説明

歯清掃具

【課題】 歯清掃具として、従来から歯ブラシ、爪楊枝、歯間ブラシ、デンタルフロス等が使用されていたが、それらの歯清掃具にはそれぞれ各種の欠点があった。
【解決手段】 本願の歯清掃具は、内部が中空の細パイプ製でパイプ基端側に把持部2を設け、パイプ先端部に歯清掃部3を設けた所定長さの軸体1を有しているとともに、歯清掃部3を先端に細パイプ中空部11に連通する開口部31を設け且つ開口部31を軸体長さ方向に対して傾斜状態で形成していることにより、簡単な構造で歯垢等を容易且つ安全に除去できるとともに、その歯垢等をパイプ中空部内に収容できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、歯に付着した食べかすや歯垢等を除去するための歯清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯付け根(歯と歯茎の間)や歯間(歯と歯の隙間)等は、食べかすが挟まったり歯垢が溜まり易い場所であり、それら(食べかすや歯垢)を除去するのに、一般に歯ブラシ、爪楊枝、歯間ブラシ、デンタルフロス等の歯清掃具を使用している。尚、以下の説明では、食べかすや歯垢を総称して歯垢類ということがある。
【0003】
歯ブラシは、台に植毛した多数本のブラシ部で歯をブラッシングするものである。爪楊枝は、尖った先端で歯付け根や歯間に挟まった歯垢類を掻き出すものである。歯間ブラシは、ワイヤー芯の回りに多数の短小ブラシ部を植毛したものであり、歯と歯の隙間に挿入して歯間の歯垢類を掻き出すものである。デンタルフロスは、糸状繊維であり、歯と歯の隙間に挿入して歯間の歯垢類を掻き出すものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した各歯清掃具(歯ブラシ・爪楊枝、歯間ブラシ、デンタルフロス)は、それぞれ次のような欠点があった。
【0005】
「歯ブラシの欠点」
(1)歯ブラシは、ブラシ部の先端面(集合面)がかなりの面積を有する面状になっているので、歯間等の微細な隙間にブラシが入りにくく、微細な隙間に溜まっている歯垢類を
きれいに除去できないことがある。
(2)歯ブラシ使用後は、口の中を水で濯いだり、歯ブラシを洗う必要があり、使用場所(洗面台等の排水設備がある場所)が限られる。
【0006】
「爪楊枝の欠点」
(1)爪楊枝は、先端が尖っているので微細に歯間等に差込み易いが、先がすぐ傷み、一回の清掃で数本の爪楊枝を使用する場合がある。
(2)爪楊枝では、歯垢類を主として歯間等から掻きほぐすことしかできず(食べかすや歯垢が口の中に残ったままである)、掻きほぐした歯垢類を口外に排出するには、爪楊枝使用後に水で口の中を濯いで吐き出す必要がある。この場合、コップや洗面台等の排水場所が必要であり、レストラン等の喫食場所では口中の濯ぎがしにくい。
(3)爪楊枝使用時には、唾液が爪楊枝外面を伝って流れ出して手につき易い。
(4)爪楊枝で食べかすを掻き出した際に、爪楊枝先端に食べかすが引っ掛かっていることがあるが、その場合は、見た目が悪くしかもその都度食べかすをティッシュ等で拭き取る手間が必要である。
【0007】
「歯間ブラシの欠点」
(1)歯間ブラシでは、ブラシ部を歯間に挿入して引くときに、短小ブラシの復元弾力で歯垢や唾液が口外に飛沫することがあり、非衛生的である。
(2)この歯間ブラシでも、使用時に唾液が手元まで流れ出して手につき易い。
(3)歯間ブラシは、1本当たりの単価が高いので使用後は水洗いして再使用する場合が多いが、その水洗いの手間がかかる。
(4)ブラシ部を歯間に挿入して押し引きする際に、ブラシが歯間乳頭をこするので、歯肉を傷つけたり衰退させたりするおそれがある。
(5)歯間ブラシでは、歯間部分しか清掃できず、歯の付け根と歯茎間の隙間の掃除ができない。
(6)歯間ブラシによる清掃でも、食べかすや歯垢が口内に残り、きれいに排出しようとすると後で口中を水で濯ぐ必要がある。
【0008】
「デンタルフロスの欠点」
(1)デンタルフロスでは、糸を歯間に入れるのが面倒である。特に奥歯部分の清掃が面倒となる。
(2)デンタルフロスでも唾液が糸を伝って流れ出し易い(唾液が手につき易い)。
