説明

歯磨剤組成物

【解決手段】フッ化ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、(A)シリカ系研磨剤、(B)ソルビット及び/又はグリセリン、(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種のセルロース誘導体、(D)EO平均付加モル数15〜25モル、アルキル基の炭素数が16〜18のポリオキシエチレンアルキルエーテル又はEO平均付加モル数が40〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合し、(A)/(C)の質量比が5.6〜14.0である歯磨剤組成物。更に、(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを配合する上記歯磨剤組成物。
【効果】フッ化物の口腔内、特に歯牙表面への滞留性に優れ、歯ブラシ上での成形性に優れ、室温以上の中高温での経時保存安定性が良好で、更に泡立ちが良好なもので、う蝕予防用の歯磨剤組成物として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化物の口腔内滞留性に優れ、歯牙表面にフッ化物が効果的に作用し、かつ良好な成形性及び経時保存安定性を有し、しかも、十分な起泡性を有する歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤組成物中には、歯磨成分を口腔内に速やかに行き届かせると共にブラッシング時の使用感を向上させるためなどに界面活性剤(発泡剤)が配合されており、起泡性に優れるラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤が多く製品で用いられている。
【0003】
一方、歯磨製剤は歯ブラシ上に採取して使用することから、製剤に一定の成形性を与えることで歯ブラシに採取し易く製剤化されている。この成形性を作り出すため、多くの歯磨製剤に粘結剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどのアニオン性の水溶性高分子物質が配合されている。
【0004】
また、歯磨製剤の多くには、これらの基剤の他に各種有効成分が配合されており、その中でもう蝕予防効果を有する成分としてフッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ化物が多くの製品に配合され上市されている。
【0005】
フッ化物は多価金属イオンとの反応性が高く、フッ化ナトリウムは、カルシウムイオンなどが製剤中に存在する場合にはフッ化カルシウムを形成するなどして有効性が低下することが知られており、製剤組成に応じてモノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ化物を用い、種類を使い分けて使用している。また、フッ化物は大量摂取による急性中毒、慢性的な過剰摂取により歯のフッ素症や骨フッ素症を引き起こすことが知られており、このような危険性から薬効成分として配合されるフッ化物には、多くの国において配合上限値が設けられており、例外的には5,000ppm程度まで認められているが、一般的にはフッ素として1,000〜1,500ppmを配合の上限値に設定している。
【0006】
これらのことを踏まえ、一定の濃度でより効率的にフッ化物を歯牙表面へ作用させることで高いう蝕予防効果を得る技術が求められており、フッ化物の口腔内滞留性を改善し作用効率を向上させる検討が行われている。
【0007】
このような技術としては、例えば、ジェランガムと非イオン性界面活性剤を併用して滞留性を向上させた口腔用液体組成物(特許文献1)、コロイド性炭酸カルシウムを併用する口腔用組成物(特許文献2)、フッ素イオンがアニオン性であることに着目してカチオン性ポリマーと併用することで静電的作用を応用して滞留性を向上させた歯磨剤組成物(特許文献3,4)、ワックスを併用した歯磨剤組成物(特許文献5)、特定のアルギン酸塩、キサンタンガム及びリン酸塩を併用する液状口腔用組成物(特許文献6)などが知られている。
【0008】
しかしながら、これらの技術は、必ずしもフッ化物の作用効率を十分に向上させるものではなく、また、製剤化した場合に歯ブラシ上での成形性や経時による液分離等を抑制する十分な安定性確保、更に起泡性や、使用感について、必ずしもこれら全てが十分満足できるものではなく、新たなフッ化物の作用効率を高める技術が望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開平8−3074号公報
【特許文献2】特開平11−130643号公報
【特許文献3】特開平3−5417号公報
【特許文献4】特開2001−163743号公報
【特許文献5】特開2002−3351号公報
【特許文献6】特開2006−206581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、フッ化物イオンの口腔内、特に歯牙表面への滞留性に優れ、歯ブラシ上での成形性に優れ、経時での製剤の保存安定性が良好であり、十分な起泡性を有し、使用感も良好な、フッ化物を含有する歯磨剤組成剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため、フッ化物を含有する歯磨剤組成物におけるフッ素と歯の表面との相互作用への影響について鋭意検討した結果、フッ化ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、(A)シリカ系研磨剤と、(B)ソルビット及び/又はグリセリンと、(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種のセルロース誘導体と、(D)エチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜25モルで、アルキル基の炭素数が16〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤とを特定割合で配合することにより、フッ化物含有歯磨剤組成物の上記課題が解決され、歯牙表面へのフッ化物の作用性が向上することでフッ化物の口腔内滞留性が高まり、優れたう蝕予防効果を発揮すると共に、歯ブラシ上に載せた時の成形性に優れ、しかも、室温以上の中高温(40〜50℃)で保存時(実際に保管温度が40℃を超える場合もあるが、一般的に40℃で6ヶ月間保管した条件が室温3年保存に相当するとされており、室温での安定性を早期に判断する指標となる。)