説明

歯磨剤組成物

【課題】強い収斂実感を有しながら、歯ブラシへの載せやすさが良好で、曳糸性が少なく、長期保存後に液分離や練肌の劣化がほとんどなく保存安定性に優れた歯磨剤組成物を提供する。更に、苦味が抑制され、味の良好な歯磨剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物を0.1〜3質量%、
(B)キサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロースを0.1〜3質量%、
(C)粉末セルロースを0.1〜4質量%
含有し、質量比で(B)/(A)が0.1〜15、(C)/(B)が0.1〜15である歯磨剤組成物。更に、上記歯磨剤組成物に(D)甘味剤を0.1〜1質量%配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた収斂実感を有しながら、歯ブラシへの載せやすさが良好で、かつ曳糸性が少なく、経時で液分離や練肌の劣化がほとんどなく保存安定性に優れた歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、グルコン酸銅、クエン酸銅、硫酸銅、銅クロロフィリンナトリウムなどの銅化合物、あるいは塩化亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛などの亜鉛化合物を歯磨剤組成物に配合すると、収斂実感が付与されることが知られている。歯磨剤組成物に付与する香味や機能に即した実感付与という観点では、上記化合物を含有させることで、香味や機能にあった収斂実感を付与することが可能である。
【0003】
しかし、銅化合物又は亜鉛化合物を配合して歯磨剤組成物に十分な収斂実感を付与すると、歯ブラシへの載せやすさに劣ったり、経時で水保持力が失われ、液分離しやすくなったり練肌が劣化するという問題が生じることがわかった。
更に、銅化合物又は亜鉛化合物の影響を受けにくい粘結剤等を用いれば、歯ブラシへの載せやすさや、長期保存後の液分離、練肌劣化はある程度は改善できるが十分とは言い難く、この場合は歯磨剤組成物の曳糸性が高くなるという新たな課題が生じることもわかった。
【0004】
このため、銅化合物や亜鉛化合物由来の満足な収斂実感を有し、曳糸性、歯ブラシへの載せやすさが良好で、長期保存後の液分離や練肌の劣化がほとんどない、歯磨剤組成物の開発が望まれているものの、従来の技術ではこれらを全て満たすことは困難であった。
【0005】
なお、特許文献1には、ジエステルを油剤とする化粧料又は皮膚外用剤への配合可能成分として酸化亜鉛、キサンタンガム、セルロース末が記載され、特許文献2には皮膚に対する配置又は適用に適する物質として実施例39,40,42に酸化亜鉛、キサンタンガムを含有するヒドロ分散体が、特許文献3には貼付剤である口臭予防組成物としてグルコン酸銅及びキサンタンガムを配合した組成が記載されている。しかし、特許文献1〜3は上記課題を解決し得るものではなく、これら成分を特定量及び特定割合で併用した組成も示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−206573号公報
【特許文献2】特開2006−524520号公報
【特許文献3】特開2006−182705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、上記の種々の課題を解決し、満足な収斂実感を有しながら、歯ブラシへの載せやすさが良好で、曳糸性が少なく、長期保存後に液分離や練肌の劣化がほとんどなく保存安定性に優れた歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物を0.1〜3質量%、(B)キサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロースを0.1〜3質量%、(C)粉末セルロースを0.1〜4質量%含有し、かつ(B)/(A)の質量比を0.1〜15、(C)/(B)の質量比を0.1〜15にすることにより、意外にも満足な収斂実感を有しつつ、歯ブラシへの載せやすさが良好で、曳糸性も低減され、かつ長期保存後に液分離や練肌の劣化がほとんどないこと、更に(D)甘味剤を0.1〜1質量%含有し、(D)/(A)の質量比が0.1〜4であることで、銅化合物及び/又は亜鉛化合物に由来する苦味も低減でき適度な甘味となり、使用感も改善できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明者は、銅化合物又は亜鉛化合物を歯磨剤組成物に配合するに際し、粘結剤としてキサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロースを選択して用いると銅化合物又は亜鉛化合物の影響を受け難く、歯ブラシへの載せやすさの改善や、長期保存後の液分離、練肌の劣化を防止することが可能となるものの歯磨剤組成物の曳糸性が高くなるという新たな課題が生じることがわかり、更に検討を進めた。その結果、後述の実施例からも明らかなように、上記(A)〜(C)成分を特定量及び配合比で併用することによって、従来技術では解決できなかった香味や機能に適した満足な収斂実感を付与しつつ、長期保存後の液分離や練肌の劣化、曳糸性、歯ブラシへの載せやすさの全てを満たし、更に苦味を抑制して味も改善できる歯磨剤組成物を得ることができることを見出したものである。
