めた。
-シグナル値の取り込み条件-
Array analysisモードにおいて、ドットのスポット全体を取り囲むように丸型カーソルを合わせ、配置については2列×6行のスポットレイアウトとして合わせ、シグナル値を数値化した。
バックグラウンドの設定は、Spot Edge Averageモードを設定し、スポット周囲のバックグラウンドに対してスポットのシグナル値が反映されるように設定した。結果を図22に示す。
【0098】
・シグナル値の解析
1.健常者血清グループにおけるシグナル値より、平均値、SD値、グループ中の最大値、2番目値、平均値+2SD値、平均値+3SD値を求めた。これらの最大値、2番目値、平均+2SD、平均+3SDを境界値(カットオフ値)として、各抗原タンパク質における試験結果から真陽性、偽陰性、偽陽性、真陰性を求めた。
ついで、その結果より、感度および特異度を求めた。
2.それぞれの抗原タンパク質に対する各血清のシグナル値について、エクセル統計2010ソフトウェアを用いてROC曲線およびAUCを求めた。
【0099】
試験結果
健常者血清グループより求めたカットオフ値を基準とした感度と特異度の結果に基づき(図23)、健常者血清の2番目値をカットオフ値とすると、No.35Nの抗原タンパク質は感度0.85、特異度0.9を達成可能であることが判明した。
また、各抗原タンパク質についてのROC曲線およびAUCを求めた結果(図24)、No.3およびNo.9の抗原タンパク質についてはLow Accuracyの検査であるが、その他の抗原タンパク質についてはModerate Accuracyの検査を提供し得ることが判明した。特に、No.35Nの抗原タンパク質についてはHigh Accuracyの検査を提供し得ることが判明した。
なお、No.3およびNo.9の抗原タンパク質について、前回の試験で求めたAUC値よりも、抗原抗体反応条件をより良好にした今回の試験で求めたAUC値が低い値となった原因として、抗原タンパク質の凍結融解を繰り返したことにより、タンパク質の変性が進行したことが原因の一つであると考られた。
【0100】
ポルフィロモーナス・ジンジバリス菌株SU63株を認識する抗原タンパク質
試験方法
・菌株間の相同性の検証
FDC381株の各タンパク質のアミノ酸配列を基に、NCBIサイトのBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)のblastpを用いて検索を行った。
検索結果より、データベース上に登録されているPorphyromonas gingivalis菌の菌株W83株、ATCC33277株、TDC60株におけるタンパク質との相同性を確認した。
・SU63株由来の遺伝子クローニングおよびタンパク質合成
選抜したタンパク質の遺伝子情報をデータベースより参照し、以下の配列表の配列番号に示したプライマー対を用いてジンジバリス菌株SU63株由来のゲノムDNAより目的遺伝子を増幅した。
Su63株 No.15抗原タンパク質(No.15Su)
フォワードプライマー 配列番号:165
リバースプライマー 配列番号:166
Su63株 No.16抗原タンパク質(No.16Su)
フォワードプライマー 配列番号:167
リバースプライマー 配列番号:168
Su63株 No.34抗原タンパク質(No.34Su)
フォワードプライマー 配列番号:169
リバースプライマー 配列番号:170
Su63株 No.37抗原タンパク質(No.37Su)
フォワードプライマー 配列番号:171
リバースプライマー 配列番号:172
【0101】
つづいて、増幅DNA産物を制限酵素処理して、同制限酵素で処理したタンパク質発現ベクター(セルフリーサイエンス社:pEuベクター)にライゲーションした。ライゲーション産物をトランスフォーメーションにより大腸菌(E.coli)に導入した。ついで、遺伝子が導入されたクローンを選抜した。
選抜したクローンよりプラスミドDNAを回収し、シークエンス解析を行った。No.15Su、No.16Su、No.34SuおよびNo.37Suの抗原タンパク質のアミノ酸配列を各々配列番号:149、151、153および155に、それらをコードするポリヌクレオチド配列を各々配列番号:150、152、154および156に示す。その結果、No.15Su抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列はW83株の対応するポリヌクレオチド配列と1塩基違いであり、No.16Su抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列はTDC60株やATCC33277株の対応するポリヌクレオチド配列と相同性が高く、No.34Su抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列はragA(A011/9株)のポリヌクレオチド配列と相同性が高いことが判明した。
【0102】
シークエンス解析の結果から重大な変異が認められなかったクローンについて、プラスミドを大量調製して、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を合成し、GSTタグを用いて精製した。
その結果、SU63株由来のNo.15、16、34および37の4種のタンパク質合成に成功し、これらについてドットブロット解析を行った。
【0103】
・ドットブロット解析
8種の抗原タンパク質(FDC381株:No.15、16、34および37、SU63株:No.15Su、16Su、34Suおよび37Su)をドットブロットした。ドットブロットに付したタンパク質量は50ngとした。
ドットブロットした後、ブロッキング溶液(スキムミルク(5%)を含むTBS溶液)に浸漬した。
一次抗体溶液として、個々の健常者血清(H1〜H10)あるいは歯周病患者血清(P1〜P20)4μLを、3%スキムミルクを含むTBS 10mLに混合した溶液を使用し、ブロッキング後のスリットをこれに浸漬し、室温で2時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、5000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体反応液(スキムミルク(3%)を含むTBSに抗ヒト二次抗体(MILLIPORE)を添加した溶液)10mLを加え、室温で1時間抗原抗体反応を行った。
ついで、Tween20(0.05%)を含むTBSを用いてスリットを洗浄した。洗浄後、スリットを4-メトキシ-1-ナフトール(0.61mg/mL)および過酸化水素(0.018%)を含むTBSに浸漬して発色を確認後、精製水で洗浄し、乾燥させた。結果を図24および25に示す。
これらの図から明らかなように、No.15抗原タンパク質は、FDC381株およびSU63株の両方の抗原タンパク質で患者血清P19に対して抗原性を示した。一方、No.16、34および37の抗原タンパク質は、FDC381株またはSU63株のいずれか一方の抗原タンパク質が健常者血清または患者血清のいずれか一方に対して抗原性を示した。
したがって、No.16、34および37抗原タンパク質は、FDC381株とSU63株の感染を区別して把握し得ることが示唆された。
【0104】
試験結果
菌株間の相同性を調べた結果、FDC381株における各タンパク質とデータベース上のタンパク質の相同性は以下の通りであり、菌株間で相同性が低いことが確認できた。
No. W83株 ATCC33277株 TDC60株
15 387/387(100%) 202/398(51%) 213/402(53%)
16 553/553(100%) 242/566(43%) 243/566(43%)
34 1015/1016(99%) 737/1039(71%) 719/1022(70%)
