説明

歯磨剤組成物

【課題】ベルベリンの安定性に優れ、収斂効果が向上し、異味や刺激がなく良好な使用感であり、しかも、使用時の泡保持性及び泡立ちに優れた、ベルベリンを含有する歯磨剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ベルベリン、(b)塩化ナトリウム、(c)ローズマリー抽出物、セージ抽出物、オウゴン抽出物、ニンジン抽出物、シャクヤク抽出物、スイカズラ抽出物、シラカバ抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物、(d)ノニオン界面活性剤を配合し、かつ(b)成分/(d)成分の質量比を1.5〜20とする。更に、(e)ラウリル硫酸塩を配合し、かつ(d)成分/(e)成分の質量比を0.25〜2.5とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルベリンの保存安定性に優れ、かつ収斂効果が向上し、しかも、塩味及び刺激が緩和され異味がなく使用感が良好で、使用時の泡保持性及び泡立ちが良く使用性に優れた、ベルベリンを含有する歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯周病疾患予防効果を向上させるため、口腔用組成物に有効成分としてベルベリンを含有するオウバク等のミカン科植物抽出物やオウレン等のキンポウゲ科植物抽出物を配合することが知られている(特許文献1〜10)。また、これらベルベリン含有植物抽出物は、ベルベリンに基づく苦味があり、口腔用組成物の使用感や味が悪くなるという課題があったが、ノニオン界面活性剤の配合(特許文献11)や重曹配合(特許文献12)により使用感が改善されることが明らかとなっている。
【0003】
また、ベルベリンは歯磨剤組成物に配合すると保存安定性に劣るという問題があった。ベルベリンの保存安定性を維持するための手段としては、香料組成物中に配合される、ベルベリンを阻害するアルデヒド香料を実質的に含有させない方法(特許文献12)や、改質ミント油を配合する方法(特許文献13)、直鎖状ポリリン酸塩を配合する方法(特許文献14)、炭酸カルシウム含有のベルベリン安定化にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が有効なこと(特許文献15)が提案されている。
【0004】
しかし、上記ベルベリンを含有するオウバクやオウレンは、収斂性抗炎症剤ではあるものの、単体のみにおいては十分な収斂効果の機能を満足に発揮させ難く、上記技術などで保存安定性を改善しても、収斂効果を満足に発揮させることは困難であった。
【0005】
歯頚部を引き締める他の手段としては、塩化ナトリウム、ポリフェノールやタンニン等を含む植物抽出物を歯磨製品に配合することが有効な手段である。しかしながら、上記した塩化ナトリウムや植物抽出物を配合した場合、塩味や刺激の発現、また、歯磨剤を使用中の泡保持性や泡立ちの使用性に課題があった。
【0006】
なお、塩化ナトリウム含有歯磨剤の泡立ちを改善する技術として、アルキル硫酸ナトリウムとノニオン界面活性剤を組み合わせること(特許文献16)、アルキル硫酸ナトリウムとN−アシルグルタミン酸塩及びHLB14以上のノニオン界面活性剤を組み合わせること(特許文献17)は提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−56415号公報
【特許文献2】特開昭57−85319号公報
【特許文献3】特開昭58−39615号公報
【特許文献4】特開昭58−57320号公報
【特許文献5】特開昭61−36215号公報
【特許文献6】特開昭62−205106号公報
【特許文献7】特開昭63−264529号公報
【特許文献8】特開2001−97835号公報
【特許文献9】特開2001−97837号公報
【特許文献10】特開2002−976937号公報
【特許文献11】特開昭62−155209号公報
【特許文献12】特開昭63−63608号公報
【特許文献13】特開2000−72617号公報
【特許文献14】特開2005−187329号公報
【特許文献15】特開平08−175941号公報
【特許文献16】特開昭57−106606号公報
【特許文献17】特開平10−291921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ベルベリンの保存安定性と収斂効果の向上とを両立させることは従来技術では困難であった。従って、ベルベリンを含有する歯磨剤組成物において、ベルベリンを経時で安定に配合し、かつ十分な収斂効果を発揮させ、しかも、使用感、及び使用時の泡保持性や泡立ちといった使用性も良好にすることができる新たな技術が望まれる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ベルベリンの保存安定性に優れ、収斂効果が向上し、異味等がなく良好な使用感であり、しかも、使用時の泡保持性及び泡立ちに優れた、ベルベリンを含有する歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(a)ベルベリン、(b)塩化ナトリウム、(c)ローズマリー抽出物、セージ抽出物、オウゴン抽出物、ニンジン抽出物、シャクヤク抽出物、スイカズラ抽出物、シラカバ抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物、(d)ノニオン界面活性剤を配合し、かつ(b)成分/(d)成分の質量比を1.5〜20とすることにより、ベルベリンの安定性に優れ、収斂効果が向上し、塩味や異味、刺激がほとんどなく、かつ使用時の泡保持性及び泡立ちが良く使用性に優れた歯磨剤組成物が得られることを知見した。
