説明

歯磨剤組成物

【課題】使用時における歯磨剤組成物の色変化を実現し、高温保存後の製剤の色、保型性及び液分離安定性に優れ、使用中の刺激がなく、また刷掃感の良好な歯磨剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アントシアニン系色素、(B)シリカ系研磨剤、(C)キサンタンガムを含有し、かつ(D)クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムにより製剤のpHを4.5〜6.0に調整することを特徴とする歯磨剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨剤組成物に関し、更に詳述すると、アントシアニン系色素を配合し、かつクエン酸、クエン酸ナトリウムによりpH4.5〜6.0に調整することを特徴とする歯磨剤組成物に関するものであり、使用時における歯磨剤組成物の色変化を実現し、高温保存後の製剤の色、保型性及び液分離安定性に優れ、使用中の刺激がなく、また刷掃感の良好な歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔疾病の治療、予防等に効果的な歯磨剤組成物が提案されてきたが、幼児等の口腔清掃に対する意識が低い層に関しては、口腔清掃習慣の向上を促す技術開発が必要である。
【0003】
出願人は、これまでに、ストライプ模様の練製剤を発現する多色練歯磨剤組成物(特許文献1参照)、研磨剤を含有する透明歯磨剤組成物(特許文献2参照)といった外観に特徴を有する歯磨剤組成物を提案してきた。これらは、特に歯磨剤組成物の購入選択時における幼児の興味喚起において効果的であるが、口腔清掃の習慣化には大きく寄与するものではない。
【0004】
幼児の口腔清掃習慣向上に寄与できる技術としては、使用時に何らかの因子が変化することによる情緒的な楽しみと満足感を提供できるものが効果的であり、その因子としては香味及び製剤色が挙げられる。使用時の香味変化については、香料を含浸させたシリカ顆粒を配合した歯磨剤組成物が提案されている(特許文献3参照)。シリカ顆粒に含浸させたものとは異なる香料を歯磨剤組成物に配合すると、ブラッシング時にシリカ顆粒が崩壊されることで、これに含浸された香料が揮散され、使用時の香味変化が実現できると類推される。しかし、幼児の味覚精度は発達段階にあり、使用時の香味変化を正確に認知させることに課題があった。
【0005】
一方で、使用時の色変化であれば、幼児に対する認知性の制約は克服でき、口腔清掃の習慣化には大きく寄与するが、これを実現した歯磨剤組成物はこれまでに提案されていなかった。また高温保存後の製剤の変色防止や保型性及び液分離安定性の維持、使用中の刺激のなさや刷掃感等が必須であり、使用時の色変化のみならず安定性や使用感に優れた歯磨剤組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−321333公報
【特許文献2】特開昭58−118507公報
【特許文献3】特開2007−254396公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来技術では、使用時における歯磨剤組成物の色変化を実現し、高温保存後の練製剤の色、保型性及び液分離安定性に優れ、使用中の刺激がなく、また刷掃感の良好な歯磨剤組成物は未だ達成されていなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、使用時における歯磨剤組成物の色変化を実現し、高温保存後の製剤の色、保型性及び液分離安定性に優れ、使用中の刺激がなく、また刷掃感の良好な歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を進めた結果、(A)アントシアニン系色素、(B)シリカ系研磨剤、(C)キサンタンガムを含有し、かつ(D)クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムにより製剤のpHを4.5〜6.0に調整することにより、使用時における歯磨剤組成物の色変化を実現し、高温保存後の製剤の色、保型性及び液分離安定性に優れ、使用中の刺激がなく、また刷掃感の良好な歯磨剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明は下記の歯磨剤組成物を提供する。
請求項1:
(A)アントシアニン系色素、(B)シリカ系研磨剤、(C)キサンタンガムを含有し、かつ(D)クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムにより製剤のpHを4.5〜6.0に調整することを特徴とする歯磨剤組成物。
請求項2:
(A)成分を0.1〜10質量%含有する請求項1記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用時における歯磨剤組成物の色が変化し、高温保存後の製剤の色、保型性及び液分離安定性に優れ、使用中の刺激がなく、また刷掃感の良好な組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤、特に練歯磨として好適に調製され、(A)アントシアニン系色素、(B)シリカ系研磨剤、(C)キサンタンガムを含有し、かつ(D)クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムにより製剤のpHを4.5〜6.0に調整することを特徴とする。
本発明で用いる(A)アントシアニン系色素とは、花・果実・葉等植物界において広く存在する水溶性の色素の総称であり、赤・紫・青等の色を呈する。アントシアニジンがアグリコンとして糖や糖鎖と結びついた配糖体の形で存在する。シソ、ハツカダイコン、赤キャベツ、赤カブ、紫イモ等に多く含まれる。一般的には酸性で赤色、アルカリ性では青色を呈する性質を有している。本発明においては、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンレッドYM(アントシアニン系色素78%含有、紫イモ由来)やサンレッドRCAU(アントシアニン系色素76%含有、赤キャベツ由来)等の商品名で商品化されているもの等が使用できる。
【0013】