37 500/500(100%) 249/511(49%) 249/511(49
【0105】
シークエンス解析の結果、FDC381株由来とSU63株由来の各タンパク質の相同性は次のとおりであった。
No.15:99.7%
No.16:41.4%
No.34:65.2%
No.37:47.3%
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キットは、大量の試料を自動で高速処理する歯周病原菌血漿または血清抗体価検査システムに好適に利用される。
【配列表フリーテキスト】
【0107】
配列番号:1は亜鉛カルボキシペプチダーゼ・ドメインを有する保存仮説タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:2は亜鉛カルボキシペプチダーゼ・ドメインを有する保存仮説タンパク質をコードする塩基配列である。
配列番号:3は仮説タンパク質PG1881のアミノ酸配列である。
配列番号:4は仮説タンパク質PG1881をコードする塩基配列である。
配列番号:5は仮説タンパク質PGN_0291のアミノ酸配列である。
配列番号:6は仮説タンパク質PGN_0291をコードする塩基配列である。
配列番号:7は仮説タンパク質PG0491のアミノ酸配列である。
配列番号:8は仮説タンパク質PG0491をコードする塩基配列である。
配列番号:9は仮説タンパク質PGN_1611のアミノ酸配列である。
配列番号:10は仮説タンパク質PGN_1611をコードする塩基配列である。
配列番号:11は仮説タンパク質PGN_0477のアミノ酸配列である。
配列番号:12は仮説タンパク質PGN_0477をコードする塩基配列である。
配列番号:13は仮説タンパク質PGN_0860のアミノ酸配列である。
配列番号:14は仮説タンパク質PGN_0860をコードする塩基配列である。
配列番号:15は53kDa主要外側膜タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:16は53kDa主要外側膜タンパク質をコードする塩基配列である。
配列番号:17は35kDaヘミン結合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:18は35kDaヘミン結合タンパク質をコードする塩基配列である。
配列番号:19はヘム結合タンパク質FetBのアミノ酸配列である。
配列番号:20はヘム結合タンパク質FetBをコードする塩基配列である。
配列番号:21はNAD依存性グルタミン酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列である。
配列番号:22はNAD依存性グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする塩基配列である。
配列番号:23はホスホセリンアミノトランスフェラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号:24はホスホセリンアミノトランスフェラーゼをコードする塩基配列である。
配列番号:25はTonB結合受容体Tlrのアミノ酸配列である。
配列番号:26はTonB結合受容体Tlrをコードする塩基配列である。
配列番号:27はフィムブリリンのアミノ酸配列(FDC381株)である。
配列番号:28はフィムブリリンをコードする塩基配列である。
配列番号:29は微量成分FimEのアミノ酸配列(FDC381株)である。
配列番号:30は微量成分FimEをコードする塩基配列である。
配列番号:31はHmuY'のアミノ酸配列である。
配列番号:32はHmuY'をコードする塩基配列である。
配列番号:33はM24ファミリーペプチダーゼのアミノ酸配列である。
配列番号:34はM24ファミリーペプチダーゼをコードする塩基配列である。
配列番号:35はグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ 1型のアミノ酸配列である。
配列番号:36はグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ 1型をコードする塩基配列である。
配列番号:37はフェリチンのアミノ酸配列である。
配列番号:38はフェリチンをコードする塩基配列である。
配列番号:39はセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号:40はセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードする塩基配列である。
配列番号:41は外側膜リポタンパク質Omp28のアミノ酸配列である。
配列番号:42は外側膜リポタンパク質Omp28をコードする塩基配列である。
配列番号:43は有望なリシルエンドペプチダーゼ前駆体のアミノ酸配列である。
配列番号:44は有望なリシルエンドペプチダーゼ前駆体をコードする塩基配列である。
配列番号:45はキノンファミリーNAD(P)デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列である。
配列番号:46はキノンファミリーNAD(P)デヒドロゲナーゼをコードする塩基配列である。
配列番号:47は飢餓細胞DpsからのDNA-結合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:48は飢餓細胞DpsからのDNA-結合タンパク質をコードする塩基配列である。
配列番号:49は免疫反応性42kDa抗原 PG33のアミノ酸配列である。
配列番号:50は免疫反応性42kDa抗原 PG33をコードする塩基配列である。
配列番号:51はLys−ギンギパインのアミノ酸配列である。
配列番号:52はLys−ギンギパインをコードする塩基配列である。
配列番号:53はペプチジルアルギニン・デイミナーゼのアミノ酸配列である。
配列番号:54はペプチジルアルギニン・デイミナーゼをコードする塩基配列である。
配列番号:55はragAタンパク質のアミノ酸配列(FDC381株)である。
配列番号:56はragAタンパク質をコードする塩基配列である。
配列番号:57はアルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのアミノ酸配列である。
配列番号:58はアルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードする塩基配列である。
配列番号:59は外側膜タンパク質41前駆体のアミノ酸配列である。
配列番号:60は外側膜タンパク質41前駆体をコードする塩基配列である。
配列番号:61はリポタンパク質RagBのアミノ酸配列(FDC381株)である。
配列番号:62はリポタンパク質RagBをコードする塩基配列である。
配列番号:63は突然変異導入Lys−ギンギパインのアミノ酸配列である。
配列番号:64は突然変異導入Lys−ギンギパインをコードする塩基配列である。
配列番号:65は突然変異導入Lys−ギンギパインのアミノ酸配列である。
配列番号:66は突然変異導入Lys−ギンギパインをコードする塩基配列である。
配列番号:67は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのアミノ酸配列である。
配列番号:68は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードする塩基配列である。
配列番号:69は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのアミノ酸配列である。