の経時保存安定性が良好であり、更に歯磨ブラッシング時において泡立ちが良好な歯磨剤組成物が得られることを知見した。更に、(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを配合することで、歯磨剤組成物の使用量が少なくても十分な泡立ち量を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
(A)シリカ系研磨剤、(B)ソルビットやグリセリン、(C)セルロース誘導体、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、何れも歯磨剤組成物の配合成分としては公知の物質である。しかしながら、本発明者らは、意外にもフッ化ナトリウムを配合した歯磨剤組成物において、これら(A)〜(D)成分を特定の条件で配合した場合にフッ化物の口腔内滞留性が高まり、しかも上記したような優れた特性も兼ね備え、本発明の目的を達成できることを新たに見出したものである。
【0013】
歯磨剤組成物には、ブラッシング時の使用感の向上、泡立ちによる歯磨成分のスムーズな口腔内への広がり、香料成分の安定な可溶化を図るなどの目的で界面活性剤が配合されており、泡立ちが良好なラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤が一般的に使用されている。また、歯磨剤組成物の歯ブラシ上での成形性を保つために通常、粘結剤としてアニオン性高分子物質が0.5〜2%程度配合されている。本発明者らは鋭意検討した結果、これらのアニオン性界面活性剤、アニオン性粘結剤がフッ化物の滞留性を低下要因となっていること、この場合、そのメカニズムは明確ではないが、アニオン性の化合物が歯の表面に吸着するとこれらの吸着化合物とアニオン性を示すフッ素イオンとが静電的な反発を示すことで滞留性が低下するものと推測される。更に、フッ化ナトリウムを配合した歯磨剤組成物において、フッ化ナトリウムが解離したアニオン性のフッ素イオンは、カルシウムイオンが存在するとフッ化カルシウムを形成して不溶化し、歯の表面への滞留性が低下するものと推測される。
【0014】
本発明によれば、フッ化ナトリウムを配合した歯磨剤組成物に、特定の非イオン性界面活性剤と、カルシウムイオンを放出しないシリカ系研磨剤とセルロース誘導体とを併用して質量比を特定し、かつソルビット及び/又はグリセリンを配合することで、上記問題を解消でき、フッ化物の口腔内滞留性を高めることができ、かつ液分離安定性とブラシ上での成形性、泡立ちも向上させることができる。更に、上記のようにフッ化物の口腔内滞留性を高めるには非イオン性界面活性剤が発泡剤として有効であるが、更に、両性界面活性剤の脂肪酸アミドプロピルベタインを併用することで、カチオンとアニオンの電荷が打ち消されてイオン性の性質が弱まり、滞留性に影響を与えることなく、少ない歯磨剤の使用量でも高い泡立ちを得ることができると推測できる。
【0015】
従って、本発明は、フッ化ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、
(A)シリカ系研磨剤を12〜26質量%、
(B)ソルビット及び/又はグリセリンを15〜40質量%、
(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種のセルロース誘導体を1.0〜4.0質量%、
(D)エチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜25モルで、アルキル基の炭素数が16〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を2〜10質量%
を配合してなり、(A)/(C)の質量比が5.6〜14.0であることを特徴とする歯磨剤組成物、更に、(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを含有する上記歯磨剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の歯磨剤組成物は、フッ化物の口腔内、特に歯牙表面への滞留性に優れ、歯ブラシ上に採取したときの成形性に優れ、室温以上の中高温(40〜50℃)で保管された場合の液分離がなく、更に、歯磨ブラッシング時において十分な泡立ちが得られるもので、う蝕予防用の歯磨剤組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の歯磨剤組成物は、フッ化ナトリウムを含有し、かつ(A)シリカ系研磨剤、(B)ソルビット及び/又はグリセリン、(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種のセルロース誘導体、(D)エチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜25モルで、アルキル基の炭素数が16〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を配合してなるものであり、更に好ましくは、(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを配合する。
【0018】