【0011】
即ち、本発明によれば、ベルベリンを含有する歯磨剤組成物に、塩化ナトリウムとノニオン界面活性剤とを適切な配合比率で併用して配合し、かつ特定の植物抽出物を配合すると、意外にもベルベリンの保存安定性が改善すると共に、ベルベリンと塩化ナトリウムとに由来する収斂効果が有効に発揮されて収斂効果が向上し、十分な収斂効果が発揮される上、配合成分由来の塩味や異味がほとんどなく、しかも、刺激が緩和されて良好な使用感となり、かつ使用時の泡保持性及び泡立ちも良好で使用性にも優れたものとすることができる。
【0012】
更に本発明では、(d)成分のノニオン界面活性剤が、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜20で、アルキル基の炭素数が12〜22であるポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれるものであることが好ましく、これにより口腔内での泡保持性をより向上させることができる。
【0013】
また更に、本発明では、上記(a)〜(d)成分に加えて、更に(e)ラウリル硫酸塩を配合し、(d)成分/(e)成分の質量比を0.25〜2.5とすることが望ましく、これにより泡立ちをより改善できる。
【0014】
従って、本発明は下記の歯磨剤組成物を提供する。
請求項1:
(a)ベルベリン、(b)塩化ナトリウム、(c)ローズマリー抽出物、セージ抽出物、オウゴン抽出物、ニンジン抽出物、シャクヤク抽出物、スイカズラ抽出物、シラカバ抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物、(d)ノニオン界面活性剤を含有し、かつ(b)成分/(d)成分の質量比が1.5〜20であることを特徴とする歯磨剤組成物。
請求項2:
(d)ノニオン界面活性剤が、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜20でアルキル基の炭素数が12〜22であるポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載の歯磨剤組成物。
請求項3:
更に、(e)ラウリル硫酸塩を含有し、かつ(d)成分/(e)成分の質量比が0.25〜2.5であることを特徴とする請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベルベリンの安定性に優れ、かつその収斂効果が向上する上、塩味や異味がほとんどなく、刺激がほとんどない良好な使用感で、使用時の泡保持性及び泡立ちの使用性にも優れた歯磨剤組成物を得ることができ、歯周疾患の予防又は改善用として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤として、特に練歯磨として調製されるもので、(a)ベルベリン、(b)塩化ナトリウム、(c)ローズマリー抽出物、セージ抽出物、オウゴン抽出物、ニンジン抽出物、シャクヤク抽出物、スイカズラ抽出物、シラカバ抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物、(d)ノニオン界面活性剤とを必須に含有する。
【0017】
(a)成分のベルベリンは、ベルベリンを含む植物の溶媒抽出物、特にオウバク等のミカン科植物やオウレン等のキンポウゲ科植物の溶媒抽出物として配合することができる。なお、これら植物抽出物としては公知のものを使用することができる。また、これらの植物抽出物はその1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
上記ベルベリンは、市販品を用いることができ、例えばオウバクエキス(粉末状)(小城製薬(株))を使用することができる。
【0018】
ベルベリンの配合量は、固形分換算で組成物全体に対して0.0005〜0.05%(質量%、以下同様。)が好ましく、抗炎症性の点から、より好ましくは0.001〜0.05%である。0.0005%未満では十分な収斂効果が発揮されない場合があり、0.05%を超えると異味が発現する場合がある。
【0019】
(b)塩化ナトリウムは、市販品を用いることができ、例えば塩化ナトリウム((株)日本海水)を使用することができる。
塩化ナトリウムの配合量は、組成物全体に対して2〜10%が好ましく、収斂効果並びに味の点から、好ましくは3〜7%である。2%未満では十分な収斂効果が発揮されない場合があり、10%を超えると塩味が発現する場合や、また口腔粘膜に対して刺激を生じる場合がある。
【0020】
(c)成分は、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、オウゴン抽出物、ニンジン抽出物、シャクヤク抽出物、スイカズラ抽出物、シラカバ抽出物から選ばれる植物抽出物であり、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
ローズマリー抽出物は、マンネンロウの葉、又は葉及び花から水、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール又はこれらの混液、1%尿素含有エタノール溶液、又は1%尿素含有1,3−ブチレングリコール溶液にて抽出して得られたエキスや、マンネロウの新鮮な葉、枝、花などから水蒸気蒸留して得た精油を用いることができる。
