説明

歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤

【課題】優れたオートインデューサー−2阻害活性を有し、歯周病又は齲蝕病の予防及び治療に有効な、歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤を提供することを目的とする。
【解決手段】分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した少なくとも1種の化合物又はその塩を有効成分とする、歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周組織は、歯の周囲にあって歯を支持する役割を担っている組織をいい、歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨から構成されている。その歯周組織の炎症のうち、炎症が歯肉に限局したものを「歯肉炎」といい、炎症部位が歯肉を超えて広がり歯根膜や歯槽骨が損傷、破壊した場合を「歯周炎」という。これらを総称して「歯周病」という。
また、齲蝕病は、歯質が脱灰されて起こる、歯が実質的に欠損する症状をいう。
歯周病及び齲蝕病は、ともに、歯垢(口腔内の食物残渣等に細菌などが付着して繁殖した塊)の中の口腔常在菌が増殖し、他の要因も影響して生じる口腔内感染症である。これらの口腔内感染症を放置すると症状は進行し、やがて歯が抜けることとなる恐れが大きく、循環器系疾患へのリスク増加も懸念される。
【0003】
これまでに、歯周病及び齲蝕病の予防・治療手段として、止血作用を有する、ヘキサヒドロキシジフェノイル基やデヒドロヘキサヒドロキシジフェノイル基を有するタンニンを用いて歯周疾患を予防することや(特許文献1参照)、プニカラジンを用いて、口腔常在菌の1種であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)に由来するグルコシルトランスフェラーゼ活性を阻害し、齲蝕病を予防すること(特許文献2参照)、などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−38208号公報
【特許文献2】特開昭61−100517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
口腔常在菌等の細菌は、自らの存在環境の変化を敏感に感知する機構を獲得してきた。このような機構の1つとして、特異的な情報伝達物質を介して環境における自らの密度を感知し、その密度に応じて自らのさまざまな生物活性を巧妙に制御していることが明らかとなっている。このような細菌間の情報伝達機構は、クオラムセンシングシステムと称される。
【0006】
クオラムセンシングシステムを有する細菌は、オートインデューサーと呼ばれるシグナル伝達分子を合成し、放出し、そのシグナル伝達分子に応答して、遺伝子発現を細胞密度の関数として制御する。これまで、アシルホモセリンラクトンがオートインデューサー−1として、4,5−ジヒドロキシ−2,3−ペンタンジオンがオートインデューサー−2として同定されている。
【0007】
ビブリオ属細菌、緑膿菌、セラチア、エンテロバクターなど臨床上重要な細菌がクオラムセンシングにオートインデューサー−1を利用することが報告されている。また、ビブリオ・ハーベイが、種内連絡には種特異性の高いオートインデューサー−1を利用し、種間連絡には種特異性の低いオートインデューサー−2を利用することが知られている。さらに最近の研究では、ある種の病原性細菌がオートインデューサー−2による種間でのクオラムセンシングにより、病原因子の産生を調節していることも示されている。このような病原性細菌としては、齲蝕原性菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)等が挙げられる。従って、歯周病及び齲蝕病などの口腔内感染症を予防・治療する上で、オートインデューサー−2を阻害する活性を有する物質が求められていた。
【0008】
本発明は、優れたオートインデューサー−2阻害活性を有し、歯周病又は齲蝕病の予防及び治療に有効な、歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、グルコースにヘキサヒドロキシジフェノイル(HHDP)基が結合し、加水分解によりエラグ酸を生成する、特定の構造を有する化合物が、オートインデューサー−2を阻害する活性を有し、歯周病又は齲蝕病に対して有効な化合物であることを見い出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至った。
【0010】
本発明は、分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した少なくとも1種の化合物又はその塩を有効成分とする、歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤に関する。
【0011】
【化1】

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れたオートインデューサー−2阻害活性を有し、歯周病又は齲蝕病の予防及び治療に有効な、歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤は、分子内に下記式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した少なくとも1種の化合物又はその塩を有効成分として含有する。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明に用いる化合物に含まれる、前記式(1)で表される部分構造を有するグルコース残基は1つであってもよいし、本発明に用いる化合物が、繰返し単位として、前記式(1)で表される部分構造を有するグルコース残基を2つ以上有していてもよい。本発明に用いる化合物において、式(1)で表される部分構造を有する前記グルコース残基の数は1〜10が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0016】
前記化合物の塩としては、薬学的に許容できる塩であれば特に制限されないが、例えば、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸等の無機酸との塩、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸及びクエン酸等の有機酸との塩が挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム及びトリエチルアミン等のアミン類との塩が挙げられる。本発明において、前記化合物の塩としては、アルカリ金属との塩が好ましく、ナトリウム塩及びカルシウム塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0017】
