説明

歯周病用光治療器

【課題】 歯周病治療に適する構造のプローブを備えると共に特定波長域の光による歯周病の治療を行うことができる歯周病用光治療器の提供。
【解決手段】 歯周病用光治療器は、波長400〜420nmの範囲に発光中心波長を有する光源と、この光源からの光を導光して光を照射すべき患部に放射するプローブとを備えることを特徴とする。プローブは、光源からの光が導光される方向と同方向に水を流す流水路を有することが好ましい。また、プローブは、水より屈折率が低い樹脂からなる樹脂製中空管を備え、当該樹脂製中空管内部が流水路として機能し、この流水路に満たされた水によるコア部と、前記樹脂製中空管によるクラッド部とにより、導光路が形成されている構成とすることができる。さらに、プローブは、その内部に前記光源が配設されたハンドピースに対して、着脱自在に設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病用光治療器に関し、特に、可視域の光を放射する光源を用いた歯周病用光治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、歯周病原性を示す数種の嫌気性細菌が、歯と歯肉の間の歯周ポケットに入り込み、これに感染し歯肉が炎症を起こすことがその主因とされている。
そして、最近、この歯周病の治療法として、光を用いた治療が提案されている。
【0003】
歯周病用の光治療器としては、例えば、図9に示すように、薬液を歯周ポケットに注入して治療を行い、その後にレーザ光をその歯周ポケット内の薬液あるいは別途歯周ポケットに注入した色素液に照射して菌の殺菌を行うための歯周病用プローブが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図9において、31はハンドピース、33はテーパ状の中空管よりなるプローブ、34は光ファイバである。
【0004】
しかしながら、上記のような歯周病用の光治療器においては、以下のような問題がある。
まず、この光治療器は、薬液を注入するためのプローブと光照射のためのプローブの2種を切換え可能な構造(以下、「切換えプローブ」ともいう。)、あるいは、薬液を注入するためのプローブと光照射のためのプローブが一体化した構造(以下、「一体化プローブ」ともいう。)であるところ、このような複雑な構造の光治療器はレーザ光を導光するプローブの交換が困難であり、また、製造コストが高価となる、という問題があり、また、一体化プローブのものを使用する場合には、患者が変わるたびにプローブ全体の殺菌をする必要があり、さらに、切換えプローブのものを使用する場合には、薬液を注入後に光照射のためのプローブに切換えて取り替える必要があり、使用上の利便性が低い、という問題もある。
【0005】
また、この光治療器は薬液に過敏な患者に対しては使用できないという問題もある。
【0006】
そして、薬液と共に照射されるレーザ光について、特許文献1に具体的な記載はないが、止血の記載から考えるに炭酸ガスレーザの中赤外線レーザまたは近赤外のYAGレーザまたは可視域の600nm近辺の波長の可視レーザと考えられるところ、このような長波長のレーザ光によっては歯周病菌の繁殖を確実に抑制させることができないおそれがある。
一方、一般に殺菌作用が得られる光としては紫外線が挙げられるが、紫外線レーザは人体皮膚の炎症を引き起こすなど人体皮膚にとって有害な光であって、歯周病治療に用いることはできない。
【特許文献1】実開平5−78209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、歯周病治療に適する構造のプローブを備えると共に特定波長域の光による歯周病の治療を行うことができる歯周病用光治療器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、歯周病菌に光照射して、歯周病菌の増殖についての光の波長依存性に関する調査実験を行うことにより、特定波長域の光による歯周病菌の増殖の抑制についての知見を得た。
【0009】
本発明の歯周病用光治療器は、波長400〜420nmの範囲に発光中心波長を有する光源と、この光源からの光を導光して光を照射すべき患部に放射するプローブとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の歯周病用光治療器においては、前記プローブが光源からの光が導光される方向と同方向に水を流す流水路を有することが好ましい。
また、この歯周病用光治療器は、前記プローブは、水より屈折率が低い樹脂からなる樹脂製中空管を備え、
当該樹脂製中空管内部が流水路として機能し、
この流水路に満たされた水によるコア部と、前記樹脂製中空管によるクラッド部とにより、導光路が形成されている構成とすることができる。
【0011】
本発明の歯周病用光治療器においては、前記プローブは、その内部に前記光源が配設されたハンドピースに対して、着脱自在に設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の歯周病用光治療器においては、前記樹脂製中空管が、フッ素樹脂よりなるものであることが好ましい。
