説明

歯周病又は根尖性歯周炎の予防又は治療剤

【課題】
新規な歯周病又は根尖性歯周炎の予防及び治療剤を提供すること。
【解決手段】
次式


で表される(2S,3S)−3−[[(1S)−1−イソブトキシメチル−3−メチルブチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸モノナトリウムを歯周病又は根尖性歯周炎等の歯周疾患の予防又は治療剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周病又は根尖性歯周炎の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周疾患には、歯の周囲に炎症が惹起される歯周病(歯肉炎および歯周炎)と歯の根尖に炎症が惹起される根尖性歯周炎とに大別される。歯の周囲に歯周病原細菌がプラーク(歯垢)として沈着し、歯肉のみに限局した炎症が引き起こされた状態を歯肉炎といい、さらに歯根膜へ炎症が波及し、歯の周囲の歯槽骨吸収が認められる状態を歯周炎という。また、う蝕に継発して歯髄の炎症(歯髄炎)がう蝕病原菌に対して惹起されるが、それが進行し歯髄が壊死した空隙(歯髄腔)に細菌叢が形成され、それに対して根尖部で誘導された炎症反応を根尖性歯周炎という。根尖性歯周炎においても、根尖周囲の歯槽骨の破壊が認められる。すなわち歯周炎および根尖性歯周炎は、両者とも細菌侵襲に対する生体の防御反応の一環として、前者に置いては辺縁歯周組織、後者においては根尖歯周組織に炎症性細胞の浸潤が観察され、さらにその部の歯槽骨吸収が認められるのが大きな特徴である。歯の周囲に存在する歯槽骨は、歯を保持し、機能させる上で重要な役割を担っており、その骨吸収は歯の喪失をもたらす。すなわち、歯周炎、根尖性歯周炎は歯の喪失の大きな要因となっているといえる。自分の歯でかめることはQOLを維持あるいは向上させる上で大変重要であり、その意味においても歯周炎および根尖性歯周炎の確実な処置方法が期待されている。
【0003】
ところで、特許文献1にはペプチジルヒドロキサム酸誘導体が歯周組織破壊に対する予防・治療剤として使用でき、根尖性歯周炎に有用である旨の記載がある。
また特許文献2には、メタンビスホスホン酸誘導体またはその水和物が、歯周疾患に伴う患部への細胞浸潤を抑制する作用等を有し、歯周病や根尖性歯周炎等の歯周疾患の予防、治療に有用である旨の記載がされている。
また特許文献3にはカテプシンシステインプロテアーゼインヒビターであるロイシンアミド誘導体の歯周病への適用に関する記載がある。
一方、次式
【0004】
【化1】

【0005】
で表される(2S,3S)−3−[[(1S)−1−イソブトキシメチル−3−メチルブチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸モノナトリウム(以下、化合物Aと略すこともある。)はカテプシンK阻害作用を有し、慢性関節リウマチ、骨粗鬆症等の治療薬として有用であることが知られている。(特許文献4)
上記特許文献1〜3に記載の化合物が、現時点において、歯周病及び根尖性歯周炎の予防又は治療薬として臨床上、用いられているとの情報はなく、またこれらの文献には化合物Aが歯周病又は根尖性歯周炎に有用である旨の記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−283177
【特許文献2】WO 01/005403
【特許文献3】WO 2006/056047
【特許文献4】WO 99/11640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周病又は根尖性歯周炎の予防又は治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤に関する。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基、炭素原子数が2〜10のアルキニル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基、炭素原子数が2〜10のアルキニル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基、炭素原子数が2〜10のアルキニル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
Xは、−O−又はNR−を表す。ここでRは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、OR、SR、又はNRを表す。
ここでRは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数2〜20のアシル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数2〜20のアシル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数2〜20のアシル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、そしてRは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
そしてYは、水素原子又は炭素原子数が1〜10のアルキル基を表すか、あるいは、YとYとは一緒になって、=O、=S、=N−R又は=N−OR10を表す。
ここで、Rは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
そしてR10は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表す。
なお、上記R〜R10のアルキル基はいずれも、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素原子数が1〜6のアルキルアミノ基、合計炭素原子数が2〜12のジアルキルアミノ基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、炭素原子数が2〜7のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜7のアルキルアミノカルボニル基、合計炭素原子数が3〜13のジアルキルアミノカルボニル基、及びグアニジノ基からなる群より選ばれる一若しくは二以上の置換基を有していてもよく、また上記R〜R10の各アリール基及び各複素環基は、炭素原子数が1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素原子数が1〜6のアルキルアミノ基、合計炭素原子数が2〜12のジアルキルアミノ基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜6のハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数が2〜7のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜7のアルキルアミノカルボニル基、合計炭素原子数が3〜13のジアルキルアミノカルボニル基、アミジノ基、及びグアニジノ基からなる群より選ばれる一若しくは二以上の置換基を有していてもよい。)
【0011】
また本発明は、上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周病の予防又は治療剤に関する。
さらにまた本発明は、上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する根尖性歯周炎の予防又は治療剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する医薬組成物は、歯周病又は根尖性歯周炎に対し、優れた予防又は治療効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はコントロール群のマイクロCTである。
【図2】図2は化合物A投与群のマイクロCTである。
【図3】図3はコントロール群と化合物A投与群のIL−1αの発現量である。
