説明

歯磨剤組成物

経口的に許容できる賦形剤、及びポリマーマトリクス中の少なくとも1種類の金属イオン源を含み、金属が亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの組合せから選択され、少なくとも1種類の金属イオン源がポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の10〜75重量%を構成し、歯磨剤組成物が歯磨剤組成物の全重量を基準として10重量%未満の水を含む歯磨剤組成物を開示する。また、歯磨剤組成物中に少なくとも1種類の金属イオン源を安定化させる方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2009年5月26日出願の米国仮特許出願61/181,116、及び2009年5月26日出願の米国仮特許出願61/181,124(いずれも参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物中に金属イオンを安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]歯のブラッシング中に口腔に供給するための金属イオン源を含む歯磨剤組成物を与えることは公知である。かかる金属イオンは治療薬として機能させることができる。幾つかの金属イオンは、特に歯磨剤組成物の製造中又は使用前の貯蔵中に金属イオンがそれと反応する可能性がある成分を歯磨剤組成物が含む場合には、歯磨剤組成物中において不安定である傾向を有する。これによって、歯磨剤を用いる際に歯のブラッシング中の口腔面における金属イオンの供給及び生物学的利用能が減少する。
【0004】
[0004]米国特許6,669,929(Boydら)、並びに関連する米国特許出願公開2004/0126332及び2008/0138369においては、機能性膜片を含む歯磨剤が開示されている。この膜片は、治療用物質、或いは美容又は装飾用物質であってよい成分をその中に混入したマトリクスを形成する水和性膜から形成される。虫歯予防薬としてのフッ化物塩、カルシウム塩、抗歯石薬、並びに抗バクテリア剤、息清涼剤、知覚過敏抑制薬、ビタミン、ハーブ、漂白剤、高洗浄性シリカ、保存料、シリコーン、又はクロロフィル化合物などの他の活性薬剤などの数多くの治療用物質が開示されている。確認されている息清涼剤は、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、及び/又はα−イオノンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6,669,929
【特許文献2】米国特許出願公開2004/0126332
【特許文献3】米国特許出願公開2008/0138369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0005]当該技術において、歯磨剤を用いる際に歯のブラッシング中に口腔面における金属イオンの供給及び生物学的利用を向上させることができる改良された歯磨剤組成物を提供する必要性が存在する。
【0007】
[0006]低含水量歯磨剤中での安定性を保持しながら、歯磨剤からの亜鉛、二価スズ(stannous)、及び銅のような金属イオンの供給及び生物学的利用を増進させる更なる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]一形態においては、本発明は、経口的に許容できる賦形剤、及びポリマーマトリクス中の少なくとも1種類の金属イオン源を含み、金属が亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの組合せから選択され、少なくとも1種類の金属イオン源がポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の10〜75重量%を構成し、歯磨剤組成物が歯磨剤組成物の全重量を基準として10重量%未満の水を含む歯磨剤組成物を提供する。
【0009】
[0008]第2の形態においては、ポリマーマトリクス中の少なくとも1種類の金属イオン源を提供し、ここで金属は、亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの組合せから選択され、少なくとも1種類の金属イオン源はポリマーマトリクスの全重量の10〜75重量%を構成し;ポリマーマトリクスを経口的に許容できる賦形剤と混合して、歯磨剤組成物の全重量を基準として10重量%未満の水を含む安定化歯磨剤組成物を形成する;ことを含む、経口的に許容できる賦形剤を含む歯磨剤組成物中に少なくとも1種類の金属イオン源を安定化させる方法を提供する。
【0010】
[0009]経口的に許容できる賦形剤としては、少なくとも1種類のリン酸塩化合物を挙げることができる。
[0010]本発明は、歯磨剤組成物が低い含水量を有し、金属イオンを歯磨剤組成物の賦形剤中の他の成分と早期に反応するか又はそれによって劣化することから保護するように機能させることができるポリマーマトリクス中に金属イオンを存在させると、治療的に有効な量の金属イオンを歯磨剤組成物中に高度に安定化した形態で保持することができるという本発明者らによる知見に基づくものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0011]詳細な説明及び特定の実施例は、発明の幾つかの態様を示しているが、例示のみの目的のためであると意図され、発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0012】
