説明

歯磨剤組成物

【解決手段】(A)フッ化ナトリウム、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン、(C)酸化チタン、(D)糖アルコール及び/又はグリセリン、及び(E)無水ケイ酸を含有し、(A)成分を0.08〜0.14質量%、(B)成分を0.1〜1質量%、(C)成分を0.4〜1.5質量%配合し、かつ(C)成分/(A)成分の質量比が5.0〜15である歯磨剤組成物。更に、上記歯磨剤組成物にデキストラナーゼを配合する。
【効果】上記歯磨剤組成物は、フッ素イオンを低濃度で含有する組成で製剤の高い防腐力を確保でき、かつフッ素化合物の口腔内滞留性に優れる上、使用中の苦味のなさ、泡立ち、べたつきのなさ、及び粉っぽさのなさが良好で、高温保存後に変色がほとんどなく優れた保存安定性を有し、小児用にも好適に使用できる。更に、優れた歯垢除去力をも発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、製剤の防腐力を確保でき、更に使用中の苦味のなさ、泡立ち、べたつきのなさ、及び粉っぽさのなさが良好で、高温保存後に変色がほとんどなく、かつ歯垢除去力に優れた歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔用組成物に配合されるフッ素化合物としては、一般的にフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等が使用されている。
【0003】
フッ素化合物の配合量としては、効果と安全性の観点から世界的にフッ素イオン濃度で1,000〜1,500ppm程度を配合上限としており、日本のほとんどの口腔用組成物では配合上限に近い約1,000ppmが配合されている。
【0004】
しかし、6歳未満の小児が使用する歯磨剤のフッ素化合物の配合量に関しては、誤使用などによる飲み込み等を考慮してフッ素イオン濃度はより低い500ppm程度が望ましいとされている(非特許文献1参照)。
【0005】
また、フッ素化合物には製剤の防腐力を高める効果があることが従来から知られており、フッ素化合物は口腔用組成物において防腐力の確保にも寄与している。しかしながら、本発明者らが検討したところ、フッ素イオン濃度を低濃度、例えば500ppm前後になるようにフッ素化合物を配合した場合、組成物の防腐力が十分得られないことがわかった。
【0006】
口腔用組成物の防腐力を確保するには、一般的にパラオキシ安息香酸エステルや第四級アンモニウム塩等の殺菌剤を配合することが一般的に行われるが、上記のようなフッ素イオンが低濃度の組成に十分な防腐効果を付与し得る量を配合すると、苦味が強くなり使用感が低下することがわかり、防腐力の向上策としては採用し難い。従って、フッ素イオンを低濃度で含有する組成において十分な防腐力を確保しつつ使用感等も良好となるように製剤化できる新たな技術が求められる。
【0007】
更に、人体への安全性という観点ではフッ素イオン濃度が低い組成が推奨されるが、う蝕予防の観点からは口腔内においてより高いフッ素イオン濃度で適用させることが効果的であり、安全性と有効性とを両立させるには、上記のようなフッ素イオン濃度が低濃度の組成においても、フッ素イオンを有効に口腔内に滞留させる技術が有効と考えられる。
【0008】
これまでにも、う蝕予防効果を向上させるためフッ素化合物の口腔内滞留性を上げる技術の開発が行われている。例えば特許文献1〜4では、カチオン性ポリマーを配合することによりフッ素化合物の口腔内滞留性を向上させる技術が提案されている。しかし、これら技術は、カチオン性ポリマーを配合すると使用中の泡立ちが低下したり、液分離等が生じて保存安定性が悪くなったり、使用できる香料が制限されるなど、他の配合成分やその配合量を調整する必要があり、製剤設計が面倒で制約も多い。上記したような防腐力低下などの問題があり、他の効果確保による組成の制約が必要となるフッ素イオン濃度が低濃度の組成の製剤では、面倒な成分調整をすることなく、フッ素化合物の口腔内滞留性をも向上させることができる新たな技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−163743号公報
【特許文献2】特開2001−342122号公報
【特許文献3】特開2005−179230号公報
【特許文献4】特開2007−320894号公報
【特許文献5】特開平9−12437号公報
【特許文献6】特開2006−104101号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】眞木吉信著「う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤応用マニュアル」社会保険研究所発行、2006年3月3日、p.38〜47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、フッ素化合物が低濃度で配合された歯磨剤組成物において、製剤の防腐力を十分に確保し、かつフッ素化合物の口腔内滞留性を向上し得ると共に、優れた使用感や保存安定性を有する歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)フッ化ナトリウム、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン、(C)酸化チタン、(D)糖アルコール及び/又はグリセリン、(E)無水ケイ酸を併用し、(A)〜(C)成分を特定量及び特定割合で配合することにより、フッ素イオン濃度が低い組成で、製剤の十分な防腐力を確保でき、かつフッ素化合物の口腔内滞留性が向上し、更に使用中の苦味のなさ、泡立ち、べたつきのなさ、粉っぽさのなさが良好で使用感に優れる上、高温保存後に変色がほとんどなく優れた保存安定性を有する歯磨剤組成物が得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明では、(A)〜(E)成分を組み合わせ、かつ(A)〜(C)成分を相応しい特定量や配合割合で配合することによって、フッ素イオンを通常歯磨剤組成物に配合される濃度(一般的な配合量は900〜1,000ppm)よりも低濃度で含有する歯磨剤組成物において、上記課題を解決して安全性と有効性とを両立させ、上記のような優れた特性を兼ね備えたものとできる。口腔用組成物では防腐力確保にパラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤や第四級アンモニウム塩等の殺菌剤を配合することが一般的であるが、本発明では、これらの成分を配合しなくても満足な防腐力を確保でき、また、面倒な他成分の配合調整などの製剤設計をしなくてもフッ素化合物の口腔内滞留性を向上させることができ、良好な使用感及び保存安定性も確保できる。
本発明では、その作用機序は明確ではないが、酸化チタンの配合により上記歯磨剤組成物の防腐力が高まることが一つの要因となっているものと推測される。酸化チタンは隠蔽力が非常に強く、製剤の退色を防ぐことを目的とした白色顔料として多くの口腔用組成物に配合されているが(特許文献5,6)、酸化チタンの配合により歯磨剤組成物の防腐力が高まることは示されていない。
【0014】
従って、本発明は、下記の歯磨剤組成物を提供する。
請求項1;
(A)フッ化ナトリウム、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン、(C)酸化チタン、(D)糖アルコール及び/又はグリセリン、及び(E)無水ケイ酸を含有し、(A)成分を0.08〜0.14質量%、(B)成分を0.1〜1質量%、(C)成分を0.4〜1.5質量%配合し、かつ(C)成分/(A)成分の質量比が5.0〜15であることを特徴とする歯磨剤組成物。
請求項2;
更に、デキストラナーゼを含有することを特徴とする請求項1記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の歯磨剤組成物は、フッ素イオンを低濃度で含有する組成で製剤の高い防腐力を確保でき、かつフッ素化合物の口腔内滞留性に優れる上、使用中の苦味のなさ、泡立ち、べたつきのなさ、及び粉っぽさのなさが良好で、高温保存後に変色がほとんどなく優れた保存安定性を有し、小児用にも好適に使用できる。更に、本発明組成物は、優れた歯垢除去力をも発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨等の歯磨剤、特に練歯磨として調製され、フッ化ナトリウム、脂肪酸アミドプロピルベタイン、酸化チタン、糖アルコール及び/又はグリセリン、及び無水ケイ酸を含有するもので、更にデキストラナーゼを配合することができる。
【0017】
本発明組成物では、フッ素化合物の口腔内滞留性向上及び組成物の防腐力を確保する点から、フッ素化合物として(A)フッ化ナトリウムが用いられる。フッ化ナトリウムとしては、通常歯磨剤組成物に使用されるものであれば何れでもよく、例えばステラケミファ(株)製等の市販品を配合できる。
【0018】
フッ化ナトリウムの配合量は、組成物全体の0.08〜0.14質量%である。フッ化ナトリウムの配合量が0.08質量%未満では、製剤の防腐力が不十分となり、0.14質量%を超えての配合は小児が使用した場合、誤使用などによる飲み込み量等を考慮すると安全性上好ましくない。
更に、フッ化ナトリウムは、組成中のフッ素イオン濃度が362〜633ppmとなる範囲で配合することができる。
【0019】
(B)脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、脂肪酸の炭素数が8〜18、特に12〜14のものが好ましい。例えばラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン等が挙げられ、1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、十分な泡立ちを得る点から、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが良好である。
これらの脂肪酸アミドプロピルベタインは、例えば花王(株)製のアンヒトール20ABやアンヒトール55AB、川研ファインケミカル(株)製のソフタゾリンLSB、Degussa社製のTEGO BETAIN CK、TEGO BetainF50、TEGO BetainZFなどを配合することができる。
【0020】
脂肪酸アミドプロピルベタインの配合量は、フッ化ナトリウムの口腔内滞留性向上効果及び十分な泡立ちを得る点で組成物全体の0.1〜1質量%であり、好ましくは0.2〜0.8質量%である。配合量が0.1質量%未満では、フッ化ナトリウムの滞留性向上効果や泡立ちに劣り、1質量%を超えると苦味が生じたり、高温保存後に変色が生じる。
【0021】
(C)酸化チタンとしては、例えば石原産業(株)製TIPAQUEや富士チタン工業(株)製TR−600等を使用することができる。
