説明

歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物の防腐力向上方法

【課題】高い防腐力が確保され、かつ保存安定性及び使用感も良好な歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物の防腐力向上方法を提供する。
【解決手段】(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)キレート剤、(C)キシリトール及び/又はエリスリトール、及び(D)グリセリンを含有してなることを特徴とする歯磨剤組成物、及び上記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を配合することを特徴とする、歯磨剤組成物の防腐力向上方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い防腐力が確保された歯磨剤組成物、更に詳述すると、製剤の高い防腐力が確保され、かつ保存安定性に優れると共に、嫌味がなく口腔内での分散性も高く、使用感に優れた歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物の防腐力向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕の発症を予防する上で重要な手段の1つが家庭での歯磨き行動であり、その効果を最大限に高めるためには正しいブラッシングを行うことが非常に重要である。しかしながら、特にう蝕に罹患しやすい乳歯期の子供は、正しい歯磨きを行うことが困難であることから、保護者による仕上げみがきが必要となる。通常、仕上げみがきは保護者が子供の口腔内の状態を確認しながら行うものであるが、市販の歯磨剤を用いて仕上げみがきを行うと、その発泡性により口腔内が見えにくくなり、プラーク等の汚れが除去できたかどうかの判別が困難であった。また、泡そのものを子供が嫌がる、泡が垂れるなどといったことから、きちんと歯磨きができないという問題があった。
【0003】
一方で、これらの問題点を回避することを目的に、歯磨剤を使用せずに歯ブラシのみで仕上げみがきを行うケースも多いが、この場合は歯磨き本来の目的であるう蝕予防、プラーク除去効果の点からは不十分であった。
【0004】
これらの問題を解決する手段として、アニオン界面活性剤量が少なく、あまり泡立たない歯磨剤が上市されている。しかし、この場合は製剤の味が悪く、嗜好性の点から長時間仕上げみがきするには不十分であった。また、アニオン界面活性剤を減らすことで製剤の防腐力低下や安定性の低下が生じてしまうという課題があった。
【0005】
なお、製剤の味をよくするためにサッカリンナトリウムなどの甘味剤を配合して嫌味をマスキングする方法があるが、この場合は、甘味剤の味が強調され過ぎたりして必ずしも嫌味を抑えることができるとは言えなかった。
【0006】
歯磨剤組成物の防腐力を高め、製剤の雑菌汚染を防ぐ方法としては、防腐剤を配合することが一般的である。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステルや、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウムなどが知られている。しかし、防腐剤を配合すると使用中の味が悪くなり、使用感に劣るという課題があった。
【0007】
パラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤を含まず、十分な防腐力を確保する技術としては、酸化チタンとカチオン性殺菌剤とを併用する方法(特許文献1;特開2010−37293号公報)や特定の香料を用いる方法(特許文献2;特開2001−302475号公報)などが知られている。しかし、これらの方法を採用しても、歯磨剤組成物で十分な防腐力を確保することは難しかった。特に、アニオン界面活性剤量が少ない歯磨剤組成物でも防腐力を満足に確保することは困難であった。
【0008】
一方、グリセリンは一般的に湿潤剤として歯磨剤組成物の乾燥を防ぎ、外観を良好に保つ目的や製剤に適度な粘性を付与して使用性を向上する目的などで配合されている(特許文献3;特許第3959636号明細書、特許文献4;特開2001−72559号公報、特許文献5;特開2002−234826号公報、特許文献6;特開2005−200327号公報)。グリセリンはその量を増やすことで、製剤中の水分量を下げ、防腐力を高めることができるが、一方でその粘性の高さから配合量によっては製剤の曳糸性が高まり、分散性が低下することから使用感が悪くなるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−37293号公報
【特許文献2】特開2001−302475号公報
【特許文献3】特許第3959636号明細書
【特許文献4】特開2001−72559号公報
【特許文献5】特開2002−234826号公報
【特許文献6】特開2005−200327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように歯磨剤組成物において、特に仕上げみがきなどの時間をかけて歯をブラッシングする際に好適に使用できる泡立ちの少ない歯磨剤組成物においても、高い防腐力を確保し、かつ製剤の保存安定性及び使用感も満足に両立させることは困難であった。従って、歯磨剤組成物において、高い防腐力を、製剤の保存安定性及び使用感を良好に保ちつつ十分に確保できる新たな技術が望まれる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高い防腐力が確保され、かつ保存安定性及び使用感も良好な歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物の防腐力向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルと、(B)キレート剤と、(C)キシリトール及び/又はエリスリトールと、(D)グリセリンとを配合することにより、意外にも歯磨剤組成物の防腐力を十分に確保できること、しかも、製剤の保存安定性が良好で、かつ嫌味がなく、口腔内での分散性もよく、使用感にも優れることを知見し、本発明をなすに至った。