【図4】図4はコントロール群と化合物A投与群のIL−6の発現量である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を詳細に説明する。
有効成分である上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩については、公知物質であり、たとえば上記特許文献4に記載されている。
そして、上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩は、上記特許文献4、WO 2004/24672、WO 2004/96785等に記載の方法を参考にして製造することができる。
【0015】
上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩で好ましい化合物としては次の化合物が挙げられる。
(1)Rが水素原子又は炭素原子数が1〜6のアルキル基である上記一般式(I)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(2)
が炭素原子数が1〜6のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である上記一般式(I)又は上記(1)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(3)
が水素原子又は炭素原子数が6〜20のアリール基である上記一般式(I)又は上記(1)若しくは(2)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(4)
Xが−O−である上記一般式(I)又は上記(1)〜(3)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(5)
がヒドロキシル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、アセトキシ基、又は炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基からなるアラルキルオキシ基である上記一般式(I)又は上記(1)〜(4)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(6)
がイソブチル基又はイソプロピル基であり、Rが水素原子であり、YがORであり、そしてYが水素原子である上記一般式(I)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(7)
がイソブチル基又はイソプロピル基であり、Rが炭素原子数が6〜20のアリール基であり、YがORであり、そしてYが水素原子である上記一般式(I)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(8)
とYとが一緒になって、=Oを形成する上記一般式(I)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(9)
生理学的に許容できる塩がアルカリ金属塩である上記一般式(I)又は上記(1)〜(8)記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩。
(10)
(2S,3S)−3−[[(1S)−1−イソブトキシメチル−3−メチルブチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸モノナトリウム。
【0016】
次に薬理試験について述べる。
ラット根尖性歯周炎モデルを用いて、(2S,3S)−3−[[(1S)−1−イソブトキシメチル−3−メチルブチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸モノナトリウム(化合物A)について薬理試験を行った。(実施例1)
根尖病変の大きさをマイクロCTにより評価した結果、化合物A投与群は、コントロール群に比べ根尖病変の形成が小さかった。(図1、2)
また病変中の炎症性サイトカインの発現量を比較したところ化合物A投与群は、コントロール群に比べIL−1α及び1L−6の発現量が有意に抑制された。(図3、4)
従って、上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩は歯周疾患の予防又は治療剤としての使用、歯周組織破壊に対する予防又は治療剤としての使用が期待され、好ましくは歯周病及び根尖性歯周炎の予防及び治療剤として有用である。
【0017】
上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩は、ヒトに対して経口投与又は非経口投与のような適当な投与方法により投与することができる。なお歯周病及び根尖性歯周炎に罹患している犬、ネコ等の動物への適用も可能である。
また、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤と併用することも可能である。
製剤化するためには、製剤の技術分野における通常の方法で錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、懸濁剤、注射剤、歯科用軟膏製剤、バッカル剤、坐薬等の剤型に製造することができる。
これらの調製には、例えば錠剤の場合、通常の賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、色素などが用いられる。ここで、賦形剤としては、乳糖、D−マンニトール、結晶セルロース、ブドウ糖などが、崩壊剤としては、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)などが、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどが、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。注射剤の調製には溶剤、安定化剤、溶解補助剤、懸濁剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤などが用いられる。
【0018】
投与量は通常成人においては、注射剤で有効成分である上記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を1日約0.01mg〜100mg,経口投与で1日1mg〜2000mgであるが、年齢、症状等により増減することができる。
次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
(実験方法)
実験には、6週齢のWistar系雄性ラットを用いた。下顎第一臼歯をラウンドバーにて露髄後、抜髄し、口腔内に開放することにより根尖性歯周炎を誘発した。実験群では、露髄開放時より(2S,3S)−3−[[(1S)−1−イソブトキシメチル−3−メチルブチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸モノナトリウム(化合物A:150mg/kg)を1日2回経口投与した。非投与群をコントロールとした。21日後に屠殺して下顎臼歯を周囲の顎骨ごと摘出し、左側は4%パラホルムアルデヒド/リン酸塩緩衝液(PBS)にて固定(4℃,12時間)した後、マイクロCT撮影(Shimadzu SMX−90CT)により根尖病変の大きさを測定した。その後、15%EDTA溶液にて脱灰、OCTコンパウンドにて包埋し、厚さ7μmの凍結切片を作製してヘマトキシリン・エオジン(HE)染色および酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を行い、組織学的に検討した。右側は、根尖周囲の病変部を根尖とともに一塊として摘出し、RNA抽出(Qiagen:RNeasy Lipid Tissue Mini Kit)後、通法に従いcDNAを作製(Invitrogen:SuperscriptIII)し、リアルタイムPCR(BioRad:DNA Engine Opticon2、Invitrogen:Platinum:SYBR Green qPCR SuperMix)にて起炎症性サイトカイン(IL−1α,IL−6)の発現量を測定した。