【0022】
酸化チタンの配合量は、高い防腐力を得る点及び高温保存後における変色防止効果の点から組成物全体の0.4〜1.5質量%であり、好ましくは0.8〜1.2質量%である。酸化チタンの配合量が0.4質量%未満では、製剤の防腐力や高温保存後の変色防止効果に劣り、1.5質量%を超えると製剤が粉っぽくなり、味に劣る。
【0023】
本発明においては、(C)酸化チタンに対する(A)フッ化ナトリウムの配合比率((C)/(A))が質量比で5.0〜15、好ましくは7.0〜11である。比率が5.0未満の場合は、十分な防腐力が得られず、15を超えると苦味が生じて味が低下する。
【0024】
(D)糖アルコールは、糖分子のアルデヒド基を還元して得られる多価アルコールを総称するもので、特に制限されない。糖アルコールとしては、例えばソルビット、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール等が挙げられる。グリセリンとしては油脂を原料とした天然グリセリン等が挙げられる。これら糖アルコール及び/又はグリセリンは1種を単独で又は2種以上を併用して使用できるが、特にソルビット、キシリトール、エリスリトール、グリセリンから選ばれるものが好適である。
【0025】
糖アルコール及び/又はグリセリンの配合量は、組成物全体の28〜42質量%、特に30〜38質量%が好ましい。配合量が28質量%未満では、製剤の防腐力に劣ったり、粉っぽくなることがあり、42質量%を超えると使用中にべたつきが生じ、十分な泡立ちも得られない場合がある。
【0026】
(E)無水ケイ酸としては、ゲル法、沈降法などで得られるシリカゲル、沈降性シリカ等が挙げられる。なお、反応性の高いフッ素イオンは、カルシウムイオンが存在すると結合して不溶性のフッ化カルシウムを形成してしまうことから、組成物中にカルシウムイオンを放出するリン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどの研磨剤を含有する場合には、フッ化カルシウムの形成を抑えるため、主にモノフルオロリン酸ナトリウムを配合することが多い。これに対して、本発明ではその詳細は明確ではないが、研磨基剤として無水ケイ酸を配合することで、即時効果に優れるフッ化ナトリウムを有効に配合でき、かつ、これら成分の配合効果が有効に発揮されるものと推測される。
【0027】
無水ケイ酸の配合量は、製剤の防腐力及び味の点から組成物全体の10〜20質量%、特に12〜16質量%が好ましい。配合量が10質量%未満では、製剤の防腐力が満足に高まらず、また、粉っぽさが生じることがあり、20質量%を超えると使用中に苦味が生じる場合がある。
【0028】
本発明の歯磨剤組成物には、更に(F)成分としてデキストラナーゼを配合することができ、デキストラナーゼが安定に配合され歯垢除去力が有効に発揮される。
デキストラナーゼとしては、ケトミウム属、ペニシリウム属、アスペルギルス属、スピカリア属、ラクトバチルス属、セルビブリオ属等に属する公知のデキストラナーゼ生産菌より公知の方法により得られるデキストラナーゼの他、他の微生物より生産されたデキストラナーゼも使用することができ、市販品としては三共株式会社製のものなどを用いることができる。
【0029】
デキストラナーゼの配合量は2〜200単位/g、特に10〜50単位/gが好ましい。2単位/g未満では、その配合効果、例えば十分なプラーク除去効果が得られない場合があり、200単位/gを超えると変色などの為害作用が出る可能性がある。
ここで、デキストラナーゼ1単位とは、デキストランを基質として反応を行った場合に、1分間あたりにグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じるデキストラナーゼの量である。このようなデキストラナーゼ配合量の組成物を得るには、例えば13,000単位/g品を基準とした場合、十分な歯垢除去効果を得る点で組成物全体の0.016〜1.5質量%配合すればよい。
【0030】
本発明の歯磨剤組成物は、上記必須成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲でその剤型に応じ公知の添加剤を任意に配合できる。任意成分として具体的には、上記フッ化ナトリウムやデキストラナーゼ以外の有効成分、脂肪酸アミドプロピルベタイン以外の両性界面活性剤やその他の界面活性剤、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、甘味剤、色素(着色剤)、香料、pH調整剤等を配合でき、これら成分と水とを混合し、常法により製造できる。なお、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸又はその塩、第四級アンモニウム塩などのカチオン性殺菌剤等の公知の防腐剤や殺菌剤を、防腐力確保の目的のために配合しなくてもよい。
【0031】
薬効成分あるいは有効成分としては、フッ化ナトリウム、更にはデキストラナーゼに加えて、公知の有効成分を配合することができる、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、ビタミン類等の抗炎症剤、銅クロロフィル、グルコン酸銅、ヒノキチオール等の天然物由来の抗菌成分や塩化リゾチーム等の溶菌作用を示す酵素、ポリリン酸塩類等の歯石予防剤、ポリビニルピロリドン等のタバコヤニ除去剤、グリシン、プロリンなどのアミノ酸類などを配合できる。配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0032】
