説明

歯磨き組成物

【課題】高い清涼感を有しつつ、エリスリトールの凝集の抑制効果に優れたエリスリトール含有歯磨き組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】次の成分(A)〜(C)を含有し、25℃における粘度が30〜250Pa・sである歯磨き組成物。
(A)平均粒子径が200μm以下であるエリスリトール 25〜55質量%
(B)水 15〜35質量%
(C)吸油量が200〜400mL/100gのシリカ 0.5〜10質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリスリトールを含有する歯磨き組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯を磨く目的は、口腔内を清潔にし、清涼感を得ることにある。清涼感を向上させる手段としては、従来メントールに代表される香料成分や、エタノール等の溶剤成分を添加することが行われてきた。しかし、これらの成分は、配合量を増やすと口腔内への刺激が強くなり、また泡立ちが抑制されるため、磨いたときの使用感を損ねるという問題が生じる。そこで、最近では、口腔内の清潔と、清涼感との両方の効果を有する面から、エリスリトールやキシリトール等の特定の糖アルコールが使用されている(例えば、特許文献1、2)。特に、特定の糖アルコールは、歯垢形成や口腔バイオフィルムの形成過程において細菌の付着や凝集などを抑制したり、形成後の口腔バイオフィルムを除去しやすくし、齲蝕等の口腔疾患の予防に有効であることが知られている(例えば、特許文献3、4)。
【0003】
しかし、糖アルコールは、溶解性の点から、組み合わせる種類や含有量により結晶が析出する可能性がある。特に、エリスリトール等の溶解性の低い糖アルコールを、粒状や粉末状で高濃度に配合する場合には、温度変化によって溶解と再結晶が繰り返され結晶が大きくなったり、結晶形が変わる(晶癖)可能性がある。さらに、高濃度の糖アルコールに対して、添加する水分を少量にすると結晶析出は抑えられる反面、粘結剤が溶解せず、水や他の液体成分が分離しやすくなり、保存安定性を損なう問題が生じる。
これに対して、特許文献5には、高濃度の糖アルコール、特にエリスリトールに関して、マルチトール又はグリセリンを配合することにより、エリスリトールの結晶成長を抑制し、安定配合する歯磨き組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−191483号公報
【特許文献2】特開2005−281306号公報
【特許文献3】特開2005−8579号公報
【特許文献4】特開2005−29484号公報
【特許文献5】特開2009−23953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯磨き組成物は、虫歯や口臭、歯肉炎の予防効果を高めるための薬用成分や、歯の美白等のための各種有効成分を含有する。歯磨き組成物の粘度を低くすれば、歯磨き組成物の口中拡散性が高くなり組成物に含有された薬用成分や有効成分が、組成物が唾液に希釈される前に口中に広がることが可能になるが、本発明者らは、歯磨き組成物の粘度を低くした場合に、再結晶した糖アルコールの結晶同士が凝集を起こしやすいことを発見した。そして、再結晶した糖アルコールの凝集物は、ざらざらした使用感を生じさせたり、凝集物が歯磨き組成物を収容するチューブ容器の口部にたまり、吐出性が低下したり閉塞する可能性がある。
従って、本発明の課題は、高い清涼感を有しつつ、粘度が低く歯磨き組成物の口中拡散性に優れ、しかも粉末状又は粒状のエリスリトールの凝集抑制効果に優れた歯磨き組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、エリスリトールを高濃度に含有し高い清涼感を有し、低粘度の歯磨き組成物であっても、特定の吸油量のシリカを一定量配合することにより、エリスリトールの凝集抑制効果に優れ、使用感の良好な歯磨き組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C)を含有し、25℃における粘度が30〜250Pa・sである歯磨き組成物を提供するものである。
(A)平均粒子径が200μm以下であるエリスリトール 25〜55質量%
(B)水 15〜35質量%
(C)吸油量が200〜400mL/100gのシリカ 0.5〜10質量%
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯磨き組成物は、高い清涼感を有し、低粘度で口中拡散性に優れ、しかも粉末状又は粒状のエリスリトールの凝集抑制効果に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の歯磨き組成物は、平均粒子径が200μm以下のエリスリトール(成分(A))を含有する。エリスリトールの粒子径は、良好な清涼感、冷涼感を得る点から平均粒子径が200μm以下であるが、口の中で冷涼感が持続するという観点から、平均粒子径が30〜200μmが好ましく、さらに30〜150μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0010】
なお、エリスリトールの粒子径は以下のように測定される。
篩:JIS標準篩 φ75mm
目開き:上段より、それぞれ500μm、355μm、250μm、180μm、125μm、90μm及び45μmの目開きを有する篩の下に受器を有する。
振盪機:ミクロ型電磁振動機M−2型(筒井理化学器機(株))