また、前記プローブが金属製中空管よりなり、内面反射により導光されることが好ましい。
【0013】
本発明の歯周病用光治療器においては、前記光源が半導体レーザまたは発光ダイオードであることが好ましく、この半導体レーザまたは発光ダイオードの発光中心波長は405nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の歯周病用光治療器によれば、波長400〜420nmの範囲に発光中心波長を有する光源を備え、この光源より放射される波長400〜420nmの範囲の青色光(以下、「特定波長域の光」ともいう。)は紫外線と異なって人体に対して安全でありながら歯周病菌の増殖の抑制に有効であるために、薬液の使用を伴わずに歯周病の治療をすることができる。
【0015】
また、プローブに流水路が形成された構成の歯周病用光治療器によれば、光照射箇所を水で冷却することができ、火傷などを防止することができる。
また、プローブの流水路を導光路のコア部として使用する構成の歯周病用光治療器によれば、1つのプローブによって特定波長域の光の照射処理(以下、「光照射処理」ともいう。)と光照射箇所の冷却処理との両方の処理を行うことができるため、治療中にプローブの取換えなどの煩雑な作業を行う必要がなく、高い利便性が得られる。
また、プローブがハンドピースに着脱自在に設けられた構成の歯周病用光治療器によれば、プローブの殺菌などの作業を簡単に行うことができ、さらに、プローブを使い捨てとすることにより、感染に対して高い安全性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の歯周病用光治療器について説明する。
【0017】
図1は、本発明の歯周病用光治療器の一例における構成の概略を示す説明用図である。この歯周病用光治療器は、波長400〜420nm、好ましくは波長400〜410nmの範囲に発光中心波長を有する光源13(図2(a)参照。)と、この光源13からの光Lを導光して光を照射すべき患部に放射するプローブ11とを備えるものであり、具体的には、光源13を内蔵するハンドピース12に対して、プローブ11が、その基端部分を構成する金属製中空管15を介して、着脱自在に連結されている。
【0018】
このプローブ11は、図3にも示すように、金属製中空管15と、その内部が流水路Fとして機能する樹脂製中空管14とよりなり、この樹脂製中空管14は、水Wより屈折率(n)が低く、かつ人体に無害な樹脂、例えばフッ素樹脂など特にテフロンAF(登録商標)よりなり、流水路Fに水Wが満たされた状態とされることにより、当該流水路Fに満たされた水Wによるコア部と、樹脂製中空管14自体によるクラッド部とにより導光路が形成され、光源13からの光Lを光照射箇所(患部)までファイバー方式で導光することができる。
樹脂製中空管14は、例えば長さが10〜50mmであり、外径φが0.2〜1.5mm、内径φが0.05〜1.0mmである。
【0019】
流水路Fに満たされる水Wは、導光路を構成するコア部として機能すると共に、流通状態とされてプローブ11の先端開口部11Aから放水されることにより、光照射箇所(患部)を冷却する冷却水としても機能する。このような水Wとしては、飲料用水、精製水、滅菌精製水などが挙げられる。これらの水Wは、400nm、420nmの光についての屈折率(n)がそれぞれ1.343、1.341であり、また、これらの水Wは、400〜420nmの波長に対して吸収がなく、光源13から放射される光Lの伝播を阻害することがない。
なお、上記の樹脂製中空管14を形成するためのテフロンAF(登録商標)の400nmの光の屈折率(n)は、1.32である。
【0020】
流水路F内における水Wの流量は、例えば0.01〜5cc/secとされる。水Wの流量が0.01cc/sec以上であることにより、光照射箇所(患部)において照射された特定波長域の光の照射エネルギーによる熱を十分に冷却することができる。
【0021】
金属製中空管15は、人体に対して金属アレルギーなどを引き起こすことのない安全な金属である必要があり、さらに、特定波長域の光に対して反射率のよい金属であることが好ましい。金属製中空管15がこのような特定波長域の光に対して反射率のよい金属よりなることにより、樹脂製中空管14が意図せず損傷した場合にも、光漏れすることなく内面反射により導光することができる。
このような金属としては、例えばステンレス、ニッケル、銅、アルミニウム、金、銀、パラジウム、クロム、チタンなどを挙げることができる。
【0022】
この金属製中空管15は、樹脂製中空管14の基端部分14Aの外径に適合する内径の小径先端部分15Aおよびハンドピース12の本体光出射部分12Aの外径に適合する内径の大径嵌合部分15Bを有し、樹脂製中空管14の基端部分14Aが金属製中空管15の小径先端部分15A内に挿入された状態でプローブ11が構成されている。そして、金属製中空管15の大径嵌合部分15Bにハンドピース12の本体光出射部分12Aが挿入されて嵌合されることによって、プローブ11がハンドピース12に装着されている。