以下に、本発明に用いる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】
本発明に用いる、分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した化合物又はその塩は、広く一般に入手できる。例えば、通常の合成方法により化学的に合成してもよいし、天然物から抽出してもよい。また、本発明では市販のものを用いてもよい。本発明において、前記化合物又はその塩が、加水分解によりエラグ酸を生成する、植物由来のGOD型エラジタンニンであることが好ましい。
前記化合物又はその塩を天然物から抽出する場合には、バラ科ラズベリー(Rubus idaeus)の果実、バラ科シマバライチゴ(Rubus lambertianus)の果実、バラ科ローザ・ヘンリュイ(Rosa henryi)の根、バラ科甜茶(Rubus suavissimus)の葉、バラ科イチゴ(Fragaria ananassa)の果実、バラ科ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)の根等から抽出することができる(T.Okuda et al.,Phytochemistry,32(3),p.507(1993)、T.Tanaka et al.,Chem.Pharm.Bull.,41(7),p.1214(1993)、T.Yoshida et al.,Chem.Pharm.Bull.,40(8),p.1997(1992)等参照)。
【0029】
上記植物から本発明に用いる化合物又はその塩を抽出する抽出条件としては特に制限はなく、室温(例えば、4〜50℃)又は加温(室温〜溶媒沸点)下にて抽出する、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出する、等の通常の方法により抽出することができる。得られる化合物又はその塩の形態に特に制限はなく、各種溶剤抽出液、及びその希釈液、濃縮液、ペースト並びに乾燥末等の何れの形態でもよい。
【0030】
本発明に用いる化合物又はその塩を植物より抽出するために用いられる抽出溶剤としては特に制限はなく、極性溶剤、非極性溶剤のいずれも使用することができる。抽出溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状又は環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶剤が挙げられる。これらの抽出溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
前記抽出溶剤のうち、オートインデューサー−2阻害作用等を向上させる点から、有機溶剤を用いるのが好ましい。さらに、有機溶剤のうち、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類が好ましく、炭素数1〜4のアルコール類(例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数2〜4の低級アルコール類);炭素数3〜5のケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)がより好ましく、エタノール及びアセトンがさらに好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明に用いる化合物又はその塩を植物から抽出する場合、抽出に用いる有機溶剤には、水が含まれていてもよい(以下、「水を含む有機溶剤」を「含水有機溶剤」ともいう)。有機溶剤と水との配合割合(容量比)としては特に制限はないが、0.001〜100:99.999〜0が好ましく、5〜95:95〜5がより好ましく、20〜80:80〜20が更に好ましく、30〜70:70〜30が特に好ましく、40〜60:60〜40が最も好ましい。
前記含水有機溶剤のうち、含水水溶性有機溶剤がより好ましく、含水アルコール類及び含水アセトンがさらに好ましく、含水エタノール及び含水アセトンが特に好ましい。含水エタノールなどの含水アルコール類において、アルコール類濃度が40〜60容量%であることが好ましい。また、含水アセトンにおいて、アセトン濃度が40〜80容量%が好ましい。
【0033】
本発明に用いる化合物又はその塩を植物から抽出する際の溶剤の使用量としては特に制限はないが、植物組織(乾燥質量換算)1gに対して1〜100mLが好ましい。また、抽出時間としては特に制限はないが、1分間〜100日間が好ましく、1分間〜10日間がより好ましい。このときの抽出温度としては特に制限はないが、0℃〜溶媒沸点が好ましく、5〜80℃がより好ましく、5〜50℃がさらに好ましく、10〜40℃が特に好ましい。
【0034】
植物から本発明に用いる化合物又はその塩を得る抽出手段は、具体的には、固液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等の手段を用いることができる。例えば、浸漬の好適な一例としては、4〜50℃で、5時間〜10日間の浸漬が挙げられる。
また、抽出時間を短縮する場合には、攪拌を伴う固液抽出が望ましい。この固液抽出の好適な条件の一例としては、10〜100℃(好ましくは10〜50℃)下、1000〜5000rpmで1〜30分間の攪拌が挙げられる。
抽出物の酸化を防止するため、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する手段を併用してもよい。
【0035】
植物抽出物から水溶性の夾雑物を除去するため、植物又はその抽出物を水洗するのが好ましい。水洗の一例としては、植物を、ホモジナイズや粉砕し、適宜乾燥等の前処理を行なった後水洗して、遠心分離やろ過等の分離手段により得られた抽出残査を予め調製し、次いで上述の有機溶剤で本発明に用いる化合物又はその塩を抽出してもよい。水洗の際に、浸漬、超音波、マイクロ波、攪拌、振とう等の手段を用いることができる。このうち攪拌が好ましく、このときの回転数は、1000〜5000rpm程度であればよい。水洗の際の処理時間としては特に制限はないが、1〜60分間が好ましく、1〜30分間がより好ましい。水洗の際の処理温度としては特に制限はないが、4〜100℃が好ましく、抽出物の変質を抑制する場合には4〜50℃が好ましい。水洗に用いる水の使用量としては特に制限はないが、植物組織又はその抽出物(乾燥質量換算)1gに対して、1〜100mLが好ましい。なお、抽出残査から上述の有機溶剤で抽出する方法としては、4〜80℃下で、当該残渣と有機溶剤とを1〜30分間混合攪拌(1000〜5000rpm程度)して抽出する方法が好ましい。
【0036】
植物抽出物から本発明に用いる化合物又はその塩を精製するため、クロマトグラフィーや液々分配等の分離技術を用いてもよい。植物組織又はその抽出物(好ましくは有機溶剤抽出物)をクロマトグラフィーに付すのが、本発明に用いる化合物又はその塩が高純度化される点から好ましい。