方法:試料15gを500μm篩上に載せ、電磁振動機にて5分間分級する。篩下率(積算量)を正規確立紙にプロットし、50%に対応する値を平均粒子径とする。
このような粒子径は、結晶状のエリスリトールを粉砕して調整することができる。エリスリトールの粉砕には、ローラミル、ハンマーミル、高速度粉砕機、パルベライザーなどを使用することができる。結晶状のエリスリトールは、市販品としては、日研化成(株)、三菱化学フーズ(株)、カーギル社等のものが入手可能である。
【0011】
本発明の歯磨き組成物中の平均粒子径200μm以下のエリスリトール含有量は、保存安定性及びより高い清涼感を得る観点から25〜55質量%であり、好ましくは30〜55質量%、より好ましくは35〜50質量%である。エリスリトール含有量が25質量%未満では十分な清涼感が得られず、55質量%を超えると組成物中の粉体成分量の割合が多くなるために、製造後徐々に固くなるという問題が生じる。また、歯磨き組成物への平均粒子径200μm以下のエリスリトールの配合量は30〜60質量%が好ましく、35〜60質量%がより好ましく、特に35〜55質量%が好ましい。組成物のコストを考慮すると、組成物に配合するエリスリトール量は60質量%以下にするのが好ましい。
【0012】
本発明の歯磨き組成物は、水(成分(B))を15〜35質量%含むものであるが、保存安定性及びより高い清涼感を得る観点から、好ましくは15〜30質量%、特に好ましくは17〜25質量%含有する。
【0013】
本発明で用いられる(C)シリカは、エリスリトールの凝集を抑制する観点から、吸油量が200〜400mL/100gであり、一般に増粘性シリカと称されるものである。(C)シリカの吸油量は、より好ましくは220〜380mL/100gであり、さらに好ましくは、250〜350mL/100gである。ここで、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2に準ずる方法により、吸収される煮あまに油の量により特定する。このようなシリカは、サイリシア、サイロピュア(富士シリシア化学社製)、チキソシル(ローディア社製)、ソルボシル(イネオスシリカ社製)、ファインシール(トクヤマ社製)、ニップジェル(東ソーシリカ社製)から入手可能である。なお、ここで用いられる吸油量の多いシリカは、研磨剤として用いられるシリカとは相違する。一般的に、研磨剤として用いられるシリカの吸油量は、50〜150mL/100gである。
【0014】
本発明の歯磨き組成物中の(C)シリカの含有量は、エリスリトールの凝集抑制効果と、粘度を低く抑えることによる薬用成分やフィチン酸等の有効成分の口中拡散性向上効果とのバランスから0.5〜10質量%であって、さらに好ましくは1.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜8質量%である。また、歯磨き組成物中の(C)シリカの含有量と(B)水の含有量の質量比(C/B)は、エリスリトールの凝集抑制効果と粘度を低く抑えることによる薬用成分等の口中分散性向上効果とのバランスから0.05〜0.4であることが好ましく、さらに0.1〜0.35であることが好ましく、特に0.15〜0.3であることが好ましい。
【0015】
本発明の歯磨き組成物は、さらに(D)粘結剤を含有する。(D)粘結剤は、本発明の(C)シリカを含まず、成分(C)シリカ以外の粘結剤であって、歯磨き組成物に使用可能なものが含まれ、具体的にはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことができる。このうち、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。特に、保形性や糸引き性、及び使用感の面から2種以上、さらには3種以上を使用することが好ましい。
【0016】
本発明の歯磨き組成物中の(D)粘結剤の含有量は、水の含有量、粘結剤の種類等によって異なるが、歯磨き組成物の25℃における粘度を30〜250Pa・sとする点から、(D)粘結剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウムから選択される1種又は2種以上である場合には、(D)粘結剤の含有量合計は0.3〜1.0質量%が好ましく、さらに0.4〜0.9質量%、特に0.4〜0.7質量%が好ましい。成分(C)と成分(D)の含有量の合計は、1.0〜10質量%が好ましく、さらに3.5〜10質量%が好ましく、さらに3.5〜8質量%が好ましく、特に5〜8質量%が好ましい。また、成分(C)と成分(D)の含有量の質量比(C:D)は、20:1〜2:1が好ましく、さらに15:1〜3:1が好ましく、特に12:1〜5:1が好ましい。
【0017】
本発明の歯磨き組成物の粘度は、薬用成分等の口中拡散性を良好とし、薬用成分等の歯、歯肉への取り込み性を向上させる観点と、歯ブラシから垂れることを防止する観点から30〜250Pa・sであり、エリスリトールの凝集抑制効果の観点から30〜200Pa・sであるのが好ましく、さらに50〜180Pa・sであるのが好ましい。ここで、粘度はヘリパス型粘度計を用いて、測定温度を25℃とし、ロータC、2.5r/min、1分間の測定条件により測定できる。
【0018】