【0010】
従って、本発明は、下記歯磨剤組成物を提供する。
請求項1:
(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物を0.1〜3質量%、
(B)キサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロースを0.1〜3質量%、
(C)粉末セルロースを0.1〜4質量%
含有し、質量比で(B)/(A)が0.1〜15、(C)/(B)が0.1〜15であることを特徴とする歯磨剤組成物。
請求項2:
銅化合物及び/又は亜鉛化合物が、グルコン酸銅、クエン酸銅、酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛から選ばれる1種以上である請求項1記載の歯磨剤組成物。
請求項3:
更に、(D)甘味剤を0.1〜1質量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
請求項4:
(D)/(A)の質量比が0.1〜4であることを特徴とする請求項3記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯磨剤組成物は、満足な収斂実感を有しながら、歯ブラシへの載せやすさが良好で、長期保存後の液分離や練肌の劣化がほとんどなく、曳糸性が少ない。更に、銅化合物及び/又は亜鉛化合物に由来する苦味を低減して使用感も改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の歯磨剤組成物は、(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物、(B)キサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロース、及び(C)粉末セルロースを含有し、更に好ましくは(D)甘味剤が配合される。
【0013】
(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物は、収斂実感の付与を目的に配合される成分である。具体的には、グルコン酸銅、クエン酸銅、硫酸銅、銅クロロフィリンナトリウム等の銅化合物、塩化亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の亜鉛化合物が挙げられる。中でも、収斂実感の点からグルコン酸銅、クエン酸銅、酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛が好ましい。また、銅化合物及び亜鉛化合物は、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウムなどの水不溶性粉体との造粒物の形でも使用可能である。
(A)成分としては、銅化合物及び亜鉛化合物から選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用可能であり、銅化合物又は亜鉛化合物を用いても、銅化合物と亜鉛化合物とを組み合わせて2種以上配合してもよい。
【0014】
銅化合物及び亜鉛化合物としては、市販のものを使用でき、例えば関東化学(株)製のD−グルコン酸銅(II)や酸化亜鉛等が挙げられる。
【0015】
銅化合物及び/又は亜鉛化合物の配合量は、組成物全体の0.1〜3質量%であり、好ましくは0.3〜2質量%である。配合量が0.1質量%未満では歯磨剤使用時の収斂実感を付与することができず、3質量%を超えると歯ブラシへの載せやすさに劣り、保存後の液分離、練肌の劣化が生じる。
【0016】
(B)成分は、キサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロースである。
キサンタンガムとしては、通常歯磨剤組成物に使用されるものであればいずれのものでもよいが、B型粘度計、特にBH型回転粘度計で測定したときの0.5質量%水溶液(25℃)の粘度が30〜200Pa・s、特に100〜200Pa・sであるものが好ましい。
このようなキサンタンガムとしては、市販品、例えばADMファーイースト(株)製のノヴァザン、ケルコ(株)製のモナートガムDA、ケルザンT、ケルデント、大日本製薬(株)製のエコーガムなどを使用できる。
【0017】
ヒドロキシアルキルセルロースは、非イオン性で水溶性のセルロース系高分子化合物であり、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロースなどが挙げられ、特にヒドロキシエチルセルロースが好適である。