本発明組成物において、フッ化ナトリウムとしては、通常歯磨剤組成物に使用されるものであれば何れでもよく、例えばステラケミファ(株)などから市販されている市販品を使用することができる。
フッ化ナトリウムの配合量は、通常、組成物全体の0.05〜0.5%(質量%、以下同様。)が好ましい。なお、フッ素の含有量としては226〜2,263ppmであり、指定された配合上限内で用いることが好ましい。
【0019】
(A)成分のシリカ系研磨剤としては、研磨性を有する沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケートなどが挙げられるが、特に沈降性シリカが好適である。沈降性シリカとしては、添加物を含まない無水ケイ酸に加え5%以下のジルコニウム又はアルミニウム等を製造過程で添加した非晶質な無水ケイ酸などが挙げられる。
【0020】
シリカ系研磨剤の数平均粒径は5〜50μm、特に10〜20μmが好ましい。5μm未満では十分な研磨性が得られない場合があり、50μmを超えると使用時に違和感を生じる場合がある。シリカ系研磨剤の数平均粒径(Mean Number Diameter)は5〜50μm、特に10〜20μmが好ましい。5μm未満では十分な研磨性が得られない場合があり、50μmを超えると使用時に違和感を感じる場合がある。上記平均粒径の測定はレーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により測定した。
上記シリカ系研磨剤としては、例えばローディア日華(株)から販売されているTIXOSIL 73などが挙げられる。
【0021】
シリカ系研磨剤の配合量は、組成物全体の12〜26%であり、特に歯ブラシ上での成形性及び泡立ちの点から14〜22%が好ましい。12%未満では十分な成形性が得られず、また、液分離安定性が悪くなり、26%を超えると歯磨ブラッシング時において十分な泡立ちが得られなかったり、液分離安定性に劣る。
【0022】
(B)成分は、ソルビット及び/又はグリセリンであり、本発明では、十分な成形性と泡立ちを確保するため特定範囲での配合が有効である。
ソルビットとしては、例えば東和化成工業(株)からD−ソルビット液(70%)として、グリセリンはライオンケミカル(株)から歯磨用グリセリン(85%)として入手することができる。
【0023】
ソルビット及び/又はグリセリンの配合量は、純分換算で組成物全体の15〜40%であり、特に保存安定性及び泡立ちの点から20〜35%が好ましい。15%未満では液分離が生じ易くなったり、歯ブラシ上での成形性が悪くなり、40%を超えると製剤の粘性が高くなり歯磨ブラッシング時において十分な泡立ちが得られず、また、フッ化物の滞留性が低下してしまう。
【0024】
(C)成分は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれるセルロース誘導体であり、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して配合することができる。非イオン性粘結剤である上記セルロース誘導体は、フッ素イオンと歯表面間で働く静電的相互作用への影響が小さいため滞留性への影響が小さく、また、ヒドロキシル基の親水部とセルロース骨格の疎水部からなる高分子界面活性剤としての機能から泡立ちを高め、更に保水性機能が液分離安定性を良好にするものと考えられる。
【0025】
ヒドロキシエチルセルロースとしては、重量平均分子量が10万〜300万のものが成形性を持たせる点で好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリエチレンオキサイドの検量線を用いて換算した値である。
このようなヒドロキシエチルセルロースとしては、例えば、HECダイセル SE600、SE850、SE900(ダイセル化学工業(株))などが市販されており使用することができる。
【0026】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、例えば、信越化学工業(株)からメトローズの商品名で市販されているMETOLOSE 65SH400、65SH1500、65SH4000、60SH4000などが使用することができ、メチルセルロースとしては、例えば、信越化学工業(株)から市販されているMETOLOSE SM400、SM1500、SM4000などが使用することができる。これらのセルロース誘導体は、2%水溶液での粘度(mPa・s)が50〜4000mP・sのグレードのものが成形性を持たせる点で好ましい。なお、粘度測定は、単一円筒形回転粘度計ブルックフィールド型粘度計LV型(ローター#2、温度20℃、12rpm、1分間)で行った。
【0027】
(C)成分のセルロース誘導体の配合量は、組成物全体に対して1.0〜4.0%であり、特に歯ブラシ上での成形性及び起泡性の点から1.5〜3.5%が好ましい。1.0%未満では製剤の十分な成形性が得られず、液分離安定性や歯磨ブラッシング時において十分な泡立ちが得られず、4.0%を超えると製剤粘度が上昇し、歯磨ブラッシング時において十分な泡立ちが得られず、フッ化物の滞留性が低下してしまう。
【0028】
(D)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、エチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜25モル、アルキル基の炭素数が16〜18のものである。エチレンオキサイドの平均付加モル数が15モル未満のもの、あるいは25モルを超えたものでは、何れも歯磨ブラッシング時における泡立ちが低下し、十分な泡立ちが得られない。
【0029】