[0012]ここに示す本発明の記載を検討する上では、以下の定義及び非限定的な指針を考慮しなければならない。ここで用いる(「発明の背景」及び「概要」のような)見出し、及び(「組成」のような)小見出しは、発明の開示内の主題の一般的な構成だけのためであると意図され、本発明又はその任意の形態の開示事項を限定することを意図するものではない。特に、「発明の背景」において開示されている主題は、発明の範囲内の幾つかの形態の技術を包含し、従来技術の列挙は構成しない可能性がある。「概要」において開示されている主題は、発明の全範囲又はその任意の態様の排他的か又は完全な開示ではない。本明細書の1つの文節内の材料を特定の有用性を有するとして(例えば、「活性」又は「キャリア」成分であるとして)分類又は議論することは便宜上のために行うものであり、その材料を、それを任意の与えられた組成で用いる場合に必然的か又は単にここで示すその分類にしたがって機能させなければならないという推論を行うべきではない。
【0013】
[0013]本明細書中における参照文献の引用は、これらの参照文献が従来技術であるか、或いはここに開示する発明の特許性に対する関連性を有することを承認することを構成するものではない。発明の背景において引用されている参照文献の内容のいかなる議論も、単に参照文献の著者によって行われた主張の一般的な概要を与えることを意図するものであり、かかる参照文献の内容の正確性に関して承認することを構成するものではない。
【0014】
[0014]本記載及び特定の実施例は、発明の幾つかの態様を示すが、例示のみの目的のためであると意図され、発明の範囲を限定することを意図するものではない。更に、示された特徴を有する複数の態様を示すことは、他の特徴を有する他の態様、或いは示された特徴の異なる組合せを含ませた他の態様を除外することを意図するものではない。特定の実施例は、本発明の組成物及び方法の製造及び使用方法を例示する目的のために与えるものであり、他に明確に示さない限りにおいて、本発明の与えられた態様が製造又は試験されたか又はされていないことを示すことを意図するものではない。
【0015】
[0015]ここで用いる「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益を与える発明の幾つかの態様を指す。しかしながら、同じか又は他の状況下において他の幾つかの態様も好ましい可能性がある。更に、1以上の好ましい態様を示すことは、他の態様が有用でないことを暗示するものではなく、他の態様を発明の範囲から除外することを意図するものではない。更に、組成物及び方法は、ここに記載する構成要素を含ませるか、これから実質的に構成するか、又はこれから構成することができる。
【0016】
[0016]ここで用いる「挙げられる」という用語及びその変形は非限定的なものであると意図され、リスト中に複数の事項を示すことは、本発明の材料、組成物、装置、及び方法において同様に有用である可能性がある他の同様の事項を除外するものではない。
【0017】
[0017]ここで用いる「約」という用語は、本発明の組成物又は方法のパラメーターに関する値に適用される場合には、値の計算値又は測定値が、組成物又は方法の化学的又は物理的特性に対して大きな影響を与えることのない多少の僅かな不正確性を許容することを示す。幾つかの理由のために「約」によって与えられる不正確性が当該技術においてその通常の意味を有して他に理解されない場合には、ここで用いる「約」は、値における5%以下の可能な変動を示す。
【0018】
[0018]ここで示す全ての組成割合は、他に示さない限りにおいて全組成物の重量を基準とするものである。
組成:
[0019]一態様においては、本発明は、経口的に許容できる賦形剤、及びポリマーマトリクス中の少なくとも1種類の金属イオン源を含み、金属が亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの組合せから選択され、少なくとも1種類の金属イオン源がポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の10〜75重量%を構成し、歯磨剤組成物が歯磨剤組成物の全重量を基準として10重量%未満の水を含む歯磨剤組成物を提供する。
【0019】
[0020]場合によっては、少なくとも1種類の金属イオン源は、ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の20〜60重量%を構成する。
[0021]ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源は、歯磨剤組成物の全重量の1〜5重量%、場合によっては歯磨剤組成物の全重量の1〜2重量%を構成することができる。
【0020】
[0022]幾つかの態様においては、金属イオン源は、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、又は酸化亜鉛の少なくとも1つを含む。他の態様においては、金属イオン源は、塩化第1スズ、フッ化第1スズ、又は酸化第1スズの少なくとも1つを含む。更なる態様においては、金属イオン源は硫酸銅を含む。任意のこれらの源を、その任意の組合せで混合することができる。
【0021】
[0023]歯磨剤組成物には、トリポリリン酸ナトリウム及びポリリン酸テトラナトリウムから選択される少なくとも1種類のリン酸塩を含ませることができる。通常は、歯磨剤組成物は、歯磨剤組成物の全重量を基準として1〜5重量%の量のトリポリリン酸ナトリウム、及び歯磨剤組成物の全重量を基準として0.25〜5重量%の量のポリリン酸テトラナトリウムを含む。
【0022】
[0024]幾つかの態様においては、金属イオン源は、ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の20〜60重量%を構成するクエン酸亜鉛を含み、ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源は歯磨剤組成物の全重量の1〜5重量%を構成する。
【0023】
[0025]歯磨剤組成物は練り歯磨き又はゲルであってよい。
[0026]一態様においては、本発明は、ポリマーマトリクス中の少なくとも1種類の金属イオン源を提供し、ここで金属は、亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの組合せから選択され、少なくとも1種類の金属イオン源はポリマーマトリクスの全重量の10〜75重量%を構成し;ポリマーマトリクスを経口的に許容できる賦形剤と混合して、歯磨剤組成物の全重量を基準として10重量%未満の水を含む安定化歯磨剤組成物を形成する;ことを含む、経口的に許容できる賦形剤を含む歯磨剤組成物中に少なくとも1種類の金属イオン源を安定化させる方法を提供する。
