説明

歯牙美白用セット

【解決手段】 多価アルコールと、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体とを含有し、実質的に水を含有しない非水系組成物と、この非水系組成物を保持した状態で歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯牙美白用セット。
【効果】 本発明によれば、唾液の影響を受けずに歯牙表面に製剤を高密着させて長時間保持することができ、これにより高い歯牙の白色化効果を引き出すことが可能であり、しかも、使用性、経時安定性の良い歯牙美白用セットを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液の影響を受けずに歯牙表面に製剤を高密着して長時間保持することができ、高い歯牙白色化効果を発揮すると共に、使用性、経時安定性に優れた歯牙美白用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
薬効成分の徐放や歯牙表面の清掃、美白などの目的で、口腔粘膜や歯牙表面に適用する貼付材やパッチなどが提案されている。歯牙表面に剤を貼付する手段として、例えば支持体を薄く柔軟性をもたせる(曲げ強度5g/cm以下の支持体を利用する)ことにより歯面への保持性を高める方法(特許文献1;特表2002−503990号公報)、あるいは永久変形する支持体(25万Pa未満の圧力下で変形する支持体の利用)を変形させることにより物理的に歯面に固定する方法(特許文献2;特表2002−537003号公報)などが提案されている。
【0003】
しかし、これらは唾液の影響を受けずに歯牙に高密着させる上では不充分な場合があり、特に永久変形する支持体を利用すると、口腔内には保持されるものの剤と歯面の間に唾液が進入し、密着しない場合もある。
【0004】
また、水溶性高分子及びコウジ酸等の白色化成分を含む粘着層と支持体よりなる口腔貼付材(特許文献3;特開平10−17448号公報)や、美白成分として過酸化物を含み、付着層に親水性ガラスポリマーを使用したドライタイプの歯牙美白用パッチ(特許文献4;特表2003−526648号公報)なども提案されているが、非水系組成においてゲル化する水溶性高分子等の粘着成分は非常に限定される上、粘着性を確保するために大量に配合した場合にベタツキなどの使用性が著しく低下したり、例えば支持体に剤を塗膏し、フェイシングフィルムで剤を挟み込んだ3層状シートに加工した場合に、シートの辺縁から経時で剤がはみ出すなどの不具合を生ずる場合がある。また、ドライタイプの貼付材は、唾液と水和することにより粘着性を発現させるものであり、本発明の目的には適さない。
【0005】
一方、歯牙の白色化に関しては、漂白等の化学反応を伴わずにエナメル質部分の光学特性を変化させる方法が提案されており(特許文献5:国際公開第03/030851号パンフレット)、白色化成分としてポリエチレングリコールなどが開示されている。これらの白色化成分は、歯牙に適用することで高い白色化効果を発現するが、唾液の影響を受けて歯牙への密着性が悪くなると充分な効果が発現しない場合がある。
その他、出願人は、ポリエチレングリコール等を白色化成分としたものを特願2003−426716号明細書、特願2003−432095号明細書に提案した。
【0006】
よって、歯牙の白色化用の製剤においては、歯牙への高密着性、使用性及び安定性の改善が望まれる。
【0007】
【特許文献1】特表2002−503990号公報
【特許文献2】特表2002−537003号公報
【特許文献3】特開平10−17448号公報
【特許文献4】特表2003−526648号公報
【特許文献5】国際公開第03/030851号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、歯牙白色化用の非水系組成物を唾液の影響を受けずに歯牙表面に高密着させることができて、歯牙表面に長時間保持でき、高い歯牙白色化効果を発揮し、かつ使用性、経時安定性に優れた歯牙美白用セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、多価アルコールを、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体でゲル化した非水系組成物を歯牙に適用することにより、唾液の影響を受けることなく歯牙に高密着し得て長時間保持でき、このため、歯牙白色化成分である多価アルコールを唾液による影響を受けずに歯牙に高密着させて歯牙を効果的に白色化させ、高い歯牙美白効果を発揮させることができ、しかも、優れた使用性、経時安定性が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、多価アルコールと、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体とを含有し、実質的に水を含有しない非水系組成物と、この非水系組成物を保持した状態で歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯牙美白用セットを提供する。
【0011】
この場合、多価アルコールとして、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることが好ましい。
更に、上記非水系組成物は、無機粉体を含有することが好ましい。
【0012】
また、歯牙への適用用具としては、水不溶性の素材で作製されたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、又は歯列に成型した歯のカバーが好ましく使用される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、唾液の影響を受けずに歯牙表面に製剤を高密着させて長時間保持することができ、これにより高い歯牙の白色化効果を引き出すことが可能であり、しかも、使用性、経時安定性の良い歯牙美白用セットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯牙美白用セットは、多価アルコールと、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体とを含有し、実質的に水を含有しない非水系組成物と、この非水系組成物を保持した状態で歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたものである。
【0015】
本発明において、多価アルコールとしては、例えば平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなど挙げられ、これらは1種類を単独で、又は2種類以上を併用して用いることができる。
【0016】
これら多価アルコールの中でも、特に白色化効果の点から平均分子量が190〜630のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、とりわけ平均分子量が190〜630のポリエチレングリコールと、1,3−ブチレングリコール及び/又はグリセリンとを併用することが好ましい。この場合、歯牙に適用した時の味の点から平均分子量380〜630のポリエチレングリコールと1,3−ブチレングリコール及び/又はグリセリンとを質量比で8:2〜4:6、特に7:3〜5:5の割合で併用することがより好ましい。
【0017】
なお、平均分子量は化粧品原料基準(第2版注釈)記載の平均分子量を示し、ポリエチレングリコール200(平均分子量190〜210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280〜320)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)、及びポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)が該当する。商品によっては、例えばポリエチレングリコール#200等のように、ポリエチレングリコールと数値の間に#がつく場合がある。
【0018】
本発明の非水系組成物における多価アルコールの配合量は、白色化効果及び味の点から好ましくは組成物全量の40〜99%(質量%、以下同様)であり、より好ましくは55〜96%である。
【0019】
本発明にかかわる架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体としては、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのモル比が40:60〜60:40であって、架橋剤として、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン等を適用して架橋されたものが好適に使用され、その架橋度は1〜5%であることが好ましい。更に、0.5%水溶液(10%NaOHで中和)の粘度(25℃)が、BH型粘度計(No.7ローター使用、回転速度10rpm、30sec.)で測定したときに20,000〜120,000mPa・sであるものが好適である。
【0020】
このような架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体としては、市販品として、1,9−デカジエンで架橋したメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体であるSTABILEZE QM、STABILEZE 06(ISP社製)等が挙げられる。
【0021】
上記架橋型のメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の配合量は、密着性、味及びシートの経時安定性の点から好ましくは組成物全体の1〜20%であり、より好ましくは3〜10%である。配合量が1%未満では、ゲル化が不充分で唾液の浸食を受けて高密着できない場合があり、20%を超えると弾性が強くなりすぎ、歯牙への適用が困難になる場合がある。
【0022】
更に、本発明の非水系組成物には、無機粉体を配合することが、密着性、白色化効果及び経時安定性の点から好ましい。無機粉体としては、一般に口腔用製品に用いられるものを使用でき、具体的には、増粘性シリカ、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、不溶性メタリン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、特に増粘性シリカ、無水ケイ酸、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物が好適である。
【0023】
無機粉体の配合量は、密着性、白色化効果及びシートの経時安定性の点から、増粘性シリカでは組成物全体の1〜20%が好ましく、より好ましくは3〜10%であり、その他の無機粉体の配合量は、組成物全体の3〜50%が好ましく、より好ましくは5〜30%である。増粘性シリカを20%を超えて配合したり、その他の無機粉体を50%を超えて配合した場合は、ゲルが固くなり高密着させることができない場合がある。無機粉体の配合量が上記値より少ないと、満足な配合効果が得られない場合がある。
【0024】
なお、増粘性シリカ以外の一般に歯磨剤の研磨剤として用いられている無機粉体を含有した非水系組成物においては、歯牙に適用した後、歯面に残った非水系組成物を歯刷子等の清掃用具を用いてブラッシングすることにより、白色化効果を発揮させ得ることに加えて、歯面及び口腔内の清浄化を行うこともできる。
【0025】
更に、本発明では、ゲルの粘弾性をコントロールする目的で、多価アルコールに溶解可能なポリマーを配合することができる。多価アルコールに溶解可能なポリマーとして具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース(重量平均分子量1万〜40万)、ポリビニルピロリドン(PVP)(K−30〜K−120)などを併用して使用することができる。
上記多価アルコールに溶解可能なポリマーの配合量は、組成物全体の1〜20%、特に3〜15%が好ましく、1%に満たないと満足な配合効果が得られない場合があり、20%を超えると、弾性が強くなるなど使用性の面で不具合を生ずる場合がある。