【0020】
(結果)
根尖病変の大きさをマイクロCTにより評価した結果、コントロール群では大きな根尖病変が形成されていた。一方、化合物A投与群においても根尖病変は形成されていたが、その大きさはコントロール群と比較して小さかった(図1、2)。また、組織学的に検討した結果、コントロール群においては多数の破骨細胞が根尖周囲の歯槽骨上に観察され、活発な骨吸収が行われている像が認められた。これに対し、化合物A投与群では破骨細胞は認められるものの、その数は少ない傾向にあった。病変中の炎症性サイトカイン発現を比較したところ、化合物A投与群においてはIL−1αおよびIL−6の発現が有意に抑制されていた(図3、4)。
図1〜4から明らかなように、化合物Aはラット実験的根尖性歯周炎の進展に対して優れた抑制効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基、炭素原子数が2〜10のアルキニル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基、炭素原子数が2〜10のアルキニル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基、炭素原子数が2〜10のアルキニル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
Xは、−O−又はNR−を表す。ここでRは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、OR、SR、又はNRを表す。
ここでRは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数2〜20のアシル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数2〜20のアシル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数2〜20のアシル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、そしてRは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
そしてYは、水素原子又は炭素原子数が1〜10のアルキル基を表すか、あるいは、YとYとは一緒になって、=O、=S、=N−R又は=N−OR10を表す。
ここで、Rは、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表し、
そしてR10は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が6〜20のアリール基、炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数1〜6のアルキル基とからなるアラルキル基、炭素原子数が3〜12の複素環基、又は炭素原子数が3〜12の複素環基と炭素原子数が1〜6のアルキル基とからなる複素環アルキル基を表す。
なお、上記R〜R10のアルキル基はいずれも、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素原子数が1〜6のアルキルアミノ基、合計炭素原子数が2〜12のジアルキルアミノ基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、炭素原子数が2〜7のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜7のアルキルアミノカルボニル基、合計炭素原子数が3〜13のジアルキルアミノカルボニル基、及びグアニジノ基からなる群より選ばれる一若しくは二以上の置換基を有していてもよく、また上記R〜R10の各アリール基及び各複素環基は、炭素原子数が1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素原子数が1〜6のアルキルアミノ基、合計炭素原子数が2〜12のジアルキルアミノ基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜6のハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数が2〜7のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜7のアルキルアミノカルボニル基、合計炭素原子数が3〜13のジアルキルアミノカルボニル基、アミジノ基、及びグアニジノ基からなる群より選ばれる一若しくは二以上の置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
が水素原子又は炭素原子数が1〜6のアルキル基である請求項1記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項3】
が炭素原子数が1〜6のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である請求項1又は2記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項4】
が水素原子又は炭素原子数が6〜20のアリール基である請求項1〜3記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項5】
Xが−O−である請求項1〜4記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項6】
がヒドロキシル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、アセトキシ基、又は炭素原子数が6〜20のアリール基と炭素原子数が1〜6のアルキル基からなるアラルキルオキシ基である請求項1〜5記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項7】
がイソブチル基又はイソプロピル基であり、Rが水素原子であり、YがORであり、そしてYが水素原子である請求項1記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項8】
がイソブチル基又はイソプロピル基であり、Rが炭素原子数が6〜20のアリール基であり、YがORであり、そしてYが水素原子である請求項1記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項9】
とYとが一緒になって、=Oを形成する請求項1記載のエポキシコハク酸誘導体又はその生理学的に許容できる塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項10】
生理学的に許容できる塩がアルカリ金属塩である請求項1〜9記載のエポキシコハク酸誘導体の塩を有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項11】
(2S,3S)−3−[[(1S)−1−イソブトキシメチル−3−メチルブチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸モノナトリウムを有効成分として含有する歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項12】
対象疾患が歯周病である請求項1〜11記載の歯周疾患の予防又は治療剤。
【請求項13】
対象疾患が根尖性歯周炎である請求項1〜11記載の歯周疾患の予防又は治療剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−148978(P2012−148978A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218590(P2009−218590)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000228590)日本ケミファ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】