【0024】
[0027]経口的に許容できる賦形剤には、場合によっては少なくとも1種類のリン酸塩化合物を含ませることができる。少なくとも1種類のリン酸塩化合物は、トリポリリン酸ナトリウム及びポリリン酸テトラナトリウムの少なくとも1つから選択することができる。
【0025】
[0028]歯磨剤組成物には、歯磨剤組成物の全重量を基準として1〜5重量%の量のトリポリリン酸ナトリウム、及び歯磨剤組成物の全重量を基準として0.25〜5重量%の量のポリリン酸テトラナトリウムを含ませることができる。
【0026】
[0029]少なくとも1種類の金属イオン源は、ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の20〜60重量%を構成することができる。
[0030]ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源は、歯磨剤組成物の全重量の1〜5重量%、場合によっては歯磨剤組成物の全重量の1〜2重量%を構成することができる。
【0027】
[0031]金属イオン源には、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化第1スズ、フッ化第1スズ、酸化第1スズ、又は硫酸銅、或いはこれらの組合せの少なくとも1つを含ませることができる。
【0028】
[0032]本発明の好ましい態様による組成物は、亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの混合物の少なくとも1つから選択される金属イオン源を含み、イオン源がポリマーマトリクス中に封入されている低含水量の歯磨剤組成物を提供することができる。歯磨剤組成物は、金属イオンを歯磨剤中のポリマーマトリクス中に閉じ込められた状態で保持するのに十分に低い含水量を有するが、ポリマーマトリクスは歯磨剤を用いて歯をブラッシングする間に速やかに溶解して、それによって金属イオンを口腔に放出する。本発明者らは、驚くべきことに、ポリマーマトリクスは、歯磨剤組成物の賦形剤中に金属イオンが過度に溶解して、それによって使用中の金属イオンの供給及び生物学的利用を減少させることなく、比較的多い治療量の金属イオン源を封入して長期間安定性を示すことができることを見出した。
【0029】
[0033]したがって、本発明は、亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの混合物を含む金属イオン源を含み、イオン源が(例えば膜の形態の)ポリマーマトリクス中に封入されている低含水量の歯磨剤組成物に関する。
【0030】
[0034]ここで記載するポリマーマトリクスは、好ましくは粘膜付着性を有する水溶性ヒドロキシルアルキルセルロースポリマーを含むマトリクスを有する水和性膜である。ポリマーマトリクスは、亜鉛(例えばクエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酸化亜鉛)、二価スズ(例えば塩化第1スズ、フッ化第1スズ、酸化第1スズ)、又は銅(硫酸銅)のような可溶性及び不溶性の金属イオン源を閉じ込めるために用いる。
【0031】
[0035]金属イオン源は、水中での適度な溶解度、又は界面活性剤、リン酸塩、若しくは他のキレート化成分のような歯磨剤成分との相互作用のいずれかのために、通常の歯磨剤(>10%HO)中のポリマーマトリクス中には保持されない。
【0032】
[0036]本発明においては、歯磨剤組成物は、金属イオン源が配合物中に可溶性にならないようにするのに十分に低い含水量(HOで<10%)を有するが、ポリマーマトリクスがブラッシング中に溶解したら速やかに可溶性になる。
【0033】
[0037]いかなる動作理論にも縛られることは望まないが、低含水量の歯磨剤組成物については従来技術の高含水量の歯磨剤組成物と比較して幾つかの有利性が存在すると考えられる。
【0034】
[0038]第1に、ポリマーの粘膜付着性のために、ポリマーマトリクスは口腔へのイオンの供給を潜在的に増加させてその生物学的利用を向上させることができる。
[0039]第2に、ポリマーマトリクスは、配合物中の金属イオンを、供給を妨げる望ましくない成分の相互作用から保護することができる。これらの金属イオン含有膜を低含水量の配合物中に導入すると、金属イオンが供給点までその最も溶解度が低い形態で保持されて、配合物からの金属イオンの制御された放出が可能になる。
【0035】
[0040]これらの金属イオンの増進した供給/生物学的利用によって、標準的な歯磨剤に対して増進した美容的利益(清涼な息、抗歯石、抗浸食)及び/又は治療的利益(抗歯垢、抗歯肉炎、抗知覚過敏症、抗バクテリア、抗菌)をもたらすことができる。特に、金属イオン及びそれらの塩(例えば、塩化亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化第1スズ、及び塩化第1スズ)は、本発明の歯磨剤組成物においてこれらの美容的及び/又は治療的効果の1以上を与えることができる。
【0036】
[0041]ポリマーマトリクスは好ましくは膜片の形態である。本発明の組成物において用いるためのかかる膜片は、通常はヒドロキシアルキルメチルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロース及びスターチを含むマトリクスから形成される。この少なくとも1種類の金属イオン源がポリマーマトリクス膜中に混入又は封入される。ポリマーマトリクス膜中に混入又は封入することができる他の薬剤としては、染料又は顔料のような着色剤、香料、甘味料、及び/又は抗バクテリア剤のような治療薬或いは息清涼剤の少なくとも1つが挙げられる。膜マトリクスには更に、水、更なる膜形成剤、可塑剤、界面活性剤、及び乳化剤を含ませることができる。
【0037】
膜マトリクスの製造:
[0042]本発明による歯磨剤組成物において用いるための膜マトリクスの製造においては、ヒドロキシアルキルメチルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロース、少なくとも1種類の金属イオン源、スターチ成分、着色剤、香味料、甘味料、及び/又は治療薬、並びに他の膜形成性成分を適合しうる溶媒中に溶解して、膜形成性組成物を形成する。膜形成性組成物を除去可能なキャリア上にキャストし、乾燥して膜マトリクス材料のシートを形成する。キャリア材料は、浸漬して膜とキャリア基材との間の有害な結合を形成することなく所期のキャリア幅にわたって膜溶液を均一に展開することを可能にする表面張力を有していなければならない。好適なキャリア材料の例としては、ガラス、ステンレススチール、テフロン、及びポリエチレン含侵紙が挙げられる。膜の乾燥は、乾燥オーブン、乾燥ターミナル、真空乾燥器、又は膜を構成する成分に悪影響を与えない任意の他の好適な乾燥装置を用いて、高温で行うことができる。
【0038】
[0043]膜厚は、0.5〜10μm、好ましくは2〜3μmの寸法の範囲である。本発明の乾燥膜は、次に0.01〜0.50インチ、好ましくは0.08〜0.25インチの粒径を有する成形片に切断又は押し抜く。
【0039】
[0044]膜を小片に成形する前に膜に食品グレードのセラック又はエチルセルロースのような保護バリヤ膜を適用することによって、乾燥膜から形成される形状に更なる安定性を与えることができる。
【0040】
[0045]装飾効果のために膜を用いる場合には、膜を成形したら、ハート形、星形、ダイヤモンド形、及び円形のような種々の興味をそそる形状の小片に押し抜く。膜片は、本発明の基歯磨剤中に、約1〜約5重量%、好ましくは約1〜約2重量%の濃度で導入する。ポリマーマトリクス中の金属イオン源の装填量は、通常はポリマーマトリクス及び金属イオン源の合計重量を基準として20〜60重量%を構成する。
【0041】
膜形成剤:
[0046]本発明の膜マトリクスを製造するのに用いる主要な膜形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロースである。好ましくは、セルロースポリマーは低粘度のヒドロプロピルメチルセルロースポリマー(HPMC)である。膜形成剤としてHPMCを用いる場合には、HPMCはUbbelohde管粘度計を用いて20℃においてHPMCの2重量%水溶液として測定して約1〜約40mPa・秒の範囲の粘度を有することが好ましい。好ましくは、HPMCは20℃において約3〜約20mPa・秒の粘度を有する。
【0042】
[0047]HPMCは、Dow Chemical CompanyからMethocel E5 LVの商品名で商業的に入手できる。Methocel E5 LVは、29.1%のメトキシ基及び9%のヒドロキシプロピル基の置換を有するUSPグレードの低粘度HPMCである。これは白色又は灰白色の自由流動乾燥粉末である。これは、水中の2重量%溶液としてUbbelohde管粘度計を用いて測定して20℃において5.1mPa・秒の粘度を有する。
【0043】
[0048]ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、膜マトリクス中に約10〜約60重量%、好ましくは約15〜約40重量%の範囲の量で導入する。
[0049]冷水で膨潤可能な物理的に変性した予めゼラチン化したスターチは、本発明のヒドロキシアルキルメチルセルロース膜マトリクスの剛性を増加させるためのテクスチャー変性剤として特に有用である。かかるスターチ生成物の製造においては、粒状スターチを、水及び場合によっては有機溶媒の存在下、ゼラチン化温度よりも10℃以上高くない温度において加熱処理する。次に、得られるスターチを乾燥する。
【0044】
[0050]予めゼラチン化したコーンスターチは商業的に入手できる。好ましいスターチは、Cerestar CompanyからCerestar Polar Tex-Instant 12640の商品名で入手できる。このCerestarスターチは、予めゼラチン化された安定化架橋ワックス状トウモロコシスターチである。これは冷水中に容易に分散及び膨潤させることができる。その乾燥形態においては、これは180μm以下の平均小片寸法を有する白色の自由流動粉末であり、小片の85%は75μmより小さい。これは44lbs/ftの嵩密度を有する。
【0045】
[0051]Cerestarスターチは優れた低温保存及び凍結融解安定性を有する。これは速い水和速度を有し、加熱処理なしに非常に高い粘度に到達させることができる。これは加熱処理スターチと同様の滑らかでクリーム状のテクスチャーを有する。これはまた、優れたペースト透明度及び薄い香味も有する。
【0046】
[0052]予めゼラチン化したスターチは、本発明の膜マトリクス中に約5〜約50重量%、好ましくは約10〜約35重量%の範囲の量で存在させる。
[0053]ヒドロキシアルキルセルロースとスターチとの比(重量比)は、約1:3〜約4:1、好ましくは約1:1.5〜約2.5:1の範囲にすることができる。
【0047】
[0054]本発明による歯磨剤組成物には、ハロゲン化ジフェニルエーテル(トリクロサン)、ハーブエキス又はエッセンシャルオイル(例えば、ローズマリーエキス、チモール、メントール、ユーカリプトール、サリチル酸メチル)、ビスグアニド消毒剤(例えば、クロルヘキシジン、アレキシジン、又はオクテニジン)、フェノール系消毒剤、ヘキセチジン、ポビドンヨウ素、デルモピノール、サリフルオル、サンギナリン、プロポリス、酸素化剤(例えば、過酸化水素、緩衝ペルオキシホウ酸ナトリウム、又はペルオキシ炭酸塩)、セチルピリジニウムクロリド、マグノリアエキス、マグノロール、ホノキオール、ブチルマグノロール、プロピルホノキオール、及びこれらの混合物から選択することができる抗菌剤を含ませることができる。Solrolのような抗付着剤、並びに酵素(パパイン、グルコアミラーゼ等)のような歯垢分散剤を含ませることもできる。
【0048】