クロマトグラフィーに用いる固定相としては、例えば、強・弱酸性イオン交換樹脂又は強・弱塩基性イオン交換樹脂;オクタデシル化シリカゲル、オクチル化シリカゲル、ブチル化シリカゲル、トリメチルシリル化シリカゲル等の逆相樹脂;シリカゲル、フロリジール、アルミナ等の順相樹脂;スチレン−ジビニルベンゼン系、メタクリル酸エステル系等の芳香族系合成樹脂;修飾デキストラン系(例えば、Sephadex(登録商標)LH−20等)、親水性ビニルポリマー系(例えば、トヨパール HW−40(商品名)等)等のゲルろ過クロマトグラフィー用充填剤;活性炭等が挙げられるが、このうち、逆相樹脂及び芳香族系合成樹脂、ゲルろ過クロマトグラフィー用充填剤等好ましい。
植物抽出物(好ましくは植物有機溶剤抽出物)をクロマトグラフィーに付してオートインデューサー−2阻害作用を有する溶出画分(以下、「活性画分」又は「AI−2活性画分」ともいう)を得る方法の一例としては、260〜300nm、より好ましくは270〜290nmの検出波長で活性画分を得るのが好ましい。
植物抽出物を、逆相樹脂等を用いたクロマトグラフィーに付した後、溶出溶媒をグラジュエントして、活性画分を得ることができる。このときの溶出溶媒としては、ぎ酸:水:アセトニトリル=0〜5:100〜0:0〜100が好ましく、ぎ酸:水:アセトニトリル=0.01〜2:95〜10:5〜90がより好ましい。カラム温度としては特に制限はないが、20〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。また、流速としては特に制限はないが、1〜40mL/分が好ましく、15〜25mL/分がより好ましい。活性画分を分取する際の保持時間は、5〜100分が好ましく、20〜50分がより好ましい。
また、植物抽出物を、芳香族系合成樹脂を用いた中・高圧クロマトグラフィーに付して吸着後、樹脂体積の100〜1000容量%(好ましくは300〜600容量%)の水で洗浄し、次いで樹脂体積の100〜1000容量%(好ましくは300〜600容量%)の有機溶剤又は含水有機溶剤で溶出させ、活性画分を得ることもできる。このときに用いる有機溶剤又は含水有機溶剤は上述と同様のものを用いることができる。
更に、上述の逆相樹脂を用いたクロマトグラフィーと芳香族系合成樹脂を用いたクロマトグラフィーとを併用してもよく、植物抽出物を付す際の順序としてはいずれが先でもよいが、植物抽出物を芳香族系合成樹脂を用いたクロマトグラフィーに付して活性画分を得、次いで得られた活性画分を逆相樹脂を用いたクラマトグラフィーに付して特に活性の高い活性画分を得るのが好ましい。
【0037】
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤において、分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した化合物又はその塩の1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0038】
本発明において、前記有効成分を溶媒に溶解/分散させ、歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤としてもよい。本発明で用いることができる溶媒としては特に制限はないが、水、メタノール、エタノール、グリセリン、アセトン、ジメチルスルホキシド等およびこれらの混液が挙げられ、水、エタノール、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0039】
本明細書におけるオートインデューサー−2(以下、「AI−2」ともいう)としては、細菌が産生するものでAI−2活性を有するものであれば特に制限はない。
本明細書におけるAI−2の具体例としては、下記式で表される4,5−ジヒドロキシ−2,3−ペンタンジオン(本明細書において、DPDともいう)、及びDPDが有するAI−2活性と同等のAI−2活性を有する化合物が包含される。
【0040】
【化13】

【0041】
前記DPDは、細菌のAI−2受容体と結合するときにボロンを取り込んで、フラノシルボレートジエステルに変換される。本発明におけるAI−2の別の具体例としては、前記フラノシルボレートジエステルが挙げられる。また、DPDはリン酸化されてリン酸化DPD(Phospho-DPD)となり、AI−2活性を発現することが知られている(例えば、Taga M.et al.,Mol.Microbiol.,42,p.777-793,2001参照)。本発明におけるAI−2は、リン酸化DPDも包含する。
前記フラノシルボレートジエステル及びPhospho-DPDの具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
【0042】
【化14】

【0043】
本明細書においてAI−2を阻害することは、AI−2がクオラムセンシングを介して細菌に及ぼす影響を阻害することをさし、AI−2活性を阻害すること、AI−2分解すること、AI−2のAI−2受容体への結合を阻害することなどが包含される。
【0044】
本明細書においてAI−2活性は、AI−2がクオラムセンシングシステムを有する細菌に影響を及ぼす活性、すなわち、AI−2を介するクオラムセンシングによりもたらされる細菌の機能を促進する活性をさす。細菌は、AI−2を介するクオラムセンシングにより、発光、スウォーミング、バイオフィルム形成、タンパク質分解酵素の産生、抗生物質の合成、遺伝子受容能の発達、プラスミド接合伝達、病原因子産生及び胞子形成等を行うことが知られている。したがって、AI−2活性は、換言すれば、AI−2を認識する細菌、すなわちAI−2受容体を有する細菌による生物発光、スウォーミング、バイオフィルム形成、タンパク質分解酵素の産生、抗生物質の合成、遺伝子受容能の発達、プラスミド接合伝達、病原因子産生及び/又は胞子形成の活性ということができる。本明細書においてAI−2活性は、特に、細菌の病原因子産生活性をさす。
【0045】
前記病原因子としては、例えば、エンテロトキシン、アデニル酸シクラーゼ毒素、アドヘシン、アルカリプロテアーゼ、溶血毒、炭疽毒素、APX毒素、α毒素、β毒素、δ毒素、C2毒素、C3毒素、ボツリヌス毒素、束状線毛構造サブユニット、C5Aペプチダーゼ、心臓毒、走化性、コレラ毒素、毛様体毒素、クロストリジウム細胞毒、クロストリジウム神経毒、コラーゲン接着遺伝子、細胞溶解素、嘔吐毒素、内毒素、表皮剥脱毒素、外毒素、細胞外エラスターゼ、フィブリノゲン、フィブロネクチン結合タンパク質、線維状赤血球凝集素、フィンブリア、ゼラチナーゼ、赤血球凝集素、ロイコトキシン、リポタンパク質シグナルペプチダーゼ、リステリオリシンO、Mタンパク質、神経毒、非フィンブリアアドヘシン類、浮腫因子、透過酵素、百日咳毒素、ホスホリパーゼ、線毛、孔形成毒素、プロリンパーミアーゼ、セリンプロテアーゼ、志賀毒素、破傷風毒素、チオール活性化細胞溶解素、気管細胞溶解素、ウレアーゼなどが挙げられるが、本発明はこれらに制限されない。