(3)糸を歯間に挿入してスライドさせる際に、糸が歯間乳頭をこするので、歯肉を傷つけたり減退させたりするおそれがある。
(4)デンタルフロスでも、歯間部分しか清掃できず、歯の付け根と歯茎間の隙間の掃除ができない。
(5)デンタルフロスによる清掃でも、食べかすや歯垢が口内に残り、きれいに排出しようとすると後で口中を水で濯ぐ必要がある。
【0009】
そこで、本願発明は、上記した各種の歯清掃具の欠点を改善し得るようにした歯清掃具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、歯付け根や歯間に溜まる歯垢類を除去するための歯清掃具を対象にしている。
【0011】
そして、本願発明の歯清掃具は、内部が中空の細パイプ製で、パイプ基端側に把持部を設け、パイプ先端部に歯清掃部を設けた所定長さの軸体を有している。
【0012】
この軸体は、外径が3〜4mm、長さが40〜60mm程度で、内部が中空の細パイプで製作されている。この軸体の材料としては、硬質プラスチック製細パイプが製作及びコストの面で好適である。尚、この細パイプの肉厚さは、歯の清掃作業時に先端部の保形性が維持され得る程度の薄肉(特に限定するものではないが、例えば100〜200ミクロン程度の厚さ)でよい。
【0013】
軸体のパイプ基端側は、把持部となるもので、2つの指(親指と人差し指)でつまむことができる。又、この軸体の内部(パイプ中空部)は、後述するように歯垢類や唾液等を収容し得るスペースとなるものであり、軸体の基端部開口は適宜の方法で閉塞しておくとよい。尚、軸体基端部開口の閉塞手段として、該軸体基端部を例えば綿棒の綿体のようなもので被覆しておくと、該綿体部分で歯に付着している汚れを拭き取ることができる。
【0014】
軸体の先端部は歯清掃部となるものであるが、この歯清掃部は、細パイプ中空部に連通する開口部を設け且つ該開口部を軸体長さ方向に対して傾斜状態で形成している。即ち、この軸体先端部の歯清掃部は、細パイプ先端部を斜めにカットして形成したものである。この歯清掃部の傾斜角度は、軸体長さ方向に対して角度15°〜45°の範囲で形成可能であるが、中でも角度20°〜30°程度が好適である。
【0015】
このように軸体先端部(歯清掃部)を斜めにカットすると、開口部の端縁(エッジ)が楕円形になって先端が薄く且つ尖るようになる。
【0016】
本願の歯清掃具は、主として歯付け根や歯間等の狭隘部分に溜まる歯垢類を除去するのに適したものであるが、各歯の広面積部分の清掃にも使用できる。そして、この歯清掃具は次のようにして使用される。
【0017】
即ち、この歯清掃具は、把持部を摘まんで歯清掃部の先端を開口部が上向きになる姿勢で歯の清掃すべき位置(例えば歯付け根や歯間等の隙間部分)まで差し込む。このとき、歯清掃部の先端部は、薄くて尖っているので歯間等の狭い場所でも比較的簡単に且つ深い位置間で差し込むことができる。そして、その状態で歯清掃部の先端部又は先端寄り縁部を歯付け根部分や歯間部分で左右又は上下に移動させる。
【0018】
このとき、掃除位置(歯間等)に歯垢類が付着していると、その歯垢類を歯清掃部のエッジで剥ぎ取って開口部内に取り入れることができる。又、掃除位置に唾液がある場合には、歯垢類と一緒に唾液も歯清掃部の開口部内に取り入れることができる。開口部内に取り入れた歯垢類や唾液は、把持部を下向きに傾けることで、パイプ中空部内を自然流下して、順次パイプ中空部内に貯留されるようになる。
【0019】
又、この歯清掃具は、各歯の広面積部分や歯の裏側の清掃にも使用できるし、開口部の裏部分で歯肉をマッサージすることもできる。尚、この歯清掃具は、1回の使用で使い捨てられる。
【発明の効果】
【0020】
本願の歯清掃具は、上記のように細パイプ製の軸体の先端部(歯清掃部)を斜めにカットしたものであるが、この歯清掃具には次のような効果がある。
【0021】
(1)簡単な構造であるので、製造コストが安価である。
【0022】
(2)軸体先端部の歯清掃部の先端が薄く尖っているので、該歯清掃部の先端部を歯付け根や歯間のように狭隘なスペースでも容易に挿入でき、歯間等に溜まっている歯垢類を容易に掻き出すことができる。