なお、この金属製中空管15の小径先端部分15Aは、曲げガイドとして構成されている。
【0023】
ハンドピース12は、光源13、この光源13の光出射方向に設けられた集光レンズ17、この集光レンズ17を水密に保持するo−リング18、および電源25からの電力を光源13に供給するためのコネクタ23を備える光源装置19と、この光源装置19が配置されたハンドピース外枠16内に設けられた導水路26Aとよりなる。
この例の歯周病用光治療器においては、導水路26Aは、図2(b)に示されるように、4本設けられており、それぞれの導水路26Aがハンドピース12の基端部から先端部に向かって伸びている。
【0024】
この歯周病用光治療器に備えられる光源13としては、例えば半導体レーザおよび発光ダイオードを挙げることができ、この光源13を構成する半導体レーザまたは発光ダイオードとしては、例えばその発光中心波長が405nmであるものが好ましい。
このような半導体レーザまたは発光ダイオードとしては、例えばGaN系半導体よりなるものを挙げることができる。
【0025】
図1において、27は導電線、28は貯水部29を内蔵する制御装置であり、26は、貯水部29からハンドピース12の導水路26Aを介して当該貯水部29に貯水された水Wを樹脂製中空管14内に供給するための導水管である。
【0026】
このような歯周病用光治療器は、以下のように動作される。
まず、図4に示されるように、プローブ11の先端開口部11Aを患者の歯21と歯肉22との間に形成される歯周ポケット20に挿入し、次いで、貯水部29から押圧ポンプ(図示せず)により導水管26および導水路26Aを介して流水路Fに水Wが供給されると共に、電源25が投入されて光源13から特定波長域の光Lが放射された状態とされる。
プローブ11においては、光源13からの光Lが、集光レンズ17によって集光され、樹脂製中空管14内に入射されて樹脂製中空管14内壁によって全内部反射によって伝播されることにより導光されて先端開口部11Aから出射され、同時に、流水路Fを流通した水Wが先端開口部11Aから放水され、これにより患部が冷却されながら光照射処理が行われて歯周ポケット20内の歯周病菌が殺菌される。
【0027】
ここに、光照射処理においては、歯周病菌の種類などによっても異なるが、例えば3〜30J/cm2 、好ましくは15〜18J/cm2 のエネルギー密度で特定波長域の光Lを照射することにより、歯周病菌の増殖抑制の効果が確実に得られる。
上記の条件において光照射処理を行うことにより、通常、2〜3日間、歯周病菌の増殖抑制の効果が持続する。このため、2〜3日間隔で光照射処理を行うことにより、長期間にわたって歯周病菌の増殖が抑制された状態を維持することができる。
【0028】
以上の歯周病用光治療器によれば、波長400〜420nmの範囲に発光中心波長を有する光源13を備え、この光源13より放射される特定波長域の光Lは紫外線と異なって人体に対して安全でありながら歯周病菌の増殖の抑制に有効であるために、薬液の使用を伴わずに歯周病の治療をすることができる。
【0029】
また、プローブ11に流水路Fが形成されているために、光照射箇所(患部)を水Wで冷却することができ、火傷などを防止することができる。
また、プローブ11の流水路Fを導光路のコア部として使用する構成であるために、1つのプローブ11によって特定波長域の光Lの照射と光照射箇所の冷却との両方の処理を行うことができるため、治療中にプローブの取換えなどの煩雑な作業を行う必要がなく、高い利便性が得られる。
また、プローブ11がハンドピース12に着脱自在に設けられているために、プローブ11の殺菌などの作業を簡単に行うことができ、さらに、プローブ11を使い捨てとすることにより、感染に対して高い安全性を得ることができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、光源は半導体レーザやレーザダイオードよりなることに限定されず、ランプよりなる構成であってもよい。
このようなランプは、波長400〜420nmの範囲の光を放射するランプであって、このようなランプとしては、例えば金属として水銀(Hg)が封入されたガス放電灯に波長透過フィルターを設けることにより、404.77nm、407.9nm、410.8nm、410.92nmのHgの輝線のみを透過させて利用される状態のものを挙げることができる。
【0031】
また例えば、プローブが樹脂製中空管を有さずに金属製中空管のみよりなるものであってもよく、このような構成の歯周病用光治療器においては、金属製中空管の内面反射により、特定波長域の光が導光される。
【0032】
さらに例えば、プローブのハンドピースに対する着脱自在を達成させるための機械的構成は、金属製中空管の基端部分を介して連結される構成に限定されるものではなく、その目的が達成される機械的構成であればよい。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の効果を確認するために行った実施例および実験例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〜3および比較例1〜28〕