【0018】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、通常歯磨剤組成物に使用されるものであればいずれのものでもよいが、組成物の粘性を高める点から、B型粘度計、特にBH型回転粘度計で測定(ローターNo.7、回転速度20r.p.m.、回転時間3分)したときの1質量%水溶液(25℃)の粘度が30〜300Pa・s、特に100〜250Pa・sであるものが好ましい。ヒドロキシアルキルセルロースは市販のものを使用でき、具体的にはヒドロキシエチルセルロースとしてダイセル化学工業(株)製のHECダイセル、ハーキュレス(株)製のネトロゾル(Natrosol)、三晶(株)製のサンヘックなどが挙げられる。
【0019】
(B)成分としては、キサンタンガム又はヒドロキシアルキルセルロースを用いても、キサンタンガムとヒドロキシアルキルセルロースとを併用してもよく、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。その配合量は、保存後の液分離、歯ブラシへの載せやすさや曳糸性の点から、組成物全体の0.1〜3質量%であり、好ましくは0.3〜2質量%である。配合量が0.1質量%未満では保存後の液分離が生じ、また歯ブラシへの載せ難くなり、3質量%を超えると曳糸性や歯ブラシへの載せやすさに劣る。
【0020】
(A)成分に対する(B)成分の割合((B)/(A))は、保存後の液分離や練肌、歯ブラシへの載せやすさ及び曳糸性の点から質量比で0.1〜15、好ましくは0.2〜6である。(B)/(A)が0.1未満では、保存後に液分離や練肌の劣化が生じ、歯ブラシへ載せ難くなり、15を超えると曳糸性や歯ブラシへの載せやすさに劣る。
【0021】
(C)粉末セルロースは、水不溶性のセルロース系高分子化合物であり、粉末状の結晶セルロースである。粉末セルロースは、歯磨剤組成物の曳糸性の劣化等を防ぐ目的で配合され、通常歯磨剤組成物に使用される結晶セルロースで粉末状のものであればよく、例えばパルプ粉末、不溶性粉末セルロース、粉末α−セルロースや、パルプ等のセルロース類を化学処理して不溶化したものを粉砕したものなどを1種又は2種以上使用できる。この場合、化学処理して不溶化するとは、具体的には鉱酸などの酸で部分的に解重合することである。
【0022】
粉末セルロースの平均粒径は10〜300μm、特に10〜200μmが好ましく、10μmに満たないと歯磨剤組成物の曳糸性の劣化を防ぐことができず、300μmを超えると歯ブラシへの載せやすさに劣る場合がある。
なお、上記平均粒径はマイクロトラックによる測定を行った際の粉体全体積を100%として累積カーブを算出し、その累積カーブが50%となる点の粒子径である(以下、同様。)。
【0023】
このような粉末セルロースは市販のものを使用してもよく、例えば旭化成ケミカルズ(株)のセオラス、セルフィア等が挙げられる。
【0024】
粉末セルロースの配合量は、曳糸性、歯ブラシへの載せやすさ、保存後の練肌の点から組成物全体の0.1〜4質量%であり、好ましくは0.3〜3質量%である。配合量が0.1質量%未満では曳糸性、歯ブラシへの載せやすさに劣り、4質量%を超えると歯ブラシへの載せやすさ、保存後の練肌に劣る。
【0025】
(B)成分に対する(C)成分の配合割合((C)/(B))は、曳糸性、歯ブラシへの載せやすさ、保存後の練肌の点から質量比で0.1〜15であり、好ましくは0.2〜6である。(C)/(B)が0.1未満では曳糸性や歯ブラシへの載せやすさに劣り、15を超えると歯ブラシへの載せやすさや保存後の練肌に劣る。
【0026】
本発明では、更に苦味を抑制する目的で(D)甘味剤を配合することが好ましい。
甘味剤としては、通常歯磨剤組成物に使用されるものであれば、いずれのものでもよいが、具体的には、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステルなどが挙げられるが、特にサッカリンナトリウムが好適である。
【0027】
(D)甘味剤の配合量は、組成物全体の0.1〜1質量%、特に0.3〜0.8質量%が好適であり、0.1質量%未満では満足な苦味改善効果が得られず甘味自体も弱く、1質量%を超えると甘味が強すぎて使用上問題が生じる場合がある。
【0028】
(D)甘味剤は、(A)成分の配合量に対して(D)/(A)が質量比で0.1〜4、特に0.3〜2の範囲で配合することが好ましい。配合比が0.1未満では満足な苦味改善効果が得られず甘味自体も弱く、4を超えると甘味が強すぎて使用上問題が生じる場合がある。
【0029】
本発明の歯磨剤組成物には、上述した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、通常歯磨剤組成物に使用されている各種の公知成分を任意に配合できる。具体的には、清掃剤、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、色素、香料、pH調整剤、各種有効成分等が挙げられる。
【0030】
清掃剤(研磨剤)としては、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。清掃剤の配合量は組成全体の0〜60質量%、特に10〜20質量%が好ましい。
【0031】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤が配合可能である。