【0013】
本発明では、ポリグリセリン脂肪酸エステルとキレート剤とを併用し、かつキシリトール及び/又はエリスリトールとグリセリンとを配合することで、その作用機序は明らかではないが、高い防腐力を奏すると共に、製剤の保存安定性が高まり、しかも配合成分由来の嫌味の発生を抑えることができ、口腔内分散性もよくなり、良好な使用感を確保できる。従って、本発明では、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を配合することによって、従来の種々の課題が解決されて、高い防腐力が確保され、かつ製剤の保存安定性及び使用感も満足に両立できる。本発明によれば、アニオン界面活性剤の含有量が少なく泡立ちが少ない組成でも、あるいはパラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤が配合されていなくても、高い防腐力を確保することができると共に、製剤の保存安定性及び使用感を良好に保つことができる。よって、例えば乳歯期の子供等に対しての仕上げみがきなどといった時間をかけて歯をブラッシングする際に好適な低発泡性の製剤を提供することもできる。
【0014】
従って、本発明は下記の歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物の防腐力向上方法を提供する。
〔I〕
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)キレート剤、(C)キシリトール及び/又はエリスリトール、及び(D)グリセリンを含有してなることを特徴とする歯磨剤組成物。
〔II〕
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)キレート剤、(C)キシリトール及び/又はエリスリトール、及び(D)グリセリンを配合することを特徴とする、歯磨剤組成物の防腐力向上方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、歯磨剤組成物の防腐力を十分に確保でき、しかも、製剤の保存安定性が良好で、かつ嫌味がなく、口腔内での分散性もよく、使用感にも優れた製剤を提供できる。本発明では、泡立ちが少なくても、更には防腐剤を配合しなくても、製剤の保存安定性及び使用感を良好に保ちつつ優れた防腐力を確保することができるもので、子供への仕上げみがきなどといった時間をかけて歯をブラッシングする際に好適な低発泡性で安全面も良好な製剤を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の歯磨剤組成物は、(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)キレート剤、(C)キシリトール及び/又はエリスリトール、及び(D)グリセリンを含有することを特徴とする。
【0017】
本発明で用いる(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンが2〜20個縮合したポリグリセリンに炭素数8〜24の脂肪酸が1〜4個エステル結合したものが使用でき、特に10個縮合したポリグリセリンと炭素数12の脂肪酸のモノエステルであるラウリン酸デカグリセリルが、防腐力の高さと味のよさの点からより好ましい。
【0018】
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルは市販品を用いることができる。例えばラウリン酸デカグリセリルとしては、日光ケミカルズ(株)製の製品や阪本薬品工業(株)製の製品などを用いることができる。
【0019】
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、組成物全体の0.05〜3%(質量%、以下同様)、特に0.1〜1%が好適である。0.05%未満では十分な防腐力が発揮されないことがあり、3%を超えると嫌味が生じて味が悪くなるとともに、泡が立ちすぎる場合がある。
【0020】
(B)キレート剤は、キレート能を有するものであれば特に限定はなく、例えばEDTA、クエン酸、フィチン酸、ポリリン酸等の縮合リン酸、DL−リンゴ酸、グルコン酸及びそれらの塩などが挙げられる。塩としてはナトリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。中でもクエン酸及びその塩が、味のよさと使用感のよさに優れ、高い防腐力、保存安定性を与える点から最も好ましい。
【0021】
(B)キレート剤は市販品を用いることができ、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウムは、いずれも小松屋(株)製の製品などを用いることができる。
【0022】
(B)キレート剤の配合量は、組成物全体の0.001〜3%、特に0.01〜1.5%が好適である。0.001%未満では十分な防腐力が発揮されないことがあり、3%を超えると嫌味が生じて味が悪くなる場合がある。
【0023】
(C)キシリトールは、市販品を用いることができる。例えばロケットジャパン(株)製の製品などを使用できる。また、エリスリトールも市販品を用いることができ、例えば三菱化学フーズ(株)の製品などを使用できる。
【0024】
(C)キシリトール及び/又はエリスリトールの配合量は、組成物全体の3〜15%、特に5〜12%が好適である。3%未満では十分な防腐力が発揮されず、使用感も悪くなることがあり、15%を超えると製剤の安定性が悪くなる場合がある。
【0025】
(D)グリセリンは、通常歯磨剤組成物に使用されるものであれば特に制限はない。具体的にはライオンケミカル(株)製のグリセリン(85%グリセリン)等の市販のものを用いることができる。
【0026】