界面活性剤としては、脂肪酸アミドプロピルベタインに加えて、本発明の効果を妨げない範囲でその他の界面活性剤、例えばアニオン性界面活性剤、上記脂肪酸アミドプロピルベタイン以外の両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を配合できる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩、ラウロイルサルコシン塩、ミリスチルサルコシン塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−ラウロイルタウリン塩、α−オレフィンスルホン酸塩等、両性界面活性剤としては、N−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ノニオン性界面活性剤として、例えばアルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0033】
上記した他の界面活性剤は、組成物全体の0〜3質量%配合することができ、(B)脂肪酸アミドプロピルベタインを含めた総配合量が0.1〜4質量%となる範囲が好適である。
【0034】
研磨剤としては、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化チタン及び無水ケイ酸以外の公知の研磨剤を配合してもよい。研磨剤としては、例えば結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタクリレート、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、合成樹脂系研磨剤、アルミノシリケート、ジルコノシリケートなどが挙げられる。なお、組成物中にカルシウムイオンを放出する研磨剤、例えばリン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの研磨剤は配合しないことが望ましい。
【0035】
これら研磨剤は、組成物全体の0〜20質量%配合でき、(C)酸化チタンと(E)無水ケイ酸とを含めた総配合量が10.4〜30質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0036】
粘稠剤としては、上記糖アルコール及びグリセリン以外のもの、例えばプロピレングリコール、平均分子量200〜6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられ、1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0037】
上記粘稠剤は組成物全体の0〜5質量%配合することができ、(C)糖アルコール及び/又はグリセリンとの合計配合量が28〜47質量%となる範囲が好ましい。
【0038】
粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン、カーボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル等の有機粘結剤、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤などが挙げられる。粘結剤の配合量は、通常、組成物全体の0.5〜3質量%である。
【0039】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0040】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0041】
また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1質量%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0質量%使用するのが好ましい。
【0042】
着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号が例示される。なお、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において特に断らない限り%はいずれも質量%であり、表中の配合量は純分換算した値を示した。
【0044】
〔実施例、比較例〕
表1,2に示す組成の歯磨剤組成物を下記方法で調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30、厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。
得られた歯磨剤組成物の(1)フッ素化合物の口腔内滞留性、(2)防腐力、(3)苦味のなさ、(4)泡立ち、(5)べたつきのなさ、(6)粉っぽさのなさ、(7)高温保存後における変色のなさについて以下の方法により評価した。結果を表1,2に併記する。
【0045】
更に、表3に示したデキストラナーゼ配合歯磨剤組成物を同様に調製し、上記評価に加え、歯垢除去効果を下記方法で評価した。結果を表3に示す。
【0046】
試験歯磨剤組成物の調製:
歯磨剤組成物の調製は、精製水にサッカリンナトリウム、ソルビット液等の水溶性物質を溶解させた後、アルギン酸ナトリウムなどの粘結剤を分散させたプロピレングリコール液を加え、酸化チタンを添加して撹拌した。その後、香料、研磨剤、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸アミドプロピルベタインの順に加え、更に減圧下(40mmHg)で撹拌し、歯磨剤組成物を得た。なお、デキストラナーゼを配合した歯磨剤組成物の調製においては、デキストラナーゼは研磨剤配合後に配合した。デキストラナーゼ(三共(株)製)は13,000単位/gのものを配合した。なお、製造にはユニミキサー(FM−SR−25,POWEREX CORPORATION社)を用いた。
【0047】
これらの歯磨剤組成物の調製には、フッ化ナトリウム(ステラケミファ(株)製)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(Degussa社製 TEGO BETAIN CK)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(花王(株)製 アンヒトール20AB)、酸化チタン(石原産業(株)製 TIPAQUE)、ソルビット(ROQUEETE社製)、グリセリン(新日本理化(株)製)、キシリトール(ROQUEETE社製)、エリスリトール(三菱化学フーズ(株)製)、無水ケイ酸(ローディア社製)を用いた。ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインはそれぞれ30%水溶液、ソルビットは70%水溶液であるが、各例の配合量は純分換算値である。その他、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン、ラウリル硫酸ナトリウム、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、水は医薬部外品原料規格2006を用いた。
【0048】
使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹
【0049】
(1)フッ素化合物の口腔内滞留性の測定
まず、上面をアルミナ粉末にて鏡面研磨したエナメル質モデル(ヒドロキシアパタイトディスク(PENTAX社製、φ7mm))の上面以外を市販のマニキュアにて被覆し、1%乳酸水溶液に20分間浸漬(室温)し、表面を脱灰した。脱灰したヒドロキシアパタイトディスクを10人のパネラーの口腔内に9枚、1時間装着した。歯ブラシに試験歯磨剤1gを取り、3分間歯磨き後、15mLの水道水で3回口腔内をすすいでもらった。ヒドロキシアパタイトディスクを回収し、各ディスクの上面に0.15mLの0.075N塩酸を添加し、5分間浸漬することでヒドロキシアパタイトディスク表面からフッ素化合物を回収した。回収した溶液0.1mLに酢酸緩衝液0.3mLを加えて、フッ素イオンメーター(サーモエレクトロン(株)製)にてフッ素化合物量を測定した。なお、検量線の作成は、サーモエレクトロン(株)製のフッ素標準液(100ppm)を用いて作成した。フッ素化合物量は、ヒドロキシアパタイト単位面積あたりの量で比較した。
【0050】
(2)防腐力評価
細菌はソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地で24時間、酵母、カビはポテトデキストロース培地でそれぞれ48時間、7日培養を行った。
培養後、細菌と酵母は、滅菌生理食塩水に約108〜109個/mLとなるように懸濁し、カビは0.005%スルホコハク酸ジオクチルドデシルナトリウム入り生理食塩水に約107個/mLとなるように懸濁し、供試菌液とした。
評価試料歯磨剤20gに供試菌液0.2mLを添加して十分混合した後、細菌は20℃、酵母、カビは25℃で保存した。
28日後に、各試料1gを無菌的に採取し、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・レシチン・ポリソルベート80液体培地9mLで希釈混合した。その1mLをシャーレにとり、細菌はソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・レシチン・ポリソルベート80寒天培地、酵母、カビはグルコース・ペプトン・レシチン・ポリソルベート80寒天培地で混釈を行った。細菌は30℃で4日間、酵母、カビは25℃で7日間培養を行い、試料中の生残菌数を測定した。防腐力の評価としての判定基準を下記のように設定した。
7日以内で菌が死滅 : ◎
7日を超え14日以内で菌が死滅 : ○
14日を超え28日以内で菌が死滅: △
28日を超えても菌が死滅しない : ×
【0051】
(3)苦味のなさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた苦味について以下の基準で評価した。
評価基準;
4点:苦味が全くない
3点:苦味がほとんどない
2点:苦味がややある
1点:苦味がある
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを、苦味のない歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0052】
(4)歯磨時の泡立ちの評価
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の口腔内での歯磨剤組成物の泡立ちについて以下の基準で評価した。
評価基準;
4点:泡立ち量が十分にあり、使用感に優れる。
3点:泡立ち量が適度にあり、使用感は満足できる。