【0032】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ミリストリルザルコシン酸ナトリウム等のN−アシルザルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウムなどが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、塩化ジステアリルメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
【0033】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのエーテル型の界面活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド類等が挙げられる。
【0034】
両イオン性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン等のN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が挙げられる。
【0035】
これら界面活性剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、配合量は組成全体の0.1〜10質量%とすることができる。
【0036】
湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、キシリトール、エリスリトール、平均分子量200〜6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコールなどの1種又は2種以上を組み合わせて配合できる。配合量は通常、組成物全体に対して5〜70質量%である。
【0037】
粘結剤としては、キサンタンガム及びヒドロキシアルキルセルロースに加えて、これら以外のものを本発明の効果を妨げない範囲で配合してもよく、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カチオン化セルロース等のヒドロキシアルキルセルロース以外のセルロース系粘結剤、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの1種又は2種以上を配合できる。配合する場合の添加量は通常、組成全体の0.1〜3質量%であるが、(B)成分との総計で0.2〜6質量%の範囲が望ましい。
【0038】
色素としては青色1号、黄色4号、緑色3号等の法定色素、カラメル等の天然色素及び酸化チタン等が例示される。なお、色素の配合量は組成全体の0.000001〜1質量%とすることができる。
【0039】
香料としては、l−メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テレピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁字油、ユーカリ油等が挙げられる。香料の配合量としては、組成物全体の0.001〜2質量%とすることができる。
【0040】
pH調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸又はその塩類、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの無機化合物等が挙げられる。
【0041】
本発明の歯磨剤組成物には、これらの成分以外にも薬効成分あるいは有効成分として、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第1スズ等のフッ化物、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、ビタミン類等の抗炎症剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤、ポリリン酸塩類等の歯石予防剤、ポリビニルピロリドン等のタバコヤニ除去剤、グリシン、プロリン等のアミノ酸類などを配合できる。
【0042】
本発明の歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記例において%は特に断らない限り質量%を示す。
【0044】
[実施例、比較例]
表1〜7に示した成分を配合した試験歯磨剤組成物(練歯磨)を常法により調製した後、口径8mmのラミネートチューブに充填し、使用時の収斂実感、保存後の液分離、曳糸性、保存後の練肌、歯ブラシへの載せやすさを以下の方法により評価した。更に、表7の組成の試験歯磨剤組成物について、味の良さを以下の方法により評価した。結果を表1〜7に示す。なお、各組成で使用した主要原料は表8に示す通りである。
【0045】
収斂実感の評価:
口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨剤組成物を専門家パネラー10人による官能試験により評価した。歯磨剤組成物約1gを歯ブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ4列ヘッド、ミディアム)にとって約3分間ブラッシングした後、各被験者が口腔内の収斂実感の程度について、比較例1と比較し、以下の評点及び評価基準で官能評価した。