【0026】
本発明の非水系組成物には、更に必要に応じて適宜、他の成分を配合することができる。具体的には、有効成分、界面活性剤、甘味剤、香料、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤等を配合することができる。
【0027】
例えば、有効成分として抗ウ蝕成分のフッ化物(フッ化ナトリウムなど)、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、知覚過敏の予防、抑制成分として乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、ピロクトンオラミン、その他ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどの水溶性ポリリン酸塩、アスコルビン酸及びその塩、酢酸トコフェロール、ローズマリー、チョウジ、タイムなどの生薬抽出物等を1種単独で又は2種以上配合することができる。なお、有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0028】
また、不溶性成分の可溶化や歯面の汚れを除去する等の目的で、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の1種又は2種以上を組成物全体の0.01〜10%、特にその配合効果の点から0.1〜5%配合することができる。
【0029】
この場合、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0030】
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノ−ルアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。
【0031】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0032】
また、本発明には、溶剤として、上記多価アルコール以外のアルコール、具体的には、エタノール、イソプロパロール等の低級アルコールを配合することもできる。
【0033】
更に、本発明の非水系組成物には、l−メントール、アネトール、カルボン、シトラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、オクタノール、サリチル酸メチル、ペパーミント油、スペアミント油などの香料成分、安息香酸及びそのナトリウム塩、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類といった防腐成分、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、キシリトール、サッカリン及びそのナトリウム塩、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。
【0034】
非水系組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくは非水系組成物を精製水で10倍に希釈した時の25℃におけるpHが4.0〜10.0であり、更に望ましくは5.0〜9.0である。pH4.0未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10.0を超える場合には、歯肉に触れた場合、粘膜剥離等の懸念がある。
【0035】
なお、pH調整剤としては、塩酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、グリコール酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルギニン等を配合し得る。
【0036】
また、歯牙表面での皮膜形成成分として、シェラック、アクリル酸系ポリマー、及び、オレイン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸などを、組成物全体に対して0.1〜5%程度、配合することもできる。
【0037】
なお、本発明における歯牙白色化効果は、多価アルコールを歯牙エナメル質に浸透させてエナメル質中の水分と置換することにより実現するものである。本発明においては、実質的に水を含有しない非水系組成物を歯牙に適用し、より効率的に白色化効果を発現させるものであり、水を加えた場合、白色化効果が低下する。
【0038】
本発明の非水系組成物は、ゲル状、ペースト状等の剤型として調製し、歯への保持・固定専用の適用用具と併せて適用されることで、効果が更に高まる。
【0039】
このように、上記非水系組成物は、歯牙への保持・固定専用の適用用具と併せて適用されるが、本発明の非水系組成物と併用して使用される歯牙への保持・固定専用の適用用具は、非水系組成物の歯牙への確実な適用、固定を補助すると共に、使用中の非水系組成物の歯肉、舌及び口腔粘膜への溶出を抑え、不快な使用感や唾液の誘発を防ぎ、更に唾液の侵入や咬合、咀嚼、その他物理的な刺激による非水系組成物の希釈や歯牙からの離脱を防ぐ目的で使用される。用具の素材及び形状については、上記目的を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、水不溶性の素材で作られたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバーが好適に用いられる。他には、歯列に成型した歯牙接触面に多数の突起物を有するチューイングブラシが挙げられる。
【0040】
適用用具の厚みは歯牙に適用したときに違和感のない0.01〜5mmが好ましく、フィルム、シートについては0.01〜2mmが好ましい。
【0041】