配列番号:70は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードする塩基配列である。
配列番号:71は亜鉛カルボキシペプチダーゼ・ドメインを有する保存仮説タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:72は亜鉛カルボキシペプチダーゼ・ドメインを有する保存仮説タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:73は仮説タンパク質PG1881をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:74は仮説タンパク質PG1881をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:75は仮説タンパク質PGN_0291をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:76は仮説タンパク質PGN_0291をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:77は仮説タンパク質PG0491をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:78は仮説タンパク質PG0491をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:79は仮説タンパク質PGN_1611をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:80は仮説タンパク質PGN_1611をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:81は仮説タンパク質PGN_0477をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:82は仮説タンパク質PGN_0477をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:83は仮説タンパク質PGN_0860をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:84は仮説タンパク質PGN_0860をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:85は53kDa主要外側膜タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:86は53kDa主要外側膜タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:87は35kDaヘミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:88は35kDaヘミン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:89はヘム結合タンパク質FetBをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:90はヘム結合タンパク質FetBをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:91はNAD依存性グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:92はNAD依存性グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:93はホスホセリンアミノトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:94はホスホセリンアミノトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:95はTonB結合受容体TlrをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:96はTonB結合受容体TlrをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:97はフィムブリリンをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:98はフィムブリリンをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:99は微量成分FimEをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:100は微量成分FimEをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:101はHmuY'をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:102はHmuY'をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:103はM24ファミリーペプチダーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:104はM24ファミリーペプチダーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:105はグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ 1型をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:106はグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ 1型をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:107はフェリチンをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:108はフェリチンをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:109はセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:110はセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:111は外側膜リポタンパク質Omp28をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:112は外側膜リポタンパク質Omp28をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:113は有望なリシルエンドペプチダーゼ前駆体をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:114は有望なリシルエンドペプチダーゼ前駆体をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:115はキノンファミリーNAD(P)デヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:116はキノンファミリーNAD(P)デヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:117は飢餓細胞DpsからのDNA-結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:118は飢餓細胞DpsからのDNA-結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:119は免疫反応性42kDa抗原 