歯周病菌株として、一般に広く認識されているポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis ATCC 33277)を用い、血液寒天培地にて継代培養したポルフィロモナス・ジンジバリスを、0.5%yeast extract、0.05%L−cysteine、0.001%vitamin K、0.0005%hemin、0.025%resazurinを添加したBHI(Brain Heart Infusion)液体培地(以下、「BHIブロス」ともいう。)10mLにおいて37℃で24時間嫌気培養して菌液(以下、「BHIブロス培養菌液(A)」ともいう。)を得た。
そして、このBHIブロス培養菌液(A)を、一定量(1μL)血液寒天培地上に播種し、37℃で30時間嫌気培養して形成されたコロニーに、それぞれ10nm間隔で波長の異なる、波長400nm、410nm、420nm、430nm…700nmの光を照射した。各々の光は、各波長による光強度を測定した上で照射時間を調整してエネルギー密度を一定(18J/cm2 )とした。光照射処理後、37℃で嫌気培養を行い、経時的にコロニーのサイズを測定した。
波長400nmの光を照射するものを実施例1、波長410nm、420nm、430nm、…700nmの光を照射するものをそれぞれ実施例2、実施例3、比較例1、…比較例28とした。図5に、実施例1に係るものを(a)、実施例2、実施例3および比較例1に係るものをそれぞれ(b)、(c)および(d)としてその結果を示した。
【0035】
図5より、実施例1〜3に係る波長400nm、410nmおよび420nmの光を照射したコロニーにおいては、比較例1に係る波長430nmの光を照射したコロニーに比してコロニーサイズが小さく、これにより波長400〜420nmの光を照射することにより、ポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖が抑制されることが確認された。なお、比較例2〜比較例28に係る波長440〜700nmの光を照射したコロニーにおいては、比較例1の波長430nmの光を照射したコロニーとほぼ同様のコロニーサイズとなった。
【0036】
<実験例1>
特定波長域の光の照射による増殖抑制効果に対する影響因子を調べるため、発光中心波長405nmの光を放射するレーザ照射器を使用して下記の実験を行った。
BHIブロス培養菌液(A)を、BHIブロスにて100倍に希釈した後、96穴マイクロタイタープレートに1ウエル当たり100μLずつ分注し、エネルギー密度一定(15J/cm2 )となるよう、それぞれ、強度密度および照射時間が50mW/cm2で5分間、200mW/cm2 で75秒間、400mW/cm2 で38秒間の状態で光照射処理を行い、その後、37℃にて嫌気培養を行い、経時的にOD655nm値を測定し、ポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖をモニターした。結果を図6に示す。ただし、図6においては、50mW/cm2で5分間の光照射処理に係るものを(g)、200mW/cm2 で75秒間の光照射処理に係るものを(f)、400mW/cm2で38秒間の光照射処理に係るものを(e)として示し、さらに、光照射処理を行わなかった場合のものを(h)として示した。
【0037】
図6より、いずれの条件においてもポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖が抑制されていること、具体的には光照射処理後、48時間の経過時点で、OD655nm値の比較において約65〜80%の増殖の抑制が確認された。
【0038】
<実験例2>
エネルギー密度一定ではなく、強度密度一定(50mW/cm2 )の状態で、照射時間をそれぞれ1分間、2分間、3分間、4分間、5分間として光照射処理を行うことの他は実験例1と同様にして経時的にOD655nm値を測定し、ポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖をモニターした。結果を図7に示す。ただし、図7においては、1分間、2分間、3分間、4分間および5分間の光照射処理に係るものをそれぞれ(m)、(l)、(k)、(j)および(i)として示し、さらに、光照射処理を行わなかった場合のものを(n)として示した。
【0039】
図7より、照射時間が1分間(エネルギー密度3J/cm2 )であっても有意なポルフィロモナス・ ジンジバリスの増殖の抑制、具体的には、光照射処理後48時間の経過時点でOD655nm値の比較において約30%の増殖の抑制が認められた。また、照射時間が2分間(エネルギー密度6J/cm2)以上である場合は、より強い増殖抑制効果、具体的には、光照射処理後36時間の経過時点でOD655nm値の比較において約70%以上の増殖抑制が確認された。