【0023】
(3)歯清掃部の先端部で歯間等の歯垢類を掻き出すと同時にその歯垢類を開口部から受け入れてパイプ中空部内に収容できるので、この歯清掃具(歯清掃部)で歯から剥がした歯垢類が口の中に残りにくくなり、後で口の中を水で濯ぐ必要がなくなる。尚、このように、後で口の中を水で濯ぐ必要がなくなると、口内の唾液(有用成分である)の排出(洗い流し)を防止できる。
【0024】
(4)歯間や歯の付け根のほかに、各歯の表裏広面積部分も歯清掃部のエッジでこすって掃除できるので、軸体外面を伝って流れ出す唾液の量を少なくできる。
【0025】
(5)歯の清掃時に、歯に付着している唾液も歯清掃部の開口部からパイプ中空部内に収容できるので、軸体外面を伝って流れ出す唾液の量を少なくできる。
【0026】
(6)本願の歯清掃具の使用時に、歯間ブラシやデンタルフロスのように歯間乳頭を傷つけるおそれが少なくなり、安全に歯の清掃作業が行える。
【0027】
(7)歯肉炎等で歯ブラシを使用できない人でも、安全に使用できる。
【0028】
(8)開口部の裏側の円弧面部分で歯肉部分のマッサージが行え、歯自体の清掃のほかに歯肉部分の健康増進作業に使用できる。
【0029】
(9)歯ブラシや歯間ブラシは、口内を濯いだり器具を洗うために水を必要とするが、本願の歯清掃具では除去した歯垢類がパイプの中に収容されるので、後で水を使わなくてもよく、防災グッズ(例えば被災地支援物資)としても利用できる。
【0030】
(10)水を使わずに歯垢類の除去が行えるので、口を濯ぐことができにくい人(要介護の人)の口腔ケア器具としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願実施例の歯清掃具の正面図である。
【図2】図1の歯清掃具の平面図である。
【図3】図2の歯清掃具の一部を省略した拡大図である。
【図4】図1の歯清掃具の使用説明図である。
【図5】図4の歯清掃具の使用状態における縦断面相当図である。
【図6】図5の変形使用例(歯の裏側清掃時)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施例]
図1〜図6を参照して本願実施例の歯清掃具を説明すると、図1〜図3に示す歯清掃具Yは、内部が中空の細パイプからなる軸体1を使用し、該軸体1の基端側に把持部2を設ける一方、軸体1の先端部に歯清掃部3を設けて構成されている。
【0033】
軸体1は、この実施例では硬質プラスチック製の細パイプで、図1に示すように外径Dが3〜4mm、長さがLが40〜60mm程度の直棒パイプが使用されている。この軸体1(細パイプ)の肉厚さは100〜200ミクロン程度で、歯の清掃作業時に先端部の保形性が維持される程度の薄肉のものが好ましい。
【0034】
軸体1の内部は軸体全長に亘って同内径の中空部11となっている。この中空部11は、後述するように歯垢類や唾液等を収容し得るスペースとなるものである。
【0035】
軸体1の基端部である把持部2は、綿棒に使用されている綿体21で被覆されていて、軸体1の基端側開口12を該綿体21で閉塞している。そして、この歯清掃具Yを使用する際には、図4に示すように把持部2の綿体21部分を摘まんで保持する。又、この綿体21部分は、歯に付着している汚れを拭き取るための拭き取り材として使用することができる。尚、この綿体21にミント等のエキス(爽快成分)を含ませておくと、該綿体21を歯に接触させたときにスッキリ感を付与できる。
【0036】
軸体先端部の歯清掃部3は、中空部11に連通する開口部31を設け且つ該開口部31を軸体長さ方向に対して傾斜状態で形成している。尚、この歯清掃部3は、細パイプ先端部を斜めにカットして形成したものである。歯清掃部3の傾斜角度a(図1)は、15°〜45°の範囲で形成可能であるが、この実施例では角度20°〜30°程度に形成している。
【0037】
このように、軸体先端部(歯清掃部3)を斜めにカットすると、開口部31の端縁(エッジ32)が楕円形になって先端33が薄く尖るようになる。
【0038】