【0046】
AI−2阻害活性を有する本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の有効成分で影響を及ぼすことができる細菌、換言すれば、本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の有効成分で増殖・生育を抑制できる細菌は、AI−2によりその機能、例えば、生物発光、スウォーミング、バイオフィルム形成、タンパク質分解酵素の産生、抗生物質の合成、遺伝子受容能の発達、プラスミド接合伝達、病原因子産生及び胞子形成などが促進される細菌である。例えば、AI−2受容体を有する細菌、好ましくはAI−2受容体を有し、AI−2を産生する細菌を対象とすることができる。
【0047】
AI−2活性は、AI−2を認識することにより発光するレポーター細菌、好ましくはAI−2受容体及びルシフェラーゼを有する細菌を用いるバイオアッセイにより測定することができる(例えば、Keersmaecker S.C.J.et al.,J.Biol.Chem.,280(20),p.19563-19568,2005参照)。具体的には、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)BB170株をレポーター細菌とし、被検化合物の存在下で培養し、培養後の発光強度をケミルミネッセンス計などで測定することにより、AI−2活性を測定することができる。
【0048】
AI−2を阻害することにより影響を及ぼす、又は増殖・生育を抑制することができる細菌としては、例えば、ビブリオ(Vibrio)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属細菌、エルシニア(Yersinia)属細菌、エシェリキア(Escherichia)属細菌、サルモネラ(Salmonella)属細菌、ヘモフィルス(Haemophilus)属細菌、ヘリコバクター(Helicobacter)属細菌、バシルス(Bacillus)属細菌、ボレリア(Borrelia)属細菌、ナイセリア(Neisseria)属細菌、カンピロバクター(Campylobacter)属細菌、デイノコックス(Deinococcus)属細菌、ミコバクテリウム(Mycobacterium)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、シゲラ(Shigella)属細菌、エロモナス(Aeromonas)属細菌、エイケネラ(Eikenella)属細菌、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、アクチノマイセス(Actinomyces)属細菌、バクテロイデス(Bacteroides)属細菌、カプノサイトファガ(Capnocytophaga)属細菌、クレブシエラ(Klebsiella)属細菌、ハロバチルス(Halobacillus)属細菌、フゾバクテリウム(Fusobacterium)属細菌、エルウィニア(Erwinia)属細菌、エルベネラ(Elbenella)属細菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、リステリア(Listeria)属細菌、マンヘイミア(Mannheimia)属細菌、ペプトコッカス(Peptococcus)属細菌、プレボテラ(Prevotella)属細菌、プロテウス(Proteus)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌及びベイロネラ(Veillonella)属細菌などが挙げられる。より具体的には、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、シュードモナス・ホスホレウム(Pseudomonas phosphoreum)、ポリフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgfdorferi)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ペスト菌(Yersinia pestis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、デイノコックス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、箕田赤痢菌(Shigella flexneri)、シゲラ・ボイデイ(Shigella boydii)、セレウス菌(Bacillus cereus)、バチルス・クブチリス(Bacillus cubtilis)、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、チフス菌(Salmonella enterica)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、ヘリコバクター・ヘパティカス(Helicobacter hepaticus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、スタフィロコッカス・ハエモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ストレプトコッカス・サンギニス(Streptococcus sanguinis)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、ビブリオ・ブルニフィカス(Vivrio vulnificus)、ビブリオ・ミミクス(Vibrio mimicus)、ビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、エルウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)、エルウィニア・カロトバラ(Erwinia carotovara)、ハロバチルス・ハロフィラス(Halabacilus halophilus)、セラチア・ピムチカ(Serratia pymuthica)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・ブルガタス(Bacteroides vulgatus)、バクテロイデス・ディスタソニス(Bacteroides distasonis)、リステリア・モノサイトジェネス(Listeria monocytogenes)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、アエロモナス・ハイドロフィリア(Aeromonas hydrophilia)、マンヘイミア・ハエモライティカ(Mannhemia haemolytica)、クレブシエラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、アクチノマイセス・ナエスランディ(Actinomyces naeslundii)、ペプトコッカス・アナエロビウス(Peptococcus anaerobius)、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ベイロネラ・パルラ(Veillonella parvula)、カプノサイトファガ・スプティゲナ(Capnocytophaga sputigena)及びプレボテラ・インタメディア(Prevotella intermedia)などが挙げられる。