ローズマリー抽出物は、市販品を用いることができ、例えばローズマリーエキス(ローズマリー抽出液−J、丸善製薬(株))などを使用することができる。
【0022】
セージ抽出物は、セージの花、葉又は全草から、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールや、これらの混液、あるいは1%尿素含有エタノール溶液又は1%尿素含有1,3−ブチレングリコール溶液にて抽出して得られたエキスや、セージの葉から水蒸気蒸留して得た精油を用いることができる。また、セージはサルビアに近縁であり、セージ抽出物としては、シソ科サルビアの葉より、水、エタノール又はヘキサンで抽出して得られたものを用いることもできる。
セージ抽出物は、市販品を用いることができ、例えばセージエキス(サルビア抽出液、丸善製薬(株))などを使用することができる。
【0023】
オウゴン抽出物は、中国北部〜東シベリア、朝鮮半島で栽植される多年生草本のコガネバナの周皮を除いた根から水、エタノール、無水エタノール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの混液で抽出して得られたものを用いることができる。
オウゴン抽出物は、市販品を用いることができ、例えばオウゴンエキス(オウゴン抽出液−J、丸善製薬(株))などを使用することができる。
【0024】
ニンジン抽出物は、オタネニンジンの根又は根を蒸して乾燥したものからエタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの混液、あるいは無水エタノールにて抽出して得られたものを用いることができる。
ニンジン抽出物は、市販品を用いることができ、例えばニンジンエキス(ニンジン抽出液、丸善製薬(株))などを使用することができる。
【0025】
シャクヤク抽出物は、シャクヤク又はその他近縁植物の根から、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの混液にて抽出して得られたものを用いることができる。
シャクヤク抽出物は、市販品を用いることができ、例えばシャクヤク抽出液(丸善製薬(株))などを使用することができる。
【0026】
スイカズラ抽出物は、スイカズラ又はその他同属植物(Caprifoliaceae)の花、葉又は茎から水、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの混液から抽出して得られたものを用いることができる。
スイカズラ抽出物は、市販品を用いることができ、例えばファルコレックス スイカズラ SE(一丸ファルコス(株))、キンギンカ抽出液−J(丸善製薬(株))などを使用することができる。
【0027】
シラカバ抽出物は、ヨーロッパシラカバ又はその他同属植物(Betulaceae)の葉、樹皮又は木部から水、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの混液から抽出して得られたものを用いることができる。
シラカバ抽出物は、市販品を用いることができ、例えばシラカバ抽出液(丸善製薬(株))などを使用することができる。
【0028】
(c)成分の植物抽出物の配合量は、組成物中にエキス分換算で0.00005〜0.02%、特に0.0001〜0.01%が好適である。0.00005%未満では収斂効果を損なう場合があり、0.02%を超えると異味が発現する場合があり、また口腔粘膜に対して刺激を生じる場合がある。
【0029】
(d)成分のノニオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸デカグリセリル、ラウリルグルコシド、ショ糖パルミチン酸モノエステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられるが、中でも、泡保持性の点で、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸デカグリセリルが好ましい。とりわけエチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜20で、アルキル基の炭素数が12〜22であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが、口腔内での泡保持性をより良好に改善できるため最も好適である。
【0030】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイドの平均付加モル数が5未満では、刺激緩和効果が満足に発揮されない場合があり、30を超えると使用中の味が悪化する場合がある。
【0031】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの平均付加モル数が2未満では刺激緩和効果が満足に発揮されない場合があり、20を超えると使用中の味に劣る場合がある。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は12〜22であることが、刺激緩和効果や味の点から望ましい。
【0032】
(d)成分の配合量は、組成物全体の0.3〜3%、特に0.5〜2%が好適である。配合量が0.3%未満では塩味緩和効果が発揮されなかったり、口腔粘膜に対して刺激が生じる場合があり、3%を超えると収斂効果が損なわれる場合がある。
【0033】
(b)成分の塩化ナトリウムと(d)成分のノニオン界面活性剤との配合割合((b)/(d))は、質量比で1.5〜20であり、特に2〜8であることが好ましい。1.5未満ではベルベリンの安定性に劣ると共に収斂効果が損なわれ、20を超えると塩味緩和効果が発揮されず、口腔粘膜に対して刺激が生じてしまう。
【0034】
更に、本発明の組成物には、(e)ラウリル硫酸塩を配合することが好ましく、これにより使用中により優れた泡立ちが得られる。
ラウリル硫酸塩は、高級脂肪酸より合成された平均アルキル鎖長が12であるアニオン界面活性剤である。具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のラウリル硫酸アルカリ金属塩、ラウリル硫酸アンモニウムなどが挙げられるが、歯磨剤組成物への配合のし易さから、特にラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。ラウリル硫酸ナトリウムは、例えば東邦化学工業(株)製のものなどを使用できる。
【0035】
ラウリル硫酸塩の配合量は特に限定されないが、組成物全体の0.8〜2%、特に1〜1.5%が好ましく、0.8%未満ではより優れた泡が得られない場合があり、2%を超えると口腔粘膜に対して刺激が生じる場合がある。
【0036】
また、(e)成分のラウリル硫酸塩を配合する場合は、(d)成分/(e)成分の質量比が0.25〜2.5、特に1.0〜2.0であることが望ましい。配合比が0.25未満では塩味緩和効果が発揮されず、口腔粘膜に対して刺激が生じる場合があり、2.5を超えると収斂効果が損なわれたり、使用中の泡立ちをより優れたものに改善できない場合がある。
【0037】
本発明の歯磨剤組成物は、剤型等に応じて、上記必須成分に加えて他の公知の添加剤を本発明の効果を妨げない範囲で配合できる。例えば、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、(d)成分や(e)成分以外の界面活性剤、及び必要に応じて甘味剤、防腐剤、(a),(b)及び(c)成分以外の有効成分、着色剤(色素)、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合して通常の方法で製造できる。
【0038】
研磨剤としては、無水ケイ酸、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤などが挙げられる(通常配合量2〜50%、特に10〜40%)。
【0039】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、平均分子量200〜6000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、多価アルコール等の1種又は2種以上が使用できる(通常配合量5〜50%)。
【0040】
粘結剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カーボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル等の有機粘結剤、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等が挙げられる(通常配合量0〜5%、特に0.1〜3%)。
【0041】
界面活性剤としては、上記(d)成分のノニオン界面活性剤、更には(e)成分のラウリル硫酸塩に加え、その他の界面活性剤を配合してもよく、具体的には、両性界面活性剤として、例えばN−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる(通常配合量0.1〜3%、特に0.5〜2%)。
【0042】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、カミツレ、チョウジ、ベニバナ等の抽出物などが挙げられる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0044】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0045】
香料の配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料は、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0046】
着色剤としては青色1号、黄色4号、緑色3号等が例示される。
【0047】
本発明の歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0049】
〔実施例、比較例〕
表1〜7に示す組成の歯磨剤組成物を下記方法で調製し、下記評価を行った。結果を表1〜7に示す。
【0050】
(1)試験歯磨剤組成物の調製
表1〜7に示す組成の歯磨剤組成物を下記方法で調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm、口径8mmのラミネートチューブ(低密度ポリエチレン72μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂90μm/アルミニウム10μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂35μm/直鎖状低密度ポリエチレン50μm,厚み257μm(大日本印刷社(株)製))に50g充填した。
【0051】
歯磨剤組成物の製造法;
(i)精製水中に水溶成分(粘結剤、プロピレングリコールを除く)を常温で混合溶解させたA相を調製した。