【0046】
<評点>
4点:比較例1と比べて収斂実感を非常に強く感じる
3点:比較例1と比べて収斂実感を感じる
2点:比較例1よりもわずかに収斂実感を感じる
1点:比較例1と同等あるいは全く収斂実感を感じない
10名の評価結果を平均し、下記基準で収斂実感を判断した。
<評価基準>
◎:収斂実感の評点平均点 3.5点以上〜4.0点以下
○:収斂実感の評点平均点 2.0点以上〜3.5点未満
×:収斂実感の評点平均点 2.0点未満
【0047】
液分離の評価:
口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨剤組成物を50℃の恒温槽に1ヶ月間保存し、チューブから紙の上に押し出した際の液の分離状態を以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:液分離が認められない
○:液分離がごくわずかに認められる(表面に分離の兆候である艶が認められる
)が、品質上問題ないレベル
×:液分離が認められる
【0048】
曳糸性の評価:
口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨剤組成物を歯ブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ4列ヘッド、ミディアム)上に約1g載せた後、上方向にチューブとブラシを引き離した際の歯磨剤組成物の曳糸性を試験した。曳糸性とは、歯磨剤組成物がチューブ等の収容容器から取り出した時に糸を引くように伸びる性状をいい、歯磨剤組成物の練り切れの良さの指標となるもので、その長さを測定し、以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:糸状に伸びた長さが0.5cm未満であり、練り切れが良い
○:糸状に伸びた長さが0.5cm以上1cm未満であるが、使用上問題ない
レベルである
×:糸状に伸びた長さが1cm以上であり、使用上問題がある
【0049】
歯ブラシへの載せやすさの評価:
口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨剤組成物を歯ブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ4列ヘッド、ミディアム)上に約1g載せたときの歯ブラシへの載せやすさを以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:歯ブラシ上でペーストの形状が保たれており、歯ブラシからたれ落ちたり、
転がり落ちたりしない
○:歯ブラシ上でのペーストの形状はわずかに崩れている、あるいはわずかに固
くなっているが、歯ブラシからたれ落ちたり、転がり落ちたりせず、品質上
問題ないレベル
×:歯ブラシ上でペーストの形状が崩れ歯ブラシからたれ落ちる、あるいは歯ブ
ラシ上で形状は保っているものの、歯磨剤組成物が歯ブラシから転がり落ち
、使用上に問題がある
【0050】
練肌の評価:
口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨剤組成物を40℃の恒温槽に3ヶ月保存後、室温に戻しチューブから押し出したときの歯磨剤組成物の外観(練肌)を、−5℃で3ヶ月保存した同組成の試験歯磨剤組成物を対象品として、以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:対象品と同等であり、歯磨剤組成物の表面にしわがなく、表面のつやに変化
が認められない
○:対象品と比べて、歯磨剤組成物の表面にわずかなしわや、表面のつやにわず
かな劣化が認められるが品質上問題ないレベル
×:対象品と比べて、歯磨剤組成物の表面にしわが認められ、表面につやがなく
品質上問題であるレベル
【0051】
味の良さの評価:
口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨剤組成物を専門家パネラー10人による官能試験により評価した。歯磨剤組成物約1gを歯ブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ4列ヘッド、ミディアム)に載せて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた苦味を以下の評点及び評価基準で官能評価した。
【0052】
<評点>
4点:苦味を感じず、ほどよい甘みを感じるレベル
3点:わずかに苦味を感じる、あるいはわずかに甘みが強い、あるいはわずかに
甘みが弱いが、歯磨剤の使用上問題ないレベル
2点:苦味を感じる、あるいは甘みが強い、あるいは甘みが弱いため、歯磨剤の
使用上問題があるレベル
1点:強く苦味を感じる、あるいは甘みが非常に強い、あるいは甘みが非常に弱
いため、歯磨剤の使用上問題があるレベル
<評価基準>
◎:苦味の評点の平均点3.5点以上〜4点以下
○:苦味の評点の平均点3点以上〜3.5点未満