【0049】
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の有効成分は、ストレプトコッカス・ミュータンス、ポリフィロモナス・ジンジバリス、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・ゴルドニ、ストレプトコッカス・サングイニス、ストレプトコッカス・ミティス、アクチノマイセス・ナエスランディ、ペプトコッカス・アナエロビウス、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス、フゾバクテリウム・ヌクレアタム、ベイロネラ・パルラ、カプノサイトファガ・スプティゲナ、プレボテラ・インタメディア及びラクトバチルス・サリバリウスなどに対するAI−2の阻害に対し、特に好ましく用いられる。
【0050】
後述の実施例や特開2009−114120号公報にあるように、生体内において、AI−2量と歯周病及び齲蝕病の症状とが相関関係を有し、AI−2阻害活性を有する成分を投与することにより歯周病や齲蝕病の症状を低減できる。したがって、AI−2阻害活性を有する、分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した少なくとも1種の化合物又はその塩を有効成分とする、本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤は、歯周病又は齲蝕病の予防及び治療に有効である。
【0051】
本明細書において歯周病及び齲蝕病の予防には、歯周病及び齲蝕病の発症を抑えること及び遅延させることが含まれ、歯周病及び齲蝕病になる前の予防だけではなく、治療後の歯周病及び齲蝕病の再発に対する予防も含まれる。本明細書において歯周病及び齲蝕病の治療には、歯周病及び齲蝕病を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが包含される。
【0052】
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の投与対象は、好ましくは哺乳動物である。本明細書において哺乳動物は、温血脊椎動物をさし、例えば、ヒト及びサルなどの霊長類、マウス、ラット及びウサギなどの齧歯類、イヌ及びネコなどの愛玩動物、並びにウシ、ウマ及びブタなどの家畜が挙げられる。本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤は、霊長類、特にヒトへの投与に好適である。歯周病又は齲蝕病に罹患しているヒト、歯周病又は齲蝕病と診断されているヒト、歯周病又は齲蝕病罹患する可能性があるヒト、歯周病又は齲蝕病を予防する必要があるヒトに投与することが特に好ましい。
【0053】
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の形態は、特に制限されないが、例えば、医薬組成物、食品組成物及び口腔用組成物とするか、又はこれらに含有させることができる。
【0054】
医薬組成物を調製する場合は、通常、前記有効成分と好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体又は液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、適切なそれらの混合物、植物性油などの溶媒又は分散媒体などが挙げられる。
【0055】
医薬組成物は、経口により、非経口により、例えば、皮膚に、皮下に、粘膜に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、腹腔内に、膣内に、肺に、脳内に、眼に、及び鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤及び吸入剤などが挙げられる。非経口投与製剤としては、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤並びに軟膏、クリーム剤、ゲル剤、制御放出パッチ剤及び貼付剤などの皮膚外用剤などが挙げられる。本発明の医薬組成物は、徐放性皮下インプラントの形態で、又は標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソーム及びミクロスフェア)の形態で、非経口で投与してもよい。
【0056】
医薬組成物はさらに医薬分野において慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用できる。長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0057】
口腔用組成物には、前記有効成分のほか、その形態に応じて種々の成分を配合することができる。配合可能な成分として、例えば研磨剤、湿潤剤、粘結剤、歯質強化剤、殺菌剤、pH調整剤、酵素類、抗炎症剤・血行促進剤、甘味剤、防腐剤、着色剤・色素類、香料等を適宜使用することができる。
口腔用組成物に配合することができる成分としては、具体的に、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、無水ケイ酸、水酸化アルミニウム、アルミナ、ハイドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ゼオライト、合成アルミノケイ酸塩、ベンガラ等の研磨剤;前記の研磨剤を結合剤を用いて造粒した顆粒状研磨剤;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール等の湿潤剤;モノフルオルリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化ナトリウム等の歯質強化剤;クロルヘキシジン及びその塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、チモール類、塩化ベンザルコニウム等の殺菌剤;リン酸ナトリウム等のpH調整剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リゾチーム、ムタナーゼ等の酵素類;塩化ナトリウム、ヒノキチオール、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、アラントイン類、トコフェロール類、オクチルフタリド、ニコチン酸エステル類、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びその塩類、グリセロホスフェート、クロロフィル、水溶性無機リン酸化合物、アズレン類、カミツレ、センブリ、当帰、センキュウ、生薬類等の抗炎症剤・血行促進剤;サッカリンナトリウム、ステビオサイド、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等の甘味剤;p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、安息香酸ナトリウム等の防腐剤;二酸化チタン等の着色剤・色素類;ペパーミント油、スペアミント油、メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、アニス油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油等の香料等が挙げられる。
【0058】
口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、界面活性剤を配合することもできる。界面活性剤としては特に制限はないが、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0059】
口腔用組成物は、前記有効成分を配合し、常法により製造することができる。口腔用組成物の形態は特に制限されず、粉歯磨、液状歯磨、練歯磨、潤製歯磨、口腔パスタ等のペースト状洗浄剤、洗口液、マウスウォッシュ等の液状洗浄剤、うがい用錠剤、歯肉マッサージクリーム、チューインガム、トローチ、キャンディ等の食品等の形態とすることができる。
【0060】
食品組成物を調製する場合、その形態は特に制限されず、飲料も包含される。一般食品の他に、感染症(具体的には、歯肉炎や歯骨炎などの歯周病、齲蝕病等)の予防・改善等をコンセプトとしてその旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品なども包含される。健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品は、具体的には、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができ、これら製剤のために使用することができる。製剤形態の食品組成物は、医薬製剤と同様に製造することができ、前記有効成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、食品組成物は、スープ類、ジュース類、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品組成物、パン類、うどんなどの麺類、クッキー、チョコレート、キャンディ、ガム、せんべいなどの菓子類、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類等の形態もとりうる。また、食品には、飼料も含まれる。
【0061】
食品組成物には、種々の食品添加物、例えば、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合してもよい。
【0062】
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の投与量は、歯周病又は齲蝕病を予防及び/又は治療しうる量であればよく、投与方法、年齢、症状等により適宜決定することができる。例えば、前記有効成分の質量に基づき、1日あたり、体重1kgあたり、経口投与で通常0.001〜100mg、好ましくは0.01〜10mgである。
【0063】
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤における前記有効成分の含有量は、上記投与量を達成するように適宜決定できる。例えば、乾燥質量基準で、通常0.0001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%の量で前記有効成分を含む。
【0064】
前記有効成分を投与することにより、AI−2を阻害することができ、ひいては、歯周病又は齲蝕病を予防及び/又は治療することができる。
【0065】
従来の歯周病又は齲蝕病などの感染症の予防及び治療には抗生物質の投与が行われてきた。しかし細菌が薬剤耐性を獲得するため、抗生物質の効果が減弱してしまう。一方、AI−2を阻害すれば、細菌が本来持つシステムを使ってその病原性を制御することが可能となるため、薬剤耐性を持っている細菌にも効果が期待できる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
(製造例1)
ラズベリー(Rubus idaeus)果実の凍結乾燥粉末(商品名:FDラズベリーパウダー、協立物産より入手)40gに、10倍量(400mL)のイオン交換水を加え、TKオートホモミキサー(特殊機化工業社製)により、室温下3000rpmで10分間攪拌した。その後、遠心分離(3000rpm、20分)し、上澄を除去した。本操作を3回繰り返し、水溶性成分を除去した。残渣を50%エタノール400mLで抽出し、TKオートホモミキサー(特殊機化工業社製)により室温下3000rpmで10分間攪拌し、遠心分離(3000rpm、20分)により、上澄みを回収した。本操作を3回繰り返し、得られる3回分の上澄みを併せ、減圧濃縮しラズベリー抽出物を得た(1.3g)。
【0068】
(製造例2)
ラズベリー(Rubus idaeus)果実の凍結乾燥粉末(商品名:FDラズベリーパウダー、協立物産より入手)100gを、10倍量(1L)の50%エタノールに常温で15時間浸漬し、不溶物を濾別後、減圧濃縮し粗抽出物を得た(固形分59g)。得られた粗抽出物のうち20gを水に再溶解した後、ダイヤイオンHP−20(商品名、三菱化学社製、1000mL)に吸着させた。なお、前記ダイヤイオンHP−20は、予め水4Lで洗浄した後50%エタノール4Lで溶出したものを用いた。得られた溶出液を減圧にて濃縮し、HP−20抽出物1.21gを得た。得られた抽出物のうち400mgについてさらにHPLCにより分画することにより、2種類の化合物を得た(収量:43mg及び16mg)。分画条件は次の通りである。
<分画条件>
カラム:Inertsil ODS−3(商品名、直径20mm×長さ250mm、GLサイエンス社製)
溶媒:A液 1%蟻酸水溶液、B液 アセトニトリル
A液/B液=90/10(体積比)→(10分)→90/10(体積比)→(30分)→80/20(体積比)
温度:40℃
流速:18.9mL/分
検出:UV=280nm
サンプル400mgを20mLの10%エタノールに溶解後、1mLずつ23回チャージ