(ii)プロピレングリコール中に粘結剤を常温で分散させたB相を調製した。
(iii)攪拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。
(iv)C相中に、香料、研磨剤等の水溶性成分以外の成分を1.5Lニーダー(石山工作所製)を用いて常温で混合し、減圧(5.3kPa)による脱泡を行い歯磨剤組成物1.2kgを得た。
【0052】
なお、歯磨剤組成物の調製には、オウバクエキス(小城製薬(株))、オウレンエキス(小城製薬(株))、塩化ナトリウム((株)日本海水)、ローズマリー抽出物(商品名:ローズマリー抽出液−J(ローズマリー葉エキス0.96%、エタノール49.52%、水49.52%)、丸善製薬(株))、セージ抽出物(商品名:サルビア抽出液(セージ葉エキス1%、エタノール49.5%、水49.5%)、丸善製薬(株))、オウゴン抽出物(商品名:オウゴン抽出液−J、(オウゴンエキス2%、エタノール49%、水49%)、丸善製薬(株))、ニンジン抽出物(商品名:ニンジン抽出液(オタネニンジン根エキス2.5%、エタノール48.75%、水48.75%)、丸善製薬(株))、シャクヤク抽出物(商品名:シャクヤク抽出液−J(シャクヤク根エキス3.5%、エタノール48.25%、水48.25%)、丸善製薬(株))、スイカズラ抽出物(商品名:キンギンカ抽出液−J(スイカズラ花エキス3.5%、エタノール48.25%、水48.25%)、丸善製薬(株))、シラカバ抽出物(商品名:シラカバ抽出液(シラカバ樹皮エキス0.8%、エタノール49.6%、水49.6%)、丸善製薬(株))、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(日本ケミカルズ(株))、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(日本ケミカルズ(株))、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(日本ケミカルズ(株))、ポリオキシエチレン(3)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株))、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株))、ラウリン酸デカグリセリル(太陽化学(株))、ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株))を用いた。他成分については、いずれも医薬部外品原料規格の規格品を用いた。
【0053】
(2)ベルベリン残存率の測定及び評価法
歯磨剤組成物に内標準溶液(キノリンエローSSのメタノール溶液)及び移動相を加え、均一に分散した後、液体クロマトグラフ用フィルター(0.45μm)を用いて濾過し、試料溶液とした。必要に応じて均一分散後に遠心分離してもかまわない。別に標準の塩化ベルベリンをメタノールに溶かした後、組成物のベルベリン濃度に合わせて移動相で希釈し、その後、内標準溶液を正確に加えて標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液20μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、QT(内標準物質のピーク面積に対する試料溶液のベルベリンのピーク面積の比)及びQS(内標準物質のピーク面積に対する標準溶液のベルベリンのピーク面積の比)を求め、下記式によりベルベリン含量を求め、ベルベリン残存率を算出した。
【0054】
ベルベリン含量(ppm)=WS×(100−D)×(353.37/371.81)×(QT/QS)×(K/WT)
WS:標準塩化ベルベリンの量(g)
WT:試料の量(g)
D:標準塩化ベルベリンの水分(%)
K:定数(希釈濃度等により設定)
353.37:ベルベリンの分子量
371.81:塩化ベルベリンの分子量
【0055】
内標準物質 キノリンエローSSのメタノール溶液
操作条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:345nm)
カラム:ODSカラム
カラム温度:室温
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=2/2/1(ラウリル硫酸ナトリウム及び酒石酸を適量添加)
流量:ベルベリンの保持時間が約20分となるように調整
ベルベリン残存率(%)=〔(40℃、6ヶ月保存後のチューブ口元のベルベリン含量)/(初期のベルベリン含量)〕×100
【0056】
ベルベリン残存率を下記基準で評価した。
評価基準
◎:95%以上
○:90%以上95%未満
△:85%以上90%未満
×:85%未満
【0057】
(3)収斂効果の評価方法
歯磨剤組成物を調製し、被験者10名を用いてサンプルの歯磨剤組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用後の収斂効果を「非常に感じる」、「感じる」、「やや感じる」、「全く感じない」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「非常に感じる」を4点、「感じる」を3点、「やや感じる」を2点、「全く感じない」を1点として、10名の平均点から以下の基準で使用中の泡立ちを評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0058】