[0055]本発明による組成物にはまた、通常は抗歯垢薬、漂白剤、抗バクテリア剤、清浄剤、香味料、甘味料、接着剤、界面活性剤、泡調整剤、研磨剤、pH調整剤、保湿剤、口当たり改良剤、着色剤、研磨剤、歯石制御(抗歯石)薬、フッ化物イオン源、唾液分泌促進薬、栄養剤、及びこれらの組合せから選択される1種類以上の更なる薬剤を含ませることもできる。組成物に加えることができる種々の成分としては、例えば、サッカリン又はナトリウムサッカリンのような甘味料、エタノールのようなアルコール、フッ化ナトリウムのようなフッ化物イオン源、並びにグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、POLOXOMER 407のようなPoloxomerポリマー、PLURONIC F108(いずれもBASF Corporationから入手できる)、アルキルポリグリコシド(APG)、ポリソルベート、PEG40、ヒマシ油、メントールなどが挙げられる。
【0049】
[0056]これらの中で本発明において有用な香味料としては、組成物の風味を増進するように働かせることができる任意の材料又は複数の材料の混合物が挙げられる。芳香油、香味アルデヒド、エステル、アルコール、同様の材料、及びこれらの組合せのような任意の経口的に許容できる天然又は合成香味料を用いることができる。香味料としては、バニリン、セージ、マージョラム、パセリ油、スペアミント油、シナモン油、ウィンターグリーンの油(サリチル酸メチル)、ペパーミント油、丁子油、月桂樹油、アニス油、ユーカリ油、柑橘油、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、アンズ、バナナ、ブドウ、リンゴ、イチゴ、サクランボ、パイナップル等から誘導されるものなどの果実油及びエッセンス、コーヒー、ココア、コラの木、ピーナッツ、アーモンド等のような豆類及びナッツ類由来の香味料、吸着及び封入香味料、並びにこれらの混合物が挙げられる。また、口腔内で香気及び/又は冷却又は加温効果などの他の知覚効果を与える成分も、本発明における香味料に包含される。かかる成分としては、メントール、酢酸メンチル、乳酸メンチル、樟脳、ユーカリ油、ユーカリプトール、アネトール、オイゲノール、桂皮、オキサノン、α−イリソン、プロペニルグアイエトール、チモール、リナロール、ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミン、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタナミド、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、桂皮アルデヒドグリセロールアセタール(CGA)、メトングリセロールアセタール(MGA)、及びこれらの混合物が挙げられる。1種類以上の香味料は、場合によっては、約0.01%〜約5%、場合によって種々の態様においては約0.05〜約2%、約0.1%〜約2.5%、及び約0.1〜約0.5%の全量で存在させる。
【0050】
[0057]これらの中で本発明において有用な甘味料としては、デキストロース、ポリデキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、乾燥転化糖、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ、部分加水分解スターチ、水素化スターチ加水分解物、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリン及びその塩、スクラロース、ジペプチドベースの高強度甘味料、チクロ、ジヒドロカルコン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
[0058]口当たり改良剤としては、組成物の使用中に望ましいテクスチャー又は他の感覚を与える材料が挙げられる。
[0059]これらの中で本発明において有用な着色剤としては、顔料、染料、レーキ、及び真珠化剤のような特定の光沢又は反射性を与える薬剤が挙げられる。種々の態様においては、着色剤は、歯科表面上に白色又は淡色の被覆を与えるか、組成物が有効に接触した歯科表面上の位置の指示薬として機能させるか、及び/又は組成物の外観、特に色及び/又は不透明度を変化させて消費者に対する魅力を増進させるように働かせることができる。FD&C染料及び顔料、タルク、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色、黄色、褐色、及び黒色酸化鉄、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、チタニア化マイカ、オキシ塩化ビスマス、及びこれらの混合物などの任意の経口的に許容できる着色剤を用いることができる。1種類以上の着色剤は、場合によっては、約0.001%〜約20%、例えば約0.01%〜約10%、又は約0.1%〜約5%の全量で存在させる。
【0052】
[0060]本発明の組成物は、場合によって例えば艶出し剤として有用な研磨剤を更に含む。任意の経口的に許容できる研磨剤を用いることができるが、研磨剤のタイプ、細かさ(粒径)、及び量は、組成物の通常の使用中に歯のエナメル質が過度に摩耗しないように選択しなければならない。好適な場合によって用いる研磨剤としては、例えば沈殿シリカの形態か又はアルミナと混合した状態のシリカ、不溶性リン酸塩、炭酸カルシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。不溶性リン酸塩の中で、オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩、及びピロリン酸塩が研磨剤として有用である。代表例は、オルトリン酸ジカルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸トリカルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、及び不溶性ポリメタリン酸ナトリウムである。
【0053】