【0069】
(化合物の同定)
製造例2で得られた2種類の化合物について、1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルの測定を行った。その結果、製造例2で得られた2種類の化合物のスペクトルと、T.Yoshida et al.,Chem.Pharm.Bull.,40(8),p.1997(1992)及びT.Tanaka et al.,Chem.Pharm.Bull.,41(7),p.1214(1993)記載の例示化合物(1−3)(サンギインH−6)及び例示化合物(2−3)(ランベルチアニンC)のスペクトルデータと一致した。これらの結果から、製造例2で得られた2種類の化合物は、それぞれ例示化合物(1−3)(収量:43mg)及び例示化合物(2−3)(収量:16mg)である。
また、製造例1で得られたラズベリー抽出物、並びに製造例2で得られた例示化合物(1−3)及び例示化合物(2−3)について、下記に示すHPLC分析条件でHPLC分析を行ったところ、化合物の溶出時間が一致した。この結果から、製造例1で得られたラズベリー抽出物に例示化合物(1−3)及び例示化合物(2−3)が含まれることを確認した。なお、HPLC分析により製造例1で得られたラズベリー抽出物に含まれる例示化合物(1−3)を定量したところ、24質量%であった。
<HPLC分析条件>
カラム:Inertsil ODS−3(オクタデシル化シリカゲル、GLサイエンス社製、直径4.6mm×長さ250mm、粒径5μm)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出:UV280nm
溶離液:A液 1%ぎ酸水溶液、B液 アセトニトリル
A/B=(0分)90/10→90/10(10分)→80/20(70分)→90/10(71分)→90/10(80分)
【0070】
試験例1 AI−2活性の測定
AI−2バイオアッセイ系のためのレポーター菌株としてのビブリオ・ハーベイBB170株(ATCC BAA−1117)をMarine Agar 2216培地(商品名、Difco社製)で30℃、好気条件下で培養した。このように培養したビブリオ・ハーベイBB170株の一白金耳をMarine Broth 2216培地(商品名、Difco社製)3mLに植菌し、好気条件下8時間、30℃、200rpmで振盪培養を行った。前記菌液200μLをAB(Autoinducer Bioassay)培地に植菌し、好気条件下16時間、30℃、200rpmで振盪培養を行った。この菌液をAB培地で4500倍に希釈し、レポーター菌液とした。
なお、AB培地は、Mol.Microbiol.,9(4),p.773-786,1993を参照して以下の通り調製した。0.2%Vitamin-free casamino acids(Difco社製)、0.3M NaCl(和光純薬社製)、0.05M MgSO4・7H2O(和光純薬社製)の溶液を任意の濃度のKOH溶液(和光純薬社製)でpH7.5に調整し、オートクレーブ後室温で保存した。この溶液1Lに対し、1Mリン酸カリウムバッファー(1M KH2PO4 21.1mL+1M K2HPO4 28.9mL)10mL、0.1M L−アルギニン(free-base、和光純薬社製)10mL、1mg/mL thiamine HCl(和光純薬社製)1mL、10μg/mL リボフラビン(和光純薬社製)1mL及びグリセロール(和光純薬社製)20mLをよく混和後、濾過滅菌したもの42mLを添加し、AB培地を調製した。
【0071】
このレポーター菌液と、前記製造例にて調製したラズベリー抽出物のエタノール溶液又は例示化合物(1−3)のDMSO溶液とを9:1の割合で混和し、室温で10分プレインキュベートした。次いで、DPD(OMM Scientificに合成検討を依頼し、同社で合成したものを購入した)を終濃度が10μMとなるように添加し、30℃にて好気振盪培養を行った。4時間後の発光強度をケミルミネッセンス計(ベルトールド社製、Mitharas LB940(商品名))で測定した。なお、発光強度は、DPDのみ添加したコントロールの発光強度を100とし、ラズベリー抽出物又は例示化合物(1−3)を添加したときの発光強度をコントロールに対する相対値として表した。当該値が低いと、AI−2が阻害されていることを示す。さらに、ポジティブコントロールとして、AI−2阻害化合物として既知の化合物(4−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)−2(5H)−フラノン、Sigma社製、終濃度:10μM)を用い、同様にAI−2活性を測定した。なお、ラズベリー抽出物の濃度は、測定系内での終濃度が0.001%になるように調製した。また、ラズベリー抽出物に例示化合物(1−3)が24質量%含有されていたことから、測定系内での例示化合物(1−3)の終濃度は1.28μMである。
その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の結果から明らかなように、本発明に用いる化合物を添加することで、AI−2相対活性が、既知のAI−2阻害化合物に比して同等もしくはそれ以下まで低下した。したがって、本発明に用いる化合物は、既知のAI−2阻害化合物に比して、同等もしくはそれ以上のAI−2阻害活性を有することが示された。
【0074】
試験例2 歯垢中AI−2量と齲蝕病との関係
ビブリオ・ハーベイBB152株(ATCC BAA−1119)をMarine Agar2216培地で30℃、好気条件下で培養した。このように培養したビブリオ・ハーベイBB152株の一白金耳をMarine Broth2216培地に植菌し、好気条件下8時間、30℃、200rpmで振盪培養を行った。
上記菌液をAB培地に植菌し、さらに好気条件下16時間、30℃、200rpmで振盪培養を行った。遠心分離(8000rpm、15分、4℃)後の上清を取り出し、カットオフ値1Kのスピンカラム(ポール社製)を用いて分子量1000以下の画分を得、AI−2溶液とした(AI−2濃度:約0.1μM)。
【0075】
齲蝕原性細菌であるストレプトコッカス・ミュータンスJCM5705株をBHI寒天培地(Difco社製)に播種・培養(嫌気条件下で37℃、1日)した。このようにして培養したストレプトコッカス・ミュータンスJCM5705株の一白金耳をBHI液体培地(Difco社製)に植菌し、嫌気条件下で37℃、16時間培養した。PBSにて洗浄後、2×1010個/mLになるように菌液を調製した。
【0076】
抗生物質水溶液(アンピシリン、カナマイシン各2mg/mL)をSDラット(雄性、3週齢)に5日間自由飲水させた後、ストレプトコッカス・ミュータンス菌液をラットの左右下顎臼歯部に各50μL、1回/日で5日間滴下した。食餌は齲蝕誘導食であるDiet2000(商品名、オリエンタルバイオサービス社製)を与えた。その後、AI−2溶液又はAB培地(コントロール)を2回/日、1回当たり200μLを臼歯部に1ヶ月間滴下した(各群N=5)。また、ストレプトコッカス・ミュータンス菌液を滴下しない群も設定した(N=5)。
【0077】
各群のSDラットの齲蝕の程度を示す齲蝕スコアを、Keyes P.H.et al.,J.Dent.Res.,37,6,p.1958に記載の方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
表2の結果から、歯垢中AI−2量と齲蝕病とが相関関係を有し、従って、歯垢中のAI−2が齲蝕亢進に関与し、AI−2活性の阻害が齲蝕病の予防・改善に有効であることが示された。
したがって、AI−2阻害活性を有する本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤は、齲蝕病の予防・改善に有効である。
【0080】
試験例3 殺菌試験
試験例1と同様に調製(希釈度は5000倍)したレポーター菌液と、前記製造例にて調製したラズベリー抽出物のエタノール溶液又は例示化合物(1−3)のDMSO溶液を9:1の割合(体積比)で混和し、好気条件下で30℃、4時間インキュベートした(各剤の終濃度は1.28μM)。次いで、AB培地で1000倍に希釈し、Marine Agar培地(Difco社製)に播種し、30℃で1日好気培養を行った。培養後、寒天培地に発生したコロニーをカウントし生菌数を算出した。なお、対象試験として、被験品溶液の代わりにAB培地のみを用いた以外は同様にして生菌数を算出した。その結果を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
表3に示すように、上記物質のレポーター菌に対する抗菌作用は認められなかった。したがって、本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤の有効成分は、歯周病及び/又は齲蝕病の原因菌等の病原性細菌に対する殺菌能を示すものではなく、病原性細菌の種間連絡に利用されるAI−2の活性を阻害するものであることを示すものである。
【0083】
(処方例)
本発明の歯周病又は齲蝕病の予防及び/又は治療剤として、下記に示す組成のチューブ入り練歯磨、練歯磨、樹脂製容器入りマウスウォッシュを常法により各々調製した。
【0084】
処方例1 チューブ入り練歯磨の調製
ソルビトール 35質量%
無水ケイ酸 20質量%
濃グリセリン 5質量%
製造例1で調製したラズベリー抽出物 0.01質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1質量%
香料 1質量%
フッ化ナトリウム 0.2質量%
サッカリンナトリウム 0.2質量%
塩化セチルピリジニウム 0.05質量%
精製水 残余
計100質量%
【0085】
処方例2 チューブ入り練歯磨の調製
炭酸カルシウム 30質量%
ソルビトール 28質量%
無水ケイ酸 8質量%
濃グリセリン 5質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1質量%
香料 1質量%
製造例1で調製したラズベリー抽出物 0.01質量%
酢酸dl−α−トコフェロール 0.2質量%
フッ化ナトリウム 0.2質量%
サッカリンナトリウム 0.2質量%
塩化セチルピリジニウム 0.05質量%
精製水 残余
計100質量%
【0086】
処方例3 練歯磨の調製
ソルビトール 28質量%
ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(40)共重合体 16質量%
無水ケイ酸 12質量%
パラチニット 10質量%
濃グリセリン 8質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5質量%
香料 1質量%
例示化合物(1−3) 0.01質量%
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7質量%
サッカリンナトリウム 0.2質量%
塩化セチルピリジニウム 0.05質量%
精製水 残余
計100質量%
【0087】
処方例4 練歯磨の調製
ソルビトール 28質量%
無水ケイ酸 15質量%
ポリエチレングリコール400 8質量%
エリスリトール 5質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1質量%
香料 1質量%
例示化合物(2−3) 0.01質量%
酢酸dl−α−トコフェロール 0.2質量%
フッ化ナトリウム 0.2質量%
サッカリンナトリウム 0.2質量%
塩化セチルピリジニウム 0.05質量%
精製水 残余
計100質量%
【0088】
処方例5 樹脂製容器入りマウスウォッシュの調製
エタノール 15質量%
キシリトール 7質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2質量%
サッカリンナトリウム 0.5質量%
製造例1で調製したラズベリー抽出物 0.1質量%
香料 0.2質量%
安息香酸ナトリウム 0.1質量%
酢酸dl−α−トコフェロール 0.05質量%
トリクロサン 0.02質量%
精製水 残余
計100質量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した少なくとも1種の化合物又はその塩を有効成分とする歯周病の予防及び/又は治療剤。
【化2】

【請求項2】
前記化合物が、下記式で表される化合物のいずれかである、請求項1記載の歯周病の予防及び/又は治療剤。
【化3】

【化4】

【請求項3】
前記化合物又はその塩が植物由来のエラジタンニンである、請求項1又は2記載の歯周病の予防及び/又は治療剤。
【請求項4】
前記有効成分の含有量が0.0001〜1質量%である、請求項1〜3のいずれか記載の歯周病の予防及び/又は治療剤。
【請求項5】
分子内に式(1)で表される部分構造及びグルコース残基を有し、該グルコース残基の4位と6位に式(1)で表される部分構造のヘキサヒドロジフェノイル基部分が置換した少なくとも1種の化合物又はその塩を有効成分とする齲蝕病の予防及び/又は治療剤。
【化2】

【請求項6】
前記化合物が、下記式で表される化合物のいずれかである、請求項5記載の齲蝕病の予防及び/又は治療剤。
【化5】

【化6】

【請求項7】
前記化合物又はその塩が植物由来のエラジタンニンである、請求項5又は6記載の齲蝕病の予防及び/又は治療剤。
【請求項8】
前記有効成分の含有量が0.0001〜1質量%である、請求項5〜7のいずれか記載の齲蝕病の予防及び/又は治療剤。




【公開番号】特開2012−116792(P2012−116792A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268202(P2010−268202)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】