上記適用用具の材質は、口腔内に適用可能な安全性に優れたものであれば特に制限されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、パルプ、綿、絹、紙、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム及び金属箔などの1種又は2種以上を用いるのが好ましい。フィット感の良さ、唾液の分泌を抑制するなどの点から、プラスチックのフィルム又は合成ないし天然繊維で構成される織布、不織布の形態で用いるのが好適である。織布、不織布として用いる場合、装着時の感触の良さからポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、綿、パルプ、紙、絹の1種ないし2種以上で構成されるものが好ましく、目付け10〜300(g/m2)のものが好ましい。
【0042】
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の水不透過性フィルムを、織布、不織布の片面、両面あるいは2枚の織布、不織布の間に貼り合せることで、製剤が過剰に吸着したり、不織布を透過して口腔内に溶出したり、逆に唾液が不織布などを透過して製剤に進入するのを防ぐこともできる。また、マウストレー、マウスピース、歯のカバーにおいては、シリコーンゴム、天然ゴム等の可塑性樹脂や、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂も、歯列に合せて変形しやすく、歯へのフィット性が優れることから好適である。
【0043】
なお、本発明の歯牙美白用セットの適用回数及び時間は適宜選定されるが、通常1日に1〜6回、特には1〜3回である。適用時間は1分〜6時間、特には1分〜2時間であるが、就寝中に適用することもできる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0045】
〔実施例1〜11、比較例1〜3〕
表1〜3に示す組成の非水系組成物について、下記方法で製剤を調製してシートを作製し、下記方法で歯牙への密着性、使用時の味、白色化効果、シートの経時安定性を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0046】
<製剤の調製>
全原料(香料を除く)を秤量した後、減圧(約−700mmHg)下において約80℃で混合した後、40℃〜20℃で香料を加え、減圧下で混合して製剤を調製した。なお、pHは、精製水で10倍に希釈した時の25℃におけるpHが4.0〜10.0となるように調整した。
【0047】
<シートの作製>
厚さ約0.5mmのポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)フィルム/レーヨン+ポリプロピレン(PP)(7/3)の3層より成る不織布シートと、表面をシリコーンコートしたフェイシングフィルムの間に、トータルの厚みが1mmになるように製剤を塗膏した。
その後、上下顎の左右1〜3番歯の唇面、舌面を覆えるように設計した歯型を用いて製剤を塗膏したシートを同形状に切断し、上下顎の歯列に貼付可能なシートを作製した。
【0048】
<歯牙への密着性、使用時の味、白色化効果の評価>
上記方法により作製したシートを上下歯列に貼り付けて30分放置した後、シートを剥がし、歯面に残った製剤を取り除いた。そして、シートを装着中の歯牙への密着性、味及びシートを取り除いたあとの歯牙の白色化効果を下記の基準に基づき評価した。パネラー10名にて実施した。
・密着性
5点:ピッタリと固定している。
4点:固定しており、ズレたり、動くことはない。
3点:少しズレるが気にならない。
2点:ズレて動いて気になる。
1点:固定できない。
・味
5点:まったく苦みを感じない。
4点:やや味はするが、苦みではない。
3点:やや苦みを感じる。
2点:苦みを感じる。
1点:強く苦みを感じる。
・白色化効果
5点:はっきりと白色化したことを感じる。
4点:白色化効果が感じられる。
3点:僅かに白色化を感じる。
2点:ほとんど白色化は感じられない。
1点:まったく白色化は感じられない。
【0049】
各評価項目について、各パネラーに評価してもらい、評点の平均値に基づき最終的な評価を下記基準で行った。
◎:4.5点以上
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:2.5点未満
【0050】
<経時安定性>
加工したシートを加速条件として50℃の恒温槽に1週間保存した後のシートの状態を観察し、評価した。
◎:まったく初期と変わらない。
○:ほぼ初期と同じ。
△:ややシートから製剤のはみ出しがある。
×:シートから製剤がはみだしてべったりした状態である。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
上記結果から、多価アルコール及び架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体を含有する非水系製剤、更に無機粉体を含有する非水系製剤が、歯牙に高密着し、高い白色化効果を発現すること、優れた経時安定性を有することがわかった。
【0055】
〔実施例12〕
前述の実施例と同様の製造法により調製した非水系製剤(下記組成1)をポリエチレン製フィルム(厚さ25μm)にトータルの厚みが約1mmになるように塗膏し、単独歯用(歯一本用)歯型に切断し貼付した。前述の評価法に準じて評価した。その結果、密着性、味、白色化効果及びシートの経時変化は何れも◎であった。
【0056】
<組成1>
ポリエチレングリコール#400 62.4%
1,3−ブチレングリコール 26.7
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル
−無水マレイン酸共重合体(ISP社製、STABILEZE QM) 5
シェラック(日本シェラック工業製、乾燥透明白ラック) 2
キシリトール 3
フッ化ナトリウム 0.2
水酸化ナトリウム 0.4
香料 0.1
酢酸トコフェロール 0.2
計 100.0%
【0057】
〔実施例13〕
前述の製造法により調製した非水系製剤(下記組成2)をポリプロピレンフィルム(厚さ約0.1mm)にトータルの厚みが約1mmになるように塗膏し、左右1〜3番歯用の歯型に切断したシートを作製し貼付し、前述の評価法により評価した。その結果、密着性、味、白色化効果及びシートの経時変化は何れも◎であった。