[0061]本発明の組成物は、場合によっては歯石制御(抗歯石)薬を含む。これらの中で本発明において有用な歯石制御薬としては、任意のこれらの薬剤の塩、例えばこれらのアルカリ金属及びアンモニウム塩;リン酸塩及びポリリン酸塩(例えばピロリン酸塩)、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、ポリオレフィンスルホネート、ポリオレフィンホスフェート、アザシクロアルカン−2,2−ジホスホネート(例えばアザシクロヘプタン−2,2−ジホスホン酸)、N−メチルアザシクロペンタン−2,3−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(EHDP)、及びエタン−1−アミノ−1,1−ジホスホネートのようなジホスホネート、ホスホノアルカンカルボン酸が挙げられる。有用な無機リン酸塩及びポリリン酸塩としては、単塩基、二塩基、及び三塩基リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸塩、ピロリン酸モノ、ジ、トリ、及びテトラナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
[0062]本発明は、特に、少なくとも1種類の金属イオン源が、他の場合には少なくとも1種類の金属イオン源と反応して、それによって金属イオンの供給、有効性、及び生物学的利用を減少させるようなリン酸塩の存在下で安定化している歯磨剤組成物を提供する。
【0055】
[0063]本発明の組成物は、場合によっては例えば虫歯予防薬として有用なフッ化物イオン源を含む。カリウム、ナトリウム、及びアンモニウムのフッ化物並びにモノフルオロホスフェート、フッ化第1スズ、フッ化インジウム、オラフルール(N’−オクタデシルトリメチレンジアミン−N,N,N’−トリス(2−エタノール)ジヒドロフルオリド)のようなアミンフッ化物、及びこれらの混合物などの任意の経口的に許容できる粒子状フッ化物イオン源を用いることができる。1種類以上のフッ化物イオン源は、場合によっては口腔組成物に対して臨床的に有効な量の可溶性フッ化物を与える量で存在させる。
【0056】
[0064]本発明の組成物は、場合によっては、例えば口内乾燥の改善において有用な唾液分泌促進薬を含む。限定なしにクエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸、及び酒石酸、並びにこれらの混合物のような食用酸などの任意の経口的に許容できる唾液分泌促進薬を用いることができる。1種類以上の唾液分泌促進薬は、場合によっては唾液分泌促進的に有効な全量で存在させる。
【0057】
[0065]本発明の組成物は、場合によっては栄養剤を含む。好適な栄養剤としては、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、及びこれらの混合物が挙げられる。ビタミンとしては、ビタミンC及びD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラアミノ安息香酸、ビオフラボノイド、及びこれらの混合物が挙げられる。栄養補給剤としては、アミノ酸(例えば、L−トリプトファン、L−リシン、メチオニン、トレオニン、レボカルニチン、及びL−カルニチン)、脂肪親和性物質(例えば、コリン、イノシトール、ベタイン、及びリノール酸)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
[0066]本発明による歯磨剤組成物は、練り歯磨き又はゲルのような製品中の経口的に許容できるキャリアを含む。ここで用いる「経口的に許容できるキャリア」とは、本発明の組成物中において用いるのに安全で、妥当なリスク便益比に見合った材料又は複数の材料の組合せを指す。
【0059】
[0067]好ましくは、本発明において用いる特定の材料及び組成物は、したがって薬学的又は美容的に許容でき、臨床的に有効で、及び/又は臨床的に効果的である。ここで用いるかかる「薬学的に許容できる」又は「美容的に許容できる」、「臨床的に有効な」、及び/又は「臨床的に効果的な」成分は、人及び/又は動物について用いるのに好適で、適当な量(臨床的に有効な量)で与えて、妥当なリスク便益比に見合って、過度の悪い副作用(例えば、毒性、刺激性、及びアレルギー応答)を与えることなく、所望の治療的、予防的、知覚的、装飾的、又は美容的利益を与えるものである。
【0060】
使用法:
[0068]本発明による歯磨剤組成物は、人又は他の対象動物に投与又は適用することができる。本組成物は、人又は対象動物の口腔に投与又は適用するのに好適である。
【0061】
[0069]ここで引用する全ての参照文献はその全部を参照として本明細書中に包含する。ここで、以下の非限定的な実施例を参照して種々の態様を記載する。
【実施例】
【0062】
実施例1:
[0070]クエン酸亜鉛は水中での中程度の溶解度を有する亜鉛塩である。上記に記載のプロセスを用いて、水溶性ヒドロキシルアルキルセルロースポリマーの膜を製造した。クエン酸亜鉛を36重量%の装填量で膜に加えた。即ち、クエン酸亜鉛は膜及びクエン酸亜鉛の組合せの合計重量の36重量%を構成していた。
【0063】
[0071]次に、この膜を、表1に示す組成物Aの組成を有する低含水量(<10重量%)の歯磨剤に加えた。これによって、歯磨剤中に2.0重量%のクエン酸亜鉛が与えられた。表1に、金属イオン源を有する膜を配合し、他の公知の口腔ケア活性成分と組み合わせた歯磨剤組成物の例を示す。歯磨剤組成物に、0.5重量%のピロリン酸テトラナトリウム(これは、2つを歯磨剤組成物中に存在させた際に亜鉛イオンと反応することが知られている)を含ませた。
【0064】
[0072]歯磨剤組成物に加えた後のポリマーマトリクス中での金属イオン、即ち本実施例においては亜鉛の安定性を定量化するために、歯磨剤組成物Aを加速劣化試験にかけた。ここでは、歯磨剤を40℃の昇温温度において3ヶ月までの期間保存し、各月の終わりに膜中に残留している元々の亜鉛の量の割合を測定した。
【0065】