グリセリンの配合量は、組成物全体の3〜30%、特に10〜25%が好適である。3%未満では十分な防腐力が発揮されない場合があり、30%を超えると味が悪くなるとともに、べたつきが高まり分散性が低下することで使用感に劣ることがある。
【0027】
本発明において、(C)成分のキシリトール及び/又はエリスリトールと(D)成分のグリセリンとの配合比率((C)/(D))は、質量比として0.2〜5、特に0.3〜3であることが、防腐力、製剤安定性、味のよさ、分散性のよさの点から好ましい。
【0028】
本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の各種形状の歯磨剤に調製でき、ジェル状の歯磨剤として調製することもできる。この場合、剤型に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、上記必須成分に加えて任意成分として(A)〜(D)成分以外の公知の添加剤を配合できる。例えば研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、有効成分、香料、着色剤等を配合でき、これら成分と水とを混合し製造できる。
【0029】
研磨剤としては、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物又は無水和物、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸カルシウム等のリン酸系研磨剤、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケ−ト、ポリメチルメタアクリレ−ト、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、合成樹脂系研磨剤などが挙げられ、1種又は2種以上用いられる。配合量は通常、組成物全量に対して0〜50%、特に0〜30%である。
【0030】
湿潤剤としては、キシリトール、エリスリトール、グリセリン以外の公知の湿潤剤、例えばソルビット、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合することができる。これら湿潤剤は配合しなくてもよく、その配合量は本発明の効果を妨げない範囲で組成全体の0〜35%とすることができる。
【0031】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース系粘結剤、キサンタンガム、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられ、これらを1種又は2種以上配合できる。配合量は通常、組成物全量に対して0.1〜5%である。
【0032】
界面活性剤としては、通常歯磨剤組成物に使用されるアニオン界面活性剤、(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステル以外のノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等を配合できる。
アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム等のアシルサルコシン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどが挙げられる。なお、アニオン界面活性剤の配合量を少なくして製剤の泡立ちを抑えてもよく、アニオン界面活性剤の配合量を1%以下、特に0〜0.5%、とりわけ0〜0.1%とすることができる。
【0033】
ノニオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルグルコシド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインや、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が用いられるが、上記に限られるものではない。
これら界面活性剤の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲であればよく、通常、組成全体の0〜10%であり、特に(A)成分も含めて0.1〜5%の範囲が好ましい。
【0034】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等が挙げられる。
防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。なお、このような公知の防腐剤は配合しなくてもよく、配合する場合は本発明の効果を妨げない範囲で1%以下、特に0〜0.5%がよい。
【0035】
各種有効成分としては、例えばフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズなどのフッ素化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼなどの酵素、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、イソプロピルメチルフェノール、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム、アスコルビン酸、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのリン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物などを配合できる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0036】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料や、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0037】
着色剤としては青色1号、黄色4号、緑色3号等が例示される。なお、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0038】