本発明の歯磨き組成物は、さらに薬用成分を0.01〜2質量%含有するのが好ましい。薬用成分としては、例えば、フッ素イオン供給化合物、殺菌剤、抗炎症剤、抗プラスミン剤、抗歯石剤、血行促進剤、抗知覚過敏剤、酵素、タバコのヤニ除去剤などが挙げられる。このうち、本発明の歯磨き組成物の口中分散性の点から、少量配合することが好ましい薬用成分であるフッ素イオン供給化合物、殺菌剤、抗炎症剤が好ましい。フッ素イオン供給化合物としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、モノフルオロホスフェート(例えば、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、モノフルオロリン酸アンモニウム等)等の無機性フッ化物、アミンフッ化物等の有機性フッ化物が挙げられ、その中でもフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズが好ましい。殺菌剤としては、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム化合物、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、トリクロロカルバニリドが挙げられ、その中でも塩化セチルピリジニウム、イソピロピルメチルフェノール、トリクロサンが好ましい。抗炎症剤としては、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アズレン、グリチルレチン酸、エピジヒドロコレステリン、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類が挙げられ、その中でもアラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、グリチルレリン酸、グリチルリチン酸ジカリウムが好ましい。抗プラスミン剤としては、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸が挙げられる。抗歯石剤としては、ゼオライト、リン酸及びその塩類、ピロリン酸及びその塩類、ポリリン酸及びその塩類が挙げられ、その中でもゼオライト、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが好ましい。血行促進剤としては、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロールが挙げられる。抗知覚過敏剤としては、硝酸カリウム、乳酸アルミニウムが挙げられる。酵素としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼが挙げられる。タバコのヤニ除去剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
本発明の歯磨き組成物は、味や配合量の規制の点から口中拡散性が良好であれば、薬用成分の含有量を少なくすることが好ましく、薬用成分の含有量は、好ましくは0.01〜1.5質量%であり、さらに好ましくは0.01〜1.0質量%である。
【0019】
本発明の歯磨き組成物は、さらに、フィチン酸又はその塩を含有することができる。フィチン酸又はその塩を配合することにより、歯のエナメル質にダメージを与えずに、歯の表面の微小な汚れを除去して自然な光沢を付与するとともに、歯のエナメル質表層の小柱間隙に存在する物質を選択的に除去し、小柱間隙の空間による光散乱を増加させ、自然な白い歯を得ることができる。また、本発明の歯磨き組成物はフィチン酸又はその塩の口中拡散性が良好であるから、これらの光沢付与と光散乱による反射光増加の効果を十分に得ることができる。また、味及び光沢付与、光散乱による反射光増加の点から、フィチン酸の含有量は0.1〜5質量%が好ましく、さらに0.15〜3質量%が好ましく、特に0.2〜2質量%が好ましい。
【0020】
本発明の歯磨き組成物のpHは、味の点から5〜7.5が好ましく、フィチン酸又はその塩を含有する場合には、光沢付与及び光散乱による反射光増加の点から5〜7が好ましく、さらに5.5〜7、特に5.5〜6.5が好ましい。ここで、本発明の歯磨き組成物のpHは、蒸留水を加えて30質量%水溶液に調整した後、pH電極を用いて測定することができる。
【0021】
本発明の歯磨き組成物は、(A)エリスリトールが温度変化によって溶解、再結晶した場合に、結晶が大きく成長することを抑制する点から、グリセリン及び/又はマルチトール(以下「グリセリン等」という)を含有することが好ましい。グリセリン等の含有量は、粘性、味の点から、成分(A)エリスリトールに対して質量比(グリセリン等/A)で0.25〜0.8であることが好ましく、さらに0.3〜0.8であることが好ましく、特に0.4〜0.8であることが好ましい。
【0022】
本発明の歯磨き組成物には、前記成分の他、例えば発泡剤、発泡助剤、研磨剤、甘味剤、香料、pH調整剤、保存料、顔料、色素等を適宜含有させることができる。
【0023】
研磨剤としては、含水シリカ、無水シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、さらに合成樹脂系研磨剤等が好適に用いられる。研磨剤の含有量は、好ましくは1〜20質量%である。なお、上記シリカ系研磨剤の吸油量は50〜150mL/100gであり、好ましくは75〜125ml/100gである。
【0024】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0025】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、ペパーミント油、スペアミント油、オシメン、n−アミルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、メチルアセテート、シトロネオールアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、シソ油、丁子油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0026】