[0073]測定プロセスにおいては、ポリマー膜を歯磨剤から取り除き、歯磨剤を分析して、金属イオンがその中に移動したかどうかを確認した。この結果を用いて、歯磨剤のそれぞれの劣化期間後にポリマーマトリクス中に残留している亜鉛の量を算出した。重量比で1:1の歯磨剤:グリセリンのスラリーを製造した。グリセリンは、ポリマー膜がグリセリン保湿剤中に膨潤又は溶解しないので用いた。スラリーをフィルターに通して、歯磨剤からポリマー膜を分離した。原子吸光によって歯磨剤スラリーを亜鉛含量について分析した。元々の量に対してポリマーマトリクス中に残留している亜鉛の量を算出した。結果を表2に示す。
【0066】
[0074]加速劣化条件下で3月後においても、約2/3(66重量%)のクエン酸亜鉛がポリマーマトリクス中に残留していたことが分かった。
[0075]これは、歯磨剤組成物がピロリン酸テトラナトリウムのようなリン酸塩を含む場合においても、<10重量%の水を有する歯磨剤配合物の、ポリマーマトリクスによる、特にその膜中への可溶性金属イオンの封入を保持する能力を示した。
【0067】
実施例2:
[0076]上記に記載のプロセスを用いて、亜鉛塩として水溶性ヒドロキシルアルキルセルロースポリマーの膜中に導入した酸化亜鉛を含む第2の膜を製造した。酸化亜鉛を50重量%の装填量で膜に加えた。即ち、酸化亜鉛は膜及び酸化亜鉛の組合せの合計重量の50重量%を構成していた。また、香味料としてメントールも膜に含ませた。
【0068】
[0077]次に、この膜を、表1に示す組成物Bの組成を有する低含水量(<10重量%)の歯磨剤に加えた。これによって、歯磨剤中に2.0重量%の酸化亜鉛が与えられた。歯磨剤組成物に、3.0重量%のトリポリリン酸ナトリウムだけでなく、0.5重量%のピロリン酸テトラナトリウム(これらは両方とも、2つを歯磨剤組成物中に存在させた際に亜鉛イオンと反応することが知られている)を含ませた。
【0069】
[0078]ここでも、実施例1において記載した劣化試験を用いて金属イオンの安定性を求めた。結果を表3に示す。
[0079]加速劣化条件下で3月後においても、約85重量%のクエン酸亜鉛がポリマーマトリクス中に残留していたことが分かった。
【0070】
[0080]これは、歯磨剤組成物がトリポリリン酸ナトリウム及びピロリン酸テトラナトリウムを含む場合においても、<10重量%の水を有する歯磨剤配合物の、ポリマーマトリクスによる、特にその膜中への可溶性金属イオンの封入を保持する能力を示した。
【0071】
実施例3:
[0081]上記に記載のプロセスを用いて、亜鉛塩として水溶性ヒドロキシルアルキルセルロースポリマーの膜中に導入した酸化亜鉛を含む第3の膜を製造した。酸化亜鉛を50重量%の装填量で膜に加えた。即ち、酸化亜鉛は膜及び酸化亜鉛の組合せの合計重量の50重量%を構成していた。また、香味料としてメントールも膜に含ませた。
【0072】
[0082]上記に記載のプロセスを用いて、亜鉛塩として水溶性ヒドロキシルアルキルセルロースポリマーの膜中に導入したクエン酸亜鉛三水和物を含む第4の膜を製造した。クエン酸亜鉛三水和物を36重量%の装填量で膜に加えた。即ち、クエン酸亜鉛三水和物は膜及びクエン酸亜鉛三水和物の組合せの合計重量の36重量%を構成していた。
【0073】
[0083]次に、この膜を、表1に示す組成物Cの組成を有する低含水量(<10重量%)の歯磨剤に加え、これは歯磨剤組成物中に亜鉛塩として導入したクエン酸亜鉛三水和物を更に含んでいた。これによって、全歯磨剤中に、歯磨剤キャリア中に存在している2.0重量%のクエン酸亜鉛三水和物、及び歯磨剤キャリア中に含まれる膜中に存在している1.0重量%の酸化亜鉛が与えられた。歯磨剤組成物に、3.0重量%のトリポリリン酸ナトリウムだけでなく、2.0重量%のピロリン酸テトラナトリウム(これらは両方とも、2つを歯磨剤組成物中に存在させた際に亜鉛イオンと反応することが知られている)を含ませた。
【0074】
[0084]ここでも、実施例1において記載した劣化試験を用いて膜中の金属イオンの安定性を求めた。結果を表3に示す。
[0085]ピロリン酸塩及びクエン酸亜鉛が歯磨剤組成物、特にキャリア中に存在している場合においても、加速劣化条件下で3月後においても、実質的に全部、即ち約100重量%の酸化亜鉛がポリマーマトリクス中に残留していたことが分かった。
【0075】
[0086]これは、歯磨剤組成物が、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸テトラナトリウム、及びクエン酸亜鉛を含む場合においても、<10重量%の水を有する歯磨剤配合物の、ポリマーマトリクスによる、特にその膜中への可溶性金属イオンの封入を保持する能力を示した。
【0076】
比較例1及び2:
[0087]20〜30重量%の水を含む伝統的な歯磨剤を配合した。歯磨剤に、亜鉛塩を安定化させるための亜鉛キレート化剤、及び2重量%のピロリン酸テトラナトリウムを含ませた。
【0077】
[0088]比較例1においては、実施例1と同様に製造し、50%の装填量のZnOを含む膜を製造し、2重量%の膜を歯磨剤に加えて、歯磨剤組成物中に1重量%のZnOを与えた。
【0078】
[0089]比較例2においては、実施例1と同様に製造し、50%の装填量のZnOを含む膜を製造し、2重量%の膜を歯磨剤に加えて、歯磨剤組成物中に1重量%のZnOを与えた。歯磨剤組成物に、膜のためのキャリア中に2重量%のクエン酸亜鉛を含ませた。
【0079】
[0090]両方の歯磨剤を室温において7月間の劣化にかけた。
[0091]劣化試験の終了時に、酸化亜鉛の50%超がポリマー膜から除去されていた。
[0092]実施例及び比較例によって、<10%の水を有する歯磨剤は、ピロリン酸塩を含む歯磨剤においても、ポリマー膜中に酸化亜鉛を保持するのに適していることが示される。これは、実施例3及び比較例2によって示されるように、ピロリン酸塩を含む歯磨剤組成物中にクエン酸亜鉛が更に存在している場合においても当てはまる。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口的に許容できる賦形剤、及びポリマーマトリクス中の少なくとも1種類の金属イオン源を含み、金属が亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの組合せから選択され、少なくとも1種類の金属イオン源がポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の10〜75重量%を構成し、歯磨剤組成物が歯磨剤組成物の全重量を基準として10重量%未満の水を含む歯磨剤組成物。