【0058】
<組成2>
ポリエチレングリコール#600 32.85%
1,3−ブチレングリコール 32.8
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル
−無水マレイン酸共重合体(ISP社製、STABILEZE QM) 3
ヒドロキシプロピルセルロース−L(日本曹達製、HPC−L) 5
シリカ 20
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1
アミノアルキルメタクリレートポリマー 0.8
(ローム社製、EUDRAGIT RSPO)
エタノール 5
水酸化ナトリウム 0.05
香料 0.1
アスコルビン酸 0.2
酢酸トコフェロール 0.1
計 100.0%
【0059】
〔実施例14〕
前述の製造法により調製した非水系製剤(下記組成3)をポリプロピレン/ポリエチレンフィルムの2層不織布(厚さ約0.2mm)にトータルの厚みが約1mmになるように塗膏し、左右1〜3番の歯型に切断したシートを作製し、前述の評価法に準じて評価した。その結果、密着性、味、白色化効果及びシートの経時変化は共に◎であった。
【0060】
<組成3>
ポリエチレングリコール#400 36.4%
グリセリン 36.4
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル
−無水マレイン酸共重合体(ISP社製、STABILEZE QM) 5
リン酸カルシウム・2水和物 20
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1
イソステアリン酸 1
サッカリンナトリウム 0.2
水酸化ナトリウム 0.4
香料 0.2
メチルパラベン 0.2
酢酸トコフェロール 0.1
計 100.0%
【0061】
〔実施例15〕
熱可塑性マウスピース
エチレンビニルアセテート樹脂製のマウスピースをお湯で温めて軟化させ、噛んで歯型にフィットしたマウスピースを作製し、非水系製剤(下記組成4)を約3g充填し、装着した。マウスピースを用いた場合、密着性の判断が難しいことから、前述の評価法に準じて白色化効果と味を評価した。その結果、白色化効果、味共に◎であった。
【0062】
<組成4>
ポリエチレングリコール#400 61%
1,3−ブチレングリコール 25.8
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル
−無水マレイン酸共重合体(ISP社製、STABILEZE QM) 10
シェラック(日本シェラック工業製、乾燥透明白ラック) 1.8
サッカリンナトリウム 0.1
水酸化ナトリウム 0.6
L−アルギニン 0.5
香料 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
計 100.0%
【0063】
〔実施例16〕
不織布製のマウストレー
PP+レーヨン(8/2)/PEフィルム/PP+レーヨン(3/7)の3層不織布をトレー状に成型した不織布製のマウストレーに非水系製剤(下記組成5)を約5g充填し、装着した。マウストレーを用いた場合、密着性の判断が難しいことから、前述の評価法に準じて白色化効果と味を評価した。その結果、白色化効果、味共に◎であった。
【0064】
<組成5>
ポリエチレングリコール#600 52%
1,3−ブチレングリコール 17.4
グリセリン 17.4
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル
−無水マレイン酸共重合体(ISP社製、STABILEZE QM) 10
ポリビニルピロリドンK90(BASF社製) 2
水酸化ナトリウム 0.8
香料 0.1
BHT 0.2
酢酸トコフェロール 0.1
計 100.0%
【0065】
〔実施例17〕
非水系製剤(下記組成6)をシリコーンゴム製のマウストレーに約5g充填し、噛んで歯面に適用した。マウストレーを用いた場合、密着性の判断が難しいことから、前述の方法に準じて白色化効果と味を評価した。その結果、白色化効果は○、味は◎であった。
【0066】
<組成6>
1,3−ブチレングリコール 60%
グリセリン 25.6
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル
−無水マレイン酸共重合体(ISP社製、STABILEZE QM) 10
オレイン酸 0.5
キシリトール 3
水酸化ナトリウム 0.8
香料 0.1
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコールと、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体とを含有し、実質的に水を含有しない非水系組成物と、この非水系組成物を保持した状態で歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯牙美白用セット。
【請求項2】
非水系組成物が、更に無機粉体を含有する請求項1記載の歯牙美白用セット。
【請求項3】
多価アルコールとして、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種を単独で、又は2種以上を含有する請求項1又は2記載の歯牙美白用セット。
【請求項4】
適用用具が、水不溶性の素材で作製されたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、又は歯列に成型した歯のカバーである請求項1、2又は3記載の歯牙美白用セット。

【公開番号】特開2006−8530(P2006−8530A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183725(P2004−183725)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】