溶剤としては通常、水が使用される。更に、エタノール等の低級一価アルコールを添加してもよいが、配合量は0〜5%が好ましい。
【0039】
本発明の歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において%は特に記載のない限りいずれも質量%である。
【0041】
〔実施例、比較例〕
表1〜3に示す組成の歯磨剤組成物(ジェル状歯磨剤)を下記製造法により調製した。
製造法:
(1)精製水中に水溶性成分(粘結剤、プロピレングリコールを除く)を常温で混合溶解させたA相を調製した。
(2)プロピレングリコール中に粘結剤を常温で分散させたB相を調製した。
(3)攪拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。
(4)C相中に、香料等の水溶性成分以外の成分を1.5Lニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、減圧(4kPa)による脱泡を行い、歯磨剤組成物1.2kgを得た。
【0042】
なお、歯磨剤組成物の調製には、ラウリン酸デカグリセリル(阪本薬品工業(株)製)、オレイン酸デカグリセリル(阪本薬品工業(株)製)、クエン酸(小松屋(株)製)、クエン酸ナトリウム(小松屋(株)製)、DL−リンゴ酸(扶桑化学工業(株)製)、ポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)、キシリトール(ロケットジャパン(株)製)、エリスリトール(三菱化学フーズ(株)製)、グリセリン(ライオンケミカル(株)製、85%グリセリン)を用いた。
【0043】
調製した歯磨剤組成物は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30、厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。
使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
【0044】
得られた歯磨剤組成物について、製剤の防腐力、安定性、嫌味のなさ、分散性のよさについて、以下の方法により評価した。結果を表1〜3に併記する。
【0045】
(1)歯磨製剤の防腐力の評価方法
歯磨剤組成物30g中に供試菌株(環境由来の細菌類、真菌類)を約107CFU/gとなるように接種し、1、7、20、30日後の菌数を測定し、以下の基準で評価した。
防腐力の評価基準
◎:7日以内で菌が死滅
○:8〜20日で菌が死滅
△:21〜30日で菌が死滅
×:31日以上菌が死滅しない
【0046】
(2)製剤の安定性の評価方法
調製した歯磨剤組成物を40℃条件下に1ケ月保存後に外観安定性を以下の基準で評価した。
安定性の評価基準
◎:つやのある均一なペースト状であった。
○:ややつやのある均一なペースト状であった。
△:つやのない均一なペースト状であった。
×:不均一なペースト状であった。
【0047】
(3)嫌味のなさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験を実施した。歯磨剤組成物約0.5gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた嫌味のなさを、以下の評点に従って官能評価した。10名の評価結果の平均値を求め、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを、嫌味のない歯磨剤組成物であると判断した。
嫌味のなさの評価基準
4点:嫌味が全くない
3点:嫌味がほとんどない
2点:嫌味がややある
1点:嫌味がある
評点基準
◎:3.5点以上〜4.0点以下
○:3.0点以上〜3.5点未満
△:2.0点以上〜3.0点未満
×:2.0点未満
【0048】
(4)使用中の分散性のよさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の製剤の口腔内での分散性のよさについて、以下の評点に従って評価した。10名の平均点を次の基準に従って評価し、◎、○、△、×で表に示した。
製剤の口腔内での分散性のよさの評価基準
4点:分散性が非常によい
3点:分散性がかなりよい
2点:分散性がややよい
1点:分散性がよくない
評価基準
◎:3.0点以上〜4.0点以下
○:2.0点以上〜3.0点未満
△:1.5点以上〜2.0点未満
×:1.5点未満
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)キレート剤、(C)キシリトール及び/又はエリスリトール、及び(D)グリセリンを含有してなることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ラウリン酸デカグリセリルである請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(B)キレート剤が、クエン酸又はその塩である請求項1又は2に記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
(C)成分/(D)成分の質量比が0.2〜5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項5】
アニオン性界面活性剤の含有量が1質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)キレート剤、(C)キシリトール及び/又はエリスリトール、及び(D)グリセリンを配合することを特徴とする、歯磨剤組成物の防腐力向上方法。

【公開番号】特開2012−180342(P2012−180342A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16422(P2012−16422)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】