(D)成分のエチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜25モルで、アルキル基の炭素数が16〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレン(15)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(25)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(15)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(25)ステアリルエーテルなどが挙げられ、泡立ちの点から、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル及びポリオキシエチレン(15)セチルエーテルがより好ましい。これらは日本エマルジョン(株)、日光ケミカルズ(株)などから販売されている市販品を使用できる。
【0030】
また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜80モルのものである。エチレンオキサイドの平均付加モル数が40モル未満のもの、あるいは80モルを超えるものでは、十分な泡立ちが得られない。
【0031】
エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油などが挙げられ、泡立ちの点から、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油がより好ましい。これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は日光ケミカルズ(株)などから販売されており、市販品を使用できる。
【0032】
(D)成分としては、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種を単独で配合しても2種以上を組み合わせて配合してもよい。
これら(D)成分の非イオン性界面活性剤の総配合量は、組成物全体の2〜10%であり、特に起泡性及び製剤安定性の点から3〜8%が好ましい。配合量が2%未満では、歯磨ブラッシング時において十分な泡立ちが得られなかったり、液分離が生じて経時保存安定性が悪くなり、10%を超えると経時での製剤安定性が悪くなり、液分離を起こし易くなると共に、フッ化物の滞留性も低下する。
【0033】
(A)成分/(C)成分の配合比率(質量比)は、5.6〜14.0であり、好ましくは6.2〜12.0である。(A)/(C)比が14.0を超えると歯磨ブラッシング時の泡立ちや液分離安定性が低下し、5.6未満では歯ブラシ上での成形性や液分離安定性が悪くなる。
【0034】
本発明の歯磨剤組成物には、更に(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを配合することが好ましく、これによりフッ化物の口腔内滞留量に影響を与えることなく歯磨剤組成物の泡立ちを更に高めることができる。
【0035】
脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが好適に使用でき、1種単独でも2種を併用してもよい。
ラウリン酸アミドプロピルベタインは、主としてラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸からなり、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインは主としてヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸からなる。
これらの脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、市販品を使用でき、ラウリン酸アミドプロピルベタインとしては、例えばアンヒトール20AB(花王(株))、ソフタゾリン LPB(川研ファインケミカル(株))、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、TEGO BETAIN CK(Goldschmidt社)、アンヒトール55AB(花王(株))、NIKKOL AM−3130N(日光ケミカルズ(株))などの商品名で入手可能な市販品を使用できる。
【0036】
脂肪酸アミドプロピルベタインの配合量は、組成物全体の0.2〜2.0%、特に起泡性、フッ化物滞留性及び刺激性の点から0.7〜1.5%が好ましい。配合量が0.2%未満では泡立ちを十分に高めることができない場合があり、2.0%を超えるとフッ化物の口腔内滞留量が低下することがある。
【0037】
本発明の歯磨剤組成物は、上記成分に加えて、任意成分として通常歯磨剤組成物に配合されるその他の成分、例えば研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味料、着色料、防腐剤、pH調整剤、香料、薬効成分等の適宜の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。
【0038】
研磨剤としては、(A)シリカ系研磨剤に加えて、その他の研磨剤を配合できる。例えば、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウムなどが挙げられる。なお、カルシウムイオンを放出する研磨剤はフッ化ナトリウムとの反応性が高いことから併用しないことが好ましく、これらの研磨剤の中でも、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、ポリメチルメタアクリレート、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウムなどが好適である。
上記他の研磨剤の配合量は、組成物全体の0〜30%、特に0〜10%が好適である。(A)シリカ系研磨剤との合計配合量は、12〜56%、特に12〜36%が望ましい。
【0039】