この実施例の歯清掃具Yは、図4〜図6に示すように、主として歯付け根Aや歯間B等の狭隘部分に溜まる歯垢類を除去するのに適したものであり、次のようにして使用される。即ち、この歯清掃具Yは、図4に示すように把持部2(綿体21部分)を摘まみ、歯清掃部3の先端33を開口部31が上向きになる姿勢で歯の清掃すべき位置(歯付け根Aや歯間B)に軽く差し込む。このとき、歯清掃部3の先端部33は、薄くて尖っているので歯付け根Aや歯間B等の狭い場所でも比較的簡単に且つ深い位置まで差し込むことができる。そして、歯の表側の歯付け根A部分を清掃するには、歯清掃具を図4及び図5に実線図示(符号Y)するように把持部2側が下降傾斜する姿勢で、歯清掃部3の先端33を歯付け根A部分に軽く差し込んで該歯清掃部3を左右に移動させる。又、歯の表側の歯間B(上歯5又は下歯6)を清掃するには、歯清掃具を図4及び図5に鎖線図示(符号Y1,Y2)するように、歯清掃部3の先端33を歯間B部分に軽く差し込んだ状態で該歯清掃部3を上下に移動させる。さらに、歯の裏側の歯付け根や歯間を掃除するには、口を大きく開き、歯清掃具を図6に符号Y3又はY4で示すように、歯清掃部3を歯(上歯5又は下歯6)の裏側に差し込み、該歯清掃部3で清掃箇所を掃除する。
【0039】
そして、掃除位置(歯付け根Aや歯間B等)に歯垢類が付着していると、その歯垢類を歯清掃部3の先端33やエッジ32,32で剥ぎ取って開口部31内に取り入れることができる。又、掃除位置に唾液がある場合には、歯垢類と一緒に唾液も歯清掃部3の開口部31内に取り入れることができる。開口部31内に取り入れた歯垢類や唾液は、把持部2を下向きに傾けることで、パイプ中空部11(図1〜図3)内を自然流下して、順次パイプ中空部11内に貯留することができる。尚、図6の下歯6の裏側を清掃する場合には、歯清掃具Y4の歯清掃部3が下向きになるので、掃除すべき歯垢等を歯清掃部3の開口部31からパイプ中空部11内に自然流入させることができないが、歯付け根部分や歯間等に付着している歯垢等を歯付け根や歯間等から剥離させることは可能である。
【0040】
この歯清掃具Yは、歯付け根Aや歯間Bばかりでなく、各歯の広面積部分の清掃にも使用できる。その場合、歯清掃部3の左右側部にあるエッジ32,32部分で歯の表面をこするようにすればよい。又、この実施例の歯清掃具Yでは、把持部に綿体21(図1〜図3)を取付けているので、該綿体21部分で歯の表面の汚れを拭き取ることができる。この場合、綿体21にミント等のエキス(爽快成分)を含ませておくと、該綿体21を歯に接触させたときにスッキリ感を付与できる。尚、この歯清掃具Yは、1回の使用で使い捨てられる。
【0041】
本願実施例の歯清掃具Yは、上記のように細パイプ製の軸体1の先端部(歯清掃部)を斜めにカットして傾斜状態の開口部31を形成したものであるから、上記「発明の効果」の項に記載したような各種の効果がある。尚、本願の実施例効果は、「発明の効果」の項に記載したものと同じなので、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0042】
1は軸体、2は把持部、3は歯清掃部、11はパイプ中空部、12は基端開口、21は綿体、31は開口部、32はエッジ、33は先端、Yは歯清掃具である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空の細パイプ製でパイプ基端側に把持部(2)を設け、パイプ先端部に歯清掃部(3)を設けた所定長さの軸体(1)を有しているとともに、
前記歯清掃部(3)は、先端に細パイプ中空部(11)に連通する開口部(31)を設け且つ該開口部(31)を軸体長さ方向に対して傾斜状態で形成している、
ことを特徴とする歯清掃具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−66572(P2013−66572A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206697(P2011−206697)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(511230358)