【0040】
<実験例3>
エネルギー密度一定ではなく、照射時間一定(5分間)の条件で、強度密度をそれぞれ30mW/cm2 、50mW/cm2 、100mW/cm2として光照射処理を行うことの他は実験例1と同様にして経時的にOD655nm値を測定し、ポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖をモニターした。結果を図8に示す。ただし、図8においては、30mW/cm2、50mW/cm2 および100mW/cm2 の光照射処理に係るものをそれぞれ(q)、(p)および(o)として示し、さらに、光照射処理を行わなかった場合のものを(r)として示した。
【0041】
図8より、強度密度が30mW/cm2 (エネルギー密度9J/cm2 )であっても有意なポルフィロモナス・ ジンジバリスの増殖の抑制、具体的には光照射処理後36時間の経過時点でOD655nm値の比較において約70%の増殖抑制が認められた。また、強度密度が50mW/cm2(エネルギー密度15J/cm2 )および100mW/cm2 (エネルギー密度30J/cm2 )である場合は、より強い増殖抑制効果、具体的には、光照射処理後36時間の経過時点でOD655nm値の比較において約90%の増側抑制が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の歯周病用光治療器の一例における構成の概略を示す説明用図である。
【図2】図1の歯周病用光治療器におけるプローブを模式的に示す断面図である。
【図3】図2の歯周病治療器のプローブの要部を拡大して示す部分断面図である。
【図4】本発明の歯周病用光治療器の使用状態を示す概略図である。
【図5】実施例1〜3および比較例1の結果を示す歯周病菌の増殖抑制に関するグラフである。
【図6】実験例1の結果を示すグラフである。
【図7】実験例2の結果を示すグラフである。
【図8】実験例3の結果を示すグラフである。
【図9】従来の歯周病用光治療器のプローブの断面図である。
【符号の説明】
【0043】
11 プローブ
11A 先端開口部
12 ハンドピース
12A 本体光出射部分
13 光源
14 樹脂製中空管
14A 基端部分
15 金属製中空管
15A 小径先端部分
15B 大径嵌合部分
16 ハンドピース外枠
17 集光レンズ
18 o−リング
19 光源装置
20 歯周ポケット
21 歯
22 歯肉
23 コネクタ
25 電源
26 導水管
26A 導水路
27 導電線
28 制御装置
29 貯水部
31 ハンドピース
33 プローブ
34 光ファイバ
F 流水路
L 光
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長400〜420nmの範囲に発光中心波長を有する光源と、この光源からの光を導光して光を照射すべき患部に放射するプローブとを備えることを特徴とする歯周病用光治療器。
【請求項2】
前記プローブが光源からの光が導光される方向と同方向に水を流す流水路を有することを特徴とする請求項1に記載の歯周病用光治療器。
【請求項3】
前記プローブは、水より屈折率が低い樹脂からなる樹脂製中空管を備え、
当該樹脂製中空管内部が流水路として機能し、
この流水路に満たされた水によるコア部と、前記樹脂製中空管によるクラッド部とにより、導光路が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の歯周病用光治療器。
【請求項4】
前記プローブは、その内部に前記光源が配設されたハンドピースに対して、着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の歯周病用光治療器。
【請求項5】
前記樹脂製中空管は、フッ素樹脂よりなるものであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の歯周病用光治療器。
【請求項6】
前記プローブが金属製中空管よりなり、内面反射により導光されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯周病用光治療器。
【請求項7】
前記光源が半導体レーザまたは発光ダイオードであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の歯周病用光治療器。
【請求項8】
光源を構成する半導体レーザまたは発光ダイオードの発光中心波長が405nmであることを特徴とする請求項7に記載の歯周病用光治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−202891(P2007−202891A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26905(P2006−26905)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】