粘稠剤としては、(B)ソルビット及びグリセリンに加えて、他の粘稠剤、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、エリスリトールなどの多価アルコール、糖アルコール等を配合してもよい。他の粘稠剤の配合量は通常0〜20%であり、(B)成分との合計配合量は15〜60%である。
【0040】
粘結剤としては、(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースに加えて、他の粘結剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、κ−(カッパ)又はι−(イオタ)カラギナン、キサンタンガムなどを配合することができる。
【0041】
なお、本発明においては、フッ化物の口腔内滞留性を十分確保するために、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のイオン性の粘結剤を配合しないか、あるいは配合してもその配合量を必要最小限にすることが望ましい。配合する場合は、組成物中0.4%以下、特に0〜0.2%が望ましく、下限値は0%である。実質上含まれない(0%である)ことが最も好ましい。含有量が0.4%を超えると、本発明の効果であるフッ化物の歯牙への滞留性向上効果が低減してしまうことがある。
【0042】
界面活性剤としては、(D)成分のポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、更には(E)成分の脂肪酸アミドプロピルベタインに加えて、本発明の効果を妨げない範囲で通常歯磨剤組成物に用いられる他の界面活性剤を配合できるが、アニオン性界面活性剤は配合しないことが好ましい。
【0043】
上記したように、本発明では、フッ化物の滞留性向上効果がアニオン性界面活性剤の配合により低減してしまうことがあるので、フッ化物の歯牙への滞留性を満足に発揮させるために、一般的な歯磨剤組成物に配合されるラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウムなどのアニオン性界面活性剤を配合しないことが望ましく、配合しても必要最小限の配合量にすることが好ましい。アニオン性界面活性剤を配合する場合、その含有量は組成物中0.05%以下であることが好ましく、下限値は0%である。実質上含まれない(0%である)ことが最も好ましい。含有量が0.05%を超えると、本発明の効果であるフッ化物の歯牙への滞留性向上効果が低減してしまうことがある。
【0044】
従って、他の界面活性剤を配合する場合は、非イオン性界面活性剤を配合することが好適であり、例えば、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレンポリオキプロピレンブロック共重合体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
これら他の界面活性剤を配合する場合、その配合量は組成物中0〜5%が好ましく、(D)成分と併せた合計配合量が通常2〜15%程度となる範囲が好適である。
【0045】
薬効成分としては、フッ化ナトリウムに加え、他の薬効成分、例えばクロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸カリウム、ヒノキチオール等の抗菌剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、プロテアーゼ等の歯垢形成抑制剤、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン等の抗炎症剤、酢酸トコフェロール等の各種ビタミンなどが挙げられる。配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量である。
【0046】
甘味料としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、アスパルテーム等が配合できる。
【0047】
着色料としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、雲母チタン、酸化チタン等を挙げることができる。
防腐剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、グリセロリン酸やこれらの各種塩、水酸化ナトリウムなどを挙げることができる。本発明の歯磨剤組成物のpHは6〜10、特に7〜9の範囲になるよう調整されることが好ましい。
【0049】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これらの天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアセデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0050】
本発明の歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。更に、例えばラミネートチューブチューブ(最外層よりLDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30)などを好適に使用できる。なお、上記略号は下記の通りであり、末尾の数字は厚さ(μm)を示す。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において%は特に断らない限り、いずれも質量%であり、表1,2に示される配合量は純分換算による配合量を示した。
【0052】
〔実施例、比較例〕
表1,2に示す組成の歯磨剤組成物を調製し、フッ化物の滞留性評価、歯ブラシ上での成形性の評価、製剤の液分離安定性の評価、歯磨時の泡立ちの評価を下記方法で評価した。結果を表1,2に示す。
【0053】
試験歯磨剤組成物の調製:
歯磨剤組成物の調製は、精製水にサッカリンナトリウム、フッ化ナトリウムを溶解させた後、ソルビット液、グリセリンを加え、別途、エチレングリコールにヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種を分散させた液を加え撹拌した。その後、香料、シリカ系研磨剤等の研磨剤、加熱溶解したエチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜25モルで、アルキル基の炭素数が16〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を加え、更に減圧下(5.3kPa)で撹拌し、歯磨剤組成物を得た。製造にはユニミキサー(FM−SR−25,POWEREX CORPORATION社,容積25L)を用い、20kg仕込で調製した。
【0054】
これら歯磨剤組成物の調製に用いた各成分としては、研磨性シリカ(ローディア日華(株),TIXOSIL 73)、70%ソルビット液(東和化成工業(株))、85%グリセリン水溶液(ライオンケミカル(株))、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株),SE850)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株),65SH400)、メチルセルロース(信越化学工業(株),SM400)、POE(ポリオキシエチレン)(15)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテルは日本エマルジョン(株)製、POE(60)硬化ヒマシ油は日光ケミカルズ(株)製、フッ化ナトリウム(ステラケミファ(株))、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(アンヒトール55AB,30%水溶液、花王(株))、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(アンヒトール20AB,30%水溶液、花王(株))を使用し、その他、ラウリル硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、増粘性シリカ(トクシール UR、(株)トクヤマ)、エチレングリコール、サッカリンナトリウム、水は医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。なお、表中のソルビット、グリセリン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタインについての配合量は純分換算の値を示した。
香料については、表3に示す香料A〜香料Iを、表4〜表9に示すフレーバー組成を用い作成し、配合した。
【0055】
また、以下の評価においてはラミネートチューブチューブ(大日本印刷(株)製)に約50g充填したものを使用した。ラミネートチューブは、最外層よりLDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30の層構成で厚さ257μm、直径26mm、口部内径5mmのものを使用した。
なお、上記略号は下記の通りであり、末尾の数字は厚さ(μm)を示す。
【0056】
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
【0057】
(1)フッ化物の滞留性評価
表1,2に示す組成の歯磨剤組成物(サンプルの歯磨剤組成物)8gに精製水24gを加え、よく分散させた後、遠心(10,000rpm×10min)して上清液を得た。上清液8mLをヒドロキシアパタイトビーズ(PENTAX(株)製、平均粒径 10μm)200mgに加え、37℃で3分間撹拌した後に、吸引ろ過し、ろ紙上に回収されたヒドロキシアパタイトビーズを精製水(16mL)により分散し、再度吸引ろ過し、ろ紙上のヒドロキシアパタイトビーズを回収した。これに、1N−塩酸(4mL)を加え、溶解させ、100℃で10分間加熱処理した。この液1mLを採取し、酢酸緩衝液(pH5.2)を3mL加え、フッ素イオンメーターでフッ素イオン濃度を測定した。また、0.21%のフッ化ナトリウム水溶液を作成し、水溶液8gに精製水24gを加えた液に対して同様にヒドロキシアパタイトを作用させ、フッ素イオン濃度を測定した。これらの結果から、フッ化物滞留性(%)を、フッ化ナトリウム水溶液に作用させた場合を100%とする以下の(式1)から求めた。なお、酢酸緩衝液(pH5.2)は、塩化アンモニウムを160gと酢酸アンモニウム230gを精製水800mLに加温溶解し、酢酸(100)を添加してpH5.2に調整した後、精製水を加え1,000mLにメスアップしたものを使用した。
【0058】
【数1】

【0059】
フッ素滞留性を以下の指標で評価し、○及び◎の場合はフッ化物滞留性が良好であると判断した。
評価基準;
◎:フッ化物滞留性が80%以上
○:フッ化物滞留性が70%以上〜80%未満
△:フッ化物滞留性が60%以上〜70%未満
×:フッ化物滞留性が60%未満
【0060】
(2)歯ブラシ上での成形性の評価
サンプルの歯磨剤組成物を上記の直径26mm、口部内径5mmのラミネートチューブに50g充填し、歯ブラシ上に0.5g載せたときの形状変化を下記基準で評価した。
評価基準;
4点:歯ブラシ上での型くずれが観察されない。
3点:歯ブラシ上での型くずれが若干観察される。
2点:歯ブラシ上で徐々に型くずれする。
1点:歯ブラシ上ですぐに型くずれする。
【0061】
5回の評価結果を平均し、以下の基準で判定し、◎及び○のものを、泡立ちが確保され、満足できる使用感が得られる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:歯ブラシ上での成形性が3.5点以上〜4.0点以下
○:歯ブラシ上での成形性が3.0点以上〜3.5点未満
△:歯ブラシ上での成形性が2.0点以上〜3.0点未満