×:苦味の評点の平均点3点未満
【0053】
【表1−1】

【0054】
【表1−2】

【0055】
【表2−1】

【0056】
【表2−2】

【0057】
【表3−1】

【0058】
【表3−2】

【0059】
【表4−1】

【0060】
【表4−2】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
【表8】

【0065】
表1〜7の結果から、(A)〜(C)成分を特定量及び割合で配合すると、収斂実感に優れ、歯ブラシへの載せやすさ及び曳糸性が良好で、長期保存後に液分離や練肌の劣化がほとんどないことがわかった。これに対して、本発明にかかわる各成分の適切な配合量及び配合割合に比べて、(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物の配合量が少ないと満足な収斂実感が付与されず(比較例1,3)、多すぎると歯ブラシへの載せやすさに劣り、保存後に液分離、練肌の劣化を起こした(比較例2,4)。(B)キサンタンガム及び/又はヒドロキシエチルセルロースの配合量が少ないと歯ブラシへの載せやすさに劣り、保存後に液分離を起こし(比較例5,7)、多すぎると曳糸性及び歯ブラシへの載せやすさに劣った(比較例6,8)。粘結剤としてキサンタンガム及びヒドロキシエチルセルロースの代わりに、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アニオン性のセルロース誘導体)を配合した場合は、歯ブラシへの載せやすさに劣り、保存後に液分離、練肌の劣化を起こした(比較例9)。(C)粉末セルロースの配合量が少なく不適切であると曳糸性及び歯ブラシへの載せやすさに劣り(比較例10)、多すぎると歯ブラシへの載せやすさ、保存後の練肌が劣化した(比較例11)。更に、(A)、(B)成分の配合割合((B)/(A))が不適切だと、歯ブラシへの載せやすさや曳糸性に劣ったり、保存後に液分離と練肌の劣化を起こした(比較例12,13)。(B)、(C)成分の配合割合((C)/(B))が不適切だと、曳糸性や歯ブラシへの載せやすさに劣ったり、保存後の練肌の劣化が起こった(比較例14,15)。
【0066】
なお、実施例1,3,5〜29,55〜82,84,85のグルコン酸銅をクエン酸銅(関東化学(株)製、商品名:くえん酸銅(II)・2.5水)に置き換えた以外は同組成で配合した結果、グルコン酸銅を用いた場合の結果と同様の結果が得られた。更に、実施例2,4,30〜54,80,81,83の酸化亜鉛を塩化亜鉛(関東化学(株)製、商品名:塩化亜鉛)、炭酸亜鉛(関東化学(株)製、商品名:炭酸亜鉛(塩基性))、クエン酸亜鉛(関東化学(株)製、商品名:くえん酸亜鉛)に置き換えた以外は同組成で配合した結果、酸化亜鉛を用いた場合の結果と同様の結果が得られた。
【0067】
これらの結果から、(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物、(B)キサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロースを特定量かつ特定割合で配合し、かつ(C)粉末セルロースを特定量及び特定割合で配合することより、使用時に強い収斂実感を有し、かつ、保存後の液分離や練肌の劣化がほとんどなく、曳糸性及び歯ブラシへの載せやすさが良好な歯磨剤組成物が得られることがわかった。
更に、表7の結果から、更に(D)甘味剤を特定量及び割合で配合すると、上記優れた特性を有しながら、苦味が抑制され、使用感が向上することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銅化合物及び/又は亜鉛化合物を0.1〜3質量%、
(B)キサンタンガム及び/又はヒドロキシアルキルセルロースを0.1〜3質量%、
(C)粉末セルロースを0.1〜4質量%
含有し、質量比で(B)/(A)が0.1〜15、(C)/(B)が0.1〜15であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
銅化合物及び/又は亜鉛化合物が、グルコン酸銅、クエン酸銅、酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛から選ばれる1種以上である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
更に、(D)甘味剤を0.1〜1質量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
(D)/(A)の質量比が0.1〜4であることを特徴とする請求項3記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2011−105682(P2011−105682A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264471(P2009−264471)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】