2点:泡立ち量が少なく、使用感がやや劣る。
1点:泡立ちがほとんどなく、使用感が悪い。
10名の評価結果を平均し、以下の基準で示し、◎及び○を泡立ちが確保され、満足できる使用感が得られる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:口腔内での泡立ちが3.5点以上〜4.0点以下
○:口腔内での泡立ちが3.0点以上〜3.5点未満
△:口腔内での泡立ちが2.0点以上〜3.0点未満
×:口腔内での泡立ちが2.0点未満
【0053】
(5)べたつきのなさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じたべたつきについて以下の基準で評価した。
評価基準;
4点:べたつきが全くない
3点:べたつきがほとんどない
2点:べたつきがややある
1点:べたつきがある
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを、べたつきのない歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0054】
(6)粉っぽさのなさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた粉っぽさについて以下の基準で評価した。
4点:粉っぽさが全く感じられない
3点:粉っぽさがほとんど感じられない
2点:粉っぽさがやや感じられる
1点:粉っぽさが感じられる
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを、粉っぽさのない歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0055】
(7)高温保存後の変色のなさの評価
各サンプルを口径8mmのラミネートチューブに充填し、50℃の恒温槽に3ヶ月保存後、チューブから紙の上に押し出したときの変色を評価した。なお、対照サンプルとして表2の比較例8のサンプルを使用し、以下の基準で評価した。
評価基準;
4点:対照サンプルと比較して変色の程度が著しく少ない
3点:対照サンプルと比較して変色の程度が少ない
2点:対照サンプルと比較して変色の程度が同等
1点:対照サンプルと比較して変色の程度がやや又は著しく大きい
3本の評価点の平均値を求め、下記基準で判定し、◎、○となるものを高温保存後における製剤の変色のなさに優れる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:変色平均点 3.5点以上4.0点以下
○:変色平均点 3.0点以上3.5点未満
△:変色平均点 2.0点以上3.0点未満
×:変色平均点 2.0点未満
【0056】
(8)歯垢除去効果の測定
1%ショ糖を含むトリプチック ソイ ブロス培地(Tryptic Soy Broth培地、Becton Dickinson社製)4mLにストレプトコッカス ソルビナス(S.sobrinus)6715株を植菌し、37℃で一晩傾斜培養して、ガラス試験管壁に歯垢を形成させた。蒸留水で3回洗浄後、調製した歯磨剤を蒸留水で10倍に希釈したサンプル溶液5mLを加えて、37℃で5分間静置した。サンプル溶液を除去し、蒸留水で3回洗浄後、蒸留水を4mL加えた。ソニケーターで試験管壁に残った歯垢を剥離、分散した溶液の濁度を吸光度計にて測定した。効果の程度は、サンプル溶液の代わりに蒸留水を用いたものを除去率0%、歯垢形成処理を行わずに蒸留水を測定したものを除去率100%として除去率を計算し、比較した。
【0057】
【表1−1】

【0058】
【表1−2】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
表1,2の結果から、本発明の歯磨剤組成物(実施例1〜20)は、いずれもフッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、かつ製剤の防腐力を十分確保でき、しかも、使用中の苦味のなさ、泡立ち、べたつきのなさ、及び粉っぽさのなさが良好で使用感に優れ、高温保存後に変色がほとんどないことがわかった。
また、表3の結果から、本発明の歯磨剤組成物(実施例21〜23)は、デキストラナーゼを安定配合でき、歯垢除去効果が有効に発揮されることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ化ナトリウム、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン、(C)酸化チタン、(D)糖アルコール及び/又はグリセリン、及び(E)無水ケイ酸を含有し、(A)成分を0.08〜0.14質量%、(B)成分を0.1〜1質量%、(C)成分を0.4〜1.5質量%配合し、かつ(C)成分/(A)成分の質量比が5.0〜15であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
更に、デキストラナーゼを含有することを特徴とする請求項1記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2011−46654(P2011−46654A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196923(P2009−196923)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】