(A)アントシアニン系色素の配合量は、組成物全体の0.1〜10%(質量%、以下同様。)であり、好ましくは1〜7%、特に好ましくは2〜5%である。0.1未満では使用中の色の変化が実現できず、10%を超えると色素により口腔内が染色される場合がある。
【0014】
(B)シリカ系研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等の市販品を使用することができ、例えばローディア日華(株)のチキソシル73や日本アエロジル(株)のアエロジル等を使用することができる。
【0015】
(B)シリカ系研磨剤の配合量は、組成物全体の10〜40%、特に15〜20%が好適である。10%未満では刷掃感が低下し、40%を超えると口腔内の分散性が劣る場合がある。
【0016】
(C)キサンタンガムとしては、市販品を使用することができ、例えばADMファーイースト(株)製のノヴァザン、ケルコ(株)製のモナートガムDA・ケルザンT・ケルデント、大日本製薬(株)製のエコーガム等が挙げられる。
【0017】
(C)キサンタンガムの配合量は、組成物全体の0.2〜3%であり、好ましくは0.5〜2%である。配合量が0.2%未満では液分離が生じ、3%を越えると口腔内の分散性に劣る場合がある。
【0018】
(D)クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムは、歯磨剤組成物のpHを4.5〜6.0に調整するために用いるpH調整剤であり、いずれも市販品を使用することができ、例えば磐田工業(株)、小松屋(株)のクエン酸、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0019】
(D)クエン酸の配合量は0.1〜5%であり、好ましくは0.2〜3%である。クエン酸ナトリウムの配合量は0〜2%であり、好ましくは0.1〜0.5%である。
【0020】
本発明の歯磨剤組成物は、上記した構成成分に加えて、任意成分として通常歯磨剤組成物に配合されるその他の公知成分、例えば粘稠剤、(C)成分以外の粘結剤、界面活性剤、保湿剤、甘味料、防腐剤、薬効成分等を適宜、本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。
【0021】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤を配合し得る。
【0022】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム等のN−アシルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル型の非イオン性界面活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0024】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン等が挙げられる。
【0025】
これら界面活性剤の配合量は、0.3〜10%、特に0.3〜5%となる範囲が望ましい。
【0026】
粘稠剤としては、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール、多価アルコールを配合してもよい。粘稠剤の配合量は通常10〜50%、特に20〜40%である。
【0027】
(C)成分以外の粘結剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース等を配合できる。粘結剤の配合量は通常0.1〜2%である。
【0028】
薬効成分としては、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロサン、クロルヘキシジン塩類、ソルビン酸塩、ヒノキチオール、アズレンスルホン酸塩等の抗菌性物質、プロテアーゼ、グルカナーゼ、リゾチーム等の分解酵素、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸等の抗炎症物質、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化ストロンチウム等の無機塩類、ゼオライト、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェート等のキレート性化合物、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ピリドキシン等の各種ビタミン類、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の天然抽出物等が挙げられる。これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0029】
甘味料としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、アスパルテーム等が配合できる。
【0030】
香料として、例えば、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、バジル油、カルダモン油、コリアンダー油、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、オレンジ油、レモン油、マンダリン油、ライム油、グレープフルーツ油、柚子油、スウィーティー油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、セロリ油、ベイ油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、レモングラス油、ローズ油、ジャスミン油、パチュリ油、イリスコンクリート、ローズアブソリュート、オレンジフラワーアブソリュート、バニラアブソリュート、マンゴーアブソリュート、パチュリアブソリュート、ジンジャーオレオレジン、ペッパーオレオレジン、カプシカムオレオレジン、トウガラシ抽出物等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、リモネン、ピネン、ブタノール、イソアミルアルコール、n−ヘキセノール、cis−3−ヘキセノール、cis−6−ノネノール、リナロール、α−テルピネオール、メントール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、アネトール、チモール、メチルチャビコール、オイゲノール、カルボン、メントン、プレゴン、1,8−シネオール、ヨノン、キャロン、n−ヘキサナール、trans−2−ヘキセナール、シトラール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキシルアセテート、エチル2−メチルブチレート、アリルヘキサノエート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、リナリルアセテート、メンチルアセテート、メンチルラクテート、カルビールアセテート、フェノキシエチルイソブチレート、メチルジャスモネート、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、メチルシンナメート、メチルアンスラニレート、フェニルエチルグリシデート、エチルラクテート、バニリン、マルトール、炭素数4〜12のガンマ及びデルタラクトン、アンブレットリド、ジメチルサルファイド、トリメチルピラジン、エチルβ−メチルチオプロピオネート、フラネオール、エチルシクロペンテノロン、シクロテン、2−メチルブチリックアシッド、プロピオニックアシッド、p−メトキシシンナミックアルデヒド、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メントングリセリンアセタール、スピラントール、モノメンチルサクシネート、リナロールオキサイド、バニリルブチルエーテル、イソプレゴール等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、メロンフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、ラズベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、マンゴーフレーバー、ウメフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ティーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー等の調合香料、及び、エチルアルコール、プロピレングリコール、トリアセチン、グリセリン脂肪酸エステル等の香料溶剤等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。これらの香料素材の配合量は特に限定されないが、組成物中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、組成物中に0.1〜2%使用するのが好ましい。
【0031】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
本発明の歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において%は特に記載のない限りいずれも質量%である。
[実施例、比較例]
表1〜3に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を下記製造法により調製した。
(製造法)
歯磨組成物の調製は、精製水にアントシアニン系色素、クエン酸、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ソルビット液等の水溶性物質を溶解させた後、別途、プロピレングリコールにキサンタンガム等の粘結剤を分散させた液を加え、撹拌した。その後、香料、研磨剤、ラウリル硫酸ナトリウム等を加え、更に減圧下(圧力4kPa)で撹拌し、歯磨組成物を得た。製造には、1.5Lニーダー(石山工作所製)を用いた。
【0034】
歯磨剤組成物の調製に用いた各成分の詳細を下記に示す。
(A)アントシアニン系色素
サンレッドYM(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
サンレッドRCAU(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
(B)シリカ系研磨剤
チキソシル73(ローディア日華株式会社製)
(C)キサンタンガム
モナートガムDA(ケルコ株式会社製)
(D)クエン酸
クエン酸(小松屋株式会社製)
(D)クエン酸ナトリウム
クエン酸ナトリウム(小松屋株式会社製)
その他の成分であるポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ソルビット液、プロピレングリコール、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水については医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。
【0035】
得られた歯磨剤組成物を、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30、厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。
【0036】
使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
得られた歯磨剤組成物について、(1)使用後の色変化、(2)刷掃感、(3)使用中の刺激の有無、(4)高温保存後の安定性(50℃1カ月保存後の製剤色の変化、保形性、液分離の有無)について、以下の方法により評価した。結果を表1〜3に併記する。
(1)使用後の色変化
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。製造直後の歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせてブラッシングを行い、ブラッシング開始直後と3分後での口腔内における歯磨剤色の変化を下記の3段階の基準で評価した。10名の評価結果の平均値を求め、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを色変化が認められる歯磨剤組成物であると判断した。