【請求項2】
少なくとも1種類の金属イオン源がポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の20〜60重量%を構成する、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源が歯磨剤組成物の全重量の1〜5重量%を構成する、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源が歯磨剤組成物の全重量の1〜2重量%を構成する、請求項3に記載の歯磨剤組成物。
【請求項5】
金属イオン源が、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、又は酸化亜鉛の1の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
金属イオン源が、塩化第1スズ、フッ化第1スズ、又は酸化第1スズの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項7】
金属イオン源が硫酸銅を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項8】
歯磨剤組成物が、トリポリリン酸ナトリウム及びポリリン酸テトラナトリウムの少なくとも1つから選択される少なくとも1種類のリン酸塩を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項9】
歯磨剤組成物が、歯磨剤組成物の全重量を基準として1〜5重量%の量のトリポリリン酸ナトリウム、及び歯磨剤組成物の全重量を基準として0.25〜5重量%の量のポリリン酸テトラナトリウムを含む、請求項8に記載の歯磨剤組成物。
【請求項10】
金属イオン源がポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の20〜60重量%を構成するクエン酸亜鉛を含み、ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源が歯磨剤組成物の全重量の1〜5重量%を構成する、請求項9に記載の歯磨剤組成物。
【請求項11】
歯磨剤組成物がポリマーマトリクス中の酸化亜鉛及びクエン酸亜鉛の少なくとも1つを含み、ポリマーマトリクスが膜を含み、歯磨剤組成物が膜のためのキャリアを更に含み、キャリアがトリポリリン酸ナトリウム及びポリリン酸テトラナトリウムの少なくとも1つから選択される少なくとも1種類のリン酸塩を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項12】
キャリアがクエン酸亜鉛を更に含む、請求項11に記載の歯磨剤組成物。
【請求項13】
練り歯磨又はゲルである、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項14】
ポリマーマトリクス中の少なくとも1種類の金属イオン源を提供し、ここで金属は、亜鉛、二価スズ、銅、又はこれらの組合せから選択され、少なくとも1種類の金属イオン源はポリマーマトリクスの全重量の10〜75重量%を構成し;ポリマーマトリクスを経口的に許容できる賦形剤と混合して、歯磨剤組成物の全重量を基準として10重量%未満の水を含む安定化歯磨剤組成物を形成する;ことを含む、少なくとも1種類のリン酸塩化合物を含む経口的に許容できる賦形剤を含む歯磨剤組成物中に少なくとも1種類の金属イオン源を安定化させる方法。
【請求項15】
経口的に許容できる賦形剤が少なくとも1種類のリン酸塩化合物を含み、少なくとも1種類のリン酸塩化合物がトリポリリン酸ナトリウム及びポリリン酸テトラナトリウムの少なくとも1つから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
歯磨剤組成物が、歯磨剤組成物の全重量を基準として1〜5重量%の量のトリポリリン酸ナトリウム、及び歯磨剤組成物の全重量を基準として0.25〜5重量%の量のポリリン酸テトラナトリウムを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種類の金属イオン源がポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源の合計重量の20〜60重量%を構成する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源が歯磨剤組成物の全重量の1〜5重量%を構成する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ポリマーマトリクス及び少なくとも1種類の金属イオン源が歯磨剤組成物の全重量の1〜2重量%を構成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
金属イオン源が、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化第1スズ、フッ化第1スズ、酸化第1スズ、又は硫酸銅、或いはこれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528167(P2012−528167A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513171(P2012−513171)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/036041
【国際公開番号】WO2010/138492
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】