(4)味(塩味緩和)の評価方法
歯磨剤組成物を調製し、被験者10名を用いてサンプルの歯磨剤組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の塩味感を、「全く感じない」、「ほとんど感じない」、「やや感じる」、「非常に感じる」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「全く感じない」を4点、「ほとんど感じない」を3点、「やや感じる」を2点、「非常に感じる」を1点として、10名の平均点から以下の基準で使用中の塩味感を評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0059】
(5)味(異味緩和)の評価方法
歯磨剤組成物を調製し、被験者10名を用いてサンプルの歯磨剤組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の異味感を、「全く感じない」、「ほとんど感じない」、「やや感じる」、「非常に感じる」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「全く感じない」を4点、「ほとんど感じない」を3点、「やや感じる」を2点、「非常に感じる」を1点として、10名の平均点から以下の基準で使用中の異味感を評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0060】
(6)歯磨使用中の刺激のなさの評価方法
歯磨剤組成物を調製し、被験者10名を用いてサンプルの歯磨剤組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の刺激を、「全く感じない」、「ほとんど感じない」、「やや感じる」、「非常に感じる」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「全く感じない」を4点、「ほとんど感じない」を3点、「やや感じる」を2点、「非常に感じる」を1点として、10名の平均点から以下の基準で使用中の刺激を評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0061】
(7)口腔内泡保持性の評価方法
歯磨剤組成物を調製し、被験者10名を用いてサンプルの歯磨剤組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、口腔内での泡保持性を、「全く口から垂れない」、「ほとんど口から垂れない」、「やや口から垂れる」、「口から垂れる」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「全く口から垂れない」を4点、「ほとんど口から垂れない」を3点、「やや口から垂れる」を2点、「口から垂れる」を1点として、10名の平均点から以下の基準で使用中の泡立ちを評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0062】
(8)使用中の泡立ちの評価方法
歯磨剤組成物を調製し、被験者10名を用いてサンプルの歯磨剤組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の泡立ちを、「非常に感じる」、「感じる」、「やや感じる」、「全く感じない」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「非常に感じる」を4点、「感じる」を3点、「やや感じる」を2点、「全く感じない」を1点として、10名の平均点から以下の基準で使用中の泡立ちを評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0063】
【表1】

注:表中の植物抽出物の配合量において、( )内の数値は各エキス量である(以下、同
様。)。また、(A)成分の配合量において、( )内の数値は固形分換算値である
(以下、同様。)。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベルベリン、(b)塩化ナトリウム、(c)ローズマリー抽出物、セージ抽出物、オウゴン抽出物、ニンジン抽出物、シャクヤク抽出物、スイカズラ抽出物、シラカバ抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物、(d)ノニオン界面活性剤を含有し、かつ(b)成分/(d)成分の質量比が1.5〜20であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
(d)ノニオン界面活性剤が、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜20でアルキル基の炭素数が12〜22であるポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
更に、(e)ラウリル硫酸塩を含有し、かつ(d)成分/(e)成分の質量比が0.25〜2.5であることを特徴とする請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2011−132137(P2011−132137A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290751(P2009−290751)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】