使用後の色変化の評価基準
3:著しい色変化が認められた
2:僅かな色変化が認められた
1:色変化が認められなかった
使用後の色変化の判定基準
◎:2.7点以上〜3.0点以下
○:2.5点以上〜2.7点未満
△:2.0点以上〜2.5点未満
×:2.0点未満
(2)刷掃感
専門家パネラー10名を用いた官能試験により評価した。歯磨剤1gを市販歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の刷掃感ついて下記の3段階の基準で評価した。10名の評価結果の平均値を求め、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを刷掃感のある歯磨剤組成物であると判断した。
【0037】
使用中の刷掃感の評価基準
3:刷掃感を感じる
2:刷掃感をあまり感じない
1:刷掃感を感じない
使用中の刷掃感の判定基準
◎:2.7点以上〜3.0点以下
○:2.5点以上〜2.7点未満
△:2.0点以上〜2.5点未満
×:2.0点未満
(3)使用中の刺激のなさ
専門家パネラー10名を用いた官能試験により評価した。歯磨剤1gを市販歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた刺激について下記3段階の基準で評価した。10名の評価結果の平均値を求め、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを刺激のない歯磨剤組成物であると判断した。
使用後の刺激のなさの評価基準
3:刺激を感じなかった
2:僅かな刺激を感じた
1:刺激を感じた
使用後の刺激のなさの判定基準
◎:2.7点以上〜3.0点以下
○:2.5点以上〜2.7点未満
△:2.0点以上〜2.5点未満
×:2.0点未満
(4−1)高温保存後の液分離の評価方法
歯磨剤組成物を直径26mm、口部内径5mmのラミネートチューブに50g充填し、各組成3本を50℃で1ヶ月保存し、わら半紙上に歯磨組成物を10cm押出し、わら半紙に染み出た液の長さを測定し、液分離の度合いを下記4段階の基準で評価した。各組成3本の評価点の平均値を求め、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを高温での液分離のない歯磨剤組成物であると判断した。
液分離安定性の評価基準
4:液分離は全く観察されなかった
3:押出した時、口元に僅かに液分離が認められた
2:押出した時、口元に液分離が1〜3cm認められた
1:押出した時、口元に液分離が3cmを超えて認められた
液分離安定性の判定基準
◎:3.5点以上〜4.0点以下
○:3.0点以上〜3.5点未満
△:2.0点以上〜2.5点未満
×:2.0点未満
(4−2)高温保存後の保型性の評価方法
歯磨剤組成物を直径26mm、口部内径5mmのラミネートチューブに50g充填し、各組成3本を50℃で1ヶ月保存し、室温にもどし歯ブラシ上に歯磨組成物を0.5g載せた時の形状変化を、下記4段階の基準で評価した。各組成3本の評価点の平均点を求め、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを保型性のある歯磨剤組成物であると判断した。
保型性の評価基準
4:歯ブラシ上での型くずれが観察されなかった
3:歯ブラシ上での型くずれが若干観察された
2:歯ブラシ上で型くずれした
1:歯ブラシ上でひどく型くずれした
保型性の判定基準
◎:3.5点以上〜4.0点以下
○:3.0点以上〜3.5点未満
△:2.0点以上〜2.5点未満
×:2.0点未満
(4−3)高温保存後の製剤色安定性の評価方法
歯磨剤組成物を直径26mm、口部内径5mmのラミネートチューブに50g充填し、各組成3本を50℃及び-10℃で1ヶ月保存し、わら半紙上に歯磨組成物を10cm押出し、下記の3段階で製剤色安定性の度合いについて、-10℃保存品を対照に評価した。各組成3本の評価点の平均点を求め、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを高温での製剤色の安定な歯磨剤組成物であると判断した。
製剤色安定性の評価基準
3:歯磨組成物の色変化が全く観察されなかった
2:歯磨組成物の色変化が僅かに観察された
1:歯磨組成物の色変化が観察された
製剤色安定性の判定基準
◎:2.7点以上〜3.0点以下
○:2.5点以上〜2.7点未満
△:2.0点以上〜2.5点未満
×:2.0点未満

【0038】
【表1】









【0039】
【表2】
















【0040】
【表3】

【0041】
表1〜3の結果から、(B)シリカ系研磨剤、(C)キサンタンガム、(D)クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムのいずれかを欠く場合、pHが4.5〜6.0の範囲外の場合、または他の類似成分を加えた場合には(比較例)、色の変化が生じない、刺激が生じる、刷掃感が認められない、高温での液分離が生じる等の欠点があるのに対して、本発明の歯磨剤組成物(実施例)は、使用時における色変化を実現し、高温保存後の製剤の色、保型性及び液分離安定性に優れ、かつ使用中の刺激がなく、刷掃感に優れる組成物であることがわかった。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アントシアニン系色素、(B)シリカ系研磨剤、(C)キサンタンガムを含有し、かつ(D)クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムにより製剤のpHを4.5〜6.0に調整することを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
(A)成分を0.1〜10質量%含有する請求項1記載の歯磨剤組成物。






























【公開番号】特開2012−219049(P2012−219049A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84971(P2011−84971)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】