本発明の歯磨き組成物は、十分な清涼感を得る観点から、エリスリトールが粉末状又は粒状で分散しているのが望ましい。そのためには、エリスリトールは製造の最終工程に、粉体状又は粒状のままで投入することが好ましい。このような製造方法を用いることで、エリスリトールは水にほとんど溶解せずに、歯磨き組成物中に粉末状又は粒状で存在させることが可能となる。具体的には、例えば、精製水、湿潤剤、粘結剤、保存料、甘味剤及び薬効成分等を、一定の製造条件に従って混合し、(D)粘結剤を十分に膨潤させ、さらに、(C)シリカ、研磨剤及び発泡剤、香料を加えて混合し、最後に粉末状又は粒状のエリスリトールを加えて脱泡混合し、本発明の歯磨き組成物を製造できる。
【実施例】
【0027】
表1に示す歯磨き組成物を以下の手順で調製し、チューブに充填し、エリスリトールの結晶状態と使用感の評価、ペーストの分散性の評価、さらに粘度の測定を行った。結果をあわせて表1に示す。
(製造手順)
表1の組成で、水に、研磨性シリカ、ラウリル硫酸ナトリウム、香料、エリスリトール以外の成分を混合して(D)粘結剤を十分に膨潤させた後、(C)シリカ、研磨性シリカ、ラウリル硫酸ナトリウム、香料を加え、最後に粉末状及び粒状のエリスリトールを加えて脱泡混合して歯磨き組成物とした。
【0028】
〔エリスリトールの結晶状態と使用感の評価〕
表1に示す歯磨き組成物を、保存用のチューブに詰め、40℃/12hと5℃/12hのサイクル試験機で30日間保存した。その後、チューブを切り開いて、エリスリトールの状態を目視と使用感により次の基準で評価した。
◎:保存前のものと比べて見た目も感触も変化がない。
○:保存前のものと比べてわずかにザラザラした感触がある。
△:保存前のものと比べて凝集は確認されないが、ザラザラした感触がある。
×:保存前のものと比べて明らかに凝集を確認できる。
【0029】
〔ペーストの分散性の評価〕
表1に示す歯磨き組成物を、透明なスライドガラスに1g取り、35℃の温水の中に投入後、200rpm/minで温水を30秒間攪拌した。30秒後にスライドガラスに残った歯磨きの状態を目視にて次の基準で評価した。
◎:ペーストが全く残っていない
○:ペーストがごくわずかに残っている
△:ペーストが少し残っている
×:ペーストが半分以上残っている
【0030】
〔粘度測定〕
表1に示す歯磨き組成物を、粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、ヘリパス型粘度計を用いて、ロータC、2.5rpm、1分間の条件で粘度を測定した。
【0031】
表1から明らかなように、本発明の歯磨き組成物は、吸油量が320mL/100gのシリカを含有し、低粘度でありながらエリスリトールの凝集を抑制する効果が認められ、ペーストの分散性に優れていた。これに対し、吸油量が320mL/100gのシリカを配合しない比較例1の低粘度の歯磨き組成物は、エリスリトールの凝集が認められた。また、比較例2の歯磨き組成物では、エリスリトールの凝集を抑制する効果は認められたが、粘度が高くペーストの分散性の低い結果が得られた。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)平均粒子径が200μm以下であるエリスリトール 25〜55質量%、
(B)水 15〜35質量%、
(C)吸油量が200〜400mL/100gのシリカ 0.5〜10質量%
を含有し、25℃における粘度が30〜250Pa・sである歯磨き組成物。
【請求項2】
さらに(D)粘結剤を含有し、(C)シリカと(D)粘結剤の質量比(C:D)が20:1〜2:1である請求項1に記載の歯磨き組成物。
【請求項3】
(C)シリカと(D)粘結剤の含有量の合計が3.5〜10質量%である請求項1又は2に記載の歯磨き組成物。
【請求項4】
(C)シリカの(B)水に対する質量比(C/B)が0.05〜0.4である請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯磨き組成物。
【請求項5】
さらに薬用成分を0.01〜2質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯磨き組成物。
【請求項6】
薬用成分が、フッ素イオン供給化合物、殺菌剤及び抗炎症剤から選択される1種又は2種以上である請求項5に記載の歯磨き組成物。
【請求項7】
さらに、フィチン酸又はその塩からなる1種以上を含有し、pHが5〜7である請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯磨き組成物。
【請求項8】
さらにグリセリン及び/又はマルチトールを(A)エリスリトールに対して質量比で0.25〜0.8含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯磨き組成物。

【公開番号】特開2011−190201(P2011−190201A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56537(P2010−56537)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】