PG33をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:120は免疫反応性42kDa抗原 PG33をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:121はLys−ギンギパインをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:122はLys−ギンギパインをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:123はペプチジルアルギニン・デイミナーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:124はペプチジルアルギニン・デイミナーゼをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:125はragAタンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:126はragAタンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:127はアルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:128はアルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:129は外側膜タンパク質41前駆体をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:130は外側膜タンパク質41前駆体をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:131はリポタンパク質RagBをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:132はリポタンパク質RagBをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:133は突然変異導入Lys−ギンギパインをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:134は突然変異導入Lys−ギンギパインをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:135は突然変異導入Lys−ギンギパインをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:136は突然変異導入Lys−ギンギパインをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:137は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:138は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:139は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:140は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:141は突然変異導入Lys−ギンギパインのN末端側の約半分のアミノ酸配列である。
配列番号:142は突然変異導入Lys−ギンギパインのN末端側の約半分をコードする塩基配列である。
配列番号:143は突然変異導入Lys−ギンギパインのC末端側の約半分のアミノ酸配列である。
配列番号:144は突然変異導入Lys−ギンギパインのC末端側の約半分をコードする塩基配列である。
配列番号:145は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのN末端側の約半分のアミノ酸配列である。
配列番号:146は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのN末端側の約半分をコードする塩基配列である。
配列番号:147は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのC末端側の約半分のアミノ酸配列である。
配列番号:148は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのC末端側の約半分をコードする塩基配列である。
配列番号:149はフィムブリリンのアミノ酸配列(SU63株)である。
配列番号:150はフィムブリリンをコードする塩基配列(SU63株)である。
配列番号:151は微量成分FimEのアミノ酸配列(SU63株)である。
配列番号:152は微量成分FimEをコードする塩基配列(SU63株)である。
配列番号:153はragAタンパク質のアミノ酸配列(SU63株)である。
配列番号:154はragAをコードする塩基配列(SU63株)である。
配列番号:155はリポタンパク質RagBのアミノ酸配列(SU63株)である。
配列番号:156はリポタンパク質RagBをコードする塩基配列(SU63株)である。
配列番号:157は突然変異導入Lys−ギンギパインのN末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:158は突然変異導入Lys−ギンギパインのN末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:159は突然変異導入Lys−ギンギパインのC末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:160は突然変異導入Lys−ギンギパインのC末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:161は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのN末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:162は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのN末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:163は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのC末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:164は突然変異導入アルギニン−特異的システインプロテイナーゼRgpAのC末端側の約半分をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:165はSU63株のフィムブリリンをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:166はSU63株のフィムブリリンをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:167はSU63株の微量成分FimEをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:168はSU63株の微量成分FimEをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:169はSU63株のragAタンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:170はSU63株のragAタンパク質をコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。