×:歯ブラシ上での成形性が2.0点未満
【0062】
(3)製剤の液分離安定性の評価
歯磨剤組成物を直径26mm、口部内径5mmのラミネートチューブに50g充填し、各組成3本を50℃、1ヶ月間保存し、わら半紙上に10cm歯磨剤組成物を押出し、わら半紙に染み出た液の長さを測定し、下記の4段階で液分離の度合いを評価した。なお、40℃以上の中高温保存における製剤の液分離安定性は温度に依存して液分離が促進される傾向を示し、1ヶ月間の保存期間で評価が可能である保存温度として50℃を選択した。
【0063】
評価基準;
4点:液分離は全く観察されない。
3点:押し出した時、口元に僅かに液分離が認められる。
2点:押し出した時、口元に液分離が1〜3cm認められる。
1点:押し出した時、口元に液分離が3cmを超えて認められる。
【0064】
3本の評価点の平均値を求め、下記基準で判定し、◎、○のものを、液分離安定性に優れる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:液分離の度合いが3.5点以上〜4.0点以下
○:液分離の度合いが3.0点以上〜3.5点未満
△:液分離の度合いが2.0点以上〜3.0点未満
×:液分離の度合いが2.0点未満
【0065】
(4)歯磨時の泡立ちの評価1
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯ブラシ上に約1.2gの歯磨剤組成物を載せ、通常歯を磨く方法で使用した。使用中の口腔内での歯磨剤組成物の泡立ちについて、以下の基準で評価してもらった。
【0066】
評価基準;
4点:泡立ち量が十分に多い。
3点:泡立ち量がやや多い。
2点:泡立ち量がやや少ない。
1点:泡立ち量が少ない。
【0067】
10名の評価結果を平均し、以下の基準で判定し、◎及び○のものを、泡立ちが確保され、満足できる使用感が得られる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:口腔内での泡立ちが3.5点以上〜4.0点以下
○:口腔内での泡立ちが3.0点以上〜3.5点未満
△:口腔内での泡立ちが2.0点以上〜3.0点未満
×:口腔内での泡立ちが2.0点未満
【0068】
(5)歯磨時の泡立ちの評価2
歯磨剤組成物の泡立ちについて、歯ブラシ上に採取する歯磨剤組成物の量を減らして評価を行った。
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯ブラシ上に約0.7gの試験歯磨剤組成物を載せ、通常歯を磨く方法で使用した。使用中の口腔内での歯磨剤組成物の泡立ちについて、以下の基準で評価した。
【0069】
評価基準;
4点:泡立ち量が十分に多い。
3点:泡立ち量がやや多い。
2点:泡立ち量がやや少ない。
1点:泡立ち量が少ない。
【0070】
10名の評価結果を平均し、以下の基準で判定し、◎及び○であるものを、泡立ちが確保され、満足できる使用感が得られる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:口腔内での泡立ちが3.5点以上〜4.0点以下
○:口腔内での泡立ちが3.0点以上〜3.5点未満
△:口腔内での泡立ちが2.0点以上〜3.0点未満
×:口腔内での泡立ちが2.0点未満
【0071】
【表1−1】

※フッ化ナトリウム:0.21%配合はフッ素含有量として950ppmに相当。
【0072】
【表1−2】

【0073】
【表1−3】

【0074】
【表1−4】

【0075】
表1の結果から、本発明の歯磨剤組成物(実施例)は、フッ化物化の歯牙表面への滞留性に優れ、歯ブラシに採取したときの成形性に優れ、製剤の経時保存安定性が良好であり、歯磨ブラッシング時において十分な泡立ちが得られるものであった。
【0076】
【表2−1】

【0077】
【表2−2】

【0078】
表2の結果より、(A)〜(D)成分を配合し、更に、(E)脂肪酸アミドプロピルベタイン配合すると、より優れた泡立ちが得られることが確認された。
【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

なお、上記表中、部はいずれも質量部である(以下、同様。)。
【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
【表7】

【0084】
【表8】

【0085】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、
(A)シリカ系研磨剤を12〜26質量%、
(B)ソルビット及び/又はグリセリンを15〜40質量%、
(C)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種のセルロース誘導体を1.0〜4.0質量%、
(D)エチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜25モルで、アルキル基の炭素数が16〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を2〜10質量%
を配合してなり、(A)/(C)の質量比が5.6〜14.0であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
更に、(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを含有する請求項1記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2009−155218(P2009−155218A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331765(P2007−331765)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】