配列番号:171はSU63株のリポタンパク質RagBをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたフォワードプライマーである。
配列番号:172はSU63株のリポタンパク質RagBをコードするポリヌクレオチドのPCR増幅に用いたリバースプライマーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:141のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号:142のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる請求項1記載の改変ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号:143のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド。
【請求項4】
配列番号:144のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる請求項3記載の改変ポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:145のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号:146のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる請求項5記載の改変ポリペプチド。
【請求項7】
配列番号:147のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号:148のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる請求項7記載の改変ポリペプチド。
【請求項9】
配列番号:1、3、5、9、15、17、19、23、31、35、37、41、43、47、141、143、145、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット。
【請求項10】
該ポリペプチドが、配列番号:1、3、5、9、15、17、19、31、37、41、43、141、143、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよび配列番号:145のアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項9記載の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット。
【請求項11】
該ポリペプチドが、配列番号:2、4、6、10、16、18、20、24、32、36、38、42、44、48、142、144、146、148、152、154および156よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである請求項9記載の歯周病原菌血漿または血清抗体価検査キット。
【請求項12】
ヒト身体から分離した血液試料を歯周病原菌抗原ポリペプチドと接触させることを含む該血液試料中の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法であって、該歯周病原菌抗原ポリペプチドが配列番号:1、3、5、9、15、17、19、23、31、35、37、41、43、47、141、143、145、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを特徴とする該方法。
【請求項13】
ヒト身体から分離した血液試料を歯周病原菌抗原ポリペプチドと接触させることを含む該血液試料中の歯周病原菌に対する抗体価を測定する方法であって、該歯周病原菌抗原ポリペプチドが配列番号:1、3、5、9、15、17、19、31、37、41、43、141、143、147、151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよび配列番号:145のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを特徴とする該方法。
【請求項14】
該ポリペプチドが、配列番号:2、4、6、10、16、18、20、24、32、36、38、42、44、48、142、144、146、148、152、154および156よりなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
配列番号:151、153および155よりなる群から選択される一種または二種以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むポルフィロモーナス・ジンジバリス菌株のタイピングキット。
【請求項16】
該ポリペプチドが、配列番号:152、154および156よりなる群から選択される一種または二種以上のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである請求項15記載のタイピングキット。
【請求項17】
配列番号:151のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項18】
配列番号:152のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる請求項17記載のポリペプチド。
【請求項19】
配列番号:153のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項20】
配列番号:154のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる請求項19記載のポリペプチド。
【請求項21】
配列番号:155のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項22】
配列番号:156のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列からなる請求項21記載のポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図13】
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【図15】
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【図20】
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【図21】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−87087(P2013−87087A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228984(P2011−228984)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】